【聖祭】夢に堕ちる
コースケ
コメント 7
シナリオID:1801
オープニング
●金色のキャンドル?
目が覚めると枕元にキャンドルが転がっていた。
蝶の模様の描かれた金色のそれは、ギルドに聞いてみるとそれを灯して眠ると不思議な夢を見ると言われる物だと教えられた。
ギルドではそのキャンドルの情報を集めており、夢を報告すれば報酬も貰えるという。
ただし、夢を見るには複数の人間が同じ場所でキャンドルを灯して眠る必要があるらしい。
報酬に釣られてか、夢への興味からか、あなたはその依頼を受けてみることにした。
●夢の誘い
そこは不思議な場所だった。霧がかかったように周囲は白く曖昧で、ここが何処かの把握が出来ない。けれど、不安や不快感は感じず、むしろ温かく落ち着く場所だった。
ーーザザッ
視界にノイズが走る。一瞬前には誰もいなかったあなたの眼前に、何者かが立っていた。襤褸の布を被った人物だが、その姿は影のように朧気で、布の奥の顔を窺うことは出来ない。
『お前には資格がある』
襤褸の人物が話しかけてくる。聞こえてくる声は直接頭の中に響いて来るようで、その人物の年齢も性別も判別できない。
『その胸に願うものがあるなら、この手を取るがいい。そうすれば、全てを授けよう……』
襤褸の人物が手を差し出してくる。その手を取れば今までの自分では居られないという予感がある。しかし、あなたはその手がひどく魅力的に見えた。襤褸の人物の言う通りにすれば望むものが手に入る。今までの自分では決して得ることの出来なかった力、富、幸福、そして望むすべてのものがーー。
あなたはその手を……
【注意!】
このシナリオは夢オチシナリオです。夢の中ではどんなことでも起こり得ますが、現実のPCに直接の影響はありません(夢見が悪くて寝不足になったとか間接的な影響はあり得ます)
目が覚めると枕元にキャンドルが転がっていた。
蝶の模様の描かれた金色のそれは、ギルドに聞いてみるとそれを灯して眠ると不思議な夢を見ると言われる物だと教えられた。
ギルドではそのキャンドルの情報を集めており、夢を報告すれば報酬も貰えるという。
ただし、夢を見るには複数の人間が同じ場所でキャンドルを灯して眠る必要があるらしい。
報酬に釣られてか、夢への興味からか、あなたはその依頼を受けてみることにした。
●夢の誘い
そこは不思議な場所だった。霧がかかったように周囲は白く曖昧で、ここが何処かの把握が出来ない。けれど、不安や不快感は感じず、むしろ温かく落ち着く場所だった。
ーーザザッ
視界にノイズが走る。一瞬前には誰もいなかったあなたの眼前に、何者かが立っていた。襤褸の布を被った人物だが、その姿は影のように朧気で、布の奥の顔を窺うことは出来ない。
『お前には資格がある』
襤褸の人物が話しかけてくる。聞こえてくる声は直接頭の中に響いて来るようで、その人物の年齢も性別も判別できない。
『その胸に願うものがあるなら、この手を取るがいい。そうすれば、全てを授けよう……』
襤褸の人物が手を差し出してくる。その手を取れば今までの自分では居られないという予感がある。しかし、あなたはその手がひどく魅力的に見えた。襤褸の人物の言う通りにすれば望むものが手に入る。今までの自分では決して得ることの出来なかった力、富、幸福、そして望むすべてのものがーー。
あなたはその手を……
【注意!】
このシナリオは夢オチシナリオです。夢の中ではどんなことでも起こり得ますが、現実のPCに直接の影響はありません(夢見が悪くて寝不足になったとか間接的な影響はあり得ます)
解説
PCは金色のキャンドルの効果を調べるためギルドの一室で眠ったところ、夢に出てきた謎の人物に誘惑されます。
その人物の誘いを受ければ、望むものを手にすることが出来ます。ただし、代わりに倫理観や道徳などを失ってしまいます。いわゆる闇堕ちという状態です。
誘いを受けて闇堕ちするも良し、跳ね退けて自分の信念を守るのも良しです。こういった機会にしか出来ないことなので、好きに動いて貰えたらと思います。
夢は別々の夢を見ても良いですし、複数で同じ夢を見ても良いでしょう。闇堕ちした人を止める、もしくは止めれない夢なども面白いかもです。
夢オチ限定で一部のNPCを登場させる(闇堕ちして暗殺対象にするなど)ことも可能ですが、全員の名前を挙げるのは難しいので、登場させたいNPCの名前を相談卓で質問して頂ければ回答させて頂きます。
どんな夢を見たとしても、目が覚めたら何時もの生活に戻ります。夢の内容によって目覚めは悪くなるかもしれませんが、それ以上の悪影響はありません。
マスターより
あけましておめでとうございます。コースケです。
皆さんは初夢は見られたでしょうか? 新年最初のシナリオは夢オチで闇堕ちなシナリオをリリースさせて頂きます。
夢なので好きなように動いても良いので、思う存分堕ちたり止めたり刺し違えたり、襤褸の人物に挑んだり自由に動いて貰えたらと思います。
質問などあれば夢は見た筈なのに覚えていないオッターが答えさせて頂きます。
以上、よろしければ参加お願いいたします!
蛇足:構想時点ではメドゥの指先の首領にスカウトされるシナリオの予定でしたが、導入に難があったのでこういう形になりました。その場合タイトルは『お前も指にならないか?』になっていたかもしれません。
リプレイ
●「レ=ギュ」違反
「これは……本当に夢なのでしょうか? この手を取れば私も英雄に……?」
英雄を目指す少女、フリーダ=ブロムヴィストは差し出された手を取ろうとし――
『ダメです』
「えっ?」
頭の中に響く啓示に制止された。
『このイベントで取得するのは今回はレ=ギュ違反なのでダメです』
「英雄になれるのにどうして……?」
夢の中だからだろうか、何時もよりはっきり聞こえる声に疑問を返すが、頭に響く声に滔々と諭され(専門用語や知らない単語が多くて難解だったが)、諦めたフリーダは断りを入れようと襤褸の人物へ顔を向けるが、そこには白い空間が広がっているだけだった。
「現れた時と同じで唐突に消えてしまいましたね。一体どちら様だったんでしょう?」
『このイベントはフヨウラ! そちらからさっさと現実世界に帰って、どうぞ』
フリーダは扉(これもいつの間にか現れていた)に手をかける。
「仮にあの人物の手を取った所で本当に英雄になれたかもわかりませんし、それが私の望む英雄だったとも限らないわけです。これはこれで良いのでしょう」
そう自分を納得させ、フリーダは扉を開くのだった。
――ザザッ
●竜への変成
「それ料金要る? 貰った後用事頼まれるとかこき使われるとかしない?」
リザードマンの戦士兼鍛冶師のサイラスは質問を投げる。襤褸の人物は頭を振りそれを否定する。
『全てはお前の意思のままに』
「ふーん。じゃあ貰うよ」
触れた手から冷たいものが流れ込み、サイラスの望みに応え身体を創り換えてゆく。
そしてサイラスは巨大な赤竜となっていた。
「姿は悪くないな」
サイラスは満足げに身体を見回すと、その巨体を覆うほど翼を広げる。ほんの数度羽ばたくだけで白い空間を飛び出し、眼下にロスガリア大陸を見下ろしていた。
「これだけ飛べるなら何処にでも行けそうね。次は腕試ししてみるかなー」
サウゼル辺りに行けば大型クリーパーを相手出来るだろうか。そう考え、サイラスは南へ向かって翼を羽ばたかせた。
●大樹海の魔獣
かってテテリカと呼ばれていたゴブリンだった存在は、大樹海を闊歩していた。
その姿はジャガーの様であるが、アイシャドーを塗ったような紫の瞼と、額から突き出た一本の角がそれがただの獣でないことを表している。
「――!」
魔獣となったテテリカがピクリと耳を動かして立ち止まる。顔を向けた茂みの先に、ヒューマンの女が歩いていた。狩人らしく弓を持った女は辺りを警戒しながら歩いているが、こちらには気付いていない。テテリカは姿勢を低くしそろり、そろり、と距離を詰めていく。
やがて獲物を見つけた女が弓を引き矢を放とうとした瞬間を狙い、テテリカは後ろから襲いかかって右腕を噛み千切る。
女は悲鳴をあげつつも逃れようと走り出す。テテリカは舌で口に付いた血を舐め取り、女を追いかけ襲いかかりたい衝動をグッと堪えた。
(もう弓は引けない。じっくり楽しもう)
テテリカはエーテルの矢を放って女の足を撃ち抜き、這いずって逃れようとする女へわざと足音を立てて近付く。
女はテテリカの気配に焦って足掻くが、片手片足では逃れられない。振り返った顔が恐怖に歪んでいるのを見て、テテリカは口を歪めた。
「来るなっ!」
女が左手に持った短剣で切りかかってくる。だが、苦し紛れの攻撃をテテリカは軽々と避け、そのまま押し倒して喉元に牙を立てる。
ゴキリ、と音を立て頸骨が砕け、女の身体がビクリと震えたあと脱力する。
(もう殺してしまったか。まだ加減が身に付いていないな)
死体を見下ろし残念がるテテリカは、背後に迫る気配に気付かず、飛来した矢を肩に受ける。振り返ると怒りに涙を浮かべた少年が次の矢を引いていた。
「よくも姉ちゃんを!」
(兄弟がいたのか)
テテリカは放たれた矢を避けると少年へ飛びかかり、姉と同じように牙を立てようとしてふと思い止まる。
(……こいつは止めておくか)
テテリカは少年を解放すると、樹海の中へ消えて行った。
●黄金の獣
麒麟のハーフビースト、パヴェル・A・サムルガチェフは無意識にその手を取っていた。
世界に感じる虚しさを忘れたい。そう感じていたパヴェルにとって、襤褸の人物の誘いは抗えないものだった。
そして願うは――
(人ではない姿を……!)
それは逃避なのかもしれない。パヴェル・A・サムルガチェフとして生きる世界が虚しいのなら、それを捨ててやり直したい。
そんな想いが形を取り、パヴェルは人の姿を捨て、四足の獣に変わってゆく。
全身を黄金の鱗が被い、鼻面が突き出て口は鰐の様に大きく開く。全体の形は鹿や馬に似ており、パヴェルの名残として光の加減で青く見える灰色の鬣と、蒼く輝く角を持っていた。
(……!?)
肉体の変化と共に、内面にも影響が現れる。パヴェルが経験した出来事や人物の記憶が色褪せ、彼にとって意味のないモノへと変質してゆく。
青髪の美丈夫への友情は色をなくし、屈強な巨漢への敬意も喪われる。小柄な小鬼へ抱いていた望みも、今となってはどうでもいいものだった。
忘れてしまった訳ではない。記憶は残っている。ただ、大切にしていた記憶も感情も、パヴェルの中で価値を喪ってゆく。
(……そうか。心が満ちていなければ、虚しさを覚えることもないんだな)
心の平衡を得て、パヴェルの変化は完了した。
●迷い道
「ここは一体?」
フリーダは見たことのない通路の中で首を捻っていた。床も壁も驚くほど平らで、壁には等間隔に扉が付いている。元の世界に戻る扉を潜ったら、何故かここに立っていたのだ。
「啓示も『裏口!』と響いたきり降りてきませんし、ここは何処なのでしょうか……おや?」
フリーダの鋭い嗅覚が煙の匂いを嗅ぎ取る。それは扉のひとつから漏れて来ているようだ。
「火事なら誰かに知らせないといけませんね」
そう言ってフリーダは扉に手をかけた。
●燃える集落
テテリカは人間の集落を襲っていた。闇に紛れ住居に忍び寄り、住人を悲鳴も上げる暇も与えず屠ってゆく。
やがて住人の半分以上を虐殺したテテリカは、わざと姿を現して逃げ惑う住人を狩る遊びを始めた。逃げる住人の先に回り込んでその反応を観察したり、子を逃がした親の前にその子供の骸を咥えて現れる。
「この……悪魔め!!」
その慟哭すら心地よい。倫理観を失ったテテリカは、手に入れた力を存分に振るい、他者の命や尊厳を思うままに蹂躙する強者の特権に耽溺していた。
ザンッ!
それ故に、背後に迫った気配に気付けなかった。テテリカは不意を討たれ尾を切り落とされてしまう。
『グルアァァー!?』
「ここは引き受けます。逃げて下さい」
扉の先が樹海の集落だったことに戸惑っていたフリーダだったが、魔獣に襲われる住人を見て思わず剣を振るっていた。そして逃げるよう住人に呼び掛けるが、放心した住人が動かないのを見て、テテリカに対峙し白金に輝く広刃の直剣と円盾を構える。
「私が相手です」
『グアァーッ!』
シーザーロアで執着を与えたフリーダはパラッシュで斬りかかるが、回避に集中しているテテリカには中々届かない。そしてテテリカの反撃も、白金の盾に止められ有効打とはならない。
そのまま20秒ほど切り結んでいたが、執着の切れた隙に離脱したテテリカは樹海の奥へ走り去って行く。
フリーダもそれを追うが、姿を見失ない、血臭が川で途切れたため諦める。
「中々に手強い魔獣でした。逃げてくれなかったら危なかったかもしれません」
一方、闇に潜んでいたテテリカも胸を撫で下ろす様な気持ちでいた。
(まさか集落にあれ程の者が居たとは……。あそこからは距離を取るべきだな)
そう胸中で呟き、樹海の奥へ消えていった。
●天の獣
パヴェルは社の上に立ち、自分を崇める人々を見下ろしていた。
気紛れに目についた魔獣を追い払ったところ、それに苦しめられていた村の人間に天の遣いとして崇められることになったのだ。
(そんな大層なものでも無いんだが……)
何故かこの場を離れられず、パヴェルはここに居着くことにした。
天を駆ける事の出来るパヴェルは気ままに人々の前に現し、それを見た人間達は思い付く限りの歓待を行う。それは数日おきだったり数ヶ月、数年の間を空けることもあったが、パヴェルが現れるたびそれは行われた。
やがて人間達はパヴェルが歌や躍り、音楽といった芸事を好むことに気付き、パヴェルが現れると祭が催されることとなった。
笛や太鼓が鳴らされ、巫女がしゃらんと鈴を鳴らしながら舞を踊る。それを耳にしながら、パヴェルは人の身体であった頃の感覚を思い出し、言いようのない感覚に目を閉じるのだった。
月日が続くうち、祭はパヴェルが居なくても行われるようになった。見物客が落とす金が村を潤すことに人々が気付いたからだ。
パヴェルを模した像が作られ、人々はその周りで楽器を鳴らし、舞を踊る。村は大きく発展していった。
(どうしてこうなっちまったのか)
空の上から村を見下ろし、パヴェルは暗い気持ちを抱いていた。村が大きくなったことで住人達に変化が表れていたからだ。
祭を仕切る祭司が現れ、それに関わるしきたりや序列が出来上がり、それが軋轢や衝突を生んでいる。
こういったことが嫌になりあの手を取った筈なのに、自らが原因でそれを産み出していた。
同時に、結局は人との繋がりを求めてしまっていた事にも気付かされる。平坦だと思っていた心の底に、人に必要とされたいという気持ちがあったから、村人の崇拝を受け入れていたのだ。
(けじめはつけなくちゃならねぇか)
パヴェルは決意を込めエーテルを練る。それに歯止めをかける倫理観や道徳は、パヴェルの内には残っていない。
響く雷鳴に人々が空を見上げると、一面に無数の光が浮かんでいた。そして、次の瞬間流星雨の様に地上に降り注いだ。
「ここも元の世界では無いようですね」
いくつ目かの扉を開いたフリーダが見たのは、一面の大地に無数の穴が穿たれた世界だった。その彼女の頭上を、金色の獣が駆けていく。
獣は空の彼方へ消え、二度と人の前に姿を現すことは無かったという。
●貪欲なる竜
竜になったサイラスは、クリエスター山脈に降り立って鉱脈を掘っていた。竜になった自分用の武具を作ろうと思ったのだ。
通常、強大な力を持つ竜は武具を使う必要はなく、またその剛力に耐える強度を持つ武具は存在しない。
「だから作り甲斐があるんじゃん?」
竜の爪は易々と山を削り、様々な鉱石を堀出してゆく。ある程度溜まるとサイラスは炎を吐き出し、その熱で金属を精製する。
「この身体便利だけど、細かい作業に向かないのが難点だなあ」
ぼやきながら金属が冷めるのを待っていると、飛来した岩がサイラスに当たって砕ける。見ると、ドワーフ達が投石機をこちらに向けていた。
「邪竜め、我々の鉱脈を汚すな!!」
「はあ? ここ俺が先に見付けたんだけど!? あと邪竜じゃないし」
カチンと来たサイラスは投石機を踏み潰し、逃げ出すドワーフ達に炎を吹きかけ黒焦げにする。更に、投石機を運んで来た痕跡を辿って集落を壊滅させた。
「ここいい鉱石が採れるんだけど、五月蝿いのも多いんだよね」
実際、こういった襲撃を受けるのは初めてではなく、滅ぼした集落は数えきれない。
サイラスの事を邪竜として崇める集団が現れた時などは、逆鱗に触れたため周囲の集落まで纏めて焼いた事もあった。
「よし。試作1号が出来たぞ」
サイラスは自身の半分ほどもある剣を抜いて眺める。ここで掘った鉱石に自身の鱗を加えて鍛えた剛性を重視した一振りである。材料のせいか、刀身は赤く光を反射していた。
そこへ、運悪く(?)サイラスの討伐を頼まれたフリーダが現れる。
「ドラゴンスレイヤーは英雄の条件と啓示も言っていましたし、悪竜を倒せば元の世界に戻れるかもしれません」
「どっかで見たことある装備だな。まあいいや。今忙しいから見逃してやるよ」
フリーダでは試し斬りにもならないと考え、翼を羽ばたかせ大型クリーパーでも狩りに行こうとするサイラスだったが、宙に浮かんだところを隠れていた弩弓で撃ち落とされてしまう。更に矢を受けた所に焼けるような痛みが走った。
「うわっ、何だこれ!?」
「ある邪竜を打ち倒すのに使った強酸です。効果は抜群の様ですね」
言いながらフリーダは重力を無視した様な機動で距離を詰め、白金のパラッシュを突き立てる。切先は酸で脆くなった鱗を易々と貫通し、筋肉を裂いて体の奥深くまで到達する。剣を引き抜かれた後の傷は、何故か何本もの剣が刺さった様に複数の穴が開いていた。
「思ってたよりやるじゃないか」
傷口からぼたぼたと血を流しながら、サイラスはフリーダに向き直る。試し斬りどころか、真剣に戦う相手として認めたのだ。
「ならこっちも全霊でお相手しようか」
首の後ろから吹き出した赤黒いエーテルがサイラスの身体を覆い、その巨体を変貌させていく。変化が終わると、巨竜サイズの竜人がフリーダを見下ろしていた。
「まさか、第二形態……!」
フリーダの額を冷汗が流れる。サイラスは赤剣を構えると、エーテルで出来た分身と共にフリーダへそれを振り下ろし――
そこでサイラスの目は覚めた。
●報告までが依頼です
「楽しかったですじゃダメだよなぁ」
報告書を書きながらサイラスがもっと見ていたかったとぼやいている。中々に楽しい夢を見れた様だ。
一方、テテリカとパヴェルは暗い顔をしている。こちらは夢見が悪かったのだろう。
そして、いまだフリーダは眠っていた。もしかしたら、出口が見つからないのかもしれない。
「む、無限ルー……zzz」
「これは……本当に夢なのでしょうか? この手を取れば私も英雄に……?」
英雄を目指す少女、フリーダ=ブロムヴィストは差し出された手を取ろうとし――
『ダメです』
「えっ?」
頭の中に響く啓示に制止された。
『このイベントで取得するのは今回はレ=ギュ違反なのでダメです』
「英雄になれるのにどうして……?」
夢の中だからだろうか、何時もよりはっきり聞こえる声に疑問を返すが、頭に響く声に滔々と諭され(専門用語や知らない単語が多くて難解だったが)、諦めたフリーダは断りを入れようと襤褸の人物へ顔を向けるが、そこには白い空間が広がっているだけだった。
「現れた時と同じで唐突に消えてしまいましたね。一体どちら様だったんでしょう?」
『このイベントはフヨウラ! そちらからさっさと現実世界に帰って、どうぞ』
フリーダは扉(これもいつの間にか現れていた)に手をかける。
「仮にあの人物の手を取った所で本当に英雄になれたかもわかりませんし、それが私の望む英雄だったとも限らないわけです。これはこれで良いのでしょう」
そう自分を納得させ、フリーダは扉を開くのだった。
――ザザッ
●竜への変成
「それ料金要る? 貰った後用事頼まれるとかこき使われるとかしない?」
リザードマンの戦士兼鍛冶師のサイラスは質問を投げる。襤褸の人物は頭を振りそれを否定する。
『全てはお前の意思のままに』
「ふーん。じゃあ貰うよ」
触れた手から冷たいものが流れ込み、サイラスの望みに応え身体を創り換えてゆく。
そしてサイラスは巨大な赤竜となっていた。
「姿は悪くないな」
サイラスは満足げに身体を見回すと、その巨体を覆うほど翼を広げる。ほんの数度羽ばたくだけで白い空間を飛び出し、眼下にロスガリア大陸を見下ろしていた。
「これだけ飛べるなら何処にでも行けそうね。次は腕試ししてみるかなー」
サウゼル辺りに行けば大型クリーパーを相手出来るだろうか。そう考え、サイラスは南へ向かって翼を羽ばたかせた。
●大樹海の魔獣
かってテテリカと呼ばれていたゴブリンだった存在は、大樹海を闊歩していた。
その姿はジャガーの様であるが、アイシャドーを塗ったような紫の瞼と、額から突き出た一本の角がそれがただの獣でないことを表している。
「――!」
魔獣となったテテリカがピクリと耳を動かして立ち止まる。顔を向けた茂みの先に、ヒューマンの女が歩いていた。狩人らしく弓を持った女は辺りを警戒しながら歩いているが、こちらには気付いていない。テテリカは姿勢を低くしそろり、そろり、と距離を詰めていく。
やがて獲物を見つけた女が弓を引き矢を放とうとした瞬間を狙い、テテリカは後ろから襲いかかって右腕を噛み千切る。
女は悲鳴をあげつつも逃れようと走り出す。テテリカは舌で口に付いた血を舐め取り、女を追いかけ襲いかかりたい衝動をグッと堪えた。
(もう弓は引けない。じっくり楽しもう)
テテリカはエーテルの矢を放って女の足を撃ち抜き、這いずって逃れようとする女へわざと足音を立てて近付く。
女はテテリカの気配に焦って足掻くが、片手片足では逃れられない。振り返った顔が恐怖に歪んでいるのを見て、テテリカは口を歪めた。
「来るなっ!」
女が左手に持った短剣で切りかかってくる。だが、苦し紛れの攻撃をテテリカは軽々と避け、そのまま押し倒して喉元に牙を立てる。
ゴキリ、と音を立て頸骨が砕け、女の身体がビクリと震えたあと脱力する。
(もう殺してしまったか。まだ加減が身に付いていないな)
死体を見下ろし残念がるテテリカは、背後に迫る気配に気付かず、飛来した矢を肩に受ける。振り返ると怒りに涙を浮かべた少年が次の矢を引いていた。
「よくも姉ちゃんを!」
(兄弟がいたのか)
テテリカは放たれた矢を避けると少年へ飛びかかり、姉と同じように牙を立てようとしてふと思い止まる。
(……こいつは止めておくか)
テテリカは少年を解放すると、樹海の中へ消えて行った。
●黄金の獣
麒麟のハーフビースト、パヴェル・A・サムルガチェフは無意識にその手を取っていた。
世界に感じる虚しさを忘れたい。そう感じていたパヴェルにとって、襤褸の人物の誘いは抗えないものだった。
そして願うは――
(人ではない姿を……!)
それは逃避なのかもしれない。パヴェル・A・サムルガチェフとして生きる世界が虚しいのなら、それを捨ててやり直したい。
そんな想いが形を取り、パヴェルは人の姿を捨て、四足の獣に変わってゆく。
全身を黄金の鱗が被い、鼻面が突き出て口は鰐の様に大きく開く。全体の形は鹿や馬に似ており、パヴェルの名残として光の加減で青く見える灰色の鬣と、蒼く輝く角を持っていた。
(……!?)
肉体の変化と共に、内面にも影響が現れる。パヴェルが経験した出来事や人物の記憶が色褪せ、彼にとって意味のないモノへと変質してゆく。
青髪の美丈夫への友情は色をなくし、屈強な巨漢への敬意も喪われる。小柄な小鬼へ抱いていた望みも、今となってはどうでもいいものだった。
忘れてしまった訳ではない。記憶は残っている。ただ、大切にしていた記憶も感情も、パヴェルの中で価値を喪ってゆく。
(……そうか。心が満ちていなければ、虚しさを覚えることもないんだな)
心の平衡を得て、パヴェルの変化は完了した。
●迷い道
「ここは一体?」
フリーダは見たことのない通路の中で首を捻っていた。床も壁も驚くほど平らで、壁には等間隔に扉が付いている。元の世界に戻る扉を潜ったら、何故かここに立っていたのだ。
「啓示も『裏口!』と響いたきり降りてきませんし、ここは何処なのでしょうか……おや?」
フリーダの鋭い嗅覚が煙の匂いを嗅ぎ取る。それは扉のひとつから漏れて来ているようだ。
「火事なら誰かに知らせないといけませんね」
そう言ってフリーダは扉に手をかけた。
●燃える集落
テテリカは人間の集落を襲っていた。闇に紛れ住居に忍び寄り、住人を悲鳴も上げる暇も与えず屠ってゆく。
やがて住人の半分以上を虐殺したテテリカは、わざと姿を現して逃げ惑う住人を狩る遊びを始めた。逃げる住人の先に回り込んでその反応を観察したり、子を逃がした親の前にその子供の骸を咥えて現れる。
「この……悪魔め!!」
その慟哭すら心地よい。倫理観を失ったテテリカは、手に入れた力を存分に振るい、他者の命や尊厳を思うままに蹂躙する強者の特権に耽溺していた。
ザンッ!
それ故に、背後に迫った気配に気付けなかった。テテリカは不意を討たれ尾を切り落とされてしまう。
『グルアァァー!?』
「ここは引き受けます。逃げて下さい」
扉の先が樹海の集落だったことに戸惑っていたフリーダだったが、魔獣に襲われる住人を見て思わず剣を振るっていた。そして逃げるよう住人に呼び掛けるが、放心した住人が動かないのを見て、テテリカに対峙し白金に輝く広刃の直剣と円盾を構える。
「私が相手です」
『グアァーッ!』
シーザーロアで執着を与えたフリーダはパラッシュで斬りかかるが、回避に集中しているテテリカには中々届かない。そしてテテリカの反撃も、白金の盾に止められ有効打とはならない。
そのまま20秒ほど切り結んでいたが、執着の切れた隙に離脱したテテリカは樹海の奥へ走り去って行く。
フリーダもそれを追うが、姿を見失ない、血臭が川で途切れたため諦める。
「中々に手強い魔獣でした。逃げてくれなかったら危なかったかもしれません」
一方、闇に潜んでいたテテリカも胸を撫で下ろす様な気持ちでいた。
(まさか集落にあれ程の者が居たとは……。あそこからは距離を取るべきだな)
そう胸中で呟き、樹海の奥へ消えていった。
●天の獣
パヴェルは社の上に立ち、自分を崇める人々を見下ろしていた。
気紛れに目についた魔獣を追い払ったところ、それに苦しめられていた村の人間に天の遣いとして崇められることになったのだ。
(そんな大層なものでも無いんだが……)
何故かこの場を離れられず、パヴェルはここに居着くことにした。
天を駆ける事の出来るパヴェルは気ままに人々の前に現し、それを見た人間達は思い付く限りの歓待を行う。それは数日おきだったり数ヶ月、数年の間を空けることもあったが、パヴェルが現れるたびそれは行われた。
やがて人間達はパヴェルが歌や躍り、音楽といった芸事を好むことに気付き、パヴェルが現れると祭が催されることとなった。
笛や太鼓が鳴らされ、巫女がしゃらんと鈴を鳴らしながら舞を踊る。それを耳にしながら、パヴェルは人の身体であった頃の感覚を思い出し、言いようのない感覚に目を閉じるのだった。
月日が続くうち、祭はパヴェルが居なくても行われるようになった。見物客が落とす金が村を潤すことに人々が気付いたからだ。
パヴェルを模した像が作られ、人々はその周りで楽器を鳴らし、舞を踊る。村は大きく発展していった。
(どうしてこうなっちまったのか)
空の上から村を見下ろし、パヴェルは暗い気持ちを抱いていた。村が大きくなったことで住人達に変化が表れていたからだ。
祭を仕切る祭司が現れ、それに関わるしきたりや序列が出来上がり、それが軋轢や衝突を生んでいる。
こういったことが嫌になりあの手を取った筈なのに、自らが原因でそれを産み出していた。
同時に、結局は人との繋がりを求めてしまっていた事にも気付かされる。平坦だと思っていた心の底に、人に必要とされたいという気持ちがあったから、村人の崇拝を受け入れていたのだ。
(けじめはつけなくちゃならねぇか)
パヴェルは決意を込めエーテルを練る。それに歯止めをかける倫理観や道徳は、パヴェルの内には残っていない。
響く雷鳴に人々が空を見上げると、一面に無数の光が浮かんでいた。そして、次の瞬間流星雨の様に地上に降り注いだ。
「ここも元の世界では無いようですね」
いくつ目かの扉を開いたフリーダが見たのは、一面の大地に無数の穴が穿たれた世界だった。その彼女の頭上を、金色の獣が駆けていく。
獣は空の彼方へ消え、二度と人の前に姿を現すことは無かったという。
●貪欲なる竜
竜になったサイラスは、クリエスター山脈に降り立って鉱脈を掘っていた。竜になった自分用の武具を作ろうと思ったのだ。
通常、強大な力を持つ竜は武具を使う必要はなく、またその剛力に耐える強度を持つ武具は存在しない。
「だから作り甲斐があるんじゃん?」
竜の爪は易々と山を削り、様々な鉱石を堀出してゆく。ある程度溜まるとサイラスは炎を吐き出し、その熱で金属を精製する。
「この身体便利だけど、細かい作業に向かないのが難点だなあ」
ぼやきながら金属が冷めるのを待っていると、飛来した岩がサイラスに当たって砕ける。見ると、ドワーフ達が投石機をこちらに向けていた。
「邪竜め、我々の鉱脈を汚すな!!」
「はあ? ここ俺が先に見付けたんだけど!? あと邪竜じゃないし」
カチンと来たサイラスは投石機を踏み潰し、逃げ出すドワーフ達に炎を吹きかけ黒焦げにする。更に、投石機を運んで来た痕跡を辿って集落を壊滅させた。
「ここいい鉱石が採れるんだけど、五月蝿いのも多いんだよね」
実際、こういった襲撃を受けるのは初めてではなく、滅ぼした集落は数えきれない。
サイラスの事を邪竜として崇める集団が現れた時などは、逆鱗に触れたため周囲の集落まで纏めて焼いた事もあった。
「よし。試作1号が出来たぞ」
サイラスは自身の半分ほどもある剣を抜いて眺める。ここで掘った鉱石に自身の鱗を加えて鍛えた剛性を重視した一振りである。材料のせいか、刀身は赤く光を反射していた。
そこへ、運悪く(?)サイラスの討伐を頼まれたフリーダが現れる。
「ドラゴンスレイヤーは英雄の条件と啓示も言っていましたし、悪竜を倒せば元の世界に戻れるかもしれません」
「どっかで見たことある装備だな。まあいいや。今忙しいから見逃してやるよ」
フリーダでは試し斬りにもならないと考え、翼を羽ばたかせ大型クリーパーでも狩りに行こうとするサイラスだったが、宙に浮かんだところを隠れていた弩弓で撃ち落とされてしまう。更に矢を受けた所に焼けるような痛みが走った。
「うわっ、何だこれ!?」
「ある邪竜を打ち倒すのに使った強酸です。効果は抜群の様ですね」
言いながらフリーダは重力を無視した様な機動で距離を詰め、白金のパラッシュを突き立てる。切先は酸で脆くなった鱗を易々と貫通し、筋肉を裂いて体の奥深くまで到達する。剣を引き抜かれた後の傷は、何故か何本もの剣が刺さった様に複数の穴が開いていた。
「思ってたよりやるじゃないか」
傷口からぼたぼたと血を流しながら、サイラスはフリーダに向き直る。試し斬りどころか、真剣に戦う相手として認めたのだ。
「ならこっちも全霊でお相手しようか」
首の後ろから吹き出した赤黒いエーテルがサイラスの身体を覆い、その巨体を変貌させていく。変化が終わると、巨竜サイズの竜人がフリーダを見下ろしていた。
「まさか、第二形態……!」
フリーダの額を冷汗が流れる。サイラスは赤剣を構えると、エーテルで出来た分身と共にフリーダへそれを振り下ろし――
そこでサイラスの目は覚めた。
●報告までが依頼です
「楽しかったですじゃダメだよなぁ」
報告書を書きながらサイラスがもっと見ていたかったとぼやいている。中々に楽しい夢を見れた様だ。
一方、テテリカとパヴェルは暗い顔をしている。こちらは夢見が悪かったのだろう。
そして、いまだフリーダは眠っていた。もしかしたら、出口が見つからないのかもしれない。
「む、無限ルー……zzz」
マスターコメント
お待たせしました。
字数に余裕があったのだいぶアドリブを入れさせて頂いたのですが、どんどん膨らんで想定より千字くらい多くなってしまいました(汗)
ここで見た夢はいかがだったでしょうか。IFとして楽しんでいただければ幸いです。
ショートシナリオ普通 報酬:標準4 / 4〜6人
2022年01月19日 01時24分59秒 公開
成功
相談掲示板
No.1
サイラスだ、よろしくなー とりまどっちが楽しいかねぇ
テテリカだ。よろしく。 俺は欲につられて安易に堕落する。
No.3
とりあえず質問投げとこ Q,これ手を取って望みを得た後何か要求されたりとかある? 多分手を取るか否かだけだし無いとは思うけど、元々指先にスカウトされる依頼だったなら働かされるとかあるのかなと
A.現実では無いぜ。 (そういう事を望むプレイングを書けば)夢の中で襤褸の人物が何か言ってくる可能性はあるけど。
これで成立ってことになるのかねぇ。 寝たあと見た夢の報告するだけ、だよな? 一応聞いてみようか。 【質問】外見の変質を願った(プレイングに書いた)場合、夢の中で反映されることはあるのかどうか。
皆成立ありがとなー。 A.夢なんだから何でもあり得るんじゃないか? (他人の権利侵害や公序良俗に反するなど問題のあるプレイングは却下されるか直接的な描写を避けた描写になりますが、そうでない変質なら大丈夫です)
No.7
回答ありがとう なら闇堕ちいってみようか