【聖祭】どこかの神社で初日の出

狐野径

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シナリオID:1789

オープニング

●フィルエス大森林
 ウル・ヘルバはフィルエス大森林にある里にいた。
 そここは小さいころに面倒見てくれていた人たちがおり、そこに部屋が残っているという状況。里帰りに近い。

 さて、里人やグレイオンスとの話で、他の地域の文化の話が出た。
 それから、ウルは冒険者ギルドで聞いていた「不思議なキャンドル」について注意喚起しておく。実害はないらしいけれども、奇妙な事件であるのだから。
 その話をした際、グレイオンスが考えるようなしぐさをしたのがウルは気になった。
 聞いたけど忘れたのか、忘れた中に記憶があるのか……思い出したら聞けばいいと思って、寝ることにした。
 
 子どものころと変わらない部屋。ベッドがあって、木の枝などウルが集めていたものが転がっている。家具はともかく、捨ててもいいものもある気がした。
 最近また来ているのだから、片付けようと少し考えた。
 とはいえ、眠れるときに眠って、次に備えないといけない。

 枕元にあったロウソクを付けた。
 反射的に火をつけて眺めているけど、なんでここにロウソクがあるのだろうかと疑問も生じる。
 一方で、ゆらゆらと揺れるろうそくの炎に、ほっと気持ちが安らぐ。
 しばらくして、ロウソクがあることが気になってきた。
 そのロウソクの側面を見た。
「……チョウの模様……待て、これ……あー、とりあえず、ひっくりかえしたらダメだ……火を消さないと……」
 ウルの思考は支離滅裂になってくる。
 それでも、どうにかしないといけないと動こうとした。
 ウルはベッドから降り、そして、力尽きて眠りに落ちた。

●どこかの森、何の夢?
 ――なんで、こんな夢を見ているのか?
 誰も、わからない。夢なのか、それとも――?

 海に囲まれた小さな島。
 海に面したところに神社があった。
 鳥居の陸上だけでなく、一つは海の中にある。
 社殿は、海辺と小高い丘にある。
 島に住むのは人間と鹿、オオカミも住んでいるという話。
 鹿の数が増えないから、たぶん、オオカミいる。
 リスを見たという話もあるから、意外と、色々動物いるかもしれない。

 その島は、近くの大な島と橋でつながっている。観光客も訪れやすかった。
 訪れやすいため、神社には年末年始を過ごそうとする人がやってくる。
 二年参りしようとか、初日の出を拝みに。

 大晦日、参拝者を迎えるため、神社の人たちは大いに忙しい。
 用意していた縁起物を定位置に置いたり、外にいる巫女やアルバイト、神社関係者のために石油ストーブを準備する。
 宮司はグレイオンス。
 毎年の恒例行事のために、働く人への差し入れや賄のための手配も忘れない。
 とはいえ、大変高齢なため、本人も活発に動くわけでもないし、むしろ一緒に働く者の方が動かれると気を遣う。
 ただし、気を使われるとグレイオンスが不機嫌そうになる。実際、聞いていないので、本心は知らない。

 今回、新年を迎える神社に、テレビの取材が入る。
 3日ほどカメラを回し、神社の人たちの働きや参拝者にインタビューをするというドキュメント番組だという。
 テレビカメラや音声のマイクなどを見ると、神社の人はワクワクしていた。
 いつもとちょっと違う年末年始ということで。

 ドキュメント番組のディレクターであるウル・ヘルバは丁寧にグレイオンスに頭を下げた。
「年末年始よろしくお願いします」
「年末年始は特に忙しいから、面白くもないかもしれないが。好きに取材してくれて構わない」
 グレイオンスに言われ、ウルは首を横に振る。
「むしろ、その忙しいのが意味があるんですよ。一応、打ち合わせ通り動きますが、もし、邪魔なことがあれば、おっしゃってください」
 コクリとグレイオンスはうなずく。
 ウルの耳がピコッと動いた。その耳をグレイオンスは見る。
 しばらくすると、廊下を誰かが通って行った。その音を拾ったのだろう、あの耳は、とグレイオンスは感心していた。

 ウルは打ち合わせも終わったということで、雑談を振った。
「年末年始は、雲もなく快晴の予報ですね」
「寒くなるのは困る。寒いと初もうではやめよう、となるからな」
「確かに。晴れればいいというわけではないですよね」
「うむ。雨が降らないのはもちろんだが、気温は重要だ」
 など、しばらく雑談をしていた。

 そして、深夜。
 どこかで除夜の鐘が響く。
 島には人があふれてくる。特に、主たる参詣先である、海の社殿近くには。

 出店が並ぶ地域では煌々と明かりがつき、人々が活気づく。
 お面を売る店、七味唐辛子や小さな木札を売る店、お好み焼きやらたこ焼きなど食べ物を売る店などが軒を連ねる。
 社殿の前にはお参りの人が並ぶ。
 それが終わると、初日の出をいい位置で見ようと場所取りにいく人もいる。海にある鳥居の先に見えるというのだ。
 深夜から早朝だから、静かではある。その中に、ざわつきやにぎやかさがある。
 警備の人が目を光らせるけれども、どこか穏やかだ。神社の中ということもあるのだろうか。

解説

●目的・目標  夢落ちシナリオ。  大晦日の夜から初日の出くらいを過ごす。  あれ、これ、未来?  ※不思議なキャンドルを何かしらで見て、たまたま同じ場所の夢見ているという状況です。  夢なのにシナリオ報酬があるのは、そのことを冒険者ギルドに報告する……という、見えない部分の事情です。 ●どういうことができるの?  参拝客として来る。  出店で何か販売する。  神社の人間として働いている。  テレビのクルーの一人として、神社の取材をする。  など。  神社にいるということです。 ●キャラクターの外見  日本ぽいけれども、種族はこうあるべきはありません。  そのため、宮司は耳とがっているし、インタビュアーはキツネ耳や尻尾が動いています。 ●神社の様子  海に面しているところです。広島・厳島神社が近いかもしれませんし、神奈川・江の島でも構いません。仏モンサンミシェルでも。  陸上の鳥居は橋を渡ってきて、神社の境内に向かうところにあります。  海の鳥居は神社の社殿を臨む別の角度にあります。  初もうでの主たる会場は、海近くの社殿です。丘の上の社殿に行く人は通かもしれません。  初日の出はどこからも見られそうですが、海の鳥居と一緒に見られるところを探す傾向が強いです。  出店は神社周囲にたくさん軒を連ねています。  なお、初もうでで並ぶところと出店は別の地区です。 ●夢の中のNPC  絡みに行く行かないは自由なので、居場所など。  ・グレイオンス 神社の宮司、その神社で一番偉い人。  よく働く人だけれども、眠りながら祝詞上げているという噂がある。  年明けは特に大変だけれども、働く人には栄養剤の差し入れや賄は準備するよう指示を出す。毎年恒例の栄養ドリンクは、好評というより、ただの恒例。  神社の建物にいて、あまり動かない。  ・ウル・ヘルバ 日本の年明けの取材に来たテレビ局関係者。  とりあえず、インタビューを試みる。 「今年一年の抱負は何ですか?」  普段不良口調だけど、一応、丁寧語をしゃべる。  神社内をうろついている。

マスターより

 こんにちは、狐野径です。  公開日どうしようか悩んだ結果、OPに合わせて、二年参りができる時間帯にしてみました。その上、夢落ちになりました。  新しい年の幕開けです。  よろしくお願いします。

リプレイ

●深夜に向けて 神職たち
 参拝者を迎える準備が整う神社。
 夕闇と静寂に包まれる。それは、静かな冷気は厳かさと、嵐の前の静けでもあった。
 除夜の鐘がどこからか聞こえると、それは変化を見せる。
 集まる人々。
 その人たちの呼び込む屋台の匂い。
 神職たちは正月三が日が始まるカウントダウンに入るのだった。

 イズレンディル・パラリムは羽螺吏務神社の禰宜であるが、年末年始は縁のある島の神社に手伝いに来る。恒例行事であり、また変わらず来られることは平穏無事だったことの証でもある。
「お手伝いにまいりました。変わらず盛況ですね」
 イズレンディルはグレイオンスに挨拶をし、来る前に見た人の状況を告げる。
「父からもよろしく、お伝えするようにと。本年のよろしくお願します」
「こちらこそ、手伝いをよこしてもらって感謝する」
 忙しくなる前に挨拶を終え、今回の手順などを話す。
 大きく変わるところはないとしても状況に応じて細かいところはまた別。
 確認するからこそ、互いに穏やかに働ける。
 最終的には仮眠どころか休憩も取れないほどの状況に身を置くことになる。
 イズレンディルは主に社殿付近で参拝客の案内や誘導に当たる。
 人手の状況によっては、神事を手伝う。どうなるかは、神のみぞ知る。

 水瀬・希とレイラ=ルナフィニスはともに、巫女のアルバイトをする。
「ウチ、神職業初めてばい♪」
「わたしもですわ。まずはこの装束を着るのですね」
 二人は着方の指南紙を見つつ、着替えを完了する。
 気付けば、アルバイトの着替え用の部屋は人でいっぱいになっていた。
 サラが嬉しそうに装束一式受け取っているのが見えた。
「えっと、ね。巫女さん? っていうの、やってみたかった、の」
 ただ、どう着るかよくわからない。着方が書いてあるという紙を探すが見当たらない。
 レイラがサラに「手伝いましょうか?」と声をかける。
 サラは「ありがとう」という。互いに名乗り、装束を着る準備を始める。
 希も紙を眺めながら協力する。
「自分で着るのと着せるのは感覚が違うばい」
「そうですね。二人すればできます」
「それに、サラさんの協力も必要と」
「はい」
 希とレイラに言われ、サラは緊張する。
 難しいかと思っていたけれども、サラは言われたように着たり、帯を縛ってもらう間、腕を上げたりするだけで、アッという間に着終わっていた。
 布のシャリッとした冷たさが背筋を伸ばすが、徐々に肌にフィットしていった。
 サラは鏡に映る自分を見て、嬉しそうに左右や後ろを見た。
 その様子を見て希も腕を振り、足を動かす。
「にしても、結構動きやすかー装束やね。これ、走ったり戦うのもできるげな」
「動きやすいですけれども……ところで、巫女とは? 神職の一種ですの? この装束は」
 レイラは希に同意しつつ、疑問がわいていた。
 それに希は「それでよかと」と答えた後、「装束については聞くと」と首をひねる。
 そのように会話していると、着替え終わったアルバイトはこっちに来るようにと声がかかる。
「では、まいりましょう。サラさんも一緒に行きましょうか?」
 レイラに問われ、サラは「うん」と答えた。
 順番に持ち場を教えてもらい移動していく。
「仕事は何を、すればいい、の?」
 サラは御籤がある社殿の一角に案内された。
 一方の希とレイラはお札や破魔矢のところに向かう。
 これから、非常に長い、状況にはよってはあっという間の時間が始まるのだった。

 御邑 奈月と御邑 都は巫女のアルバイトに人手が足りないということで、急遽お鉢が回ってきた。
「おー、巫女になってほしいのぉー? わかったぁ!」
 神社の人が困っているのだからと都は笑顔で快諾し、奈月は不安半分興味半分でうなずく。二人でいるのだから、連携すれば何でも乗り越えられるだろう。
 早速、アルバイト用着替え室となっている部屋に案内される。
 そこでは赤い袴に着替えるが、慣れている神社の人に手伝ってくれる。
 普段着ない装束は新鮮だ。
 ひんやりした布に驚くけれども、徐々にそれは肌になじむ。
 帯で縛り、そして、完成する。
 都は胸に手を当て「キツイー」とうめく。
 着付けてくれた人は「そのくらいでいいんですよ」という。着崩れが起きるからだ。
 都の声を聞き、奈月はふと視線を落とした。すとんと視線が地面を見せる。
(……成長しているのがうらやましい……です)
「どうしたの、ツキちゃん?」
 心配そうに都が見る。
「そそ、そうですね、きついですね」
 奈月は動揺して答える。
「着物ってやっぱり違うよね。さ、仕事しよう」

 ハリーヌ・ヨツユビは屋台の連なるところの真ん中あたりにいた。
 客が座って食べられるようなスペースにはポットを置いて、温かいお茶を飲めるようにしておいた。
 温かい茶で、少しでも参拝を楽しんでもらいたいという表れだ。
 除夜の鐘が鳴るころはまだここに人はいない。
 それが半ばを過ぎると時間や人の動きを見て、下準備から、客を招く準備に変える。
「さあいらっしゃいいらっしゃい! アツアツのたこ焼きはいかがでございますか?」
 鉄板の上は暖かく、クルクル丸める手は熱いくらいだ。
 客とのやり取りをする際は、海風が吹き寒さが身に染みる。
「これからお参りでございますか? 来年もよい一年になるとよいでございますね」
 除夜の鐘が終わるころには、境内は人がいっぱいになる。
 屋台から見る人々の顔は、寒さのためか皆キリリとしている。それでも初詣が楽しみであるためか、幸せそうな穏やかな表情だ。
 人がいると稼ぎ時。参拝後の方が人は来るだろう。
 ここに店があるということを覚えてもらうように「熱々のたこ焼き」と声をかけた。

 フリューリングスルフト=ティエラは深夜の神社にやってきた。
 家にいれば双子のフリューに絡まれるし、一緒に初もうでに行こうとなる。断ったところでついてくるだろうし、騒がしいから嫌だった。
 結果、隙を突き、出かけた。
 深夜に向けてテレビを見つつ、携帯電話片手にあれやこれやしていたから、隙は多かった。
 さて、出てきたはいいけれどもティエラは人込みも苦手。
「あいつと来るよりはよい、か」
 人の波に流されるように移動していく。
 それでも、人込みは嫌であっても、静かに同じ方向に進む一団にまぎれると、穏やかに感じる。余計なことを考えないからだろうか。

●年が変わる
 だわは除夜の鐘の音や人々が初詣でに向かうのを見て、興味を惹かれた。
 橋を渡るとそこには大きな鳥居が見える。
 さらに、海の方にも見えた。
「東方様式の社……独特な趣があるな。せっかくだから初詣でというのをしていくか」
 特に目的がない旅。
 興味が引かれたものは縁。
 鳥居をくぐり、人の波に乗る。
 歩いていたのが途中で止まり、行列の最後尾に着く。それでも、すぐにだわは最後尾ではなくなる。
 社殿が見えるので、行列の意味を解した。
「東方風の神前礼儀はどんなだったか……」
 そのため、どういう手順か参拝している人の動作を見ようと伸びた。
「どうかしましたか?」
 神職の男――イズレンディルに声を掛けられる。
「……ああ……ええと。参拝のやり方について教えてほしい」
 素直に聞くと「基本的なのはこういう感じです」としぐさを教えてくれる。
 だわはそれを追うように手を動かした。
「なるほど……助かった……」
「いえ。何かあればお声をおかけください」
 だわはうなずく。
 順番が来た。社殿を見ると、祈祷を頼んだ人がいるのか、声がしていた。
 普段あまり見ることのない景色に興味も惹かれる。
 まずは参拝をすべきということで、賽銭を入れ、二礼二拍手一礼。
 すがすがしい気持ちになったあと、境内の散策をした。

 レイラと希が持ち場について間もないころは何もなかった。
 まずは各種アイテムを覚えることや場所の把握などに努める。
「ハマヤ、オフダ、オマモリ、オミジクジ……どれも聞いたことありませんわ。まじないや結界につかうのかしら……? この世界は呪術に詳しい方が多いのですね!」
 レイラは様々理解したけれども、術に詳しいとか術があるとかということに対する突っ込みをする人員が周りにいなかった。だから、微妙な納得はそのまま定着する。
 一方で、希はそわそわしていた。
「う、売り場で……すっと、立っとーがばり辛かね……。これ……いつまで?」
 どこか生気のない顔で問う。
 レイラは「朝までですわ」と答える。
 希は絶望した顔になる。
「え、深夜もずっと? なんの修行やか、これ? ウチ、動きたい……」
「アルバイトですわ! 希さん、気をしっかり!」
 レイラは励ます。
 持ち場を離れるのは休憩の時。
 それ以外動くとなると、率先して物資の補給に動くしかなかった。
 ただ、午前零時を超えると、忙しさはやってきた。

 都と奈月の最初の仕事は、段ボールに入ったお守りや破魔矢を運ぶことだった。
 それを所定に位置に入れていく。結構な種類があることがわかる。
「何があるか覚えるのにはちょうどいい……ですね」
 奈月はお守りの種類を見て、色々あると感心する。
「そうだね。この辺りは、可愛いタイプだよ」
 都はお守りの見た目の違いに目が向いた。
 棚に並べ終わったころには参拝者が増えている。
 その対応に当たることになる。
 奈月は人と接することは苦手ではある。しかし、姉がいるだけでなく、今回は神職の手伝いとしてその装束もまとっている。身にまとうことで、頑張れそうな気がしていた。
 それでも最初のころは奈月も緊張し対応に手間取る。それを都がフォローにやりすごす。
 都が忘れた金額については奈月が声をかける。
 連携して対応しているにつれて、奈月も慣れてくる。姉の様子で学ぶことはできるし、安心した状態ですぐに実践できるのは心強かった。
 屋外でもあるため寒い。次々とくる参拝者に休む間もなく、動く。
 体は自然と温まる。それと、人々とのやり取りは心も満たした。

 ジル=クィネルは都と、シモン=プレーディは奈月と過ごす予定だった。
 しかし、都も奈月も巫女のアルバイトに入るという連絡がある。
 そうなるとアルバイトが終わるまですることがないが、せっかくならば彼女たちの姿を見たいものだった。
 そのような中「おー! ジルちー。ジルちー♪」と都の元気な声が響いた。
「……っお、ヤコ」
「……!?」
 ジルとシモンはそれぞれの恋人である都と奈月の姿を見て驚く。
 奈月は恋人の出現に驚き、都の陰に隠れた。
「どうかな」
 都が袖を広げ動いたため、奈月は隠れるところを失った。
 覚悟を決めて「ど、どうです……か? この姿……」と問う。
「似合ってる」
「似合ってますよ」
 ジルとシモンは答える。
 都は当然とばかりに胸を張り、奈月は照れ笑いをする。
「あと少し時間あるんだよね。待っててくれる?」
 都が問うと、ジルは「おう」と答える。
 一方で奈月は恐る恐るシモンを見る。
「あのあたりで待っていますね」
「はい」
 シモンの言葉に、奈月の胸は躍った。
 都と奈月は仕事に戻り、ジルとシモンもそれぞれ時間をつぶすのだった。

 だわは境内でサラを見つける。
「ん……サラ?」
「うん、そ、だよ」
 サラは嬉しそうに胸を張る。
「……その服装、よく似合っている」
 だわに褒められるとサラは照れる。
 だわはサラがいるが、おみくじの場所だと気づいた。
「おみくじか、たまにはよいかもな。一つ頼む」
「おみくじは、任せて」
「では、どうすればいいかな?」
 だわはサラの指示に従い、大きな筒を振る。そこから出てきた棒に記載の番号を見せた。
「わかった、よ。んと……これ、だよ」
 番号札と同じ棚にある御籤を渡した。
 サラは御籤の説明をとつとつ始める。
「大吉はね、一番いいんだ、って。吉は、とってもいいんだ、よ。中吉、小吉、は、響きがかわいい、ね。末吉は、残りにものには服がある、だよ。凶は、そんなに入ってない、のに、引いたことは悪いこと、全部、おみくじが引き受けてくれた証、だね。これから、いいこと、たくさんある、よ。どのおみくじも、書かれているお歌が、綺麗だ、ね。結果は、何だった、かな」
 だわはうなずき、中を見た。
「……ふむ……なるほど……。気に留めておこう」
 サラが気になる様子で見ているが、よくても悪くても胸に留めておくのが一番いいとだわは考える。
「あれに結ぶとよいのか」
「うん、結んでいいよ」
「わかった。助かった」
「うん。今年一年、いいこと、たくさん、あります、よう、に」
「そちらも、よい一年になるといいな」
 だわはサラと別れて御籤掛けに向かった。
 どこに結ぶか悩み、結びやすそうなところを選んだ。
 社殿を離れていくと、屋台が見える。
 食べ物もあるため、匂いが漂ってくる。
「……さて、腹ごしらえと行くか」
 だわは見て回る。
 たこ焼きを買い、熱々をほおばる。
 寒くなっていた指先も、口の中も、胃袋も温まった。
 この後どうしようかと東の空を見た。

 イズレンディルは声を張る。
「横には十人並んでください。ゆっくり進みましょう」
 声を掛けても気づかない参拝客もいるため、近づいて個別にお願いをしていく。
 ティエラはそんな神社関係者を見つつ、参拝に来たという空気を味わう。
 拝殿が近づいてくると、周りの人々が「何をお願いする?」というような会話をし始める。聞こえてくる内容は「健康」とか「世界平和」とかだ。
 ティエラは自分は何を願うのか考える。
 健康、だろうか?
 あっという間に順番が来た。
 賽銭を入れ、お辞儀し、手を合わせた。
 パンと手をはたいた瞬間、空気が変わったような気がした。
 気のせいかもしれないし、場の雰囲気かと思う。
 それはそれで、初詣の醍醐味だと考えることにした。
 参拝後、おみくじでも引いておこうかと考える。
 きょろきょろしているティエラと、イズレンディルがすかさず声をかけた。
「何かお探しですか?」
 ティエラはにらみつけるけれども、縁だと考え直し、言葉を返す。
「くじ、みじくの場所はどこだ?」
「あちらに何か所かあります。内容は同じですので、奥の方が空いてはいます」
「……ああ。あと、……人が少なくて日の出見れるところはあるか?」
「そうですね……あちこち人がおりますから」
 と言いながら、山の社殿の方は人が少ないという。
「登ることになりますから、やはり行く人は少ないです」
 ティエラは頭を下げてから立ち去る。
 イズレンディルはティエラが御籤のテントがある方に向かったのを見てから、そのまま、他の参拝者に声をかける。

 除夜の鐘が鳴り終わった後から一気に忙しさがやってきた。
 希はいくらか気がまぎれる状況にはなっていた。それでも、体を動かしたいという欲求は高まる。
 それでも希は笑顔で授受を行っていた。
 レイラは集中し、お札の授受などを行っていく。集中を乱せば、計算間違いなど行いそうだ。
 余計なことを考える余裕などない。
 目まぐるしく対応に追われていると、空が白んでくる。
 そのため、参拝者も足を止め、そちらの方を見たり、歓声を上げる。
 希が突然、叫んだ!
「アルバイトだけでおわっとーと!」
 確かに、巫女のアルバイトでこのままだと終わる。アルバイトに来たのだから、それはそれで当たり前かもしれない。
「このままだったら何もせんでおわるけん。このまま日の出ばこ……」
「え? これから? 日の出を見に? おそらくはカップルがたくさん……」
「何をいっとーと! レイラも行くと!」
「え? 仕方がありませんわね、ご一緒しますわ」
 レイラは楽しそうに答えた。
 周りの人たちがどうであれ、日の出を眺めるのは気持ちいものだろうから。
 休憩時間を告げられると、駆け出すのだった。

●初日の出へ
 ティエラは御籤を引いて眉を寄せた後、それを結びつけた。
 着こんでいるから体は暖かいけれども手先は冷えているため、屋台を覗く。
「……甘酒を一つ」
 紙コップを受け取るとじわりと温かみが伝わる。
 それを飲むと胃袋から温まる。
 そんな時、テレビのクルーが来るのが見えた。
 嫌だなと思っていたけれども、「取材よいですか?」と声を掛けられてしまう。
 キツネの耳と尻尾のウル・ヘルバを見て、ティエラは「何?」とつっけんどんに言う。
 それでもウルは営業スマイルを崩さず、ティエラに取材の内容について語る。
 ティエラは参拝のおりに願ったことも脳裏に浮かべつつ答える。
「あぁ……抱負だと? 健康に過ごせれば一番じゃねぇかな」
「ありがとうございます。もし使う場合は……」
 事務的なやり取りの後、ティエラは解放された。
 飲むには適温の甘酒の残りを一気に飲む。ほっと一息ついた後、カップを捨て、さっそく初日の出ポイントに向かうことにした。
 山頂の社殿に向かうルートは坂道や階段が道であるため、いくら参拝用に明かりがあっても人は減る。
 到着した社殿の前の人影はまばらだった。
 木々がある先に海が見える。
 しばらくぼんやりと待つ。
 徐々に上がる太陽に、顔の筋肉が緩んだ。
 まだ遠いとはいえ、ぬくもりを感じるからかもしれない。
 海に反射する光が海の鳥居に向かう。
「……きれいだ……」
 海の方の社殿は人が多いのだろう、歓声が聞こえる。
 山の社殿では声はさほど上がらないけれども、表情が色々物語っている。
 さらに、祈っている人もいた。
 ティエラは何となくその気持ちがわかり手を合わせた。
 初日の出の余韻に浸り、周りの人たちも動き出したころ、下山を開始し始める。
 電話が鳴る。
「……」
 画面に映る名前はフリューだった。
 不機嫌な顔になる。そのまま、見なかったことにした。
「屋台、もうちょっと見ていこうか」
 たこ焼きもあったし覗いてみよう。

 初日の出が差し込む。
 客が途切れる時間であった。
 光がこちらに差し込むころには、その客が戻ってくるだろう。そうなると忙しくなる。
 ハリーヌは休憩をしつつ、去年のこと、今年のことなどを思った。
「はて……ワタクシ、去年は何をしていたのでございましょう。ボウケン……シャ……?」
 ぼんやりとハリーヌがつぶやく。
「今、少し良いでしょうか? お話をお聞きしても?」
 テレビ取材班のウルがやってくる。
 趣旨を説明され、ハリーヌは「いいでございますよ」と応じた。
 話しているうちに眠気が取れてきた。取材以上に色々と話した。
 そうこうしているうちに、客足が戻ってくる。
「ぜひ、たこ焼き食べてくださいでございます」
 ハリーヌは器にパパッと取材班の人数を見て入れる。
「あ、ありがとうございます。料金は――」
「いえいえ、これは、縁でございますから」
「いえいえ……そういうわけには――」
 などというやり取りが繰り返されるのだった。

 仕事が終わったところで都と奈月は別行動になる。着替える間を惜しんで巫女服のまま。
 ジルと合流した都は境内を散歩する。
「すげぇ人の数だよな」
「だよね」
 山の方に向かう道は人は少ない。
 そちらに向かってみる。
 道はしっかりあるけれども、両脇は木々が生い茂る。
 暗いけれども怖さはない。
 寒さとは違うひんやりとした空気が漂う。
「寒くねぇか? そのカッコ」
 ジルの問いかけに都は「意外と大丈夫だよ。激しい運動の後みたいだから」という。
「寒くなったら言えよ?」
「うん」
 都は笑う。
 下の喧噪、山の境内の静かなささやき。
 その間にいると静寂が募る。
「神社ってなんでこー神聖に感じるだろうねぇ。場所なのか、冷たい空気がそうさせるのかななぁ」
 都は自問自答に近い言葉。
「さぁな。ま、神ってのがいるっていうわけだろ? 場所だろ?」
 ジルはあいまいに答える。
「そうだよね」
 階段の踊り場まで来る。
 あと一息で頂上だ。
 周囲には人気がない。
「ちょっと休憩」
 都は隅に寄る。
「足元だって慣れてねぇだろ?」
 心配してくれるジルに都は落ち着きをなくす。
「どうした?」
 心臓の音が聞こえそうなほど近づいた。
 その時、都は背伸びをする。徐々に近づく顔と唇――。

 奈月はシモンと海の方に向かう。
「着替える間もおしかったのです……」
「あとで、きちんと返しておかないとですね」
 シモンと手をつなぎ歩く。
「冷えてますね……寒くないですか」
 シモンに問われ、奈月は手先はかじかむくらい冷えていることに気づいた。
「忙しかったので、寒くはないです」
「そうですか? 寒いと感じたら早めに言ってくださいね」
「……はい」
 二人は歩く。
 海の鳥居と太陽を見る人で絶景ポイントは人がいっぱいだ。
 少し離れたところに行くと、人もまばらだ。
 座れそうな場所を見つけ、並んで座る。
 しばらくするとご来光となる。
 水平線が白く輝くと、歓声が上がる。
 奈月も思わず声を上げた。
 暗闇が晴れていくのを感じ、太陽の力を感じるからか。
 人が照らされ、影が浮かぶ。
 ふと、横を見ると、シモンと目が合う。
 光に当たり輝く顔に奈月の胸が高鳴る。
 奈月はシモンと自然に顔を寄せ、唇を重ねた。

●覚める? 覚めてる!?
 イズレンディルは初日の出の時間になったと、ほっと息をつく。
 しばらくは社殿よりもそちらに人は動く。
「休憩取るなら今のうちですよ。あちらで、お茶淹れますよ」
 交代でとるとはいえ、忙しいために休憩時間がとりづらかっただろう巫女のアルバイトなどに声をかける。
 イズレンディルは急須に茶葉と湯を入れ、茶碗に淹れていく。しばらくすると、職員や巫女などがやってきて、湯飲みを両手で持つ。屋内でも戸は開け放っているため、寒さは身に染みるだろう。
 茶菓子を食べたり、軽食を食べたりしている様子を見て、イズレンディルは自身もお茶の時間とする。
 甘い菓子が疲労を和らげてくれるようだった。
 少し休憩後、祈祷の予約の一覧を見る。まだまだ忙しい。
「三が日は嵐ですね」
 外を見ると、穏やかな年の始まりだった。

 時間が経つと屋台の人も交代にはいったり色々だ。
 ハリーヌはたこ焼きの入った器を詰めた袋をもって、社殿を訪れた。
「そろそろ引けますのでこちらはお納めください」
 対応に出たイズレンディルは「いえ、そんな、売り物をいただくわけには」と答える。
「いえいえ、こちらで出させてもらっているでございますし、今年一年の祈願でございます」
 ハリーヌは頭を下げる。これは神に捧げるものでもあると説明した。
 通りがかったグレイオンスが趣旨を理解し、受け取る。
 ハリーヌは受け取ってもらった礼を述べる。
「こちらこそ。アルバイトたちも喜ぶ」
 グレイオンスの返礼を聞き、ハリーヌは立ち去った。
 正月の稼ぎは一年を占うような気持になる。
 だからこそ、験稼ぎ、縁が大切だった。
 ハリーヌは鳥居の上に上がった太陽をしばらく眺めた。

 ――白い光が差し込むのは夢の中ではなく現実かもしれない。

 希は目を覚ます。
 いつも通りの朝だけれども、友人が夢に出てきた気がした。
「……あれ? 夢……やったと?」
 内容は覚えていない。友人と色々話したり、行動して楽しい夢だった。

 レイラも目を覚ました。
「……あれ? 装束着て……でも、ここは、わたしの部屋のような……部屋ですわ」
 しばらく寝とぼけて周囲を見ていた。
「不思議な夢でしたわ、予知夢の……よう?」
 予知夢かどうかわからないけれども、その夢の内容はおぼろげで楽しかったということでしかなかった。
 まぁ、予知夢かもしれない。

マスターコメント

 ご参加ありがとうございます。  色々な夢が積もりました。  リプレイは出ないかなと思ってはいたNPCもちらっと出られました。  ご縁があればまたお会いしましょう。
イベントシナリオ

イベントシナリオ易しい 報酬:少ない11 / 4〜25人

2022年01月18日 02時53分10秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. イズレンディル・パラリム

    イズレンディル・パラリムと申します。宜しくお願い致します 私は神社側の関係者としてお仕事をする予定です。 参拝客の方に積極的にお声がけしていくつもりですので、何がしか交流が出来れば良いなと思っております。 それにしても現代?なのは面白いですね!昨年の年明けのノベル以来、でしょうか? エルフ耳も問題ないようですので、現代ですがエルフのままの姿で行こうと思います。

  2. フリューリングスルフト=ティエラ

    フリューリングスルフト=ティエラいうよ、長いからフリュー……っと、今回は夢落ちなのでうちだけど別の「うち」が参加する予定さぁ。 ので、今回はティエラって呼んでね!(どうして( 参拝者として参加する予定さぁ♪ イズレンディルさんとも交流!……で、出来たらうれしい……嬉しいなぁ(構想している「ティエラ」を見ながら((((

  3. サラ

    えっと、サラ、です。よろしくお願い、します。 あのね、巫女さん、って、いう、の……? やって、みたかった、の。おみくじ、は、まかせ、て。 わたしも、いろんな人たちと、交流、できたらいい、な。

  4. 御邑 奈月

    …み、御邑 奈月…です。よろしく…お願い、します…。 え、えと…私は…姉と、巫女の…アルバイト、をした…後で…です、ね。 …その、あの…こ、恋人…の…シモン、と…過ごして…その…境内の散歩…ですが…。 ………初日の出…を…みたい、です。(真っ赤) …はい…。 …あ。こ、交流も…問題…ないです。えと…アルバイト中…なら…。

  5. 御邑 都

    御邑 都ってゆーんだぁ~。よろしくおねがいしまーす! 僕は、妹の月ちゃんと巫女さんのアルバイトしてから、恋人と過ごすよぉー。 境内をあちこちお散歩しようかな、って思ってる~♪ 僕もアルバイト中の交流は問題ないよぉ~。

  6. イズレンディル・パラリム

    成立を心配していたほどだったのですが、とても賑やかになっておりましたね! 反応がぎりぎりに遅くなってしまいすみません、皆さん宜しくお願い致しますね! ふふ、今回のフリューさんはティエラさんなのですね。 普段とは違う様子なのでしょうか?参拝客の皆さんには声を掛ける旨は入れさせて貰いましたので、何がしか関われるのを楽しみにしておりますね。 サラさんと御邑さん…都さんと夏月さんとは共に神社の関係者側ですね。 何か交流あれば嬉しいと思いまして、交流歓迎や声掛けをする旨は入れさせて頂きました。 当日?を楽しみにしておりますね。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0