【聖祭】温泉宿に魔獣(幼体)も来た
岩岡志摩
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シナリオID:1690
オープニング
●登場
あるところに、ペットの同伴が認められている温泉宿があった。
そこはもともと犬猫達と触れ合うことのできる宿だったが、突然敷地内に温泉がわき出し、温泉宿としての側面も増えた。
そして冒険者達の助けを借りた結果、その宿はペットの療養や温泉を利用した飲食物も利用できる宿としてリニューアルした。
先日も近くの森から妖精がやってきて、お化け退治を頼まれるなど、この宿にはいろんなものがやってくる。
そして今回の『それ』もその一つと言えた。
最初に気が付いたのはこの宿の主で、『それ』は犬猫達の中へ普通に紛れていた。
その姿は頭が3つある仔犬だ。
本来なら、こういう仔犬はまず見かけない。魔獣の類とみていいだろう。
――ちなみに首から『けるぺおす』と書かれた看板をぶら下げている。
どうやらそれがこの仔犬の名前らしい。
「「「が、がうー」」」
威嚇をしているようだが、可愛らしい。
とりあえず、宿の主は侵入者であるけるぺおすの頭を撫ではじめた。
まずは真ん中の頭を。
そうすると、左右の頭から「こっちも撫でろ」とばかり、キャンキャンと鳴き声がした。
「分かった分かった」
仕方なく、宿の主は両手で左右の頭を撫でる。
今度は、真ん中の頭が「撫でろ」と言わんばかりに、うーうーうーと鳴く。
「無茶を言うな、私の手は3本も無い。どれかの頭が我慢しなければならない」
あむあむあむあむあむ。
けるぺおすの真ん中の頭が、それに抗議するかのように、宿の主の指を噛んだり舐めたりする。
痛くはないが、くすぐったい。
「……しかたがない。専門家を呼ぼう」
そう言って宿の主は冒険者ギルドに依頼を出すことを決めた。
●慰安も兼ねて
冒険者ギルドのとある支部で、応対したアルヒ・ラスカスは依頼主である宿の主から一通り話を聞いていた。
「おそらくですが、お察しの通り魔獣の幼体でしょう」
3つ頭の犬というと、ケルベロスという種の魔獣が該当するが、恐らく今回のけるぺおすもそうなのだろう。
ただし話を聞く限りでは、周囲にいる仔犬仔猫達と混ざっても問題ないほど幼い姿をしているようなので、幼体の可能性が高い。
それでも魔獣使いでもいない限り、魔獣を制御できるとは思えない。
かわいそうだが、その魔獣は討伐して被害を未然に防ぐことが推奨される。
「依頼に応じる冒険者達にも、飼おうとして持ち帰らないよう釘を刺しておきます」
アルヒはそのあたりも注意点として挙げていく。
なお今回の依頼は、宿の主によると日ごろお世話になっている冒険者達への慰安も兼ねたものらしい。
問題の『けるぺおす』をどうにかしてくれるなら、温泉宿で自由に過ごしてくれて構わないそうだ。
もちろん冒険者達は無料で温泉宿の各施設を利用できる。
この宿の目玉である仔犬仔猫達と遊んでもいいし、ペットと一緒に温泉に入ることも問題ない。
温泉を利用した各料理も、好きなだけ楽しむことができる。
さらに宿の主の話では、以前冒険者達が利用した時よりもある程度改善したところもある模様だ。
こうして温泉宿にいる魔獣(ただし今は幼体)退治の依頼が斡旋されることになった。
●やること
今回皆様は、温泉宿に魔獣が現れたので、それを退治する依頼に参加しました。
この温泉宿は今までにも冒険者の皆様から様々な企画や改善案を示され、実現にこぎつけたこともあり冒険者達には好意的です。
先日も妖精からお化け退治を頼まれた案件を、冒険者達が解決してくれたことから、基本的に冒険者から宿の利用料金を取る真似はしない方針をとっています。
今回退治する魔獣ですが、個体としては非常に弱く、皆様が倒すと決めたのでしたら容易に倒すことができます。
問題の魔獣を退治してくれるなら、後はこの温泉宿で1泊分自由に過ごしていいとのことです。
この温泉宿ではペット同伴の客が楽しめるよう、色々な工夫がされています。
建物内では床でゴロゴロ寝転がることができるよう絨毯がしかれており、その上に飲食ができそうなテーブルや椅子も用意されています。
庭に出ると半分はドッグランができそうな広々とした芝生の空間になっており、こちらも走ったり寝転んだりできます。
また裏庭にあたる箇所にはロープやら遊具が並べられ、立体的な運動ができる場所になっており、犬猫だけでなく他の動物達も楽しむことができる場所になっています。
ペット同伴でないお客が建物内にいる仔犬や仔猫達と遊ぶための遊具(フリスビーや、毛糸球など)に加え、ブラシといった犬猫達のケアをするための道具も一通り揃えています。
犬猫だけでなく、他の種類のペットに与えるエサも宿に頼めば用意してくれます。
なお先日冒険者の方より「木にもたれながら動物達と昼寝できる場所があるといいかも」というご意見があり、敷地内でその条件に見合った木の周りを柵や仮の屋根で覆い、地面も芝生で敷き詰める作業を行った結果、木の下で昼寝できる場所ができました。
またこの温泉宿では、皆様はペットと一緒に温泉へ入る事ができます。
この温泉宿では皆様が入浴できる温泉をペット達の療養にも使えるよう、そのいくつかを水の深さを変えた温泉プールや運動施設へと改修しました。
もちろん衛生面にも配慮して温泉の湯は常に新しく、清掃もこまめに行っています。
お湯につかる以外で温泉を楽しまれたい方には、温熱を利用した蒸し風呂も用意されています。
またペットの入浴を介助できるための器具や道具も、温泉区画の中に一通りそろっています。
これは以前この宿が温泉宿になる際に協力を求めた冒険者より、温泉をペット達の療養にも使えるよう様々な企画や提案が出され、それに従い宿が温泉のある区画の整理や工事を行ったためです。
また先日「柵の高さに不安がある」といったご意見もあったため、温泉を囲う柵や壁をさらに高くして、頑丈なものへと改修しています。
そしてこの温泉宿では、以前冒険者達が試作してくれた蒸し料理やお菓子類も用意できるようになり、皆様はそれらの料理を食べることができます。
先日は饅頭を作って下さった冒険者の方もいらっしゃったことから、メニューに饅頭が加わりました。
もちろんペット達にも調理を工夫した蒸し料理や、ペット用のお菓子も通常の餌とは別途提供できます。
また温泉の水を使ったコーヒーやお茶といった、ひとつ工夫を加えた飲み物も用意されています。
何か料理を作ってみたいということでしたら、宿の従業員に頼めば厨房を借りることも可能です。
あるところに、ペットの同伴が認められている温泉宿があった。
そこはもともと犬猫達と触れ合うことのできる宿だったが、突然敷地内に温泉がわき出し、温泉宿としての側面も増えた。
そして冒険者達の助けを借りた結果、その宿はペットの療養や温泉を利用した飲食物も利用できる宿としてリニューアルした。
先日も近くの森から妖精がやってきて、お化け退治を頼まれるなど、この宿にはいろんなものがやってくる。
そして今回の『それ』もその一つと言えた。
最初に気が付いたのはこの宿の主で、『それ』は犬猫達の中へ普通に紛れていた。
その姿は頭が3つある仔犬だ。
本来なら、こういう仔犬はまず見かけない。魔獣の類とみていいだろう。
――ちなみに首から『けるぺおす』と書かれた看板をぶら下げている。
どうやらそれがこの仔犬の名前らしい。
「「「が、がうー」」」
威嚇をしているようだが、可愛らしい。
とりあえず、宿の主は侵入者であるけるぺおすの頭を撫ではじめた。
まずは真ん中の頭を。
そうすると、左右の頭から「こっちも撫でろ」とばかり、キャンキャンと鳴き声がした。
「分かった分かった」
仕方なく、宿の主は両手で左右の頭を撫でる。
今度は、真ん中の頭が「撫でろ」と言わんばかりに、うーうーうーと鳴く。
「無茶を言うな、私の手は3本も無い。どれかの頭が我慢しなければならない」
あむあむあむあむあむ。
けるぺおすの真ん中の頭が、それに抗議するかのように、宿の主の指を噛んだり舐めたりする。
痛くはないが、くすぐったい。
「……しかたがない。専門家を呼ぼう」
そう言って宿の主は冒険者ギルドに依頼を出すことを決めた。
●慰安も兼ねて
冒険者ギルドのとある支部で、応対したアルヒ・ラスカスは依頼主である宿の主から一通り話を聞いていた。
「おそらくですが、お察しの通り魔獣の幼体でしょう」
3つ頭の犬というと、ケルベロスという種の魔獣が該当するが、恐らく今回のけるぺおすもそうなのだろう。
ただし話を聞く限りでは、周囲にいる仔犬仔猫達と混ざっても問題ないほど幼い姿をしているようなので、幼体の可能性が高い。
それでも魔獣使いでもいない限り、魔獣を制御できるとは思えない。
かわいそうだが、その魔獣は討伐して被害を未然に防ぐことが推奨される。
「依頼に応じる冒険者達にも、飼おうとして持ち帰らないよう釘を刺しておきます」
アルヒはそのあたりも注意点として挙げていく。
なお今回の依頼は、宿の主によると日ごろお世話になっている冒険者達への慰安も兼ねたものらしい。
問題の『けるぺおす』をどうにかしてくれるなら、温泉宿で自由に過ごしてくれて構わないそうだ。
もちろん冒険者達は無料で温泉宿の各施設を利用できる。
この宿の目玉である仔犬仔猫達と遊んでもいいし、ペットと一緒に温泉に入ることも問題ない。
温泉を利用した各料理も、好きなだけ楽しむことができる。
さらに宿の主の話では、以前冒険者達が利用した時よりもある程度改善したところもある模様だ。
こうして温泉宿にいる魔獣(ただし今は幼体)退治の依頼が斡旋されることになった。
●やること
今回皆様は、温泉宿に魔獣が現れたので、それを退治する依頼に参加しました。
この温泉宿は今までにも冒険者の皆様から様々な企画や改善案を示され、実現にこぎつけたこともあり冒険者達には好意的です。
先日も妖精からお化け退治を頼まれた案件を、冒険者達が解決してくれたことから、基本的に冒険者から宿の利用料金を取る真似はしない方針をとっています。
今回退治する魔獣ですが、個体としては非常に弱く、皆様が倒すと決めたのでしたら容易に倒すことができます。
問題の魔獣を退治してくれるなら、後はこの温泉宿で1泊分自由に過ごしていいとのことです。
この温泉宿ではペット同伴の客が楽しめるよう、色々な工夫がされています。
建物内では床でゴロゴロ寝転がることができるよう絨毯がしかれており、その上に飲食ができそうなテーブルや椅子も用意されています。
庭に出ると半分はドッグランができそうな広々とした芝生の空間になっており、こちらも走ったり寝転んだりできます。
また裏庭にあたる箇所にはロープやら遊具が並べられ、立体的な運動ができる場所になっており、犬猫だけでなく他の動物達も楽しむことができる場所になっています。
ペット同伴でないお客が建物内にいる仔犬や仔猫達と遊ぶための遊具(フリスビーや、毛糸球など)に加え、ブラシといった犬猫達のケアをするための道具も一通り揃えています。
犬猫だけでなく、他の種類のペットに与えるエサも宿に頼めば用意してくれます。
なお先日冒険者の方より「木にもたれながら動物達と昼寝できる場所があるといいかも」というご意見があり、敷地内でその条件に見合った木の周りを柵や仮の屋根で覆い、地面も芝生で敷き詰める作業を行った結果、木の下で昼寝できる場所ができました。
またこの温泉宿では、皆様はペットと一緒に温泉へ入る事ができます。
この温泉宿では皆様が入浴できる温泉をペット達の療養にも使えるよう、そのいくつかを水の深さを変えた温泉プールや運動施設へと改修しました。
もちろん衛生面にも配慮して温泉の湯は常に新しく、清掃もこまめに行っています。
お湯につかる以外で温泉を楽しまれたい方には、温熱を利用した蒸し風呂も用意されています。
またペットの入浴を介助できるための器具や道具も、温泉区画の中に一通りそろっています。
これは以前この宿が温泉宿になる際に協力を求めた冒険者より、温泉をペット達の療養にも使えるよう様々な企画や提案が出され、それに従い宿が温泉のある区画の整理や工事を行ったためです。
また先日「柵の高さに不安がある」といったご意見もあったため、温泉を囲う柵や壁をさらに高くして、頑丈なものへと改修しています。
そしてこの温泉宿では、以前冒険者達が試作してくれた蒸し料理やお菓子類も用意できるようになり、皆様はそれらの料理を食べることができます。
先日は饅頭を作って下さった冒険者の方もいらっしゃったことから、メニューに饅頭が加わりました。
もちろんペット達にも調理を工夫した蒸し料理や、ペット用のお菓子も通常の餌とは別途提供できます。
また温泉の水を使ったコーヒーやお茶といった、ひとつ工夫を加えた飲み物も用意されています。
何か料理を作ってみたいということでしたら、宿の従業員に頼めば厨房を借りることも可能です。
解説
●目標
魔獣退治
副目標:ペットや犬猫達と一緒に温泉宿でのひとときを楽しむ
登場
『けるぺおす』
体高20cm。体重1.5kg。真っ白でもふもふ。1体のみだが今回の討伐対象で魔獣。
外見上は頭が3つある仔犬で非常に弱いが、魔獣の幼体なので放置するのは危険。
現在3つの頭を同時に撫でてくれる人を募集中(?)。
下記見取り図内の(1)にいる。お持ち帰り厳禁。
商人
今回の依頼人で温泉宿のオーナー。頼めばある程度のことには応じてくれる。
アルヒ・ラスカス
今回の同伴者。皆様の指示には従うが魔獣を逃がすことは断固拒否の姿勢。
従業員達
宿に勤める人々。皆様の要望には出来る範囲で応じる用意あり。
状況
とある地方の村に建てられた宿屋の内外。現地時刻は正午で天候は快晴。もうすぐ冬だが快適な気温。
現在この宿は冒険者達の貸し切り状態になっているので、他の客への配慮は必要ない。
温泉宿ではゴロゴロできる屋内空間の他に、ドッグランのような空間や、木の下で寝転がることのできる空間、犬猫と遊んだり同伴するペットをケアするための道具も一通りそろっている。
また過去にこの温泉宿をプロデュースした冒険者達の提案により、温泉のある個所はペット同伴での入浴が可能となり、蒸し料理や蒸し菓子といった温泉の蒸気や熱を利用した料理を出すようになった。
以下簡易見取り図
ABCDEFGHIJK
壁壁壁壁壁壁壁囲囲囲囲
1壁座座座座 壁 囲
2壁〇 〇〇 窓 囲
3壁(1) 窓(3)囲
4壁座 〇〇 窓 囲
5壁窓窓窓窓窓壁囲囲囲囲
6柵芝芝芝芝芝囲 囲
7柵 囲 囲
8柵 (2) 囲 泉 囲
9柵芝芝芝芝芝囲 囲
柵柵柵柵柵柵囲囲囲囲囲
1:犬猫とのんびりと遊べる区画。全面絨毯で寝そべることもOK。
2:犬猫と運動しながら遊べる場所。全面が芝。
3:木の下で昼寝ができる区画。全面が芝生。毛布や枕といった寝具も貸与される。
〇:テーブルや椅子
座:ソファ
壁:温泉宿外壁
泉:入浴場所。ペット同伴可。男女別とそうでない温泉(水着着用必須)の両方あり。
柵:木材の柵。高さ2m程度。
囲:補強された囲い。高さ5m程度。
マスターより
先日の【ff】ではお世話になりました。
この温泉宿ですが、以前にも冒険者達に依頼を出しており、その際に冒険者達から出された企画や提案をもとに、ペット達も利用できるための様々な工夫や工事を行いました。
また先日の【ff】でもお化け退治を冒険者達が行ってくれたことで、温泉宿は皆様に恩義を感じています。
そのため温泉宿としては、魔獣退治後は皆様にこの温泉宿の各施設を楽しんでもらいたいようです。
その魔獣ですが、皆様がプレイングのどこかに「倒す」と明記して下されば容易に倒すことができます。
この宿を楽しむ選択肢は主に3つ(ペットや動物達と遊ぶ。温泉をペット同伴で楽しむ。温泉宿で出される料理を楽しむ)ございますが、幅広く楽しむよりもどれか1つか2つに絞って行動されることをお勧めします。
ペット同伴でなくても温泉宿には『従業員』の仔犬仔猫達がいるので犬猫達との触れ合いはできます。
またご自分で料理やお菓子を作りたいという方にも宿の厨房を貸し出しますので、作成は可能です。
ご不明な点がございましたら、出発36時間前まででしたらアルヒが答えられる範囲は答えます。
リプレイ
●退治します
御邑 奈月は事情があって来られなかったが、3人の冒険者達が依頼に応じ、温泉宿に到着する。
「へぇー、シャロンの彼氏~? いい男じゃーん。 ルナだよーぉ。よろしくね」
狼のバルバトスを同伴してこの宿に来た月は、友人のシャロン・ラ・モリエールから悠人・ラドルファスを紹介され、お互いに挨拶すると宿の主の出迎えを受ける。
「こっちはお友達の月様! で、こっちは私のこんにゃくしゃ(婚約者)の悠人! 二人とも仲良くするのよ!」
シャロンは宿の主に挨拶すると、悠人と月を順に紹介していく。
一通り挨拶を終えた3人は、問題の魔獣『けるぺおす』がいる場所へ向かう。
そこには白いもふもふの毛玉……もとい3つ頭の仔犬がいた。
「なに、あのけるぺおすっていうの……こいつか」
確認のため、悠人が仔犬をよく見ると首に看板がぶら下がっており、そこに『けるぺおす』と書かれている。
「こ……これは強敵ね」
その姿を見たシャロンはぷるぷると震え、『けるぺおす』を前に葛藤している。
これが魔獣でなければと思えるほど、眼前の『けるぺおす』は可愛らしかった。
「討伐、っていうことは殺せっていう事でいいわけ?」
悠人は宿の主に依頼内容を確認するも、やはり「危険性を考慮すれば討伐もやむなし」とのことだった。
多くの客が訪れる温泉宿に、人に危害を加える可能性が残る魔獣を放置するわけにはいかない、と。
「倒さなきゃいけない魔獣と倒さなくていい魔獣の違い、とは……いったい」
シャロンはその基準を確認したかったが、既に『けるぺおす』は討伐することが決まっている。
「『けるぺおす』はサクッと屠るよ!」
その中で月は依頼を果たすべく、動き始める。
――ルナ、そういう空気読まないから!
そんな月に悠人も続き、やや遅れてシャロンも包囲に加わる。
ただならぬ雰囲気を察したのか、『けるぺおす』は逃げ腰になり、駆けだした。
「逃がすわけないだろ……!」
腹をくくった悠人がチャージングを行使して追いつく。
シャロンも「悠人と月ばかりに泥を被せる訳にはいかない」と決意を固め、月とともに別方向へ回り込む。
そして宿り木の長杖から放たれた魔法の一撃と、ダマスカス鋼の槍の刺突、イノセントローズの一閃が叩き込まれ、『けるぺおす』は撃破される。
「あーあ……さっきまで生きてたのにねー」
月が呟いた一言は、その場にいた人達の心に重く残る。
そう言いながらも、月は要請に応じてバルバトスをシャロンに貸し出し、今は倒した魔獣に手を合わせて何かを唱えている。
そのシャロンは今、バルバトスを抱っこして心の安定を図っていた。
●気持ちを切り替えます
退治の後片付けも終わり、依頼を達成した冒険者達は温泉宿の各施設を利用し始める。
シャロンは準備運動をした後、月のバルバトスと一緒になって、ドッグランを兼ねている広場を駆け回っている。
そんなシャロンとバルバトスが駆け回る一方、悠人や月はその近くでくつろいでいる。
「おーシャロンも走ってるー。元気だなー」
「シャロン、生き生きとしてるな」
月も悠人も、躍動感のあるシャロンの動きを眺めている。
温泉宿にある広場や遊具は、シャロンの野生を解放させる効果を発揮しているようだ。
「悠人も一緒に走りましょ!」
シャロンからの誘いに悠人は「俺はいいんだ」と応じ、ふと気になったことを月に聞いてみる。
「いつもあんな強度の運動させてるの?」
温泉宿より提供された食べ物をつまんでいる月に向け、悠人はバルバトスの運動量を聞いてみる。
「ちょっと今日ははしゃいでるみたいだねー。ルナは散歩連れてってもあんま走れないからー」
月は暗にそういうわけでもないと打ち明け、食べ物に手を伸ばす。
月がいま手を出しているのは蒸しケーキ。
温泉の熱や蒸気を活用して蒸しあげたケーキは、ふっくらとした仕上がりになっている。
「月様も、運動したほうが温泉気持ちいいですよー! 食べてばっかりだと太りますよー!」
そんなシャロンに、月はやんわりと断りを入れる。
「ルナはいーの。食べても太らないからー」
運動神経のいいシャロンに少し羨ましさを覚えつつ、月はそう答えると温泉宿より提供された蒸しケーキを堪能する。
「美味しー」
蒸しケーキはふんわりと柔らかく、ほのかな甘みが月の口の中へとひろがっていく。
「悠人も蒸しケーキ食べる? はいあーん」
そう言って月は悠人に別の蒸しケーキを差し出してみる。
そんな月の言い分をシャロンは内心悔しがったものの、満足したのか自分も蒸しケーキを味わうことにする。
「干しぶどうが入ったものが私の好みなのよね」
そう言いながらもお目当ての蒸しケーキを見つけたシャロンは、1つつまんで口の中に入れる。
干しブドウ入りの蒸しケーキはしっとりとした舌触りで、口の中で生地から解放された干しブドウの甘味が、ケーキの甘味によいアクセントと食感を加え、美味しさを口の中に残していく。
「犬とか好きそうなのに……。でもシャロンのペット……蛇なんだよなぁ。なんでだろう」
シャロンとバルバトスの楽し気な様子に、悠人はそう言って首を傾げる。
「ヘビちゃんはね、お金が溜まるのよ! 金色ならもっと効果が高いの!」
シャロン曰く「蛇を飼うのはゲン担ぎ」だそうだ。
●温泉でゆったりします
ひとしきり運動を終えたシャロン(とバルバトス)は、悠人や月を伴って温泉への入浴に移る。
「スライム石鹸を使ってみんなで洗いっこするよー!」
「美肌効果がある石鹸でしっかりキレイになります!」
月とシャロンはそれぞれスライム石鹸&コスメセットを取り出し、温泉宿から借りた道具を使って泡立て始める。
ちなみに3人とも水着を着用している。
「月様は女性らしい肉付きで羨ましいです。私はチビですから……」
シャロンが月の体形を称賛すると、お礼とばかりに月がシャロンの体に泡を乗せ始める。
「ここかー、ここがええのんかー」
「ひゃひゃ! 脇腹はだめーっ!」
月は手をわきわきさせながら、シャロンを繊細な手つきで洗いにかかる。
その結果、くすぐったさにシャロンが身をよじって笑い声をあげている。
「自分の番は自分でやるからいい」
当初はそう言っていた悠人も、シャロンと月に押しきられ、石鹸の泡が悠人の全身を包んでいく。
そして悠人はお礼として、シャロンの尻尾を細心の注意を払って丁寧に洗うと、事前に温泉宿から借りていた、肌の手入れができる化粧品や尻尾を手入れできる櫛を使い、スキンケアやブラッシングも行うことで、シャロンの尻尾を奇麗にしていく。
一通り手入れを終えた悠人は、次に月に対しても泡をつけてごしごし。
「悠人洗うのじょうずー♪」
月もスライム石鹸&コスメセットの効果や悠人の洗い方が良いのか、ご満悦だ。
「お返しに悠人の背中は私が流すわ! こんにゃくしゃだもの! やりたいの!」
「じゃあルナは前を洗おうかなー♪」
シャロンや月に押しきられ、今度は悠人がシャロンと月によってごしごしと体の前後を泡立てられている。
そして全員でお互いの体についた泡を湯で流れ落とすと、そろって湯船につかる。
「あ~~……」
月が思わず声を上げ、湯船の中に身を沈める。
ちなみにバルバトスも、近くにあるペット用の湯船の中で気持ちよさそうにしている。
「こんな風にデカい風呂に入る機会はなかなかないよなぁ」
手足を伸ばし、悠人は湯船の中でくつろいでいた。
「健康にいいものなら運動より温泉のほうが好きだなー」
月も全身を包む温泉の暖かさに目を細める。
その一方でシャロンはバルバトスと対抗するかのように、スィーと湯船に浮かんで動き回っていた。
●一休みします
温泉から出た3人の冒険者は、温泉宿からの好意で貸してもらった部屋で休むことにした。
シャロンは温泉を利用している間、はしゃぎ疲れたのか、今はぐてーっとなっている。
「笑いすぎてほっぺが痛いわ……」
頬の部分を指で円を描くようにほぐしながら、シャロンは嘆息する。
「ここで少し横になってみるかい?」
そう言って悠人は部屋にあった毛布を3人分絨毯の上に敷くと、まず自分が仰向けに寝転がる。
「腕枕をどうぞ」
そして悠人が自分の両側に腕を差し出すと、その意味に気づいたシャロンがその片腕をとり、腕を枕に悠人の横へ寝転がる。
「おやすみは川の字で!」
すると月も悠人のもう片方の腕を枕にするべく、反対側へと寝転んだ。
「腕枕、いつもしてもらってるの?」
「悠人は優しいのよ。自慢のこんにゃくしゃなんだから……」
自分の両側で、月とシャロンがそんな会話をしているのを聞きながら、悠人の意識は眠りに落ちていく。
それにつられたのか、シャロンもうとうとし始め、やがてすぅすぅと寝息を立て始める。
そんな2人を見ながら、月もバルバトスを近くまで呼び寄せる。
「なんかすっごく楽しかったー! 明日もよろしくね」
2人にそんなことを告げると、月もそのまま眠りにつく。
こうして魔獣は無事退治され、冒険者達も温泉を楽しみリフレッシュできた。
心身がくつろぐ温泉宿で、こういった事件が再び起こることはないと思いたいところだ。
なにはともあれ、依頼に応じてくれた冒険者の皆様。
今回もお疲れさまでした。
御邑 奈月は事情があって来られなかったが、3人の冒険者達が依頼に応じ、温泉宿に到着する。
「へぇー、シャロンの彼氏~? いい男じゃーん。 ルナだよーぉ。よろしくね」
狼のバルバトスを同伴してこの宿に来た月は、友人のシャロン・ラ・モリエールから悠人・ラドルファスを紹介され、お互いに挨拶すると宿の主の出迎えを受ける。
「こっちはお友達の月様! で、こっちは私のこんにゃくしゃ(婚約者)の悠人! 二人とも仲良くするのよ!」
シャロンは宿の主に挨拶すると、悠人と月を順に紹介していく。
一通り挨拶を終えた3人は、問題の魔獣『けるぺおす』がいる場所へ向かう。
そこには白いもふもふの毛玉……もとい3つ頭の仔犬がいた。
「なに、あのけるぺおすっていうの……こいつか」
確認のため、悠人が仔犬をよく見ると首に看板がぶら下がっており、そこに『けるぺおす』と書かれている。
「こ……これは強敵ね」
その姿を見たシャロンはぷるぷると震え、『けるぺおす』を前に葛藤している。
これが魔獣でなければと思えるほど、眼前の『けるぺおす』は可愛らしかった。
「討伐、っていうことは殺せっていう事でいいわけ?」
悠人は宿の主に依頼内容を確認するも、やはり「危険性を考慮すれば討伐もやむなし」とのことだった。
多くの客が訪れる温泉宿に、人に危害を加える可能性が残る魔獣を放置するわけにはいかない、と。
「倒さなきゃいけない魔獣と倒さなくていい魔獣の違い、とは……いったい」
シャロンはその基準を確認したかったが、既に『けるぺおす』は討伐することが決まっている。
「『けるぺおす』はサクッと屠るよ!」
その中で月は依頼を果たすべく、動き始める。
――ルナ、そういう空気読まないから!
そんな月に悠人も続き、やや遅れてシャロンも包囲に加わる。
ただならぬ雰囲気を察したのか、『けるぺおす』は逃げ腰になり、駆けだした。
「逃がすわけないだろ……!」
腹をくくった悠人がチャージングを行使して追いつく。
シャロンも「悠人と月ばかりに泥を被せる訳にはいかない」と決意を固め、月とともに別方向へ回り込む。
そして宿り木の長杖から放たれた魔法の一撃と、ダマスカス鋼の槍の刺突、イノセントローズの一閃が叩き込まれ、『けるぺおす』は撃破される。
「あーあ……さっきまで生きてたのにねー」
月が呟いた一言は、その場にいた人達の心に重く残る。
そう言いながらも、月は要請に応じてバルバトスをシャロンに貸し出し、今は倒した魔獣に手を合わせて何かを唱えている。
そのシャロンは今、バルバトスを抱っこして心の安定を図っていた。
●気持ちを切り替えます
退治の後片付けも終わり、依頼を達成した冒険者達は温泉宿の各施設を利用し始める。
シャロンは準備運動をした後、月のバルバトスと一緒になって、ドッグランを兼ねている広場を駆け回っている。
そんなシャロンとバルバトスが駆け回る一方、悠人や月はその近くでくつろいでいる。
「おーシャロンも走ってるー。元気だなー」
「シャロン、生き生きとしてるな」
月も悠人も、躍動感のあるシャロンの動きを眺めている。
温泉宿にある広場や遊具は、シャロンの野生を解放させる効果を発揮しているようだ。
「悠人も一緒に走りましょ!」
シャロンからの誘いに悠人は「俺はいいんだ」と応じ、ふと気になったことを月に聞いてみる。
「いつもあんな強度の運動させてるの?」
温泉宿より提供された食べ物をつまんでいる月に向け、悠人はバルバトスの運動量を聞いてみる。
「ちょっと今日ははしゃいでるみたいだねー。ルナは散歩連れてってもあんま走れないからー」
月は暗にそういうわけでもないと打ち明け、食べ物に手を伸ばす。
月がいま手を出しているのは蒸しケーキ。
温泉の熱や蒸気を活用して蒸しあげたケーキは、ふっくらとした仕上がりになっている。
「月様も、運動したほうが温泉気持ちいいですよー! 食べてばっかりだと太りますよー!」
そんなシャロンに、月はやんわりと断りを入れる。
「ルナはいーの。食べても太らないからー」
運動神経のいいシャロンに少し羨ましさを覚えつつ、月はそう答えると温泉宿より提供された蒸しケーキを堪能する。
「美味しー」
蒸しケーキはふんわりと柔らかく、ほのかな甘みが月の口の中へとひろがっていく。
「悠人も蒸しケーキ食べる? はいあーん」
そう言って月は悠人に別の蒸しケーキを差し出してみる。
そんな月の言い分をシャロンは内心悔しがったものの、満足したのか自分も蒸しケーキを味わうことにする。
「干しぶどうが入ったものが私の好みなのよね」
そう言いながらもお目当ての蒸しケーキを見つけたシャロンは、1つつまんで口の中に入れる。
干しブドウ入りの蒸しケーキはしっとりとした舌触りで、口の中で生地から解放された干しブドウの甘味が、ケーキの甘味によいアクセントと食感を加え、美味しさを口の中に残していく。
「犬とか好きそうなのに……。でもシャロンのペット……蛇なんだよなぁ。なんでだろう」
シャロンとバルバトスの楽し気な様子に、悠人はそう言って首を傾げる。
「ヘビちゃんはね、お金が溜まるのよ! 金色ならもっと効果が高いの!」
シャロン曰く「蛇を飼うのはゲン担ぎ」だそうだ。
●温泉でゆったりします
ひとしきり運動を終えたシャロン(とバルバトス)は、悠人や月を伴って温泉への入浴に移る。
「スライム石鹸を使ってみんなで洗いっこするよー!」
「美肌効果がある石鹸でしっかりキレイになります!」
月とシャロンはそれぞれスライム石鹸&コスメセットを取り出し、温泉宿から借りた道具を使って泡立て始める。
ちなみに3人とも水着を着用している。
「月様は女性らしい肉付きで羨ましいです。私はチビですから……」
シャロンが月の体形を称賛すると、お礼とばかりに月がシャロンの体に泡を乗せ始める。
「ここかー、ここがええのんかー」
「ひゃひゃ! 脇腹はだめーっ!」
月は手をわきわきさせながら、シャロンを繊細な手つきで洗いにかかる。
その結果、くすぐったさにシャロンが身をよじって笑い声をあげている。
「自分の番は自分でやるからいい」
当初はそう言っていた悠人も、シャロンと月に押しきられ、石鹸の泡が悠人の全身を包んでいく。
そして悠人はお礼として、シャロンの尻尾を細心の注意を払って丁寧に洗うと、事前に温泉宿から借りていた、肌の手入れができる化粧品や尻尾を手入れできる櫛を使い、スキンケアやブラッシングも行うことで、シャロンの尻尾を奇麗にしていく。
一通り手入れを終えた悠人は、次に月に対しても泡をつけてごしごし。
「悠人洗うのじょうずー♪」
月もスライム石鹸&コスメセットの効果や悠人の洗い方が良いのか、ご満悦だ。
「お返しに悠人の背中は私が流すわ! こんにゃくしゃだもの! やりたいの!」
「じゃあルナは前を洗おうかなー♪」
シャロンや月に押しきられ、今度は悠人がシャロンと月によってごしごしと体の前後を泡立てられている。
そして全員でお互いの体についた泡を湯で流れ落とすと、そろって湯船につかる。
「あ~~……」
月が思わず声を上げ、湯船の中に身を沈める。
ちなみにバルバトスも、近くにあるペット用の湯船の中で気持ちよさそうにしている。
「こんな風にデカい風呂に入る機会はなかなかないよなぁ」
手足を伸ばし、悠人は湯船の中でくつろいでいた。
「健康にいいものなら運動より温泉のほうが好きだなー」
月も全身を包む温泉の暖かさに目を細める。
その一方でシャロンはバルバトスと対抗するかのように、スィーと湯船に浮かんで動き回っていた。
●一休みします
温泉から出た3人の冒険者は、温泉宿からの好意で貸してもらった部屋で休むことにした。
シャロンは温泉を利用している間、はしゃぎ疲れたのか、今はぐてーっとなっている。
「笑いすぎてほっぺが痛いわ……」
頬の部分を指で円を描くようにほぐしながら、シャロンは嘆息する。
「ここで少し横になってみるかい?」
そう言って悠人は部屋にあった毛布を3人分絨毯の上に敷くと、まず自分が仰向けに寝転がる。
「腕枕をどうぞ」
そして悠人が自分の両側に腕を差し出すと、その意味に気づいたシャロンがその片腕をとり、腕を枕に悠人の横へ寝転がる。
「おやすみは川の字で!」
すると月も悠人のもう片方の腕を枕にするべく、反対側へと寝転んだ。
「腕枕、いつもしてもらってるの?」
「悠人は優しいのよ。自慢のこんにゃくしゃなんだから……」
自分の両側で、月とシャロンがそんな会話をしているのを聞きながら、悠人の意識は眠りに落ちていく。
それにつられたのか、シャロンもうとうとし始め、やがてすぅすぅと寝息を立て始める。
そんな2人を見ながら、月もバルバトスを近くまで呼び寄せる。
「なんかすっごく楽しかったー! 明日もよろしくね」
2人にそんなことを告げると、月もそのまま眠りにつく。
こうして魔獣は無事退治され、冒険者達も温泉を楽しみリフレッシュできた。
心身がくつろぐ温泉宿で、こういった事件が再び起こることはないと思いたいところだ。
なにはともあれ、依頼に応じてくれた冒険者の皆様。
今回もお疲れさまでした。
マスターコメント
このたびはご参加下さりありがとうございます。
今回は無事に魔獣の退治を完了させ、それぞれの形で温泉宿を楽しむことができましたので、目標達成プラスアルファとみなし、大成功と判定させて頂きました。
少しでも思い出となる時間を過ごすことができましたら幸いです。
また機会がございましたらよろしくお願いいたします。
ショートシナリオ易しい 報酬:標準4 / 4〜6人
2021年12月14日 23時43分14秒 公開
大成功
相談掲示板
おはようー!ルナだよぉー。 『けるぺおす』はルナがサクッと倒しちゃうつもりー。モフりたい人はルナが倒す前にやっちゃってねぇ。