それはただの猫ではなく……
螺子巻ゼンマイ
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シナリオID:1605
オープニング
冒険者ジンク・ガードナーは、革張りのソファに身を沈めながら問い返す。
対面する商人は、「まぁそういう事ですな」と長い髭を撫でながら答えた。
「……なるほど。それは構いませんが……」
妙な話だ、とジンクは思う。
彼が商人の元に訪れたのは、親友からの紹介があったからだ。
『誠実で信用の出来る授恵者に仕事を頼みたい』。親友はそう聞いてジンクを推薦し、親友の紹介ならばとジンク自身も急ぎ詳細を聞きに来た、のだが。
(てっきり、荒事の依頼かと思ってたんだがな)
その依頼が、迷子のペット探しだとは思ってもみなかった。
とはいえ、仕事は仕事だ。特に断る理由も見当たらないので、ジンクは商人から更に話を伺う。
「どんな猫なんです? 毛並みとか」
「黄金に近い毛に、黒のブチがある。珍しいだろう?」
「……そうですね。あとは大きさも聞いておきたいんですが」
「うむ。大体このくらいの大きさかな」
そう言って商人は、身振りで猫の大きさを表現する。
ふわりと腕を回して。……その動作に、ジンクは少し固まって、問い返す。
「猫ですよね? 大型の犬とかじゃなくて」
「…………」
商人は沈黙して目を逸らした。
ジンクは彼をじっと見つめながらも、どうしたものか考える。
商人が示したサイズは、体高でおよそ五十センチほど。
感覚的には、ちょっとした猟犬程度のサイズ感である。
少なくとも、一般的な猫の大きさからはかけ離れている。
「ハッキリ訊きますが。それ、猫じゃないでしょう。毛並みも珍しいし、ひょっとして魔じゅ――」
「……私は早くに妻を亡くしましてね」
深く息を吐きながら、商人はジンクの問いを遮る。
なんの話だ。戸惑う彼に、商人は口を挟む間もなく語った。
「私も辛かったですが、より辛いのは娘の方です。レシアはまだ八歳の内に母を喪って……それから、笑顔をなくしてしまった」
商人には、まだ幼い娘がいるらしい。
母の死から立ち直れずにいたレシアは、しかしある日をキッカケに笑顔を取り戻したのだ、と商人は言う。
「商談をまとめるために、レシアを連れて西の街に向かったんです。旅行することで心の傷が癒えれば、と。その時、レシアはあの子に出会いました」
街に向かう馬車の中で、レシアは汚れた子猫を発見した。
金色の毛と黒いブチ。寒そうに震えていた彼をレシアは保護し、マオンと名付けて大切に育てたらしい。
「そうしてマオンと過ごす中で、レシアもよく笑うようになりまして」
「しかし、魔獣なんでしょう?」
「レシアにとっては大切な家族です。私にとっても、ですかな。まぁマオンは私や使用人にはあまり懐かないのですが、レシアの言う事はよく聴きますし」
マオンが無意味に暴れたり、人を傷つけた事は無い。
商人はそう断言して、改めてジンクと視線を合わせる。
「そのマオンが、いなくなったのです。マオンにもしもの事があれば、レシアは再び笑顔を失ってしまうかもしれない。私はそれが怖いのですよ」
「……いや、だから……はぁ」
ジンクは異議を申し立てようとして、諦める。
これで依頼の謎が解けた。探すペットがただの猫でなく魔獣なら、それは授恵者の力を借りる必要があるだろう。それも、相手が魔獣だからと軽率な真似をしない者の力を、だ。
(どうしたものかな、これ)
ジンクが返答に迷っていると、カタリと音を立て、部屋に誰かが入ってきた。
「あの……」
「レシア。今、お父さんはお客さんと話をしていて……」
「冒険者、なんでしょう? マオンを探してくれる人」
小さな少女は、そう言ってじぃとジンクを見つめた。
彼女の眼は、不安そうに揺れていた。きっとマオンが見つからなくて苦しい想いをしているのだろう。彼女の感情が如実に伝わってきて、ジンクは困り果てた末、声を絞り出す。
「……ああ、そうだよ。この後マオンを探しに行くんだ」
「本当っ!? お願いします、どうかマオンを……!」
ジンクの答えに、少女はぱぁっと顔を輝かせて、一礼する。
部屋を出ていく彼女の後姿を見つめながら、ジンクは「はぁ」とため息を吐いた。
「引き受けていただけるのですね」
「えぇ、まぁ……でも、俺一人じゃ正直自信がない。仲間を募っても?」
「構いません。大切な家族の為です、報酬もしっかりご用意させていただきますよ」
●
「というわけで、猫探しの依頼に付き合ってくれ」
ジンクはギルド経由で出会った冒険者たちに、事の次第を全て伝える。
猫、とは名ばかりで実際は猫系の魔獣であろうこと。
その大きさは猟犬ほどあるが、人を襲った事はないこと。
少女にとってマオンは大事な家族であり、マオンも少女の言う事には素直に従うらしいこと。
「詳しい状況や使えそうな情報は別にまとめてあるから、それを確認してくれ」
ジンクはそう言って、「さて」と冒険者たちの顔を見回す。
「何か起こらない内に見つけたい。どう探す?」
●
同刻、街中のとある酒場。
ジンクたちの知らない所で、ある冒険者たちが麦酒を煽りながら話していた。
「だからよ、黄金の毛の魔獣が出たんだよ」
「この近くに? んなもん生息してたか?」
「いやぁ、初めて見る。デカかったなあれ。狼よりデカい」
「デカいデカいって、それだけかよ。戦ったのか?」
「無理無理、特に依頼されてないし、怖ぇし。でもあれだな、あの群れが街に来たらマズイかもな。遠目に見ただけだけど、なんか気ぃ立ってたし。探しものでもしてる感じ?」
「獲物とかか? 棲み処を追い出されたとか」
「にしては健康そうだったなぁ。ま、俺は魔獣の専門家じゃねぇし? よく分かんねぇよ」
がははと笑って、冒険者たちは更に酒を飲む。
彼らの話をまだ、街の人々は、知らない。
解説
マスターより
リプレイ
「これが猫探しの依頼とは、中々ユニークな言い回しだな」
ジンクから話を聴いたロベリアは、肩を竦めて苦笑した。
いくら猫に近いとはいえ、魔獣は魔獣。それを偽っても仕方ないだろうに。
すまないなと謝るジンクに、「怒っているわけじゃないさ」と魔女は答える。
……それはそれとして。
「ま~お♪ ふふ、かわいいかわいい、おおきいねこさん!」
マオンの姿を想像したミア=リゼルは、その可愛らしさに期待して顔を綻ばせている。
ブチ模様の入った黄金の毛の猫。どんな顔立ちをしているだろうか。毛の長さはどの程度?
どうあれ、それが猫の姿をしているのなら可愛い事に違いはないハズ。
ふふふ、と笑むミアは、ふと隣に座る冒険者に目を奪われる。
「あら、こっちにも金色のもふもふっけさん!」
「私は金色の毛の魔獣じゃないわよ……」
ふわりとした尻尾にもふもふと顔を埋められ、コハクは淡々とぼやく。
なんだこの状況。いや、猫探しの依頼を受けに来ただけなんだけど。
友人にもふられるがままのコハクは、彼女を止めることなく「まずは聞き込みから?」と同行者たちに問う。
「聞き込むにしても、場所は絞った方が良いだろうね。闇雲に探し回るのは非効率的だろう?」
「相手は魔獣だ。魔獣を知る者に聞くのが早いと、ボクは思うね」
まずはギルドや酒場だろうか。
キオルティスやロベリアの提案に、ジンクも頷く。
「それとは別に、件のレディに頼み事をしてもいいかい?」
可能なら、レシアの匂いが付いたものを借り受けたいとキオルティスは言う。
「あっ、それオレも思ってた! 色々聞いときたい事もあるし、会いに行っていいか?」
「分かった。捜索の為なら問題ないだろう、案内する」
ダムド・フィリスの言葉に、ジンクは頷く。
適切な調査の為には、適切な支度が必要になるものだ。
「騒ぎになる前に……手早く進めて行こうか」
気掛かりな点もあることだし。
ロベリアは呟いて、冒険者たちと商人の屋敷へ向かった。
●
マオンが遊ぶリボンに、おやつ。
それから自分が普段着ている服に、ハンカチ。
冒険者たちに頼まれたものを持ってきたレシアは、不安そうな顔で一同を見つめた。
「ありがとう、小さなレディ。これで捜索がしやすくなったよ」
「本当? でも、どうやって……?」
「それはですねー……コハクさん、このリボンの匂いを覚えて下さい!」
「えぇ、構わないけれど」
ミアにリボンを手渡されたコハクは、すんすんとリボンの匂いを嗅ぎながら思う。
この子、私を犬か何かと思ってはいないだろうか。
文句があるわけじゃないけれど、可愛がられ方にたまに心配になる。
「あと、マオンの事、もっと色々聞かせてくれるか?」
そんな彼女たちをさておいて、ダムドはレシアに問いかける。
マオンが好きな場所とか、逆に嫌いなこととか。
資料に無い事も、彼女の口から直接確認したい。
「人の多い所は、苦手かも……お客さんが来た時は、庭の隅っこにいる事が多いから」
日向ぼっこは好きだけど、落ち着きたい時には暗い所に隠れるし。
自分以外が声を掛けても、知らんぷりをしていることの方が多い。
「なるほどなー。マオンの事、よく見てるな!」
「……うん。大好き、だから」
「そっか。レシアとマオンは仲良しなんだな」
彼女たちは、本当に良い関係を築けていたのだろう。
レシアとマオンの関係性は、ダムドにとっても理想的なものに思えた。
「オレは、魔獣とも共生出来たら良いなって思うからさ」
レシア達が仲良しな事が嬉しいと、ダムドは彼女に伝える。
だからこそ、このまま彼女たちが会えなくなってしまうのは、絶対に嫌だと思う。
「見つけて来るよ、待ってろ」
「うん! ありがとう、お兄ちゃんたち!」
そっとレシアの頭を撫で、ダムドは強く言い切った。
「……にしても、幼体を育てたとはいえ、魔獣に懐かれるとはね」
「珍しいことなのでしょうか? マオンは私には懐きませんし……」
「才能が要るのさ。レシア君には、魔獣術の才能でもあるんじゃないか?」
ほら、たまにいるだろう? とロベリアは彼女の父である商人に語る。
獣の扱いがやけに手慣れていたり、奇妙な生物と仲良くなっていたり。
そういう人間は、テイマーの素質を持つ授恵者であることが多い。
「エーテルを扱う力量を見れば分かるんだが……今は難しいかな」
レシアの心は今、不安定だ。調べても正確な結果が出るとは限らない。
とはいえ時が来たら様子を見るべきだ、と魔女は父親に助言する。
「しっかり術を身に着ければ、将来魔獣を飼っても問題ないだろうしね」
「……将来、ですか」
「おっと、深い意味は無いよ? マオン君と共に暮らせるなら、それに越したことはないさ」
彼女の心の傷は既に癒えている、と思いたいが……
出来得る限り、家族は一緒に幸せに過ごして欲しい。
魔女は呟いて、ダムドに期待の視線を寄せるレシアの横顔を、そっと見つめた。
●
「怪我をして、怖くて隠れてるかもな……急いで探すぞ」
街中で、ダムドはすんすんと辺りの匂いを探る。
リボンや寝床から、マオンの匂いは覚えた。
それを追っていけば、ある程度の場所は絞れるハズだ。
「これはー……あっちかな?」
「そうね、向こうは匂いがしないし。ここから西に走ったんでしょう」
ただ、方角は分かっても、具体的な場所は絞り辛い。
何度か道を曲がって、建物の間をすり抜けて行っているようだ。
「あ、なんだかこっちからマオンらしい匂いがするような……」
尻尾を振りつつ、コハクは建物の陰に捜派を走らせる。
「ねこさん、いましたか?」
「えぇ。普通の猫が。マオンの気配は無いわね」
「そうですかー……あっ、ホントに可愛いねこさん!」
茶トラの猫が、物陰で欠伸をしている。ミアは猫を脅かさないよう小声で呟いて、ふふっと無意識に笑みを零す。
「うろついてるのかなー。やっぱ聞き込みしかないか!」
「そうですねぇ。匂いがしてるなら、見かけた人もいるでしょうし」
「酒場は二人が先に行ってるし、オレたちはこの辺の人たちから、かな」
それで成果が出なければ、二人とは別の酒場にでも出向こうか。
ダムドはミアとコハクと相談し、近辺の店や屋台の人に声を掛けていく。
「なぁ、この辺で金毛の動物を見なかったか?」
「金毛? あぁ見たよ、猫だか犬だか分からんけど」
「本当ですか! どの辺りに行ったとかは……」
「一瞬だったからなぁ。屋根の上跳んでったのは見たけど」
「屋根の上、ね。助かるわ」
向こうの方にさ、と店主が指さす先を見て、三人は礼を言う。
手掛かりは繋がっている。このまま捜索していけば、いずれは見つけられるだろう。
●
「やぁ。少し聞きたい事があるんだけど、構わないかい?」
酒場へとやってきたキオルティスは、冒険者らしき男たちのいる席へ近づくと、微笑みを浮かべ問いかける。
「黄金色の毛の魔獣って、知らない?」
キオルティスの問いに、冒険者たちは顔を見合わせた。
知らない、という様子ではない。
しかしすぐに答えないのは、この情報が有益かどうかを推し量っているからだろう。
「俺は冒険者だけど……吟遊詩人でもあってね」
噂で聞いた魔獣を、是非とも詩にしてみたい。
警戒を解く為にそう自己紹介して、キオルティスは店員に人数分の酒を頼む。
飲み代はこちらで持つよと話すと、冒険者たちは「悪いね」と笑って空いた椅子を引いた。
「しかし、誰にその話を聴いたんだ? 俺らまだ戻ってきたばっかだぜ?」
「風の噂はどこからともなく流れるものさ。……けれど」
妙な反応だ。
マオンの件ならば、この街の中の話題のハズだけれど。
「いやぁ、実に強そうだったぜ、あの群れは!」
●
「マオンとは別の、黄金の毛の魔獣の群れ……ねぇ」
「なにか関係があるんじゃないか、と思うんだ。そう、例えば――」
その魔獣の群れが、マオンの血縁である、とか。
キオルティスの推測に、「在り得るね」とロベリアは頷く。
「気掛かりだったんだ。どうしてマオン君は、突然飛び出して行ったんだろう……ってさ」
魔獣の存在が理由とすれば、マオンは群れに会いたがっているのだろうか。
思案する二人はまず、この情報を依頼主に伝えるべきだ、と考える。
「ジンク君にでもひとっ走りしてもらおうか」
「いいや、俺が戻るよ。二人に聴かなければならない事もあるしね」
「……レシア君には、どう伝える?」
「決まっているさ。このままにはしないとも」
キオルティスの答えに、「そうかい」とロベリアは返す。
彼らがどのような結末を選ぶにせよ、知らない場所で全てを終わらせて良いハズが無い。
魔女は息を吐き、彼を見送ると、情報を仲間へと共有しに向かった。
●
「マオンが、家族を探して?」
「推測の域は出ないけれどね。飛び出した原因は恐らくその魔獣だ」
「魔獣さんたちが街に入ったら……まずいですよね」
「混乱はするでしょうね」
もし魔獣がマオンを追って街に入ってきたら、惨事が起こるのは間違いない。
コハクの言葉に、「ですよね……」とミアは呟く。
「……マオンはどうしたいのかな」
「さぁて。それは会ってみない事にはね」
けれど、場合によっては群れに引き合わせてやるべきだろう。
ロベリアが言うと、「だよな」とダムドも小さな声で応えた。
「……よし! とにかく、オレたちはマオンを見つけてやらないと!」
「そうですね。魔獣さんたちの対応は、その後です」
気を取り直して捜索を続行するダムドとミアを見て、ロベリアはふぅと息を吐く。
シンプルな猫探しとは行かなくなったが、それでやるべきことが変わるわけではない。
「……最悪の場合は?」
「戦闘不能で済ませたいね。いくらボクが『悪い魔女』でも」
「そう。……そうね」
二人に聴こえないよう問うたコハクは、魔女の言葉に同意する。
何事もなく終えられれば、それが一番良いのだ。
マオンの為にも、レシアの為にも……彼らを想う、仲間の為にも。
●
「それじゃあ、マオンが来てから二人はこの街から出ていないんだね」
キオルティスの問いに、商人は髭を撫ぜながら答える。
何故そんな事を聞くのか。戸惑う商人に、キオルティスは魔獣の件を伝える。
「街の西で、黄金の毛の魔獣を見たという冒険者たちがいてね。もしかすると……と思うのさ」
「西、ですか」
マオンを保護したのも、ここから西方の街の近くだったと商人は語った。
とすれば、あの魔獣たちは西からこの街まで歩いて来たのだろうか。……子どもを探して。
「俺は魔獣を捜索するつもりだ。必要なら、その対応もね」
だけどその魔獣たちが、本当にマオンの血縁なのだとしたら。
「小さなレディ。君は、どうしたい?」
●
「いたーっ!」
「金色の毛並み……間違いないでしょうね」
ダムドとコハクが、遂に彼を捉えた。
エーテルの波動によってマオンの位置を確認し、ミアとロベリアに共有する。
「なるほど、立派な猫じゃないか」
「いっ、今おやつ出しますね……!」
ロベリアは関心した風に笑みを浮かべ、ミアは彼のおやつを取り出す。
建物の陰に隠れていたマオンは、冒険者たちの気配に気づき、さっと姿勢を低くした。
どうやら警戒されているようだ。
(同じ毛色だからって、私には懐かないでしょうし)
仲間たちの挙動を見守りながら、コハクはそっと距離を置く。
猫の獣人ならまだしも、私は狼だし。大勢で取り囲んでも、敵意を感じさせてしまうだろう。
「ま~お♪ ほら、おやつですよ~……」
「……」
「こほん。マオン……大丈夫だからね」
おやつを見せながらゆっくり近づくミアとダムド。
ミアの言葉には警戒を崩さなかったが、ダムドがレシアの声を真似ると、鼻をひく付かせ戸惑った。
その隙に、ギリギリまで距離を詰め切ったダムドが、マオンをレシアの服で包み保護する。
「ふぎゃッ!」
「わっ……とと。大丈夫、大丈夫だよマオン」
「はい。私たちは敵じゃありませんよ」
「ほぅら、君のよく遊んでいたリボンだ。気を落ち着けるといい」
声真似で優しく呼びかけるダムドと、柔らかな毛に直接触れ、害意の無い事を伝えるミア。
そしてロベリアがミアのリボンを見せると、彼らが敵でないと理解したのか、マオンはゆっくりと大人しくなっていく。
「それで……どうしましょう? やっぱりマオンさんを外に誘導した方が……?」
「街の危険を避けるなら、そうでしょうね」
「でも、レシアはどう伝えよう」
「その心配は無いだろうねぇ。キオルティス君が間に合っていれば――」
ロベリアが言いかけた時、小さな足音が近づいてきて、マオンが頭を上げた。
「レシア! なんでここに?」
「お兄さんに、話、聞いて……」
息を切らせて現れたレシアに、ダムドが駆け寄る。
キオルティスが彼女に今の状況を説明し、ここへ来ることを勧めたのだ。
「マオンが選ぶ道を、見届けるべきだ……って」
●
魔獣の居所は、先にキオルティスが確認していた。
即座に襲ってくる雰囲気ではないが、気は立っている。
「レディ。君たちの事は俺たちが守るから、決して前には出ないでくれるかい?」
緊張するレシアと商人の前を、コハクやミア達が歩く。
マオンを連れて歩いていると、やがて互いが互いの存在に気が付いた。
咄嗟に駆け出したマオンに、レシアがあっと声を上げる。
「なーぉ……?」
「小さなレディ、マオンのママだよ」
マオンが駆け寄ると、群れの一匹がマオンに近寄り、愛おし気にその頭を舐めた。
マオンは嬉し気にそれを享受し、ゴロゴロと鳴く。
「レディはマオンのこと、どう思う? 自分に当て嵌めてごらん?」
「……」
母を亡くした少女は想う。
何がマオンの幸せか。マオンに、何をしてやれるのか。
少女は手を握りしめ、小さな声で呼びかけた。
「マオン。……行ってらっしゃい」
魔獣の群れは西へと駆けた。
マオンは考え込んでから、少女に「まぁお」と呼びかけて。
群れの元へと、走り出す。
●
「寂しいよな……オレも独りだから、少し判る」
その場で泣きじゃくるレシアに、ダムドは優しく呼びかけた。
本当なら一緒に居たかったはずだ。それでも選択した少女の頭を、ダムドはそっと撫でてやる。
「せめて、マオンは母さんと会えて良かったって、喜んでやろうよ」
少女は頷くが、今は涙を止められない。
悲しむべき時なのだ。ダムドは思って、今度は近くに立つ商人に声を掛ける。
「おっさんも寂しいだろうけど、しっかりしろよ」
今レシアを支えられるのは、親である彼だけだ。
「母さんとマオンの分……2倍も3倍もギューッ! だぞ」
「……あぁ、そうだね」
商人はダムドの言葉に頷いて、そっと娘の傍に寄り、肩を抱く
二人なら、この悲しみも乗り越えられるだろうか。
冒険者たちはそれから、彼らが立ち上がるのを待ち……静かに、街へと帰った。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2021年11月17日 17時09分14秒 公開
相談掲示板
ま〜お♡ ふふ、かわいらしいお名前の…おおきなねこさんですね! っと、ヒーラーのミア=リゼルと申します。 ひとまずどなたかいらっしゃるのをお待ちしつつ… PL情報の落とし込みをどうするか、考えておかないとですね
シーフのダムドだ、ミアまた会ったな、宜しく。 5匹の魔獣は親の迎えかな? なら戻す方が幸せそ……ん…オレが考えるよりマオンに決めて貰うか。 今のところさ、マオンの匂いを覚えて超嗅覚と双波とを合せて探そうと思う。 一緒にレシアの匂いの付いたのも借りて、マオンの警戒心を和らげようとも思うよ。 後は…黄金の毛をもつ生物を見なかったか?と聞き込みしたら 酒場の冒険者や他の見た人に行き当らないかな? ……って感じだ、他の方法が思いついたら改めて話すよ。
どうも。シューターのキリアン・フィッツジェラルドと申します。 宜しくお願い致します。 僕としても、PL情報ではあるのでしょうけどマオンの正体は黄金の毛の魔獣の血縁者ではないかと睨んでいます。 僅か3か月ですくすくと育って今や猟犬もかくやの体躯、レシアさん以外の人間が接し方を間違えれば牙を剥くという記述が気になりまして。 ならば僕からも捜波を使うほか、ホークアイと看破を併せるつもりです。 ペットの連れ込みは、もう少し考える方向で。 連れ込めばペットから主人へ、視覚や聴覚で得た情報を共有する事が可能という利点はあれど、孤高者の捜波(捜波80)が使えなくなってしまうのが。 僕からもう一つやってみたい事は、レシアさんと、彼女の父とされる商人ときちんと向き合わせる事ですね。 別に彼から身も心も病みかねないような仕打ちを受けたという訳では無く、彼も彼でレシアさんを大事にしているようですが、お母様の死のショックに打ちひしがれていた時に出会ったマオンの存在の大きさもあって、どうも彼女には伝わっていない様子。 エンパシーで、その感情の真贋は確かめるつもりではありますが、その意味では洞察も捨て難い。
ダムドさん、それにキリアンさんも。 奇遇なのです、よろしくお願いします! そうですね…仲間か親か、という感じがします。 私は聞き込みで捜索のお手伝いをしつつ…動物交感…でしたか、そのスキルでマオンさんの気持ちを汲み取れたらな…と思います。 5匹の魔獣さんたちにまで通用するかはわかりませんが…
4人~やったー!探しに行けるな! 親父とレシアとマオンと魔獣たちと、全部が大団えーん?になるように マオン探しから行ってくる。 レシアにレシアの匂いの付いた服を借りて怖がらせないようにするのと マオンの好物やお気に入り玩具も借りていきたいな…みんなも借りないか? 後は…マオンの習性を聞かせて貰う。 探すのに必要な事は共有情報ってやつにするからな!
ボクはエルフのロベリア、見ての通り悪い魔女さ。 皆、よろしく頼むよ。 でっかい猫…モリネコ(もふもふな滅茶大きい猫)かな?って思ったら強そうな魔獣だった… ボクも魔獣とマオンとの関係性についての考えは概ね皆と同じ感じかな。 >父と娘 ボクも、キリアン君と同じで気になってるかな。 どういうアプローチで…っていうのはまだ考え中だが、どちらにしても…マオンを連れて帰れない可能性もありそうだし、話すタイミングは必要だと思うかな。 >マオン以外の魔獣の存在・情報 こっちに関しては、魔獣の事は魔獣に対応できる同業者に聞け!スタイルで聞き込みしようかな~と思ってるかな。 ついでに、このまま街に入って来られると大変な事になりそうだし…そっちの対応も考えておいた方がいいかな? もし、戦闘になる場合は戦闘不能にせざるを得ないだろうけど、光縛呪で身動き取れなくした上で殺しはしないスタイルで行くべきか考えてるんだが…どうだろうか。 無論、魔獣を街の辺りに放り出すのはあまりよくなさそうだけどね。
満員おめでとうございます!頼もしい限りです なるほど、おやつや好物を…レシアさんの匂いがついたものも、良さそうですね。警戒されないことが第一…!では私、ダムドさんのお手伝いにまわりますね あ…でもそうですね、魔獣さんたちが街の中に入ってこられると大変です。ロベリアさんのおっしゃる通り、そちらも考えなくては、ですね。 もし引き合わせることが可能なら…それで少し様子を見て見たい気もします。その場合街の外へマオンさんを誘導、ですね。 …ついて行ってしまうかしら。そうするとキリアンさんのおっしゃる通り、ご家族へのケアも必要ですね… 魔獣さんたちが街に入ってきてしまった場合…光縛呪は確かに閉じ込めもできるのですが、3ラウンド(15秒)とのことですから、その間にどうにかしなければいけないのと、1Hex(4キャラクターまで)なので、1匹漏れてしまうので、工夫が必要ですか。
六匹目の黄金の毛の魔獣…じゃなかった。 シーフのコハクよ、よろしく(ぱっと見黄金の毛の魔獣) マオンと魔獣の関連性は私も皆と同意見ね。 群れに帰る為に向かったのか、群れを止めに向かったのか…まぁ確かめれば分かることでしょう。 父娘については皆に任せるわ。 私はマオンに集中する
おや、コハクさんが魔獣の1人だとすると、他の魔獣も美人さんばっかりだね! さて…と。顔出しが遅くなってすまない。 シーフのキオルティスと言うよ。キオでもルティスでもお気軽に。 初めてさんも顔見知りさんも今回は宜しくね。 マオンと魔獣の関係、それから大まかなマオンの探し方は同意見かな。 細かい部分や持物、スキルは各々考慮の上、最適解を持って行くとして。 それよりもロベリアさんやミアさんが言ってるように、魔獣たちが 街に入って来るのが一番の悪手だと思う。 その辺りをどうしていくかが相談ドコロかな…と。 ここが決まるなら、俺もそっちに本腰入れて、父娘については任せるよ。
(ここ迄を読んで神妙に頷き) 判った、父娘の件と魔獣の町に侵入部分もどう動くか考える。 魔獣はPL情報だから、その為にも聞き込みを重視して早いうちにPC情報へするよ。 情報を入手すればマオンとの関りも考えられるから そしたら…例えば、警戒役と捜索の2手に分れても良いよな? >依頼開始時、マオンは街のどこかに潜んでいる。 発見が遅れれば、街の外に出る可能性もあるなぁ…って思うし 5匹の魔獣とは戦うというより足止め重視(最悪戦闘不能へ) 後は、どう言う段取りで進めたら 戦わずにマオンとレシアの両方を幸せに出来るかな…って考えてるよ。
続けて書いてごめんなー! 読み直してみて、目的が《ペットの猫「マオン」の発見と確保》だから どう確保するか迄を主にして後は、字数が有るだけ 《五体の魔獣と鉢合わせたらどう動くか》と《父娘への対応》を書こうと思う。 もし先に5体とマオンが出会って、懐いてる様子なら引離したくないし 結果的に、確保を諦めるなら父子にどう納得して貰うかに成るかも知れないからさ…。 それと、警戒役と捜索の2手に分れるなら、捜索を継続するよ。
獣が増えた!もふもふしなくちゃいけないね…(何 っと、昨夜発言したつもりで出来てなかった…遅くなってすまないね。 >光縛呪 多分、ヒーラーの光縛封と混ざっちゃってるかな? 今、ボクが装備してるやつがソレだね。 無抵抗ならほぼ確実に成功、戦闘不能の相手にも使えるって感じでこっちは60分継続して拘束出来る感じだよ。 なので、もし戦闘になった場合は(割と強いらしいので手加減するとやばそうって判断してるよ)トドメを刺さずに戦闘不能状態で拘束しておくのがいいかなって考えてたよ。 無論、戦闘にしないのが一番だろうけど…念には念を入れて、だね。 >五体の魔獣とマオン これに関しては、時間が経ち過ぎるとマオンが単身外に行くor魔獣が街に接近して大騒ぎになるって感じで予想してるかな。 故に既に言われてる通り見つける速度が鍵だと思ってるよ。 そして、肝心のマオンの確保についてはダムド君が先に発言してる通り…マオンの警戒心を和らげるような道具や食べ物を借りるのでボクも行こうかなぁと思っているよ。 (ついでに食べるか分からないけど動物用おやつ用意しながら)
…ああっ!? 光縛呪を光縛封と読み違えて、光縛封のつもりで書いてたら光縛呪って書いてました…背後さん疲れているようです…失礼しました(( あ、あと臨機応変に対応、各方面への対処を記述しておく、というのはあると思うんですけど、メインはどう動くか改めて整理させてもらっていいでしょうか…! 【マオンの捜索】ダムド、ミア、コハク 【魔獣の警戒】
いやいや、構わないよ。 名前が似すぎてるからねぇ…それに、頻繁に使う魔法じゃないから仕方ないさ。 背後さんは無理しちゃだめだぞ~! ボクも結局臨機応変だが…マオンの捜索を優先になるかな?依頼人親子とも話したいしねぇ。 【マオンの捜索】ダムド、ミア、コハク、ロベリア 【魔獣の警戒】
ギリギリになったけれど… とりあえず、役割としてはマオン<魔獣と言う感じ、かな。 警戒と言うワケではないので今挙げてある選択肢には 少し当て嵌まらないような気もするけれど。 一応、選択肢として分けるなら、マオン捜索は置いといて 魔獣対策なので、警戒、になる…のかな? 【マオンの捜索】ダムド、ミア、コハク、ロベリア 【魔獣の警戒】キオルティス
ロベリアさん、キオルティスさん、ありがとうございます! ギリギリにすみません…! であればどこか手が回らない、というところはなさそうですね… もし魔獣を見つけた時の位置の確認なのですが、その場で魔矢を空に打ち上げようかと思います。光縛呪も持っていきますね。
合図に魔矢だな、判った。 オレは魔矢を持つ余裕がないんで非常事態は笛(管楽器)を鳴らして知らせるよ。 マオンを驚かせたくないから、本当の非常事態の時だけな。