【FF】辺境都市の収穫祭

東山秋治

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シナリオID:1572

オープニング

●迷宮都市エドゥノーグ
「新しいダンジョンですか?」
 冒険者ギルドの事務室。収穫祭の企画を纏めるためにペンを走らせていたルイウェン・ヴェーリンは、同僚の話に手を止めて聞き返す。
「うん、危険度はそこそこだけど、あまり深いわけじゃないみたい。企画に使えるかなって」
「なるほど……」
 企画の筆を一旦置き、休憩がてら調査結果を閲覧すると、物理的なものよりも精神的にクるものが多かったようで。しかも、ダンジョンに入る際に選んだ入り口でトラップの場所や強度が変わるらしい。
「……収穫祭でダンジョンアタックもどうかと思いますが……。ランタンの販促には使えそうですね」
 調査報告書を傍らに、書きかけだった企画書に、企画の追加をしていく。


●水上都市アキュアリスタ
「ほう、ヒカリゴケを使った光源ですか」
 エドゥノーグの企画を提出した数日後、ルイウェンはアキュアリスタで収穫祭の仕切りをしているギルドの顔役たちと面会していた。
「はい、火ではないので密閉も出来ますし、水路内に光源設置なども出来るのではないかと」
「なるほどなるほど、それなら夜の街を今まで以上に明るくできますな」
 顔役たちは乗り気のようで、話は進む。
 さすがにアキュアリスタ全体に設置する数は用意できない為、一部の区画への集中配置となったが、これまでのお祭りとは少し違った雰囲気が楽しめるだろう。


●学術都市ヴェルクリエ
 他二都市よりも食いつきがよく、特に職人や芸術家たちが瓶の装飾について乗り気であった。
 いっそのこと、一般参加可能な装飾コンテストをなどという話も上がってきた。
「コンテストですか……。入賞は販路に乗せる際の商品の一つとするのもありですね」
 提供元からの反応次第ですが、とメモを取るルイウェン。
「……熱が出ないですし、図書館の明りに使うのも悪くないですか」
 聞き取った企画を纏めながら自分でも思いついたものを書き込んでいく。


 後日、ランタンの試用企画として、各都市からの提案が収穫祭のイベントとして追加された。
 光陰矢の如し、イベントの調整などで各都市を行き来すること半月ほど。気づけば収穫祭の期間になっていた。
「なんとか形にはなりましたし、楽しんでもらえるといいんですが」
 ヴェルクリエの図書館前。賑わい始めた街を背に、図書館に入っていくルイウェン。
 このすぐ後に、上司の命を受けた同僚に捕獲されることはまた別のお話である。

解説

どの都市のお祭りに参加するかをご指定ください。 プレイングで特に言及がない場合はゲスト(お客様)としての参加となります。 露店などを出す場合はその旨プレイングに明記をお願いいたします。 各都市で参加できるイベントは以下の通りとなります。 エドゥノーグ:ダンジョンアタック アキュアリスタ:ランタンを使用した夜景 ヴェルクリエ:ランタン外装の装飾コンテスト(飛び入り参加可) ※※重要※※ ・カップルで参加の場合、双方が同行者の名前の記載をお願いいたします。 ・グループで参加の場合、【】で括ったタグをご利用ください。 以下は、今回各都市で使用されているランタンの解説となります。 ●テラリウムのランタン 【大変動】の折、サウゼル大樹海で発見された新素材『ヒカリゴケ』を使用したテラリウム。 とある冒険者の熱意と知識により考案された。 まだ商品化にはいたらないものの、モニターがてら祭りを彩る明かりとして『神匠』ヴィンダールヴルより貸し出しされている。 瓶の中に寄せ植え的にヒカリゴケの生育環境を再現したもので、素人の世話では枯れるまでに3日ほど。また、瓶から出せばすぐに枯れてしまう。 瓶に着色したり、外装のデザインにこだわるなどして柔軟な運用が可能。

マスターより

収穫祭、後発となりますがお祭りイベシナをお届けいたします。 フリーアタックとなりますので、皆様思い思いの行動を取っていただければと思います。

リプレイ

●ダンジョンの一幕・その1~迷宮都市エドゥノーグ~
 収穫祭に合わせたかのように出現したダンジョン。
 入ってすぐの広間にある複数の通路から一つを選んで入っていく形式で、冒険者達が思い思いに道を選んで入っていく。

 そんな中の一つ。
 暗闇の中、テラリウムのランタンを掲げながら進む人影があった。
「トラップとかもあるみたいだから、気を付けてね」
 と、声をかけるのはバクル・バスリー。
「ええ。思ったよりも明るいですね」
 バクルに頷き、彼の持つテラリウムのランタンを見やるリディリディ・トゥラ・イェレミース。
 『ドワーフが造ったもので信用が置けるのはお酒くらい』とのことで、ヒカリゴケの光量や照らせる範囲を懸念していたリディリディだったが、どうやら杞憂のようだ。
 魔法の灯り(エンライト)よりは光量が落ちるものの、使用感は普通のランタンとあまり差はなさそうだ。大きな違いといえば……。
「ランタンや魔法の灯りに慣れてるせいか、違和感がありますね」
「そう? 自然のダンジョンだと、ヒカリゴケが照らしてくれるところもあるんだよね。違和感は光の質の違いかも」
 ランタンや魔法の灯り(エンライト)とは違い、照らすというよりは浮かび上がらせる、といった質の光ということもあるのかもしれない。
 なるほど、と頬に指を添えてしばし思案……を止めたところで、前を行くバクルが立ち止まる。
「どうしました?」
 しゃがみ込んで床を調べているバクルに声をかけつつ、彼の肩越しに覗き込む。バクルは、床の石の継ぎ目に指を滑らせながら目を細めている。
「……床の石、ぼくが踏んだ所だけ踏んでついてきて」
「え、あ……トラップですか?」
「うん、他を踏んだら多分落ちる。10mも歩けば抜けられるとは思うけど……」
「……そこそこ危険、の方でしたね……」
 慎重にバクルの踏んだ石を注視して後に続くリディリディ。そのまま10mほど歩いただろうか、バクルの歩みが普段のものに戻る。
「抜けました?」
「うん、気づけて良かったよ。さあ、まだ先は長そうだ」

 それからは……。

「走って! 立ち止まると矢に当たる!!」
 通過と同時に壁から矢が連続射出されたり。

「……ありました。これがスイッチですよね?」
「うん、これでトラップ発動させずに扉開けられるはずだよ」
 扉の爆発トラップ(解除スイッチは壁石を剥がしたところに……)を回避したり。

…………
……

「ふぅ……ここが最深部みたいですね」
 モンスターこそ出ないものの、その分を補うような数のトラップをかいくぐった先、重い石の扉を二人がかりで押し開けた先は行き止まりだった。
「調べたら少し休憩して戻ろうか」
 危険が無いことを確認し、奥の壁を背に腰を下ろす二人。
「ほら、肉の方はリディリディさん食べなよ」
 リディリディはバクルに差し出された干し肉を一口。凝縮した肉の旨味が口に広がる。
 目尻を下げて、味わうように少しずつ千切って口に放り込む。
「干し肉は味が凝縮されている感じがいいんですよね」
 いつも美味しそうに食べてくれる。だから、肉を食べているリディリディは好き。
 そんな思いから、少しずつ味わうように食べる姿を見てバクルの目が細くなる。
「打ち上げでもっと食べられるから、もうひと頑張りしよう!」
「食べ歩き、肉露店全制覇もいいと思いますっ」
「よし、それも行こう!」

 その後、部屋を再捜索して打ち上げの食事代になりそうなアイテムを確保すると、来た道を引き返す。
 そして、露店の肉料理に舌鼓を打つと、打ち上げの為に酒場に向かうのだった。


●ランタン装飾コンテスト~学術都市ヴェルクリエ~
「では、こちらに参加者のお名前を……」
 学術都市ヴェルクリエではテラリウムのランタン外装の装飾コンテストが開催されていた。
 そしてその参加受付の列に、3人の冒険者の姿があった。
「では、締め切りまでに提出をお願いしますね」

「制作期間を取ってもらえるんですね。参加者を一か所に集めてその場で作るものかと……」
 渡された参加要項を見ながら呟くのはコルネリウス・アーラ。3人組の一人だ。
「街の職人の参加が多いらしいからねぇ。事前に準備が出来ちゃう分、一般参加者と差がついちゃうから、その穴埋めじゃないかな」
 コルネリウスに明るく返すのはサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブ。
「ま、工房付きの宿も紹介してもらったし、制作に集中できるってもんさぁ」
 二人を先導するように歩きだすのはフリューリングスルフト=ティエラ。一行は哨戒された宿に向かって歩き出す。

 宿に着いた一行は、荷物を纏めるのもそこそこに工房を借りて制作を始める。
「ふっふっふ。色彩イカのサッフィー。花飾りクラゲのコルネ。そして彫金タコのフリュー!」
 最強の布陣さぁ! と、笑みを浮かべるフリュー。そして、彫金台に向かうと、さきまでのノリ軽さはどこへやら、真剣な目つきで小さなハンマーやタガネを使い、自分の担当である吊り下げ用の土台作りにかかる。
「フリューさんは……声をかけない方がよさそうですね。……私はどうしましょうか」
 コルネリウスの担当はランタン内の装飾に使うドライフラワーの作成と飾り付けなのだが……モノがモノだけに、作ったものを持ち込んでいたのだ。
「アタシもこれからカバー作るし……そうだ、展示してるランタン見てくるのもいいんじゃない?」
 飾りつけのインスピレーション湧くかも、とサフィラ。すでに作品を提出している職人もいるようで、展示用のスペースが会場の一角にあるらしい。
「そうですね。他の方の作品も気になりますし、行ってきますね」
「気になるものがあったら教えて欲しい次第さぁ」

 そして、作品の展示場。
 既にいくつか展示されている作品は、本職の職人が手掛けただけあり、緻密な彫刻や綺麗な色ガラスを使った作品が並ぶ。
「本職の方はさすがですね……」
 コルネリウスは一つ一つじっくりと鑑賞する。
「コンテストというだけあって、どれも素晴らしい作品でした」
 嬉しそうに一つ一つを記憶の中で反芻しながら、友人たちが作業をしている宿へと歩を向ける。

 翌日、それぞれが作ったパーツを支給されたランタンに組み入れていく。
「素敵な土台……フリューさんは器用なんですね」
「それほどでもないさぁ」
 コルネリウスの言葉に、照れくさそうに頬を掻くフリュー。
 彼女の作った土台は深海の街をテーマにした吊り下げ用のもの。シンプルだが立体感があり、所謂”映え”そうな一品だ。
「このお花はコルネさんが育てたん? 綺麗さぁ♪」
 そして、その土台に置かれるランタン内のテラリウムに散りばめられるコルネリウス作のドライフラワー。
 白、赤、青それぞれがバランスよく、ヒカリゴケの光の邪魔にならないよう細心の注意のもと配されている。
「そしてあたしのこれで完成するのだっ」
 サフィラが作っていたのは、シャガルネ製の紙で作られた「イカ(白)、タコ(赤)、クラゲ(青)」を模したランタンカバー。
 どうやら、コルネリウスのドライフラワーも色を合わせているようだ。
「いいですね。シャガルネの紙だと、明かりが柔らかく感じます」
「ふぁ、さすがサッフィー! 色付けも斬新さぁ!」
「これはめっちゃいい出来! さあ、提出だー!」

 展示の翌日。彼女たちのランタンは職人たちからもちょっとした注目を集めていた。
 フリューの用意していた秘密兵器「深海魚の頭の先オブジェ」。額の辺りから生えた釣竿のような触角先に、提灯のようにランタンを吊り下げるという奇抜さがウケたようだ。
 そして、アピールのために彼女たちの着ていた衣装……。
「ふっふっふ……色彩イカのサッフィー。花飾りクラゲのコルネ。そして彫金タコのフリュー! 最強の三人衆さぁ!」
 はい、軟体動物のコスプレです。

 以下は、衣装を着ようとした際のやり取りである。
「……ところであの、どうして軟体類なんですか? え、細かい事は気にしない、はい」
「そう! 細かいことを気にしてはいけないのさぁ!」
「にゅふふ……イカとタコと来ればクラゲ! 脚がたくさんあればバイキングもいっぱい食べれるもんね!」
「……それって、理由なんですか……?」

 閑話休題

 さすがに[念動力]を使ったアピールは作品外とのこととしてNGを食らったものの、飛び入り参加組の作品中では高い評価を得、特別賞としてヴェルクリエの有名レストランの食事券が進呈されたとか。


●ダンジョンの一幕・その2~迷宮都市エドゥノーグ~
 だわ、は貸し出し用に展示されているランタンをしげしげと見つめていた。
 火のランタンは常用してきたが、ヒカリゴケを使ったものは初めて見るのだ。それは他の冒険者達も同じようで、値踏みするように観察して借りていく者、借りずに潜る者様々だった。

「一つ借りれるか?」
「はい、どうぞ。万が一割れてしまったりすると、すぐに枯れて光を失ってしまいます。予備の灯りはお忘れなく」
「意外とデリケートなんだな……」
 ともあれ、借りたランタンを掲げて広間の入り口の一つへ。彼がランタンを眺めているときに後ろを通ったリザードマンとエルフのペアの話では、光量や範囲に問題は無いようだ。

 それからしばし、同じようにランタンを借りてダンジョンへ踏み出す冒険者が一人。彼女は、だわが入っていった通路と同じ通路を進んでいった。

「落とし穴か……っ!?」
 だわは足元に不穏な気配を感じると、膝を突いて床に指を滑らせる。どうやら、左右に迂回できるぐらいのスペースはありそうだ。
 そこに、天井から水滴が一滴。だわの首筋にポトリと。
 直後、壁に貼り付くだわの姿。心臓がバクバク言っている……しばしの間。
 壁に貼り付いたまま落ち着いたところで、蟹のように歩いて落とし穴と思しき範囲を超える。一息ついて来た方に目をやると、自分の持つランタンと同じような光がうっすらと見える。
 無意識に腰の柄に手が伸びる。そう、彼の剣は一見したところ柄だけにしか見えない。
 角から姿を現したのは、ランタンを掲げたエルフの女性だった。
 そのエルフ――サシャ・テーリング――は、目の前の青年を見ると、あら、と声を上げ。
「道が被ってしまったみたいね」
「どうやらそのようだ。っと、こっちに来るなら脇を通ってくれ。落とし穴だ」
 その後、互いに自己紹介を済ませ、何かの縁と協力してダンジョン探索をすることになった。

 彼等の選んだルートは、トラップの数は少ないものの、小型の魔獣と組み合わされているようで。
 ランタンとは違うシアンブルーの光が、僅かに周囲を照らしながら斬撃の軌跡を描く。
「小型とはいえ、数が多いぞ……」
「そういう割には、的確に切り捨ててるみたいだけど?」
 そう、魔獣と対峙すると、だわは的確に首を落としにかかる。
「その方が効率がいいしな。それだけだ」
 サシャが魔弓や魔矢で先制し、だわが切り込んでとどめを刺す。即席コンビとはいえ互いに冒険者、自然と連携は出来上がっていた。

 それからは、先行するだわが落とし穴を踏み抜いて落ちたりしたものの、概ね無事に最深部に辿り着けていた。
 道中の魔獣は、倒すたびにサシャが使えそうな部位を解体して袋に詰めていたりする。

「ここで行き止まりみたいね。少し休憩したら戻りましょう」
「ああ、そうだな」
「このランタン、仄かに照らしてくれるのが守られてる感があるわね」
「火を使った時と周囲の色が違って見えるから、最初は戸惑った」
 確かに、と笑うサシャ。

 その後、最奥の部屋でいくばくかの換金できそうな品を手に入れ、今度はトラップにかかることも無く来た道を戻って入り口に辿り着く。
「いい感じでした。なんか、守ってもらっているような感じがして」
 ギルドのスタッフにランタンを返却しながら使用感を告げるサシャ。
 その脇で、だわが大きく息を吐いていた。彼的には、なかなかにハードな探索だったようだ。


●祭りの新しい灯り~水上都市アキュアリスタ~
「それでは、こちらのスペースを使ってください」
 ユズとハーヴィが案内されたのは、テラリウムのランタンを照明に使う区画の一角。区画の端というわけでもなく、人通りも見込める好立地だ。
 他にも冒険者と思しき参加者が露店の準備をしている。
「師匠、いい場所もらえましたね。早速呼び込みしてきます!」
「うん、よろしく……」
 テントの設置を終えると、元気よく往来に出ていくハーヴィ。

「そこの方、占いはいかがですか? どんなお悩みでも大丈夫、きっとあなたの前途に一筋の光明を見出してみせますから」
 少々大げさな身振りで道行く人々に語り掛けるハーヴィ。最初は素通りする人も多かったが、彼(?)の容姿やその話術に惹かれて足を止める者も徐々に表れる。
「当たるも八卦当たらぬも八卦とは言うけれど、師匠の占いは転ばぬ先の杖でもあるんですよ。何事も備えあれば憂いなし、ってね。お試し感覚でも構いませんよ、今宵のお祭りの楽しい思い出に是非どうぞ」
 足を止める人が増えた来たところで、畳みかけるように案内の言葉をかけていく。
「じゃ、じゃあ見てもらえますか……?」
「あ、その気になってくれました? ふふっ、嬉しいな。じゃあ、このテントの中へどうぞ」
 ハーヴィの話に聞き入っていた女性が一人、おずおずと手を上げる。

「師匠、お一人様ご案内です。宜しくお願いします」
「いらっしゃいませ。今日は何を占いましょうか? ――さぁ、どうぞ」
 恋人との仲が上手くいっていないというのが相談内容だという女性。仲直りしたいけど踏み切れない、そんな印象だ。
「なるほど……かしこまりました。では、この水晶玉を覗き込んで下さい」
 女性の話に静かに聞き入り、何度か頷いた後で、二人の間に置かれた水晶玉を覗くことを促す
「水晶が、貴方の未来を映し出しています。……大丈夫、このお祭りの間に彼と仲直り出来ますよ」
 女性にも何か見えたのだろうか、テントに入ってきた時とはうって変わって明るい表情になり、ユズに何度も頭を下げてテントを出ていく。
「……幸がありますように」
 女性の後ろ姿に、優しい笑みを浮かべて声をかける。
「師匠、次の方大丈夫ですか?」
 ハーヴィが入り口から顔を出して尋ねてくる。
「ん、いいよ。次の人を通して……」

 他の占い師よりも具体的に未来を見せてもらえると口コミが広がったのか、その後もひっきりなしに客が舞い込み、気づけば日も傾いてテラリウムのランタンが吊り台や水路の設置台に置かれ始めている。

 エヴァン・ピオネロがアキュアリスタを訪れたのは、そんな時間だった。
「これがヒカリゴケのランタン……」
 煌々と照らす魔法や火の灯りと違い、優しい光で周囲のものを浮かび上がらせるような灯りに見入る。
 自分の能力不足を感じ、自信を失っていることは自覚している。そしてそれが自分を追い詰めている悪循環にはまっていることも自覚できている。
 だから、そんな気分を切り替えられればとアキュアリスタにやって来た。
 テラリウムのランタンの光を見ていると、ささくれ立っていた自分の気持ちも落ち着いてくるような気がする。

 悶々としたものを抱えて歩いていると、とある呼び込みが耳に届く。
「占いの館ミーティア、まだ開いてます! 今ともされているランタンみたいに、どんな暗闇だって一筋の光明は見出せますよー!」
 ハーヴィの呼び込みだ。
「……あの、見てもらえませんか……?」
 占いをきっかけにするのも悪くない。エヴァンがハーヴィに声をかけたのはそんな思いからだった。
「いらっしゃい! 師匠、お一人様ご案内です!」

「いらっしゃいませ。何を占いましょうか?」
「えっと……ぼくが独り立ち出来るかを……占ってください」
「ふむ……かしこまりました。では、こちらの水晶玉を覗いてください」
 促されるまま水晶玉を覗き込むエヴァン。薄っすらと何かの影が見えてくる……。
「……先行きは暗雲が立ち込めています」
 ユズの言葉に肩を落とすエヴァン。しかし、続けられた言葉に顔を上げ……。
「ですが、どうか不安に囚われないで。自分の意思で動くことが良い結果に繋がります」
「ほ、本当ですか!?」
「はい。周囲の人達と積極的に交流を図って下さい。きっとあなたを助けてくれる筈です」
 ぱっとエヴァンの表情が明るくなる。
「ありがとうございます! ぼく、頑張ってみます!」
 入ってきた時の少し沈んだ表情は消え、元気よく頭を下げてエヴァンはテントを出る。
 そして思う。
 ――立ち止まって考えても判らないなら、思いっきり動こう。したいと感じた事を迷わず進めよう。
「その方が後悔もしませんし、ね」
 もう一度ユズのテントに向かって頭を下げると歩き出す。
 まずは……恋人をエスコートし来れるよう観光と料理(珍しい・美味しい)の下見。案内板や出店の位置、お手洗いもチェックしなければ、と前向きな考えを巡らせながら。

 エヴァンが去った後の占いテント。
「師匠、どうします? そろそろ店じまいにしましょうか?」
「うん。……お仕事、疲れた……」
「じゃあ、店畳んでお祭り行きましょう、お祭り!」
 ん、と頷くユズを見て、てきぱきとテントを畳み始めるハーヴィ。
 しばしの後、荷物を商人ギルドの受付に預けて露店を巡るユズとハーヴィの姿があった。

「ランタンの光が幻想的ですね。綺麗だなぁ」
「うん。……ランタンの、灯り……綺麗」

マスターコメント

お疲れ様でした。 思い思いのお祭りを楽しんで頂けたのなら幸いです。 ご参加ありがとうございました。
イベントシナリオ

イベントシナリオ易しい 報酬:少ない10 / 4〜25人

2021年11月14日 16時41分33秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ユズ

    占い師、ユズ。……よろしく。 アキュアリスタで、占いの出張露店、出すつもり。 もし占って欲しい人、いたら……何を占って欲しいか、先に教えてくれたら、プレイングに結果、書いて、伝える、ね。 ご検討、下さい。

  2. エヴァン・ピオネロ

    キャスターのエヴァンピオネロです。よろしくお願いします。 お祭り~と見たら、占いが有りました。 ユズさん、占って欲しいです。 内容はお手紙でこそり…しても良いですか?

  3. ユズ

    >エヴァンさん お手紙、受け取った。かしこまりました。 ……結果は後の、お楽しみ。

  4. サシャ・テーリング

    サシャ・テーリングと申します 楽しそうと飛び入りましたが、どちらに伺うかまだ決めてません。 何処かで会いましたら、宜しくお願い致します。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0