【FF】注文の多い似顔絵
夜月天音
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シナリオID:1521
オープニング
ロスガリア大陸の各地で収穫祭が開催された。歌ったり踊ったり食べたり飲んだりと大賑わいで、晴れた午後のエラトゥーン都市同盟南東のベールコートも例外ではなかった。
騒ぎの中には、動物の姿だったり人の姿だったり、様々な姿をした妖精もいた。
妖精達の収穫祭への参加は多くの者達に歓迎はされているものの、
「そこの人、似顔絵を描く事は出来る? 見ての通り、妖精達に似顔絵をせがまれている上に、注文が多くて困っているさ。良かったら助けて貰えない?」
ちょっぴり困っている人もいたりする。助けを求めて来たヒューマンの25歳の男性画家は、祭りの風景を描いている所に沢山の妖精に取り囲まれてしまったのだ。
「かお、かいてー」
「キラキラで、バリバリ!」
「にこにこ、すき」
言葉を話す事が出来る一部の妖精達が、手振り身振り以上に似顔絵を描く事を急かす。
「オイラはヒューネ・ラグサさ。道具はオイラのを使っていいから、妖精達を何とかして欲しいさ。満足する似顔絵を描かない限り、離れてくれなくて」
ヒューネは弱った声音で、足を止めてくれた人達にもう一度頼み事をした。
その間も妖精達は、ひっきりなしに似顔絵の注文をし続けた。
騒ぎの中には、動物の姿だったり人の姿だったり、様々な姿をした妖精もいた。
妖精達の収穫祭への参加は多くの者達に歓迎はされているものの、
「そこの人、似顔絵を描く事は出来る? 見ての通り、妖精達に似顔絵をせがまれている上に、注文が多くて困っているさ。良かったら助けて貰えない?」
ちょっぴり困っている人もいたりする。助けを求めて来たヒューマンの25歳の男性画家は、祭りの風景を描いている所に沢山の妖精に取り囲まれてしまったのだ。
「かお、かいてー」
「キラキラで、バリバリ!」
「にこにこ、すき」
言葉を話す事が出来る一部の妖精達が、手振り身振り以上に似顔絵を描く事を急かす。
「オイラはヒューネ・ラグサさ。道具はオイラのを使っていいから、妖精達を何とかして欲しいさ。満足する似顔絵を描かない限り、離れてくれなくて」
ヒューネは弱った声音で、足を止めてくれた人達にもう一度頼み事をした。
その間も妖精達は、ひっきりなしに似顔絵の注文をし続けた。
解説
妖精の希望通りの似顔絵を描いて、喜ばせて下さい。似顔絵のお礼に砂糖を貰う事が出来ます。満足するまで妖精はまとわりつくのをやめない上に髪を引っ張ったり悪戯をする事もあります。
活動時間は、午後から夕方までになります。
【妖精について】
獣や人など様々な姿をしており、話す事が出来る者もいれば出来ない者もいますが、身振り手振りを使い、全力で似顔絵の希望を伝えようとします。
中には緊張する子もいるので、お喋りをしたりなどをして緊張をほぐしてあげて下さい。
【似顔絵について】
写実的だったり抽象的だったりチャームポイントを強調したりと妖精の希望を受けたものを何とか描いて下さい。
道具はヒューネから借りて下さい。
【NPCの行動について】
ヒューネ・ラグサ
絵を描く事が大好きで技量もそれなりにありますが、無名の画家です。
心優しき性格のため、妖精の頼みに断れず本日は妖精の似顔絵を描く事にてんてこ舞いです。彼と交流する事も可能です。
※こういう妖精と交流したいこういう感じの似顔絵を描きたい受けたい悪戯など、活動に必要な事がありましたら、プレイングに記載をお願いします。
※公式NPCとは交流出来ません。
マスターより
オープニングを読んで頂き、ありがとうございます。
素敵な似顔絵を描き、妖精達にとって素敵な収穫祭のひとときにしてあげて下さい。
リプレイ
快晴の午後のエラトゥーン都市同盟南東のベールコート。
収穫祭で賑わう中、似顔絵をせがむ妖精達に弱る画家のヒューネ・ラグサの願いに対して、幾人かの冒険者が足を止めてくれた。
「似顔絵、かい? こんなナリだが、絵を描くのは好きな方でね。描かせてくれるっていうのなら、光栄だよ」
絵描きが趣味とあってか、即引き受けるラーナフ。
「私も絵を描く事は好きでしたけど、昔の事ですし最近は全然描いてませんので、あまり自信はありませんけど……お困りのようですし、予定もないのでチャレンジするだけなら構いませんよ?」
続けて少々自信なさげだが、持ち前の人当たりの良さから加わるリサ・ベイカー。
「へぇ、妖精君達の似顔絵かぁ……面白そうだね! 僕もお手伝いしちゃうよー」
愉快な状況に興味を持ち、軽々と参加するシェオル。
「お礼に砂糖をくれるってことなら、大いに手伝うのだ! 何せ、砂糖は保存に良い甘味の調味料なのだ。菓子にも料理にも使える。是非とも頂きたい」
手に入る砂糖に惹かれる食の探究がマイブームのストレガ・L・リベルガストラ。
「こりゃ……賑やかなこった……ご苦労さん」
妖精達に囲まれたヒューネを労うカルフ・オルヴォ。
「では早速、画材を借りるのだ」
ストレガは気に入った画材を借りてから、
「さあ、どんな感じがいいのか教えてくれなのだ? 武器とかドレスとかそこにないもので必要な注文があれば言ってくれなのだ?」
ついて来た妖精達に似顔絵の希望を訊ねた。
「ふわふわ」
「シャキーン」
抽象的な発言や手振り身振りだけだったりと、ストレガ側の理解力が試される。
(ふわふわは可愛くで、シャキーンはかっこよくで……)
ストレガは妖精達の希望を何とか読解し、
「まずはふわふわ、好みのポーズをとってくれなのだ」
ラフスケッチに取り掛かる。
「ドレスはいるのだ?」
度々ラフを見せ確認しながら手を動かし、
「ラフが描けたのだ!」
完成すると確認のためにモデルに見せる。可愛らしいドレスとポーズの妖精が柔らかなタッチで描かれている。
「もっともっと」
妖精が描き直しを激しく所望したため、
「描き直しは砂糖上乗せなのだ。私はお菓子を作るのが大好きで色んなものを作る為に砂糖が必要なのだ」
ストレガは真剣な顔で交渉を試みた。
「さとー」
結果、妖精は指を4本立てた。
「……ふむ、砂糖4個。交渉成立なのだ」
ストレガは少々考え込むが、報酬が増えた事もあり交渉成立とした。
「妖精の砂糖の作り方が我々にも作れるものであれば教えていただきたいのだ。秘密なら仕方ないのだが」
ストレガは、ラフを描きながら話術を活かして探りを入れる。
「パーーっ!!」
妖精は擬音と身振りで、自然界の植物から糖分を魔法で抽出しているらしい事を表現した。
「ふむ、妖精以外には難しいそうなのだ」
ストレガは解読しながら描き直しを終え、可愛らしくデフォルメされた似顔絵を完成させた。
「ふわふわ、すき」
妖精は砂糖を渡してから仲間に似顔絵を自慢しに行った。
「シャキーン!!」
待てない妖精に髪を引っ張られ、
「すぐに描くのだ」
ストレガは再び絵画の技術を発揮させ、かためな感じの似顔絵を描いた。
続いて、身振り手振りの子はニュアンスで描き、似顔絵を完成させた。
幾度か似顔絵を描いた末、
「喜んでくれて嬉しいのだ……試したいレシピが沢山なのだ」
ストレガは、包みにくるんだ沢山の砂糖にホクホク顔だ。
一区切りもついたので、休憩に入った。
「……鉛筆と、水彩画の画材をお借りしますね」
リサは水彩画道具一式を借りた後、
「さあ、描きますよ! 希望はありますか?」
寄って来た犬と猫の妖精に訊ねた。
「……って、言葉話せないのかな?」
だが、返事は身振り手振りばかりでリサを困惑させる。
「とりあえず、洞察で何となく想いを……察する事が出来るかは分からないけど」
リサは洞察力を存分に働かせモデルをよく観察し、
「得意なのは写生なので、見た目通りに描きますね」
ゆっくりと描き始めた。
「鉛筆で下書きをしますので、ポーズをとって少し動かないで下さいね。ただ、絵を描くのは久々で時間がかかるので、1匹づつでお願いします」
リサが指示を出すと猫妖精が無茶なポーズをとり、犬妖精はリサの横にちょこんと待機。
「……そのポーズ辛くないですか?」
あまりにも奇抜なポーズを前に、リサは思わず笑ってしまう。
「そうですか。大丈夫ですか。体が柔らかいんですね」
猫妖精の反応から大丈夫と見たリサは、下書きを続ける。
「もう少し待って下さいね」
待てず服の裾を引っ張る犬妖精を宥めつつ、
「私、子供の頃から絵が好きで、褒められるのが嬉しくて、亡き母も絵を描くことが好きな人で、絵を描く母の横で真似て描いていたんですよ」
待ち時間の気晴らしになればと話し掛ける。
同時に胸中に蘇るのは、
(母が亡くなってからも、しばらくは続けていたけど、本格的に商人修行をするようになってからは余裕が無くて描いてなかったですね……ちょっと懐かしいです)
もう戻る事は無いひとときに対する愛しさと懐かしさ。
そうこうする内に、
「はい、終わりです。自由にしてて下さいね?」
下書きを終えて猫妖精を解放し、
「次、お願いします」
犬妖精の下書きに取り掛かる。
これもまた時間を掛けて丁寧に描き上げ、
「後は仕上げなので、自由にしてて下さいね?」
残りの作業は色付けのみ。
犬妖精を解放してから、
「似顔絵だから背景はぼかして……」
リサは持てる絵画技術を思う存分発揮させ、水彩特有の優しい作品に仕上げていく。
しばらくして、
「はい、出来上がり! どうですか?」
似顔絵は無事に完成させ妖精達から砂糖を貰い、仲間へ似顔絵自慢に行く彼らの姿を見送ってから休憩に入った。
「自前のを使わせて貰うよ」
ラーナフは自前の絵画道具を使う事にし、
「さあ、どんな風に描いて欲しい? 教えてくれるかい?」
怖がらせないようにと、なるたけ声色を柔らかくして、寄って来た様々な姿をした妖精達に似顔絵の希望を訊ねた。
「キラキラで、しゅわぁなのー」
女の子妖精がポーズをとりながら希望を伝えた。
「キラキラでしゅわぁか、任せてくれ」
絵画の技術に関して明るいラーナフは、戸惑う事無く筆を進める。
最中。
「はやく、はやく」
「つぎーつぎー」
待てない妖精達が、ラーナフの髪を引っ張ったり左目の眼帯に悪戯をしようとする。
「あぁ、悪戯はほどほどにね」
ラーナフは悪気は無いと見て、
「こらこら、眼帯はだめだよ。ね?」
微笑んで注意をしつつ、似顔絵を描き続ける。
相手をするのは悪戯をする子ばかりではない。
「……」
緊張する兎妖精を描く事になった。
「緊張しているんだね。好きなものの話から始めようか」
ラーナフは少しでも緊張をほぐそうと、
「パウンドケーキを持っているんだけど、食べるかい?」
持って来たパウンドケーキを差し出した。
瞬間、兎妖精から盛大な腹の音。
「どうぞ、腹の虫の煩いのは困ったものだよね」
ラーナフは優しく返し、
「毛並みが素敵だね。それに……」
菓子と長所を並べる事で見せる自然な表情を描いた。
手振り身振りの相手に対しては、
「……こういう感じでどうかな?」
ラーナフは洞察を働かせ、希望を上手く読み取り似顔絵を完成させた。
妖精達は砂糖を渡してから似顔絵と共に仲間の元へ行き、ラーナフは休憩に入った。
「これを使わせてもらおっかな」
シェオルは適当に画材を借り、
「僕に描いて欲しい子はこっちこっち!」
お喋りだったり人語を話さなかったりと様々な妖精を集めて適当な場所に移動し、画材を広げた。
「んじゃ、最初は君から描いてみよう! どんな感じがいいかなー?」
騒がしい妖精達の中でシェオルが声を掛けたのは、皆の陰に隠れている大人しそうな女の子の妖精。
「……」
名指しされた女の子の妖精はそろりと姿を現すも、下を向くばかり。
「あ、もしかして、君は人の言葉は話せない感じなのかな?」
シェオルの気遣いに、女の子の妖精は頭を左右に振った。
「……そうではないの? んー……よし」
人語を話すと知ってもシェオルは彼女を急かすような事はせず、少々腰を据えて洞察力を働かせようとじぃと視線を向ける。
注がれる視線にびくっとする女の子の妖精に向かって、
「大丈夫大丈夫、君のペースで伝えてくれたらいいからねー」
察したシェオルはにこっと笑いかけてから、
「僕も描き進めていくから、イメージと違うところとか、もっと強調したり描き込んでほしいとことかあったら、その時に教えてくれたら嬉しいな」
作業に取り掛かった。
女の子の妖精が始終だんまりで作業が進む中。
「みどりー」
シェオルの隙を突いて、待ちきれない妖精が勝手に色を塗る悪さをしでかす。
「はーい、勝手に色を足そうとしないでねー」
シェオルがやんわりと妖精から絵具を取り上げると、
「……ん」
体が引っ張られ新たな悪戯に遭遇。
「はいはーい、僕をひっぱってくるくる回そうとしないでねー」
気付いたシェオルはこれも優しく注意をするが、
「はやく、はやく」
妖精は口を尖らせるばかり。
「みんな、描いてあげるから、少し待ってねー」
シェオルは妖精達を大人しくさせながら、何とか作業を続けた。
そして、
「……うん、こんな感じかな!」
無事に似顔絵を完成させた。
「どうだろ、気に入ってくれるといいな」
モデルに見せて感想を求めた。
じっと自分の似顔絵を見ていた女の子の妖精は、
「……すき……」
小さな声で感想を言い、似顔絵を受け取った。
(優しそうな子だなと思って、その印象を反映するように本来より暖色系の色を軽く足して、あったかく優しい感じに仕上げてみたけど、気に入ってくれてよかった)
シェオルは、女の子の妖精の反応に心底喜んだ。
この後、待っている妖精達の似顔絵を次々と描いてから休憩を入れた。
「んじゃ、鉛筆か木炭と水彩道具を借りよう」
カルフは目についた道具を適当に借りた瞬間、
「そんなに纏わり付いたら描けねぇぞ。離れてやれよ」
描いて貰いたくて妖精達が纏わりついて来る。
「かいてーかいてー」
「え、ほしいー」
「はね、きれーなのー」
妖精達はカルフの口の悪さの奥にある優しさを察してか、離れず似顔絵をせがみ続ける。人語を喋られぬ者は手振り身振りで主張する。
「分かった、分かった」
カルフは何とか押しとどめ、
「どんなのが希望だ? 話せる奴から教えろ」
声を大きくして希望を問いただす。
「はねー、はねー」
頭に飾った羽を見せつけたり。
「かみー、かいてー」
結った髪が自慢なのかサラリとさせる。
「ザックリと下絵を描いて」
次々と来る妖精達の希望に対して、カルフは洞察力を働かせ妖精達の一挙手一投足から特徴を見つけ、義手の右手で鉛筆を使って下絵を描く。
「似顔絵はなぁ……他人から見てそっくりでも、本人が自分をどう見たいかで価値が変わるならな」
下書きが終われば、細かい作業担当の左手で明暗を付ける程度に色をのせていく。
ただ目の前のものをそのまま描くだけでなく、
「好きな果物か菓子はあるか? サービスで、持たせたり飾りでいれるぞ」
目の前にない物まで希望があれば、加筆までしてくれる。
だが、
「はやく、はやく」
「え、え」
待ちきれない妖精達が、髪を引っ張ったり義手で踊ったりと大いに急かす。
「すぐに描くから大人しく待て。しかし……」
カルフは声は荒げず穏やかな調子で注意をするだけで、
「こんな穏やかな時も悪くねぇ」
可愛いながらも平和な迷惑さに優しく口元を歪めた。
モデルになるのは、お喋りな妖精だけでなく人語を喋らない妖精もだ。
「次はお前だ、来い。さて自慢はどこだ?」
ズバリお気に入りの特徴を訊ね手振り身振りから答えを導いたり、
「どれが好みだ?」
これまで描いた似顔絵から好きな物を選ばせ、反応に合せ描き進めたりと工夫を凝らす。
そうして、次々と似顔絵を描いて行き、
「このえ、すきー」
「みてー、みてー」
「すごいえー」
無事に満足の声と砂糖を得た。
「おいおい、大袈裟だな」
妖精達の反応に対してカルフは言葉とは裏腹に喜び、彼らが似顔絵を仲間に自慢をしに行くのを見送った後、休憩に入った。
「ラグサくん、少し休憩しないかい?」
休憩中のラーナフは、似顔絵が終わりそうなヒューネに声を掛けた。
「ラーナフで構わないよ。気楽に話してくれ」
気付き振り向いたヒューネに、ラーナフは気さくに言った。
「じゃあ、そうするさ、ラーナフ」
ヒューネは軽い調子で返し、
「完成!」
似顔絵を完成させ、妖精に渡した。
「君は優しい人だね。筆遣いを見れば多少なりとも描き手の事が分かるさ。妖精に甘えられるのもうなずけるよ」
ラーナフは、先ほど見た似顔絵の感想を口にした。
「いや、見ず知らずのオイラを助けてくれたラーナフ達の方が優しいさ」
ヒューネは速攻で言い返した。
「絵を描くのは好きだからな」
ラーナフが事も無げに返すと、
「久しぶりに絵を描く機会を得られて楽しかったです」
リサが楽しそうに言葉を重ねた。
「でも、難しいよね。正確に描くだけがポイントじゃないってところがさ。まあ、似顔絵にちゃんと取り組んだのは初めてって事もあるけど」
シェオルが肩を竦めながら、会話に加わった。
「そうそう、鼻が大きくコンプレックスの奴に『これがお前の特徴』と正確に大きく描いても喜ばれないって奴だよな……ま、そっくりと周囲は言うだろうが、本人の満足が第一だな」
カルフが言葉を挟んだ。
「そうなのだ。写実的にそのまま描くばかりが似顔絵ではないどころか、似せる必要はないのだ」
ストレガが話に参加し、
「そもそも、絵を描く技術は叡智を伝えるのに大事なのだ。我々の先達である『混ざり物』達はまだ文化に目覚めたばかりの時代、紙の存在を知らなかった時代はその知識を伝える為に壁画を描いていたのだ。言葉より遅く文字より詳しくないが、絵は情報を解りやすく伝える。私が綴るレシピや報告書にも挿絵をつけてるのだ」
滔々と語った。
「誰かの思い出にもなりますよね」
リサは、亡き母との遠き思い出を胸に蘇らせた。
「それに、喜んでくれたら嬉しいよねぇ」
シェオルが似顔絵を喜ぶ妖精の顔を思い出しつつ言った。
「悪くは無いな」
カルフは同意とばかりに強く頷いた。
「確かに」
ヒューネも続いた。
話に区切りがついた所で、
「これから簡単に飲み食い出来るものを買って来るよ。皆の分もね」
ラーナフは皆に言い置いてから、買い出しに出掛けた。
(合間を縫って収穫祭の風景も絵に描きたい所だな。1枚でも多く描いて残しておきたいし、妻への土産話にもなるし)
道中、収穫祭の様子に亡き妻に思いを馳せた。
ラーナフの買い出し帰還後、似顔絵自慢を受けた妖精達が訪れ休憩が無くなった。
収穫祭で賑わう中、似顔絵をせがむ妖精達に弱る画家のヒューネ・ラグサの願いに対して、幾人かの冒険者が足を止めてくれた。
「似顔絵、かい? こんなナリだが、絵を描くのは好きな方でね。描かせてくれるっていうのなら、光栄だよ」
絵描きが趣味とあってか、即引き受けるラーナフ。
「私も絵を描く事は好きでしたけど、昔の事ですし最近は全然描いてませんので、あまり自信はありませんけど……お困りのようですし、予定もないのでチャレンジするだけなら構いませんよ?」
続けて少々自信なさげだが、持ち前の人当たりの良さから加わるリサ・ベイカー。
「へぇ、妖精君達の似顔絵かぁ……面白そうだね! 僕もお手伝いしちゃうよー」
愉快な状況に興味を持ち、軽々と参加するシェオル。
「お礼に砂糖をくれるってことなら、大いに手伝うのだ! 何せ、砂糖は保存に良い甘味の調味料なのだ。菓子にも料理にも使える。是非とも頂きたい」
手に入る砂糖に惹かれる食の探究がマイブームのストレガ・L・リベルガストラ。
「こりゃ……賑やかなこった……ご苦労さん」
妖精達に囲まれたヒューネを労うカルフ・オルヴォ。
「では早速、画材を借りるのだ」
ストレガは気に入った画材を借りてから、
「さあ、どんな感じがいいのか教えてくれなのだ? 武器とかドレスとかそこにないもので必要な注文があれば言ってくれなのだ?」
ついて来た妖精達に似顔絵の希望を訊ねた。
「ふわふわ」
「シャキーン」
抽象的な発言や手振り身振りだけだったりと、ストレガ側の理解力が試される。
(ふわふわは可愛くで、シャキーンはかっこよくで……)
ストレガは妖精達の希望を何とか読解し、
「まずはふわふわ、好みのポーズをとってくれなのだ」
ラフスケッチに取り掛かる。
「ドレスはいるのだ?」
度々ラフを見せ確認しながら手を動かし、
「ラフが描けたのだ!」
完成すると確認のためにモデルに見せる。可愛らしいドレスとポーズの妖精が柔らかなタッチで描かれている。
「もっともっと」
妖精が描き直しを激しく所望したため、
「描き直しは砂糖上乗せなのだ。私はお菓子を作るのが大好きで色んなものを作る為に砂糖が必要なのだ」
ストレガは真剣な顔で交渉を試みた。
「さとー」
結果、妖精は指を4本立てた。
「……ふむ、砂糖4個。交渉成立なのだ」
ストレガは少々考え込むが、報酬が増えた事もあり交渉成立とした。
「妖精の砂糖の作り方が我々にも作れるものであれば教えていただきたいのだ。秘密なら仕方ないのだが」
ストレガは、ラフを描きながら話術を活かして探りを入れる。
「パーーっ!!」
妖精は擬音と身振りで、自然界の植物から糖分を魔法で抽出しているらしい事を表現した。
「ふむ、妖精以外には難しいそうなのだ」
ストレガは解読しながら描き直しを終え、可愛らしくデフォルメされた似顔絵を完成させた。
「ふわふわ、すき」
妖精は砂糖を渡してから仲間に似顔絵を自慢しに行った。
「シャキーン!!」
待てない妖精に髪を引っ張られ、
「すぐに描くのだ」
ストレガは再び絵画の技術を発揮させ、かためな感じの似顔絵を描いた。
続いて、身振り手振りの子はニュアンスで描き、似顔絵を完成させた。
幾度か似顔絵を描いた末、
「喜んでくれて嬉しいのだ……試したいレシピが沢山なのだ」
ストレガは、包みにくるんだ沢山の砂糖にホクホク顔だ。
一区切りもついたので、休憩に入った。
「……鉛筆と、水彩画の画材をお借りしますね」
リサは水彩画道具一式を借りた後、
「さあ、描きますよ! 希望はありますか?」
寄って来た犬と猫の妖精に訊ねた。
「……って、言葉話せないのかな?」
だが、返事は身振り手振りばかりでリサを困惑させる。
「とりあえず、洞察で何となく想いを……察する事が出来るかは分からないけど」
リサは洞察力を存分に働かせモデルをよく観察し、
「得意なのは写生なので、見た目通りに描きますね」
ゆっくりと描き始めた。
「鉛筆で下書きをしますので、ポーズをとって少し動かないで下さいね。ただ、絵を描くのは久々で時間がかかるので、1匹づつでお願いします」
リサが指示を出すと猫妖精が無茶なポーズをとり、犬妖精はリサの横にちょこんと待機。
「……そのポーズ辛くないですか?」
あまりにも奇抜なポーズを前に、リサは思わず笑ってしまう。
「そうですか。大丈夫ですか。体が柔らかいんですね」
猫妖精の反応から大丈夫と見たリサは、下書きを続ける。
「もう少し待って下さいね」
待てず服の裾を引っ張る犬妖精を宥めつつ、
「私、子供の頃から絵が好きで、褒められるのが嬉しくて、亡き母も絵を描くことが好きな人で、絵を描く母の横で真似て描いていたんですよ」
待ち時間の気晴らしになればと話し掛ける。
同時に胸中に蘇るのは、
(母が亡くなってからも、しばらくは続けていたけど、本格的に商人修行をするようになってからは余裕が無くて描いてなかったですね……ちょっと懐かしいです)
もう戻る事は無いひとときに対する愛しさと懐かしさ。
そうこうする内に、
「はい、終わりです。自由にしてて下さいね?」
下書きを終えて猫妖精を解放し、
「次、お願いします」
犬妖精の下書きに取り掛かる。
これもまた時間を掛けて丁寧に描き上げ、
「後は仕上げなので、自由にしてて下さいね?」
残りの作業は色付けのみ。
犬妖精を解放してから、
「似顔絵だから背景はぼかして……」
リサは持てる絵画技術を思う存分発揮させ、水彩特有の優しい作品に仕上げていく。
しばらくして、
「はい、出来上がり! どうですか?」
似顔絵は無事に完成させ妖精達から砂糖を貰い、仲間へ似顔絵自慢に行く彼らの姿を見送ってから休憩に入った。
「自前のを使わせて貰うよ」
ラーナフは自前の絵画道具を使う事にし、
「さあ、どんな風に描いて欲しい? 教えてくれるかい?」
怖がらせないようにと、なるたけ声色を柔らかくして、寄って来た様々な姿をした妖精達に似顔絵の希望を訊ねた。
「キラキラで、しゅわぁなのー」
女の子妖精がポーズをとりながら希望を伝えた。
「キラキラでしゅわぁか、任せてくれ」
絵画の技術に関して明るいラーナフは、戸惑う事無く筆を進める。
最中。
「はやく、はやく」
「つぎーつぎー」
待てない妖精達が、ラーナフの髪を引っ張ったり左目の眼帯に悪戯をしようとする。
「あぁ、悪戯はほどほどにね」
ラーナフは悪気は無いと見て、
「こらこら、眼帯はだめだよ。ね?」
微笑んで注意をしつつ、似顔絵を描き続ける。
相手をするのは悪戯をする子ばかりではない。
「……」
緊張する兎妖精を描く事になった。
「緊張しているんだね。好きなものの話から始めようか」
ラーナフは少しでも緊張をほぐそうと、
「パウンドケーキを持っているんだけど、食べるかい?」
持って来たパウンドケーキを差し出した。
瞬間、兎妖精から盛大な腹の音。
「どうぞ、腹の虫の煩いのは困ったものだよね」
ラーナフは優しく返し、
「毛並みが素敵だね。それに……」
菓子と長所を並べる事で見せる自然な表情を描いた。
手振り身振りの相手に対しては、
「……こういう感じでどうかな?」
ラーナフは洞察を働かせ、希望を上手く読み取り似顔絵を完成させた。
妖精達は砂糖を渡してから似顔絵と共に仲間の元へ行き、ラーナフは休憩に入った。
「これを使わせてもらおっかな」
シェオルは適当に画材を借り、
「僕に描いて欲しい子はこっちこっち!」
お喋りだったり人語を話さなかったりと様々な妖精を集めて適当な場所に移動し、画材を広げた。
「んじゃ、最初は君から描いてみよう! どんな感じがいいかなー?」
騒がしい妖精達の中でシェオルが声を掛けたのは、皆の陰に隠れている大人しそうな女の子の妖精。
「……」
名指しされた女の子の妖精はそろりと姿を現すも、下を向くばかり。
「あ、もしかして、君は人の言葉は話せない感じなのかな?」
シェオルの気遣いに、女の子の妖精は頭を左右に振った。
「……そうではないの? んー……よし」
人語を話すと知ってもシェオルは彼女を急かすような事はせず、少々腰を据えて洞察力を働かせようとじぃと視線を向ける。
注がれる視線にびくっとする女の子の妖精に向かって、
「大丈夫大丈夫、君のペースで伝えてくれたらいいからねー」
察したシェオルはにこっと笑いかけてから、
「僕も描き進めていくから、イメージと違うところとか、もっと強調したり描き込んでほしいとことかあったら、その時に教えてくれたら嬉しいな」
作業に取り掛かった。
女の子の妖精が始終だんまりで作業が進む中。
「みどりー」
シェオルの隙を突いて、待ちきれない妖精が勝手に色を塗る悪さをしでかす。
「はーい、勝手に色を足そうとしないでねー」
シェオルがやんわりと妖精から絵具を取り上げると、
「……ん」
体が引っ張られ新たな悪戯に遭遇。
「はいはーい、僕をひっぱってくるくる回そうとしないでねー」
気付いたシェオルはこれも優しく注意をするが、
「はやく、はやく」
妖精は口を尖らせるばかり。
「みんな、描いてあげるから、少し待ってねー」
シェオルは妖精達を大人しくさせながら、何とか作業を続けた。
そして、
「……うん、こんな感じかな!」
無事に似顔絵を完成させた。
「どうだろ、気に入ってくれるといいな」
モデルに見せて感想を求めた。
じっと自分の似顔絵を見ていた女の子の妖精は、
「……すき……」
小さな声で感想を言い、似顔絵を受け取った。
(優しそうな子だなと思って、その印象を反映するように本来より暖色系の色を軽く足して、あったかく優しい感じに仕上げてみたけど、気に入ってくれてよかった)
シェオルは、女の子の妖精の反応に心底喜んだ。
この後、待っている妖精達の似顔絵を次々と描いてから休憩を入れた。
「んじゃ、鉛筆か木炭と水彩道具を借りよう」
カルフは目についた道具を適当に借りた瞬間、
「そんなに纏わり付いたら描けねぇぞ。離れてやれよ」
描いて貰いたくて妖精達が纏わりついて来る。
「かいてーかいてー」
「え、ほしいー」
「はね、きれーなのー」
妖精達はカルフの口の悪さの奥にある優しさを察してか、離れず似顔絵をせがみ続ける。人語を喋られぬ者は手振り身振りで主張する。
「分かった、分かった」
カルフは何とか押しとどめ、
「どんなのが希望だ? 話せる奴から教えろ」
声を大きくして希望を問いただす。
「はねー、はねー」
頭に飾った羽を見せつけたり。
「かみー、かいてー」
結った髪が自慢なのかサラリとさせる。
「ザックリと下絵を描いて」
次々と来る妖精達の希望に対して、カルフは洞察力を働かせ妖精達の一挙手一投足から特徴を見つけ、義手の右手で鉛筆を使って下絵を描く。
「似顔絵はなぁ……他人から見てそっくりでも、本人が自分をどう見たいかで価値が変わるならな」
下書きが終われば、細かい作業担当の左手で明暗を付ける程度に色をのせていく。
ただ目の前のものをそのまま描くだけでなく、
「好きな果物か菓子はあるか? サービスで、持たせたり飾りでいれるぞ」
目の前にない物まで希望があれば、加筆までしてくれる。
だが、
「はやく、はやく」
「え、え」
待ちきれない妖精達が、髪を引っ張ったり義手で踊ったりと大いに急かす。
「すぐに描くから大人しく待て。しかし……」
カルフは声は荒げず穏やかな調子で注意をするだけで、
「こんな穏やかな時も悪くねぇ」
可愛いながらも平和な迷惑さに優しく口元を歪めた。
モデルになるのは、お喋りな妖精だけでなく人語を喋らない妖精もだ。
「次はお前だ、来い。さて自慢はどこだ?」
ズバリお気に入りの特徴を訊ね手振り身振りから答えを導いたり、
「どれが好みだ?」
これまで描いた似顔絵から好きな物を選ばせ、反応に合せ描き進めたりと工夫を凝らす。
そうして、次々と似顔絵を描いて行き、
「このえ、すきー」
「みてー、みてー」
「すごいえー」
無事に満足の声と砂糖を得た。
「おいおい、大袈裟だな」
妖精達の反応に対してカルフは言葉とは裏腹に喜び、彼らが似顔絵を仲間に自慢をしに行くのを見送った後、休憩に入った。
「ラグサくん、少し休憩しないかい?」
休憩中のラーナフは、似顔絵が終わりそうなヒューネに声を掛けた。
「ラーナフで構わないよ。気楽に話してくれ」
気付き振り向いたヒューネに、ラーナフは気さくに言った。
「じゃあ、そうするさ、ラーナフ」
ヒューネは軽い調子で返し、
「完成!」
似顔絵を完成させ、妖精に渡した。
「君は優しい人だね。筆遣いを見れば多少なりとも描き手の事が分かるさ。妖精に甘えられるのもうなずけるよ」
ラーナフは、先ほど見た似顔絵の感想を口にした。
「いや、見ず知らずのオイラを助けてくれたラーナフ達の方が優しいさ」
ヒューネは速攻で言い返した。
「絵を描くのは好きだからな」
ラーナフが事も無げに返すと、
「久しぶりに絵を描く機会を得られて楽しかったです」
リサが楽しそうに言葉を重ねた。
「でも、難しいよね。正確に描くだけがポイントじゃないってところがさ。まあ、似顔絵にちゃんと取り組んだのは初めてって事もあるけど」
シェオルが肩を竦めながら、会話に加わった。
「そうそう、鼻が大きくコンプレックスの奴に『これがお前の特徴』と正確に大きく描いても喜ばれないって奴だよな……ま、そっくりと周囲は言うだろうが、本人の満足が第一だな」
カルフが言葉を挟んだ。
「そうなのだ。写実的にそのまま描くばかりが似顔絵ではないどころか、似せる必要はないのだ」
ストレガが話に参加し、
「そもそも、絵を描く技術は叡智を伝えるのに大事なのだ。我々の先達である『混ざり物』達はまだ文化に目覚めたばかりの時代、紙の存在を知らなかった時代はその知識を伝える為に壁画を描いていたのだ。言葉より遅く文字より詳しくないが、絵は情報を解りやすく伝える。私が綴るレシピや報告書にも挿絵をつけてるのだ」
滔々と語った。
「誰かの思い出にもなりますよね」
リサは、亡き母との遠き思い出を胸に蘇らせた。
「それに、喜んでくれたら嬉しいよねぇ」
シェオルが似顔絵を喜ぶ妖精の顔を思い出しつつ言った。
「悪くは無いな」
カルフは同意とばかりに強く頷いた。
「確かに」
ヒューネも続いた。
話に区切りがついた所で、
「これから簡単に飲み食い出来るものを買って来るよ。皆の分もね」
ラーナフは皆に言い置いてから、買い出しに出掛けた。
(合間を縫って収穫祭の風景も絵に描きたい所だな。1枚でも多く描いて残しておきたいし、妻への土産話にもなるし)
道中、収穫祭の様子に亡き妻に思いを馳せた。
ラーナフの買い出し帰還後、似顔絵自慢を受けた妖精達が訪れ休憩が無くなった。
マスターコメント
参加者の皆様、参加して頂き大変ありがとうございました。そして、お疲れさまでした。
妖精達のために似顔絵制作に尽力し満足させて頂き、大変ありがとうございました。
ほんの僅かでも楽しんで頂ければ、幸いです。
ショートシナリオ普通 報酬:標準5 / 4〜10人
2021年11月06日 22時07分19秒 公開
大成功
相談掲示板
キャスターのラーナフだ。よろしく頼むよ。 絵を描くのは好きな方でね。 絡みは歓迎だ。俺からも話しかけるかもしれない。その時はおしゃべりしてくれると嬉しいね。
リサです。よろしくお願いします。 昔はよく絵を描いていたのですけど…すっかり止めてしまって… これを機にまた始めようかな?と思ってます。 よろしくお願いしますね、
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 先達に習って絵を描いてみるのだ。
エルフのシーフ、シェオル。 どうぞよろしくね。 風景ならたまーに描いてたけれど、似顔絵かぁ……試しに挑戦してみよっかな。 妖精君達含め、僕もお喋りは歓迎! 楽しい時間にしようねー。
カルフ・オルヴォだ。 飛び入りさせて貰う、宜しくな。