【FF】蜂蜜色でべったべたな……?
菊華 伴
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シナリオID:1517
オープニング
「たーしゅーけーちぇー」
「……なっ?!」
とある昼下がり。とある小さな冒険者ギルドへと助っ人に来ていたハーフリングのカタバミ・ナルカミは慌てた様子の何かを顔面で受け止めた。
カタバミがそっと摘み、引き離すと背中に薄い羽をもった小人のような姿をしていた。
「……妖精さん?!」
「はちみー! おちゃ、おぼりゅー!!」
面食らっていると、妖精と思わしき存在は必死に声を上げていた。だが、旨く聞き取れない。
「ど、どういうことだ?」
カタバミが困っていると、ギルドのドアが開く。入ってきたのは、息を切らせた同種の男性だ。
「す、すいません! ちょっと助けていただきたいのですが……!」
「どうしたんだ?」
「実は、私の主と妖精が、スライムに困らせられていまして……」
「ま、まずは水を飲むんだ!!」
アズルノと名乗った男性は、カタバミから水を貰うと一気に飲み干し、漸く落ち着いて話し始めた。
なんでも、この妖精たちはこの近辺に住んでいるようで木の実や綺麗な石と交換で蜂蜜をくれるらしい。その話を聞いて木の実を届けに来た商人たちだったが、そこをベタベタでぶよぶよとしたオバケ(?)に襲われ、妖精たちが困っていたという。
「旦那様は、妖精さん達の為にそのぶよぶよオバケ……多分スライムに近いと思うんですけれど……を追い払おうとしていたのですが、途中で腰に体当たりを何度もされて……動けなくなってしまったのです」
「もしかして、腰痛持ちだったりしませんか?」
カタバミの確認に、アズルノは「そうなのです」と心配そうに頷いた。
「と、とりあえず現場を確認しましょう! 案内お願いします!」
ギルド職員の言葉に、アズルノと妖精は頷いた。
●蜂蜜色の……恐……怖……?
うじゅるうじゅるうじゅる……。
「「うわぁ」」
大きなキンモクセイの木の下、熊のような大男が倒れている。しかも蜂蜜色に染まったスライムっぽいナニカに埋もれているように見えた。
そして、妖精たちは木の上でふるふる震えていた。スライムっぽいナニカは木にへばりついて妖精を襲おうとするものの、なかなか上がれない。
よく見れば、木の根元にはスライムっぽいナニカに捕まった妖精たちがいた。脅されているように見える。
「爆炎とか使ったら、妖精さんごと吹き飛ばしそうだな……」
「どうしたら妖精さんを助けられるのだろう」
スライムっぽいナニカに囚われた妖精は、まだ生きている。だが、あまり長い時間そのままにしておくと命が危ないかもしれない。
スライムっぽいナニカは、1匹辺り直径1m程。蜂蜜を取り込んで琥珀色に染まっているように思える。
衣服などを溶かすことはない物の、べたべたしているらしく触れると不快な感触がする。
カタバミは祭剣でスライムを払おうと奮闘するも、なかなかうまくいかない。しかも、うっかり触れてしまうと、精神的にちょっと疲れてしまう気がする。その所為か、スライムにのしかかられたナバルジャは、普段の元気な笑顔ではなくぐったりとしている(腰が痛むのかもしれないが)。
ここに来るまでにスライムと戦ったり、ギルドに駆け込んだりしたアズルノはスタミナ切れ間近でぜーぜーと肩で息をしていたので頼れない。
「アズルノさん! とりあえず一旦退避!! ギルドで改めて冒険者の手を借りましょう!」
カタバミは、そう言ってアズルノと呼びに来た妖精と共に一旦ギルドへと戻ると大急ぎで依頼を出した。
――求む、妖精を助けてくれる優しい冒険者!
そうしながらも、カタバミはさっきのスライムをみてポツリ、と呟いた。
「でもアレ、貴族に連れられて見た飴細工の飴にも似てるな……」
もしかしたら、何かを塗すと攻撃しやすいかもしれない、と彼は考えた。
解説
マスターより
リプレイ
●要救助者が一人追加されました
「たしゅけーてー」
「きゃー」
妖精の苦しそうな声が聞こえる。よくみると、スライムによって脅され、木の幹に押さえつけられているらしい。疲労困憊のアズルノは助ける事が出来ず、辛そうに近くの木に凭れて見つめることしかできなかった。
(このままでは……)
現状に罪悪感を覚える彼だったが、いくつもの影を見、少しだけ希望を見出したような気がしていた。
まず最初に駆けつけてくれたのは甍・ヒネモス。彼女は猫っぽい耳をぴんっ、とたてて惨状に目を見開いているようだった。
「確かに大変そう……。 うん、妖精さんと熊商人を助けるんだね!」
「熊商人て……」
甍の言葉に思わずカタバミ・ナルカミは笑いそうになる。まあ、ナバルジャは熊のように大きいが、ヒューマンであって熊のハーフビーストではない。
「スライム、おおきい……。わたしの背丈と、あまり、かわんない、ね……」
そう言ったのは、小柄なドワーフの少女、サラ。彼女の身長は120cmで、スライムは全長100cmほど。確かにあまり変わらないかもしれない。
サラはスライムに埋もれてしまったナバルジャの腰に念のため〈ヒール〉しておく。効果があるかは不明ではあるが。
「哎呀、これが妖精さんのお家アルか……」
そう言ったのは牛模様の衣服を纏う牛・奶。彼女は妖精が捕まっているのを見て状況にびっくりしているようだった。
「確かにこれじゃ爆炎はもちろん、ストーンブラストやタイダルストリームと言った〈範囲攻撃〉自体使えないアルね」
「そうだろうな……。しっかし、ずいぶんとスイーツな香りでほのぼのタイムかと思ったらそうでもなさそうな状況だな!」
一匹ずつ確実に仕留めて行った方がいいだろう、と考える奶の後ろから溌溂とした声が聞こえる。その正体は、ハヤト=ガラン=ヴォルファングだった。彼は蜂蜜色をしたスライムを見、ふん、と鼻を鳴らす。
「こんなん後で水浴びすりゃいいだけの話だからな!」
と早速スライムをかき分けて行こうとした彼であったが……蜂蜜の匂いが近くから。よく見れば甍が蜂蜜の瓶を手にしている。
「どうするつもりアル?」
「蜂蜜でおびき寄せるの?」
奶とサラが不思議そうに彼女を見る。ハヤトとカタバミも何をするのか気になっているようだ。
「確かにベタベタは水浴びすればいいだけの話だよね」
と、彼女は素手で瓶に手を突っ込みおもむろに蜂蜜を装備や体に塗り始めた。これには一同目が点になる。
「は、蜂蜜が……贅沢な……」
「た、確かに俺はスライムをかき分けていくつもりだったが……」
何故かわなわな震えるカタバミの表情は強張っている! ハヤトはハヤトでちょっと戸惑っているぞ!!
「溺れている人を助けるなら水に飛び込むでしょ? スライムで溺れかけた妖精を助けるならスライム十匹の中に飛び込む!! そう言うことだね」
と言い放ち頭にも蜂蜜を塗り突撃とばかりにスライムをかき分け進もうとする。だが、蜂蜜の所為でスライムたちが逆に寄ってきている!!
「アイヤー?! スライムホイホイになってるアル~?!」
「ふぇ?! こんな筈じゃ?!」
「おい! 救助者増えてるじゃねーかーっ!?」
集まってくるスライムに身動きが取れなくなる甍。この状況に思わず叫ぶ奶とハヤト。そして、そんな中到着したのはストレガ・L・リベルガストラと大荷物を持ってきた海神・江流。
(金木犀の蜂蜜スライム。うん、美味そうなのだ)
と、キラキラした蜂蜜と辺りに漂うキンモクセイの香りにいい笑顔になるストレガ。一方の江流は「急いだほうがいいか?」と荷物の中身を取り出した。
(水分を何かに吸わせれば少しは対処しやすくなるかな? 気になるのは、蜂蜜と金木犀の香りが漂っている辺り……。スライム1匹1mぐらいと聞いたから多めに用意したが足りるかな?)
彼が取り出したのは、沢山の片栗粉だった。一応小麦粉もある。
「! 考える事は一緒アルね。ワタシも持ってきたアル!」
「わたしも……!」
奶とサラも荷物から片栗粉を取り出す。それに彼女はうんうんと頷いた。
「飴の仕上げに使うものなのだ。用意してくれていてと助かったのだ」
「早く助けましょう!」
カタバミも喜んで片栗粉を分けてもらおうとしたのだが……既に惨劇(?)は目の前で起きていた。スライムの群れから(何故か)足だけが出ている彼女と、「呼吸できてるかー?!」とちょっと慌て気味にスライムをかき分けるハヤトの姿があったからだ。目を離した隙に一体何が起こってそうなったのいうのだろうか……。
「あの……大丈夫、ですか??」
疲労困憊のアズルノが不安そうに7人を見るのも無理はないかもしれない。
「! 甍おねえちゃ~んっ?!」
惨劇に思わず涙目になり焦るサラ。その声に驚いたフェレットのジュジュはとりあえずカバンの中に避難!
「はっ?! どことなく呪われた一族に降りかかる悍ましい連続殺人事件が」
「言ってはいけないのだ」
現場の騒ぎを見て表情が強張るカタバミに、ストレガが真顔で言い放った。
因みに甍が体を張ったからか、ナバルジャに纏わりついていたスライムの数がちょっと減った事を付け加えておこう。
●琥珀色の混沌に、白い慈悲が降り注ぐ
「とりあえず手分けして救出するアル!」
奶は妙にスライムが集まりすぎているように思い、荷物から蜂蜜酒を取り出した。
「これでおびき寄せるアル!!」
「この隙に片栗粉を散布しようか」「……はいっ!」
彼女が蜂蜜酒の封を開けるのと同時に、江流がサラと頷き合う。ストレガはお湯を使ってみようと行動を開始。
「がぼがぼがぼ」
「やる気があるのは結構だが、無茶するんじゃねぇよ……」
ハヤトはスライムをどうにかかき分け、甍に声をかける。と、少しだけスライムが動いた気がした。奶が持つ蜂蜜酒の匂いにつられているのだろう。
片栗粉のお陰でベタベタしなくなったスライムはぷるるんと身を震わせつつ冒険者たちを攻撃するが、まったく痛くない。むしろ擽ったい。擽ったいせいでダメージが微量だが入る。
(マジ擽ってぇ?!)
(ベタベタするし擽ったいしぬめぬめする~!!)
頭からスライムに突っ込んだ猫耳娘はそれにもごもご動き、ハヤトはしっかりと踏ん張る。でも彼の太腿もスライムが張り付いて擽っている。彼が微動だにしないのは、それだけ頑張って耐えているという事である。
「がぼがぼ~」
甍は喋れないなりにハヤトを応援した。
そんなドラマがあった裏側で、江流とサラは片栗粉散布に動く。蜂蜜酒を遠くに置いたら奶も片栗粉散布に動く所存だ。
因みに誰も用意していなかった場合ハヤトは「俺の俊足を生かし近所から片栗粉を貰ってくるぜ!」と突っ走っていただろう。ベタベタ状態の彼が店に向かった場合、お店のおかみさんからお湯をぶっかけられていたに違いない。
「砂とかだと蜂蜜として使えなくなっちまうだろ……。よし、始めよう!」
江流の合図で、サラが頷く。江流は移動力に余裕を持って切り込んで、手持ちの粉をスライムにぶちまける。そしてすぐさま羽根のようにふわりとバックステップ。
(特に異変はない? 少し動きが鈍ったか?)
スライムは少し居心地が悪そうな動きを見せた気がする一同。
「甘いにおいで、おいしそうだけど……べたべた、毛並みについたら、大変。ジュジュさん、わたしの後ろに隠れてて、ね」
サラはカバンから出てきたフェレットを下がらせ、弓を構える。そして片栗粉を薄い紙で包んだものを括りつけた矢を放つ! 上手く飛んだ矢はスライムへ落ち、片栗粉がぱっ、と散った。一度にたくさんは放てないが、何発も打てばそこそこ攻撃になる。しかしこれはまだ牽制である。
「お~、こっちアルよ~」
蜂蜜酒を地面に垂らせば、スライムはのそのそとそっちの方へ。奶はそれを確認すると片栗粉をスライムたちに追加とばかりにぶちまける。
「おおっ! ベタベタ感が減っていくぜ! これなら救出も楽だろう!」
ハヤトはスライムの群れに手を突っ込んで仲間を両手で抱える。スライムたちは片栗粉のお陰でするりと剥がれるようになっていた。
「よし! 救出したぞ! つぎは妖精だ!」
よいしょ! と甍をスライムの群れから救出したハヤトは、お湯で濡らした布を持つストレガに彼女を綺麗にしてほしいと頼む。
「ん。これで綺麗にするのだ」
「ありがと~」
温かなおしぼりを受け取り、安堵する甍。ストレガも頭に着いた片栗粉を払ってくれた。予想外の量のスライムに目を回しそうになっていた彼女だが、どうにか生還することができた。
(さぁ、次はスライムだ!)
ハヤトが妖精からスライムを引きはがそうとするが……めちょっ、という音を立ててハヤトに張り付こうとする! さっき蜂蜜まみれだった救助者を抱えた為か、今度はハヤトが狙われたようだ。ちょっと罪悪感を覚える甍。
「そ、そんな?!」
「だーっ! まだ片栗粉のお陰で切りやすい!!」
襲い掛かってきたスライムを愛用の爪で切り裂きながらハヤトは奮闘。これはまずい、と彼女はストレガを見る。
「私に片栗粉ぶちまけて!」
「ラジャ! なのだ」
江流が用意した片栗粉の一袋をおもむろに手に取ったストレガは、甍に片栗粉をまぶす。彼女は準備が整うとなかなかカオスなことになっているスライムの群れへと再度突入!
「さっきより楽だね~!」
と、甍はスライムをハヤトから剥がし、剥がし、剥がし……妖精さんまでたどり着いた。彼女は流れるような動きでスライムを妖精から剥がす。体に着いた片栗粉のお陰で妖精さんもちょっと白く染まってしまったが……。
「たしゅかたー」
「あーがと~!」
妖精を助けた甍は急いでストレガに妖精を託す。程よい温度のお湯を用意している彼女ならば、すぐにべたべたを落としてくれるだろう。
木の上から様子を見ていた妖精たちが、口々に「あーがと~!」と叫ぶ。それに冒険者たちは思わず笑みを零すが、まだまだスライムはいる。ここからが正念場だろうか?
江流たちは沢山の片栗粉(及び小麦粉)を準備していた為、最初のようなトラブルは無く、スライムたちは片栗粉によってベタベタを封印された。
因みにハヤトと甍が受けたダメージはカタバミがしれっと〈ヒール〉したお陰で回復している。
サラはサラで牽制の片栗粉つき矢を放ち続けてくれるし、奶はナバルジャから動き出したスライムを魔矢で撃っている。サラの矢が要救助者に当たらないのは〈超視覚〉のお陰だろうか?
「あとはナバルジャだけだな」
片栗粉をひたすら塗す事に専念する江流は、羽根のような動きで離脱し観察する。スライムたちは片栗粉を塗された事で怒っているのか近くにいる冒険者へ張り付こうとするもするり、と剥がれてしまう。
先程の甍の行動と蜂蜜酒のお陰か、スライムたちはいつのまにかナバルジャからある程度剥がれ落ちていた。
「はいはい! どんどんこっちアルよ~! これならナバルジャさんはもう大丈夫アル!」
「巻き込まれないうちに回収するぞ!」
奶が蜂蜜酒に近づいてきたスライムを魔矢で撃ちながらアナウンスすれば、江流がすぐさま動く。カタバミとハヤトも手伝って離脱させ、こちらもストレガが用意したおしぼりで拭う。
(それにしても妖精脅すスライムというのは知能的なのだ。蜂蜜がほしいだけ、というなら妖精を倒す気はないとおもうのだ)
ストレガはまだ張り付いていたスライムとナバルジャの身体の間におしぼりを滑り込ませて剥がし、ぺいっ、と投げる。
「おうよっ! ぷるっぷるにしてやるぜっ!!」
ハヤトは投げられたスライムに忍刀と蹴りを交えた三連撃を放ち、スライムは核を潰されて力尽きる。悪あがきに蜂蜜を吹きかけられそうになるが、〈反応強化2〉と〈見切り2〉を身に着けたハヤトにとって避けるのは簡単なことである。
もうスライムの群れの中に要救助者はいない。あとは仲間に当たらぬよう気を付けるだけである。
サラは矢にエーテルを纏わせ、強力な矢をスライムに放つ。するとより広範囲に片栗粉を塗しながらスライムの核を射抜いた。
「この調子なの!」
「減ってきたアルか?」
奶が様子を伺いながら祭刀に眩い光を宿し、強力な一撃をスライムに放つ。一撃で核を切られたスライムは痙攣しているように見えた。
蜂蜜酒を呑んだスライムからは、どこか魅惑的な香りが漂う。そう、まさに蜂蜜酒にキンモクセイの花を浮かべたような……。
「こ、これはこれで美味しそうでアル」
ぽつり、と呟く奶は、牛の耳を震わせながらそのスライムの残骸を見つめる。その横を通り抜け、彼女の相棒たる狼もスライムを攻撃! 片栗粉が鼻を擽りくしゃみをしたが、スライムにはその牙が痛かったのかうねうねしている。
「順調かもしれないな」
江流は手にした脇差【神楽】でスライムを切り付けながら頷く。攻撃後、得物を観察したが刃の劣化は見られない。どうやら不可視の衝撃を発動させずとも倒せそうだ。
(だからと言って油断禁物だけどな)
江流は周囲を見渡し、スライムが再び妖精を狙わぬよう注意した。
「こっちも試してみるのだ。熱でも柔らかくなったが興味深いのだ」
ストレガは攻撃の意思を表し、ハヤトが退いたのを見てすかさず掌から生み出した氷の矢を放つ。一撃で核を破壊されたスライムは力尽きるも遺体(?)は残った。
「研究に役立ってもらうのだ」
もしかしたら食べられるかもしれない、と思いながら彼女は黄の魔導書を抱きしめつつ考える。
(次はもっと柔らかくなるかどうか、アレを試すのだ)
ものすごくいい笑顔でなにか考えているストレガに、江流とサラはちょっとだけ嫌な予感を覚えていた。
「蜂蜜の匂いのせいか腹が減ってきやがった……」
2,3匹のスライムを一度に三連撃で相手するハヤトがぽつり、と呟く。事実蜂蜜のいい匂いが辺り一面に広がっているのだ。
奶がハヤトの言葉に頷きながら注意深くあたりを見渡せば、スライムの残骸が分裂するという事は無く、また増えた印象もないなと思った。それでも、増えたら困るので念のため片栗粉を塗しておく。
「スライム……一気に倒さないと、増えちゃう、ね」
サラが鋭い一矢を放ちながら不安げに言う。その言葉に頷きながら、ストレガがスライムに対して手を伸ばす。
「そう言う事ならば、こっちを使うのだ」
そう言って解き放つは、大量の小さな光の粒。それらは片栗粉を巻き上げながらスライムたちに襲い掛かる。
「もらった!」
「合わせるぜ!」
江流とハヤトが揃って三連撃を放てば、あっけなくスライムが2匹とも痙攣しながら地に伏せ、倒されてしまう。
「よっしゃあ!」と歓声を上げるハヤトに相槌を打ち、江流はスライムの残骸を手に取って匂いを嗅いでみる。
(うん、蜂蜜とキンモクセイの香りだ。蜂蜜取り込んでたから虫が集るかもしれないな。毒性があったら木々に問題があるし……スライムが駆除できたら、生活魔法で火をおこして残骸を焼いておいた方がいいか?)
真面目に考える彼はさておき、甍は妖精の方へ行こうとしたスライムの前に立ちはだかり攻撃し、カタバミがそれに合わせて祭刀を突きさす。
「残り4匹です!」
周囲を見渡せば、4匹のスライムが行き場をなくしオロオロしていた。
「ほーら、こっちアル!」
奶が蜂蜜酒を地面に垂らせば、スライムたちはのそのそと「我先に!」と言わんばかりん速度……と言っても遅いのだが……でその方へ向かう。彼女は「もういっちょアル!」とばかりに魔矢を放ち、1匹が核を打ち抜かれる。
「こっちも試すのだ」
ストレガは緑色の光弾を放ち、様子を見る。すると、命中したスライムがいやいやするかのように身体を震わせる。しかし効果が発揮されたかはわからない。
「おかたづけ……だよ!」
サラはエーテルを籠めた光の矢弾を放って炸裂させスライムたちを攻撃すれば、キラキラと光の破片を反射しながら留めを刺されたのであった。
●スライムの有効活用……?
「あーがとー!」「わーい」「あがと、ぼーけーしゃー!」
スライムが全部倒されると、木の上に避難していた妖精たちが羽根をヒラヒラさせながら降りてきた。
「みなさん、大変喜んでいるようですね」
〈動物感応〉で間に入り、アズルノが改めて礼を述べる。カタバミも「ありがとうございました!」と心から感謝し、6人に頭を下げた。
「しかし……このスライムどうしようか……」
江流はそういって後ろに積まれたスライムだった物を振り返る。彼は妖精さんと相談するが、妖精さん達もこんなケースは初めてだった為『冒険者たちに一任する』(訳:アズルノ)との事だった。
少し離れた場所では、ストレガがスライムを解体していた。研究熱心な彼女らしい行動である。
「ん。このスライムを『ハニーハントスライム』としておくのだ。妖精を襲ったことや今回行った対処法もきちんと記録しておくのだ」
と、手を動かしながらノリノリな様子に江流とハヤトは「水を得た魚とはこの事か」と感心する。
「そういえばこれって結局どうするの?」
甍が記録をつけるストレガの手伝いをしながら首を傾げる。
彼女が手にしたスライムの一部からは、とても甘い香りが漂っていた。たっぷりと蜂蜜を取り込んでいただろうか。その上キンモクセイの香りもついている。
蜂蜜酒を取り込んだ個体からは、アルコールの香りも程よく漂い、大人の味が期待できそうだ。
「やっぱり、いい匂い……。食べられるのか、な……?」
「スライムさんを倒した後に食べようとする人がいた気がするアルが、これ食べられるアルか?」
サラが、興味があるのか、少々ドキドキしながら首を傾げ傍らの奶もまた同じらしく好奇心に満ちた瞳で見ていた。
「なぁ、ストレガ。調理するんなら俺も手を貸すぞ」
「それは有難いのだ。量が量だから人手が欲しかったのだ」
ハヤトの申し出に、ストレガはほんのり微笑み2人でさっそくお料理開始。その様子に江流は「本当か……?」と興味深そうにみていた。
「よし、まずは過熱してみるのだ」
「鍋はこっちだな。で……こいつは洗った方がいいか?」
ストレガとハヤトが調理をしている。その様子を妖精たちは興味深そうに見つめている。その一方、妖精たちは命の恩人だから、と冒険者たちに沢山の蜂蜜を分けてくれた。
「ほ、本当にいいのか……?! ありがとう!」
カタバミがものすごく嬉しそうに小瓶を手に取る。甍もまた、妖精さんから蜂蜜を分けて貰えて幸せそうだ。
少し離れた所ではナバルジャが冒険者たちに礼を述べていた。だが、まだ不安要素があるから、と冒険者たちに休むように言われていた。
「べたべたされた人たちの色々な疲れはヒールで癒せるアルか?」
「あったように思いますが……」
奶が疑問に思っていると、戦闘中に〈ヒール〉を使ったカタバミが経験則から語る。それならば、と彼女はナバルジャの背中辺りから〈ヒール〉を試してみる。
「どうアルか?」
「おぉ……温かい……」
効果があるか否かはさておき、気持ちよさそうだ。因みにナバルジャは温かいと言ったが個人の感想である(本当に温かいかは未知数)。
ややあって、ストレガとハヤトが調理したスライムだったものが運ばれる。見た目はシャルガネでいうわらびもちのような姿をしていた。蜂蜜色で、ぷるぷるで、見た目はとても美味しそうだ。
「試しに食べてみたが、なかなか美味しかったのだ」
「食べてみてくれ。こいつ、湯がいても蜂蜜の味は消えなかったんだ」
と、2人は自信満々である。
見た目からして美味しそうなお菓子(?)に、一同物は試し、と口にしてみる。すると、もちもちとした食感と、蜂蜜のしっかりとした甘さがとてつもなく美味に感じた。
「これ……美味しいですっ!」
「やっぱり食べられるアルか!! 新たなスイーツ誕生の予感アルよ!」
サラと奶の口にはあったのか、2人とも大喜びだ。甍は妖精さんからもらった蜂蜜と食べ比べながら何度も頷く。
「蜂蜜そのものはそれで美味しいけど、スライムにしみ込んだのも少し風味が変わって美味しいね」
「ん? しかもちょっと伸びる……?」
カタバミが、手で軽く引っ張ると、ゆっくりと伸びていく。まるで水飴みたいな柔らかさがあるようだ。しかし歯にくっつかない。その事に江流も少々驚いているようだ。
妖精さんも、この新たなスイーツには驚いているようで、美味しそうに食べている。もちろん、妖精さんには小さくして食べさせているから安心して欲しい。
「詳しい事は調べてみる必要があるのだ。でも、新たな食を開拓してしまうかもしれないのだ」
ストレガは、その可能性に胸を躍らせながら残りの残骸を茹でる。他の調理法も試したみたいだが、これが一番美味しかったらしい、とハヤトが付け加えた。
「うむ、これは美味しい……」
「まさかあのスライムがこんな風に美味しくなるとは……」
ナバルジャとアズルノも試食し、美味しさに太鼓判を押す。彼らはあのスライムについて調査を進め、食べ物に出来ないかを考えるらしい。
「逞しい気がする」
「そうでなければ、商人はやっていけないのである」
甍の呟きに、ナバルジャは腰を手に置きにっこり笑う。その様子に一同が苦笑したり感心したりする中、
「……妖精さんも無事で、美味しい物も見つかって……よかったの」
サラはにっこり笑って安堵した。
こうして、妖精さんの救出とベタベタスライム退治は完了した。妖精さん達は今後もあの木で冒険者たちを出迎え、何か素敵な物と交換で美味しい蜂蜜を分けてくれるだろう。
(終)
マスターコメント
ミドルシナリオ易しい 報酬:多い6 / 6〜8人
2021年11月16日 16時48分57秒 公開
相談掲示板
頼む、誰か……。 アレは私ひとりではどうにも出来ません!! 至急協力お願いします!!
はじめまして。シューターの、サラです…。 明日出発、だけど…あと2人、ひとが集まってくれますよう、に。 わたしは冒険者になったばかりで、あまり力にはなれないかも…でも、一生懸命がんばる、ね。 えっと、何かをまぶせば攻撃、し易いんだよ、ね。なんだろ…。 粉、だと思うんだけど…ショップで売ってるものでないと、ダメ、なのかなぁ。
シーフの海神江流だよ。 出発まで残り1日切っちまったんだけど、後2人か。 取り敢えず、プレイングは作っておかないと、折角人が集まったのに…なんてなると悲しいからな。詰めれるところは詰めておこうか。 べたべたのスライムおばけ。 べたべたをどうにかするために…って事なら水分を吸収するような物、サラさんの言うように粉。まぁ、砂でもいいのかもしれん。 水分が外に出ればある程度固くなるだろうから、そこを叩く感じがいいんだろうかね。 ただ、喩え話が”飴”と仮定している事。 蜂蜜を取り込んでいる過程からか、蜂蜜と金木犀の香りがしている事を考えると… これ、ひょっとして退治したら食えるんじゃないか? ショップを見てみたけど、アイテム化されてる粉はちょっとなさそうだから、出発前に話を聞いて市場で片栗粉でも仕入れた体で参加してみようと思うよ。せっかくの蜂蜜を台無しにしてもあれだからね。 飴食い競争だと片栗粉に飴隠すし、小麦粉…は加熱しないと腹壊すらしいからな。 戦闘面については、フェザーステップで攻撃後移動ができるんで、切り込んで粉ぶっかけて、余剰移動力で再度距離をとって。 ってやれば、そうそう簡単に捕まらないように…やれると思う。 優先順位は、妖精捕まえちゃってる奴からかがいいかね。
たべられる…そうかも。 単純に「飴→飴食い競争」からの連想で、片栗粉は浮かんでたけど…でも、ショップに無いから…って、悩んでた、の。 アイテムで持たなくても大丈夫なら、片栗粉、いいと…思う。 戦闘、わたしは後ろから、矢を射るよ。 矢の先に粉の入った袋を仕掛けて、攻撃と同時に粉袋が破裂するように、できたら、効率良いかも、しれない…ね。
滑り込みでの参加アル。あと一人参加すれば成立アルね。 シューターの牛奶アル。皆さんよろしくアル。 片栗粉を使ってべたべたを解決する戦法は了解したアル。 妖精さんを捕まえているスライムさんから倒していくアルね。 ワタシとしては、蜂蜜が大好きと言う習性を利用できないか考えてみたアル。 丁度大工房にミードと言う蜂蜜が使われているお酒を見つけたアル、その辺に置いたりして、誘導を試してみるアルよ。
あ、あ、ありがとうございます!! 報告書(プレイング)提出及び装備の点検、宜しくお願いします。 締め切り日時にご注意下さい! では、ご安全に!!
滑り込みなのだ。ストレガなのだ。よろしくなのだ。 出発できるのでプレイング忘れないようになのだ。 片栗粉が出てるので別の手段としてぬるま湯も用意しておくのだ。 あとはアシッドブリット撃ち込んで物理的に柔らかくしてみたりするのだ。
甍・ヒネモスだよ。 1日前の時点で(NPCさんにも)頭数にすらも入れてもらえてないけど 一応「滑り込み参加」じゃないよー。 本当だよー。 さて「どうしよう」かなー。
川で溺れてる人を助けるなら川に飛び込む。 スライムに溺れてる妖精を助けるならスライムに飛び込む。 と言う思考で動くよー。
甍おねえちゃん…よかった、声、きけて。 あのね、頭数、入ってないってことはない、って思う、な。 それに、わたし…いちばん最初に、甍おねえちゃんが助けにいこうとしてたの…知ってる、よ。 甍おねえちゃんも、他の冒険者のおにいちゃんおねえちゃんも、…いっしょにがんばろう、ね。