南の海の島興しモニター
望月誠司
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シナリオID:1499
オープニング
青く澄み切った空、眩く輝く太陽、エメラルドブルーに煌く透明度の高い透き通った海。
そんな美しい光景とは極地にある、呪いの藁人形じみたホラーな物体を目にして、島を訪れた冒険者の一人が、島領主に仕える家臣だという依頼人へと尋ねた。
「あの……これはなんですか?」
色鮮やかにカラフルな、島の民族衣装らしき長衣に身を包んだ娘は朗らかな笑顔で、
「メデイラ島のますこっときゃらくたー『めでぃちゃん』です。かわいいでしょう?」
「めでぃちゃん……」
「かわ、いい……?」
太いサトウキビを適当にぶった切って、目と口と髪の毛と手足を雑にくっつけましたというようなシャーマニズム溢れる造形は、島民と大陸人とでは美的感覚に大きな違いがあるのだろうかとの疑いを向けさせるに十分たる代物だった。
●
メデイラという名の島がある。
ロスガリア大陸のちょっと南方、エメラルドブルーに輝く海原に浮かぶ、サトウキビが特産の常夏の島だ。
このメデイラ島だが先日、クリーパーの襲撃を受けた。
預言の魔女の予知夢と冒険者達の活躍によって災厄は退けられたが、次も都合よく予知夢で察知できるとは限らない。
クリーパーだけでなく海賊などでも何かと物騒な昨今、武力的脅威に備えて授恵者の守兵を増員しよう、という話になったらしい。
しかし常備兵を増やすのは金がかかる。古今東西、兵というのは金食い虫だ。
故に、その財源を確保する為に、メデイラ島の領主は新たに観光業を興そうとしているらしい。
「で、このメデイラ島に人を呼ぼうと思ったら、目玉になるのはやっぱり浜だと思うんですよ」
カラフルな民族衣装に身を包んだ娘――ラウリシルヴァが貴方達へと言った。
曰く、メデイラ島のエメラルドブルーの海はとても透明度が高く美しいものである。
こういう風景は大陸の人々に喜ばれる。
同じ南海にあるコッコ島なども美しいが、あちらは行く事自体がそもそも暴風雨に見舞われたりするなど大冒険であるのに対し、メデイラ島周辺の気候は穏やかな為、比較的気軽に大陸との往来が出来る。
その為、遊びに来るのに向いているのではなかろうかと。
「でもいくら良い浜だっていっても、その存在を知らなければ遊びに来てはくれないですよね。そこで、まずは冒険者さん達に浜で遊んで貰いたいんです」
そして、その遊んだ感想をレポートのような形でまとめて欲しいのだという。
ラウリ達はそのレポートを『浜を訪れた人々の声』という形にして紙面にまとめ最寄りの大陸の都市で配布するつもりなのだとか。
要するに宣伝だ。
「ご感想に忖度は必要ありません。こういうのは生の声が大切ですからね。それに、うちの浜辺で遊んでいただければ、きっと気に入って貰える筈ですから!」
誇らしげに娘は言った。
随分と地元に愛着と自信を持っている様子だった。
それは小さな島の世界しか知らない為か、それとも本当にこの島の浜辺はそれだけの魅力があるのか……
どれ、一つ見定めてやろうじゃないかと、貴方達は水着に着替え遊び道具を手に、エメラルドブルーに煌く大海原が広がる白い砂浜へと向かったのだった――
そんな美しい光景とは極地にある、呪いの藁人形じみたホラーな物体を目にして、島を訪れた冒険者の一人が、島領主に仕える家臣だという依頼人へと尋ねた。
「あの……これはなんですか?」
色鮮やかにカラフルな、島の民族衣装らしき長衣に身を包んだ娘は朗らかな笑顔で、
「メデイラ島のますこっときゃらくたー『めでぃちゃん』です。かわいいでしょう?」
「めでぃちゃん……」
「かわ、いい……?」
太いサトウキビを適当にぶった切って、目と口と髪の毛と手足を雑にくっつけましたというようなシャーマニズム溢れる造形は、島民と大陸人とでは美的感覚に大きな違いがあるのだろうかとの疑いを向けさせるに十分たる代物だった。
●
メデイラという名の島がある。
ロスガリア大陸のちょっと南方、エメラルドブルーに輝く海原に浮かぶ、サトウキビが特産の常夏の島だ。
このメデイラ島だが先日、クリーパーの襲撃を受けた。
預言の魔女の予知夢と冒険者達の活躍によって災厄は退けられたが、次も都合よく予知夢で察知できるとは限らない。
クリーパーだけでなく海賊などでも何かと物騒な昨今、武力的脅威に備えて授恵者の守兵を増員しよう、という話になったらしい。
しかし常備兵を増やすのは金がかかる。古今東西、兵というのは金食い虫だ。
故に、その財源を確保する為に、メデイラ島の領主は新たに観光業を興そうとしているらしい。
「で、このメデイラ島に人を呼ぼうと思ったら、目玉になるのはやっぱり浜だと思うんですよ」
カラフルな民族衣装に身を包んだ娘――ラウリシルヴァが貴方達へと言った。
曰く、メデイラ島のエメラルドブルーの海はとても透明度が高く美しいものである。
こういう風景は大陸の人々に喜ばれる。
同じ南海にあるコッコ島なども美しいが、あちらは行く事自体がそもそも暴風雨に見舞われたりするなど大冒険であるのに対し、メデイラ島周辺の気候は穏やかな為、比較的気軽に大陸との往来が出来る。
その為、遊びに来るのに向いているのではなかろうかと。
「でもいくら良い浜だっていっても、その存在を知らなければ遊びに来てはくれないですよね。そこで、まずは冒険者さん達に浜で遊んで貰いたいんです」
そして、その遊んだ感想をレポートのような形でまとめて欲しいのだという。
ラウリ達はそのレポートを『浜を訪れた人々の声』という形にして紙面にまとめ最寄りの大陸の都市で配布するつもりなのだとか。
要するに宣伝だ。
「ご感想に忖度は必要ありません。こういうのは生の声が大切ですからね。それに、うちの浜辺で遊んでいただければ、きっと気に入って貰える筈ですから!」
誇らしげに娘は言った。
随分と地元に愛着と自信を持っている様子だった。
それは小さな島の世界しか知らない為か、それとも本当にこの島の浜辺はそれだけの魅力があるのか……
どれ、一つ見定めてやろうじゃないかと、貴方達は水着に着替え遊び道具を手に、エメラルドブルーに煌く大海原が広がる白い砂浜へと向かったのだった――
解説
■依頼目的
常夏のメデイラ島の砂浜で遊び、その魅力を記述したレポート記事を作成する
(レポートを作成する部分はPC達がオートで行うのでプレイングには省略可、とりあえず遊べばOK)
■ビーチで出来る事の例
全部やる必要は無い
また、ここに記述されている以外の事も、海辺で常識的に実行可能な事であるなら、行う事が可能
水着や銛など必要な道具は所持していない場合、レンタル可
なおPC達の他にも島民達や交易で立ち寄った島外人なども普通にビーチで遊んでいる
モニター開始時刻は昼過ぎから
●泳ぐ
透明度の高いエメラルドブルーに煌く海でシンプルに泳ぐ
●波乗り
魔獣の皮と板から作られたボードに乗って波に乗る
(要するに現代でいうサーフィン)
波の高さは平均してそこそこだが偶に大きな波が来る
●銛漁
海中の魚や海底の海老や蟹などを銛で刺し貫いて取る
素早い魚もいるがのんびり泳いでいる魚も多い
沖へでると深くなるが浜の近辺は海底はそんなに深くない
●メデイラン・フラッグ
メデイラ島の伝統競技(要するにビーチフラッグ)
競技参加者全員が一つの旗から等距離に砂浜に伏せ、合図と共に立ち上がりダッシュして一旗を取りにいく
全力で争われるがスキルの使用は禁止されている
旗を取った人が優勝。優勝すると名誉(「メデイラン・フラッグ第1006回大会優勝者」の称号)が手に入る
NPC達は多くは一般人だが、流れの授恵者達(交易で島に立ち寄ったマリーナ・セーラーや赤毛のドワーフ娘リムル、遊びにきたツェツィーリア・クライン、ぼっちゃまリオンハルト、メイドのハスカグラなど)も参加するので参加PCが一人だけの場合でも必ず勝てるとは限らない
●メデイラン・バレー
島の伝統球技2(要するにビーチバレー)
二対二で行う
PC同士で組んでPCペア対PCペアで対戦などが可能
一人で参加する事も可
一人の場合モブNPCがペア等に配属される
(フラッグの項目で記述した流れの授恵者達に声かけて誘う事も可)
基本的には本気でやるのではなくキャッキャッと気楽に打ち合う感じ
ボールはゴムに近い質感の魔獣の皮を加工したものが用いられる
●バーベキュー
夕方頃から依頼人のラウリが浜調査の仕事にかこつけて島民達と一緒に酒杯片手にワイワイやり始めるのでそこに混ざる形になる
肉、野菜、魚介類などが沢山焼かれ、飲み物はエールやサトウキビジュース等が持ち寄られる
食べて飲むオンリーでもいけるが焼くのを手伝ったりも出来る
マスターより
季節は秋でもここは常夏、永遠の楽園へようこそ、望月誠司ですこんにちは。
今回は南の海で遊べばお金が貰えるというバカンス的シナリオになっております。
一応望月のシナリオ「砂糖島の水蜥蜴退治」の結果を受けての展開となっていますが、そちらのシナリオの内容を知らなくても大丈夫です。
クリーパー出た、退治した、次に備えて授恵者を常時沢山雇っておきたいけどお金がないので稼ごう→観光業だ!→宣伝の為にモニターやってもらおう! と島の人達がなったという流れだけ把握しておけば問題ありません。海で遊ぶだけのシナリオですので。
ご興味惹かれましたらご参加いただけましたら幸いです。
リプレイ
「南国ぅーーっ!」
茜色のビキニに眩しい白肌を包んだ少女が片手で額に庇を作り赤瞳にエメラルドブルーの海を映して歓声を上げた。
緩やかなウェーブを描く長い黒髪に、赤い狐耳と尻尾を備えた半獣少女エルシー・サリバンだ。
「ふふ、絶好のバカンス日和ですわね。太陽の陽射しが眩しいですわ」
雪のように白い髪を長く伸ばしたエルフ娘が銀色の瞳を細め柔らかく微笑んだ。
起伏豊かな瑞々しい白肌を、白青のビキニに包んでいるネーヴェ・グラヌローザである。
「ネネー! 行こう!」
狐少女はネーヴェを振り返り弾んだ調子で誘う。
「ええ、参りましょうか、エル」
親友からの誘いにエルフ娘はにこにこと笑って、二人は白砂の上を駆けてゆく。
寄せては退くキラキラとした透明な波の中へと白い素足で踏み入ると「つめたーい!」と歓声をあげた。
他方、
「なんて! 素敵な! お仕事!」
「楽しむ! ことが! 人助けに! なると聞いて!!」
胡散臭く見られがちな緑髪のエルフ少年シェオルがフフフと笑い、人懐っこい金髪の聖職者シルク・メイプルリーフが笑顔で片手を振り上げ歓声をあげている。
シェオル曰く、遊んで食べてお金がもらえる……ふふふふ、楽しむぞぉ! との事である。
「せっかくの機会だからわたしも遊びましょうか」
身長125cm、可愛らしい白フリルの下に黒ビキニの水着を着込んでいる銀髪のハーフリング娘が言った。アヴェラ・ウッチェロである。
これまでオフに遊んだりした経験が薄く『遊ぶ』こと事態に不慣れだが、仕事の一環であるなら抵抗も少ない。
「美味しい仕事なのだ。別の意味でも本当に美味しい仕事にしたいのだ」
と銛を片手に言うのは、紺色の競泳用ワンピースに肢体を包んでいる長い銀髪のゴブリナ、ストレガ・L・リベルガストラである。
「銛漁するの?」
遊ぶと決めたは良いが、さてどうしたものかしらと思案しているアヴェラが他のメンバーの予定について尋ねてみると、
「うむ。夕方にはラウリが島の人達とバーベキュー始めるそうだから、そこに追加出来るよう獲って来るのだ。趣味と実益を兼ねるのだ」
探究者という名の自由人はそのように頷いた。
「私はまずは普通に思いっきり泳いでみるつもりです! その後はメデイラン・フラッグに参加してみます!」
艶やかな黒ビキニにB102W62H92な白い肢体を包んでいるブロンドの女聖職者はそのようにのたまわれた。
泳ぐのはまだしも、その姿で思いっきり走るのは海辺の青少年の感性を爆破しそうだな、と思われる所である。
「フラッグ……わたしも参加してみようかしら」
「あ、良いですね! 一勝負といきましょう!」
そんな事を約束し合いつつ、
「僕は波乗りっていうのをやってみようかなー。メデイラン・バレーっていうのも興味があるね」
「波乗り……そんなのあるのね」
「アヴェラ君も一緒にやってみる? フフ、波に攫われてしまうかもしれないけど」
興味がありそうに見えたのでシェオルは離岸流とかには注意ねとの心持ちから言いつつ誘ってみる。
他人からはやたらと胡散臭く見えるエルフ薬師からの誘いに対しアヴェラは、
「……そうね、やってみようかしら」
と、少し思案した様子の後に頷いた。
妖しいのは外側だけと見抜いたか、あるいは、危険があっても自分なら大丈夫と判断したのかもしれない。
かくてストレガは銛漁に、シルクは泳ぎに、シェオルとアヴェラの二人はボードをしに海へと向かったのだった。
他方、
「すっごい海綺麗ーっ!」
サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは透き通る様な蒼碧の瞳にエメラルドブルーの海を映して弾けるような笑顔を浮かべていた。
健康的に豊かな褐色の肌を白いビキニで包んでいる金髪のエルフ娘だ。
「いや~、バカンスと言やぁやっぱ海が最高だよな!」
赤褐色の精悍な腕を組み、うんうんと頷いているのはハヤト=ガラン=ヴォルファングだ。
銀色の髪と金色の瞳を持つ銀狼の妖鬼は、鍛えられた体躯にサーフパンツを穿いていた。
「ねね、ラウリが言ってた道具の貸し出し場所ってあれじゃない? いってみよ!」
サフィラはハヤトの片手を掴み引っ張って、白浜の一角を目指し小走りに駆け出す。
「っとと、そう慌てるなよサフィラ、海は逃げねぇ――」
制止しかけたハヤトだったが、
「――いや、やっぱり急ごう。時間は有限だからな!」
彼女の方を見やると言いかけていた言葉を翻した。
駆ける褐色肌娘の躍動により、薄く白い布地が大きく揺れ弾んでいたからである。
(ムフフフ、やっぱこれだから海でのバカンスはやめらんねぇよなー!)
などと鼻の下を伸ばしてサフィラの水着姿に見とれつつハヤトはボード貸し出し場へと駆けてゆく。
一方、良く女の子に間違われる美少年ララベル・サン・ディーベルは、セーラー服風の水着を手に案内された更衣室へと向かっていた。
(海の色すっごく綺麗だったな! 早くアリエッタと入りたい!)
どうやって恋人と一緒に遊ぼうかと想いを馳せつつ、いそいそと扉を開くと、ほっそりとした白く眩しい背中が見えた。
(……あれ?)
着替えの途中らしき半裸の少女が振り向きララベルを見やり、その緑瞳を真ん丸に見開いた。
ピンク色の髪の猫の半獣少女――アリエッタは脱ぎかけの服を素早く掻き抱くと、恥ずかしそうにララベルを睨んで、
「……あの、ここ、女子更衣室……」
「えっ、と…………ご、ごめんッ!!」
ララベルは顔を真っ赤にして慌てて更衣室から出て扉を閉めた。
入口には確かに『女子用』と書かれていた。
案内した人間がララベルの性別を間違えてしまったようだった。
●
「この子がマスコット? 島の観光大使……だよねっ!?」
「着眼点は良いのですが、細部の雑さが気になりますね……」
浜で『シャーマニズムの塊』のアピール活動をしているラウリと遭遇したエルシーは、その威容の前にネーヴェと共にマスコット改造作戦を決意した。
「2.5頭身くらいにしない?」
全体のバランスって大事、と思いつつネーヴェと相談する。
「海の青と南の花を思わす色柄のワンピが良いと思うよ、民族衣装の鮮やかさのアピールにもなるし。髪はサイドテールで大きな花をつけるとイイかも」
と素案を浜の砂の上に描いてゆく、
「なるほどエル、とても可愛いですわ。あとはマスコットは目と口のバランスが大事ですから、そのあたりも丁寧にしましょう。細部にこそ魂が宿るのですよ」
「おー、なるほど、流石ネネ!」
という訳で二人は急遽材料と道具を集め島の片隅で手芸――工作? を始めた。
ネーヴェはメイク感覚で細微の微調整を行う。
睫毛は長く、ほんのりチークを乗せ、全体バランスを見ながら愛らしい顔立ちへと変えてゆく。
「自信を持ってポーズッ!」
仕上げに手足の部分を動かして明るいポーズを取らせると、浜のラウリへと渡した。
出来は良かったが、必ずしも良いものが採用されるとは限らないのが世の中。
この新生めでぃちゃんデザインが採用となるかどうかは神のみぞが知るのだった。
●
シルクは海に入る前に砂浜にてしっかりと準備体操を行っていた。
軽い跳躍から屈伸や伸脚、前屈や後屈を行う。今日の柔軟性や体調に問題は無いようだ。
「いざー!」
艶やかな黒ビキニ姿の金髪少女が海へと入ってゆく。
透き通ったエメラルドブルーの海は徐々にその深さを増してゆき、南国の熱い陽射しに焼かれていた身の足首から脛、膝、腿へとひんやりとした感触が包み込んでゆく。なかなか気持ちが良かった。
やがて腹程度まで海水が達するとシルクは身を前に投げ出し、水泳に入った。
すらりと伸びた脚を動かし、身をくねらせ、手を水を切るように動かし、煌めく海の景色を眺めつつのんびりと泳いでゆく。
102cmにかかる多大な水の抵抗も授恵者の馬力でなんのそのである。
宣伝は一般人向けだろうから、シルクは今日は遊びに関しては授恵者としてのスキルは一切使わないつもりだったが、身体能力の高さは発揮されるものだった。
一方、競泳用の水着に肢体を包んでいるストレガは、銀色の髪を靡かせ銛を片手に海中へと潜った。
海面より太陽の陽射しが差し込み、ユラユラと揺れる光の帯を作り、色鮮やかな魚達が泳ぎ回っている。
光のカーテンをくぐりさらに深く深く潜ってゆく。
やがて海底へと達したストレガは、エーテルを操ると健康的な片足を伸ばし、つま先より眩く蒼い光を発した。
腕を振るって水を掻き、左右の脚を動かし浮上してゆく。
すると光と匂いに惹かれ海洋生物達が集まってきた。
狙いたいのは主に海老、蟹、蛸だった。
魚達に混じってかなりの大きさの海老がストレガの足先を目がけ浮上して来ているのが見えたので、ゴブリナ娘は足を振るって海老を誘き寄せつつ銛を構え素早く突き出した。
鈍い手応えと共に鋭い刃先が硬い殻を割って海老を貫いた。
ストレガは腰に備えていた網籠を開くと銛から海老を外して入れ、閉める。
集まっていた海洋生物達は危険を感じたのか散ってしまっていたので、一旦海面へと出て息継ぎをした。
それから再び潜ると同じようにして蟹や蛸も獲ってゆくのだった。
●
「へー、これで波を越えていく……難しそうだけれど、初心者でもいけるかな?」
ボードが沢山立てかけられている浜の貸し出し場にて、係員から説明を受けたサーフパンツ姿のシェオルはうちの一枚を手に小首を傾げた。
「とりあえずやってみましょう」
白フリルと黒ビキニ姿のアヴェラが同じくボードの一枚を選んで言う。
それでは試しに、とシェオルとアヴェラは共に海に入った。
係員から教えられた通り、ボードの重心位置にヘソの位置が来るように腹這いに乗り、左右の手を海水を掻き分けるように動かしてゆく。
「おー、前に進んだー」
「なるほど、ボードが傾くと抵抗がかかるから、海面に対しての水平が大切なのね」
シェオルとアヴェラは授恵者のパワーでスイスイと海面を滑るように進んでゆく。
ある程度沖へ出た所で岸の方向へと向きを変えて待つ。
起こった波が迫り来るのを見ると海水を強く掻き、波と同じ速度まで加速する。
両手をボードの左右端につけ、腕を伸ばして上半身を起こし、すかさず身を横に捻りながら両脚を前に出すように胸元に引きつけ立ち上がる。
が、
「おおー?」
「きゃっ!」
二人ともにボード上でのバランスを保つ事ができず、転倒して海に落ち波に呑まれてしまう。
「いやー、やっぱり難しいねー」
海面から顔を出し濡れた髪を掻き上げながらあっはっはとシェオルが笑う。
「もう一回よ」
アヴェラがすかさず言って再びボードの上に腹這いになり漕ぎだしてゆく。
ばしゃん、ばしゃん、ざぶーんと何度もボード上から海へと転倒落下する二人だったが、そのうちにアヴェラはコツを掴み始め、ついに波に乗るボード上で立つ事が出来るようになった。
「あら、結構気持ちいいわね」
隆起する波により下から持ちあがって来るボードに対し、斜め半身に両足を踏ん張って立ち、身を捻るようにしてボードの向きを操作、ボードの先をぐるんぐるんと左右に振りつつ鮮やかに波の上を滑ってゆく。
「……これ、いいわね」
一波乗り終えて『遊び』としての楽しさを感じたのか、アヴェラはぽつりと呟いた。
「……この板に掴まりながらぷかぷか漂うの、結構気持ちいいねー」
一方、シェオルは立ち上がる事を諦めたのかボード上で腹這いの状態のまま漂い始めた。
曰く、何事も無理はしないのが楽しむ秘訣、だとかなんとか。
「駄目よそんなの」
背丈はちっちゃいが世話焼き系なメイド娘が波乗りの魅力を伝播すべくエルフ少年へとコツを教え始める。
「シェオルさん立ち上がる時に手を置く位置と足を引き付けて置く位置が悪いのよ。バランス取ればいけるわ」
「うぇー?」
そんな訳でアヴェラの監督を受けたシェオルもまた数度のチャレンジの末に、
「おー」
波に乗るボード上で立ちあがる事を成功させ、鮮やかに滑ってゆく事が出来るようになったのだった。
●
「おお~! これで波に乗れるの?」
貸し出し場にてサフィラは魔獣の皮と板から作られたというボードを、その透き通る様な蒼碧の瞳で興味津々で見つめていた。
係員から波乗りのやり方の説明を受けると、
「さっそく乗ってみようよ!」
とハヤトと一緒にそれぞれボードを借り海へと入ってゆく。
ボードの上に腹這いになった白いビキニ姿の娘は、波が迫り来ると海中へと手を入れエーテルを解放、水流操作にて加速した。
波に重なった所で両腕を伸ばし、身を捻りつつ足を胸元に引きつけ立ち上がる。
「にゃ! すごい! すごい! 本当に波に乗ってる!」
卓抜したバランス感覚で即座に手足の置き所を掴み、隆起する波の上で身を巧みに捻ってボードの向きを操作し、スイスイと波の上を滑ってゆく。
「よし、こいやっ!!」
ハヤトの方もパドリングして加速し波と重なると、持ち前の運動神経とバランス感覚で見事に立ち上がり、隆起する波の上を滑ってゆく。
「お、こりゃ良いな!」
「でしょ~!」
一度、勘所を掴めば後は早い。
「掴むぜビッグウェーブ!!」
度胸一発、大波に挑み、高々と隆起した波の上よりさらにボードごと跳躍、宙で豪快に一回転すると再び波の上に降り立ち、バランスを崩し転倒しそうになるも素早く身を捻り立て直しスイスイと滑ってゆく。
「にゃ~! さっすがハヤトー!!」
サフィラが歓声をあげると、
「ありがとよ!」
銀髪青年はボード上で親指を立て笑顔を向けた。
「サフィラもデカイ波狙ってみるか? サフィラならいけるって!」
とハヤトから勧められサフィラも大きな波に挑戦する事にする。
「よ、よーし! ビッグウェーブを乗りこなすぞ!」
少し恐れを抱きつつも気合を入れて褐色肌の娘が大波に挑む。
「……来た!」
波を待つ事しばし、これまでで一番大きな波が来た所でサフィラは水中に入れた手よりエーテルを解放しボードを加速させた。
パドリングしつつ後方から迫る大波に速度を合わせ、うねるように巨大に盛り上がってゆく水の頂きにてテイクオフ。
「にゃにゃにゃ~!」
聳え立つ塔のような波の上を白ビキニ姿のエルフ娘が身を捻りボードを巧みに操りながら滑ってゆく。
「やるなぁ!」
ハヤトが口笛を鳴らし、やがて大波を乗り終えたサフィラは、
「ああ、すんごい気持ちよかった!」
と笑顔を見せた。
その後二人は一枚のボードに二人で乗る事に挑戦したりもしたのだった。
●
ハプニングはあったものの水着に着替え終えたピンク髪の半獣少女は、恋人の前でくるりと回った。
「ね、ね、どうかな?」
セーラー服風の水着姿の猫少女は緑色の瞳を柔らかく細めて微笑む。
男の子とおそろいの水着だけど、このデザインならありかな? と思うアリエッタである。
「良く似合ってる、凄く可愛いよ」
ララベルはアリエッタの水着姿にドキドキと胸を高鳴らせつつ微笑み、少女の手を取る。
「行こう?」
「……うん」
アリエッタは少年に手を握られドキッとしつつも頷き、共に白い砂浜へと向かって歩き出す。
(手を握られたくらいでこんなになって大丈夫かな、私)
軽く赤面しつつ少女は胸中で呟く。
向かう彼方にはエメラルドブルーに煌めく大海原が広がっている。
「海も砂浜も凄く綺麗だよ……僕の故郷の港の海とは全然違うや」
ララベルはアリエッタの肩に手を伸ばし抱き寄せ海の方を眺めつつ言う。
「そっ、そうなの?」
アリエッタはさらに顔を赤くしつつも身を寄せる。
「うん。でも一番綺麗なのはアリエッタだけどね」
そんな事を語り合いながら貸しボード場へとやってきた二人は係員から波乗りの説明を受けつつボードをそれぞれ選んだ。
「折角だし、どっちが大きな波に乗れるか競争しようよ」
ララベルの誘いに、ようやく動悸も収まってきたアリエッタは不敵な笑みを浮かべると、
「ふふーん、いいよ! 負けないからね!」
と受けて立った。
ボード上にうつ伏せに乗り手頃な位置へと泳ぎ出たララベルは、狙った大波が迫り来ると鮮やかにテイクオフする。
ボード上に立ち少年は、身を巧みに捌きつつ煌めく波の上を華麗に滑ってゆく。
(わ、すごい! いきなり?! 経験者って訳じゃないよね?)
アリエッタが目を見開き驚愕する。
種を明かすとララベルは持ち前のバランス感覚だけでなく、シーフスキルのアクロバティックアーツと真・壁歩きも駆使していたからこそ出来た芸当だった。
(えーっと、どっちが大きな波に乗れるか、だからララベルが乗ったさっきの大波より大きいのに乗らないとあたし勝てないの? いきなりで?!)
追い込まれたアリエッタである。
「降参する?」
「しないよ! 勝つよあたしは!」
向こう見ずにも元気良く言い返しつつ猫耳少女はボードにうつ伏せに乗り、両手を使って海水を掻き分け沖へと出てゆく。
実際、極めて優れた超人的なバランス感覚を誇るアリエッタである。勝算が無い訳ではなかった。
巨大な波が起こるのを待つ事しばし、
(――来たっ!)
やがてうねりながら塔のように隆起する、巨大な波がやってきた。
係員から教わった通りにパドリングしてボードを加速させ、波と重なると両手をボード上につき身を捻りながら両脚を前に引き寄せ中腰になる。
巨大な波の頂きにて立ち上が――ろうとしたが、バランスが崩れ
(なんのーっ!)
超人的なバランス感覚は伊達じゃない。
さらに波が良い具合に微妙に変化した幸運も味方した。
猫耳少女は咄嗟に転倒を回避し態勢を立て直す。
そして隆起する超巨大な波の上をボードに乗り滑ってゆく。
「あ、あははははーっ!」
一杯一杯だったがアリエッタは恐ろしく高い位置で笑っていた。笑う以外に無かった。
「え、ええーっ、それバランス感覚一本で成功するっ?!」
驚愕のあまりララベルもまた「凄いなアリエッタ!」と笑い出したのだった。
●
澄み渡った青い空の下、太陽が眩く輝き、白い砂を焼いている。
魔獣の皮を加工したボールが放物線を描いてゆき、長方形に区切られた白砂のコート端、ギリギリの所に落ちかかった。
そこへ、茜色の水着姿の狐耳少女が前傾姿勢で砂を蹴り、地を這うように低く水平に跳躍した。
獲物を狙う獣のような俊敏さで、滑り込むように跳んだエルシーは、ボールが砂上に落ちる寸前、宙で身を捻りざま腕をすくい上げるように鋭く振るった。
「お願い!」
勢いよく打ち上げられボールが天高く舞い上がり、エルシーは砂の上をごろんごろんと二回転し起き上がる。
身を素早く翻し、ネットの方へと再び駆けてゆく。
その際に赤い瞳がコート内の相棒――ネーヴェを見た。
「ええ、――参りますっ!」
銀色の瞳でそれを一瞬見つめ返した長い白髪のエルフ娘は、高々と上がったボールの落下点へとトスを上げる構えで入る。
メデイラン・バレーは三回以内に相手コートに返せば良いルールだから、ここでトスを上げ、次にアタックするのが常道である。
エルシーがアタック準備の為に助走を取れる位置で構え――ネーヴェは白青のビキニに包んでいる瑞々しい身を躍動させ、その場で大きく跳躍しながら身を反らせ、振りかぶった右腕を、風切る唸りを巻き起こしながら振り下ろした。
クイックアタックである。
「なぁんとぉーっ?!」
対戦相手の男がクイックに引っかかって対応が遅れ、落雷の如くに飛んだボールが砂上へと鋭く突き刺さる。
「私達の息ぴったりのプレイを見せて差し上げますわ」
と試合前に語っていた娘達は笑顔でハイタッチする。
その様を見た対戦相手は、
「ガチ勢だ……」
「メデイラン・バレーガチ勢だ……」
と大いに慄いた。
どうやら可憐な見た目からもっとゆるーい試合運びになると思っていたらしい。
エルシー・ネーヴェペアは当然の如くに試合に勝利すると、互いの健闘を称え、身についた砂を払い合ったのだった。
●
「あれっ、マリーナ君だ」
シェオルは海だけでなく砂浜も堪能しなきゃ、と考えていた所、以前コッコ島への交易船の仕事で同道した金髪碧眼のエルフ娘の姿を認め声をかけた。
「奇遇だねー。こっちにも交易で来たのかな?」
「あら、シェオルさん! はい、そうです砂糖の買い付けで」
今日は休日らしくビキニに身を包んでいたが一応仕事らしい。
「シェオルさんは?」
「僕はねー――」
と互いに近状を話しつつ、せっかくだし良かったら一緒にバレーどうかな? と誘った所、
「私でよければ、是非っ」
と快諾され共にペアを組んで試合に参加する事となった。
「これを打っていけばいいんだね……おお、不思議な感触ー」
魔獣の皮製らしきボールを軽く打ってゆる~くサーブする。
対戦相手の男女ペアもエンジョイ勢らしくゆるーくボールを返してくる。
「シェオルさん、はいっ!」
「おーけー」
マリーナがトスを上げてきたのでジャンプして軽く打つ。
そんな調子で試合はキャッキャウフフとのんびりと進んでいったのだった。
●
「アリエッタ、僕達のコンビネーション見せてやろ」
「わかったわ!」
とララベル・アリエッタペアもバレーに参加した。
互いにカバーし合いつつ息の合ったプレイを見せ勝利を重ねていたが、夢中になるあまりに激突し、密着して接触してしまうハプニングなども起こっていたのだった。
●
ストレガは漁果も結構なものになったので、早めに切り上げバーベキューの仕込みを手伝う事とした。
「まぁこんなに沢山、有難うございます」
「調理の腕には自信があるのだ」
漁果の詰まった籠をラウリに渡しつつゴブリナ娘は、さしあたりサラダ等の一品料理の作成を開始した。
その次に醤油と香草を用いて肉に揉み込んでゆく。
砂糖を少量、肉にまぶすと柔らかくしたり臭みを消せると聞いたので実践する事にする。
大陸では砂糖は貴重な資源だが、砂糖が特産のこの島ではバーベキュー用に普通に持ち込まれていた。
大陸人の観点からするととっても贅沢である。
(サトウキビ栽培がもっと盛んになって、市場に多く出回るようになれば、菓子作りも料理も幅が広がるのだ)
ストレガは思う。
しかし、適した地と担い手がなかなか見つからないのが現状、というところなのだろうか?
(メデイラ産というブランドもあるだろうし……難しいものなのだ)
この島にギルド支部が置けるようになれば物流はさらに盛んになるだろうし、常駐の授恵者の働き口にもなる。
連絡がいけばビッグオウムで飛んで来ることも出来るようになるだろう。
肉の仕込みをしつつ諸々を考えたストレガは、帰ったら本部に噂話を流す事に決めた。
「――そういえばサトウキビジュースってどうやってつくるのだ?」
あれこれ考える中、ふと気になって問いかけると、ラウリ答えて曰く、
「あぁそれは、まずサトウキビを良く洗ったら、絞ります。それから――絞ります。また絞って、絞って、絞ります」
「……サトウキビをひたすらに絞るだけなのだ?」
「ですです」
と笑顔で頷いてくれたのだった。
●
「にゃ! 無人島以来だねっ! 今日は二人に負けないよー!」
フラッグ会場へやってきたサフィラは、いつぞやの坊ちゃまとメイドの主従コンビを発見し声をかけた。
すると、
「おお、奇遇だな! これは自慢じゃないのだが僕は弱いぞ! くそう、負けてしまう!!」
「ふふふ、お手柔らかにお願いいたしますね」
トランクスと競泳水着姿の二人はそんな言葉を返して来る。
やがて開始のアナウンスが響き、大勢の参加者達がぞろぞろと所定の位置についてゆく。
(授恵者なら、最高速度は皆同じくらいでしょうし……反射と身体操術がカギになりそうね)
アヴェラは胸中で呟き勝ちにいく為の戦術を練る。
「面白れぇ、全力で優勝を狙いにいくぜ!」
とハヤトもまた意気込んでいる。
やがて一般島民や観光客に混じって授恵者達が砂上にうつ伏せになると、スタートの合図が鳴り響いた。
走者一斉に起き上がり、身を翻すと彼方の砂上に立てられた旗を目指し全速で駆けてゆく。
抜きんでたのはやはり授恵者達、その中でも特に速かったのはシルク、サフィラ、ハヤト、アヴェラの四名だ。
各員、眩い太陽の下、砂の上を水着姿で全身を躍動させ矢の如くに駆けてゆく。
アヴェラの予想通りこれは全員速い!
足裏の砂を掴んでサフィラが低い姿勢で駆け、最短コースでハヤト、アヴェラが駆けてゆく。
グングンと旗が迫り、射程に納めた所でサフィラが手を伸ばし鋭く跳躍した。
ハヤト、アヴェラも迫っていたが、サフィラの低いジャンプが一瞬速かった。
褐色肌のエルフ娘の手が紙一重速く旗を搔っ攫い、スライディングすると胸が痛いので若干高めに他の走者を飛び越す感じに跳んでいたシルクがそのサフィラの上に降ってきた。
102cmの重深に柔らかく押し潰されサフィラがぐぇっと息を洩らす。
「決まりましたーっ! 伝統あるメデイラン・フラッグ第1006回大会優勝者はサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブ選手ですっ!」
かくて優勝者サフィラと健闘した三名、そして他のすべての参加者達に観客達から盛大な拍手が送られたのだった。
●
その後、シルクは複数のボードを組み合わせ海上に浮かべ、不安定なボード上で希望者達と押し相撲を行った。
なお挑戦希望者は圧倒的男子率だったらしい。
他方、
「泳いでいる間、銛はこう構えまして……一思いにこう、ざしゅっと」
水着姿で銛を構えたエルフ娘がしゅっしゅっと身振りで突き方を教導している。
「ざしゅ! だねっ」
教えを受けた赤狐娘はコクコクと頷いた。
銛漁ベテランのネーヴェは勿論、天才型の教導だったがきちんと伝わっていたのかエルシーも海中に入ると次々に魚を貫いてゆき、魚籠はすぐに一杯となったのだった。
●
陽が、落ちてゆく。
五指を絡めて手を繋ぎ夕陽を眺めていたララベルとアリエッタは、黄昏の光の中、そっと口付けをかわしていた。
少女は頬を赤らめながら微笑んだ。
「大好きよ、ララベル」
●
陽が暮れた。
陽暮れ前にストレガが熾していた火を用いて、白浜でバーベキューが始まった。
炭の配置で高温と低温の場所を分け、高温のゾーンで調理し、低温のゾーンに置いていく具合だ。
「かんぱーい! 今日は一日楽しかったね!」
「マジ楽しかったな! くはぁ~こいつは最っ高に美味ぇぜ!!」
サフィラとハヤトが並々とエールが注がれた杯を掲げ、ゴクゴクと一気に飲みつつ歓声をあげた。
二人の他にもそこかしこで乾杯の声があがっている。
「最高の焼き加減を見極めて差し上げましょう」
ノースキルという縛りを亡き者にしたシルクが焼肉番長になっていた。バーベキューガチ勢である。
曰く、
「美味しいものに手を抜くとか神への冒涜ですよ」
との事。
そして、
「焼くの、手伝うわ」
極めて優れた調理技術を持つメイド娘アヴェラがそれを補佐した。
シルクは笑顔でアヴェラと共に持ちうる最高効率で網に肉と魚介を並べ焼いてゆき、パクパクもりもりむしゃむしゃと食べてゆく。
調理の超人ストレガが砂糖を贅沢に使って醤油ベースで下味をつけ、最高の焼き加減で焼かれた肉は口の中でとろけると同時に濃厚な旨味を広がらせている。
「さぁさぁみなさんもドンドン食べてください今日は我々が優勝です」
「ごちそうになりますいただきまーす!! んまーいっ!!」
シェオルもまた凄い勢いで肉や魚介を食べていた。
「シルクさんもだけど、あなたも凄い食べっぷりね」
肉と魚介を次々に追加して焼きつつアヴェラが問うと、
「こういう機会でもないとこんな良いもの食べられないんですよ」
薬の材料費で金欠なため、普段はあんまり良いもの食べてないらしい。
「んんー、お肉とかもいいけれどやっぱり魚介、魚介おいひい……」
獲って来てくれた人、焼いてくれる人、すべてにシェオルは感謝を捧げた。美味しい。
その傍ら、
「どれも美味しいーっ! この潮風も調味料だね!」
「ふふ、自然の下で和気藹々と頂くご飯は美味しいですわね」
エルシーとネーヴェが持参した樽ジョッキに口をつけエールをゴクゴクと飲みつつ、肉や魚介、各種の料理をつまんでいる。
さらに、
「皆、良い食べっぷりなのだ。これも食べると良いのだ」
ストレガが肉、海老、蟹、蛸、そしてチーズと野菜をパンの上に乗せて焼き上げたピザを運んできて一同へと提供した。
ピザの一片が瞬く間にシルクの口の中に吸い込まれ、消滅してゆく。
「……今日ここに豊穣の奇跡を見ました」
艶やかな黒ビキニ姿の女聖職者は、敬虔な表情と仕草で祈りを捧げて見せた。
「あ! みてみて! 夕日がキレイ……!」
サフィラが酒杯片手に彼方を指差す。
地平の彼方では燃える夕陽が沈み、海と空の色を複雑なグラデーションと共に変えてゆく。
「あぁ、確かにこりゃあ値千金の景色だなぁ!」
ハヤトが酒と料理に上機嫌で笑い、酔いが回ってきたサフィラはハヤトの肩に頭部を預けた。
「ねぇ……あたし、ハヤトの事好きになって幸せだよ……」
ハヤトはサフィラの頭を撫で、
「俺もだ」
と返し、エルフ娘は瞳を細めてへへと微笑した。
バーベキューは賑やかに過ぎてゆき、
「もう星が見えますわ……最高の贅沢とは、このようなことを言うのかもしれませんね」
ネーヴェの言葉に見上げれば360度のパノラマ。
空に星の海があった。
「うん、大好きな人の笑顔も引出してくれる……心も満たされる場だね」
エルシーは頷き微笑んだのだった。
後日、
「――こんなものかしら」
アヴェラは書き上げたレポートを読み返す。
(全力で遊ぶ、というのも楽しいものね)
偶には、こういう息抜きもいいものだ。
「今度はプライベートで来ようかしら」
窓の外では南国の星座が煌めいている。
茜色のビキニに眩しい白肌を包んだ少女が片手で額に庇を作り赤瞳にエメラルドブルーの海を映して歓声を上げた。
緩やかなウェーブを描く長い黒髪に、赤い狐耳と尻尾を備えた半獣少女エルシー・サリバンだ。
「ふふ、絶好のバカンス日和ですわね。太陽の陽射しが眩しいですわ」
雪のように白い髪を長く伸ばしたエルフ娘が銀色の瞳を細め柔らかく微笑んだ。
起伏豊かな瑞々しい白肌を、白青のビキニに包んでいるネーヴェ・グラヌローザである。
「ネネー! 行こう!」
狐少女はネーヴェを振り返り弾んだ調子で誘う。
「ええ、参りましょうか、エル」
親友からの誘いにエルフ娘はにこにこと笑って、二人は白砂の上を駆けてゆく。
寄せては退くキラキラとした透明な波の中へと白い素足で踏み入ると「つめたーい!」と歓声をあげた。
他方、
「なんて! 素敵な! お仕事!」
「楽しむ! ことが! 人助けに! なると聞いて!!」
胡散臭く見られがちな緑髪のエルフ少年シェオルがフフフと笑い、人懐っこい金髪の聖職者シルク・メイプルリーフが笑顔で片手を振り上げ歓声をあげている。
シェオル曰く、遊んで食べてお金がもらえる……ふふふふ、楽しむぞぉ! との事である。
「せっかくの機会だからわたしも遊びましょうか」
身長125cm、可愛らしい白フリルの下に黒ビキニの水着を着込んでいる銀髪のハーフリング娘が言った。アヴェラ・ウッチェロである。
これまでオフに遊んだりした経験が薄く『遊ぶ』こと事態に不慣れだが、仕事の一環であるなら抵抗も少ない。
「美味しい仕事なのだ。別の意味でも本当に美味しい仕事にしたいのだ」
と銛を片手に言うのは、紺色の競泳用ワンピースに肢体を包んでいる長い銀髪のゴブリナ、ストレガ・L・リベルガストラである。
「銛漁するの?」
遊ぶと決めたは良いが、さてどうしたものかしらと思案しているアヴェラが他のメンバーの予定について尋ねてみると、
「うむ。夕方にはラウリが島の人達とバーベキュー始めるそうだから、そこに追加出来るよう獲って来るのだ。趣味と実益を兼ねるのだ」
探究者という名の自由人はそのように頷いた。
「私はまずは普通に思いっきり泳いでみるつもりです! その後はメデイラン・フラッグに参加してみます!」
艶やかな黒ビキニにB102W62H92な白い肢体を包んでいるブロンドの女聖職者はそのようにのたまわれた。
泳ぐのはまだしも、その姿で思いっきり走るのは海辺の青少年の感性を爆破しそうだな、と思われる所である。
「フラッグ……わたしも参加してみようかしら」
「あ、良いですね! 一勝負といきましょう!」
そんな事を約束し合いつつ、
「僕は波乗りっていうのをやってみようかなー。メデイラン・バレーっていうのも興味があるね」
「波乗り……そんなのあるのね」
「アヴェラ君も一緒にやってみる? フフ、波に攫われてしまうかもしれないけど」
興味がありそうに見えたのでシェオルは離岸流とかには注意ねとの心持ちから言いつつ誘ってみる。
他人からはやたらと胡散臭く見えるエルフ薬師からの誘いに対しアヴェラは、
「……そうね、やってみようかしら」
と、少し思案した様子の後に頷いた。
妖しいのは外側だけと見抜いたか、あるいは、危険があっても自分なら大丈夫と判断したのかもしれない。
かくてストレガは銛漁に、シルクは泳ぎに、シェオルとアヴェラの二人はボードをしに海へと向かったのだった。
他方、
「すっごい海綺麗ーっ!」
サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは透き通る様な蒼碧の瞳にエメラルドブルーの海を映して弾けるような笑顔を浮かべていた。
健康的に豊かな褐色の肌を白いビキニで包んでいる金髪のエルフ娘だ。
「いや~、バカンスと言やぁやっぱ海が最高だよな!」
赤褐色の精悍な腕を組み、うんうんと頷いているのはハヤト=ガラン=ヴォルファングだ。
銀色の髪と金色の瞳を持つ銀狼の妖鬼は、鍛えられた体躯にサーフパンツを穿いていた。
「ねね、ラウリが言ってた道具の貸し出し場所ってあれじゃない? いってみよ!」
サフィラはハヤトの片手を掴み引っ張って、白浜の一角を目指し小走りに駆け出す。
「っとと、そう慌てるなよサフィラ、海は逃げねぇ――」
制止しかけたハヤトだったが、
「――いや、やっぱり急ごう。時間は有限だからな!」
彼女の方を見やると言いかけていた言葉を翻した。
駆ける褐色肌娘の躍動により、薄く白い布地が大きく揺れ弾んでいたからである。
(ムフフフ、やっぱこれだから海でのバカンスはやめらんねぇよなー!)
などと鼻の下を伸ばしてサフィラの水着姿に見とれつつハヤトはボード貸し出し場へと駆けてゆく。
一方、良く女の子に間違われる美少年ララベル・サン・ディーベルは、セーラー服風の水着を手に案内された更衣室へと向かっていた。
(海の色すっごく綺麗だったな! 早くアリエッタと入りたい!)
どうやって恋人と一緒に遊ぼうかと想いを馳せつつ、いそいそと扉を開くと、ほっそりとした白く眩しい背中が見えた。
(……あれ?)
着替えの途中らしき半裸の少女が振り向きララベルを見やり、その緑瞳を真ん丸に見開いた。
ピンク色の髪の猫の半獣少女――アリエッタは脱ぎかけの服を素早く掻き抱くと、恥ずかしそうにララベルを睨んで、
「……あの、ここ、女子更衣室……」
「えっ、と…………ご、ごめんッ!!」
ララベルは顔を真っ赤にして慌てて更衣室から出て扉を閉めた。
入口には確かに『女子用』と書かれていた。
案内した人間がララベルの性別を間違えてしまったようだった。
●
「この子がマスコット? 島の観光大使……だよねっ!?」
「着眼点は良いのですが、細部の雑さが気になりますね……」
浜で『シャーマニズムの塊』のアピール活動をしているラウリと遭遇したエルシーは、その威容の前にネーヴェと共にマスコット改造作戦を決意した。
「2.5頭身くらいにしない?」
全体のバランスって大事、と思いつつネーヴェと相談する。
「海の青と南の花を思わす色柄のワンピが良いと思うよ、民族衣装の鮮やかさのアピールにもなるし。髪はサイドテールで大きな花をつけるとイイかも」
と素案を浜の砂の上に描いてゆく、
「なるほどエル、とても可愛いですわ。あとはマスコットは目と口のバランスが大事ですから、そのあたりも丁寧にしましょう。細部にこそ魂が宿るのですよ」
「おー、なるほど、流石ネネ!」
という訳で二人は急遽材料と道具を集め島の片隅で手芸――工作? を始めた。
ネーヴェはメイク感覚で細微の微調整を行う。
睫毛は長く、ほんのりチークを乗せ、全体バランスを見ながら愛らしい顔立ちへと変えてゆく。
「自信を持ってポーズッ!」
仕上げに手足の部分を動かして明るいポーズを取らせると、浜のラウリへと渡した。
出来は良かったが、必ずしも良いものが採用されるとは限らないのが世の中。
この新生めでぃちゃんデザインが採用となるかどうかは神のみぞが知るのだった。
●
シルクは海に入る前に砂浜にてしっかりと準備体操を行っていた。
軽い跳躍から屈伸や伸脚、前屈や後屈を行う。今日の柔軟性や体調に問題は無いようだ。
「いざー!」
艶やかな黒ビキニ姿の金髪少女が海へと入ってゆく。
透き通ったエメラルドブルーの海は徐々にその深さを増してゆき、南国の熱い陽射しに焼かれていた身の足首から脛、膝、腿へとひんやりとした感触が包み込んでゆく。なかなか気持ちが良かった。
やがて腹程度まで海水が達するとシルクは身を前に投げ出し、水泳に入った。
すらりと伸びた脚を動かし、身をくねらせ、手を水を切るように動かし、煌めく海の景色を眺めつつのんびりと泳いでゆく。
102cmにかかる多大な水の抵抗も授恵者の馬力でなんのそのである。
宣伝は一般人向けだろうから、シルクは今日は遊びに関しては授恵者としてのスキルは一切使わないつもりだったが、身体能力の高さは発揮されるものだった。
一方、競泳用の水着に肢体を包んでいるストレガは、銀色の髪を靡かせ銛を片手に海中へと潜った。
海面より太陽の陽射しが差し込み、ユラユラと揺れる光の帯を作り、色鮮やかな魚達が泳ぎ回っている。
光のカーテンをくぐりさらに深く深く潜ってゆく。
やがて海底へと達したストレガは、エーテルを操ると健康的な片足を伸ばし、つま先より眩く蒼い光を発した。
腕を振るって水を掻き、左右の脚を動かし浮上してゆく。
すると光と匂いに惹かれ海洋生物達が集まってきた。
狙いたいのは主に海老、蟹、蛸だった。
魚達に混じってかなりの大きさの海老がストレガの足先を目がけ浮上して来ているのが見えたので、ゴブリナ娘は足を振るって海老を誘き寄せつつ銛を構え素早く突き出した。
鈍い手応えと共に鋭い刃先が硬い殻を割って海老を貫いた。
ストレガは腰に備えていた網籠を開くと銛から海老を外して入れ、閉める。
集まっていた海洋生物達は危険を感じたのか散ってしまっていたので、一旦海面へと出て息継ぎをした。
それから再び潜ると同じようにして蟹や蛸も獲ってゆくのだった。
●
「へー、これで波を越えていく……難しそうだけれど、初心者でもいけるかな?」
ボードが沢山立てかけられている浜の貸し出し場にて、係員から説明を受けたサーフパンツ姿のシェオルはうちの一枚を手に小首を傾げた。
「とりあえずやってみましょう」
白フリルと黒ビキニ姿のアヴェラが同じくボードの一枚を選んで言う。
それでは試しに、とシェオルとアヴェラは共に海に入った。
係員から教えられた通り、ボードの重心位置にヘソの位置が来るように腹這いに乗り、左右の手を海水を掻き分けるように動かしてゆく。
「おー、前に進んだー」
「なるほど、ボードが傾くと抵抗がかかるから、海面に対しての水平が大切なのね」
シェオルとアヴェラは授恵者のパワーでスイスイと海面を滑るように進んでゆく。
ある程度沖へ出た所で岸の方向へと向きを変えて待つ。
起こった波が迫り来るのを見ると海水を強く掻き、波と同じ速度まで加速する。
両手をボードの左右端につけ、腕を伸ばして上半身を起こし、すかさず身を横に捻りながら両脚を前に出すように胸元に引きつけ立ち上がる。
が、
「おおー?」
「きゃっ!」
二人ともにボード上でのバランスを保つ事ができず、転倒して海に落ち波に呑まれてしまう。
「いやー、やっぱり難しいねー」
海面から顔を出し濡れた髪を掻き上げながらあっはっはとシェオルが笑う。
「もう一回よ」
アヴェラがすかさず言って再びボードの上に腹這いになり漕ぎだしてゆく。
ばしゃん、ばしゃん、ざぶーんと何度もボード上から海へと転倒落下する二人だったが、そのうちにアヴェラはコツを掴み始め、ついに波に乗るボード上で立つ事が出来るようになった。
「あら、結構気持ちいいわね」
隆起する波により下から持ちあがって来るボードに対し、斜め半身に両足を踏ん張って立ち、身を捻るようにしてボードの向きを操作、ボードの先をぐるんぐるんと左右に振りつつ鮮やかに波の上を滑ってゆく。
「……これ、いいわね」
一波乗り終えて『遊び』としての楽しさを感じたのか、アヴェラはぽつりと呟いた。
「……この板に掴まりながらぷかぷか漂うの、結構気持ちいいねー」
一方、シェオルは立ち上がる事を諦めたのかボード上で腹這いの状態のまま漂い始めた。
曰く、何事も無理はしないのが楽しむ秘訣、だとかなんとか。
「駄目よそんなの」
背丈はちっちゃいが世話焼き系なメイド娘が波乗りの魅力を伝播すべくエルフ少年へとコツを教え始める。
「シェオルさん立ち上がる時に手を置く位置と足を引き付けて置く位置が悪いのよ。バランス取ればいけるわ」
「うぇー?」
そんな訳でアヴェラの監督を受けたシェオルもまた数度のチャレンジの末に、
「おー」
波に乗るボード上で立ちあがる事を成功させ、鮮やかに滑ってゆく事が出来るようになったのだった。
●
「おお~! これで波に乗れるの?」
貸し出し場にてサフィラは魔獣の皮と板から作られたというボードを、その透き通る様な蒼碧の瞳で興味津々で見つめていた。
係員から波乗りのやり方の説明を受けると、
「さっそく乗ってみようよ!」
とハヤトと一緒にそれぞれボードを借り海へと入ってゆく。
ボードの上に腹這いになった白いビキニ姿の娘は、波が迫り来ると海中へと手を入れエーテルを解放、水流操作にて加速した。
波に重なった所で両腕を伸ばし、身を捻りつつ足を胸元に引きつけ立ち上がる。
「にゃ! すごい! すごい! 本当に波に乗ってる!」
卓抜したバランス感覚で即座に手足の置き所を掴み、隆起する波の上で身を巧みに捻ってボードの向きを操作し、スイスイと波の上を滑ってゆく。
「よし、こいやっ!!」
ハヤトの方もパドリングして加速し波と重なると、持ち前の運動神経とバランス感覚で見事に立ち上がり、隆起する波の上を滑ってゆく。
「お、こりゃ良いな!」
「でしょ~!」
一度、勘所を掴めば後は早い。
「掴むぜビッグウェーブ!!」
度胸一発、大波に挑み、高々と隆起した波の上よりさらにボードごと跳躍、宙で豪快に一回転すると再び波の上に降り立ち、バランスを崩し転倒しそうになるも素早く身を捻り立て直しスイスイと滑ってゆく。
「にゃ~! さっすがハヤトー!!」
サフィラが歓声をあげると、
「ありがとよ!」
銀髪青年はボード上で親指を立て笑顔を向けた。
「サフィラもデカイ波狙ってみるか? サフィラならいけるって!」
とハヤトから勧められサフィラも大きな波に挑戦する事にする。
「よ、よーし! ビッグウェーブを乗りこなすぞ!」
少し恐れを抱きつつも気合を入れて褐色肌の娘が大波に挑む。
「……来た!」
波を待つ事しばし、これまでで一番大きな波が来た所でサフィラは水中に入れた手よりエーテルを解放しボードを加速させた。
パドリングしつつ後方から迫る大波に速度を合わせ、うねるように巨大に盛り上がってゆく水の頂きにてテイクオフ。
「にゃにゃにゃ~!」
聳え立つ塔のような波の上を白ビキニ姿のエルフ娘が身を捻りボードを巧みに操りながら滑ってゆく。
「やるなぁ!」
ハヤトが口笛を鳴らし、やがて大波を乗り終えたサフィラは、
「ああ、すんごい気持ちよかった!」
と笑顔を見せた。
その後二人は一枚のボードに二人で乗る事に挑戦したりもしたのだった。
●
ハプニングはあったものの水着に着替え終えたピンク髪の半獣少女は、恋人の前でくるりと回った。
「ね、ね、どうかな?」
セーラー服風の水着姿の猫少女は緑色の瞳を柔らかく細めて微笑む。
男の子とおそろいの水着だけど、このデザインならありかな? と思うアリエッタである。
「良く似合ってる、凄く可愛いよ」
ララベルはアリエッタの水着姿にドキドキと胸を高鳴らせつつ微笑み、少女の手を取る。
「行こう?」
「……うん」
アリエッタは少年に手を握られドキッとしつつも頷き、共に白い砂浜へと向かって歩き出す。
(手を握られたくらいでこんなになって大丈夫かな、私)
軽く赤面しつつ少女は胸中で呟く。
向かう彼方にはエメラルドブルーに煌めく大海原が広がっている。
「海も砂浜も凄く綺麗だよ……僕の故郷の港の海とは全然違うや」
ララベルはアリエッタの肩に手を伸ばし抱き寄せ海の方を眺めつつ言う。
「そっ、そうなの?」
アリエッタはさらに顔を赤くしつつも身を寄せる。
「うん。でも一番綺麗なのはアリエッタだけどね」
そんな事を語り合いながら貸しボード場へとやってきた二人は係員から波乗りの説明を受けつつボードをそれぞれ選んだ。
「折角だし、どっちが大きな波に乗れるか競争しようよ」
ララベルの誘いに、ようやく動悸も収まってきたアリエッタは不敵な笑みを浮かべると、
「ふふーん、いいよ! 負けないからね!」
と受けて立った。
ボード上にうつ伏せに乗り手頃な位置へと泳ぎ出たララベルは、狙った大波が迫り来ると鮮やかにテイクオフする。
ボード上に立ち少年は、身を巧みに捌きつつ煌めく波の上を華麗に滑ってゆく。
(わ、すごい! いきなり?! 経験者って訳じゃないよね?)
アリエッタが目を見開き驚愕する。
種を明かすとララベルは持ち前のバランス感覚だけでなく、シーフスキルのアクロバティックアーツと真・壁歩きも駆使していたからこそ出来た芸当だった。
(えーっと、どっちが大きな波に乗れるか、だからララベルが乗ったさっきの大波より大きいのに乗らないとあたし勝てないの? いきなりで?!)
追い込まれたアリエッタである。
「降参する?」
「しないよ! 勝つよあたしは!」
向こう見ずにも元気良く言い返しつつ猫耳少女はボードにうつ伏せに乗り、両手を使って海水を掻き分け沖へと出てゆく。
実際、極めて優れた超人的なバランス感覚を誇るアリエッタである。勝算が無い訳ではなかった。
巨大な波が起こるのを待つ事しばし、
(――来たっ!)
やがてうねりながら塔のように隆起する、巨大な波がやってきた。
係員から教わった通りにパドリングしてボードを加速させ、波と重なると両手をボード上につき身を捻りながら両脚を前に引き寄せ中腰になる。
巨大な波の頂きにて立ち上が――ろうとしたが、バランスが崩れ
(なんのーっ!)
超人的なバランス感覚は伊達じゃない。
さらに波が良い具合に微妙に変化した幸運も味方した。
猫耳少女は咄嗟に転倒を回避し態勢を立て直す。
そして隆起する超巨大な波の上をボードに乗り滑ってゆく。
「あ、あははははーっ!」
一杯一杯だったがアリエッタは恐ろしく高い位置で笑っていた。笑う以外に無かった。
「え、ええーっ、それバランス感覚一本で成功するっ?!」
驚愕のあまりララベルもまた「凄いなアリエッタ!」と笑い出したのだった。
●
澄み渡った青い空の下、太陽が眩く輝き、白い砂を焼いている。
魔獣の皮を加工したボールが放物線を描いてゆき、長方形に区切られた白砂のコート端、ギリギリの所に落ちかかった。
そこへ、茜色の水着姿の狐耳少女が前傾姿勢で砂を蹴り、地を這うように低く水平に跳躍した。
獲物を狙う獣のような俊敏さで、滑り込むように跳んだエルシーは、ボールが砂上に落ちる寸前、宙で身を捻りざま腕をすくい上げるように鋭く振るった。
「お願い!」
勢いよく打ち上げられボールが天高く舞い上がり、エルシーは砂の上をごろんごろんと二回転し起き上がる。
身を素早く翻し、ネットの方へと再び駆けてゆく。
その際に赤い瞳がコート内の相棒――ネーヴェを見た。
「ええ、――参りますっ!」
銀色の瞳でそれを一瞬見つめ返した長い白髪のエルフ娘は、高々と上がったボールの落下点へとトスを上げる構えで入る。
メデイラン・バレーは三回以内に相手コートに返せば良いルールだから、ここでトスを上げ、次にアタックするのが常道である。
エルシーがアタック準備の為に助走を取れる位置で構え――ネーヴェは白青のビキニに包んでいる瑞々しい身を躍動させ、その場で大きく跳躍しながら身を反らせ、振りかぶった右腕を、風切る唸りを巻き起こしながら振り下ろした。
クイックアタックである。
「なぁんとぉーっ?!」
対戦相手の男がクイックに引っかかって対応が遅れ、落雷の如くに飛んだボールが砂上へと鋭く突き刺さる。
「私達の息ぴったりのプレイを見せて差し上げますわ」
と試合前に語っていた娘達は笑顔でハイタッチする。
その様を見た対戦相手は、
「ガチ勢だ……」
「メデイラン・バレーガチ勢だ……」
と大いに慄いた。
どうやら可憐な見た目からもっとゆるーい試合運びになると思っていたらしい。
エルシー・ネーヴェペアは当然の如くに試合に勝利すると、互いの健闘を称え、身についた砂を払い合ったのだった。
●
「あれっ、マリーナ君だ」
シェオルは海だけでなく砂浜も堪能しなきゃ、と考えていた所、以前コッコ島への交易船の仕事で同道した金髪碧眼のエルフ娘の姿を認め声をかけた。
「奇遇だねー。こっちにも交易で来たのかな?」
「あら、シェオルさん! はい、そうです砂糖の買い付けで」
今日は休日らしくビキニに身を包んでいたが一応仕事らしい。
「シェオルさんは?」
「僕はねー――」
と互いに近状を話しつつ、せっかくだし良かったら一緒にバレーどうかな? と誘った所、
「私でよければ、是非っ」
と快諾され共にペアを組んで試合に参加する事となった。
「これを打っていけばいいんだね……おお、不思議な感触ー」
魔獣の皮製らしきボールを軽く打ってゆる~くサーブする。
対戦相手の男女ペアもエンジョイ勢らしくゆるーくボールを返してくる。
「シェオルさん、はいっ!」
「おーけー」
マリーナがトスを上げてきたのでジャンプして軽く打つ。
そんな調子で試合はキャッキャウフフとのんびりと進んでいったのだった。
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「アリエッタ、僕達のコンビネーション見せてやろ」
「わかったわ!」
とララベル・アリエッタペアもバレーに参加した。
互いにカバーし合いつつ息の合ったプレイを見せ勝利を重ねていたが、夢中になるあまりに激突し、密着して接触してしまうハプニングなども起こっていたのだった。
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ストレガは漁果も結構なものになったので、早めに切り上げバーベキューの仕込みを手伝う事とした。
「まぁこんなに沢山、有難うございます」
「調理の腕には自信があるのだ」
漁果の詰まった籠をラウリに渡しつつゴブリナ娘は、さしあたりサラダ等の一品料理の作成を開始した。
その次に醤油と香草を用いて肉に揉み込んでゆく。
砂糖を少量、肉にまぶすと柔らかくしたり臭みを消せると聞いたので実践する事にする。
大陸では砂糖は貴重な資源だが、砂糖が特産のこの島ではバーベキュー用に普通に持ち込まれていた。
大陸人の観点からするととっても贅沢である。
(サトウキビ栽培がもっと盛んになって、市場に多く出回るようになれば、菓子作りも料理も幅が広がるのだ)
ストレガは思う。
しかし、適した地と担い手がなかなか見つからないのが現状、というところなのだろうか?
(メデイラ産というブランドもあるだろうし……難しいものなのだ)
この島にギルド支部が置けるようになれば物流はさらに盛んになるだろうし、常駐の授恵者の働き口にもなる。
連絡がいけばビッグオウムで飛んで来ることも出来るようになるだろう。
肉の仕込みをしつつ諸々を考えたストレガは、帰ったら本部に噂話を流す事に決めた。
「――そういえばサトウキビジュースってどうやってつくるのだ?」
あれこれ考える中、ふと気になって問いかけると、ラウリ答えて曰く、
「あぁそれは、まずサトウキビを良く洗ったら、絞ります。それから――絞ります。また絞って、絞って、絞ります」
「……サトウキビをひたすらに絞るだけなのだ?」
「ですです」
と笑顔で頷いてくれたのだった。
●
「にゃ! 無人島以来だねっ! 今日は二人に負けないよー!」
フラッグ会場へやってきたサフィラは、いつぞやの坊ちゃまとメイドの主従コンビを発見し声をかけた。
すると、
「おお、奇遇だな! これは自慢じゃないのだが僕は弱いぞ! くそう、負けてしまう!!」
「ふふふ、お手柔らかにお願いいたしますね」
トランクスと競泳水着姿の二人はそんな言葉を返して来る。
やがて開始のアナウンスが響き、大勢の参加者達がぞろぞろと所定の位置についてゆく。
(授恵者なら、最高速度は皆同じくらいでしょうし……反射と身体操術がカギになりそうね)
アヴェラは胸中で呟き勝ちにいく為の戦術を練る。
「面白れぇ、全力で優勝を狙いにいくぜ!」
とハヤトもまた意気込んでいる。
やがて一般島民や観光客に混じって授恵者達が砂上にうつ伏せになると、スタートの合図が鳴り響いた。
走者一斉に起き上がり、身を翻すと彼方の砂上に立てられた旗を目指し全速で駆けてゆく。
抜きんでたのはやはり授恵者達、その中でも特に速かったのはシルク、サフィラ、ハヤト、アヴェラの四名だ。
各員、眩い太陽の下、砂の上を水着姿で全身を躍動させ矢の如くに駆けてゆく。
アヴェラの予想通りこれは全員速い!
足裏の砂を掴んでサフィラが低い姿勢で駆け、最短コースでハヤト、アヴェラが駆けてゆく。
グングンと旗が迫り、射程に納めた所でサフィラが手を伸ばし鋭く跳躍した。
ハヤト、アヴェラも迫っていたが、サフィラの低いジャンプが一瞬速かった。
褐色肌のエルフ娘の手が紙一重速く旗を搔っ攫い、スライディングすると胸が痛いので若干高めに他の走者を飛び越す感じに跳んでいたシルクがそのサフィラの上に降ってきた。
102cmの重深に柔らかく押し潰されサフィラがぐぇっと息を洩らす。
「決まりましたーっ! 伝統あるメデイラン・フラッグ第1006回大会優勝者はサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブ選手ですっ!」
かくて優勝者サフィラと健闘した三名、そして他のすべての参加者達に観客達から盛大な拍手が送られたのだった。
●
その後、シルクは複数のボードを組み合わせ海上に浮かべ、不安定なボード上で希望者達と押し相撲を行った。
なお挑戦希望者は圧倒的男子率だったらしい。
他方、
「泳いでいる間、銛はこう構えまして……一思いにこう、ざしゅっと」
水着姿で銛を構えたエルフ娘がしゅっしゅっと身振りで突き方を教導している。
「ざしゅ! だねっ」
教えを受けた赤狐娘はコクコクと頷いた。
銛漁ベテランのネーヴェは勿論、天才型の教導だったがきちんと伝わっていたのかエルシーも海中に入ると次々に魚を貫いてゆき、魚籠はすぐに一杯となったのだった。
●
陽が、落ちてゆく。
五指を絡めて手を繋ぎ夕陽を眺めていたララベルとアリエッタは、黄昏の光の中、そっと口付けをかわしていた。
少女は頬を赤らめながら微笑んだ。
「大好きよ、ララベル」
●
陽が暮れた。
陽暮れ前にストレガが熾していた火を用いて、白浜でバーベキューが始まった。
炭の配置で高温と低温の場所を分け、高温のゾーンで調理し、低温のゾーンに置いていく具合だ。
「かんぱーい! 今日は一日楽しかったね!」
「マジ楽しかったな! くはぁ~こいつは最っ高に美味ぇぜ!!」
サフィラとハヤトが並々とエールが注がれた杯を掲げ、ゴクゴクと一気に飲みつつ歓声をあげた。
二人の他にもそこかしこで乾杯の声があがっている。
「最高の焼き加減を見極めて差し上げましょう」
ノースキルという縛りを亡き者にしたシルクが焼肉番長になっていた。バーベキューガチ勢である。
曰く、
「美味しいものに手を抜くとか神への冒涜ですよ」
との事。
そして、
「焼くの、手伝うわ」
極めて優れた調理技術を持つメイド娘アヴェラがそれを補佐した。
シルクは笑顔でアヴェラと共に持ちうる最高効率で網に肉と魚介を並べ焼いてゆき、パクパクもりもりむしゃむしゃと食べてゆく。
調理の超人ストレガが砂糖を贅沢に使って醤油ベースで下味をつけ、最高の焼き加減で焼かれた肉は口の中でとろけると同時に濃厚な旨味を広がらせている。
「さぁさぁみなさんもドンドン食べてください今日は我々が優勝です」
「ごちそうになりますいただきまーす!! んまーいっ!!」
シェオルもまた凄い勢いで肉や魚介を食べていた。
「シルクさんもだけど、あなたも凄い食べっぷりね」
肉と魚介を次々に追加して焼きつつアヴェラが問うと、
「こういう機会でもないとこんな良いもの食べられないんですよ」
薬の材料費で金欠なため、普段はあんまり良いもの食べてないらしい。
「んんー、お肉とかもいいけれどやっぱり魚介、魚介おいひい……」
獲って来てくれた人、焼いてくれる人、すべてにシェオルは感謝を捧げた。美味しい。
その傍ら、
「どれも美味しいーっ! この潮風も調味料だね!」
「ふふ、自然の下で和気藹々と頂くご飯は美味しいですわね」
エルシーとネーヴェが持参した樽ジョッキに口をつけエールをゴクゴクと飲みつつ、肉や魚介、各種の料理をつまんでいる。
さらに、
「皆、良い食べっぷりなのだ。これも食べると良いのだ」
ストレガが肉、海老、蟹、蛸、そしてチーズと野菜をパンの上に乗せて焼き上げたピザを運んできて一同へと提供した。
ピザの一片が瞬く間にシルクの口の中に吸い込まれ、消滅してゆく。
「……今日ここに豊穣の奇跡を見ました」
艶やかな黒ビキニ姿の女聖職者は、敬虔な表情と仕草で祈りを捧げて見せた。
「あ! みてみて! 夕日がキレイ……!」
サフィラが酒杯片手に彼方を指差す。
地平の彼方では燃える夕陽が沈み、海と空の色を複雑なグラデーションと共に変えてゆく。
「あぁ、確かにこりゃあ値千金の景色だなぁ!」
ハヤトが酒と料理に上機嫌で笑い、酔いが回ってきたサフィラはハヤトの肩に頭部を預けた。
「ねぇ……あたし、ハヤトの事好きになって幸せだよ……」
ハヤトはサフィラの頭を撫で、
「俺もだ」
と返し、エルフ娘は瞳を細めてへへと微笑した。
バーベキューは賑やかに過ぎてゆき、
「もう星が見えますわ……最高の贅沢とは、このようなことを言うのかもしれませんね」
ネーヴェの言葉に見上げれば360度のパノラマ。
空に星の海があった。
「うん、大好きな人の笑顔も引出してくれる……心も満たされる場だね」
エルシーは頷き微笑んだのだった。
後日、
「――こんなものかしら」
アヴェラは書き上げたレポートを読み返す。
(全力で遊ぶ、というのも楽しいものね)
偶には、こういう息抜きもいいものだ。
「今度はプライベートで来ようかしら」
窓の外では南国の星座が煌めいている。
マスターコメント
この度はご参加とプレイング、誠に有難うございました。
このような結果となりました。
ご満足いただける内容になっていれば幸いです。
ショートEX普通 報酬:多い10 / 4〜10人
2021年10月20日 06時24分27秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 メインとしてはバーベキューの準備してるのだ。食うといいのだ。
エルフのシェオル。どうぞよろしくね。 レポートが必要とはいえ、遊んでお金もらえるってなんて素敵なお仕事……! まだ何するかは決め兼ねているけれど、とりあえずバーベキューはごちそうになりまーす!
ヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪バカンスだー♪ あ!サフィラだよっ!よろしくねっ! ハヤトといっしょに南の島のバカンスを楽しむよっ!
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤトだ、よろしくな! サフィラと一緒に遊び倒す予定だぜ♪ とはいえ、色々と面白そうなイベントもあるみてーだし、何か声掛けてくれりゃ参加すんぜ!
アヴェラ・ウッチェロよ。よろしくおねがいするわ メデイラン・フラッグとバーベキューに参加しようと思ってるわ。 もしフラッグに参加する人がいたら、お互い頑張りましょうね
エルシー・サリバンだよ。ネネ(ネーヴェ)と遊びに来たの。 まだ何をするかを相談中だから、挨拶だけさせてね。 みなさま、ヨロシク!
ネーヴェ・グラヌローザと申します。 今回はエルシーと一緒に遊びに参りましたの。 BBQに捕った魚を持ち込めたらと思っております。皆様どうぞ宜しくお願い致します。