【巡花】遠きあなたへ

辻村朝

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シナリオID:1478

オープニング

●あれから少し時間が経って
「ありがとうございましたーっ」
 リブラネスタのとある通りの入口に停められた馬車の前で、今しがた用を終えて去っていく『客』の背中に頭を下げる。
 そのまま数秒経ってから漸く頭を上げた女性は、馬車の荷台から下ろして路上に並べていたモノに視線を向ける。
 色とりどりの花たち。
 それは、彼女――移動花屋『Duvet(デュベット)』の現店主であるミラベル・バローにとっての『商品』であり、生活において欠かすことのできないモノだった。
「……そろそろ時間かな?」
 そう独りごちてから、彼女は陳列していた花たちを荷台に運び始める。
 彼女の商売は、ただ馬車に積んでいる花を売っていくことだけではないのだ。
 冒険者ではないものの授恵者(ヒーラー)でもある彼女の足取りは、多少重たいプランターを持ち上げても軽い。
 ミラベルは早々と花を仕舞い終えると、御者席に乗り込んだ。

 移動花屋(Duvet)のもうひとつの商売は、依頼人からのオーダーを受け、然るべき相手に花を届けることだ。
 流石にリブラネスタの街中を、馬車でずっと進み続けるわけにはいかない。
 少し前に依頼(オーダー)を受け、気に入ってもらえた人物が主を務める商会の敷地に馬車を置かせてもらい、地図を片手にリブラネスタの住宅街を往く。
 この手製の地図は、初めてリブラネスタに仕事で来た時に彼女を助けた冒険者達にプレゼントされたものだった。

「ごめんくださーい」
 地図のおかげで迷うことも殆どなく目的地に辿り着いた。
 依頼人の家である。
 先程通りで商売をしていた時に、『大切な方に花を届ける仕事も承ります』という看板を見た女性に、「後で少し相談が」と声をかけられていたのだ。

●募る思いを遮るもの
「白のガーベラ、ですか」
 カミラと名乗った女性の依頼に、ミラベルは目を細めた。
 ガーベラは花の色により花言葉が違うが、白のガーベラは『希望』や『律儀』である。
 まだ全然若いが、一方で少し老け始めているようにも見えるカミラは、「ええ」と寂しげに首を縦に振る。
「実は、私の婚約者なのですが……かれこれ5年ほど、仕事で遠く離れた街にいるのです」
 便りは定期的にあるし、会いたいと何度も言ってくれている。
 だから2人の関係自体に今も疑いは持っていないのだが、それでも顔を見ていない不安はある。カミラもまた、『律儀』に待っているとは言えど。
 小さく溜息を吐くカミラを見据え、ミラベルは一瞬ドキリとした。
 カミラが置かれている(遠く離れて会いたくても会えない)状況に、自分が尊敬し、帝国崩壊後行方不明になっている祖母のことを思い出したからだが、すぐに気を取り直して笑顔で肯く。
「分かりました。それで、その婚約者の方はどちらに?」
「シャルガネです」

「シャルガネ……辺境都市群かあ」
 カミラの家を出た後、馬車を停めてある商会へと戻りながらミラベルは思案する。
 リブラネスタから辺境都市群へ向かう方法は、大きく分けて2つある。
 ドワーフ王国東部から北東部、ないしはクリエスター山脈を経由する陸路と、海路だ。
 ただし、今は前者は使いにくいことを彼女は知っている。旅をする関係上、情勢の情報はある程度常に仕入れているのだ。
 ドワーフ王国北東部を通るのはあまりにタイミングが悪い(争っている戦場を通るものだ)し、迂回してクリエスター山脈の間の道を往くのも、授恵者としては未熟な自分では不安がいっぱいだ。
 どちらかというと海路の方がまだ安全なのだが……。
「船、船だよねー……うーん」
 ミラベルは困った顔で腕を組む。
 実は彼女、船がとても苦手なのだ。具体的には、すぐ船酔いする。
 日数的には海路の方がかからないだろうし、物理的危険も少ない。ただ、到着後にきちんと配達出来るかというと自分の体調が心配だった。
 となると、やはり陸路――山脈の道を選ぶしかないだろう。
「これは護衛をお願いした方がいいなあ。うん、そうしよう」
 戦闘経験のないミラベル(ヒーラー)は一つ肯いて、冒険者ギルドに向かうのだった。

解説

●依頼内容 ミラベルをシャルガネにいる依頼人の婚約者の許へ無事送り届けてください。 シャルガネに着けば後は問題なくミラベルの依頼も完了する為、道中の護衛が皆さんへの依頼となります。 ●ルート 通ることになる道の幅は、所によって広かったり狭かったりします。 山脈の間の道だけあり足場はあまりよくありません。 登山道のようなところもあれば、山をくり抜いた洞窟のようになっているところもあります。 前者の道程のほとんどに多少の傾斜があります。 敵性存在に遭遇するかは運次第ですが、相応の工夫があれば戦闘の数は少なくなります。 遭遇した場合もそれほど強い敵ではありません。登山道なら鳥系の、洞窟なら猪系の魔獣が出ます。 なお、通過するのには3日程度かかります。 野営の準備はお忘れなく。 ちなみにミラベル自身はレベル10相当の実力のヒーラーです。ただし、まともな戦闘経験はありません。 仕事で使う為取得しているマジカルポケットの他、ヒールなどの一部のスキルも使用可能です。 馬車はリブラネスタに置いていきます(依頼の品はマジカルポケットに収納します) ●遭遇が想定される魔獣 鳥: 体長2mほどの黒い体毛の魔獣。数匹で群れていることがほとんどです。 1つの獲物に集る習性があるようです。 高所から突っ込んできてはまた高所に戻ったりします。素早いですが防御面は脆いです。 猪: 体長3mほどの個体『親』1体の周りに、体長1mほどの個体『子』が1~数体群れています。 親が率先して動くかどうかは子の数次第。親子ともに攻撃手段は牙と突進。 物理防御はそれなりに頑丈です。あと、倒し方によっては食材になります。 ●依頼後 希望者がいれば、PCにとっての大切な方へと花を届ける依頼(演出)を承ります。 ・アイテムとして付与はされません ・届ける先が参加PCならリプレイ内で渡し、参加していないPCやNPCなら配達自体はリプレイ描写外です ●その他 質問はミラベルまで。依頼出発の36時間前までの質問に対し回答します。

マスターより

辻村朝です。 以前冒険者の皆様にお世話になったミラベルをNPC登録した、ということで、連作を始めます。 一度OPに書いたら思いの外長くなったので泣く泣く削ったのですが、彼女が仕事を始めた経緯については拙作『君の傍に添える花』OPをお読み頂ければ。 もちろん、読まずとも今回の依頼には関係はしませんのでご安心ください。 連作といってもきつめの戦闘とかはない……はず。 全体的にやさしい感じでやっていければと思います。皆様次第にはなりますが。

リプレイ

●出立の日
「にゃ! ミラ久しぶり!」
 ギルドにてミラベルの顔を見るなり、サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは彼女に向かって手を振りながら駆け寄った。
「今回は長旅になるけどバッチリガードするから、大船に乗った気持ちで……って顔色悪いね?」
「な、何でもないです」
 きょとんとするサフィラに、ミラベルは慌てて首を横に振った。
 冒険者ギルドに依頼をするのは、まだ慣れない。だから若干緊張していたのだが、見知った顔がいたのでちょっとホッとした。
 決して大船という言葉に変に反応したわけではない。決して。
 などとミラベルが自分に弁解していると、見知った冒険者がもう1人、こちらは穏やかな笑みを浮かべながら歩み寄ってくる。
「ミラベルさん、先日はありがとうございました。大切な人も、とても喜んでくださいました」
 コルネリウス・アーラの言葉に、ミラベルの表情も思わず綻んだ。
「こちらこそ、お二人の為になれて嬉しかったです」
「コルネさんとサフィさんはミラベルさんとお知り合いなんですね」
 と尋ねたのは、コルネリウスと共に歩み寄ってきたリサ・ベイカーである。
「ええ。以前に一度ギルドに依頼をされて」
「その時、お礼にって花を届けてもらったんだよっ!」
 2人が口々に答えると、リサは「へぇー」と声を上げ、ミラベルに向き直る。
「わたしも、何かお願いしてもいいですか?」
「はい。今回のお仕事が終わったら!」
 ミラベルは満面の笑みでそう答えたのだった。

 他の冒険者とも合流し、一行はリブラネスタを出立する。
 クリエスター山脈に向かうまでの道中は特に何事も起こらず、ミラベルと冒険者たちは自己紹介を交えつつ順調に歩を進めた。
 凡そ3日分の食料をどうしようか、という話になった時、道中で遭遇した魔獣を食材にするという冒険者たちの話を聴き、ミラベルは目を丸くする。
「魔獣って食べられるものもいるんですね」
「食べてみるとイケるのも多いのだ。何ならクリーパーにも食べられるのもいるのだ」
 ストレガ・L・リベルガストラは肯く。飽くなき探究心の一環である食の探究(調理Lv5)は伊達ではない。
「故郷にいた時から、あまり遭遇しないようにしていたので……」
「そうは言っても、今後旅を続ける上ではある程度は覚悟はしないといけないのでは?」
 クリーパーは1人では厳しいにしても、とドゥーンフォルト。ミラベルは「確かに」と肯きつつ。少し弱り顔だ。
 授恵者とはいえ、1人の人間。怯えるものは存在する。
「大丈夫ですよ」
 だからコルネリウスは、ミラベルを安心させるように言う。
「これから戦闘の経験も、一緒に少しずつ積んでいきましょう」
 私達が傍に居ますから、と付け足すと、
「しっかりと、カミラさんが花を届けたい人へ届くように、ボク達がしっかり護衛しますから!」
 ハルハン・ツァガーンナルが力強く同意を示した。
「……ありがとうございます!」
 ミラベルは一つ息を吐いてから、笑顔で礼を述べる。
 前途は色々あるだろうが、今不安になっていても仕方ないと考えたのかもしれない。冒険者たちはそれぞれにそう思った。

 いよいよ山脈に入り、まずは峡谷となっている道を進む。
 道幅は広くはなく、緩やかな上り坂が続いている。
 冒険者たちはそれぞれに周囲に警戒を強め、自然と言葉数もやや少なくなった。ミラベルも地面に足を取られないように慎重に進んでいる。
 そこへ、
「みんなっ。前方、魔獣がいるよ!」
 斥候として先行していたサフィラが全力移動で戻ってくる。
「鳥みたいだから、何とか空からこっちに引き寄せたいよねっ」
「そういうことなら……」
 サフィラの言葉に、他の冒険者達は各々を見回す。
 方針は一瞬にしてざっくりと決まった。

 数匹の黒い鳥型魔獣が峡谷の上を舞っている。肉付きがあまり良くなさそうなのは、脆そうという幸運か、食材には向かなさそうという不運か。
 閑話休題(それはさておき)、前衛にはコルネリウスとツァガーンナルが立った。
「来なさい!」
 ちょうど中空の低い位置にいた1匹に対しコルネリウスが挑発の言葉(シーザーロア)を叩きつけた。すると魔獣は1匹だけでなく、周りの個体も一斉に、様々な角度からコルネリウスに襲いかからんとする。
 リサから受けた援護(堅甲2)もあり、彼女がほぼ傷らしい傷を負わずにその襲撃をやり過ごしたところで、空に逃れなかった(移動力が不足した)個体がまとめて、ストレガが現出させた不可視の重力場(グラビティフィールド)によって動きを阻害された。
 好機。
 誰よりも先に動き、コルネリウスに執着する魔獣たちにとっての死角となる岩陰に潜んでいたサフィラが再び戦場に身を躍らせた。
 近くで重力場に捕まっていた魔獣の背を貫き、その勢いのまま髄を切り裂く。獲物に全く気付かれぬ所業。悲鳴を上げることすら叶わず魔獣は崩れ落ちる。
 他の個体も、重力場が出現した時点でこれが罠だということは察したろう。ただ、もう遅い。サフィラに貫かれた死骸がその証左だ。
 ついでに言えば、未だ重力に囚われている個体にも逃げ場は既にない。
「いきますよー!」
 ツァガーンナルがシルーン・サルヒ(ハルバード)を振り下ろすと、それにより生じた巨大な光塊が逃げられぬ魔獣をまとめて地面に叩きつけた。
 一方、再び空へと舞い上がった個体も居る。最初にコルネリウスを狙った個体は既にサフィラに倒されたこともあり、再びコルネリウスに仕掛ける様子はなさそうだ。
 峡谷とはいえ、空はまだ三次元的に動ける。コルネリウスが放った衝撃波を避けた魔獣は、彼女から見て後方に位置していた3人――リサ、ドゥーンフォルト、そしてミラベルがいる方向を目掛け滑空し始めた。
「わ、こっちに来た!」
「ご安心を。あなたには近付けさせませんので」
 勢いよく滑空してくる3匹の魔獣とミラベルの間に、ドゥーンフォルトが割って入る。カバリング自体は1回しか出来ないが、相手は集ってくるのだから1回で十分だ。
 続く魔獣の突進を、ドゥーンフォルトは宣言通りミラベルまでの道を開けることなく防ぎきった。するとすかさず魔獣のうち1匹を、ストレガが放った蒼白い光の槍が貫き、かの個体もまた移動を阻害される。
「ミラベルさん、回復(ヒール)を!」
「は、はい!」
 リサに促され、ミラベルは慌てて祭刀を振るう。放たれた癒しの光が、ドゥーンフォルトが受けた傷の周りを覆った。リサも同様にドゥーンフォルトの傷を治癒する。
 普段はちょっとした護身用にしか使わない武器。だが、これは彼女にとっての戦闘経験でもあるのだ。
 治療が終わったら、後は一方的。
 空に逃れられなかった個体はサフィラとツァガーンナル、コルネリウスの攻撃により、そうでない個体はストレガのメテオライトによって沈められたのだった。

●峡谷の夜
 それから先もまた暫く順調に歩を進めていたが、それでも夜はやってくる。

 途中からは峡谷を抜け、見晴らしのいい山道が続いたのは、野営場所を探すにあたっても都合が良かった。
 馬車での旅路なら兎も角、この類の野営の経験は少ないミラベルが首を傾げると、
「襲撃しにくい状況というのは相手に視認されていること。自分を見据えている相手を正面から襲うのはリスクが高いでしょう?」
 とドゥーンフォルトが言う。なるほど、とミラベルも得心したように肯いた。

 リサの提案で、見晴らしに加えて落石のなさそうなポイントを選んだ一行は、早速野営の準備を始める。
 コルネリウスが持参した折りたたみ式のゲルを展開し、ストレガ、ドゥーンフォルトが設営を手伝う。
 すると、ミラベルもそれに加わった。
「慣れていないでしょうし、休んでいてもいいんですよ?」
「皆さんが動いているのに、1人だけ休んでいるのも落ち着かなくて」
 えへへ、と照れ臭そうに笑うミラベル。
 戦闘を経ても元気が失われていない様子なのは、きっと戦闘終了直後にツァガーンナルが差し出したチョコレートバーで心の疲れが取れたおかげだろう。

 さて、そのツァガーンナルはリサの調理を手伝っていたのだが、事前にミラベルに尋ねていたことがあった。
「料理に使える花とか、食べられる植物ってあるんでしょうか?」
「エディブルフラワーですね。今の時期だと、スイートアリッサムやナスタチウム、ベゴニアあたりかな……? この辺りだとベゴニアは見つかるかも」
 などと言われたので探していたら、少量ではあるが本当に見つかった。サラダに使うことにする。
 食材が限られているから作れるものも限られるが、リサはその中で、温かなスープと炒めものも作ろうとしていた。
 するとそこに、焚火の準備を終えたサフィラがやってくる。
「ちょっと味見!」
「あっ」
 リサが味付けし炒めたばかりの肉をひとつまみ。
「ふむふむ……これは美味しくなりそう!」
 親指を立てて称賛するサフィラに、リサは苦笑せざるを得なかった。

 一連の準備が整い、焚火を囲んで夕食。
「会いたくても、なかなか会えないのは辛いですよね」
「そうですね。不安も募ると思います」
 ミラベルの依頼(オーダー)の依頼人の話を改めて聞き、ツァガーンナルとコルネリウスがそんな思いを口にする。
(会いたくても、会えない人……」
 ミラベルが不意に、どこか遠くを見た目でその言葉を反芻する。
「? どうかしたのだ?」
「あ、えっと、ちょっと色々思うところがあって……」
 ストレガが尋ねると、我に返ったミラベルは言いながら首を横に振った。

 ――生きているかどうかも分からない人に会いたいと願うのは、我儘なのだろうか。
 祖母のことを思い、そんなことを一瞬考えてしまったとは言えなかった。

 夜の深い時間帯は、冒険者達が交代で周囲の警戒と火の番を行い、残りの者は英気を養う。
 朝にはリサが持ってきた食材で朝食とお昼用の弁当を作った後、一行は進行を再開した。

●2日目
 2日目は打って変わって、一行はほぼ1日を通し、山をくり抜いた洞窟の中を進むことになった。
 十分に注意しながら進んではいたが、やはり1度だけ魔獣に遭遇した。近くに分岐のない進行方向にいたのでは逃れようがない。
 子を4匹連れた、猪の魔獣。
 子のうち1匹が全速で突進し、前衛に立っていたコルネリウスがこれを盾を構えて防ぐ。そのタイミングで、同じく前に立つツァガーンナルが不可視のエーテル(殺界)を展開し、後方にいる仲間たちの方へと通過できないようにした。
 親は子が逃れる手段を失ったと気付いたらしく、自らも他の子を連れて突進する。
 コルネリウスとツァガーンナルがこの突進に耐えきったところで、ストレガは重力場で退路を実質的に奪い、すかさず生み出した無数の光弾(メテオライト)が次々と猪を襲った。
 こうなると後はまた一方的だ。リサとミラベルがコルネリウスやツァガーンナルの治療に回る一方、殺界のお陰で後衛を心配する必要がなくなった為にドゥーンフォルトも一時的に前に出て攻撃に加わる。
 一連の攻勢の最後に繰り出された殺界の一撃(近接物理攻撃)で、全ての魔獣が地に伏した。

 昨日倒した鳥型魔獣とは違い、今度の魔獣は肉付きが非常にいい。
 そうなると、今回の旅路でやるべきことは一つ。
「解体するのだ!」
「オッケー!」
 ストレガとサフィラが意気揚々と作業を開始する。
 血抜きし、皮を剥ぐ。内臓は捨て、骨は煮込む(出汁に使う)ので取っておく。
 そして肉は余さず、細かく切り分けてサフィラが用意した水袋へ入れ、サフィラはそれをマジカルポケットに収納した。

 その日の夜の食事が、1日目に比べると豪勢だったのは言うまでもない。
「私も慣れると、ああいうことが出来たりするんでしょうか……」
「いえ……どうでしょうね。性格的に作業への向き不向きもあるでしょうから」
 血抜き作業のことを思い、昨日とは別の理由で遠い目になったミラベルに、コルネリウスは無理はよくないです、と首を横に振るのだった。

●シャルガネにて
 そして3日目。
 歩む道は再び山道や峡谷となったが、1日目とは異なりその大半が下り坂だ。目指す場所がすぐ近くまで迫っている証拠であり、一行の足取りは軽かった。
 無事にクリエスター山脈を抜け――。

「カミラから?」
「はい」
 ミラベルは依頼(オーダー)の花の届け先の軒先に立った。冒険者たちは少し離れた場所で見守っている。
 家主――カミラの婚約者であるエリアスは、花(ガーベラ)を渡してきたミラベルから経緯を聞いて、驚いたようだった。
「結構会えてない期間が長いからな……。にしても、僕のところにも来るとは思わなかった」
「え?」
「花のお届け、って、こっち(シャルガネ)にいる僕の友人にも来たことがあるんだよ。僕もちょうどその場に居合わせてね。そうそう、名乗った店名も同じだったな」
「それ、私の祖母です……!」
 今度はミラベルが驚く番だった。
 ルートは違うかもしれないが、自分は移動花屋(Duvet)としての祖母の足跡を辿っていることは出来ているらしかった。

●そして花を
 帰りは船に揺られ、冒険者たちはここでミラベルが山脈ルートを選んだ理由を察することになった。
 ただし、当然ながら介抱する者もいたおかげで、リブラネスタに戻ってからのミラベルの立ち直りも早かった。

 一行は『Duvet』の馬車の元へ向かい、ミラベルは馬車の前に商品を広げた。
 出発当初にリサに告げていた通り、冒険者たちがミラベルを通じて誰かに届ける花を選ぶ番だ。もっとも、出自が遊牧民であるツァガーンナルは、里帰りする理由にもなるので自分で届けるというが。
「フィルエスの実家にいる、尊敬する父へ。ムラサキツユクサの花を……」
 コルネリウスのお願いに、ミラベルはなるほど、と肯いた。
「じゃああたしは、白のアザレアをお願いしてもいいかなっ?」
 以前に同様に花を届けた相手と付き合うことになった、というサフィラの依頼(オーダー)の理由は、ミラベルはここに来るまでに聞いている。花言葉のことを確認するまでもないだろう。

 リサが花を送りたい相手は、エスト・ポーラにいる母(お義母様)。「感謝を伝えたいんです」というリサの意向も、ミラベルは既に聞いていた。
「こちらでどうでしょう」
 とリサに差し出したのは、ガーベラだった。ただし、カミラがエリアスに届けたものとは。
「色が違いますね?」
「白のガーベラの花言葉は『希望』『律儀』ですが、ピンクのガーベラだと『感謝』『崇高美』になるんですよ」
 ミラベルは他にもいくつか『感謝』の意を示す花を紹介したが、リサは最終的にピンクのガーベラを選んだ。

 そしてドゥーンフォルトはというと、道中で暫く考えていたらしく、すぐに答えを出した。
「ネリネの花をお願いします」
「お届け先はどちらに?」
「あなたにです、ミラベル殿」
「えっ?」
 思わぬ言葉に、きょとんとするミラベル。
 ネリネの花言葉は、『また会う日を楽しみに』。
「配達、お疲れさまでした。何かあれば、いつでも呼んでください」
 穏やかに笑うドゥーンフォルトや冒険者たちに、
「……ありがとうございます。また、是非」
 ミラベルはネリネの微かな香りを感じながらそう返すのだった。

マスターコメント

お待たせしました。 皆様のお陰で今回も無事、ミラベルは自分の仕事を果たすことが出来ました。ありがとうございます。 書きたいことがありすぎて色々削りました。戦闘2回目もそれです。かなりダイジェスト風味。 次回への引きも用意してあったんですけど、これもなし。次のOPのときに……。 次から、花のお届けも込みでやるときはミドルかロングで出すかもしれません。 此度はご参加いただきありがとうございました。 また御縁がありましたら、どうぞ宜しくお願い致します。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人

2021年10月23日 08時15分42秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ハルハン・ツァガーンナル

    ウォーリア、ハルハン・ツァガーンナルです! ナルと呼んでください。よろしくおねがいします!

  2. ドゥーンフォルト

    ウォーリアのドゥーンフォルトと申します。どうぞよしなに。

  3. コルネリウス・アーラ

    ウォーリアのコルネリウスです、宜しくお願いします。 >方針 陸路で3日ほど、足場は良くない、敵が出る可能性…ということで、ミラベルさんも馬車をおいてきていますし黒汗馬を使うには不向きですし、歩きで向かう形ですね。 ルートの説明からも通れるルートは固定されている印象で良いでしょうか。 野営用にゲルは持ちますので活用しましょう。 >敵 敵への遭遇は運次第ということですが、遭遇しないように、夜間は火を絶やさない、見張りを交代で行うなどでしょうか。 スキルに余裕があれば幸運の星でも付けようかな、とも思いますが、他スキルが優先になりますね。 猪は食料にもなるようですから、遭遇した場合は活用したいですね。 >戦闘 鳥は一つの獲物に集るのでしたら、一体をシーザーロアで引き付けて私に集らせようかと思っています。 猪は親が動いてくれるように子を狙えば向こうも襲ってきてくれたら良いかなと思いますが、子の数にもよるようなので臨機応変に対処したいですね。

  4. リサ・ベイカー

    ヒーラーのリサです。よろしくお願いします。 ゲルはありがたいですね。わたしは、野営セットを持って行きますね。 野営の時には調理も担当しましょうか。 野営する場所も、襲われにくいとか、襲われても対処しやすい場所を選びたいですね。

  5. ストレガ・L・リベルガストラ

    キャスター、ストレガなのだ。よろしくなのだ。 獣の解体は任せろなのだ。 食糧としてあえて魔獣を探す必要、がないように干物セットも持っていくのだ。 彼方からやってくるなら肉にするまで。 可能なら水場を探したいところなのだ。山脈故あるとしたら洞窟かも。

  6. ハルハン・ツァガーンナル

    食糧や調理、テントも大丈夫そうですね。 ボクは、調理のお手伝いでしょうか。マジカルポケットもあるので、荷物もまとめれば、運べると思います! >敵 索敵は、超聴覚などでできそうですね。 洞窟は難しいそうですが、避けられそうなら、ルートを変えたりして対応したいところです

  7. ドゥーンフォルト

    自分は夜間の警戒用に暗視を付けて行きますね。あとは足場が悪いとのことなので、念のためバランス感覚を。 戦闘系については、カバリングを。守りを重視して動こうと思います。

  8. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    にゃ!シーフのサフィラだよっ! みんなよろしくねっ! >野営 んー、何持ってこうかなぁ? とりあえず干し肉と火打箱は持ってこうかなって考えてる! 後はナイフ持ってってストレガっちの解体のお手伝いしよっかな! >敵 あたしが先回りして【双波】で索敵する感じで動いてみるねっ!あとは【超聴覚】で鳴き声、足音を拾って警戒してみるねっ! >戦闘 コルネとドゥーンが引き付けてる横から 【タナトスバイト】で急所を狙う感じで動いてみるよっ!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0