おんせんが現れた!
岩岡志摩
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シナリオID:1357
オープニング
●おんせんが出た
この日起こったことを、目撃者となった宿の主はこう語る。
「何もない更地から、突然庭から水が噴き出したのです」
本当に何の前触れもなかったようだ。
「何かを掘っていて水が噴き出したとか、そういうことではなく、いきなり湧き出てきました」
水は熱水らしく、湯気をもうもうと立ち昇らせていたことから、宿の主は庭に何が出現したのかを知る。
宿の庭におんせんが現れた!
しかし宿の従業員達はおどろきとまどっている!
どうしよう?
→たたかう。
にげる。
冒険者ギルドに相談する。
●→相談しました
この日、冒険者ギルドへ相談に来たのは、ある若い商人だった。
以前にもこの商人は、子犬や子猫達を街まで運ぶ際の護送を冒険者達に依頼したこともある。
その際は冒険者達からの様々なアドバイスもあって、以後の搬送はうまくいっているという。
愛玩の用途で犬猫達への需要がいまだに高いことから、この商人は思い切って犬猫達と触れ合える宿を町の一角に構えることにした。
「動物をのびのびと遊ばせるため、周囲に何のない場所で宿を建築したまではよかったのですが、突然宿の庭から温泉が噴出しました」
当初の予定では、その庭は犬猫達と遊ぶことのできる空間にする予定だったが、温泉が出たのでそれができなくなった。
現地を調査した商人によると、噴き出した泉は1つではなく、いろんな効果をもたらす複数の泉が群れとなって庭のあちこちから噴出しているらしい。
ただ実際に温泉につかった従業員達の話として、通常考えられる効果以外にも、恐らくエーテルか何かの影響で、別の効果を持つ温泉もある様で、その効果は一時的なものが多いとも、商人は説明する。
だから温泉ではなく『おんせん』と表現するのが正しいのかもしれない。
ただこの商人や宿の従業員達には、温泉宿のノウハウがない。
――この温泉はどのように利用すればいいのか。
――どうすればお客が来てくれるのか。
期せずして温泉宿の主となった商人は、助けを求めるべく冒険者ギルド支部に依頼をすべく、今に至る。
「そういった難題を解決すべく、冒険者の皆様からのご助言やご意見を頂きたいのです」
商人は依頼内容を応対したアルヒ・ラスカスに説明する一方、こんな要望も出してきた。
「できましたら客寄せができるような方や、無理にとは申しませんが動物好きの方のご助力も頂きたく存じます」
アルヒは一通り商人の話を聞いたところで、ある確認をとる。
「この依頼の達成条件ですが、温泉を活用するような意見やアイディアが揃えば達成になるのですか?」
「そうなります。たとえ温泉を有効に活用できるようなや客寄せができなかったとしても、宿にいる犬猫達との触れ合いを楽しんで下されば、問題ありません」
『おんせん』を活用すべく意見を募ることや、客寄せをお願いしたいのも確かだが、冒険者達を労う慰安のようなものも行いたいと、商人は詳細を明かす。
「冒険者の中には、ご自身のパートナーとして様々な動物を連れている方もいらっしゃるとお聞きします。場所はお貸ししますので、そういった動物たちが活動できる場として、私どもの宿をお使いくださればありがたいです」
なおこの宿だが建物内の一角にはゴロゴロできそうな絨毯がしかれており、その上に飲食ができそうなテーブルや椅子がある。
そして庭となる区画がドッグランをできそうな広々とした空間になっており、地面は切りそろえられた芝生が敷かれ、こちらも走ったり寝転んだりできる。
ただしその一角に『おんせん』が湧き出たので、その周りだけは他の場所よりも高い柵で囲っている。
また裏庭にあたる箇所には、急ごしらえだがロープやら遊具が並べられ、立体的な運動ができる場所になっている。
「こちらは犬猫だけでなく、他の動物達も楽しめるような場所として、こしらえました」
「そうしますと、ペットを同伴しても構わないということですか?」
「おっしゃる通りです。もちろんペット同伴でない方も歓迎いたします」
お客がペットをのびのびと遊ばせる空間や時間も必要だろうと商人は考え、宿側で用意したらしい。
以前護衛の依頼に参加してくれた冒険者からの助言もあり、犬猫と遊ぶための遊具(フリスビーや、毛糸球など)に加え、ブラシといった犬猫達のケアをするための道具も一通り揃えてある。
犬猫だけでなく、他の種類のペットに与えるエサも宿の従業員達に頼めば用意してくれるらしい。
そうした触れ合いを見せることも、客寄せに繋がることだと商人は明かしている。
「温泉の活用法を考えるついでで構いません。可能であればここにいる犬猫達とのひとときもお楽しみくだされば幸いです」
ということでこの宿(現在未施工の『おんせん』と生後6か月から1歳未満の犬猫達、ペットと遊ぶことのできる場所付き)では、皆様の到着と、皆様からのご意見やアイデアをお待ちしています。
●今回できること
皆様は宿のリニューアルプレオープンに参加した、という形になっています。
もともとこの宿は犬猫との触れ合いを楽しめるという要素を売りに出す予定でしたが、敷地の庭より『おんせん』が出るという不測の事態が発生しました。
宿では『おんせん』を活用することにしましたが、温泉宿のノウハウがこの宿を所有する商人も、宿の従業員達にもありません。
このため、温泉をどのように利用すればいいか、どうやって観光客を呼び込むことができるかといった意見やアイディアを冒険者の皆様より募りたいようです。
特に冒険者の皆様の中には常人とは異なるアイディアやスキルを有する人も多いことから、スキルを使ったパフォーマンスも有効になるでしょう。
その一方で、宿の所有者である商人は、あちこち駆けずり回ってお疲れの冒険者達に、楽しいひと時を過ごしてもらうことで英気を養ってもらいたいという気持ちもあるようです。
もちろん、宿のスペースを活用してご自身のペットや宿にいる犬猫達と触れ合ったり、一緒に遊んだりすることも宿では歓迎しています。
これは冒険者の皆様に楽しんでもらうことで、その光景を周囲にいる人達へ見せることができれば、結果として観光客を呼び込むための良いアピールになると商人側が考えているためです。
このため皆様全員が温泉群を活用することや、観光客を集められるような意見やアイディアを出さなくても構いません。
宿にいる犬猫達とのもふもふ……もとい触れ合いを楽しむことや、宿にある設備を利用してご自身のペットと遊ぶだけでも目標は達成できます。
ただし依頼に応じて下さった皆様の中から、最低でもお1人以上は実現可能な意見やアイディアを宿に提示する必要があることは、ご留意下さい。
この日起こったことを、目撃者となった宿の主はこう語る。
「何もない更地から、突然庭から水が噴き出したのです」
本当に何の前触れもなかったようだ。
「何かを掘っていて水が噴き出したとか、そういうことではなく、いきなり湧き出てきました」
水は熱水らしく、湯気をもうもうと立ち昇らせていたことから、宿の主は庭に何が出現したのかを知る。
宿の庭におんせんが現れた!
しかし宿の従業員達はおどろきとまどっている!
どうしよう?
→たたかう。
にげる。
冒険者ギルドに相談する。
●→相談しました
この日、冒険者ギルドへ相談に来たのは、ある若い商人だった。
以前にもこの商人は、子犬や子猫達を街まで運ぶ際の護送を冒険者達に依頼したこともある。
その際は冒険者達からの様々なアドバイスもあって、以後の搬送はうまくいっているという。
愛玩の用途で犬猫達への需要がいまだに高いことから、この商人は思い切って犬猫達と触れ合える宿を町の一角に構えることにした。
「動物をのびのびと遊ばせるため、周囲に何のない場所で宿を建築したまではよかったのですが、突然宿の庭から温泉が噴出しました」
当初の予定では、その庭は犬猫達と遊ぶことのできる空間にする予定だったが、温泉が出たのでそれができなくなった。
現地を調査した商人によると、噴き出した泉は1つではなく、いろんな効果をもたらす複数の泉が群れとなって庭のあちこちから噴出しているらしい。
ただ実際に温泉につかった従業員達の話として、通常考えられる効果以外にも、恐らくエーテルか何かの影響で、別の効果を持つ温泉もある様で、その効果は一時的なものが多いとも、商人は説明する。
だから温泉ではなく『おんせん』と表現するのが正しいのかもしれない。
ただこの商人や宿の従業員達には、温泉宿のノウハウがない。
――この温泉はどのように利用すればいいのか。
――どうすればお客が来てくれるのか。
期せずして温泉宿の主となった商人は、助けを求めるべく冒険者ギルド支部に依頼をすべく、今に至る。
「そういった難題を解決すべく、冒険者の皆様からのご助言やご意見を頂きたいのです」
商人は依頼内容を応対したアルヒ・ラスカスに説明する一方、こんな要望も出してきた。
「できましたら客寄せができるような方や、無理にとは申しませんが動物好きの方のご助力も頂きたく存じます」
アルヒは一通り商人の話を聞いたところで、ある確認をとる。
「この依頼の達成条件ですが、温泉を活用するような意見やアイディアが揃えば達成になるのですか?」
「そうなります。たとえ温泉を有効に活用できるようなや客寄せができなかったとしても、宿にいる犬猫達との触れ合いを楽しんで下されば、問題ありません」
『おんせん』を活用すべく意見を募ることや、客寄せをお願いしたいのも確かだが、冒険者達を労う慰安のようなものも行いたいと、商人は詳細を明かす。
「冒険者の中には、ご自身のパートナーとして様々な動物を連れている方もいらっしゃるとお聞きします。場所はお貸ししますので、そういった動物たちが活動できる場として、私どもの宿をお使いくださればありがたいです」
なおこの宿だが建物内の一角にはゴロゴロできそうな絨毯がしかれており、その上に飲食ができそうなテーブルや椅子がある。
そして庭となる区画がドッグランをできそうな広々とした空間になっており、地面は切りそろえられた芝生が敷かれ、こちらも走ったり寝転んだりできる。
ただしその一角に『おんせん』が湧き出たので、その周りだけは他の場所よりも高い柵で囲っている。
また裏庭にあたる箇所には、急ごしらえだがロープやら遊具が並べられ、立体的な運動ができる場所になっている。
「こちらは犬猫だけでなく、他の動物達も楽しめるような場所として、こしらえました」
「そうしますと、ペットを同伴しても構わないということですか?」
「おっしゃる通りです。もちろんペット同伴でない方も歓迎いたします」
お客がペットをのびのびと遊ばせる空間や時間も必要だろうと商人は考え、宿側で用意したらしい。
以前護衛の依頼に参加してくれた冒険者からの助言もあり、犬猫と遊ぶための遊具(フリスビーや、毛糸球など)に加え、ブラシといった犬猫達のケアをするための道具も一通り揃えてある。
犬猫だけでなく、他の種類のペットに与えるエサも宿の従業員達に頼めば用意してくれるらしい。
そうした触れ合いを見せることも、客寄せに繋がることだと商人は明かしている。
「温泉の活用法を考えるついでで構いません。可能であればここにいる犬猫達とのひとときもお楽しみくだされば幸いです」
ということでこの宿(現在未施工の『おんせん』と生後6か月から1歳未満の犬猫達、ペットと遊ぶことのできる場所付き)では、皆様の到着と、皆様からのご意見やアイデアをお待ちしています。
●今回できること
皆様は宿のリニューアルプレオープンに参加した、という形になっています。
もともとこの宿は犬猫との触れ合いを楽しめるという要素を売りに出す予定でしたが、敷地の庭より『おんせん』が出るという不測の事態が発生しました。
宿では『おんせん』を活用することにしましたが、温泉宿のノウハウがこの宿を所有する商人も、宿の従業員達にもありません。
このため、温泉をどのように利用すればいいか、どうやって観光客を呼び込むことができるかといった意見やアイディアを冒険者の皆様より募りたいようです。
特に冒険者の皆様の中には常人とは異なるアイディアやスキルを有する人も多いことから、スキルを使ったパフォーマンスも有効になるでしょう。
その一方で、宿の所有者である商人は、あちこち駆けずり回ってお疲れの冒険者達に、楽しいひと時を過ごしてもらうことで英気を養ってもらいたいという気持ちもあるようです。
もちろん、宿のスペースを活用してご自身のペットや宿にいる犬猫達と触れ合ったり、一緒に遊んだりすることも宿では歓迎しています。
これは冒険者の皆様に楽しんでもらうことで、その光景を周囲にいる人達へ見せることができれば、結果として観光客を呼び込むための良いアピールになると商人側が考えているためです。
このため皆様全員が温泉群を活用することや、観光客を集められるような意見やアイディアを出さなくても構いません。
宿にいる犬猫達とのもふもふ……もとい触れ合いを楽しむことや、宿にある設備を利用してご自身のペットと遊ぶだけでも目標は達成できます。
ただし依頼に応じて下さった皆様の中から、最低でもお1人以上は実現可能な意見やアイディアを宿に提示する必要があることは、ご留意下さい。
解説
●目標
突如出現した『おんせん』を活用できる意見や、観光客を呼び込めるようなアイディアを出す
副目標:宿にいる犬猫達や宿にある設備を利用して触れ合いを楽しむ
登場
犬猫たち
田舎の村で買い集められた犬猫たち。全て生後6か月以上1年未満。大きさは体長0.3mと小柄。
全般的に犬猫共に人懐っこく好奇心旺盛。なお全て店の『従業員』のためお持ち帰り厳禁。
商人
今回の依頼人で宿のオーナー。頼めばある程度のことには応じてくれる。
従業員達
宿に勤める人々。皆様の要望には出来る範囲で応じる用意あり。
アルヒ・ラスカス
今回唯一の増援。皆様から要請があれば大概のことなら応じ、用意できそうなものは用意してくれる。
状況
とある地方の村に建てられた宿屋の内外。現地時刻は正午で天候は快晴。気温は夏とは思えない温度で快適に過ごすことができる。
ゴロゴロできる屋内空間の他に、ドッグランのような空間や、ロープや様々な遊具が置かれたアスレチックスめいた空間、犬猫と遊んだりケアをするための道具も一通りそろっていた。
そんなところに今回敷地の一角で『おんせん』が噴き出した。
周囲には温泉に関わるような建物や商いを行う店がなく、『おんせん』を活用し観光客を呼べるようなアイディアを募るべく、冒険者ギルドに依頼を出した。
以下簡易見取り図
ABCDEFGHIJK
壁壁壁壁壁壁壁柵柵柵柵
1壁座座座座 壁 柵
2壁〇 〇〇 窓 柵
3壁(1) 窓(3)柵
4壁座 〇〇 窓 柵
5壁窓窓窓窓窓壁 柵
6柵芝芝芝芝芝柵柵柵柵柵
7柵 柵 柵
8柵 (2) 柵 泉 柵
9柵芝芝芝芝芝柵 柵
柵柵柵柵柵柵柵柵柵柵柵
1:犬猫とのんびりと遊べる区画。全面絨毯で寝そべることもOK。
2:犬猫と運動しながら遊べる場所。全面が芝。
3:猫や動物が立体的な運動ができる遊具が並べられた区域。
〇:テーブルや椅子
座:ソファ
壁:店外壁
泉:『おんせん』が噴き出た場所。現在この周囲だけ高さ3m程度の柵で囲っている。関係者以外立ち入り禁止。
マスターより
こちらはPC様からリクエストされたシナリオになります。
その過程で、以前子犬や子猫達の護送依頼で皆様のお世話になった商人を関わることになりました。
このシナリオでは、観光客を呼び込めるような意見やアイディアを募集しています。
もちろんスキルを使っての呼び込みも可です。
またそれ以外にも、この宿では皆様が同伴されるペット達を思い切り遊ばせたり、宿にいる犬猫達と触れ合うこともできます。
戦闘に至る要素は一切ありませんので、戦闘を考慮する必要はありませんが、ただ「全体を俯瞰する」「何もしない」といった目標に関与しない行動はマスタリング対象となります。
ご不明な点がございましたら出発36時間前まででしたら、ギルド職員のアルヒ・ラスカスが答えられる範囲は答えます。
それでは温泉を活用するための温泉宿づくりや、子犬や子猫達との触れ合い、ご自身のペット達とのひと時をお楽しみください。
リプレイ
●来ました
犬猫と触れ合える宿に『おんせん』が現れた。どうしよう?
そんな事態を解決すべく、依頼に応じた冒険者達が問題の宿に到着する。
「温泉が急に湧き出すのも驚きだけど、ペットと一緒に楽しめるなんてそれだけで素敵だよね」
テス・クラルスがこの宿のコンセプトを称賛すると、テスの弟子であり恋人でもあるロイ・アウレアも賛意を示す。
「個人的に、戦で疲れたペットを療養させる施設が欲しいと思っていたんだ」
動物の為の施設に温泉。これは人と動物両方の療養所にするしかないのでは?
(ペットの負傷は主へのヒールで治癒できる。だが、戦の記憶は残るだろうから、精神的ケアも含めたい)
ロイは早くもこの宿と温泉を活用できる策を考え始めるが、一方で同伴する狼のルプスのことも気遣っている。
ペットのことが気がかりなのは、テスも同じらしい。
「レグルス……楽しんで欲しいけど、何事も程々が大事だよ? 君は落ち着きがないから、ちょっと不安だよ」
そう言いつつも、猫のレグルスを撫でるテスの手つきはとても優しい。
「動物さんとふれあえる施設に温泉が湧いたんだ? これはステキなお宿になりそうな予感……!」
アルマ・ヴァレンタインは、自分達が宿と『おんせん』の活用を手掛けることもあってか、テンションが高い。
「動物が沢山居る施設で遊べると聞きました」
そのアルマと順調に仲を深めつつあるエヴァン・ピオネロもまた、この宿の可能性に気付く。
「みんなに良さを知ってもらえるよう頑張らないとだね、エヴァくん」
「この幸せとおんせんの良さを皆さんに伝えるアイデアを、ですね。僕もがんばります」
アルマとエヴァンは協力し合い、アイデアや試作品を用意するつもりだ。
「と、とても緊張しますが、実際に入浴した従業員さん達にお話を聞きたいと思いますね」
御邑 奈月は、まず宿の従業員達から話を聞くことから手を付けるようだ。
「商人さんの説明だけではなくて体験した声も取り入れたいと考えました。はい」
奈月は宿の主にあたる商人に挨拶をすると、従業員達への挨拶も行っていく。
●始めます
奈月だけでなく、他の冒険者達も従業員達への挨拶に向かう。
「ロイ! 仔猫が、仔犬が! いっぱいだ!」
テスがはしゃいだ声をあげる。
テスの視線の先には、『従業員』もとい仔犬や仔猫達がとてとてと動き回っていた。
「まずは動物さんのことをよく知らないとだねー……一緒にモフモフしにいこっか!」
「アルマと思いっきり遊びたいですし、動物も一緒だと嬉しいです」
アルマがエヴァンと共にその場にしゃがみこむと、一緒に仔犬や仔猫達へ手を伸ばす。
すると仔猫達はエヴァンやアルマの足へとしがみつき、爪を立ててよじよじ。
エヴァンが絨毯の敷かれた床に寝転ぶと、あちこちから仔猫や仔犬達が集まって来た。
「可愛い……可愛いです……」
今エヴァンは、無数のモフモフ……もとい犬猫達の中に埋もれている。
動物交感で読み取った犬猫達の感情も心地よく、まさに至福。
「私も動物交感全開で存分に遊んで、癒やしとインスピレーションを感じてくるよー」
アルマも足にしがみつく仔猫達を床に降ろしつつ、宿から借りたおもちゃを使い仔猫達と遊び始める。
仔猫もアルマの動かすおもちゃに呼応して、ていていと飛びつき、仔犬たちも混ぜて~とアルマに飛びついてくる。
動物交感によって、仔犬や仔猫達の楽しい感情がアルマに伝わってくる。
「可愛いなぁ。私はここだけで満足してしまう感じだよ……」
テスがそう言いながら、足にしがみついた仔猫を器用に抱え上げ、近くのテーブルの上へそっと置くと、ふとレグルスらしき唸り声が耳に届く。
テスがその方角を見ると、いつの間にかキャットウォークに鎮座し、周囲の仔猫達を威圧するレグルスの姿が。
「ってレグ! 早速キャットウォーク独占!? 威嚇はやめなさい」
慌てた声をあげながらも、一方でこう思う。
(そんな所も可愛いのだから、すっかり親バカってやつかな?)
そう思いながらテスはレグルスに降りるよう促し、降りたレグルスを抱えると、ロイを温泉の下見に誘う。
「とりあえず、ロイ、温泉いこう!」
「うんそうだね。一緒に行くとしようか」
テスの誘いにロイは快く応じ、共に温泉のある場所へ向かう。
ひとしきり犬猫達を堪能したエヴァンは、アルマと共にアイデアを話し合う。
「私は得意の『調理』で名物になりそうなお料理やお菓子作りにチャレンジするよー」
アルマは「エヴァくんと一緒にね」と付け加える。
「了解です。この幸せとおんせんの良さを皆さんに伝えるアイデアですね」
エヴァンもアルマの提案した料理やお菓子に賛意を示し、一緒に考えていく。
そしてアルマとエヴァンが宿の主や従業員達へ提示したのは、人間や動物が一緒に食べることができる料理だった。
「食べちゃダメな食材を取り除いた、ペットさん用のも提案させてもらうね」
アルマは宿の厨房を借りると、調理スキルや職人の家事用品を駆使して様々な料理を試作していく。
アルマの調理を手伝いながら、エヴァンも調理スキルを駆使してお菓子の試作を行う。
「人間用には、人気の犬猫をモデルにした大きな温泉クッキー。動物用には卵ボーロのようなシンプルなクッキーです」
なお動物用のほうは砂糖を入れないなど、工夫している。
「お料理は定番の温泉卵の他に地熱で仕立てたヨーグルトとか、湯気を利用したお肉やお魚、お野菜なんかを蒸したお料理なんかも温泉ならではの風情がありそう」
アルマが大まかな範囲で宿が用意できる料理の案を出せば、エヴァンが賛同しながら具体的な形にしていく。
「温度を一定に調整出来たらヨーグルトも美味しくできますね。温泉卵の殻に動物の顔を描いて、施設をアピールしましょうか」
アルマとエヴァンが料理を作りながらお互いに提案を行う中、奈月は実際に温泉を体験した従業員から話を聞いていく。
「……え、えと。入浴、してみて……どんな……感ぢ……。……感じ……だった、でひょう……か……?」
(質問した人達には申し訳なかったです……。はぅ)
奈月は自身の声が小さく、聞き取りづらかったのではないかと危惧しているが、従業員達はにこやかに奈月へ答えていく。
――それぞれの温泉ごとに効能が違うようだった。
――一時的なものが多かったが、体にいいものばかりだった。
それを聞いた奈月は、さらに質問を重ねていく。
「こ、個人的……によ、よかった……と思ふ……思う点は……ありま……すか……?」
時々言葉につかえながらも、どうにか温泉の体験談を聞き取ることができた奈月は、従業員達に頭を下げ、ようやく一息つく。
(聞き終わったので、私も温泉に浸かってみます。お仕事半分、のんびりしたい気分半分……で♪)
奈月は入浴が可能となっている温泉の場所を聞き出し、必要な道具を借りてその温泉へと向かう。
その温泉では、既にロイがテスと共に現状の確認をしている。
「わぁ! 広いね!」
テスは感嘆の声をあげる。
温泉が複数存在するとあってか、急ごしらえではあるが柵で囲まれた空間は広々としている。
「色んな泉質があるみたいだし、効能がはっきりすれば、もっとお客さんにアピールできるんじゃないかな。これなんて、お肌に良さそう♪」
ちょうどテスが手を入れている温泉の湯は、肌触りはなめらかで柔らか。
少しぬるぬるしているように感じるが、体験をした従業員の話では、湯から上がると肌がつるつるになる効果があるようだ。
なおレグルスは水が嫌いなのか、逃げ出して仔猫達のいる部屋に戻っている。
楽しそうなテスに笑みを見せながら、ロイは一通り全ての温泉を確認すると、水気のない区画で宿から借りた紙を広げる。
「上手く行けば地域活性化にも繋がる。計画書を作り、必要なら出資者を募るのも考えたいところだな……」
筆記用具と自身の建築・土木スキルを駆使して、ロイは図面を描いていく。
その図面の上で、源泉の特性に合わせて湯を分配できるように張り巡らされた配水管で占められていた。
「一角に子供プールサイズの桶を支度して動物用、人は室内温泉風呂とか……」
そのときロイの目に、温泉を興味深そうに見つめるルプスの姿が映る。
「はっ! 動物の意見も大事」
ロイはルプスに触れると、動物交感を駆使して感情を読み取っていく。
そしてテスやロイが一度温泉区画から移動した後、奈月がパンフレットやチラシの構造を考えるべく、温泉を体験し始める。
(今度は姉や恋人と一緒に来てもよさそうです♪ 恋人と……恋人と……恋人……こ……こ……)
湯船の中で奈月の表情がコロコロ変わり、構想を考えすぎてのぼせたとか、のぼせなかったとか。
●提案です
ロイは作成した図面を宿の主や従業員達に見せ、温泉を活用する具体案を説明する。
「希望は大きなプールですが、動物やその飼い主用として、水の深さを変えた温泉プールや運動施設をそれぞれ作ることを提案します」
ロイは体の小さいペットも入る事ができるプールの設置もあわせて提案する。
話し合いの結果、各温泉はロイの提案通りの形となり、図面通りに配管を敷設することで合意する。
「そうだ、この温熱を利用して、地熱浴みたいな蒸し風呂はどうなの? ほんのり暖かな空間なら、犬も猫も喜びそう」
テスは湯に入らなくても人間やペットが楽しめる風呂の設置を提案する。
「……ねこ鍋を並べたブースがあると尚いいかもしれない。老いた子達のケアにも、人間にも優しい空間になるかもと思ったよ」
追加で示したテスの案に対し、宿の主は「検討してみます」と笑顔で応じる。
アルマとエヴァンは協力して作った料理やお菓子の試作品を並べ、宿で提供できそうなものを提案していく。
「こちらは温熱を利用した蒸し野菜やお肉です。人が食べるほうはポン酢やドレッシングで頂きます」
エヴァンはペット用と人間用それぞれの料理を配膳し、作成した味を人間用の料理に添えていく。
「お菓子は『おんせん』の動物さん達モチーフの動物さんクッキーとかどうかなーって」
アルマの方は、先程完成したクッキーを用意し、皆の前に配っていく。
アルマが作成したクッキーはこの宿にいる犬猫達だけでなく、さまざまなペットをモチーフとしていて種類が豊富だ。
「焼き菓子なら日持ちするからお土産にもよさそうだし?」
アルマの意見に宿の主や従業員達も採用を決める。
そしてアルマとエヴァンが作った料理やお菓子の試食が始まった。
「んー美味しい」
(こんな幸せでいいんだろうか)
テスは幸せそうに顔をほころばせる。
テスが口に運んだ蒸し野菜は、その野菜らしい甘さと香りが引き立ち、柔らかい食感とポン酢やドレッシングの味が良い調和を舌に残していく。
「ロイ、そっちの肉も1口頂戴」
テスは横で静かに蒸した肉を食していたロイからも、許可を得て一口分もらい、口へ運ぶ。
ぱくっ。
「んーいいね」
肉は脂が甘く、蒸したことで余分な脂がとれ、アルマやエヴァンの調理によって柔らかく、クセのない味に仕上がっている。
それはテスの傍らにいるレグルスも同じだったのか、目を細めつつすごい勢いで食している。
「レグ、それも美味しいかい?」
おねだりをしてきたレグルスを、テスは優しく撫でる。
そしてアルマやエヴァンも、他の冒険者や宿の従業員達と共に自分達の作った料理やお菓子を食している。
(試作品なんかを仲良く食べさせっことか出来たらいいなー)
などとアルマが内心思っていると、エヴァンより一口分の料理が差し出されてきた。
「エヴァくん、ありがとう。あーん」
口を開けて、アルマはエヴァンからの料理を受け入れ、はむはむと食す。
飲み込んだところで、お返しにアルマもエヴァンに向け「あーん」と差し出す。
エヴァンも口を開け、アルマと一緒にもぐもぐ。
「美味しいですねー」
食後のクッキーもこれまた絶品だった。
エヴァンは地元の特産が何か聞き、さらにこんな提案をする。
「お湯の硬度が柔らかいならコーヒーやお茶の味を引き出し、煮炊きに使っても美味しくなると聞きました。合わせて温泉定食や煮込み料理にしたら地元感が出ますね」
そうした冒険者達の提案や、作成した試作品の中で宿側が受け入れ、取り入れたものをもとに、奈月が宿から借りた紙にパンフレットやチラシの文章やラフを書き上げていく。
そして奈月は仮案として、書き上げたものを見せる。
「……で、できる限り……わかりやすく、簡潔に……描きました……です」
簡潔と奈月は口にするも、実際にできあがったのは、宿を利用する人たち向けの注意書きや、一目でその内容がわかるよう様々な工夫がなされている。
注意喚起は黄色の紙に黒文字。禁止事項は赤色の紙に黒文字――という感じで、奈月の手細工スキルがいい仕事をしていた。
「……は、恥ずかしいですが……少し下手ですが。……え、絵などもあると……より分かりやすいかも……しれません」
奈月はおずおずと内容を説明するが、宿の人達は真剣な表情で聞いている。
「……ご、誤字脱字……誤解釈は、き、気を付けてはいますが……。わ、私一人だと見逃すこともあると思うので……」
奈月は、そのあたりの確認作業は目の前にいる冒険者や宿の人達にお願いする旨をどうにか伝え、頭を下げる。
「御邑さんの案とも合わせ、この宿の宣伝をギルド経由で各都市へしてはいかがでしょうか?」
ロイは宿の主だけでなく、アルヒにもそんな提案を行っていた。
●後は
冒険者達の提案は実現可能なものが多く。宿の主や従業員達は冒険者達に深い感謝を示した。
「あ、あの……こ、この……お宿……お、お泊り……可能……で……でしょう……か」
ここで奈月がそれとなく宿に確認すると、宿からは「どうぞ。皆さんなら無料です」との答えが返ってきた。
ここから先は冒険者達の自由時間となる。
(そういえばロイさんが温泉施設を作るっていってたっけ。ちょうど『水着』も持ってきたことだしー……)
「エヴァくーん、水着あるし一緒に温泉入ろっかー?」
ここでアルマはエヴァンを温泉に誘うと、エヴァンも快諾して宿の従業員達に確認する。
「温泉施設を作る話もあったので水着持参しましたが……どの温泉なら入る事ができますか?」
そして入浴可能な温泉を聞き出したエヴァンは、アルマと共に温泉へと向かう。
エヴァンやアルマが向かったものと別の温泉では、既にロイとテスが入り、ルプス達の世話をしていた。
「ルプス。湯加減はどうだ?」
「ルプスは温泉すき?」
ルプスは目を閉じて気持ちよさそうにお湯につかり、ロイやテスの問いに答えない。
「これって……無視されてる?」
ロイとテスは顔を見合わせ、互いに笑みを見せる。
「こうしてるのが一番、癒される」
「是非また来たいね」
この後、ロイとテスも温泉を満喫した。
犬猫と触れ合える宿に『おんせん』が現れた。どうしよう?
そんな事態を解決すべく、依頼に応じた冒険者達が問題の宿に到着する。
「温泉が急に湧き出すのも驚きだけど、ペットと一緒に楽しめるなんてそれだけで素敵だよね」
テス・クラルスがこの宿のコンセプトを称賛すると、テスの弟子であり恋人でもあるロイ・アウレアも賛意を示す。
「個人的に、戦で疲れたペットを療養させる施設が欲しいと思っていたんだ」
動物の為の施設に温泉。これは人と動物両方の療養所にするしかないのでは?
(ペットの負傷は主へのヒールで治癒できる。だが、戦の記憶は残るだろうから、精神的ケアも含めたい)
ロイは早くもこの宿と温泉を活用できる策を考え始めるが、一方で同伴する狼のルプスのことも気遣っている。
ペットのことが気がかりなのは、テスも同じらしい。
「レグルス……楽しんで欲しいけど、何事も程々が大事だよ? 君は落ち着きがないから、ちょっと不安だよ」
そう言いつつも、猫のレグルスを撫でるテスの手つきはとても優しい。
「動物さんとふれあえる施設に温泉が湧いたんだ? これはステキなお宿になりそうな予感……!」
アルマ・ヴァレンタインは、自分達が宿と『おんせん』の活用を手掛けることもあってか、テンションが高い。
「動物が沢山居る施設で遊べると聞きました」
そのアルマと順調に仲を深めつつあるエヴァン・ピオネロもまた、この宿の可能性に気付く。
「みんなに良さを知ってもらえるよう頑張らないとだね、エヴァくん」
「この幸せとおんせんの良さを皆さんに伝えるアイデアを、ですね。僕もがんばります」
アルマとエヴァンは協力し合い、アイデアや試作品を用意するつもりだ。
「と、とても緊張しますが、実際に入浴した従業員さん達にお話を聞きたいと思いますね」
御邑 奈月は、まず宿の従業員達から話を聞くことから手を付けるようだ。
「商人さんの説明だけではなくて体験した声も取り入れたいと考えました。はい」
奈月は宿の主にあたる商人に挨拶をすると、従業員達への挨拶も行っていく。
●始めます
奈月だけでなく、他の冒険者達も従業員達への挨拶に向かう。
「ロイ! 仔猫が、仔犬が! いっぱいだ!」
テスがはしゃいだ声をあげる。
テスの視線の先には、『従業員』もとい仔犬や仔猫達がとてとてと動き回っていた。
「まずは動物さんのことをよく知らないとだねー……一緒にモフモフしにいこっか!」
「アルマと思いっきり遊びたいですし、動物も一緒だと嬉しいです」
アルマがエヴァンと共にその場にしゃがみこむと、一緒に仔犬や仔猫達へ手を伸ばす。
すると仔猫達はエヴァンやアルマの足へとしがみつき、爪を立ててよじよじ。
エヴァンが絨毯の敷かれた床に寝転ぶと、あちこちから仔猫や仔犬達が集まって来た。
「可愛い……可愛いです……」
今エヴァンは、無数のモフモフ……もとい犬猫達の中に埋もれている。
動物交感で読み取った犬猫達の感情も心地よく、まさに至福。
「私も動物交感全開で存分に遊んで、癒やしとインスピレーションを感じてくるよー」
アルマも足にしがみつく仔猫達を床に降ろしつつ、宿から借りたおもちゃを使い仔猫達と遊び始める。
仔猫もアルマの動かすおもちゃに呼応して、ていていと飛びつき、仔犬たちも混ぜて~とアルマに飛びついてくる。
動物交感によって、仔犬や仔猫達の楽しい感情がアルマに伝わってくる。
「可愛いなぁ。私はここだけで満足してしまう感じだよ……」
テスがそう言いながら、足にしがみついた仔猫を器用に抱え上げ、近くのテーブルの上へそっと置くと、ふとレグルスらしき唸り声が耳に届く。
テスがその方角を見ると、いつの間にかキャットウォークに鎮座し、周囲の仔猫達を威圧するレグルスの姿が。
「ってレグ! 早速キャットウォーク独占!? 威嚇はやめなさい」
慌てた声をあげながらも、一方でこう思う。
(そんな所も可愛いのだから、すっかり親バカってやつかな?)
そう思いながらテスはレグルスに降りるよう促し、降りたレグルスを抱えると、ロイを温泉の下見に誘う。
「とりあえず、ロイ、温泉いこう!」
「うんそうだね。一緒に行くとしようか」
テスの誘いにロイは快く応じ、共に温泉のある場所へ向かう。
ひとしきり犬猫達を堪能したエヴァンは、アルマと共にアイデアを話し合う。
「私は得意の『調理』で名物になりそうなお料理やお菓子作りにチャレンジするよー」
アルマは「エヴァくんと一緒にね」と付け加える。
「了解です。この幸せとおんせんの良さを皆さんに伝えるアイデアですね」
エヴァンもアルマの提案した料理やお菓子に賛意を示し、一緒に考えていく。
そしてアルマとエヴァンが宿の主や従業員達へ提示したのは、人間や動物が一緒に食べることができる料理だった。
「食べちゃダメな食材を取り除いた、ペットさん用のも提案させてもらうね」
アルマは宿の厨房を借りると、調理スキルや職人の家事用品を駆使して様々な料理を試作していく。
アルマの調理を手伝いながら、エヴァンも調理スキルを駆使してお菓子の試作を行う。
「人間用には、人気の犬猫をモデルにした大きな温泉クッキー。動物用には卵ボーロのようなシンプルなクッキーです」
なお動物用のほうは砂糖を入れないなど、工夫している。
「お料理は定番の温泉卵の他に地熱で仕立てたヨーグルトとか、湯気を利用したお肉やお魚、お野菜なんかを蒸したお料理なんかも温泉ならではの風情がありそう」
アルマが大まかな範囲で宿が用意できる料理の案を出せば、エヴァンが賛同しながら具体的な形にしていく。
「温度を一定に調整出来たらヨーグルトも美味しくできますね。温泉卵の殻に動物の顔を描いて、施設をアピールしましょうか」
アルマとエヴァンが料理を作りながらお互いに提案を行う中、奈月は実際に温泉を体験した従業員から話を聞いていく。
「……え、えと。入浴、してみて……どんな……感ぢ……。……感じ……だった、でひょう……か……?」
(質問した人達には申し訳なかったです……。はぅ)
奈月は自身の声が小さく、聞き取りづらかったのではないかと危惧しているが、従業員達はにこやかに奈月へ答えていく。
――それぞれの温泉ごとに効能が違うようだった。
――一時的なものが多かったが、体にいいものばかりだった。
それを聞いた奈月は、さらに質問を重ねていく。
「こ、個人的……によ、よかった……と思ふ……思う点は……ありま……すか……?」
時々言葉につかえながらも、どうにか温泉の体験談を聞き取ることができた奈月は、従業員達に頭を下げ、ようやく一息つく。
(聞き終わったので、私も温泉に浸かってみます。お仕事半分、のんびりしたい気分半分……で♪)
奈月は入浴が可能となっている温泉の場所を聞き出し、必要な道具を借りてその温泉へと向かう。
その温泉では、既にロイがテスと共に現状の確認をしている。
「わぁ! 広いね!」
テスは感嘆の声をあげる。
温泉が複数存在するとあってか、急ごしらえではあるが柵で囲まれた空間は広々としている。
「色んな泉質があるみたいだし、効能がはっきりすれば、もっとお客さんにアピールできるんじゃないかな。これなんて、お肌に良さそう♪」
ちょうどテスが手を入れている温泉の湯は、肌触りはなめらかで柔らか。
少しぬるぬるしているように感じるが、体験をした従業員の話では、湯から上がると肌がつるつるになる効果があるようだ。
なおレグルスは水が嫌いなのか、逃げ出して仔猫達のいる部屋に戻っている。
楽しそうなテスに笑みを見せながら、ロイは一通り全ての温泉を確認すると、水気のない区画で宿から借りた紙を広げる。
「上手く行けば地域活性化にも繋がる。計画書を作り、必要なら出資者を募るのも考えたいところだな……」
筆記用具と自身の建築・土木スキルを駆使して、ロイは図面を描いていく。
その図面の上で、源泉の特性に合わせて湯を分配できるように張り巡らされた配水管で占められていた。
「一角に子供プールサイズの桶を支度して動物用、人は室内温泉風呂とか……」
そのときロイの目に、温泉を興味深そうに見つめるルプスの姿が映る。
「はっ! 動物の意見も大事」
ロイはルプスに触れると、動物交感を駆使して感情を読み取っていく。
そしてテスやロイが一度温泉区画から移動した後、奈月がパンフレットやチラシの構造を考えるべく、温泉を体験し始める。
(今度は姉や恋人と一緒に来てもよさそうです♪ 恋人と……恋人と……恋人……こ……こ……)
湯船の中で奈月の表情がコロコロ変わり、構想を考えすぎてのぼせたとか、のぼせなかったとか。
●提案です
ロイは作成した図面を宿の主や従業員達に見せ、温泉を活用する具体案を説明する。
「希望は大きなプールですが、動物やその飼い主用として、水の深さを変えた温泉プールや運動施設をそれぞれ作ることを提案します」
ロイは体の小さいペットも入る事ができるプールの設置もあわせて提案する。
話し合いの結果、各温泉はロイの提案通りの形となり、図面通りに配管を敷設することで合意する。
「そうだ、この温熱を利用して、地熱浴みたいな蒸し風呂はどうなの? ほんのり暖かな空間なら、犬も猫も喜びそう」
テスは湯に入らなくても人間やペットが楽しめる風呂の設置を提案する。
「……ねこ鍋を並べたブースがあると尚いいかもしれない。老いた子達のケアにも、人間にも優しい空間になるかもと思ったよ」
追加で示したテスの案に対し、宿の主は「検討してみます」と笑顔で応じる。
アルマとエヴァンは協力して作った料理やお菓子の試作品を並べ、宿で提供できそうなものを提案していく。
「こちらは温熱を利用した蒸し野菜やお肉です。人が食べるほうはポン酢やドレッシングで頂きます」
エヴァンはペット用と人間用それぞれの料理を配膳し、作成した味を人間用の料理に添えていく。
「お菓子は『おんせん』の動物さん達モチーフの動物さんクッキーとかどうかなーって」
アルマの方は、先程完成したクッキーを用意し、皆の前に配っていく。
アルマが作成したクッキーはこの宿にいる犬猫達だけでなく、さまざまなペットをモチーフとしていて種類が豊富だ。
「焼き菓子なら日持ちするからお土産にもよさそうだし?」
アルマの意見に宿の主や従業員達も採用を決める。
そしてアルマとエヴァンが作った料理やお菓子の試食が始まった。
「んー美味しい」
(こんな幸せでいいんだろうか)
テスは幸せそうに顔をほころばせる。
テスが口に運んだ蒸し野菜は、その野菜らしい甘さと香りが引き立ち、柔らかい食感とポン酢やドレッシングの味が良い調和を舌に残していく。
「ロイ、そっちの肉も1口頂戴」
テスは横で静かに蒸した肉を食していたロイからも、許可を得て一口分もらい、口へ運ぶ。
ぱくっ。
「んーいいね」
肉は脂が甘く、蒸したことで余分な脂がとれ、アルマやエヴァンの調理によって柔らかく、クセのない味に仕上がっている。
それはテスの傍らにいるレグルスも同じだったのか、目を細めつつすごい勢いで食している。
「レグ、それも美味しいかい?」
おねだりをしてきたレグルスを、テスは優しく撫でる。
そしてアルマやエヴァンも、他の冒険者や宿の従業員達と共に自分達の作った料理やお菓子を食している。
(試作品なんかを仲良く食べさせっことか出来たらいいなー)
などとアルマが内心思っていると、エヴァンより一口分の料理が差し出されてきた。
「エヴァくん、ありがとう。あーん」
口を開けて、アルマはエヴァンからの料理を受け入れ、はむはむと食す。
飲み込んだところで、お返しにアルマもエヴァンに向け「あーん」と差し出す。
エヴァンも口を開け、アルマと一緒にもぐもぐ。
「美味しいですねー」
食後のクッキーもこれまた絶品だった。
エヴァンは地元の特産が何か聞き、さらにこんな提案をする。
「お湯の硬度が柔らかいならコーヒーやお茶の味を引き出し、煮炊きに使っても美味しくなると聞きました。合わせて温泉定食や煮込み料理にしたら地元感が出ますね」
そうした冒険者達の提案や、作成した試作品の中で宿側が受け入れ、取り入れたものをもとに、奈月が宿から借りた紙にパンフレットやチラシの文章やラフを書き上げていく。
そして奈月は仮案として、書き上げたものを見せる。
「……で、できる限り……わかりやすく、簡潔に……描きました……です」
簡潔と奈月は口にするも、実際にできあがったのは、宿を利用する人たち向けの注意書きや、一目でその内容がわかるよう様々な工夫がなされている。
注意喚起は黄色の紙に黒文字。禁止事項は赤色の紙に黒文字――という感じで、奈月の手細工スキルがいい仕事をしていた。
「……は、恥ずかしいですが……少し下手ですが。……え、絵などもあると……より分かりやすいかも……しれません」
奈月はおずおずと内容を説明するが、宿の人達は真剣な表情で聞いている。
「……ご、誤字脱字……誤解釈は、き、気を付けてはいますが……。わ、私一人だと見逃すこともあると思うので……」
奈月は、そのあたりの確認作業は目の前にいる冒険者や宿の人達にお願いする旨をどうにか伝え、頭を下げる。
「御邑さんの案とも合わせ、この宿の宣伝をギルド経由で各都市へしてはいかがでしょうか?」
ロイは宿の主だけでなく、アルヒにもそんな提案を行っていた。
●後は
冒険者達の提案は実現可能なものが多く。宿の主や従業員達は冒険者達に深い感謝を示した。
「あ、あの……こ、この……お宿……お、お泊り……可能……で……でしょう……か」
ここで奈月がそれとなく宿に確認すると、宿からは「どうぞ。皆さんなら無料です」との答えが返ってきた。
ここから先は冒険者達の自由時間となる。
(そういえばロイさんが温泉施設を作るっていってたっけ。ちょうど『水着』も持ってきたことだしー……)
「エヴァくーん、水着あるし一緒に温泉入ろっかー?」
ここでアルマはエヴァンを温泉に誘うと、エヴァンも快諾して宿の従業員達に確認する。
「温泉施設を作る話もあったので水着持参しましたが……どの温泉なら入る事ができますか?」
そして入浴可能な温泉を聞き出したエヴァンは、アルマと共に温泉へと向かう。
エヴァンやアルマが向かったものと別の温泉では、既にロイとテスが入り、ルプス達の世話をしていた。
「ルプス。湯加減はどうだ?」
「ルプスは温泉すき?」
ルプスは目を閉じて気持ちよさそうにお湯につかり、ロイやテスの問いに答えない。
「これって……無視されてる?」
ロイとテスは顔を見合わせ、互いに笑みを見せる。
「こうしてるのが一番、癒される」
「是非また来たいね」
この後、ロイとテスも温泉を満喫した。
マスターコメント
今回は全員がそれぞれ出来る形でこの宿が実現可能な提案や、様々な試作品を数多く揃えてくださったことなどから、目標達成プラスアルファがあったとして、大成功と判定させて頂きました。
皆様のお力添えで、この宿は単なる温泉宿から、同伴するペットにも配慮し、様々な機能を備える施設へと進化することになるでしょう。
このたびはご参加下さりありがとうございました。
また機会がございましたらよろしくお願いいたします。
ショートシナリオR易しい 報酬:少ない5 / 4〜6人
2021年09月11日 10時41分27秒 公開
大成功
相談掲示板
ロイ・アウレアです。宜しくお願いします。 今浮かんでるのは温水(プール)で走り回る運動施設…かなぁ。 アイデアは出発まで練るね。 メインは宿の子達とルプスと楽しく過ごすのを第一にしようと思います。
テス・クラルスです。よろしくね。 私もペットとゆっくり楽しむのをメインにしようと思うよ。 観光施設としては、温熱を利用した地熱浴的な施設の提案を考えているよ。
エヴァンです。ヨロシク…お願いです。 利用法は、アルマと温泉を使った料理と動物クッキーを予定してます。 もうもうと湯気が出てるなら温度も申し分なさそうですので 入る湯と、料理に使う湯は分けれるように源泉からパイプで引かせて貰えたら嬉しいです。 後は動物たちと足湯したりモフモフと遊べたら良いですね。
アルマだよ、どーぞよろしくねー。 エヴァくんが出してくれたけど、お料理とかお菓子の食べ物関係メインでがんばる予定だよー 時間ができたら温泉に浸かったり動物さんたちとモフモフできたらいいなーと
…。(ぺこぺこ) み、御邑…な、奈月です…。よろしゅく…お願い、しまふ。 えと…。よ…呼び込み、の方で…。 パンフレットやチラシを・・・つ、作ってみようと…考えてます。
増えたね嬉しいよ、御邑さん宜しく! みんなで観光客を呼び込めるように考えような。
もうすぐ出発ー、御邑さんもどーぞよろしくねー。 プレイングも出したし温泉お宿が賑わうようになりますよーに。
よ、よろしゅく…おねがい、しまふ…。 (照れつつ、ぺこぺこ)