【呪剣】惨劇を知る者

小緑 一滴

コメント 7

シナリオID:1170

オープニング

●惑う会合
 呪剣を保管するドワーフ達は難しい顔でしきりにヒゲを撫でていた。
 冒険者の調査により、呪剣は邪竜と深い因縁があると判明した。呪いだけを払うには邪竜を討ちとらねばならない。
「はっ! こりゃあ丁度良いわい! 呪剣を振るい、邪竜めを斬り伏せてくれるわ!」
「お主、呪剣にとり憑かれでもしたのか? 勇敢と蛮勇をはき違えるな」
 豪胆に言い放つ者に村のドワーフの一人が冷ややかな意見をぶつける。
 冒険者ギルドに邪竜絡みの依頼が舞い込むこともあるが、基本的に人命救助や一時的な撃退を目的とするものが多い。邪竜の討伐は不可能でこそないものの、非常に難しい戦いとなるだろう。
「魔法の儀式などで呪いを消し去るのはできないだろう、という話だったな。邪竜殺しを断念するのであれば呪剣は冒険者に破壊してもらうしかないか……」
 優れた武器を失うのはドワーフとして忍びないが、呪剣のせいで命を落とす者が出てはならない。他に方法がないとなれば、破壊を依頼する決意はできている。
 しかし狂気に陥った職人授恵者の執念が込められた剣だ。奇怪な力で呪剣が反撃してくることも予想される。呪剣の破壊もそれなりに難しい。
 どちらの方針で冒険者に依頼を出すかドワーフ達の間でも意見が割れている。
「重大な決断だ。テーオ殿に会い、意見や情報を得てはどうだ?」
 テーオは呪剣の製作者アギの弟で、今はヌンガルという街に住んでいる。邪竜の襲撃から生き延び、アギのことをよく知るテーオから重要な話が聞けるはずだ。

●諦念の日々
 テーオがヌンガルにやってきて二十年ほど。
 どれだけ月日がたってもあの時感じた恐怖は消えない。残酷な邪竜への。そして狂気にかられた兄への。
 かつて戦士として剣を振るっていたこともあったが、もはやそんな力は残っていない。戦う者としての自信は邪竜によって粉々に打ち砕かれてしまった。
 あの邪竜がもたらした惨劇は今でも悪夢に見る。自分が生き残ったのは単なる偶然だ。
 テーオはふと考え込む。その偶然は果たして幸運だったのか不運なのか。
 右腕に痛みが走る。骨の奥から響くような鈍い痛みだ。日常生活で物を持つことに支障はないが、仮にこの腕で剣を持ったとしても戦場では通用しないだろう。
 ヌンガルでは酒屋の店員の仕事にありついたものの、精彩を欠いた灰色の日々が続く。
 一日の仕事を終えて片付いていない部屋へと帰る。
 ごちゃごちゃの家の中で壁に掛けられた革帯が一瞬視界に入った。亡き兄から贈られた革帯を直視する気になれず、テーオは力なく顔をそむけた。
 こんな日々に終わりが来れば良い。

解説

目的  テーオから呪剣や邪竜の情報を得る(依頼内容)  呪剣破壊か邪竜討伐か、今後の方針を依頼者ドワーフ達に提案する(任意) 情報  「●惑う会合」の内容は冒険者ギルドを通じてPC達も知ることが可能  「●諦念の日々」の内容をPC達は知らない 場所 ヌンガル  ドワーフ王国内の街  邪竜の襲撃を生き延びたテーオが移住している   モルド(廃墟)  今回は訪れることはできない  かつてテーオ達が暮らしていたが、邪竜の襲撃によって滅ぼされた街  冒険者達の調査で以下の情報が判明した ・商店や工房の多いエリアは破壊の被害が少ない ・貴金属を扱う店の品物や広場の黄金像などが何者かに持ち去られていた 依頼人の村  ヌンガル出発前、希望すれば数時間ほど行動可能  呪剣を調べることもできる。呪剣を構える際は【アンチ・サイ】の用意が必須  前回の調査で冒険者が以下のアイテムを獲得した。依頼のためなら持ち出せる ・アギの手記。平和な生活、恋人の死、呪剣作り、単独で邪竜に挑むまでが記されている ・アギのアクセサリー。どれも壊れている 人物 テーオ・フロギメン  アギの弟  狂気に陥ったアギを止められなかったことをミレイアに謝罪する手紙を残している アギ・フロギメン(故人)  テーオの兄  呪剣の制作者。本来は評判の良い宝飾職人だったが、邪竜に恋人を殺された恨みと狂気から呪いの剣を作り上げた  完成した剣で単身で邪竜に挑み死亡。戦いの中で、邪竜の掌サイズの鱗を剥がしたようだ ミレイア(故人)  アギの恋人。テーオにとっても親しい幼馴染。三角関係などのいざこざはない  居住区にいたところ崩落によって死亡。 邪竜に個人的に狙われたわけではなさそうだ 邪竜  モルドを滅ぼした個体  現時点では詳細不明

マスターより

【呪剣】シリーズの三話です。テーオから話を聞くことがメインです。 ヌンガル訪問の前に、依頼人の村でアイテムを借りたり短時間の調査ができます。 呪剣を調べることもできます。観察や鞘に納めて触れる分には無害です。剣を構える際は【アンチ・サイ】のご用意を。呪剣をヌンガルに持っていくことはできません。 任意目的の方針の提案は多数決ではありません。 各プレイングの内容が依頼人の決断に影響を与えます。

リプレイ

「アギの手記とアクセサリーを持っていきたいんだ。テーオからアギの話を聞き出す助けになってくれるはずだよっ!」
 サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは自信を感じさせる笑顔で村のドワーフ達に向き合う。明るく朗らかではあるが、この場の話の主導権を握っているのは他の誰でもなくサフィラだ。依頼人達がその頼みを断る理由はない。
「ありがとっ!」
 受け取った手記とアクセサリーの重みや手触りで、アギの無念がありありと想起される。
(にゃ……呪剣を壊す手段は、あたしが見つけてあげなきゃ……!)
 どこか思い詰めた表情の仲間に、ララベル・サン・ディーベルが優しく声をかけた。
「傷ついたりしないよう大事に持っていこう。バックパックがあるから、そこにしまっておくね」
 ララベルが分かち合いたいのは荷物だけではない。辛く悲しい想いもだ。

 村の洞窟倉庫にアリア・ティーダとコハクの姿があった。以前は長らくほったらかしにされていた倉庫らしいが、今は番人が付けられている。
「呪剣と呼ばれる何かがここにあるんだね。アリアはもう実物を見てるの?」
「いいや。前回の依頼は請けたけど呪剣を調べる機会はなかったんだ。ボクも初めて見るよ」
 呪いの剣は鍵付きの箱に入れられた上に厳重に鎖で巻かれていた。
「コハクもアンチ・サイは用意してるけど、万が一の時はよろしく。アリア」
「ボクに任せて。何が起きても守ってみせるよ」
 笑顔で飄々と言ってのけるアリアだが、実際に異常事態に対処する術をいくつも用意している。頼もしいヒーラーだ。
 鍵を持つ番人が箱の鎖を外す音。続いて鍵が開く音。静かな洞窟にやけに大きく反響した。番人のドワーフは後は任せたという視線を二人に送り壁際に下がる。
 アリアが見守る中、木箱の蓋がゆっくりとコハクの手でどかされていく。
 曰く付きの大剣を前にした齢十五の華奢な少女(コハク)は怯えもせずに、その双眸に刃の鈍い輝きを映す。
 装飾のない武骨な剣。邪竜の鱗穿ち肉抉ることだけをひたすらに夢見た形。これを元宝飾職人が作ったとは誰も思わないだろう。
 まずは指先で触れてみる。不思議な現象はない。
 両手で持っても別に普通だ。
 異変は、コハクが剣を構えた際に起きた。かの邪竜を見つけて斬り殺したい。そんな衝動が流れ込む。
 が、コハクはそれに飲まれることはない。その衝動はあくまで物言わぬ剣の悲痛な叫びだと理解している。
 その手で呪剣を握り虚空を一閃。剣に操られたのではなくコハクの意志で。
(……業物だね)
 ドワーフ達が破壊を惜しむ気持ちがコハクにもよくわかった。
 剣を下して、感じ取った内容を仲間へと告げる。
「呪剣は作り主の怨念を晴らすことを切望しているよ。敵討ちに挑んだアギを死なせてしまったことが悔しくてたまらないって」
 自分の力が邪竜に及ばなかったゆえに、と。
「あとは剣を構えることが精神感応のトリガーになってるみたいだよ。邪竜討伐の衝動に駆り立ててくる」
 触れたり持っただけでは干渉しない。まるで戦う者だけを選別するかのようだ。
「もしかして呪剣は復讐を果たす協力者がほしいのかな?」
 呪剣の存続や活用方法に思考を巡らせていたアリアだからこそ、真意に気づく。
「だとすればボク達冒険者が協力することで、呪剣の力を良い方に導けるかもね。呪いとはいえ元は純粋な想いだったんでしょう?」
 邪竜と戦うにあたり、この呪剣は強力な味方となるかもしれない。そんな希望をアリアは見出す。
「過去の思いを借りてボクら冒険者が諸々晴らす。この激動の時代にね。そういうのもまぁ、アリなんじゃない?」
 遊び心を乗せた語り口に、コハクは深い覚悟を秘めた眼差しで頷き返す。
 コハクとアリア。二人でつかんだ道筋だった。

●
 地下都市同士を繋ぐ乗合馬車に揺られ、ヌンガルの街へと到着した。
「にゃにゃ! すみませーん! この街で探しているお家があって」
 サフィラが住人を引き留める。エルフとドワーフの仲は良いとは言えないが、明るい笑顔と爽やかで巧みな話しぶりに毒気を抜かれたのか、住人は穏やかに協力してくれた。
 テーオの家は居住区の奥まった位置にある。
 質素なドアをノックしアリアが訪問の目的を告げる。
「失礼。ボクはアリア。ギルド登録された冒険者だよ。調査にご協力願えるかな?」
 表情筋が職務放棄しているコハクの顔にどこか緊張感が漂う。普段はあまり請けない調査依頼だ。複数ある狼尻尾の動きも今日はぎこちない。
 家の住人が出てくる気配を感じながら、ララベルが仲間にこっそりつぶやいた。
「手土産にドワーフの人が好きなもの……蒸留酒とか持参すれば良かったかなぁ」
 少女と見紛う可憐な唇に指を当て小首を傾げる。
「どうも、テーオ・フロギメンだ。調査というのは?」
 ドアから顔を出したのは覇気のないドワーフ。活気のない目が冒険者達を見つめる。
「別の村のドワーフが奇妙な剣を見つけてね。その剣への対応を決めるため、ボク達に調査依頼が出されたんだよ」
 アリアの背中からコハクがひょこっと顔を出す。
「アギの作った剣だよ」
「辛い過去の話を聞く事になってしまうのは申し訳ないと思うんだけど、調査に協力してもらえたら……。お願いします」
 心苦しいが依頼のためには情報を引き出さねばならない。ララベルは純真な胸を痛めながら丁寧に頼み込む。
 返答は――。
「ああ。断るわけにはいかないだろう」

 自己紹介を済ませ一同が家に上がる。だが、そこでは恐ろしいものが待ち受けていた。
「それじゃ、おじゃましまー……って、ふにゃーっ!?」
 サフィラの可愛らしい悲鳴が響く。ドアの向こうに広がっていたのは身の毛もよだつぐちゃぐちゃの汚部屋。
「もうっ! これは話聞く前にお片付けだねっ!」
 あっけにとられる家主。テキパキと整理整頓していくサフィラとその成果をしばし眺めると、自分も手を動かし始めた。
「悪いな。元の不精に加えて家に呼ぶ友人を作る気力も失せていた」
 テーオの虚しさに言葉が詰まりそうになる。だが自分がしんみりしているわけにはいかない。努めて明るく話を振った。
「ねぇ! アギ達の思い出を聞かせて」
「そうだな。授恵者である兄の戦いを見たことがある。光の檻に弓を使うコボルトだかを閉じ込めていた。自分もその中に入り敵をボコボコに……」
 本来は周囲に被害を出さないための戦法なのだろう。
 熱心に片づけをしていたサフィラの手が止まる。
(狂気に陥ったアギなら、憎い敵を閉じ込めて無茶な攻撃を仕掛けるのに使いそうな気がするよ……)
 悲し気な顔はすぐに引っ込め、なんでもない風を装った。

「ふぃーっ! こんなとこかなっ?」
 話をするスペースが確保できたところで、まずコハクが調査依頼が出されるに至った事の流れをテーオへと説明する。
「そんなことが……」
 アギの死後、呪剣がどうなったのか彼は知らない。
「村のドワーフ達はその剣をどうすべきか決めかねてるんです。呪剣そのものを壊すか、邪竜を倒せないかって」
 ララベルが手記とアクセサリーを取り出し、テーオの前に差し出した。真摯な気持ちで目的を告げる。凛とした美しさがそこにあった。
「僕はあの剣を作った人がどんな人だったのか知りたい、そして、籠もった念を取り除く手段があるなら晴らしたいと思うんだ」
「あたしは、呪剣をどうにかしたい。アギの魂が穏やかな安息を迎えられるように、って。そのためにここに来たよ」
 恋人の命を理不尽に奪われたら――。サフィラの青い瞳がほのかに潤む。涙までは零さない。毅然とテーオの顔を見据える。
「呪剣はアギの悲しみの象徴だって思ってる。これを壊さない限り無念は残り続けるし、アギの魂がマトリクス界に渡れないかもしれない……。だから……アギを呪剣から解放してあげよう? 協力が必要なら、力の限り手を貸すから!」
「直接的な解決方法は俺にもわからない。ただ、冒険者に頼みたいことならある」
 もし邪竜を討つならその死に顔を目に焼き付けたい。戦力にはならないが後方で待機できないか。テーオはそう望んだ。
「そんなっ危険だよっ! この場では約束できないよ……」
 驚いた後にサフィラはしゅんと項垂れる。
 もっともテーオはアギほど無謀な復讐心を滾らせてはいない。邪竜討伐が困難な場合は、悲劇を広げないために呪剣を壊すことにも理解を示す。
「兄は創造の神『クリエト』を信仰していた。『クリエト』の眷属である女神の神域があるシグモルに赴いて、使い終えた金属製の道具に祈りを捧げて大地に送り返していたな」
「シグモルにある女神の神域だね。呪剣を壊す手掛かりになるかもっ!」

 ララベルは当たり障りのない話題から始め、じょじょに手記の内容の確認をとり、補足事項があれば話してもらう手法をとった。
「思い出話か。用事で兄と地上に出かけた時のことだ。ドワーフ王国では見せられないものを見せると言って、祈りはじめた」
 すると霧が立ち込め落雷が起きたではないか。アギとテーオは無傷だった。
「空の下でなければ使えない技らしい」
 手記の邪竜のページに差し掛かるとテーオは短くこう付け足す。
「あの邪竜は……残忍で卑劣な奴だった」
 静かな声で言葉少なく。襲撃関係の出来事を語る際、その口は重くなるようだ。
「アクセサリーも見てもらえませんか? 何かわかるかもしれない」
 元戦士なので素人目の鑑定になるがと前置きした上で、テーオは丹念にアクセサリーを調べた。
「そこに有る物無い物が何かの手掛かりになってはいませんか?」
「不審なものが付け足されたり、壊れた箇所に規則性がある、といったことはなさそうだ。兄が修理するつもりだった品だろう。……壊れていたので奴も奪わなかったんだな」
 モルドから貴金属を根こそぎ持ち去った者に、テーオは心当たりがあるようだった。
「そうだ、もしなんだけど、何かお兄さんから受け取った物があったら見せて貰えないですか?」
「これを」
 アギから贈られたという革帯を手渡された。
 ララベルの瞳が妖しく神秘的な輝きを帯びる。エーテルの作用により今のララベルは透視の力を持つ。注意深く探したが、特に目を引くものは見つからない。
「もし邪竜討伐が決行されれば、この革帯を身に着けていきたいものだな」
 革帯には弟への想いが託されていたのだろう。

「アギの作品の作りや癖があれば教えてほしいな」
 そこから呪いの制御や転化の案が浮かぶことを期待して、アリアが尋ねる。
「オーダーメイドの作品では、兄は使う相手のことをよく考えていた」
 注文した人にとって最適なアクセサリーを目指すので、他の人が身に着けてもいまいちなのだとか。
 それならば邪竜を恨んで作ったあの剣は。
「呪剣はとにかく邪竜を屠ることだけに特化していそうだね」
 呪剣自体に戦闘能力が宿っているとしたら、それは恐らく対邪竜を想定したものに間違いない。格上の単体の敵に執念深く喰らいつく能力だ。対人向きの技が充実しているということはないと見て良い。
(これを報告したら依頼人達は呪剣破壊に意見が傾くかな)
 邪竜を倒すより呪剣を壊す方が現実的なルートだ。
 できれば壊したくはない。そう思うアリアは、周りにはわからぬほどかすかに眉をしかめた。
 だが得られた情報は有意義なものである。依頼人達の参考になるだろう。
「テーオ君、話してくれてありがとう」
 心情を逆なでするのではと危惧していたが、テーオに大きな感情の乱れはなさそうだ。
(それでも襲撃絡みの惨事を掘り起こすとなれば、まったく動じないってわけにもいかないよね……)
 見えない位置できゅっと片手を握り込んだ。

「コハクも話が聞きたい」
 調査依頼よりも武器を振っている方が性に合っている。そう思いながらもコハクはこの仕事を請けた。呪剣と呼ばれる代物への興味はもちろん、喪失の憎悪と狂気で満たされた者を知りたかった。
 何故ならそれは、あり得たかもしれないコハクの姿だからだ。憎しみで完全に心を支配された、もう一人の自分とも呼ぶべき存在。
 もしも運命の歯車が少し違えば、コハク自身もアギのように狂気的な憎悪だけに突き動かされていたのだろうか。
「呪剣で……。ううん、アギが全身全霊で作り上げたあの剣で邪竜を屠る。それがアギの本懐だと思う」
 コハクにはわかる。
 かつて、自分もそうだったから。
 死んだ程度でその怨念は晴れないのだ。
「邪竜を倒す覚悟なら、あるよ。そのために何か必要なことを話してほしい」
「必要なことか」
 低く唸りながらテーオは思案顔でヒゲをつかんだ。
「邪竜を倒すには知恵と強さ、仲間同士の協力が不可欠だろうな」
 深く考え込んだわりに、もどかしさを感じる答え。
「本当にすまない。協力したいのだが、邪竜や襲撃のことを自分から話すとなると考えが上手くまとまらない。明確な質問に答える分には問題ないと思うのだが」
 辛い出来事の中から冒険者達が必要とする情報を自分で推察し提供するとなると、心理的なハードルは高い。
 テーオ本人に話を任せるよりも、冒険者が具体的な質問を投げかけた方が多くの情報を得られただろう。

 帰りの馬車の停留所までテーオは見送りにきた。
「調査依頼のご協力に感謝するよ」
 アリアが労う。エルフでありながら重鎧を身にまとう彼女の姿は、街のドワーフの目を引いた。興味や関心の視線をちらほらと感じる。
「にゃっ! あたし達が帰ってもキレイなお部屋は維持してねっ! 約束だよ!」
 腰に手を当てサフィラが散らかし屋に釘をさす。どことなく弟にお説教する良きお姉さんのようでもある。
「君達が持ってきてくれたアクセサリーは、俺が直してみたい。少しずつ細工の技術を身に着けながらになるだろうが……」
「ふふっ。なんだか最初と雰囲気が変わりましたね。持ってきて良かったなぁ」
 ララベルがふわりと微笑む。最初は抜け殻のような有様だったのに、今は瞳に生気の輝きが宿っている。
「死した者へ安らかな眠りを贈りたい。コハクのその想いは、変わらないよ」
 琥珀の瞳が静かに瞬き、金色の髪が儚く揺れる。
「ああ。兄の無念を晴らすために動いてくれた人達がいる。それだけでも俺の気持ちは救われたよ」

●
 冒険者達からの報告を受け、ドワーフ達は頷き合う。
「かの邪竜を討ちに出るには情報が足りぬ」
 その能力、襲撃ではどのように行動したのか、何故モルドを滅ぼしたのか、罠や誘引に使えそうなもの。その多くが謎のままだ。この状態で邪竜討伐の依頼を出そうと主張するドワーフはいなかった。
 呪剣との共闘の可能性をつかんだ冒険者もいただけに、呪剣破壊を決断するのはドワーフ達にも苦渋の選択だった。
「シグモルの女神の神域か……」
 呪剣を大地に送り返すことができれば――。

 冒険者達の来訪はテーオの諦念の日々を終わらせた。
 彼の心の呪いは解かれたのだ。

マスターコメント

調査お疲れ様でした。 呪剣の真意が判明した上で破壊が決定という結果は、人によっては苦く切ない気持ちになるかもしれません。 PC様の善意や覚悟はNPCもMSも好意的に受け止めています。 このシリーズの最後となる呪剣破壊の依頼は最後に救いが残る雰囲気になるように、と考えております。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準4 / 4〜10人

2021年07月29日 13時05分33秒 公開

成功

相談掲示板

  1. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    シーフのサフィラだよー… 人来ないねぇ…誰か来るまでごろごろしてよ _( _´ω`)_

  2. コハク

    颯爽登場っ

  3. ララベル・サン・ディーベル

    僕は、シーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、よろしくね! 誰か来てくれるといいよね…。

  4. アリア・ティーダ

    ヒーラーのアリア。 今回もよろしくお願いいたします、だね。

  5. コハク

    人数が集まったので。 調査系の依頼は初心者に近いシーフコハク、どうぞよろしく…といっても三人共知り合いだから自己紹介は不要かな。 今回の依頼に関しては前回前々回共に不参加の為あまり過程を理解していないのが申し訳ない。 取りあえず主要人物からの情報の聞きだし及びそれを踏まえてドワーフ達への提案がまぁメインになるようだけど…口上手い人とか自信ある人居れば。 コハクは【話術】【交渉】【看破】なら1Lvで持ってるし、アンチ・サイもあるから【鍛冶】スキルから呪剣持って何か気付けたらいいな位に思ってる。 アギの荷物にサイコメトリー使う事も出来るけど…経過時間的に何も出なさそうだから期待しないで。

  6. アリア・ティーダ

    どうしようかなぁ…聞き込みとか心情は苦手だけど、放っておくのも悪くてつい…。 コハク氏がほとんどやってくださるみたいだしあと2日でどうしよ…

  7. コハク

    とりま明日の12時までだしコハクはコハクでやれる事やるようにするよ

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0