砂浜に迫るクラーケン

七海真砂

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シナリオID:1145

オープニング

 きらきら輝く太陽、青い空、そして白い砂浜。
 夏を迎えた浜辺は、海を楽しもうとする人々で賑わっていた。そんな彼らの上を白い鳥が飛んでいく――と。
 突然、海の一角が大きく波打った。
「きゃあああっ!」
「助けてくれぇ……!」
 にゅる、にゅるにゅるにゅる。
 その周辺にいた人々が、伸びてくる何かに捕まってしまう。悲鳴を上げる人々に迫るのはイカに似た姿を持つ魔獣――クラーケンと呼ばれる魔獣達だ。クラーケンは触手を伸ばすと人々を絡め捕り、あるいは叩き潰すようにして攻撃し、そして彼らを口元へ運ぶ。

 ……がぶり。もぐもぐ、ごっくん……。

 それを見た人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。クラーケンはそんな騒ぎを気にした様子もなく、また新たな獲物を捕らえるべく足を伸ばした。

●砂浜に迫るクラーケン
「リブラネスタから1日ほど南に行くと砂浜があるのじゃが、そこにクラーケンという、イカのような姿をした魔獣が現れることがわかったのじゃ」
 踊る子熊亭にやってきた、預言の魔女オペラは、そう冒険者達に向かって口を開いた。
「クラーケンは腹を空かせているようで、そこにいる人々を襲い、喰らおうとしてくるのじゃ……。今から行けば、まだ間に合う。クラーケンから人々を守って欲しいのじゃ」
 オペラによると、クラーケンは全部で2体。頭が5メートルほどの大きさで、それと同じくらいの長さの手足が生えている。クラーケンはこの手足を伸ばして攻撃して来るようだ。また、離れた相手に墨を飛ばして、その視界を遮りながら攻撃して来ることもあるという。
「クラーケンは海から現れるのじゃ。陸上は苦手なようで、あまり積極的に海から出てこようとはしないようじゃな。なのでおぬしらには、海に入りながらクラーケンが来るのを待ち受けて、迎え撃って欲しいのじゃ」
 今から行けば、クラーケンが現れる当日の朝から砂浜に張り込むことができる。この砂浜はちょっとしたリゾートビーチのようになっていて、遊ぼうとする人々が集まってくるので、彼らへの対処も必要となるだろう。クラーケンがやって来るのは、ちょうど昼頃だという。
「せっかく行くのじゃ、クラーケンを上手く退治出来たら夕方までビーチを満喫してから帰って来てもいいかもしれないのじゃ……しかし、それはあくまでも、確実にきっちりとクラーケンを倒してからの話じゃ。ここに集まる人々を守れるよう、どうかよろしく頼むのじゃ」

解説

 砂浜にクラーケンがやって来ることがわかりました。  人々を、クラーケンから救ってください。  砂浜には朝一番で到着できます。オペラの予知によると賑わいはそこそこ、昼までの間に結構な人が集まって来るようです。彼らへの対処の仕方も重要でしょう。

マスターより

 こんにちは、七海真砂です。  今回のシナリオは、砂浜にやってくる人々をクラーケンから守ることが目的です。クラーケンを倒すことではありませんので、この違いには少しだけ気を付けてください。  それでは、ご参加をお待ちしています。

リプレイ

「あら、何かしら……?」
 海水浴に行こうと歩いていた人々は、ふと行く手を遮っている四人組に気付いて首を傾げた。四人組の中の一人――セリオス・オーガストも彼らに気付くと、説明を始める。
「危険な魔獣が砂浜に出現している。討伐が終わるまで行くのを避けて欲しい」
「えーっ、楽しみにしてたのに……」
「でも魔獣はちょっと……怖いよね」
 顔を見合わせた一行は残念そうにしながらも引き返していく。素直に聞き入れてくれる人達で良かったと安堵しながら、傍らで体を起こしたのはエヴァン・ピオネロ。その手には、書き上げたばかりの看板がある。
『魔獣が出ました。倒すまで侵入・遊泳は禁止です』
 文字が読めない人にも危険が伝わるよう、目を吊り上げて凶悪そうな顔をしたサメの絵も書き添えてある。
(オペラさんの話はとても当たりますが、それを皆さんがどれだけ知っているかは分かりませんからね)
 知っている人もいるかもしれないが、知らない人も多いだろう。こういう形で呼びかけた方が解りやすいのではないかと、そうエヴァンは考えたのだった。
 同じ看板は何枚も量産されており、完成したそれらを、エリック・ハルトマンとルーカ・ルンガルディエールが抱え上げる。
「じゃ、設置してくるよ」
「よろしくお願いします」
 その間にエヴァンは持ってきたロープを出して、セリオスと一緒にこの道の封鎖を行っていく。
 しかし、封鎖といっても砂浜まで近付くルートはたくさんある。
「入り込んでいる人がいますね」
 どこからか砂浜へやって来たらしいグループがいることに気付いたエリックとルーカは、彼らの避難誘導へ向かう。
「ええぇ?」
「でも何もいないじゃないっすか」
 だが、今実際にクラーケンが目の前にいる訳では無いからか、渋る様子を見せるグループ。と、
「!?」
 突如、光のような物が海に突き刺さり、何かが炸裂するような音と共に水飛沫が舞った。
「いけません! 危険ですから、すぐに逃げてください!」
「ひゃあ!」
 ルーカの呼びかけに慌てて逃げ出すグループを、エリックが砂浜から遠ざかるように案内していく。
 ……これは、ルーカが放った攻撃によるもので、まだクラーケンが現れた訳では無かったのだが、驚いた彼らには十分な効果があったようだ。
 そうして看板を設置しながら巡回し、近付いてきた人々を遠ざけては安全確保に努める四人。その甲斐あって、いつもは賑わっているであろう砂浜は、ひっそり静まり返っていた。

 クラーケンが出現するとオペラが言っていた昼頃に差し掛かると、セリオスはいつでもすぐに対応できるよう、波打ち際へと移動した。超視力を用いて海を監視する一方、エリックが砂浜側を警戒して、新たに入り込んできた人の姿を発見すると、すぐさま対処に向かう。
 そして――。
「来たようだ」
「魔獣です、海から離れて下さい!」
 セリオスがその接近に気付くと、すぐさまエヴァンがサウンドボマーで呼びかけた。ルーカが走らせた探知用のエーテルにかかる気配は、エリックが応対中だった三人組のものだけ。
「大丈夫だよ、落ち着いて向こうへ行こう」
 エリックはすぐに、彼らをクラーケンから遠ざけるように誘導していく。ルーカはそのまま辺りを確認するが、物陰などにも人の姿はない。どうやら逃げ遅れた人などはいないようだ。
 その間にセリオスはクラーケンとの距離を詰めていくと、目にもとまらぬ速さで矢を連射し、右手側にいたクラーケンに先制攻撃を仕掛ける。
「塞ぎます!」
 左手側にいたクラーケンの進路を塞ぐように、エヴァンは魔法の鉄壁を作り上げた。ほぼ横並びに移動してきたクラーケン達は壁を避けるように動いて、前後に並ぶ。
(まずは、このクラーケンからだな)
 それを見たセリオスは、前に立つクラーケンに攻撃を集中させるべく弓を構え、矢にエーテルを注ぎ込むと一気に解き放つ。
「グギャッ!」
 衝撃に悲鳴を漏らすクラーケンだったが、すぐに体勢を立て直して墨を飛ばして反撃してくる。顔に浴びたそれをセリオスが拭う中、エヴァンは無数の光弾を作り上げると、それを一気にクラーケン達の方へと降り注がせた。
「まずは手前の敵から倒していこう」
「わかりました」
 新たな矢でクラーケンを鋭く射抜きながらのセリオスの言葉に頷き、エヴァンは天地のエーテルをかき集めて高めた魔法力を収束させ、それを爆風と化して一気に解き放つ。巻き込まれたクラーケンはもがくように手足を伸ばし、エヴァンを強打しようとするが、
「させないっ!」
 それを防いだのは、人々の避難を終えて合流したエリックだった。その鎧はルーカの堅甲によって淡く光り強化されており、身を挺して庇った彼の体が負う傷を和らげる。
 その後ろから飛来したのはルーカの魔矢だ。光の矢が突き刺さったそこへ、更にセリオスの矢が射られ、クラーケンの体には次々と穴が開く。
 しかしクラーケンの方も黙ってはいない。次々と墨が発射されるが、それを掻い潜ってエリックは破脚砕を叩き込んだ。
(しぶとい――だが!)
 更なる豪風に巻き込まれたクラーケンに生じた一瞬の隙を突き、セリオスの狙い澄ました一撃がクラーケンの急所を貫く。まずは一体目……力尽きたクラーケンが崩れ落ちていく様子を、エヴァンは観察する。
(クラーケンが共食いした報告書がありました。もしかしたら……)
 同じように共食いを始めるかもしれないと注目するエヴァンだったが、残る一体のクラーケンは倒れたクラーケンをそのまま乗り越えてこちらへと向かってくる。クラーケンが腹を空かせているという情報はあったが、戦闘中に敵に背を向けてまで食事を始めようという考えには、ならなかったのかもしれない。
 そうであれば、一体目と同じように倒すまでだ。
「ルーカは傷付けさせない!」
 瞬間的に加速したエリックがクラーケンの触手を受け止める中、エヴァンの収縮したエーテルが爆ぜる。砂塵が散るよりも早く、続くのはセリオスの矢。その間にエリックの側に寄ったルーカは、彼の傷を癒す。
「ありがとうございます、けど無茶はしないでくださいね」
「うん、ありがとう」
 このくらい大したことないよと笑って、エリックは構えた大剣にエーテルを纏わせて一気にクラーケンへ叩きつけた。クラーケンの反撃は苛烈なものだが、それをエヴァンとルーカが癒しながら、冒険者達は戦い続ける。
 戦いは長引いた。だが、最終的には、この回復の手が勝敗を決したと言えるだろう。傷を癒す手段を持たないクラーケンの傷はじわじわと徐々に深まり、その体がじきにフラつき始める。
「次で、決めます!」
 魔法力を高めながらエヴァンが巻き起こした豪風に、クラーケンが大きく態勢を崩したそこへ素早くエリックが詰めると、クラーケンの身を叩き斬る。それが致命傷となり、二体目のクラーケンもまた海中に倒れた。

「もう大丈夫ですよ、安心して遊んでください」
 ロープの回収に向かったエヴァンは、おそるおそる様子を伺っていた人々に、そうにっこりと笑いかけた。
 クラーケンは、もういない。みんなの楽しい浜遊びを邪魔するものは、もういないのだ。
「もう、大丈夫なのね、よかった」
「ああよかった。じゃあ遊ぼうぜ」
 看板を回収している間にも、そう浜辺に向かっていく人々の姿は絶えなくて。こんなにたくさんの人が遊びたがっている海岸の平和を取り戻せて良かったと、心からそうエヴァンは思う。
「こちらも回収完了です」
 封鎖に使った品を全部片付け終わると、冒険者達はようやく一息ついた。と、セリオスが一軒の小屋を見る。
「店の連中も戻って来たらしいな」
 海水浴客に海産物を調理して売る小屋だ。早速開店の準備をしているのか、なんとも香ばしくて美味しそうな匂いが漂ってくる。
「……せっかくだし、何か食べていくか」
「そうですね、喉も乾きましたし」
 遅い昼食にもちょうどいいだろう。頷いたルーカがエリックを見やれば「そうだね」と彼も笑みを覗かせる。
「塩焼き、潮煮……い、いか焼き……」
 品揃えを覗き込んだエヴァンが、じゅうじゅうと焼かれているイカ焼きを見つけ、思わず皆を振り返る。
 もちろん、ついさっき倒したクラーケンそのものを食べる訳では無いのだが、だがしかし――。思わず顔を見合わせた四人は、何とも言えない顔で沈黙すると、やがて誰からともなく吹き出してしまう。
 そうこうしながら、思い思いの品を買い求めると、四人は、ささやかな祝杯をあげるのだった。

マスターコメント

 クラーケンは無事に撃退され、浜辺の平和は守られました。  皆さんの尽力のおかげです、ありがとうございました!
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準4 / 4〜6人

2021年07月17日 09時35分53秒 公開

成功

相談掲示板

  1. セリオス・オーガスト

    ん、シューターのセリオスだよろしく頼む 出発まであと一人くればいいのだが。 とりあえず浜辺で待機してクラーケンを迎撃というぐらいか、今回は

  2. エリック・ルンガルディエール

    エリック・ハルトマンだ。 確かにあと1人いないことには始まらないね…

  3. エヴァン・ピオネロ

    キャスターのエヴァン・ピオネロです。宜しくお願いします。 ぼくは先ず避難誘導をメインに動いて 皆さんが安全圏に移動してから戦闘に参加しようと思います。

  4. ルーカ・ルンガルディエール

    これで出発出来ますね 急ぎですが相談頑張りましょう 避難誘導おまかせできるなら私はとりあえずクラーケン足止めで動きます

  5. エヴァン・ピオネロ

    一般人の方々に、危険だから離れる様にと促しますが 直ぐには聞いて貰えないと思うので……現れてからが勝負でしょうか? クラーケンが海から出ない前提なら、触手が届かない距離に離れて貰えばセーフなので 授恵者の皆さんが抑えてくれる間にスムーズに逃げるようにサウンドボマーで呼び掛けますね。 その後は、人に触手を伸ばすのは豪風で離したりアイアンウォールで止めたりで 避難完了したら、遠慮せず魔法を打ち込みます。

  6. エヴァン・ピオネロ

    あまり相談する間が無いので、一方的ですが行動予定を書きますね。 朝早くから現地入り出来るって事なので 薄暗いうちに海岸への道を全て塞ぎ、立て看板を置こうと思います。 『魔獣が出たので倒すまで遊泳禁止』字が読めない人の為に 大きな口を開けたサメを描こうと思います(イカを描いても怖さが伝わらないと思うので…) 1人ですと塞げる道の数が知れてると思うので、お手伝いできる方が居たらお願いしたいです。 一般の方が素直に従ってくれるなら、初めから討伐に参加できますし 難しかったら初めに話したように避難誘導から開始しますね。 他の手や作戦も乗りますので23時位までに教えて貰えると嬉しいです。

  7. エリック・ルンガルディエール

    とりあえず皆の意見を見る感じ避難誘導しつつその後みんなで足止めする感じでいいのかな?

  8. エリック・ルンガルディエール

    とりあえず僕は一般人の避難優先で行動するよ

  9. エヴァン・ピオネロ

    足止めと誘導に分かれて動いて 避難完了したらみんなで足止め(討伐)に動く認識でいます。 避難誘導がんばりましょうね。

  10. セリオス・オーガスト

    ん、では俺は足止めで行くとするか あとは万が一避難勧告を無視してきたやつに対して威圧感で威圧しておくか

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0