いつか辿り着く約束の日へ ―第6話―
広大野人
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シナリオID:1113
オープニング
王国騎士イェルド・ルリンは部隊を率いて砦からヴォーンの街に移動していた。
ここで暫く休憩を取ってから王都へ帰還する予定である。増援の兵士達も一緒なので、領主に頼み、比較的大きな屋敷を宿として借りている。
「……隊長、やっぱり、砦にやってきた冒険者は5人だったと思うんですけど」
兵士のコルサが首を傾げる。
記憶を何度辿っても、地下階に入っていく冒険者の数と、出て来た冒険者達の数が合わないのだ。
「もうよせ、その話は……冒険者は6人だった。もともと、依頼でもそうなっているだろう」
「地下階で何があったか、教えて下さいよ! 隊長だけずるいっす!」
探索を終えた冒険者達から話を聞いたのは、イェルドだけだ。
信じ難い話だったが、目の前に現れた剣士が現実に存在する以上、認めない訳にはいかない。
問題は、その剣士の処遇だった。上司に報告すれば間違いなく王都へ連行する事になるだろう。しかし、剣士は記憶喪失だ。おまけに過去、この地方を救った英雄かもしれない。
「まぁ、色々と考えての事だ。そのうち話す」
イェルドは剣士の存在を黙認する事にした。
暫くすれば記憶を取り戻す可能性もあるし、何より懸案事項がある。そして、それは軽々しく口に出す事はできない。勿論、本人にもだ。
本来なら、懸案事項の確認は砦で行うべき事ではあるが……砦からの撤収が決まっている以上、こうするしかなかった。
「分かったっすよ。で、隊長、休憩は二交代ではなく準戦闘態勢で良いんですね?」
「あぁ。休み中の飲酒も許すが、泥酔するような事をした馬鹿は始末書だからな」
「了解っす!」
ビシっと敬礼してコルサは部屋から出ていった。
座りなれないソファーに身体を沈めると、イェルドは腰に剣がある事を確かめながら瞳を閉じる。
「……落ち着かないものだな」
そう呟きながら。
受付嬢のアーネリーはうっかりなミスを上司に怒られたが、それ以上、何かある訳ではなく、通常の業務に戻っていた。
不可思議な事は幾つかあるが……まぁ、気にしている暇もないので、頭の隅に追いやる。
「えーと……依頼の整理からしないと……」
独り言を発しながら、アーネリーは書類を確認する。
冒険者ギルドに託される依頼は様々だ。それらをキチンと整理しておかないといけない。
「それと、登録関係の書類は――あっ!」
新しく冒険者として登録された人の書類と依頼の整理をしていた書類が、テーブルから豪快にダイブしてしまった。
宙を舞う紙が入り乱れる。
「ひああぁぁぁぁ!」
アーネリーの甲高い悲鳴が喉を切り裂くかのように出た。
先程、ある依頼の不始末について怒られたのに、これではまた怒られてしまう。
なんでこんなに失敗ばかりしてしまうのだろうか……自分という存在が嫌になってしまう。
本当に受付嬢としてやっていけるのか。いつか、大きな迷惑を冒険者に掛けてしまうのではないのか。
「……今日は、午後、休もうかな……」
涙目になりながら書類を拾うアーネリーであった。
領主の娘であるイルダは、一人で図書館へと赴いていた。
何かと口煩いフランセスは同行していない。ここ最近、出掛ける事も多くなったようで、不在の時もあるのだ。
「そういえば……」
ふと、思い出した事があり、その時の風景が蘇った。
いつだったか明確に思い出せないが、珍しく、フランセスに会いに来た者がいたのだ。
遠目からしっかりとされた身なりの壮年の男性だった。
フランセスは元は高貴な家柄の出という事もあるので、その関係者なのだろうか?
「余計な詮索ですわね」
クスっと笑って、イルダは探していた蔵書を手に取る。
それは『光芒の神と英雄』の童話に関する古い本だ。
とある切欠で、気になった事があり、管理者権限を行使して普段、表に出していない本も探していた。
「何か新しい事が分かれば、冒険者の方にも役に立ちそうですし」
まるで、自分が冒険者になったような気分だった。
幼い頃から箱入り娘として育てられた影響からか、冒険譚は大好きだった。
自分自身には一生、縁がないかもしれない。それでも、冒険に関わる事ができれば、少しは満足できるから――。
砦から冒険者や兵士達と共にヴォーンの街にやって来た、黄金色の髪と瞳を持つ『剣士』は、街の様相に興味津々だった。
まず、見た事のない建物。それだけではない。行き交う人々の服装、習慣、文化……見たもの聞いたもの全てが新鮮だ。
「知らないものだらけだ」
だから、街中を歩いているだけでも楽しいし、なんなら歩かなくても良い位だ。
王国騎士からは、暫くの間、この街とその周辺に滞在していれば、自由にしていて良いと言われているので、その通りに過ごすつもりである。
「…………」
現状、困っている事といえば、二つほど。
一つは、記憶が全く戻らない事。
原因が分からないが、呼び起こしてくれた冒険者や王国騎士の話によると、そのうち戻る可能性もあるかもしれないという事なので、もう少し様子を見ようと思っている。
むしろ、もう一つの方の困った事の方が重大な課題となっていた。
「お金がない……」
宿の手配は王国騎士がどこからか用意してくれたのだが……。
露店に並んでいる食べ物を買うお金もないのだ。言葉で説明するなら、一文無しという事だろう。
もっとも、食事が必要ない事は、本能的に理解していた。食べられない訳ではないが、食べる事に意味はないのだ。
「お金があれば服とか買えるかな? そしたら、少しは楽になるはず」
長期的には稼ぐ手段も見つけないといけない。
「……というか、それ以前に……自分の名前はどうしようかな……」
思い出せない以上、なにか適当に仮で考えるしかない。だが、なぜか、名前は思い浮かばず、時間だけが過ぎるのであった。
解説
マスターより
リプレイ
傭兵団の団員探しの為、ヴォーンの街に訪れていたハヤト=ガラン=ヴォルファングは、然したる収穫のないまま、ある酒場に入ろうとした。
踏み込んだ一歩が、同じ酒場に入ろうとした人物と揃う。傭兵団を率いる者としてここで臆して引き下がる訳にはいかない。
ギリっと相手の顔を睨みつけるように視線を向けた――
「――おっ!?」
「よぉ! 奇遇だな!!」
王国騎士イェルドの驚きに、ニカっと笑って声を掛けるハヤト。
以前、砦での防衛依頼の時に知った仲だ。
「こんなとこで何してんだ? 砦の防衛任務から配置換えでもあったのか?」
「まぁ、そんなもんだ。それより、ハヤト。傭兵団を率いているんだよな?」
思ってもいなかった返しの言葉。
肯定するように頷くと、ガシっと肩を掴まれた。
「ハハッ……すげぇ偶然だ。ちょうどいい、ハヤトもこれから同席しろ。ちょうど他の冒険者達と密会の予定なんでな」
「邪魔していいのかよ?」
怪訝な表情を浮かべた。密会に部外者が同席するのは色々と困るだろう。
しかし、イェルドは軽く片手を振る。
「その方が手間省けるんだよ。まぁ、簡単に言うとだな、あの砦の地下でずっと寝ていた剣士が発掘されたんだ」
簡単かつ適当すぎるイェルドの説明。
しかし、興味深い話でもある。繰り返し、黒紫這者の襲撃を受けていた砦……その地下から発見された人物である。何かあるに違いない事は容易に想像できた。
「塔で眠りから醒めた謎の剣士か……なんか、ワクワクすんな!?」
「だろう? そんな訳で行くぞ」
こうして巻き込まれる形でハヤトはイェルドと共に酒場へと入っていったのだった。
●
用意された酒場の個室。そこに塔での探索を終えて街に戻ってきた冒険者達が集まった。
『剣士』の処遇に関して、どの程度、情報開示が可能なのか、関わって大丈夫そうなのか、確認する為だ。
「あれ? ハヤトちゃん。なんでここに?」
見知った仲間が先にイェルドと待っていた事に、エミリア・シバが驚きつつ訊ねる。
本人が答えるよりも早く、イェルドが返事をした。
「これから仕事の話でな。一緒に聞いた方が早いから同席を頼んだ。それで、早速だが、話しを進めよう。一先ずは剣士に関する情報開示だが、今はほどほどで留めて欲しい」
「まだコルサが怪訝に思っているのなら、オレから一言伝えておくが」
ロイ・アウレアの台詞にイェルドは頷く。
「それは助かる。まぁ……放っておいても構わんが……いずれな……」
少し言葉を濁した王国騎士にアルマ・ヴァレンタインが確認する。
「表沙汰になるとマズいことがあったりするのかも……?」
ずっと寝ていた剣士なのだ。中にはその身体の秘密を強引に調べたいと思う者もいるかもしれない。
しかし、王国騎士が思う所は別にあった。
「……どこまで情報を開示するかは、君らの判断に任せるさ。俺が懸案と思っているのは――『剣士』と黒紫這者の関係だ」
「そうか……砦に集まってきていた黒紫這者。奴等の狙いが『剣士』だとしたら……」
バーネット・フォーサイスの言葉から、その重大性を誰しもが理解した。
今度は砦ではなく、この街に黒紫這者が大挙する事となる。
「まぁ……あくまでも推測だ。それに砦の放棄を決めたのは貴族派の連中。君らも俺らも誰も、悪くはねぇ……悪くは、な」
自分に言い聞かせるようなイェルドに、ハヤトは溜め込んだ息を小さく吐いた。
「そういう事か……だから、俺を同席させたって事か」
「万が一の場合に備えて、戦力を用意するのは、当然の事だろう?」
「確実に間に合う保証はねぇぞ」
それは承知の上だろう。クリーパーとの戦いは日夜どこかで発生している。
帝国南部の都市を奪還したが、それで戦いは終わった訳ではないのだ。
「この事は、本人には?」
そんなロイの質問に対してイェルドは首を横に振るのであった。
「……想像してみろ。万が一、自分のせいで街が襲撃を受ける事になるとしたら、ここに居場所はないだろう?」
記憶も名前すらも失くし、孤独な『剣士』にそれは酷というものだろう……。
●
「よぉ! あんたが眠りの剣士さんかい?」
遠慮のないハヤトの元気な声に『剣士』は振り向いた。
黄金色の長い髪が揺らめくカーテンのように流れ、髪と同じ色をした瞳が真っ直ぐに自身を呼んだ冒険者をみつめる。
「初めまして……あの、この方は?」
戸惑うように応えると視線をエミリアに向けた。
「砦の防衛にも参加した事のある冒険者よ」
「その砦の塔で眠ってたっつーじゃねーか!? 俺にも話を聞かせくんねぇか?」
「寝ていた事以外、覚えていないのですが……」
真面目に答える『剣士』の背中をドンドンと叩くハヤト。
「んなこまけー事はいいんだよ。起きてから、見て感じた事は話せるだろ! 喰って飲んで色々話しているうちに何か思い出せるかもしれないしな!」
「分かりました。それなら、御供します」
ニッコリと笑った『剣士』。
まるで実直な少年のようで、でも一方で純粋な少女のようで……何度見ても性別不詳だとロイは思った。
「飲み食いの前に、冒険者ギルドだ……というか、それ以前に、名前が無いと不便だよな」
「そうね……冒険者として登録するにも、名無しという訳にもいかないわよね」
「そっか、名前も忘れているんだったな、あんた」
3人からの視線に申し訳なさそうにする『剣士』。
仮の名でも良いので何か考えていたのだが、結局、思い浮かばなかったのだ。
ちなみに、着ている衣服などにも名前らしきものは見当たらなかった。
「それなら、エクエスさんとお呼びして良いですか?」
ロイが提案した仮の名を、『剣士』は幾度か繰り返してから頷いた。
「はい。どうぞ、エクエスとお呼び下さい」
「よっしゃ、エクエス! 早速、冒険者ギルドに行って、登録を済ますか!」
意気揚々とギルドへと足を向けるハヤトにエクエスが訊ねる。
「ところで、冒険者とは何でしょうか?」
「そこからかよ!」
思わず頭を抱えるように額に手を当てるハヤト。
一応、社会生活を送れる程度の理解力や知識はあるようだが……。
エクエスの横にスッと並んだエミリアが優しく声を掛けた。
「色々な依頼を受ける職業みたいなものよ。身分証明にもなるし、お金も入るし、沢山の情報も手に入る利点もあるわ」
「そうなのですね」
「ただ、一応、クリーパーと戦う職業だから向いてないならしないほうが良いと思うんだけれど……」
少し心配するエミリアにエクエスは首を傾げる。
七色に輝く剣を腰に吊るしているが、戦えるかどうかはよく分からない。手合わせして確かめる方法もあるが。
そこに助け船を出すようにロイが言う。
「それなら、先に職人通りに行ってみるとか」
魔法書を購入できるかどうか、あるいは、無自覚に使えるスキルからも、色々と推察できるはずだからだ。
もしかしたら適性も分かるかもしれない。
期待するようにハヤトはグッと握った拳をエクエスに向けた。
「大層な剣を持っているんだ。すげぇ、剣士かもしれないぜ」
「そしたら、皆さんと一緒に戦えますか?」
何気ないエクエスの質問。
ハヤトは向けた拳を高く掲げて応える。
「そんなもの、当たり前だぜ」
「……だったら、私は凄い剣士になりたいと思います」
まるで光芒のように眩しい煌めきを瞳に宿すエクエスであった。
●
隠居した老ドワーフの家にお礼と報告を兼ねてアルマはやって来ていた。
年季の入った机の上に置かれた数本の酒瓶と、丹精込めて作ったおつまみが並んでいる。
「ほうっ! これは上手いの!」
驚いた様子でグダドワはフォークの先端をグルグルと回す。
アルマの調理の腕は相当のものだ。美味しくて当たり前だがそれ以上に、隠居した身としては贅沢できない事もあるのだろう。
「それで、地下の方はどうじゃった?」
「いやもう、グダドワさんの心配してたとおり罠・罠・罠で大変だったから! それでも、地下階へ続く扉の開け方を教えて貰ったおかげで、無事に第一歩を進めることができたけど」
「それは良かったのう。無駄に長生きしてみるもんよ」
豪快に笑う老ドワーフに、アルマは改めて頭を下げた。
「グダドワさん、ありがとうだよ」
「いいんじゃよ。それより、罠はどんな感じじゃった?」
楽しそうにグラスに酒を注ぎながら訊いてくるグダドワ。
対して、アルマは大きな身振りを加えて説明する。
「二重とか三重トラップとか殺意高すぎだよー。現代の砦とか要塞でもじゅーぶん通用しちゃうよアレ……」
複重で作動する罠。しかもいずれも一般人であれば致死性のものだった。
それだけ厳重にしなければならない理由があったのだろうが、調べる方としては大変だ。
「ほおう。そんなに凄かったのか」
「みんなで力をあわせて、なんとかーって感じで……ようやく奥の部屋まで辿り着けたようなモノだったよ」
感慨深げに話しながら、その時の出来事を思い出す。
そして、ふと気になって老ドワーフを見た。かなりの年齢なはずなので、そのまま、スゥーと逝ってしまわないか心配したのだ。
「久々に楽しい話を聴けたわい」
そして満足そうに背もたれに寄り掛かった。
唐突に訪れる静寂。家の中に、他の人は住んでいる様子はなかった。
「グダドワさんは一人暮らしなの?」
「うむ……家内は随分前に逝ってもうたし、倅は……帝国に住んでおったんじゃが……」
壁に飾ってある斧に視線を向けながら、グダドワは言葉を続けた。
「……そんな訳での、暇な時にまた話を聞かせて欲しいじゃ」
「うん、きっとまた来るよ!」
笑顔で応えるアルマであった。
●
バーネットは図書館の奥で幾つもの本を抱えている桃色の髪の少女を見つけた。
危なげな足取り――からの予想通り、倒れる所で、その背を支える。
「よう、相変わらず勉強熱心だな」
「あ……バーネット様、ありがとうござます」
普段は商会の人間に変装しているが、間違いなく、領主娘であるイルダであった。
近くの机に抱えていた本を降ろすとスカートの裾を持ち上げ、優雅に挨拶をする。
「調べものですか?」
「まぁ、相変わらず資料漁りだ。この間地下に潜ったら、調べものが増えちまったんでな」
「でしたら、お手伝い致しますよ。私も気になった事がありましたので」
並べられた書籍はいずれも、非公開のものであるようだ。
これが領主娘の持つ権限というものだろうか。
「前回、粗方目ぼしい資料は漁ったと思ったが……これなら、何か新しい事が分かるか」
「地下では何か見つかったのですか?」
その質問に、バーネットは言葉を選びながら『剣士』の事を伝えた。
イルダは『剣士』が眠っていた塔と関わりのある一族の末裔なのだ。
「……伝承と違いますね。少なくとも『人』が眠っていたなんて」
非公開の資料をザっと目を通すが、それらしき事は記されていない。
もし、塔が先祖の墓だとして、そこに『人』が眠っているのだとしたら、末裔であるイルダに伝わっていないのは、逆に不自然だ。
「そもそも、本当に『人』なのか……」
「私は魔法には詳しくないのですが、永遠に寝ていられる魔法があったりするのですか?」
「まさか、な」
如何にもロマンある話だが、そんな魔法は、少なくともバーネットは知らない。
秘蔵されていた資料の中にも、魔法や呪いの類は記載が無い。
「……確か『塔には絶大な力が眠っている』だったよな。だから、『剣士』自体もその力なんじゃないか」
「存在そのものが力……ですか?」
目をぱちくりとしながらイルダが疑問を口にした。
これまでの出来事を一つ一つ思い返すバーネット。
砦に押し寄せるクリーパー。塔に纏わる伝説。記憶が失った剣士。王国騎士の懸念。剣士自体の力……。
「……エーテル。あの剣士自体が実はエーテルの塊なんじゃ」
真実はまだ遠い所にある――そんな気がするバーネットであった。
●
案内された部屋に入ると受付嬢のアーネリーが元気そうに出迎えた。
「ロイさん、こんにちわ」
「こんにちはー。調子はどうです?」
その質問に、苦笑を浮かべるアーネリー。
「毎日、猫も借りたい日を過ごしています」
「忙しそうですね……アシスタントか職員の募集をしてはどうでしょう?」
「例の記憶喪失の方ですね」
エクエスの冒険者登録の件で、ロイはアーネリーに相談しに来たのだ。
諸々あって登録は中断している。記憶喪失で素性も分からないので、中断も仕方ない。
「何か分かった事は?」
「身体的にも調べさせて貰ったのですが……その……あの……」
何か答えにくいのか目を泳いでいる。
仕事だからハッキリと割り切って欲しいものだ。
「遠慮する必要はない」
「では……誰にも言わないで下さいね……私も、まだ……何て書いていいのか分からないので」
勿体ぶるアーネリーに頷いて応え、続きを促す。
「……その……エクエスさん、おかしいのです。男性にも、女性にも、なれると、仰って……お体を見せて貰ったのですが……その、両方……」
「両性自体は無い話ではないだろう?」
「そうでなくてどっちでもなれると……性別を変えられるそうで……」
本当かどうか疑わしい話だ。しかし、エクエスが人を騙すような人物に思えなし、受付嬢が何か勘違いしているかもしれない。
「性別不詳のまま登録はできるはずだろう」
「……あっ! そうでしたね!」
うっかり過ぎる受付嬢に、ロイはガクっと膝を落とすのであった。
●
「どこに向かっているのですか?」
「図書館に付き合ってもらいたいのよね。エクエスちゃんの事と思われる童話とかがあったから……もしかしたら、何かしら、記憶に引っかかるかもって」
ヴォーンの街の通りを並んで歩く『剣士』とエミリア。
腰に吊るしてある抜き身のままの剣が一際、輝く。きっと、童話を読んでも、記憶が戻らないと『剣士』は確信めいたものを抱いていた。
それでも、構わない気がする。自分が何者なのか、分からなくても、関わってくれる人が居るのであれば。
その時、エミリアが唐突に手を叩いた。
「ってしまった。おねえさん、ちゃんと自己紹介してなかったような気がするわ」
一応、塔から出る時には王国騎士を交えた所で名乗ってはいるが、ちゃんとした自己紹介ではなかったからだ。
軽快な動きで『剣士』の前に立つエミリア。
腰ぐらいまで伸びた濃紫色の髪が彼女を包むように跳ねた。
「おねえさんは、エミリア・シバ」
そこで一度言葉を区切ると踊るようにクルリと華憐に回る。
「踊り子が本業って言いたいけど……最近は、冒険者寄りかしら。よろしくね」
「はい。エミリアさん。だったら、私も自己紹介しないといけませんね……エクエスです。記憶も本当の名前も思い出せない、冒険者を目指す者です」
差し出された手をエミリアはすぐに握った。
その手は――『剣士』の手は、確かに人の手だったが……温もりのない、血の通わない、そんな手だった。
マスターコメント
ショートシナリオ易しい 報酬:無し5 / 4〜5人
2021年07月11日 23時28分31秒 公開
相談掲示板
ロイ・アウレアです。皆さま宜しく。 関わったNPCと言う括りなら、イェルド、コルサ、アーネリー、剣士…。 剣士はせめて呼び名が欲しいね。 自分で名付けてくれるか、欠片でも思い出してくれると嬉しいので 《砦からそのまま戻って滞在》の前提で、少し関わってみようと思ってます。 メインはアーネリーさんで、流れ的にイェルド、コルサさんとも話しそうだが、ここは取り掛かってみないと判らないな。
エミリアよ、今回もよろしくね。 おねえさんは剣士ちゃんに、前に調べた童話とかを読んでみて貰って何か引っかかるようなことがないかとか試してみたいわねぇ。 後は、出来ればまあ、反対意見が無ければ最低限自力でお金稼げるように冒険者ギルドへの紹介とか他とかか、かしら?もちろんギルドへの紹介は馬鹿正直に言わないけれど。 折角活動できるようになったのだから、今の世界を満喫してほしいのよねぇ。 というわけで、前回からの引き続きな感じで剣士ちゃんに付き合えればって思ってるわ。 イェルドとアーネリーちゃんとは軽くかかわる感じになるかしらね。
バーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 今回は、というか今回も俺は図書館メインだな。 『剣士』っていう塔の中身が判った事だし、改めて詳細を調べようと思う。 OPでイルダが普段表に出してない書物を漁ってるみたいだし、 可能ならそれに便乗して閲覧させて貰いたいところだ。 それと一つ悩んでるのが、『剣士』の事をイルダに伝えるかどうかだな。 元々領主の一族は塔と関りが有ったらしいから、何らかの手掛かりが出てきそうな気もするが、 まだ王国上層部にも秘密にしている状態だし、何よりPL情報からフランセス回りが きな臭く思えてくるし、現状まだ秘密にして調べた方が良さそうか?
剣士の仕事はオレからもアーネリーさんに聞いてみるね。 経歴不明の授恵者って、ぶっちゃけ沢山居るから身元の証明は不要だろうし 1度一緒の仕事に行き、能力的に申し分ないと証明すれば(建前)仕事には困らないだろうと思うよ。 フランセス回りについてはオレだと判断できないので 気掛かりについて説明した上で秘密厳守の約束ができれば イルダさんには伝えて良いと思ってるよ。(あくまでオレ視点ね)
言葉足らずでした…追伸。 フランセスが怪しいと話すって言う意味ではなく 不確定な事が多すぎるから広げないで欲しいとか 何かしらニュアンスを変え協力要請するのはどうかなと思った。
アルマだよ、どーぞよろしくねー。 とりあえず前回に宣言?してたグダドワさんに蒸留酒のお届けと土産話にいってくるよー 剣士さんのことはボカしたほうがいいかはイェルドさんには確認とってからにするけど… ひそひそ話に便利そう?なエリアサイレンスをとってるから 内密なお話とかしたい人いれば同行するよー
>剣士 うーむ、やはら開示してどう転ぶかわからないし、そもそも俺としても話の種で開示する 情報じゃ無いと判断してるから、調査で重要な手掛かりがでたり、イルダの協力が必要な事態に ならない限りは、可能な限りぼかす方向でいこう。