プレリリース・プラクティス
鹿崎シーカー
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シナリオID:1054
オープニング
並び立つ建物の間、道行く人々が物珍しそうな顔で見上げて通り過ぎるストリートに、ひとつの大きな建築物が作られていた。
レンガ造りの壁を持ち、屋根は瓦ぶき。両開きの扉の上では、ハシゴに昇った二人の若いドワーフが看板の位置を調整している。看板に書かれた文字は、『猫の欠伸亭』。
建物の前に立った赤い髪の中年女性ヒューマンは、看板と扉のバランスを見比べながら声を張る。
「よし、そこだ! そこに頼むよ!」
『ウッス!』
看板を小刻みに動かし、設置を試みるドワーフ二人。
建物の周囲にはハーフビースト、ハーフリング、ドワーフ、ヒューマンと多数の人々が行き来しており、木箱を運び込んだり木槌の音を響かせたりと慌ただしく動き回っていた。
そんな中、扉から頬のこけたネズミのハーフビーストが顔を出し、中年女性に手を振る。
「おーい女将さん! 荷物は運び終わったよー!」
「かまどは!」
「今鍛冶屋連中が点検してるさー!」
ネズミの小男は扉を潜って外に出ると、振り向き、後ろ歩きしながら建物を見上げる。
女将の隣に辿り着くと、つぶらな瞳を煌めかせた。
「いやー、ようやく開店ってところかねえ」
「まだだよ。冒険者ギルドに依頼は出したのかい」
「出したさ。今は返事待ちだ。ま、タダ飯も報酬も出るっつーんだし、断られはしないと思うが……」
女将は男の方を見ず、固定された看板を見つめる。
数々の農園、建築士、鍛冶屋、そして店員たち。ここまで多くの困難を経た。だが、まだこれからだ。
小男は女将を見上げる。
「そんなに不安かい」
「ああ、不安だね。……このご時世だ、みんな不安だよ。だからこそ、料理も話し相手も手は抜けないんだ」
「ごもっとも。そしたら、味見役は必要だよな」
肩をすくめた小男を余所に、女将は大股で歩き始める。
出来上がっていく店の様子を、遠くから難民たちがじっと見つめていた。
―――ところ変わって、踊る子熊亭。
冒険者たちが集まるテーブルに腰掛けた鹿のハーフビースト、ユズルが戯れにカードを三枚めくる。絵柄は寝起きのライオン、髑髏を抱きあげる乙女、逆位置の戦列。
「……とまあ、そういうわけでね。飯と話し相手をくれてやろうっていう、新手の酒場が出来たわけさ……」
古びたカードの山札をシャッフルしながら、ユズルは滔々と話し始めた。
リーンエス王国に新しく作られた店舗、『猫の欠伸亭』。
気立てのいい女将が方々に声をかけ、不安定な情勢の中、多くの人々に一時でも安らぎを与えたいと作られたこの酒場から、冒険者ギルドに依頼が送られてきたのである。
内容は、開店前の批評役。
「つまるところ、料理の味見と、店員連中が客の話し相手として充分かどうか……充分じゃなけりゃ、アドバイスくれっていうことでな。うまく行ったら、あちこちにも展開したいとも言ってたぜ……。辺境の村とか、そういうところにもな。ただ、それもはじめっからズッコケたら叶わぬ夢さ」
猫の欠伸亭は、話し相手となる店員が料理とともに客と一対一で向き合うという形式をとっている。
店員たちも料理人もやる気ではあるが、それと技術的に充分かどうかは別問題。なので、冒険者たちに来てもらい、客観的な評価が欲しいということだ。
「平たく言や、飯食って駄弁るだけだ。難しい話じゃないだろ……。冒険者なら飯代はタダ。それとは別に報酬も出る。暇があれば行ってやりなよ……」
解説
マスターより
リプレイ
決して大きくはない建築物の中は、狭い通路と、いくつもの個室からなる。
部屋の壁は粘土に白石を編み込み、音漏れを防ぐ形。
室内には三方の壁に沿う形状の大きな椅子と、クリーム色に塗装された長テーブルがあった。
そんな部屋のひとつにて座ったトゥーリは、メニュー表を興味深そうな眼差しで読み込んでいた。
「んーむ、ふむふむ……。野菜の料理がメインって珍しいね。普通はお肉とかが多い気がする」
「おっしゃる通りです、レディ」
応えるのは低い声。彼女の傍に腰掛けたハーフリングの青年は、柔和に笑う。
「肉は人気ですが、野菜もまた、メインとなれます。質も店主自らが足と舌を使って厳選した一級品ですし。もちろん、肉料理や魚料理も用意できますが。絵は副店長の直筆です」
「へぇー……!」
ずらりと並んだ料理の名前と、空きスペースに描かれた絵を見ながら、トゥーリは指を泳がせた。
少し迷った末に、メニューのひとつを指差す。橙・緑・白・赤に色分けされた四角形の物体を乗せた丸皿の絵。
「じゃあこれ! 四色野菜のテリーヌ!」
「承知いたしました」
青年は頭を下げると、手を叩いて給仕役を呼び、注文を伝える。
給仕が去った後、トゥーリは首を傾げながら青年を見た。
「目の前で料理してくれる……とかは無いんだ?」
「目の前で……ですか?」
きょとんとした顔で問い返してくる青年に、トゥーリが頷く。
「うん。対面式でお店の人がついててくれるなら、そういうのもあるのかなって」
「……なるほど」
「ワタシはあったらいいなって思うよ? 人が料理つくってるところって、あんまり見る機会ないし!」
「ふむ……」
青年は部屋を見回し、入り口とテーブルの隙間をじっと見つめた末、ゆっくりと相槌を打つ。
「……わかりました。提案してみましょう」
「ほんと? 楽しみにしてる! あ、それとさ。どんなお客さん来るのを想定してるのかとか、聞いていい?」
「もちろん」
思案顔を解いた青年は、微笑み直して応対する。
「当店の客層は、王国全体の……ひいては国境を越え、大陸全体の人々を対象にしています」
「全体!? 大きく出たねえ!」
「ええ。疲れていたり、第三者に話を聞いてほしかったり。そうした方々に料理と心の荷を下ろす場所を提供するのが、理念ですから」
「へぇー……」
表情から驚愕をフェードアウトさせたトゥーリは、不意にクスリと笑みを浮かべた。
「自慢話とか、苦労話しにくる人、多そう」
「どちらも歓迎ですとも。もちろん、あなたのお話も」
「ふふふっ!」
青年の冗談めかした、しかし真摯な言葉に笑ったトゥーリはコップの水を口にする。
天井から吊るされたランプ。石に混じって貝殻が埋め込まれた壁。外からの声は聞こえない、閉ざされた空間。
トゥーリはなんとはなしに呟いた。
「酒場とはまたちょっと違った感じで、いい雰囲気かも。うまく人気が出るといいね。応援するよ!」
「ありがとうございます。我々も励ませて頂きます」
青年が頭を下げたところで、給仕役が料理を片手に踏み入って来る。
その後、トゥーリは青年と、食事や開店の経緯、青年が働くに至った過程などの話を、舌鼓を打ちながらいくつも交わした。
●
別室。小柄なハーフビーストの店員は、そわそわと邪竜山脈の略奪者に視線を投げていた。
彼は食前酒として供された馬乳酒の、黄色味がかった液面を揺らしながら匂いを嗅いで一口含む。
指名を受けたヤマネの女性店員は、思い切って切り出した。
「どど、どうですか……!?」
「美味いな」
略奪者は隻眼で馬乳酒を見下ろす。
「蜂蜜か何か混ぜてるのか? 味は濃いが、飲みやすい。いいな、これ」
「は、はいっ!」
ヤマネの店員はパッと笑顔を浮かべると、やや舌足らずな口を必死に回す。
「私もこのお酒、好きで! 辛いもの食べるときには、これがないとだめで!」
彼はふっと微笑んだ。
「辛いのは苦手か?」
「いっ、いいいいいえいえいえ! そんなことはっ! 私もこう見えて大人でしゅから!」
「噛んでるぜ?」
「はわっ!?」
毛皮に包まれた耳と尻尾が跳ね上がった。
略奪者が苦笑した口元を盃で隠したその時、ノックとともに部屋の扉が開かれ、湯気立つ盆を持った給仕係が現れた。
「お待たせしました! 羊肉の赤ワイン煮込みと丸パンのバスケットです!」
略奪者の前に、皿と藤の籠がどんと置かれる。
漂う香しい匂いの湯気。略奪者は羊肉の赤ワイン煮込みの皿を覗き込み、大きな肉の周りに配されたエンドウや芋、根菜などを見止めた。
「ほお……肉料理にも、きっちり野菜が使われてんのね」
「それはもうっ! お野菜には自信がありますから! ささ、お客様! どうぞお召し上がりを!」
「そうさせてもらおうか。どれどれ……」
長い尻尾を振る店員の前で、彼は羊肉にナイフとフォークを食い込ませ、一切れ取って口の中へ。
しばし無言で咀嚼した略奪者は大きく頷いた。
「うん、美味いな!」
「ほんとですか!?」
「ああ」
声を弾ませる店員に、略奪者は暖まった息を吐く。
「ふぅ……。どことなく故郷を思い出す味だ」
「故郷を? お客様のふるさとは、羊肉の赤ワイン煮込みが郷土料理なのですか?」
「ははっ、そんな洒落たもんじゃねぇよ」
笑い、羊肉にナイフを入れながら語りを続ける。
「ただ、羊肉料理ってのは合ってる。中でも塩ゆでが最高でな。長時間煮込んだら、身がほろほろになって、酒のつまみにちょうどいいんだ」
「ほえー……」
少し呆けた顔をする店員。直後、彼女は全身を総毛立たせ、青ざめた顔でわたわたし始めた。
「あっ、あっ……もしかして塩ゆでの方がよかったですか!? あわわわわわ……!」
「いやいや、ちょっと故郷を思い出したってだけだ。これも滅茶苦茶美味い。それより、キミの故郷の話も聞いていいか?」
「ふえっ……私の、ですか?」
動きを止めた店員が聞き返す。
略奪者は籠からパンをひとつ取りながら彼女を軽く指し示した。
「生まれとか、そこでよく食ってた飯とか。なんかあるだろ?」
「は、はいっ!」
店員はピンと背筋を伸ばし、早口で話し出す。
「私、帝国の大平原の生まれでして! 鶏肉の揚げものをよく食べてました!」
「鶏か……。美味かったか?」
「はい! あ、あ、でも、ここのお店のお料理はもっと美味しいですよ!」
「だな」
応えた略奪者は手にしたパンを一口かじった。
柔らかく、弾力のある食感。噛むたびに広がる、バターの塩気。
「んー、パンもしっとりしてて美味いわ。最高だなこの店の飯!」
「お、お気に召したでしょーか!」
「ああ、満足だ。文句のつけようもねえ」
残ったパンを放り込み、のんびり咀嚼する。
横目で店員を見やると、略奪者は努めて明るい口調で言った。
「けどキミ、接客態度は良いけど、ちょっと落ち着き無いよな。なんか、見てて心配になるぜ」
「はわっ!?」
ぎょっとする店員を、略奪者は片手を挙げて制して続ける。
「落ち着いて、ゆっくりしゃべりゃいい。それに、悪いなんて一言も言ってねえんだ。慌てたり、謝ったりしなくていいんじゃねえかな。キミとのおしゃべり、悪くないしな」
「うー……おかみさんにも言われました……。ごめんなさいです……」
「謝るこたねえさ。これから治していきゃあいい。そのために俺とかがこうして来てるんだからな」
「あうぅぅぅ……」
耳を垂らしてしょげる店員。略奪者はフォークとナイフを手に取り、再び羊肉に刃を入れた。
「だから、もう少し練習、付き合うぜ。落ち着いて行こう。な?」
「……! は、はいっ! ふつつかものですが、ご教授のほどを! どうかっ!」
勢いよく頭を下げた店員の額が、テーブルにゴンとぶつかる。
患部を押さえて苦悶する彼女に略奪者は肩を竦めた。
●
「……おぉー……」
マレーネ・シェーンベルグは、隣に座った偉丈夫を見上げて感嘆した。
偉丈夫の背丈は座ってなお高く、腕は丸太めいて太い。
マレーネは男の二の腕をじっと見つめる。
「まあ、すごいきんにく。……さわっても?」
「おう、いいぜ! 好きに触んな!」
偉丈夫は濃い髭に縁どられた顔で豪快に笑い、腕を折り曲げた。
大きく膨らむ二の腕を、マレーネはそろえた指先でふにふにと押す。
「ふふ、すごい。いがいと、やわらかいのですね」
「おうよ! 硬いだけじゃ、どうにもな。しなやかさってやつも必要になる!」
マレーネは男の顔を見上げると、金の瞳を煌めかせた。
「しなやかさ……たとえば、どういうときに、ひつようになりましたか?」
「そりゃもちろん、死にかけた時だ!」
あっけからんと応える偉丈夫。
怪我と老いで一線を引いた元冒険者は語り始める。
「命の危機にぶつかった時、どんだけ早く動けるかってのが大事でな。早く動かねえと、やられちまうからよ」
「なるほど……。はやいのは、だいじなことなのですね」
「おう! 嬢ちゃんも、冷めないうちに食うのがいいぜ? 話なら、食いながらでも聞かせてやっから!」
「はい」
スプーンを取ったマレーネが、鮮やかな緑色のポタージュを掬っては口に運ぶ。少し粒立った、野菜本来の甘さ。
その間にも、偉丈夫はどこか遠くを見つめながら話し続けた。
「一番大変だった冒険は、あれだな。色々あってイグノ砂漠を通ってエラトゥーンまで行くことになった商人どもの護衛でよ。道中、砂に隠れた魔獣どもに囲まれたのさ」
「まあ。すなにかくれた、まじゅうだなんて。やっつけたのですか?」
「おう。なんとか位置つかんで、数人がかりで引っ張り出して、どうにかな。けど、一匹にかかりきりンなってる間に商人の馬を別の奴が食ったりした」
「それは、とてもたいへんでしたね……。ぶじに、ついたのですか?」
「なんとかな。馬を食われた奴は泣いてたが」
「ふふっ。さいなん、ですね。……ほかには、どのような?」
「他か。他はー……」
そこで偉丈夫は額を手の平で叩き、自制する。
「おっと、いけねえ。俺ばっか話しててもダメだった。嬢ちゃんの話も聞かせちゃくれねえか」
「わたくしの、ですか? わたくしは、うーん……」
マレーネはスプーンを置き、天井を見上げて小首をひねる。
眉根を寄せて少し悩んだのち、偉丈夫の体躯を見て尋ねた。
「わたくしも、おじさまみたいに、きたえたほうがよいのでしょうか? わたくしも、ぼうけんしゃですが、……みえないと、いわれることもおおくて」
「そうだなァ……」
偉丈夫は改めてマレーネを見下ろすと、ひとつ頷いた。
「鍛えとくのは大事だぜ。世の中物騒だしなァ……けどよ」
大きな手が、マレーネの背中を優しく叩く。自然と背筋が伸びたマレーネは目を丸くした。
偉丈夫は豪放に笑う。
「それはそれとして、冒険者なら胸張っていいと思うぜ? 冒険してりゃ、誰だって冒険者だ! 嬢ちゃんもそうだ!」
「わたくしも……」
力強い偉丈夫の言葉にマレーネの顔がほころんだ。
スープの平皿をカラにしたマレーネは、満たされた表情で席を立ち、偉丈夫にペコリと頭を下げる。
「ありがとうございました。おりょうりも、とてもおいしかったですが。……なによりも。たくさん、おはなしができて。わたくし、とっても、たのしかったです」
「そ、そうか? そりゃあよかった」
照れ臭そうに笑い、後ろ髪を掻く偉丈夫。
顔を上げたマレーネは微笑んだ。
「また、きたいです。そのときは、またわたくしのしめい、うけてくださいますか?」
「もちろんだ! いつでも来な!」
偉丈夫は力強く己の胸を叩く。
マレーネは最後にもう一度一礼すると、ふわふわとした足取りと笑顔で部屋を出た。
●
ヴァンゲルス・ロッドがいる個室の扉を開いたのは、おたふく顔の初老女性ヒューマンであった。
彼女は朗らかな笑みを浮かべ、ヴァンゲルスに会釈する。
「いらっしゃいませ。本日は、どうぞよろしくお願い致します」
「ああ、こっちこそよろしく頼む」
会釈を返すヴァンゲルス。
ヒューマンの女性は手近な椅子に座ると、小脇のメニュー表を差し出した。
「それでは、お食事とお酒を……」
「いや。済まないんだが、酒は任せたい」
「ほ……?」
瞬きをする女性に、ヴァンゲルスは言う。
「この街に来たばかりでね、よく分からないんだ。何かお勧めのものがあれば、それを。敢えて注文をつけるなら、酒は辛口で、料理はそれに合うものを。好き嫌いは特にない」
「ああ……なるほど、そうでございましたか」
納得して女はメニュー表を引き戻し、めくり始める。
手を叩いて外の給仕を呼び、いくつか注文をする彼女の姿を、ヴァンゲルスは両手を組んで値踏みするように見つめた。
(さて、お手並み拝見と行こうか……)
しばらく経って、テーブルに料理と酒が並ぶ。
カップに注がれた黄緑の酒。そして白身魚を焼いたもの。ヴァンゲルスは酒杯を眺める。
「この酒がお勧めってことか。理由を聞いても?」
「辛口で、なおかつ少し苦味のあるためです。あまり飲みやすすぎてはすぐ酔ってしまうでしょうし、程よく飲んで、程よく手が止まるようなものをと」
「……なるほどな」
ヴァンゲルスは頷き、一口酒を口に含む。
舌にひりつく辛味が先に来て、遅れて苦味がやってくる。
飲み下し、魚をひと切れ食べると、ふっくらと柔らかな身が酒の味わいを中和し始めた。
「悪くない。あ、早速で悪いが、追加注文いいか。この店の名物になる料理も食べておきたい」
「わかりました、すぐに」
女がもう一度給仕を呼び、注文を入れる。
給仕が去るのを待ってから、ヴァンゲルスが切り出した。
「さて、次が来るまでに……この辺りのことを教えてもらっていいか? 来たばっかりなんでな。何かいい店とか無いか」
「いいお店ですか。ふむむ……」
腕を組んだ女がしばし考え込むのを横目で見つつ、ヴァンゲルスは酒と肴を口にする。
女はしばらく唸ってから切り出した。
「そうですねえ……若い女の子たちは、通りの先の呉服屋を噂しておりました。なんでも、可愛らしい服があるとかで。それと、他には……」
ヴァンゲルスと女の会話は、それなりに長く続いた。
相槌に合わせて減る料理。会話と、やがて酒が無くなった頃。彼は締めに入った。
「よし、大体わかった。それじゃ、こっちの仕事を済ませるか」
女は笑顔をやや緊張させ、背筋を伸ばす。
両膝に肘をつき、手を組んだヴァンゲルスは、彼女を真っ直ぐ見据えた。
「まず、酒のチョイスだが。俺はやっぱり飲みやすいものがいいように思う。自分の好きな酒を勧めていいと思うぜ。料理は酒と合ってる。あと、俺が促したってのもあるが、客にも話を振った方がいいな」
「あ、はぁ……。その、すみません」
眦を下げ、すまなそうにする女性に、ヴァンゲルスは軽く手を振って立ち上がる。
釣られて起立した女性の方に目を向けると、口の端を持ち上げて不敵な笑みを見せた。
「筋は悪くなかった。直すとこ直しゃ、繁盛するだろうな。ご馳走さん」
マスターコメント
ショートシナリオR普通 報酬:標準4 / 4〜4人
2021年06月26日 06時40分22秒 公開
相談掲示板
ヴァンゲルスだ。宜しく頼む。 さて、まずは成立するかどうかだが……ま、のんびり待つさ。
よう、ダムディン・カーンだ。よろしくな。 そうねぇ……頭数が揃うまでまったり待ちますか。
まれーねと、もうします。まれーね・しぇーんべるぐ、ですわ。 てんいんのかたと、ふたりで、おはなしができるのですね。……ふふ、とってもたのしみ。 ええ、とてもたのしそうないらい、ですもの。 ぶじにしゅっぱつできると、いいですわね。
おっ、3人になったか。あと1人くれぇなら何とか集まりそうだな。ダムディンにマレーネだな、宜しく頼む。 今回のリプレイで絡む機会はねぇだろうし、折角だからこの場を借りて軽く話さねぇか? ここで同じ店へ来ることになったのも何かの縁だろ。 2人は誰とどんな話をするつもりなのか、話を聞けたら嬉しいねぇ。ちなみに俺はヒューマンのマダムと……そうだな、酒の話でもするかな。
トゥーリだよ、みんなよろしく! >リプレイはお店の形式上、一人一人別々の描写となります。 あっ、これはそうなっちゃうんだね…… とりあえずもうちょっと何するか考えてから、予定のお話とかしにくるよ!
そうねぇ、タダ飯食って駄弁る依頼だから一人くらい……って、噂をすれば待望の四人目が登場みたいね。 マレーネちゃんとヴァンゲルスちゃん、それとトゥーリちゃんね。 改めてよろしくー。 で、肝心の誰となんの話をするかについてだけど……。 ちょこまかと落ち着きのないハーフビーストの店員を見かけてさ。 俺はそいつと故郷の料理の話でも出来たらいいなって考えてる感じよー。
よ、トゥーリの嬢ちゃんはいらっしゃい。 これで無事確定だな。改めて宜しく頼む。 ああ、俺のことはヴァンでいい。ヴァンゲルス、なんて長ったるくて呼ぶの面倒だろ? へぇ、ダムディンは故郷の話か。面白そうだな。お前さんの出身地は、服装をパッと見た感じじゃ……寒冷地かね?
よっしゃ、じゃあお言葉に甘えてヴァンって呼ばせてもらうわー。 俺、シルトラース帝国の大平原で暮らしてる遊牧民族の出身なのよね。 ヨルド氷雪帯も近いからな、一応あそこも寒冷地っちゃあ寒冷地になるのかねえ……。
ぶじに、そろいましたのね。 あらためまして、みなさま、どうぞよろしくおねがいいたします。 わたくしは……おはなしができれば、なんでも、……ですので どんなかたと、どんなおはなしをするかは、みてい、ですわ。 ……ふふ、どんなおはなしをいたしましょう。 まあ、うふふ。……では、おことばにあまえまして、わたくしも、ヴァンさまと。 ヴァンさまは、おさけのおはなしをなさいますのね。 ちいきによって、おさけのあじも、かわりますもの。きっと、たのしいでしょうね。 からいおさけに、あまいおさけ。ヴァンさまは、どんなおさけがおこのみですの? さしつかえなければ、わたくしにも、おしえていただきたいですわ。 まあ、たしかに。ダムディンさま、あたたかそうなかっこうをなさっていますものね。 ゆうぼく……たしか、たびをしながら、くらしているかたがた、でしたっけ。 なんでも、おにくとちーずがぜっぴんだと、……ふふ、あっていますか? ひつじさんとか、かわれていたりしたのでしょうか? めぇめぇとなくすがたは、きっと、とてもかわいいのでしょうね。
へぇ、ダムディンは遊牧民族なのか。道理で実用性の高い服を着ていると思った。草原を回るのは自由でロマンがあるな。 マレーネが羊と言ってるが、主な家畜はそうなのかい? 後は馬も飼っていそうだな。 おう、略して呼んでくれてありがとよ。俺も耳馴染みが良くて助かる。 マレーネのような美人に尋ねられて差し支えなんてあるものかい。俺はどちらかっつーと辛口派だな。最近はウイスキーをロックで呑むのが好きだが、ま、適度に酔えりゃ何でも良いかね。 マレーネは酒はイケるクチか? 良けりゃお前さんの好みも聞いてみたいモンだね。 ああ勿論、ダムディンの酒の好みもな。 トゥーリの嬢ちゃんはまだ酒は早いか?
うふふ、おじょうず。 ……でも、そのおことばは、てんいんさまに、とっておかなくては ですわよ? ええ、ええ。わたくし、おさけもだいすきですわ。 からいおさけは、のどがやけるようなかんじが、とってもおもしろいですし、 あまいおさけは、あまいおさけで、とてものみやすくて。 すききらいは、わたくしもあまりないのですが、とくにすきなのは……かくてる、でしょうか。 みためがはなやかで、とっても、すてきだとおもいますの。 まあ、おうまさん。 そういえば、おうまさんにのっているいめーじも、ありますわね。 ダムディンさま、じっさいのところ、どのようにくらしていたのですか? ゆうぼくみんのせいかつ、わたくし、とってもきょうみがありますわ。
俺は辛口より甘口の酒の方が好みかねえ。 最近は馬乳酒や蜂蜜酒ばっかり飲んでるわ。 でも結局酔えるならなんでもいっかーってなるかねえ、俺も。 俺の家で飼ってた家畜は羊・馬・山羊・ラクダ……それとビヒモーだな。 家畜の肉や毛皮、あとは乳製品なんかを売って暮らしてたぜ。 家畜の餌になる草が生えている場所に移動して、餌が少なくなったらまた移動……それの繰り返し。 そうね、羊は俺達の生活には欠かせない存在だったな。 牛乳に比べたら効率は悪いけど乳でチーズも作れたし、羊毛は結構な額で売れてたね。
まあ。たくさんのどうぶつと、くらしていたのですね。 なまえなど、おつけになっていたり、していたのでしょうか? ふふ、そうすると、あいちゃくがわいてしまいそうですわね。 いどうして、いどう……。きっと、ダムディンのこきょうは、だいへいげんのすべて、ですのね。 じゆうで、しばられなくて。きっと、のどかなせいかつでしたのね。……わたくし、すこしだけ、あこがれますわ。 ……と、きづけば、しゅっぱつまで、あとわずか。 すくないじかんでしたが、おはなし、とてもたのしかったですわ。 またきかいがあれば、ぜひ。こんどはゆっくりと、おはなししましょうね。
出発直前になっちまったが……ダムディン、マレーネ、短い時間だが共に話せて楽しかった。二人とも付き合ってくれて感謝する。 今度は是非ともゆっくり話をしたいところだね。そんときゃお前さんらの好きな酒を一杯奢ってやるよ。マレーネはカクテルで、ダムディンは馬乳酒か蜂蜜酒、だな。覚えとく。 それじゃ、現地で会おう。またな。