死神蜘蛛が笑う時
ゆうきつかさ
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シナリオID:1013
オープニング
旅人が森の中で見つけたのは、巨大な蜘蛛の巣であった。
おそらく、そこに人間が引っかかっていなければ、立ち止まって様子を窺う事もなかっただろう。
木々の隙間から洩れた光に照らされ、キラキラと輝く透明な糸。
それが蜘蛛の巣の一部である事を理解するまで、しばらく時間が掛かったのだから……。
そこにいたのは、体長3メートルほどの蜘蛛だった。
「……うっ!」
その事に気づいた瞬間、旅人は悲鳴を上げまいと口元を押さえ、崩れ落ちるようにしてしゃがみ込んだ。
それでも、心臓が早鐘の如く高鳴り、息をする事が出来なくなった。
「ひ、ひぃ!」
だが、悲鳴を抑え込む事が出来ず、口の隙間から間の抜けた声が飛び出した。
それが引き金となり、蜘蛛の魔獣が旅人を威嚇するようにして、奇妙な鳴き声を響かせた。
「うわあ……あ……」
その途端、旅人が間の抜けた声を上げ、蜘蛛の魔獣めがけて、近くにあった石を投げつけた。
しかし、旅人が投げた石は、蜘蛛の魔獣の背中にある盾のようなモノで弾かれ、代わりに針の如く鋭い糸を吐きかけられた。
その糸は奇跡的に当たらなかったものの、途中で斬り裂かれた葉っぱが宙を舞い、地面が抉れて土煙が舞い上がった。
「う……わ……ああ……あ……」
それを目の当たりにした旅人が、間の抜けた声を上げながら逃げ出した。
途中から這うようにして逃げ、最後には転がった。
幸い蜘蛛の魔獣は森の外までは追ってこなかったものの、このまま放っておけば、必ず犠牲者が出てしまう。
その事を実感したため、旅人が近くの村の者と話し合って、依頼を出す事にしたようである。
蜘蛛の魔獣は全長3メートル程度。
森の中を根城にしており、そのまわりには無数の糸が張り巡らされている。
蜘蛛の糸は透明で見えづらいものの、太陽の光を浴びると、ほんの一瞬だけ見る事が出来るらしい。
また、蜘蛛の糸には人間……もしくは、動物などが引っかかっており、場合によっては生きている可能性があるようである。
ただし、助けられる可能性が低いため、蜘蛛の魔獣を倒す事を優先して欲しいという事だった。
解説
マスターより
リプレイ
リーンエス王国の辺境にある森。
そこに蜘蛛の魔獣が根城を構えていた。
その場所は街道から少し外れているものの、近道をするには最適な場所だった。
それ故に、旅人達にとっては、当たり前のように通る場所であったため、報告されているよりも多くの被害が出ている可能性が高かった。
「……いかにも何か出そうな場所ですね」
その森に仲間達と共に足を踏み入れたサシャ・テーリングが、全身に鳥肌を立たせながら、辺りをキョロキョロと見回した。
まるで誰かに見られているような奇妙な感覚。
そのため、背筋にゾッと寒気が走り、両足が重く、歩く事さえ困難になった。
それだけ、本能的に危険が迫っている事を訴えているのかも知れないが、だからと言ってここで踵を返す訳には行かなかった。
例え、相手がどんなに強敵であったとしても、戦うために来ているのだから、逃げると言う選択肢は存在していない。
そんな不安を胸に秘め、一歩一歩前に進んでいるものの、次第に膨らむ恐怖で、心が押し潰されそうになった。
それでも、自らに課せられた使命を果たすため、途中で立ち止まる事はなかった。
「……蜘蛛か。私は別に苦手ではないのだけれど……。確かに、嫌な気配がしているな」
ロドリック・アルカインが警戒した様子で、少しずつ前に進んでいった。
既に、敵のテリトリー。
そのため、何処に蜘蛛の巣があっても、おかしくないような状況であった。
「どうやら、目的地に辿り着いたようだぜ」
そんな中、ゴブロウタが蜘蛛の魔獣に気づき、仲間達に警告しつつ茂みの中に身を隠した。
蜘蛛の魔獣はまったく動こうとしなかったが、こちらの気配には気づいている様子であった。
「……あらやだ、思った以上にグロテスクね。こんなクモがいたら、それは悲鳴の1つも上げたくなるけど……。これだけ大きくて人を襲うとなると、なおさら駆除する必要がありそうね」
イーヤ・レプリスが蜘蛛の魔獣の攻撃を警戒しつつ、大量の小麦を振り撒いた。
その途端、今まで見えなかった蜘蛛の糸が、薄っすらではあるが見え始めた。
「大きな蜘蛛……あまり近くで見たくはありませんけれど、これ以上の被害を防ぐ為に今の内に倒してしまわないといけませんね」
その間、スィーリーンは茂みに隠れつつ、蜘蛛の魔獣を見上げていた。
蜘蛛の魔獣はスィーリーン達が蜘蛛の巣に引っかかるまで待っているのか、ジッと息を潜めている様子であった。
その近くには繭玉のようなモノがあり、かろうじて旅人と思しきモノと手足と顔が出ていた。
だが、まったく動こうとしなかったため、スィーリーン達がいる場所からでは、生死を確認する事は困難であった。
「……生存の可能性があるなら助けるのみ、だ」
ロイ・アウレアが覚悟を決めた様子で、キッパリと言い放った。
ルプス(狼)の目と、ホークアイで辺りの様子を窺ったところ、蜘蛛の巣はかなり広範囲に張り巡らされているらしく、タヌキやウサギ等も引っかかっていた。
●
その間も、蜘蛛の魔獣は動かなかった。
ただ息を殺し、獲物が罠に掛かるのを、ひたすら待ち続けていた。
それだけ、周囲に張り巡らせた糸を信頼しているのだろう。
今まで一度たりとも失敗した事がなかったため、自信に満ち溢れているようだった。
そのため、授恵者達は死神の鎌を、首元に当てられているような錯覚に陥った。
「この状況で私達が糸に引っかかると思っているのですか? だとしたら、あまりにも愚かですね」
すぐさま、スィーリーンがエンライトを発動させ、形成した光の玉を高々と掲げた。
その光を浴びた蜘蛛の糸が、宝石の如くキラキラと輝いた。
「……!」
それは蜘蛛の魔獣にとって、まったく予想もしていない事だった。
途端に、今まで満ちていた自信が不安に変わり、それが次第に絶望へと塗り替えられていった。
その気持ちを消し去るようにして、蜘蛛の魔獣が蜘蛛の糸を吐き出した。
その糸は刃物のように鋭く、まわりにあったものを切り裂きながら、まっすぐスィーリーンに迫ってきた。
「……!」
即座にルプスがスィーリーンに飛びつき、ギリギリのところで蜘蛛の糸を避けた。
「……残念だったな。光の玉は、ひとつじゃない」
それに合わせて、ロイがエンライトを発動させ、別の角度から光の玉で蜘蛛の糸を照らした。
その途端、蜘蛛の魔獣が動揺した様子で、光の玉を交互に見た。
この様子では、立て続けに予想外の出来事が起こったせいで、思考が停止してしまっているのだろう。
その気持ちが焦りを生み、そこから迷いが生じて、まったく動く事が出来なくなっていた。
「これで、さっきよりも見やすくなったな!」
その隙をつくようにして、ゴブロウタが小麦粉をブチ撒け、蜘蛛の巣がよく見えるようにした。
「……!」
それは蜘蛛の魔獣にとって、絶望以外のナニモノでもなかった。
もはや、詰み。
最強の武器を失った事で、恐怖すら覚えている様子であった。
(このまま蜘蛛の糸を燃やしてしまった方がいいんだけど……)
そんな中、ロドリックが険しい表情を浮かべ、蜘蛛の糸に絡まっている旅人を見上げた。
いまのところ、旅人に動きはないものの、完全に亡くなっている事を確認しない限り、蜘蛛の糸を燃やす事は得策であるとは言えなかった。
そのため、蜘蛛の魔獣の注意を引くようにして、餌になりそうなモノを放り投げた。
「……!」
次の瞬間、蜘蛛の魔獣が口から素早く糸を吐き、投げたモノではなく、ロドリックを絡め取ろうとした。
それはロドリックにとって、予想外の反応であったが、どちらが美味しそうなのか天秤にかけ、導き出された答えである事は容易に想像する事が出来た。
「危ない!」
すぐさま、サシャがサークルプロテクションを発動させ、守護の力を秘めた光を周辺に放った。
それが光の膜となってロドリック達を包み、蜘蛛の魔獣の攻撃を防いだ。
「そう簡単に、わたし達を食べる事が出来ると思っているのかしら? だったら、少し痛い目に遭わせておかないとね」
イーヤが呆れた様子でメテオライト3を発動させ、大量の小さな光弾を降らせて、蜘蛛の巣にいくつも穴を開けていった。
「……!?」
その事に動揺した蜘蛛の魔獣が、フラフラとしながら、滑り落ちるようにして地面に降りてきた。
おそらく、このまま蜘蛛の巣に留まっていたとしても、的になるだけだという事を本能的に理解したのだろう。
再び、蜘蛛の巣に戻る事なく、授恵者達に対して、敵意を向けた。
「……これで少しは戦いやすくなりましたね」
サシャが大きな岩を盾代わりにしながら、予め輝刃でダマスカス鋼の祭刀を強化しておき、その先端から魔矢を放った。
「……!」
即座に蜘蛛の魔獣が背中を向け、盾の部分で攻撃を防いだ。
「いや、まだ油断しない方がいい。背中の盾で防がれない様に、なるべく脇腹や眼を狙うんだ!」
それに合わせて、ロイが蜘蛛の魔獣の死角に回り、貫通衝撃射で脇腹を貫いた。
「……!」
その途端、蜘蛛の魔獣が動揺した様子で、近くの茂みに逃げ込もうとした。
「まあ、やるだけやってみるか」
その間に、ゴブロウタがエーテルブレードで、ダマスカス鋼の祭刀Reの射程を伸ばし、蜘蛛の魔獣に斬りかかっていった。
蜘蛛の魔獣は背中の盾で身を守りながら、逃げるようにして口から糸を吐き、巧みに糸を操って木から木に飛び移った。
「だったら、まずは動きを封じておかないとな」
即座に、ロドリックがスタティックフィールドで、光り輝く球状の存在を発生させた。
それは蜘蛛の魔獣の動きを阻害するようにして、執拗に纏わりついてきた。
「……!」
その事に蜘蛛の魔獣が違和感を覚え、光り輝く球状の存在を振り払おうとした。
だが、光り輝く球状の存在を振り払おうとすればするほど纏わりつき、何もすることが出来なくなった。
「少し身体を軽くしてあげましょう」
その間に、スィーリーンがメテオライトを発動させ、大量の小さな光弾を蜘蛛の魔獣にブチ当てた。
「キィシャアアアアアアアアアアアアアアアア!」
次の瞬間、蜘蛛の魔獣が激しい怒りを爆発させ、刃物の如く鋭い糸を飛ばしてきた。
「まさか、こんな場所でストリップでもさせる気?」
イーヤが嫌悪感をあらわにして、マントを翻して飛び退いた。
そのおかげで、大事には至らなかったものの、マントはボロボロ。
ほとんど布切れと化しており、原型すら留めていなかった。
「どうやら死神とは名ばかりだったようだな。それとも噂に尾ひれがついて恐ろしい存在だと思われていただけか?」
ゴブロウタが軽く皮肉を言いながら、闘気槌2を繰り出した。
「グエッ!」
それと同時に、蜘蛛の魔獣が地面に圧し潰され、ブチュッと生々しい音を響かせながら中身をブチ撒け、血溜まりの中に沈んでいった。
「た、旅人の方は……飲食を断たれ、随分と衰弱しているようですね」
一方、スィーリーンは蜘蛛の巣に絡まっていた旅人を救出し、水袋の水を飲ませた。
旅人は、だいぶ弱っていたため、水を口に含む程度であったが、スィーリーン達の顔を見て、ホッとした様子で溜息を漏らした。
「怖かったでしょうに……今お助けしますね」
その事に気づいたサシャが、ヒールと医療を駆使して、傷ついた旅人を治療した。
そのおかげで、旅人の傷は癒えたものの、動けるようになるまでは、しばらく時間が掛かりそうである。
「ところで、このクモの背中、何か素材として使えないかしら?」
そんな中、イーヤが蜘蛛の魔獣の背中から、盾っぽいモノを切り取った。
実際には皮膚が変形したもののようだが、何かに使えそうな感じであった。
「それよりも、巣の破壊が先だ。主を失ったとは言え、まだ危険な状態であることに変わりはないからな」
その間に、ロドリックがストーンブラスト2を仕掛け、紅蓮の炎で蜘蛛の巣を焼き払った。
「ああ、その通りだ。このまま帰っていたら、間違いなく見落としていた」
そう言ってロイが蜘蛛の巣の近くにあった茂みから、蜘蛛の魔獣の卵を見つけた。
その卵には死神の顔のような模様が浮かんでおり、中で何かがモゴモゴと蠢いていた。
その事に危機感を覚えたロイが今後の事を考え、卵を処分するのであった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜10人
2021年06月18日 23時31分01秒 公開
相談掲示板
出発間際の依頼だが失礼、キャスターのロドリック・アルカインという。 相談できるほど時間の余裕が無いかもしれないので、ちょっと横着してプレイングは提出したよ。 おおむね、範囲攻撃で置いてある糸を破壊する方向で考えている。犠牲者が生きているかもとなると識別可能なものをもっていくべきかな。 明日に確認できれば修正はするつもりだが、出来なかったら済まないと先に謝っておくよ。
シューターのロイ・アウレアです。よろしくお願いします。 時間があまりないので成立すると信じ、自分もプレを出してしまいますね。 >陽の光を浴びると、ほんの一瞬だけ見る事が 戦闘中、常にエンライトを付けて移動する事で糸が反射し輝く事に期待。 そして見落とさない様に超視力と……もう一つは未定。 背中の盾は…要は他の部分に攻撃すれば良いって事なので 貫通衝撃射でひっくり返す・糸渡りしてる最中に下から狙う、とか地道に行ってみます。 引っ掛かってる人や動物は避け攻撃するのと 水袋に油を持参し、戦闘後に糸を解いてみようと思う。 ダメなら塊のまま担架に乗せて連れ帰ってから 石鹸水とか何かしらを使って解放出来ないか考えてみますね。 捕まってる人の為にもヒールが欲しいが…戦闘優先したいので持てるかプレと相談します。 パッと思いついたのはそれ位かな。後はプレを書きつつ考えますね。
こんにちは、サシャ・テーリングと申します。 初めて実戦に参加させて頂きます。 サークルプロテクション・ヒール・輝刃・魔矢、後衛としてお手伝いさせて下さい。
当日参加になってしまいましたが、キャスターのスィーリーンと申します。 よろしくお願いします。 私は主に魔法での攻撃と、移動阻害のBS付与をいたしますね。 糸を伝い上空などへ移動されると狙いにくいと思いますので。 ロイ様の仰る様に光の反射で糸が輝くことを期待して、 エンライトを使用し、攻撃もメテオライトを中心としようと思っています。 メテオライトは対象識別も出来ますし。
滑り込みで失礼。 ヒーラーのイーヤよ、よろしく。 後ろで回復とメテオライトをするわね。