【黒雨】トマトはいつも怒っている

ゆうきつかさ

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シナリオID:976

オープニング

●黒雨
 白い鳥が飛んでいる。海から山へ……エラトゥーン都市同盟の内陸側へと飛んでいく白い鳥の姿に、ああ、また夢を見ているのだと、預言の魔女オペラは悟る。
 異変は、フェアドゥキア平野の一角で起こっていた。

 ――ザァァァァァァ……。
 雨が降る。しかし若葉に落ちる雫の色は黒く、異変が起こっている事は一目瞭然だった。
 バシャ、バシャ、バシャ。
 水飛沫を上げて進むのは、異形の怪物クリーパー。クリーパーの周囲だけ局地的に降っている、その黒い雨を浴びた木はやがて枯れてゆく。
 クリーパーの進む先にあった畑の芽は次々と萎れ、雑草までも黒く染まって枯れてしまう。その範囲はクリーパーの進行と共に広がるばかりだ。
「畑が……!」
「な、なんだアレは!?」
 クリーパーの降らせる黒い雨を見た農民達が騒ぎ出す。すると雨は農民達にも降り注ぎ……。
「ぺぺっ、なんだこのあ……っ!?」
「ぎゃああっ!?」
 ――しばらくして、辺りは静けさを取り戻す。黒く枯れた作物の山、黒い雨に濡れた建物の残骸。そして……びしょ濡れになって力尽きて倒れた人々の屍の上に、雨は、降り注ぐ――。

「農作地が広がるフェアドゥキア平野に、周囲を無差別に襲撃するクリーパーが現れるのじゃ」
 踊る子熊亭に集まった冒険者達に、オペラは予知夢の内容について語った。
「クリーパーは『黒い雨』で周囲を攻撃しながら移動するのじゃ。これが複数バラバラな方角へ移動し、広範囲に被害を振りまこうとしておるのじゃ」
 頭の痛い話じゃ、とオペラは溜息をつく。
 人々への被害は勿論、畑にまで被害を及ぼすというのが厄介だ。春野菜の収穫は終わった畑がほとんどだろうが、夏野菜の収穫はこれから、秋野菜はまだまだ育ち始めたばかりだろう。オペラの予知夢が現実になれば、今後の食生活にだって影響を及ぼすかもしれない。
「クリーパーの数を考えると、冒険者の方も人手が欲しいのじゃ……どうか皆で手分けをして、此度のクリーパーに対処して欲しいのじゃ」
 皆の未来のためによろしく頼むのじゃ、と、オペラは頭を下げた。

 エラトゥーン都市同盟の一角にある畑に現れたのは、体長3メートルほどの巨大なトマトであった。
 しかも、それは単なる巨大なトマトでは無かった。
 トマトに擬態した中型クリーパー。
 それが奇妙な鳴き声を上げて、トマト畑に黒い雨を降らせた。
 黒い雨を浴びたトマトは腐って、辺りに異様なニオイを漂わせた。
 その間も、中型クリーパーの勢いは止まらず、奇妙な鳴き声を響かせながら、他の畑にも黒い雨を降らせていった。
 それが原因で、沢山の作物が被害に遭い、村人達の悲鳴が辺りに響いた。
 それを予知夢で見たオペラが、中型クリーパー退治を依頼した。
 中型クリーパーは、闇落ちしたトマトのような見た目をしており、性格はとても凶暴で、奇妙な鳴き声を上げて、黒い雨を降らせてくるようだ。
 この雨はモノを腐らせる力があり、ヒトが浴びると、皮膚が火傷を負ったようにただれてしまうらしい。
 その事を踏まえた上で、中型クリーパーを倒す事が今回の目的である。

解説

 中型クリーパーがいるのは、畑です。  作戦が行われるのは、昼間です。  まわりには数名程度の農民がおり、恐る恐る中型クリーパーを眺めています。 【やるべき事】  農民達を畑から避難させる。  中型クリーパーを畑から遠ざける。  なるべくトマト畑に被害を出さない。  中型クリーパーを倒す。 【やってはいけない事】  中型クリーパーを逃がす。  トマト畑を壊滅させる。  農民達を煽って、中型クリーパーと戦わせる。  農民達を騙して、囮にする。 ・中型クリーパー×1  トマトに擬態した中型クリーパー。  見た目はアレだが、甘みがある。  普通のトマトより美味しい。  クリーパーの部分(中身)はマズイ。  皮が固いので、食べる事の出来る部分は少なめ。  ヘタの部分が王冠のように見える。  ピョンピョン跳ねる。  トマトが潰れる、大惨事。  悲鳴にも似た鳴き声を上げ、黒い雨を降らせる。  黒い雨はトマトを腐らせ、火傷に似た症状を負わせる。  石などをぶつけられると、怒って襲い掛かってくる。

マスターより

 どうも、ゆうきつかさです。  今回の目的は、トマトの姿をした中型クリーパーを倒す事が目的です。  ただし、中型クリーパーがいるのは、トマト畑の真ん中です。  なるべく畑から引き離して戦わないと、トマト畑に被害が出てしまいます。  基本的には【やってはいけない事】をしない限り、失敗にはなりません。  トマト畑の被害に関しては、半分以上のトマトがダメにならなければ、失敗にはなりません。  それさえ守っておけば、ネタに走っても構いません。  また黒い雨は魔法的なものなので、濡れても服は汚れず、クリーパーを倒せば消えるので問題ありません。

リプレイ

●
「カボチャの次は、トマトかー……。ひょっとして、他にも野菜しりーずが続くのかな?」
 アルマ・ヴァレンタインは妙なフラグを立てながら、仲間達と共にエラトゥーン都市同盟の一角にあるトマト畑にやってきた。
 トマト畑では、村人達がトマトの世話をしている最中で、沢山のトマトが太陽の光を浴びて、まるで宝石の如くキラキラと輝いていた。
「黒い雨を降らすクリーパーを調べてみたけど、現れ出したのは最近なんだな? 何か大元が居るのかな? 能力を与えてるとか、並みのクリーパーを改造して凶暴化させてる奴が近くで隠れ見てるとか……」
 そんな中、ダムド・フィリスが、あれこれと考え事をし始めた。
 考えれば考える程、深まる謎。
 その謎を解く鍵が身近にあるような気もすれば、そうでないような気もするため、謎が謎を呼び、疑問の波が押し寄せているような感じになっていた。
「……ん? なんだ、お前達は?」
 そんな空気を察した村人のひとりが、ダムド達に声を掛けた。
 この様子では、警戒しているのだろう。
 今まで見た事がないような者達が、トマト畑にやってきたため、返答次第では腐ったトマトの海に沈める勢いで、農工具を構えていた。
「……美味しそうなトマトですね」
 その緊張を和らげるようにして、ロイ・アウレアが無防備な笑顔を浮かべた。
 この状態で農工具をロイに振り下ろそうものなら、自分達の方が悪者になってしまうと思ったのか、今まで振り上げていた農工具を下ろし、とりあえず話を聞く事にしたようである。
「ひょっとして、トマトが欲しいのか? だったら、そう言ってくれ。俺は、てっきり……いや、何でもない」
 村人のひとりが喉元まで出ていた言葉を飲み込み、ぎこちない笑みを浮かべた。
 その騒ぎを聞きつけた村人達も、農工具を構えて近づいてきたが、ロイ達に敵意がない事を悟ったのか、とりあえず警戒を解く事にしたようだ。
 そこでロイが冒険者ギルドから来た事や、高名な予言者が語った言葉を、分かりやすく村人達に伝えた。
「う~ん、そう言われてもなぁ~」
 髭面の村人が困った様子で、言葉に詰まった。
 だからと言って、ロイ達の言葉を全く信じていない訳ではないのだが、あまりにも現実味が無さ過ぎて、答えに困っている様子であった。
 それ以上に、信じられなかったのが、体長3メートルのトマトが襲ってくるという話であった。
 そもそも、何故トマト。
 市場に出す事の出来ないトマトを畑の肥やしにしたのが原因か、それとも別の理由があるのか分からないが、沢山の疑問がバトンリレーを始めているような状況のため、訳が分からなくなっているようである。
「急に言われても信じて貰えないと思いますが……、皆さんに助かって欲しいです。だから……どうか雨から逃げて下さい」
 エヴァン・ピオネロが祈るような表情を浮かべ、村人達に訴えかけた。
「ま、まあ、百歩譲って、お前達の話が本当だったとしよう。だが、トマトと言うのが、ちょっとなぁ……」
 ハゲ頭の村人が、いまいち実感がない様子で、ポリポリと頬を掻いた。
 普段からトマトと接しており、いままで仲良くやってきたと思い込んでいるためか、どうしてもトマトの魔獣が自分達に対して敵意を向けるとは思えないようである。
 むしろ、『あの時、出荷していただいたトマトです』と言ったノリで、恩返しに来てもおかしくないと思い込んでいるらしく、自分達だけは大丈夫だと思っているようだった。
 この時点で授恵者達も、『大丈夫かな、この人達……』と言う気持ちが脳裏に過ったものの、ここでツッコむのが正しいのか、スルーする事が正義なのか、分からなくなっていた。
「どうやら、時間切れのようだな」
 ダムドがトマトの魔獣の存在に気づき、警戒した様子で村人達の前に陣取った。
 それは巨大なトマトであった。
 トマトの魔獣は顔を真っ赤にしながら、怒ったような表情を浮かべており、ボヨンボヨヨンと跳ねながら、ダムド達に迫ってきた。

●
 トマトの魔獣は苛立っていた。
 同じトマトとして、畑で育つトマトを嫌悪しているのか、その表情は殺気に満ちていた。
「な、なんだ、ありゃあ! ト、ト、トマトなのかァ!?」
 それを目の当たりにしたボサボサ頭の村人が、パニックに陥った様子で、その場に尻餅をついた。
 何から何まで理解不能。
 そのため、恐怖にすべてを支配され、ガタブルと身体を震わせ、動く事が出来なくなっていた。
「あのクリーパー、人間やトマトを駄目にしちゃう黒い雨を降らせるから急いで向こうに逃げてー?」
 その事に危機感を覚えたアルマが、トマトの魔獣に石を投げ、村人達から注意を逸らした。
「その子が守ります! 従って逃げて下さい!」
 その流れに乗るようにして、ロイがルプス(ペットの狼)に指示を出し、トマトの魔獣の注意を引いた。
「ギギギィ……」
 トマトの魔獣は殺気立った様子で、ロイに対して敵意を向けた。
「……!」
 その間に、ルプスが村人の服を引っ張り、安全な場所まで避難しようとした。
「キィシャアアアアアアアアア!」
 だが、トマトの魔獣は、それを見逃さなかった。
 口から痰のようなモノを吐き、村人達が逃げるのを邪魔しようとした。
「さあ、今のうちに早く!」
 すぐさま、エヴァンがアイアンウォールを展開し、トマトの魔獣の攻撃を防いだ。
「あ、ああ、すまねぇ!」
 その隙をつくようにして、村人達が農工具を放り投げ、脱兎の如く逃げ出した。

●
 村人達が逃げた事で、トマトの魔獣は余計に機嫌が悪くなった。
 その反動で、黒ずんだ部分から膿のようなモノが噴き出し、辺りに異様なニオイが漂った。
「いますぐ畑から出ていけ!」
 その間に、ダムドがトマトの魔獣の死角に回り、猛毒の刃で斬りつけた。
 即座に、トマトの魔獣がダムドを噛みつこうとしたが、フェザーステップで回避され、勢いあまってガチンと歯を鳴らした。
「ロイさーん、アレも持って帰っちゃおっかー? ちょっとマズそうだけど、だからこそ食べる意味があると思うしー……」
 そんな中、アルマがトマトの魔獣の注意を引きつつ、ロイに向かって声を掛けた。
 それはある種の賭けであったが、食べてみなければ、美味しいのか、不味いのか分からない。
 例え、不味かったとしても、笑い話のネタになりそうなので、食べる事に躊躇いはなかった。
「いや、見るからにマズそうなんだけど……美味いのか?」
 ロイがトマトの魔獣に鋭射を仕掛け、気まずい様子で汗を流した。
 ある意味、危険なフラグが立ちそうな気もするが、既に拒否権はない。
 アルマが純真無垢な、とてもイイ笑顔を浮かべているため、嫌とは言えない状況だった。
「ギギギギギィィィィィィィィィ!」
 その事に腹を立てたのか、トマトの魔獣が物凄い勢いで跳ねてきた。
「このまま、ここで仕留めます。……畑には戻しません!」
 すぐさま、それとエヴァンがアーケインテンペスト改を発動させ、稲妻のような光が無数に荒れ狂う空間を出現させた。
「ギィガァァァァァァァァァァァァァァ!」
 次の瞬間、トマトの魔獣が奇妙な鳴き声を響かせ、黒い雨を降らせた。
 その雨はまわりにあるモノを腐らせ、授恵者達の身体にこびりついた。
「……たくっ! 同じトマトだろうに! 農家の方々が心を込めた品を荒らそうとするな!」
 それに合わせて、ロイが貫通衝撃射を仕掛け、トマトの魔獣の口を貫いた。
 それでも、黒い雨が止む事はなかったものの、先程よりも勢いが弱まり、小雨に近い状態になっていた。
「とにかく、黒い雨の被害を防いでおかないと……!」
 即座に、エヴァンがタイダルストリームを発動させ、トマトの魔獣を畑から遠ざけるようにして押し流した。
「キィシャアアアアアアアアアアアアアアア!」
 それに抵抗するようにして、トマトの魔獣が両目をカッと見開き、エヴァンに飛び掛かろうとした。
「そもそも、おまえのようなトマトがいるか!! 泣いたり笑ったり飛んだり跳ねたり出来なくしてやるーっ!」
 それを邪魔するようにして、アルマが神霊達の腕で、トマトの魔獣をグイグイと締め上げた。
 その拍子に赤い汁が地面に広がり、濃厚なトマトのニオイが広がった。
「まだ完全に腐っている訳では無い……という事か。だが、アンタはここで終わりだ!」
 ダムドが華麗に舞うようにして間合いを詰め、トマトの魔獣にダブルエッジを繰り出した。
 そのたび、トマトの濃厚なニオイが辺りに広がり、授恵者達の胃袋を激しく刺激した。
「こんなニオイを嗅いだら、お腹が減って仕方がありませんね。それでは、さっさと倒してご飯にしましょう」
 それと同時に、エヴァンがメテオライト2を発動させ、大量の小さな光弾を降らせてトマトの魔獣の息の根を止めた。
 それでも、トマトの魔獣は黒い雨を降らせるため、口をパクパクとさせていたが、その願いは届く事なく朽ち果てた。
 そして、先程まで降っていた黒い雨が……止んだ。

●
 トマトの魔獣が倒された事で、村人達はゴキゲンであった。
 その勝利を祝うようにして始まったのが、トマト祭りであった。
 トマト祭りと言っても、でっかいトマトの神輿を担ぐ訳では無い。
 みんなが満腹になるまで、トマトを食べる。
 ただ、それだけの事だった。
 それでも、村人自慢のトマトだけあって、飽きの来ない味だった。
「マリネ・ビザ・冷製パスタ・冷ミネストローネ……こんな良い品……食べなきゃ勿体ないですね」
 ロイが何かに取り憑かれた様子で、トマト料理を次々と胃袋の中に収めていった。
「これは凄い。あんた達、良いのを作るんだな」
 ダムドも感動した様子で、トマト料理を頬張った。
 新鮮なトマトを作っている事もあり、どれも文句のつけようがないほど美味しかった。
 そのためか、一緒に出された野菜も美味しく、そのままでも食べる事が出来そうなほどだった。
「なあに、遠慮をするな。あのまま魔獣を放っておいたら、黒い雨のせいで、すべての作物がダメになっていただろうしな」
 ハゲ頭の村人が豪快な笑い声を響かせ、ダムドの背中をドンと叩いた。
「確かに……、そんな事になれば、大惨事だったでしょうね。でも、トマトの魔獣を倒したら、黒い雨も消えてしまったようですし……。一体、何だったのでしょうね、本当に……」
 エヴァンがトマト料理を食べながら、不思議そうに首を傾げた。
 色々と分からない事だらけだが、他の場所で戦っている授恵者達が、何か手掛かりを掴んでいるかも知れない。
「それじゃ、トマトの魔獣は持ち帰っておくね? 誰か欲しい人がいたら、遠慮なく言ってね。きちんと切り分けておくから……」
 その横でアルマがせっせとトマトの魔獣だったモノを、バックパックの中にしまい込んだ。
 そして、トマトの祭りは夜が明けるまで、続くのであった。

マスターコメント

 今回は功績の加点方式でMVPを決めさせていただきました。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準4 / 4〜8人

2021年06月20日 21時39分20秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ロイ・アウレア

    シューターのロイ・アウレアです。 時間が無いが、集まって貰えるだろうか…。野菜が高騰すると困る(←)ので倒したいな。 村人の避難誘導とクリーパーは攻撃に簡単に反応しそうだから 畑の外に誘き出して戦う…かな。

  2. アルマ・ヴァレンタイン

    ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー。 前日だけど人が集まるといいねー… 今回は説得の手間は省けそう?だし 石でも投げつけて畑の外に出してから戦闘~の流れでぷれいんぐ出してくるねー

  3. ロイ・アウレア

    避難は数名程度の農民って事なので 素直に聞いてくれず戦闘に突入したら、ルプスで護衛と誘導としてみたよ。 それと、声を上げながら降らすとあるので、口へ攻撃としてある。 事後は巻き込まれたが食べれるのを収穫しトマトパーティ。 (マリネ・ビザ・冷製パスタ・冷たいミネストローネ…) 確定して食べれると良いな~。

  4. ダムド・フィリス

    ダムド・フィリス、シーフだ。 飯が食えそうなんで来た。食えなくても報酬で食うから構わない。 初戦闘なんで世話掛けると思う、宜しく。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0