大宗教戦争(?)、勃発

夜帷かもめ

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シナリオID:961

オープニング

「あぁ……尊いわぁ」
 酒場のカウンターに女が一人、昼もまだ早い時間から座っている。彼女の前には、ジョッキがひとつと紙が一枚。紙には何やら人物像が描かれているのが見て取れる。

「良く飽きねえな」
 マスターが苦笑いするのも無理はない。女が飲んでいるのは、紅茶。それで朝からかれこれ数時間居座っているのだから大したものだ。
 彼女は授恵者である。つい先日、旧帝国領から依頼を終えて帰還してきたばかりの、いまは充電期間らしい。かれこれ一週間ほど、この酒場兼宿屋には逗留している。特に何をするでもなく、起きては階下のカウンターにやってきて紅茶を飲む。そして、依頼の報酬として手に入れたという肖像画を見て懸想に耽るのが最近の日課だ。

「それはそうよ。ああ、あの思慮深いフードの下に隠された艶やかなウロコ。主の傍らに侍る賢者としての立ち振る舞い……噂には聞いていたけれど、実際にこの眼で見ると感激もひとしおと言うものよね」
 同意を求めているような口調だが、彼女の視線はマスターには向いていない。ただただ、手元の肖像画――帝国のレイウェスト皇子に侍る近衛騎士、エフレムのものだ――に熱い視線を注いでいる。
 時おりこの酒場でも見かける、自分の話に酔っているタイプの手合いだ。真面目に相手をするだけ無駄だと理解しているマスターは、適当に相槌を打っておく。どうせこの時間は酒場の客も少ない。紅茶一杯だけでも売り上げが上がるだけマシだ。

「ふぅん、主従(レイウェスト×エフレム)萌え……ね。なかなかイイ趣味をしてるじゃないの」
 だが今日は少しばかり事情が違った。延々と一人語りを繰り返す女冒険者に、横合いから声が掛けられた。声の主はカウンターの椅子を引き寄せて女の横へと座る。重みを受け止めた椅子が、ギシリと音を立てた。肖像画に落ちた影を見て、女が声の方へと向き直ると、そこには筋骨隆々たる大男(オネエ)が笑みを浮かべて座っていた。
「でも、結ばれないことで気高くなる恋もあると思うのよ」
 勝手に主従を恋人にしないでください。
「その点でやはりエルフ×ドワーフは永遠のテーマと言わざるを得ないッ! 種族レベルで引き裂かれてしまう禁断の愛。これこそ正に人類が求めてやまない生命の叙事詩……」
 盛り上がった二の腕で自らの分厚い胸板を掻き抱き、身もだえするマッチョ。ドワーフ×エルフではないんですね。どこからか湧いてきた種族萌え論者を前にして、マスターの苦笑いに皺が数本刻まれた。

「聞き捨てならないわね。人類の愚かしさを知れば、貴方がたももふもふ(パンダ)の素晴らしさに目覚めるでしょう」
「なにッ!?」
 気が付けば、酒場の入口に誰かが立っている。表からの逆光を浴びてその顔は良く見えないが、背格好からするに老婦人のようだ。彼女は視線が自分に集まった事を確認すると、ゆっくりとホールの中央へと歩みを進めた。
「物事は何事も中庸、白と黒のバランスこそ至高というもの。愛くるしく、理想を体現した神のみ使いたるパンダを崇めるGP(ジャイアントパンダ)教のすばらしさを教えて差し上げます」
 祈りと共に面々に手渡し(押し付け)たソレは、『絵パンダ』である。最近ダンジョン攻略のオトモにと、冒険者の間でひっそりブームになっていたアレだ。
「もう持ってるわよ。信者じゃないけど」
 エフレム萌えの女冒険者が言う。種族萌えのオネエは特に興味を示した様子もなく、儀礼的に礼を言って絵パンダを懐へとしまい込んだ。GP教信者の老婦人も、これ以上押し付けをするつもりはないらしい。

「「「とにかく」」」
「主従は」「種族萌えは」「もふもふは」
「「「素晴らしいのよ」」」

 三人の声がハモる。気が付けば、人だかりが出来ていた。騒ぎを聞きつけて他の客席からも人が集まって来たらしい。みな、思い思いに自分自身の主張を声高に言い立てていた。そして、誰もが他人の話を聞いていない(・・・・・・・・・・・・・・)!

 色々と諦めた顔で、マスターが呟く。

「勝手にやってくれ。ワンドリンク、注文は頼むぞ」

解説

 特に特定の宗派が優れているとかそういうシナリオではないです。  単に早口なオタクが自分の推しについて酒場で語るだけのシナリオです。  主張がぶっ飛んでいたり、声が大きかったり、実体験に基づいていたり……  説得力が高い主張を繰り広げた場合にはMVP(The Most Vehement Philosopher)に選ばれるかもしれません。  妄想設定で文字数割り当て分のノベル書け、でもかもめが頑張ります。 目的 ・自分の推しや信仰について語ろう! できること ・たくさん語ろう!  その結果、酒場の聴衆からどんなリアクションが返ってくるかは保証されません。  信仰活動の証(例:ドゥジン教の冊子)とかあると一目置かれやすい。 ・啓蒙されて新たな信仰に目覚める。 ・純粋な聞き手に徹する(相槌など打つときっと喜ばれます) やってはいけないこと ・他の宗派をディスること。ダメ、ぜったい!。 ・格付け、あるいは勝敗に繋がるような言動 予想される反応 ・概ね好意的(みんな慣れてるので)です。 ・コメディ寄りの絡みとかが発生するかもしれない。 ・自分語りしてドン引きされたいっていうMの方もそれはそれで。 リプレイとしての立て付け ・巷で噂される最新の情報をまとめることには意義がある、ということでギルドが報告書をまとめます。 ・特に依頼があったりするわけではないので、金銭的な報酬は出ません。 ・いろんな話を聞いたり、持論を述べることで経験にはなるでしょう。

マスターより

 設定としては酒場ですけど、別にお酒入ってなくても半日くらいは語れますよね?  授恵者(オタク)ですもの。

リプレイ

「聞き捨て――ならないわね」
 カウンターに並んだスツールの一つから声が上がった。口元に運びかけた本日のおすすめ(お魚サンドイッチ)を皿へと置くと、声の主はスツールから降りて店内へと向き直る。真紅の髪と静謐な夜の闇にも似たシスター服が特徴的な、シャロン・ラ・モリエールだ。
 その横では、悠人・ラドルファスが手にしたサンドイッチを見、萌えを語る三人(主従・種族・GP教萌えな連中)に視線を移し、最後に新たなる参戦者(シャロン)を見据えた。
「シャロン、マジか……?(関わり合いになりたくねえ)」
「もちろん。このサンドイッチは美味しいけれど、それにも代えられない尊さが推しにはあるの」
「……お、おう。そうか」
「ええ」
 言い切りやがった、コイツ。シャロンにメシでも奢ってやろうと思ったらこの始末である。全く予想だにしない事態だが、彼女を置いてこの場を離れることも出来なさそうだ。
(今日の占いってどうだったっけな……)
 そんなことを思いながら、悠人は新鮮な野菜と魚のフレーク、それにたっぷりのハーブが練り込まれたお魚サンドイッチを一口齧る。

「語ろう」
 だが、あくまで冷静に――だ。小さな椅子から巨体をのそりと持ち上げて、ハッタ・ムラムラは呼びかける。均衡の伝道師(GP教の僧兵)である彼としては、議論が白熱することは良い。だが、特定の主義主張に傾倒することがあってはならない。
「今いる此処が、到達点ではない」
 主従萌えは、種族萌えは、そしもふもふ萌えは、果たして生まれた時から有していた稟賦であるか。答えは――否である筈だ。だからこそ、互いの萌えを理解した上で、だ。
 アルパカ主人×パンダ従者という次の境地について語り合おうではないか。

 テス・クラルスは神に感謝した。彼の長い耳は、酒場で起こった一部始終を残さず聞き留めていたのだ。
(僥倖、とはこの事かもしれないね)
 主従萌えの王道も良いだろう。推しが向こうからやってくる(GP教徒のパンダと行き会う)なんてこともそうあるものではない。それらをBGMに聞きながら、美酒を傾けるだけでも良い夕暮れとなるだろう。
 ――だが。
「私も伊達に長くは生きていない……その経験を踏まえて言おう。従×主(攻守逆転)こそ最高であると!」
 この心にふつふつと湧き上がる思いを、語らずにはいられようか!?

 シャロンとテスが互いに視線を交わし、その瞳に宿る熱気を感じては推し語りの口火を切ろうとした――その時。
「役者が足りないのではなくって!?」
 勢いよく酒場のドアが開かれた。Here comes a new challenger(金欠だけどこれは見逃せない)! 自分を忘れてはならぬとリリリリスは主張する。
「私(ワタクシ)の華麗で優雅、華憐な拘りを教えて差し上げますわ!」
 拘り is 私。拘りのためなら死ねる。推ししか勝たん。その生きざまを以て拘りを体現するリリリリスの立ち姿には、抑えきれないカリスマが後光となって見えていた(単なる夕陽の逆光です)。

 サイラスはリザードマンである。それ故に、彼の表情は同種以外からは少し分かりにくい。もしサイラスの仕草や顔色を窺っていた者がいたならば、彼の瞳がわずかに細められたことに気が付いたかもしれない。
(なんだコイツら。面白)
 自分自身もとある目的に密かな情熱を燃やしているが、その想いを自ら晒すことは無い。それは、人々の共感を得られるものではないと自覚しているからである。だからこそ、衒うことなしに自分の推しや情熱を勢いのままに語る目の前の連中は、サイラスにとって興味の対象となった。
「話すならちょっと纏まらんかね。このままだとうるさいし」

「ひのふのみの――九人(授恵者ら&一般人三人)か」
「テーブルを移ろう」
 それぞれがそれぞれのテーブルで主義主張を始めたら溜まったものでは無い。既にヒートアップ気味の語り手たちを横目に、サイラス、悠人それにハッタの三人は奥のテーブルの使用許可を取ると料理やドリンクを運び移す。

●
「……で、みんな。何が好きなの?」
 いろいろと諦めた表情で悠人が問いかける。どうせ収集がつかないなら、自分でコントロールした方がマシだった。
「良くぞ聞いてくれたわ」
 待っていました、とばかりに口火を切ったのはシャロンである。その手には、『シルトラース帝国崩壊』と箔押しの文字で彩られた皮張りの本が握られていた。
「シャロン……」
 お前からかよ。何だ、それ。持ち歩いてるの? 言いたいことは山ほどあるが、話を止めてもしょうがない。続きを、と促すとシャロンは大きく頷いた。
「冒頭の皇子の嘔吐シーンにはグッときますね! あのように美しい方でも一皮剥けば汚物の詰まった肉袋に過ぎない……そんな人間らしさが垣間見え、同時にいかな美男美女でも災厄からは逃れられないという世の道理をあの情景には感じます。皇子の儚さがこれでもかと詰め込まれていますね」
「ちょっと待って、ストップ」
 え、なんて? 開幕早々の語りにサイラスがストップを掛けた。情報量が多い。推し語りをうまいこと聞き取れれば記録にしようとか考えていた彼であったが、如何せんオタクの勢いを舐めてたかもしれない。とりあえずゆっくり行こう。

 オーケー? よし。

「完璧なものに、敢えて一点。瑕を付けるという所にあなた様の拘りを感じますわ――えーと」
「シャロン・ラ・モリエールよ」
「モリエール様。ですが、完璧なものは完成されているが故に、完璧なのです」
 だからこそ、高い完成度のものを蒐集し、愛でることはそれ自体が尊い行いなのだとリリリリスは主張した。そう言って手に取ったのは、自らの髪を彩っているティアラ。そしてその中央に嵌め込まれている翠玉の輝きである。
「これが私自慢の一品ですわ!」
 彼女自身で誇るだけあって、リリリリスの身なりは頭の上から爪の先まで、仕立ての良い衣装で揃えられている。その中でも、煌びやかな宝石で飾られたティアラは細工の緻密さもあって、王族のものと言っても過言ではないように見える。
「それ、見せてもらってもいいか?」
 リリリリスの語りに喰いついたのはサイラスだった。鍛冶屋としての顔を持つ彼としては、ティアラに施された装飾や地金の製造法に興味があった。
「これぐらい手の掛かった宝飾だと、手入れも大変なんじゃないの?」
「そう! その通りですわ」
 サイラスの言葉に我が意を得たりとリリリリスは膝を打つ。一流の品々は、手に入れるまでも、手に入れてからも非常に手間が掛かる。だが、それを含めてこその一流(・・)なのだと――彼女は力説する。リリリリスの脳裏には、ティアラを仕立ててもらうまでの苦労がまざまざと思い出されていた。気難しい工匠を説き伏せて細工を頼むまでの苦労、資金難の為に売り払った数々の道具、野原で野兎と共に野草を食べている所を友人に頭を踏まれたあの衝撃……。
 どれもみな、今となっては懐かしい。
 一つ一つの思い出を噛みしめるように、彼女は特製の『百合茶ラテ』を口に含んだ。美味しい。

「なるほど。レイウェスト皇子や宝飾品は単独でも素晴らしいし、わざと欠点を際立たせても魅力的だ」
 リリリリスの次に語りを引き継いだのは、テスだった。
「しかし、その魅力が掛け合わせられ、相乗効果で更に高まるとしたらどうだろうか……?」
 素晴らしいと、思わないかい? そこまで言って、穏やかに微笑む。
「その通りです!」
 主従萌えの女冒険者が同調した。彼女の声を受けて、更にテスは続ける。オーソドックスな主×従も良いだろう。だが、そこを敢えての従×主! 日頃は献身的に護衛を務めるエフレムが、唯一の主レイウェストへ一夜限りの下克上――最高じゃあ、ないか。感極まった表情でテスは立ち上がる。手が机を打ち、なみなみと注がれていた葡萄酒が少しはねた。
「え……と、質問。いいか?」
 悠人がこぼれた葡萄酒を拭きながら、小さく手を挙げる。テスが頷くと、悠人は思い浮かんだ疑問を口にした。
「その、掛け算? 右側と左側の役割ってなんなんだ」
 先ほどから当たり前のように皆が使っているが、そういった(・・・・・)文化に疎い悠人としては訳が分からない。主×従と従×主で何が違うのか。
「えっ、そ……それはですね。受けと攻め、といいますか……」
 隣から発せられた質問を聞きとめ、シャロンが顔を赤らめる。改めて問いかけられると――それも、知り合いからとなると――気恥ずかしい。答えられなくも無いが、答えたくはない。言葉を濁したシャロンを横目に、テスは言い切る。
「睦み事の時に、どちらが主導権を握るか――ということだね」
「睦み事」
「そう。つまりは×××(自主規制)だよ」
 夕暮れ時の酒場とはいえ、まだ表通りは明るい。そんな最中からなんという事でしょう。いや、今さらか。疑問は解かれたにも関わらず、悠人の表情は冴えない。
 そうか、と一言呟くと香草入りのソーダを注文した。苦みや刺激のある炭酸水でこのもやもやは洗い流すとしよう。

「君たちの癖(ヘキ)――堪能させてもらった」
 満を持して、ハッタが口を開く。ここまで、彼は静かに沈黙を貫いていた。
「いずれも皆、素晴らしい。それぞれが推すに足る、味わい深いものだった」

 だが。

 ハッタは続ける。
「推しとの出会い、その黄金との邂逅を」
 自分の裡に留めておくのはもったいないだろう。推しは、ふたつあっても、みっつあっても、それ以上あっても全く問題無いのだ。その全ての出会いが、おれたちに新たな数多くの胸躍る体験をもたらしてくれるに――違いない。

 だから。

「乾杯」

 語り明かそう。飲み明かそう。そう言って、彼は盃を傾けた。

●
「エフレムさん、格好いいよね。おれ、あんな感じで頑張ってる人好きだよ」
 サイラスが悠人に話を振る。なんとなく自分と似たような気配を感じて、気まぐれに話しかけてみたのだ。視線の先では、テスとシャロンが互いの推し作品を交換しては読み合っている。ドゥジン教の布教誌をマジカルポケットから取り出すテスの姿を見て、半目になる男二人。それってそういう用途に使うものだっけ?
「そうだな。確かに一つの事に打ち込む姿というのはいい」
 だが、嘔吐ひとつでそこまで盛り上がれるというのはどうなんだ――シャロン。自らが長らく失ったままの情熱を露わに語る授恵者の姿は、うらやましいと思う一方で。さすがにその対象は選ぶべきなんじゃないかなあと。サイラスの言葉を耳の端で聞きながら、悠人はぼんやり思う。その意味で、サイラスの語りは悠人としても安心して聞くことが出来た(ブッ飛んだところが無く、聞きやすい)。
「まあ――何事も最良であるのはいい事だと思うけどね。さっきあっちのキラキラお嬢様が言ってたように」
 話題に上ったリリリリスは、先ほどからハッタと共に厨房に潜り込んではなにやらやっている――閑話休題(それはさておき)。
「処理道具にされたとか、道半ばで倒れたとか。裏切られた奪われた操られた……なんて悪い話もいいと思う。足掻きを知るからこそ良いも悪いも愛おしいも酷いも勇ましいもいやらしいも全て感情を揺さぶられる素晴らしい物と思えるというか――」
 饒舌になり始めたサイラスを、悠人は横目で見る。酔っているように見えなくも無いが、その真意は図りかねる。
「あんたの推し(・・)は、エフレムか」
「そういう訳でもないけど」
「その人」だけの物語の魅力を味わえるのが一番なんじゃねーの。そう言ってサイラスは息を吐いた。

 少し、時系列は遡る。
「私と言えば、美食への探求も心掛けていますわ」
 リリリリスはハッタと差し向かいの形になっていた。
「ふむ」
 ハッタの目の前にはソーセージにパン、シチューなどがあった。数々の料理が所せましと並べられているのは、なかなかの壮観だ。ヒューマンの少女は食事にも一家言あるという。その言葉に違わず、上品な所作ながらも旺盛な食欲を見せるリリリリスの振る舞い自体が興味深かった。
(ここの酒場――料理も美味しいですわ)
 ハッタのつぶらな黒目がちの瞳に見つめられつつ、リリリリスはシチューに浸したパンを口へと運ぶ。何を隠そう、まともに温かい食事など三週間ぶりのことである。塩と黒パンだけの食事にはもう飽きた。路銀が尽きて、食費に回すものが無くなっていたのだ。正直いってヤバかった。
 人心地ついて、リリリリスはふと、思う。今こそ予てから考えていた、食の新しい境地を拓く時ではないかと。限界を定めるな――とこのハーフビーストの御仁も言っていた。
「私手ずから、ここの調理場でその拘りを披露して差し上げますわ!」
 そんな彼女の提案を受けて、ハッタとリリリリスの二人は酒場の調理場を借りる事になったのだ。

「ウィリアム王子ってよく踊る子熊亭でお見かけするじゃないですか。公式供給が多いって……いいですよね」
「なるほど。推しが身近にいるというのは素晴らしいね」
「――そうですよね!?」
 シャロンとテスの二人はすっかり意気投合していた。CP(カップリング)斯く在るべしという論議から、今は推しのどこが素晴らしいかに話題が移っている。
「その通りだ。私も推しと出会って……人生が変わった(・・・・)」
 思わせぶりに、タメを作りながら話すテス。シャロンもついつい引き込まれた。
「かつて私は絶対的な攻めを至上としていたが――私の価値観は大きく覆されたのだよ。年下の恋人の手によって!」
 あっ、これノロケだ。シャロンが気が付いた時には少しばかり手遅れだった。同志(獲物)を見つけたテスは、嬉々として推し(恋人)が素晴らしいかを熱弁する。これまで背中をついてくるばかりだと思っていた者が、全てを知り尽くした間柄のはずの彼がこれまでにない表情でこの私を攻めてくる。その背徳感たるや!
 勢いよくテスが立ち上がる。抑えるものがいないテーブルが、今度はひっくり返った。

「ぐわーーーっ!!!」
 叫び声はホールに居たテスやシャロンのものではない。宿屋の奥、調理場の方からだ。
「なんでしょう?」
 シャロンを筆頭に、テスや悠人、サイラスも続いて調理場へと走る。そこには……。
「し――死んでる!?」
 香水の瓶を片手にひっくり返ったリリリリスに、口から泡を吹いているハッタの姿。口元が赤く染まっているのは傍らに湯気を立てているデーツのシチューを口にしたからか。
「アルパカ主人×パンダ従者を……求めよ……ぐふっ」
「いや、生きてるな」
 見下ろす悠人に一言告げて、ハッタは気を失った。リリリリスもどうやら無事なようだ。

「おいおい――勝手にやってくれとは言ったが、トラブルは勘弁してくれよ」
 ひっくり返ったホールのテーブルに食事の代金。それにこの調理場の始末も全員で片を付けてくれよと、やってきたマスターが眉間にしわを寄せる。九人揃って後片付けと、少し足りなかった代金は裏方でバイトして補うことになった。

「いやこれ、報告すんの?」
 こんな顛末、ギルドにどんな顔して伝えたらいいんよ。サイラスの疑問に答える者はいない。加熱されて無駄に匂い立つ、香水の香りだけが辺りには漂っていた。

マスターコメント

ご覧のありさまですよ。お疲れさまでした。 なんか料理にでもヤバイ草とか入ってたんじゃないですかね、実は。 プレイングをじっくりコトコト煮込んだらこうなりました。 楽しかったです。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:無し6 / 4〜6人

2021年06月13日 17時24分30秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. シャロン・ラ・モリエール

    シャロンです。シスターをしております。 指が勝手に予約しておりました。 ドン引き性癖を公開する覚悟完了しております。よろしくおねがいします。 宗派はウィル×レイです。

  2. ハッタ・ムラムラ

    ハッタだ。世話になる。

  3. 悠人・ラドルファス

    悠人・ラドルファス よろしく なんか気が付いたらいたけど聞く専っぽくなるかも まぁ、みんな元気に話していってよ

  4. No.4

    サイラスだ、よろしくなー とりあえず聞く専寄りかなと

  5. リリリリス

    私(ワタクシ)ですわ! さぁ、私も語り事を沢山語らせていただきますわ

  6. テス・アウレア

    やぁ、こんにちは テス・クラルスだよ 存分に推しを語れる機会なんて滅多にないからねぇ 皆さんのお話も楽しみにしているよ よろしくね!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0