トレジャー
小湊拓也
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シナリオID:753
オープニング
リオン・ネートはエルフの美青年で、魔法による遠隔攻撃を得意とするキャスターであったが、その実力をろくに披露する事もなく最初に死んだ。
この洞窟の主であるトロルに岩を投げつけられ、綺麗な顔面を粉砕されたのだ。
シーフの少年テリィ・ベスは、ルチアと共にトロルと戦い、負傷した。
負傷したテリィを庇って、ルチアは少しばかり張り切り過ぎたようである。
ヒーラーのエドン・ロッサがテリィを治療してくれている間、ルチアはトロルと相討ちを遂げ、上手い具合に死んでくれた。名誉の戦死、と言って良いだろう。
そして今、テリィがエドンを刺し殺したところである。
「へ……へっへへへへ。悪いなあ、みんな」
血染めの小剣をくるくると弄びながらテリィは、エドンの屍をまたいだ。
洞窟の、最奥部。
年代物の宝箱が、テリィの目の前に鎮座している。棺のようにも見えてしまう、大型の宝箱。
トロルがこの宝箱を守っていた理由は、わからない。知能の低い怪物なりに、こだわりのようなものを何かしら持っていたのだろう。
洞窟に棲む魔獣や敵性亜人の中には、そのような個体も存在する。自身で換金するわけでもない金銀財宝の類を、とにかく守っているのだ。
「使いもしねえ大金をよ、守ってたってしょうがねえだろ。俺が有効に使ってやっからよ」
トロルの屍に、テリィは語りかけた。
事前に、調べ上げた。
数百年前この地を治めていたボルゲイン・ボルドー伯爵は歴史に名を残す暴君で、搾取に搾取を重ねて大いに私腹を肥やし、財を成した。
そして、その莫大な私財を分散し、領内のあちこちに秘匿・埋蔵したという。
この洞窟が、ボルゲイン伯爵の隠し財産が眠る場所の1つ。
その情報を掴んだのはテリィである。ルチアも、リオンもエドンも、それに乗って来ただけだ。
手強いトロルを斃した時点で全員、用済みである。
「やらねえよ、てめえらにはなぁ……へへ、へっへへへ。お宝はよ、俺が見つけたんだ。俺1人のモンだっての……」
姉御面の鬱陶しいルチアも、気障で鼻持ちならぬリオンも、偽善者のエドンも、死んでくれた。
この宝箱の中身を正当に所有する権利を持つ者は、今や自分テリィ・ベス1人である。
慎重に、テリィは宝箱を解錠した。重い蓋を、ゆっくりと開いてゆく。
角灯をかざし、宝箱の内部に光を降らせる。
何も無かった。
テリィは、息を呑んだ。
「空っぽ……だと……おい、ふざけんじゃねえ……」
何もない宝箱の中へと、上半身を突っ込んでゆく。
底に手を触れ、まさぐり回してみても、何もない。二重底の仕掛けも見つからない。
まさしく、空っぽである。
「俺の調べが間違ってたってのか!? んなワケねえ、俺ぁ間違えねえ! お宝が! ここになきゃあいけねーんだよぉおおおおお!」
宝箱の蓋が閉じた。まるで肉食獣が、獲物を食らうように。
テリィは、宝箱の中に閉じ込められていた。
閉じ込められて、気付いた。
「何だ……何だよ、あるじゃねえか。ちゃんと」
大量の金貨が、宝石が、金銀の細工物が、宝箱の中を満たしていた。
テリィは今、様々な宝物類に全身を圧迫されている。硬い圧力が、この上なく心地良い。
「お宝……お宝、お宝! 誰にもやらねえ、俺だけのお宝だぁあああ!」
テリィは、金銀財宝の風呂で溺れていた。じたばたと暴れる両手両足が、宝物類をかき回し跳ね上げる。
落下して来た金貨や宝石が、顔面にぶつかる。その痛みすら、心地良かった。
血まみれのまま、ルチア・ドールは息を呑んでいた。
相討ちの格好でトロルを仕留めた後、少しの間だけ気を失っていた。死んだ、ように見えたかも知れない。
折れた骨が、体内のどこかを傷付けている。
血を吐きながら目覚めたルチアは、まずはエドンに傷を治してもらおうとした。
そして見た。エドンが、テリィに刺し殺される様を。
そのテリィが今、宝箱に食われている。
蓋の内側に牙を生やした宝箱が、テリィの肉体をグッチャグッチャと咀嚼している。
原形を失ったテリィが、宝箱の中で暴れているように見えた。血まみれの肉片が、角灯の明かりを受けて生々しく煌めきながらビチャビチャと箱の外まで飛散する。
宝箱から金貨や宝石が溢れ出している様に、見えなくもないのか。
「金銀財宝に溺れる夢……でも、見てるのか? テリィ……」
呆然と、ルチアは語りかける。応えはない。
テリィは、良い弟分であった。
結局は、しかしルチアがそう思っていただけ、だったのだろう。考え無しに可愛がるだけで、テリィの抱く心の闇に気付いてやれなかった。
「金は……欲しいよな、当然……見つけたら、独り占めしたくなるよな……」
立ち上がれぬまま、ルチアはうなだれた。
金欲しさに、安易な宝探しに手を出した。自分たち全員が愚かであった、という事だ。
宝箱が空っぽであった理由は、わからない。すでに中身が盗み出された後なのか、あるいは最初からボルゲイン侯爵による目くらましであったのか。
テリィは、絶望した事であろう。
金銀財宝に満ちた宝箱を、夢見ていた事であろう。その夢を叶えるために仲間を1人、刺し殺してしまったのだ。
結果、見つけたものが、空っぽの宝箱である。
クリーパーを引き寄せるには充分過ぎる、夢と絶望。
金貨や宝石で一杯の宝箱を最後まで夢見ながら、テリィは死んだ。その屍が今、宝箱もろともクリーパーと化した。
牙を生やした宝箱の中から、ずるりと何かが這い出して来た。
テリィか。実は、生きているのか。
いや違う。
血まみれの肉片で構成された、人型の何か。両腕の先端は五指ではなく、鋭利に露出した金属質の骨である。
刃であった。まるで、テリィの振るう小剣のような。
全身の皮膚を剥がされたテリィ、のようにも見えてしまう、それはクリーパーであった。
それが2体、3体と、宝箱の中から溢れ這い出して来る。
このままではクリーパーの群れが、洞窟を出て人々を殺傷する。
まずは、ルチアが殺される。
両手の刃を揺らめかせて、クリーパーたちがルチアに迫った。重傷を負った女戦士の身体を、切り刻もうとしている。
動きは素早い。テリィの身体能力を、奪ったのか。
「……テリィ……ごめん……リオンも、エドンも……本当にごめん……」
血を吐きながらルチアは、もはや言っても仕方のない事を言い続けるしかなかった。
「みんな……ごめんよ……」
解説
マスターより
リプレイ
「ぶち殺しますわよ、この欠食児童」
そんな会話をしながら少女が2人、足取り軽く場に歩み入って来た。
片方は、絶世とも言える美少女。よく見るとゴブリナである。もう片方は、小動物のようなハーフリング。
死に際の幻覚か、とルチア・ドールは思った。自分は今から、クリーパーの群れに切り刻まれる。
そのクリーパーたちが、ルチアの眼前で防壁に激突した。魔法の防壁が、そこに出現していた。
「会話の出来そうな人を、まずは救助対象に認定」
バンビと呼ばれたゴブリナが、ルチアに向かって片手をかざし、防壁を出現させていた。
「バンビはね、テリィ・ベスという家出人を捜しておりますのよ。ご存じありませんこと?」
ルチアは言葉で答える事が出来ず、ただ人差し指を向けた。
クリーパーたちの発生源とも言うべき、巨大な宝箱に。
牙を生やした蓋の内側で、テリィはもはや原形をとどめていない。
「ありゃあ……」
ハーフリングの少女が、そんな声を漏らす。
バンビは、小さく溜息をついたようだ。
「……形見を、持ち帰る事になりそうですわね」
魔法の防壁に激突し、折り重なって倒れたクリーパーたちが、起き上がって体勢を立て直す。
皮膚を剥がされた人体のような、人型のクリーパーである。両手で露出した骨は金属状に発達し、鋭利な刃物となっている。斬撃種、とでも呼称すべきか。
そんなものが、9体。負傷したハーフビーストの女戦士を切り刻もうとしていたところである。
どうなのだろう、とアルマ・ヴァレンタインは思った。
クリーパー。禁断の食材である。
「オークよりも、オーガよりも、美味しいかな?」
「おやめなさい。お腹、壊しますわよ。ハラワタぶちまけて死にますわよ」
バンビが言った。
「その死体がクリーパー込みのアンデッドになって、バンビが粉砕しなきゃいけなくなる。余計なお仕事、増やさないで欲しいですわ」
「バンビさんは、粉砕しに来たの?」
「……人捜しに、来たのですわ」
宝箱の中で揺らめき蠢いている屍に、バンビは語りかけていた。
「テリィ・ベス。あんた一攫千金を夢見て家出したきり、だそうですわね? 御家族から捜索依頼が出てましてよ。まったく、授恵者になれば簡単にお宝ゲット出来るとか……浅はか過ぎて、もう何とも言えない感じになってしまいますわ」
クリーパー化した宝箱に、食われて死ぬ。
テリィ・ベスは、まさしく一攫千金を夢見て死んだのだろう、とアルマは思う。
人捜しの対象が、すでに死亡している。
人捜しに来た者が、この場にいる必要はもはやない、はずであった。
そんな場所から、しかし立ち去らないのが、このバンビというゴブリナであるようだ。
「負傷者の救助、及びクリーパー殲滅。ハイスピード・キャスターの名にかけて両方、最速でこなしますわよ。そこのハーフリング、お手伝いなさい」
アルマに言った、わけではないようだ。
「あんたもアレでしょう、浅はかにも一攫千金を夢見てフラフラしてる輩の一種。たまには世のため人のためになる事をしても罰は当たりませんわよ?」
「……人助けなら、割とやってる方なんだけどね。金儲けには、なかなか繋がらないというね」
言葉と共に、男のハーフリングが1人、岩陰から姿を現した。
ハーフリングなので、ヒューマンの少年にも見えてしまう。だが同種族のアルマが見れば、わかる。恐らくは30歳に近い。
「というわけで、浅はか者バーネット・フォーサイスだ。このところ懐が寒いんで、噂の隠し財産を拾得横領しに来たわけなんだが……当てが外れたかな、こりゃ」
名乗ったハーフリングに、斬撃種たちが襲いかかる。
「よろしく。お嬢さん方……でクリーパーども、お前らとよろしくやる気はないっての! 熱烈歓迎は無用に願うぜっ」
バーネットが、杖を掲げる。
雷鳴が、洞窟内に轟いた。
猛然と斬りかかって来た斬撃種たちが、荒れ狂う稲妻の嵐に灼かれ痙攣している。
そこへ、黒豹のような影が襲いかかった。
「……いい足止めだ。助かる」
黒豹が言葉を発し、光を一閃させる。
斬撃の閃光が、クリーパーたちを薙ぎ払っていた。
どす黒い返り血を浴び、大剣を構え直しているのは、黒豹の耳と尻尾を有するハーフビーストの青年だった。
同じくハーフビーストの、負傷した女戦士に、彼は声をかけた。
「ルチア・ドールだな。リオン・ネート、エドン・ロッサ、それにテリィ・ベスは……間に合わなかった、か」
「あんた方は……もしかして、ギルドから?」
「捜索依頼だ。お前たち4人、行方不明という扱いになっていたからな……ギルドとは、もう少し連絡を密にした方がいい。俺は、スヴァン=ウォルフ=ユーウェンという」
「ネーヴェ・グラヌローザと申します。スヴァンさんと共に、ギルドより馳せ参じました」
声がした。清かな渓流を思わせる、透明な声。
エーテルの流れを、アルマは感じた。自分と同じヒーラーが現れた、と思った。
たおやかなエルフの女性が、そこにいた。ルチア・ドールの血まみれの肩に、優しく手を触れている。
負傷した女戦士の身体に、治療が施されてゆく。
治療を行いながら、ネーヴェはちらりと見回した。
「ええと……あなた方は?」
「別口の依頼ですわ。まあ……死亡確認、という事になってしまいましたけど」
「お宝目当ての風来坊さ。ま、うまい話なんてそうそう無いよな」
「風来坊その2。お宝は、きっちりゲットしていくよん」
アルマは見回した。クリーパーの群れに遮られて、今は見えない。
しかし、この洞窟には間違いなく在るのだ。人食い宝箱などではない、本当の宝が。
アルマは、祭刀を掲げた。
その刃から、光り輝くエーテルが溢れ迸り、この場にいる授恵者全員を包み込む。
「おっ……こいつは」
バーネットが、それにバンビが、エーテルの光まとう己の身体を見下ろし見回す。
「錯覚、ではありませんわね。身体能力が、半端なく向上してますわ」
「……頼りになる連中、のようだな。背中は任せる」
エーテルの輝きを帯びた身体で、スヴァンが踏み込んで行く。斬撃種の群れへと向かって、光の豹の如く。
ふっさりと豊かな尻尾が、獰猛に泳ぐ。
バンビの目が、キラキラと輝いた。
「はうっ……な、何て野蛮な獣の美、まさしく蛮美!」
「おいっ、やめろ尻尾を触るな!」
怒声か悲鳴か判然としないものを張り上げながら、スヴァンは斬撃種たちと激突していた。
「さあっ、さあさあ、バンビの蛮美もお見せしますわ! 美しきもの、野蛮であれ!」
笑い叫びながら、バンビが尊大に片手を掲げる。優美な五指が、掌が、光を発する。
その光が巨大化し、迸った。激しく燃え輝くエーテル光波が、クリーパーの群れを直撃する。
斬撃種の群れが灼かれ、砕かれ、だが辛うじて原形を維持しつつ斬りかかって来る。
それを、ハーフビーストの戦士2名が迎え撃つ。
「やれるのか、ルチア・ドール」
「……見たところ、前衛が不足してる。私だって盾の役割くらいはっ!」
スヴァンの言葉に、そう応えながら、ルチアが剣を振るう。
バーネットが、それを援護すべく杖をかざした。
「無理は禁物だぜ、お嬢さん!」
いくつもの光弾が生じ、クリーパーたちに降り注ぎ、斬撃種の何体かにとどめを刺した。肉片が、飛び散った。
それを蹴散らすように、何かが伸びて来た。
巨大な、口。刃物のような牙を並べた、上下の顎。
それが、寄生虫の如く伸びた臓物を引きずって飛来し、アルマを襲う。
とっさにネーヴェは、棍を構えた。先端をアルマに向け、エーテルの聖なる流れを錬成した。
アルマの小さな身体が、淡い護りの光に包まれ、牙を跳ね返す。
跳ね返った大口が、戻って行く。寄生虫のような臓物もろとも、宝箱の中へと。
その間。斬撃種の1体が、ネーヴェの間近に迫っていた。両手の刃が、疾風の速度で襲い来る。
「助かったよ、ネーヴェさん!」
アルマがぴょこんと踏み込んで来て、祭刀を振るった。エーテルの輝きを帯びた刃が、その斬撃種を粉砕していた。
斬撃種は、あと何体残っているのか。
何体かは残っている斬撃種が、しかしルチアの視界には入っていないようであった。
「テリィ……そこから今、解放してやる……!」
戻って来た牙で、仲間の屍を咀嚼し続ける宝箱。
それに、ルチアは猛然と斬りかかって行く。斬撃種3体による、横合いからの襲撃にも気付かぬまま。
スヴァンが、ルチアを突き飛ばした。
ルチアを襲撃するはずだった斬撃種の刃が、スヴァンに降り注ぐ。
血飛沫が、噴出した。
「! スヴァン……さん……」
「……少しばかり、気負いが過ぎたな」
血を流し、よろめきながらも、スヴァンが大剣を振るう。
エーテルの光をまとう一閃。斬撃種3体を、粉砕していた。
それが、最後の3体だった。
膝をついたスヴァンに、ルチアがすがり寄る。
「す、すまない! 私が……私の、せいで……」
「……折れた心を……立て直そうと、気負っているな。わかるよ……」
苦しげに微笑むスヴァンに、ネーヴェは癒しのエーテルを投げかけた。
光に治療されてゆくスヴァンの傍らで、ルチアがうなだれる。
「私は……自分が、本当に嫌になる……あまりにも未熟な、自分が……」
「未熟ゆえのやらかしなら、俺にもある」
スヴァンが、ルチアの目をまっすぐ見つめた。
「……俺は、メドゥの指先だ。元、だけどな」
「今は、違うんだろう?」
「色々やらかした事に、違いはない。お前なんかとは比べものにならないほど、な」
スヴァンは、微笑んだようだ。
「生き残ってしまった以上、背負っていくしかない……辛いよな」
「…………」
ルチアは俯く。
残るクリーパーは、もはや1体であった。
屍を咀嚼する巨大な宝箱。
そこにアルマが祭刀を叩き込み、バンビが魔弓の矢を撃ち込み続けている。
宝箱が、またしても牙を発射した。
臓物を引きずって食らいつく大口を、アルマが回避する。バンビもかわす。
その間ネーヴェは、ルチアに向かって片手をかざした。
たおやかな五指が、エーテルの輝きを振り撒いた。
その光がキラキラと、ルチアの剣を包み込む。
「これは……?」
「この度の事……あなたにとって、辛い結果となってしまいましたね。ルチア様」
ネーヴェは言った。
「その上、私は……さらに残酷な事を、あなたにお勧めしています。無理強いなど出来ません」
クリーパーを滅する、破邪の光をまとう剣。
その輝ける切っ先を無言で見つめるルチアに、ネーヴェはなおも語りかける。
「あなたに……この先へと進むきっかけを、どうか掴んで欲しいという、私の勝手な願いです」
宝箱の大口が、アルマとバンビを仕留め損ねて、こちらへ向かって来る。
その時には、ルチアは立ち上がり、駆け出していた。
宝箱の牙が、彼女を襲う。
砕け散った。
ルチアに食らいつく寸前だった牙が、上下の顎が、光弾の直撃で粉砕されていた。
バーネットの指先から、放たれた光弾である。
小さく頷くバーネットに、視線で返事をしながらルチアは、破邪の光まとう剣をクリーパーに突き込んでいった。
アルマが、バンビが、道を空ける。
宝箱が、原形なきテリィの屍もろとも、破邪の一撃を受けて砕け散った。
骨のひとかけらを、小袋に入れて持ち帰る事にした。
バンビの、この度の仕事の成果である。依頼人に、喜んではもらえないであろう。
「慌てる何ちゃらは貰いが少ないもの、ですわよ」
バンビは、小袋に語りかけた。
小袋に入る程度の成果すら、得られなかった者もいる。バーネットである。
「ボルゲイン伯爵ってのは、用心深い上に底意地の悪い人物でな。盗賊を惑わせたり騙くらかしたりするために、大層な空っぽの宝箱を用意したりもしたらしい」
洞窟のあちこちを調べ終えたバーネットが、そんな事を言っている。
「空っぽの宝箱を置いた、その近くに本物のお宝を隠す。裏をかくやり方としては、ありだと思わないか」
「なかったのでしょう?」
ネーヴェが言う。バーネットが頭を掻く。
「まったく、儚い夢だったぜ」
「一攫千金の夢、ですか……確かに、お金があれば働かずにのんびり暮らせますものね」
ネーヴェも何やら、夢を見始めているのか。
「生活に追われる事もなく、釣りでもしながらアーテルと一緒にまったりと過ごす……素敵だとは思いますけど」
そのために怪しげな宝探しに飛び付くのは何か違う、という言葉を、ネーヴェは呑み込んだようである。
ルチアがいるからだ。
バンビも声には出さず、心の中で小袋に語りかけた。
(おうちに帰るまでが冒険なのですから。身の安全が保障されるまでは仲良しごっこを続ける、くらいでなければ大成しませんわよ?)
「……テリィの家族の人たちには、私も会うよ。会って直接、怒られないと」
「無理はするなよ、ルチア」
スヴァンが、優しく言葉をかける。
「それにしても……一攫千金、か。金銀財宝より趣深いもの、世の中にはいくらでもあるのにな」
「例えば……チョコレート、ですか?」
ネーヴェが微笑み、スヴァンは咳払いをした。豊かな尻尾が、やや落ち着きなく揺らめく。
バンビは、じゃれついた。
「うふふふふふ。バンビも最近ね、冬毛を始めたりしておりますのよ」
「だから尻尾を触るな!」
スヴァンが逃げる。
少し離れたところではアルマが、彼女だけのお宝を堪能していた。
「いやー、いいトロルだね。強かったでしょ? これに勝ったんだから大したもんだよルチアさん」
「……みんなで、斃したんだ。もしかしたら……かわいそうな事を、したのかも知れない」
「お気持ちは、わかります」
ネーヴェが言った。
「けれど、冒険者を続けてゆこうとなさるならば……そのお考えのままでは、辛いかも知れません。残酷ですが」
「そう。だから、せめてさ」
アルマが、トロルの屍から、彼女なりに可食と判断したのであろう部分を手際良く切り分け、袋詰めしてゆく。
「……美味しく、食べてあげよう」
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準5 / 4〜5人
2021年04月07日 05時33分27秒 公開
相談掲示板
ヒーラーのネーヴェ・グラヌローザと申します。 何と……痛ましい話でしょう。欲に目が眩んで我が身を滅ぼしてしまうとは……。 一先ず、私はルチア様の治療に当たりたく考えておりますが、これから集まる方次第と言ったところで御座いましょうか。
仲間すら信用が置けないとはあさましいお話ですわね。 ハイスピードキャスターのバンビですわ。クリーパーはお引き受けしますので、 ネーヴェ様は存分にお力をお振るい下さいましね。
(トロルが食べられると聞いて) ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしく。 早々にそのキレイな顔をフッ飛ばされるなんて…リアクション芸は大事大事 ボクもクリーパー対応のほうにまわる(もう1枠のメンバーしだいで前衛)ので、 ルチアさんの治療はネーヴェさんにお任せしてもいいかな?
ウォーリアのスヴァンだ。よろしく頼む。 人型クリーパー共の対処に当たろうと思う。 ここに至る経緯だが……思い付かんな。 まあギルドで派遣か捜索の依頼でも受けた、ということにしておこう。
バンビ様、アルマ様、お気遣いありがとうございます。 それでは私はまず、「リヴァーオブヴァイタル」でルチア様の治療に当たりまして、それから後方にて皆様方の治療とサポートに専念致しましょう。治癒は一手に担いますから、皆様はどうぞ存分にお力を奮って下さいまし。 全体回復を持つと、代わりにサポートスキルは弱くなってしまうので悩ましいのですが、敵の数を考えると全体回復の方が無難かと考えております。 治療後のルチア様ですが、戦いに加担して頂きますか? 後方にてご自身の身を守ることに専念して頂こうと考えておりますが、他のご意見がありましたら遠慮なく仰って下さいませね。 >スヴァンさん 私もここへ至る経緯に悩んでいたところでしたの。 もし宜しければ、行動を共にしていたということにしても構いませんか? ギルドで捜索依頼を受けたとするか、偶々同じダンジョンを攻略していたとするのが自然でしょうか。
>ルチアについて 女戦士にも加担してもらえれば、こちらも楽ができて良いんじゃないか。 病み上がりに鞭打つようで悪いが……手は多い方が良い。 足手纏いになりそうなら下がっていてもらうが。 >ネーヴェ ああ、構わない。 (チョコレートの素材が落ちない方のダンジョンに興味は惹かれないから) 俺は捜索依頼を受けた、ということにしようと思っている。
>ルチアさん 戦闘参加で仇を取ってもらう?ほうが気持ちの整理がついたりするのかどうかー…? リヴァーオブヴァイタルで傷は全快すると思うけど、本人の意向を尊重したいところ 戦闘では全体支援を中心にセットしておくようにするね
キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >個人行動 とりあえず、俺はいつも通り敵の足止めと範囲攻撃だな。 細かいところはバンビと調整は必要だが、アーケインテンペストとかスタティックフィールドで 斬撃種の接近を止めるつもりでいる。 後は範囲攻撃をしつつ、余裕が有ればBS付与ってところか。 >ルチア 回復して動けるなら参戦してもらうと助かるが、その辺は本人次第だな。 あくま+αの戦力として考えるのが良いと思う。 >経緯 ここに至る経緯? 遊ぶ金欲しさに隠し財産を狙いに来た。 ……まぁ、無かったんだが。
>ルチア様について アルマ様の仰る通り、気持ちの整理をつける一助となるかもしれませんね。回復して、動けるようでしたら私からもそのことを話してみたいと思います。 スヴァンさんとバーネット様のお言葉も一理あると思います。確かに手は多い方が良い。ですが、あくまでプラスアルファの要素として考えるのが宜しいでしょうね。 >スヴァンさん ありがとうございます、助かりますわ。 それでは同行させて頂きますわね。捜索依頼で共に来た旨、私もプレイングに記載しておきます。
では俺が、アイアンウォールで、敵を物理的に阻みますから、バーネット様には アーケイン~の方でお願いいたしますわ。 ここを橋頭保に敵をぶっちらばしてやると安全だと考えますわ。
一日前になったので出てる方針に沿ってぷれいんぐだしてきたよー 大きな変更がないかだけちょこちょこ確認はしておくね
そんじゃま、俺は予定通り足止め中心で動こう。 後はメテオライト2で範囲攻撃をしつつ、宝箱に魔錆って所か。