古きメダルと束縛のクリーパー

広大野人

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シナリオID:622

オープニング

●発端

 ケースに整然と並ぶ、メダルの数々。
 黄金で作られたものもあれば、銀や銅で作られたものもある。鑑定士も唸るような不可思議な材質のものもあった。
「いつ眺めてもいいものだ」
 行商人である小太りの中年男――ボルボルド――は、口元を歪めていた。
 特にお気に入りは十数年前の帝国記念硬貨。
 美しい貴婦人達がメダル一枚一枚に彫り込まれており、極めて高い美術性を感じさせる。
「それにしても護衛で雇った冒険者が帰って来ないが……大丈夫なのだろうか……」
 テント外で一人待つボルボルドはケースを袋に入れると慎重に背負った。商に必要な商品や他のメダルケースは馬車の中だ。
 リーンエス王国から辺境都市群に向かう旅なのだが、なるべく最短距離を通ろうとしたのが失敗だった。
 王国を出てなだらかな山を進んでいた所で、中型クリーパーに襲われたのだ。
 冒険者を護衛で雇っておいたのは正解だったが、失敗はケチって人数を絞った事だ。
「無事……だよね? 死んでないよね?」
 『金は命より重い』が心情のボルボルドではあるが、これでも人の子。
 一応、雇った冒険者を心配する心はある。雇い、雇われという関係ではあるが、護衛の冒険者は手に負えない敵だと判断したのか、いち早く、商人を逃がしてくれた。
「陽が落ちてきちゃったし……火でも……」
 近くの林に行って薪になるようなものでも取って来ようと思った時だった。
 視界の先、丘の向こう側からユラリユラリと異形のナニかがのっそりと姿を現した。
「ひ、ひぃぇ!」
 思わず叫んだ。咄嗟に口を手で塞ぐボルボルド。
 その悲鳴が聞こえたのかは知る由もないが、異形のナニかの大きな目玉が太男に向けられた。
(見つかったッ!)
 それまでの動きが嘘のように猛然と向かってくる異形。
 浮足立ちながらも逃げ出すボルボルド。
 異形は真っ直ぐに中年の男――ではなく、馬車に向かって突撃すると、馬車を勢いよく粉砕した。
 荷物が激しく散乱。繋いでいた馬が林に向かって駆け出し、異形は馬を追っていく。
「い、今のうちに!」
 その様子をボルボルドは振り返りながら見届けると、遠くに見える集落の灯りに向かって走り続けるのであった。


●依頼

「えっと……えっと……これが、依頼の契約書で……えっと、こっちが……」
 明らかに不慣れな様子で受付の若い娘――アーネリー――が依頼の説明をする。
 ふんわりと波打った金髪、ビー玉のような透き通った青い瞳。可愛らしい顔の輪郭は、見ている分には見惚れてしまっても仕方ないが、それを台無しにするほどの手際の悪さが目立つ。
「あーーーーっ! ありました! これです! これ!」
 パッと太陽のような明るい笑顔。
 これが仕事の場でなければ、微笑ましい表情で、アーネリーは一枚の資料を取り出した。
「遭遇した冒険者の話によりますと……えっと、えーーと……」
 話を聞くよりも資料に書かれた内容を自分で確認した方が早いだろうか。
 綺麗な指先があっちに行き、こっちに行き、ある項目の所でなんとなく止まった。
「なんでも、中型のクリーパーは一体だけだそうで……見た目は、枝葉の無い大きな木の幹に大きな眼が一つ。大きな牙と口を持つ……だそうです……怖いです! こんなのがいるだなんて!」
 大袈裟な身振りが可愛らしいと判断されるかどうかは、人によるだろうか。
 ともかく、アーネリーの説明は続く。
「このクリーパーは、特殊な能力を持つようで、根っこを伸ばしてきて冒険者の移動を阻害してくるそうです。対峙した冒険者の話によると、身動きが鈍った所を遠距離攻撃されたそうです」
 所謂、バッドステータスで言う所の【束縛】に類するような能力だが、これ以上の情報は無いので、ある程度は推測して挑む必要があるようだ。
「あと、今回は……討伐だけではなくてですね、商人のボルボルドさんからの希望で、メダルを探して欲しいそうです……小さいメダルなので、散らばっていたら、探すのが大変だそうですけど」
 カウンターの上に置いたのは大人の親指先ほどの大きさのメダル。
 不可思議な材質で出来ているようで見た目以上に重量感があって、見る角度によって金にも銀にも色を変えていた。
「なんでも『古のメダル』……と呼ばれているそうです。これと同じものが4枚ほど散らばっているはずだと……とても大事なものならしいので、戦闘が終わって、余力があれば探してみて下さい」
 説明は以上のようで、アーネリーは資料をまとめだした。
 そして、締めとばかりに冒険者達に向かって、満面の笑みを向けた。まぁ、仕事がどんくさくても、これで許してくれる人がいるのも、そういう世の中なのだろう。

解説

えっと……受付嬢のアーネリーです。 よろしくお願い致します。依頼の詳細について解説致しますね。 依頼の主目的は『中型クリーパーの討伐』となります。 また、討伐後に余力があれば(戦闘不能者がいなければ)、『古のメダルの探索』もお願いします。 中型クリーパーは私の下手な絵で申し訳ないですが……このような姿をしていたそうです。 (そう言いつつ、普通に絵は上手い) 『身体は木の幹。足として無数の根っこ。枝葉は無く、大きな牙と口を持っており、攻撃方法は突進、牙での噛みつき、口から松ぼっくりみたいなものを飛ばしてくる』 『根っこを伸ばして対象となる冒険者に絡んでくる』 対峙した護衛の冒険者の話によりますと、根っこが足に絡んで、移動したり攻撃や回避といった動きが、思うように行動が出来なかったとの事です。 あっ! 商人のボルボルドさんも、護衛の冒険者の方も、お馬さんも無事だったようです。 護衛の冒険者の話によると、まだ馬車があった場所の近くをウロウロしているみたいですから、特別、探す必要はないみたいです。馬車があった所は膝下くらいの草がいっぱい生えているそうですが、見通しが良いようですので。 『古のメダルの探索』ですが、目印になるものは先程お見せしたメダルしかありません。ただ、このメダルはボルボルドさんにお返ししなければいけないので、ここでじっかりと見ていってください! (小さいメダルという以外の特徴は竜や人のような姿が彫られている事と、何よりの特徴は不可思議な材質で作られている。ボルボルド曰く、『傷つき難いメダル』らしく、ちょっとやそっとの事では傷つかないらしい) 草が生い茂っているので、なかなか見つけにくいかもしれませんが、皆様、冒険者ですし、きっと、見つけられますよ! それでは依頼の詳細は以上になります。 皆様の冒険が大成功しますように!(パンッと手を叩いた)

マスターより

はじめまして。この度、マスターとして活動する事となりました、広大野人と申します。 まだ右も左も分からない事が多いので、ドキドキしています。今後とも、よろしくお願い致します。 今回はルールの確認も込めて、戦闘判定(バッドステータス)と一般判定(探索)を用いたシナリオを作ってみました。改めてルールを一緒に確認したいという方や始めたばかりで……という方や、「おう、新人か! ルールはこうなってるぜ!」って教えて頂ける経験者の方などなど、皆様の参加、お待ちしております。

リプレイ

●

 どこかに向かって吹き抜けていく流離の風を受けながら、一行は草原の丘を越えようとしていた。
 この丘を越えると目的となる場所に到着するはずだ。
 ネーヴェ・グラヌローザが風で乱れる髪をなんとなく抑えながら、ふと思った事を口にする。
「木の魔物で御座いますか……根に、絡め取られると……厄介で御座いますね」
 その台詞に隣を歩くイルシオ・リスティヒが深く頷いた。
「大きな木のクリーパー討伐に、メダル探し、ねぇ」
 依頼としての主目的はクリーパーの討伐。
 そのまま放置していたら、旅人や近くの集落に襲い掛かって来る可能性がある以上、排除しておく必要があるだろう。
「大事な物なら、探してあげたいね」
 先頭を行くバクル・バスリーが振り返って仲間達に告げる。
 どの程度の値打ち物か分からないが、行商人が大切にしている物であれば、集めてあげたいのが人情というもの――バクルはリザードマンだが。
 周囲を警戒しながら進むレヴァーレ・クアルムが顎先に指を当てた。
「依頼の主目的はクリーパーの討伐……ボルボルド氏からの願いは、追加報酬と思ってよさそうか」
 彼の推測は正しい。もし、メダルを全て見つけ出す事が出来れば依頼としては大成功という事だろう。
 そんな追加報酬の話にイルシオが口元を緩める。
「欲張りなクライアントには、搾り取れるだけの報酬をいただきてぇものですわ。ふふ」
 聞けばボルボルドは行商人との事だが、珍しいメダルも収集しているという。
 という事は、それなりに稼いでいる商人であり、商売道具の馬車が粉砕されていても、メダルの確保をお願いしているという事は、きっと相当に蓄えがあるに違いない。
「そういう事だ。しっかり仕事をさせてもらおう」
 レヴァーレは白い装丁がなされた魔導書を持つ手に力を込める。
 一方、軽々とした動きで今の感情を表現するかのように、シャーデンフロイドがひょいひょいっと坂を上がる。
「依頼人さんは、成金ぽい感じでしたが悪い人でもなさそうですし、ぱぱっと解決して恩を売っておきましょうか」
 ボルボルドがメダル好きな人なのは確かだし、行商人という事でもあるので、何かとこれからも縁がある……かもしれない。
 一先ず、ぱぱっと討伐できればいいのだ。バクルは両手を叩いて気合を入れる。
「まずはきちんと討伐だね」
 丘を登りきると、視線の先に全壊した馬車と、討伐対象のクリーパーが見えた。
 受付嬢の説明通り、枝葉のない木の幹に大きな目玉。牙と口が見える奇怪な姿をしている。
「あらあら、ユニークなクリーパーさんですねぇ! 悪い夢かおとぎ話に出てきそうな」
 大袈裟な身振りと共にそんな感想を口にするシャーデンフロイド。
 スヴァン=ウォルフ=ユーウェンが大剣を担ぎつつ、左目を細める。
「ふむ。良く特徴を捉えている……」
 注意深く観察しつつ、ふと脳裏に浮かんだのは、受付嬢が描いた絵。
 こうして実物を見ると、まるで実際に見て来たのかと問いただしたいぐらいに、よく描けていたようだ。
「下手だとか言いながらも、普通に絵が上手いのが妙に腹立つんだが」
 人の才能というものは、時に本人が気が付かない場合もあるという事なのだろう……。あの受付嬢はギルド職員よりも画家が向いているのかもしれない。
 一行はお互いに顔を見合わせた。ここからは作戦通りに行動する予定だからだ。
 支援役を担うネーヴェが杖をゆっくりと持ち上げながら宣言する。
「私の力で皆様方のサポートを致しますわ。迅速に倒して陽の高い内にメダルを探し出しましょう」
 いよいよ、戦いの始まりだ。

●

 クリーパーをおびき寄せる為に駆け出したバクル。敵も一行に気が付いたようで一直線に向かってくる。
「当たらないよ!」
 身を反らして、クリーパーが射出した松ぼっくり擬きを数回避ける。
 万が一、当たったとしても祷者(ヒーラー)からの支援を受けているから、大きなダメージにはならないはずだ。
 しかし……クリーパーが放った根っこ――【束縛】は抵抗しきれなかった。
 脚に絡みつく根っこ状のナニか。十分な強度があるようで、バクルは移動すら困難になったが、これは予測済みだ。
「きみの相手はここにいるぞ。ぼくを倒さないと、好きにうごけないよ!」
 言葉と共にエーテルを叩きつけるとクリーパーに【執着】が付与される。
 敵がドドドっと音を立てて最接近してくる前に、チャージングを使用してバクルは後退した。【束縛】で移動が困難になったとしてもスキル効果は別だ。
 エーテルの力を放出して仲間が待ち構える場所まで下がる闘士(ウォーリア)を追い駆けるクリーパー。
 サルベーションの準備をしつつ、イルシオは立ち位置を調整していた。
「おっそろしい見た目ですこと! さてさて、わたくしは後ろの方へ」
 今回の戦いでは後衛職である祷者がわざわざ前に出る必要はない。
 敵の能力は判明しているのだ。前線は仲間に託し、負けない為の戦いをすればいい。
「世界樹よ、どうか祝福を! 貴方の慈悲で我らを護り給え」
 堅実に戦う為にネーヴェもスキルで仲間を援護する。
 誰を回復させるのか、あるいは増強させるかは、戦況に応じて使い分けなければいけない。祷者としての腕の見せ所だ。
 仲間を支え援護する事が祷者(ヒーラー)の役割だとしたら、術師(キャスター)としてすべき事は敵に対する攻勢だろう。
 クリーパーの退路を断つように回り込みながら、レヴァーレがスキルを使う為に意識を集中させる。
「さっさと決めさせてもらう」
 ここでクリーパーを逃がしてしまい、万が一でも林や森に入られたら面倒な事になる。
 魔導書から放たれた光球は、エーテルの軌跡を発しつつ、クリーパーの側面に直撃した。
 クリーパーの注意が向かれるかと思ったが、バクルの【執着】がまだ影響しているようで振り向きもしない。
 その様子にシャーデンフロイドは攻撃魔法では無く、敵を弱体化させる魔法を選択した。
「元より術師(キャスター)は固定砲台のようなものですもの、存分に巻き付いてくれて構わないんですよ?」
 挑発するように言い放ちつつ、まずは不可視のエーテルの波動(マジックディソナンス)を使い、続けて、防御力を低下させる魔錆を行使する。
 弱体化に合わせるように、淡い透明な光を纏った大剣を低い腰だめから振り上げてスヴァンがクリーパーに斬りかかる。
「絡んでくるという根に足を取られぬよう、用心する必要があるな……油断せずに行くか」
 振り下ろすとみせかけ、身体を捩じらせる(フェイント)。明確な効果があったかどうかは不明だが、続けた本命の一撃は、クリーパーの胴体を確実に捉えた。
 一瞬、怯んだように見えたクリーパーだったが、反撃とばかりに鋭い牙でバクルを狙う。
 それを渾身の力で受け止めるバクル。
「さて、追いついて攻撃できるから勝てると思った? ぼくの耐久力、舐めないで欲しいな」
 ここまでは作戦通り。後は攻撃の手を緩めずに一気に決めてしまえばいい――はずだった。

●

 ギィィダバババァァァ!

 聞いた事もない奇妙で不気味な叫び声を挙げるクリーパー。
 冒険者達の足元がひび割れ、同時に無数の根っこが蠢くように周囲全体に広がった。
 クリーパーを中心とした全周囲に及ぶ【束縛】。根っこが周囲に広がるというのは、伊達に木の形をしている事はあるようだ。
「やはり、油断できないか」
「わぁお!」
「ちょ、ちょっと!?」
「これは、厄介な事でございますね」
「敵なりの切り札か」
「え? みんな!?」
 バクル以外の全員が【束縛】に囚われ、全員が驚きの声をあげる。バクルが無事だったのは、直前に【束縛】を解く事ができた影響が残っていたからだ。
 それなりの強度を持つようで、足元から伸びた根っこが身体に絡みつくように伸びている。グッと脚や腰を締め付けてきて身動きが取れにくい上に衣服を絞って身体のラインがクッキリ見える。
「そのような趣味はないですわ!」
「私達は気にせず、攻撃を続けて下さい」
 祷者(ヒーラー)二人はしっかりと囚われているようである。一部にはそういう展開が好みの趣向を持つ者もいるらしいが、少なくともこの依頼を受けた冒険者の中にはいなそうだし、なにより、それどころの状態ではない。
 敵の思考は読めないが、もし、敵が真っ当な思考能力を持っているのであれば、攻撃か逃亡か――。

 ギィィダバババァァァ!

 再び叫ぶと、大きく開けた口から無数の松ぼっくり擬きを扇状に噴出する。どう生成しているのか不明な攻撃方法であるが、威力も範囲も脅威そのものだ。
 狙われたのはバクルとシャーデンフロイド。戦士であり、援護魔法を受けていたバクルは十分に耐えられるが、後衛職であるシャーデンフロイドには危険な攻撃だろう。
 だが……
「――ュ」
 青い髪が盛大に揺れる中、エルフ(シャーデンフロイド)は楽しそうな、あるいは愉快な、そんな表情を浮かべる……下半身に根っこが絡みながらも。
 彼は逆巻くエーテルの風を身に纏う事で、自身から離れた場所から放たれた間接物理攻撃を避ける力を行使したのだ。
 つまり、無傷。
 絶好の機会が冒険者達に訪れた。
 【束縛】を受けながらもスヴァンが強引に攻撃を仕掛ける。既に接近状態であれば移動力が低下していても近接攻撃自体に問題はない。
「まずは皆様の根を解除致します」
「攻撃は託しましたわ!」
 ネーヴェが行使した【聖別】の力が、シャーデンフロイドの【束縛】を消し去り、同時に、イルシオが持つ杖の先端からエーテルが輝き、レヴァーレに取りついていた根っこの【束縛】が崩れ落ちる。
「ワタシの魔法もじっくり、味わってくださいね。存分に昼夜の星をご覧に入れましょう!」
 杖を振りかぶる度に小さな光弾が幾つも出現していく。
 数度、繰り返した後、叩きつけるように杖の先端をクリーパーへと向けて放った光弾は流星のように敵に降り注いだ。
 クリーパーが敵わないと感じたのか下がるような動きをみせたが、そこには退路を塞ぐレヴァーレの姿。彼は魔導書にエーテルを流しつつ、パラパラと頁を流すように書を開いた。
「逃すわけがないってな」
 魔導書から紡ぎ出されたのは、稲妻のような無数の光とその中を力強く飛翔する光球。それらがグルグルと交差しながら煌めく。
 アーケインテンペストと魔弾のエーテルがクリーパーを直撃した。
 立て続けに受けた魔法を脅威と感じたようでクリーパーは、レヴァーレに向きを変えようとするが、バクルが今一度、シーザーロアを練り、敵の注意を引き付けた。
「言ったよね、ぼくを倒さないと好きにうごけないって!」
 いざとなれば身体全体を使ってでも抑え込む。そんな気概で叫ぶ力は、確かにクリーパーに届いていた。
 前にも後ろにも進む事はできず、攻撃も飛ばせず、そんな状態の敵に向かって、スヴァンがトドメとばかりに大剣を担ぐ。
 この木何の木クリーパーの木だと思って伐採する心持ちでエーテルを武器に流し込んだ。
「上手く行けば良いが」
 光塊となった獲物を、まるで鉈で薪を割るように上段から叩きつける。
 その一撃は文字通りにクリーパーを両断。切断面から塵のように崩れ落ちていく様子は、薪割りとは全く異なるが。
「やった! 勝った!」
 引き付け役としてずっと身体を張っていたバクルが嬉しそうに宣言するのであった。

●

 ランタンなどで足元を照らしつつ、生い茂る草を掻き分ける一行。
 メダル探しは意外にも難航していた。経過している時間でいえば、先程の戦闘の方が短かっただろうか。
「クリーパーに取り込まれていたなら解体していたが……」
 レヴァーレが粉砕された馬車の辺りで呟く。
 突進してきたであろう方向と逃げ出した行商人の足跡。それから、クリーパーが突進してきた時に巻き込まれたテント。散らばっている商品の数々を眺めて、探索する範囲は大まかには絞れそうではある。
 厄介なのは散らばっている商品も混じっている事だ。おまけに探しているメダルは小さい。
「あのクリーパーで、中型って事は、やっぱり大型のクリーパーとなると、もっと強いんだよね。強くならないと……!」
 下草をゆすったり刈ったりしながらバクルはそんな言葉を口にする。
 冒険者6人。しかも、事前に敵の能力がある程度分かっていたからこそ対処できたが、初見で冒険者と同数居たとあれば、苦戦していたはずで、メダル探しどころではなかっただろう。
 衣服が汚れないように気をつけながらイルシオはふらふらと周囲を歩いていた。
「ふむ、メダル探し……何故わたくしがこんな事を……でも、価値あるモノなら、1枚くらいくすねてもバレねーかしら」
 ちょっと物騒な冗談にシャーデンフロイドが何かを思いついたようでポンっと手を叩く。
「ねぇねぇ、先にメダルを見付けた人にお酒を一杯奢るってどうです?」
「悪くはない話だ。俺に奢ってくれるのか?」
 中腰の姿勢で探していたスヴァンが、スッと立ち上がりながら言う。
 やや高く持ち上げた腕の先、親指と人差し指に挟まれた例のコインに、一同から「おぉ~」と声が挙がる。
「辺りが暗くなる前には見つけたい所ですね」
 そのネーヴェの台詞に頷く面々。
 完全に陽が落ちたら探すのは難しくなるのは容易に想像できた。
「最悪の場合は草むらに火を放ってコインを見つけ易く致しますが、出来ましたらこれは最終手段としたいところで御座いますね」
「『傷つき難い』のだろう? 多少手荒でもなんとかなるさ」
 できれば綺麗な状態でみつけたいものだ。もっとも、そうした状態で見つけないといけないのであれば、依頼でも念を押されただろう。そうでないならば、見つからないよりかは、どんな状態であれ見つかって欲しいものだ。
 ネーヴェとスヴァンの会話に、心の中で頷いていたイルシオは草陰にキラリと光るものを見つけた。一瞬、散乱した商品の一部かと思ったが、角度によって反射する色が異なる事に気が付き、目を凝らすと、探しているメダルであった。運が良かったようだ。
「あ……見つけたかしら」
「ビ~ンゴ。それにしても、この『古のメダル』って、なんなんでしょ」
 イルシオが見つけたメダルを横から覗き込むシャーデンフロイドが、興味深く呟いた。
 材質不明な謎のメダル。人によっては価値があるものかもしれないが、誰がいつ、何の為に作ったかは気になる所だ。集めると良い事でもあるのだろうか。
「メダル集めが流行ったりするかもしれないな」
 そう言いつつ、肩をすくめたレヴァーレの手には例のメダル。
 これで、残るはあと1枚だ。陽も落ち始めているので、タイムリミットが近づいている。
「よーし、頑張るよ!」
 元気いっぱいに叫び、気合を入れたバクルが、物凄い勢いで下草を刈り出したのであった。


 最後の1枚を周囲の下草を燃やして見つけ出し、一行は『中型クリーパーの討伐』と『古のメダルの探索』の依頼を無事に達成した。
 行商人ボルボルドは不細工な顔をくしゃくしゃにして嬉し泣きしつつ、依頼報酬とは別に冒険者達に一杯、奢ったという。

マスターコメント

 お疲れ様でした&ご依頼にご参加いただき、ありがとうございました。 リプレイの内容はいかがでしたでしょうか? 諸々(特にルール辺りの解釈が)、大丈夫かな……と、ちょっと不安になっていますが、おおむね、戦闘の推移は皆様の作戦通りに進んだのかと感じています。  【束縛】に対する対抗策、敵を倒す為の効果的な方法と役割分担、素晴らしいプレイングだったと思います。  メダル探索においても、リプレイでは細かく描写できませんでしたが、それぞれが考えて探していただけたと思いますし、スキル設定も合わせていたとも感じています。  また、非登録のぽっとでのNPC二人(受付嬢と行商人)への絡みというかご配慮もありがとうございました。名前付けが苦手な私ですが、なるべくは非登録NPCでも名前を付けてあげたいという想いもあったので。また、別の依頼に出てくるかどうかは……まだ私も分かりませんが。それもこれからの『冒険』として、楽しみの一つになるかと。  改めて、依頼へのご参加、ありがとうございました。また機会があれば冒険者の方々のご参加の程、お待ちしております。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人

2021年03月01日 09時22分44秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. シャーデンフロイド

    や、どうも。キャスターのシャーデンです。 このたびは皆さんお手柔らかに、お願いいたしますね♪ ふぅむ、足場が悪い戦闘のあとに物探しですか。 遠距離からの攻撃もありそうですし、ワタシのような後衛も足元を気にしておいた方がいいですよねぇ。

  2. スヴァン=ウォルフ=ユーウェン

    ウォーリアのスヴァンだ。よろしく頼む。 行動阻害に遠距離攻撃……ふむ。 敵から離れすぎず近づいて近距離で殴れば安全な気がしなくもないが…… メダル探しをするなら、草木を刈るか燃やすなりすれば出てきたりしないだろうか。 傷つき難いのなら多少乱暴でも問題ないだろう。知らんけど。

  3. ネーヴェ・グラヌローザ

    ヒーラーのネーヴェ・グラヌローザと申します。宜しくお願い致します。 行動阻害は「解呪」や「聖別」で解除を促すことが出来そうですので、私は解除や回復、防御強化などのサポートを主体に動きたいと思っております。 メダル探しについては「幸運の星」と「看破」で見つけられないかと思っております。スヴァン様の、草を刈るというのも良い手かと。燃やすのは出来れば最終手段としたいところでございますが……。

  4. レヴァーレ・クアルム

    レヴァーレ・クアルムです、よろしくお願いします。 遠距離攻撃があるとは言え、移動阻害を標的に付与するとそちらに意識が向くようにも読み取れますね。 移動阻害の元が敵が伸ばす根という事で、お互いを繋ぐ感じなのでしょうか。 支援は非常にありがたいです、よろしくお願いします。 メダルの捜索はスキルと、あとは洞察や推理で補足していくといった感じでしょうか。 燃やすのは俺も避けた方が良いと思います。

  5. バクル・バスリー

    ウォーリアのバクルだよ。よろしくね とりあえずシーザーロア使うね。 移動阻害されるなら、向こうから来てもらうよ。あと、遠距離攻撃が後衛に行かないように矛先をこちらに向けさせるね ぼくも燃やすのは最終手段だと思うな。草を刈って、探す感じかな

  6. イルシオ・リスティヒ

    ごきげんよう、皆様。 ヒーラーのイルシオですわ。 ふーん、大きな木のクリーパーねぇ。 こいつ自体はあんまり移動はしねぇ、と思っててよさそうかしら。 攻撃手段は、根っこで拘束して松ぼっくり攻撃……ふむふむ。 敢えて根っこに捕まる事で行動を誘導するっつー手も使えるやもしれませんわねぇ。あ、わたくしはヤですけど( わたくしも支援をメインにして動きますわ。 メダルねぇ…4枚がバラバラにおちてるっつー事はなさそうですけど、クリーパーがぱっくんちょしちゃってるって事はねぇですよね。 …さすがに、ね?

  7. レヴァーレ・クアルム

    >敵について 依頼主からの情報(OP含む)から、音に反応しボルボルド氏よりも馬を追って行ったという事ですし、見た目は木でも獣に近いのかなと個人的には思います。 ただ護衛の冒険者も馬も逃げおおせたとなると素早いわけではないのかなとも。 バスリーさんがシーザーロアでの引きつけに名乗りをあげてくださってますし、前衛で戦闘する方を軸に囲んでしまう方針で良さそうでしょうかね? >メダル 敵が取り込んでる可能性は……なくはないかもしれませんね。 まあ倒してエーテルに還らないようなら体を燃やすなりバラすなりしてみましょう。

  8. ネーヴェ・グラヌローザ

    なかなか発言が出来ず申し訳ありません。一通り拝読致しました。 >敵について 確かに、音に反応するのは獣のような挙動にも思えますね。木の魔物なだけに、あまり視力が利かないのかもしれません。 前衛の方を軸に動くことには賛成ですわ。 バクル様が敵を引きつけて下さるのであれば、優先的に堅甲を使いますね。 他のスキルはヒール2、聖別、解呪とするつもりですが、別の支援魔法の方が良い等のご意見がございましたら、どうぞ遠慮なくご教示頂けますと幸いです。 個人的には聖別と解呪のどちらか一方を外して攻撃強化に向けようか悩んでおります。回復重視なら両方とも持つべきなんですが、どちらがより望ましいでしょうか……

  9. シャーデンフロイド

    しばらく相談の間を空けていて失礼しました! 委細承知いたしました♡ バクルさんに前衛でのタンカーをお任せして、彼を軸に広がりますね。もしこちらに攻撃がきたらハリケーンウォールで対応しまぁす。 ワタシは物防低下や命中低下のバッドステータス系の魔法でご支援をする予定です。余力があれば攻撃しましょう。 あ、メダルの方は看破で探してみましょっかね♪ 敵が取り込んでいたら……そうですね、煮るなり焼くなり。 >ネーヴェさん ワタシはヒーラーさんに詳しくないので恐縮なのですけれど、イルシオさんと役割を分担しておくのもよろしいんじゃないでしょうか。回復重視役と支援重視役、とか?

  10. イルシオ・リスティヒ

    >回復と支援の分担 おや。でしたらわたくしは回復重視を担当させていただいてよろしくて? その方が楽ち……こほん、あ、いえ、わたくしまだ持てるスキルが限られていますので、おほほほ。 メダル探しにつきましては、こちらも活かせる能力を持ち合わせいねーんで 皆様の邪魔にならねぇように探せる方法を考えますわぁ。

  11. レヴァーレ・クアルム

    ひとまず他の案も無さそうですし、 バスリーさん始め前衛として戦う方の接触を待って包囲し殲滅 という流れの想定で動きますね。 敵を誘き出すなら声を出すなりでどうにかなるかなと思います。 個人としては火力を上げていこうかと思います。 シャーデンフロイドさんがBSメインという事で、重ねがけもそれほど意味をなさないですし早期の撃破を目標に据える形で。 メダルの捜索については……とりあえず看破と自分の幸運の星で臨んでみます。 それと明るいにこしたことはないかな?と思うので光源にエンライトとランタンも持っていきます。 すぐ見つかると良いのですが。

  12. ネーヴェ・グラヌローザ

    >イルシオ様 承知致しました。でしたら回復面はお任せ致しまして、私は補助に回りますわね。 解呪をお持ちでしたらスキル装備お願いしても宜しいでしょうか。聖別はレベルの関係上まだお待ちになられないかと思いますので念のため、このまま保持致します。 シャーデンフロイド様、ご意見ありがとうございました。お陰でとても助かりました。 看破と幸運の星は私も持っておりますので、先にもお伝えした通り身につけて挑むつもりです。 レヴァーレ様の、明かりで照らすと言うのは良案で御座いますね。私もランタンを持って挑みたいと思います。 今晩出発でございますね。 皆様、どうぞ宜しくお願い致します。

  13. スヴァン=ウォルフ=ユーウェン

    バクル同様、前衛で防御を主体として動くつもりだ。 メダル探し用に【暗視】と、一応【透視】を持っていってみる。 敵が持っていれば……手っ取り早く見つかって楽なんだが、そんな上手い話はなさそうだな。

  14. ネーヴェ・グラヌローザ

    >イルシオ様 申し訳ありません。私、イルシオ様のサルベーションを見落としておりました。解呪が無くてもこれがあれば大丈夫ですわね。 私もサイドヒール改と聖別を装備致しましたから、イルシオ様の手が足りない時は治療のお手伝いを致しますわ。

  15. イルシオ・リスティヒ

    >ネーヴェさん かしこまりですの。 折をみて回復のお手伝いをお願いしますわ! シャーデンフロイドさんは、分担の御提案ありがとうございますの。 お給料泥棒になるところを避けられましたわ、おほほ。 さてさて、間もなく出発ですわね。 っつーかこれ、今更ですが……どこから開始なんでしょうね? 接敵したところからなのか、現場へ向かう途中のところからなのか。 一応、前者から始まる想定でプレイングを提出しておきましたけども。 ではでは皆様、死なねー程度にがんばりましょ♡

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0