【豆充】ハッシリ村のチョコ事情 タイン編
椿油
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シナリオID:617
オープニング
●
どうやら最近、カカオ豆を使ったチョコレート作りが都会の方でも流行り始めたらしい。なんでもバレン国の王子とタイン国の王女がチョコを送って愛が実り幸せになった、おとぎ話由来だそうで。
「うちの村のタイン王女といえば、ソフィネさんだろ!」
「村長の娘だし、結構お綺麗だし!」
そんな話が、ここリーンエス近くの村落、ハッシリ村でも盛り上がっていた。
「そうだ! じゃあ、我が村のタイン様であるソフィネさんにチョコレートを贈ろうぜ!」
「でも、どうやって作るんだ?」
「商人のアランとポールなら知ってるんじゃないか? アイツら若いから流行りに詳しいだろうし」
ハッシリ村の双子の商人、アランとポール。彼らを訪ねた村人達だったが……。
「俺ら作り方知ってるよ、なー、ポール」
「うん、僕ら作り方は知ってるよねー、アラン」
「じゃあ、この計画に乗ってくれないか?」
「それがさ、俺ら料理とかお菓子作りはからっきしダメなんだよ」
「折角だからさ、僕らだけじゃなくて冒険者さん呼んで作らない? 今何か色んなギルドが動いてるらしいし、乗ってくれるでしょきっと」
二人の提案に、発案者の村人はううむと考えた。
「……よし、ソフィネさんには内緒だぞ! 俺達村人の手だけで完遂させるんだ!」
「オッケー、じゃあついでに余ったチョコ売ろうぜポール」
「それは名案だねアラン」
そんな事があり、冒険者ギルドにアランとポールがやってきたのだった。
「――ってわけで、村に来て欲しいんだ」
「ターゲットのソフィネさんには、販路拡大の手伝いって名目の依頼にしてあるから、そんな感じで通してね」
「くれぐれもソフィネさんに」
「バレないようにねっ!」
一方ソフィネはそんな事も知らず、せっせと村人の為に働いていたのだった。感謝の気持ちと愛情を込めたチョコ作りが始まろうとしている――。
どうやら最近、カカオ豆を使ったチョコレート作りが都会の方でも流行り始めたらしい。なんでもバレン国の王子とタイン国の王女がチョコを送って愛が実り幸せになった、おとぎ話由来だそうで。
「うちの村のタイン王女といえば、ソフィネさんだろ!」
「村長の娘だし、結構お綺麗だし!」
そんな話が、ここリーンエス近くの村落、ハッシリ村でも盛り上がっていた。
「そうだ! じゃあ、我が村のタイン様であるソフィネさんにチョコレートを贈ろうぜ!」
「でも、どうやって作るんだ?」
「商人のアランとポールなら知ってるんじゃないか? アイツら若いから流行りに詳しいだろうし」
ハッシリ村の双子の商人、アランとポール。彼らを訪ねた村人達だったが……。
「俺ら作り方知ってるよ、なー、ポール」
「うん、僕ら作り方は知ってるよねー、アラン」
「じゃあ、この計画に乗ってくれないか?」
「それがさ、俺ら料理とかお菓子作りはからっきしダメなんだよ」
「折角だからさ、僕らだけじゃなくて冒険者さん呼んで作らない? 今何か色んなギルドが動いてるらしいし、乗ってくれるでしょきっと」
二人の提案に、発案者の村人はううむと考えた。
「……よし、ソフィネさんには内緒だぞ! 俺達村人の手だけで完遂させるんだ!」
「オッケー、じゃあついでに余ったチョコ売ろうぜポール」
「それは名案だねアラン」
そんな事があり、冒険者ギルドにアランとポールがやってきたのだった。
「――ってわけで、村に来て欲しいんだ」
「ターゲットのソフィネさんには、販路拡大の手伝いって名目の依頼にしてあるから、そんな感じで通してね」
「くれぐれもソフィネさんに」
「バレないようにねっ!」
一方ソフィネはそんな事も知らず、せっせと村人の為に働いていたのだった。感謝の気持ちと愛情を込めたチョコ作りが始まろうとしている――。
解説
バレないように、村長の娘ソフィネへのチョコ作りを成功させて下さい。
【成功条件】
ソフィネにあげる物だという事がバレずにチョコ作りを完了する。それだけです。作っている事自体はバレても大丈夫ですが、ターゲットを悟られないようにして下さい。
なお、チョコを渡すのは発案者の村人代表のミルキーさんです。
【NPC】
ミルキー(ヒューマン/男性/30代)
ソフィネ大好きな村人。彼女にチョコをあげたいが、作り方から一緒に学ぶそうです。
アラン(ヒューマン/男性/10代)
双子の商人の片割れ。恐らく兄。チョコ作りは方法しか知らない。一人称が「俺」の方。
ポール(ヒューマン/男性/10代)
双子の商人の片割れ。恐らく弟。チョコ作りは方法しか知らない。一人称が「僕」の方。
ソフィネ(ヒューマン/女性/20代)
プレゼントするターゲット、村長の娘。彼女にバレんようにしなくてはいけない。……バレンだけに?
マスターより
チョコは自分用にホワイトチョコを買いました、椿油です。
今回はチョコをプレゼントするお話。タイトルにタイン編とあるので前後してますがバレン編もあります。
(思いついたがのタイン編が先だったのと諸々の都合です)
バレてはいけないバレンなミルキーからの手作りチョコレートをそっと見守ってあげて下さい。もしかしたら恋に発展するかも……?
皆様の熱いプレイング、お待ちしております。
リプレイ
いざ、チョコ作りの時がやってきた。チョコを作る為、そしてそれを隠し通す為に集まってくれた冒険者達に、ミルキーは感無量であった。
「ありがとうございます!」
つい大きな声で喋ってしまったものだから、口を隠すミルキー。そして、主に調理を担当するシャロン・ラ・モリエールが、調理工程を確認する。
「私はすでに先月チョコを作っております! カカオ豆を水が濁らなくなるまで洗い、弱火で焦がさないよう焙煎し、ちまちま皮を剥ぎ、豆をとにかく細かく砕く……私はこの行程で9時間かかりました。覚悟はあります?」
「勿論です、ソフィネさんの為ならいくらでも時間をかけます」
ミルキーの決意は本物のようだ。
「やっぱそれ位かかって当然だよなーポール、俺ら面倒だから作らなかっただけで」
「本命がこの村にいないからね~、ソフィネさんは皆のマドンナだし。ねぇアラン」
双子の兄弟アランとポールも、こうは言いつつも手伝う姿勢は万全だ。
「もしよろしければ、チョコレートから湯煎して作る、という方法もありますがどうされますか?」
ユリが提案したその方法は、やや簡易的ではあるが、時間はそうかからない。ミルキーは少し悩んだ。
「俺の本気を伝えたいです! しかし……バレないようにするにはそっちの方がリスクは低いですよね。チョコレートから作ってみます」
いくらでも時間をかけておきたい所だが、バレるリスクを考えると、やはりかかる時間は短い方が良いだろう。
――一方、足止めに回る事にした3人の方は。
「この村は久しぶりだね~」
シャロンと一緒に来ていた月は、前にもハッシリ村に来た事がある。
「あれからどう? みんな元気だった?」
「勿論元気です! 特に流行り病などもなく健康ですよ」
そうミルキーが答えると、月は安堵の笑みを浮かべながら、
「じゃあ、ソフィネさんにバレないようにするのは任せてね」
ソフィネの所に向かう事にした月。ナタリア・サフィエリとジープも、ソフィネを上手く現場から遠ざける為共に向かった。
「チョコレートが作り終わるまで何とかして足止めしていたら良いのでしょう? 簡単ね」
ナタリアの片手には宝石袋。何か思惑があるようだ。
「ま、最悪意識を奪うなりなんなり……」
「それは流石にどうなんでしょう……?」
ジープは首を傾げた。そこまでしたらマズい事態になるかもしれない、とふと脳内のジープは考えた。
さて、レッツシークレットクッキングタイム! チョコを溶かし始めている間に、ソフィネを見つけた月達3人。
「あ、ソフィネさーん!」
月が元気に声をかけると、ソフィネもこちらに気付いたようで振り向く。だが、はて冒険者が来る用件はあっただろうか。
「あら、皆様 ハッシリ村まで遥々ようこそおいで下さいました。えっと……どうされました? またお父様が何か依頼でも出されたのでしょうか?」
「ううん、何となく来ただけー。それより観光案内してよー!」
「はい、喜んで!」
村の事を知ってもらえるだけで嬉しいソフィネは、すぐに案内を引き受けた。
「うーん……貴方、何か悩み事がありますわね?」
案内の最中、ここで突如ミステリアスなオーラを醸し出すナタリア。
「えっ?」
思わずソフィネも戸惑う。
「私は占い師。貴方の未来を占ってあげましょう」
「ナタリア様の弟子のジープと申します。ご主人様が声をかけられるとは、何か運命の転換期にあなた様がおられるのかもしれません……! お代は結構ですので占われてはみませんか?」
ジープが迫真の演技で、ナタリアの占い師感を増す。
「占い師の方でしたか! そうなんです、実はちょっと悩みがありまして……」
「では、貴方の悩みを告白なさい。そしてこの袋の中の宝石を1個、掴んでみて下さいな?」
「……はい、実はこの村の発展に一役買いたいと思っているのですが、上手くいかなくて」
思ったより真剣な悩みだった。そして、宝石を一個掴み取るソフィネ。緑色の宝石だ。
「緑……安定や自然を司っていますわ。では、もう1個」
次にソフィネが掴んだのは黄色の宝石。
「黄色は繁栄を暗示している……そう、これは『今は安定しており、いずれ上手く行く』というお達しですわ」
「そうなんですか! ありがとうございます……!」
ソフィネは完全に宝石占いに乗っていた。
「ご主人様の宝石占いは百発百中ですからね!」
案外、人は信じ込むとそこから考えが動かなくなる物である。
「宝石占い、私も自分の手でやってみたいです……! 参考になる本などはありますか?」
「えっ、えーっと、マイナーな占い故に本は見た事はありませんわね!」
「そっそうですね、ご主人様の独学に近いものかと!」
まさか存在しないとは言えない。
さて、月に各地を案内するソフィネは、チョコの匂いがする気がしたような、と鼻をくんくんさせている。
「何か甘い匂いがしますね……」
「甘い匂いと言えばそうだ、ソフィネさんてお菓子好き〜?」
月は好みの調査ついでに話を逸らす。
「はい、好きですよ。特に働いた後に食べるあま~いお菓子は格別です!」
「今なんか販路拡大の新商品開発してるらしいじゃん? 参考にソフィネさんの意見ききたいなーって! どんなあま~いのが好きなの~?」
「そうですね、口の中でとろけるような……それでいて、ふわっとした感じの」
月はすぐにテレパスで情報をシャロンに送った。
「ふわっとした感じか~、売ってるお菓子で好きなものってあるの?」
「それは勿論! ハッシリブランドのベジタブルケーキですね。売り場、ご案内しましょうか?」
「うん、行く行く~!」
「アランさんとポールさんも知名度上昇の為に取り扱ってくれているんですよ。そういえば今日見てないような……」
「えーっとそれって双子のお兄さん? 材木置き場で見たよ~」
「あら、そうでしたか。……あの二人が双子だってお話しましたっけ?」
「見れば分かるよ~」
「ですよね、割と似てますし」
ふふっと笑うソフィネ。何とか隠し通すのは上手く行ったようだ。
そして、ベジタブルケーキを取り扱っている商店へ向かうと、そのケーキは何と刻んだ芋が入っていた。
「芋の甘みとケーキの甘みが絶妙にマッチして美味しいんですよ! 一口食べてみますか?」
「うん、食べる~!」
栗の入ったケーキのようなものだろうか。確かに甘くて美味しいそのベジタブルケーキ。これもシャロンにテレパスで共有だ。
「そうだ、ずっと案内してもらって疲れてない? お花畑行こうよ!」
流石にずっとチョコの匂いを誤魔化すのにも限界があるだろう。
「そうですね、行きましょうか!」
ソフィネも賛成したので、お花畑にて少し休憩をとる事にした。
「この花は、ハッシリ村近辺にしか生えてないんですよ。お父様が言ってました」
「へぇ~、そうなんだ! 持ち帰ってもいい?」
「後でお父様に聞いてみますね!」
さて、ただ目的を実行するだけではなく、ソフィネと実は友達になりたいと思っていた月。自分の事を語り始めた。
「それで、この子がペットのバルバトスだよ」
「わぁ、触ってもいいですか?」
「もちろん!」
「ふふ、もふもふですね」
「ねぇ、ソフィネさんは趣味ってあるの?」
「はい、趣味と言えるかは分かりませんが、実は狩りができるんですよ。お父様が宴を開く時のお肉なんかを調達したりしてます」
「そうなんだ! 月もおばあちゃんに狩りの仕方教わったんだよ。ソフィネさん、お肉は鹿派? 鳥派? 月は鳥派〜!」
「鳥、種類によってはスタミナもつくし美味しいですよね! 私も鳥派です! おばあ様と仲が良いんですね」
「うん、月おばあちゃんっこなの! おばあちゃんは何でも知っててね、食べられるキノコと食べられないキノコ見分けるのがすごい上手なんだよ~!」
「凄い才能ですね!」
ソフィネと意気投合して、楽しく話が盛り上がったのであった。その頃チョコ作り班はというと――。
「芋の用意をしませんと」
テレパスで共有された諸々の情報を元に、ユリは芋の場所をアランとポールに聞いて調達し、ふかしていた。
「ふわっとした柔らかさですと、この程度の温度が丁度良いかと」
ユリの生活魔法で、程良い口溶けの温度へと調整していく。
「では、仕上げに入りましょうか。ただし、ここから先はソフィネ様宛であることが露骨になってきます。場所を慎重に選びましょう」
「は、はい!」
シャロンの発言に、いよいよミルキーも緊張してきたようだ。
「頑張れ~、俺らに出来る事はもう全部やったよ」
「あとはミルキーが頑張る番だよ」
アランとポールの協力もあってか、ミルキーは失敗する事なく全工程をこなしてきた。場所を人気の無い場所に移し、芋を混ぜ込んだ状態で固めたチョコの上に、色の少し違うチョコで文字を書く事にした。
「代表者が渡すのであれば、他に誰が関わったのかわかるものがあったほうがいいですよ」
とシャロンは告げる。手が震え始めているミルキーだが、村人男性陣を代表して、魂を込めた文字を書く。そして、手紙のラストには全ての協力者の名前を連ねておいた。
「手紙は何て書いたの?」
アランが聞くも、無言でぶんぶんと否定の意味で首を振るミルキー。ようするに内緒という事だ。
「あとはラッピングをして完成です」
透明な袋にチョコを入れ……いよいよ、完成だ。
「おめでとうございます」
ユリは、ソフィネに聞こえないとは思うが、小さく拍手をした。
そして月はテレパスで完成を察したのか、お花畑からそろそろ戻るべきと判断した。
「じゃ、そろそろ行こ~! 広場の辺りへ!」
「広場ですか?」
プレゼントに最適なのは村の中心にある広場だろう。恐らくミルキーも、そう考えているはず。というか、テレパスでそう伝えたので既に広場にいるはずだ。
広場に着くと、そこには顔を赤くして立っているミルキーがいた。
「……あら、ミルキーさん? 今日お見かけしないと思ったら、どうされました?」
「え、えと、その……!」
「村人代表だろ、頑張れよ」
アランが小声でヤジを飛ばす。シャロンとユリは、ゆっくりとアランとポールと共にミルキーから離れ、ミルキーとソフィネの二人きりにしてあげた。もちろん、月もソフィネから離れる。
「……あ、もしかして……」
ソフィネは何となく察したようだ。
「これが、俺達、いや、お、俺の思いです! 受け取って下さい!」
チョコには、大胆にも「LOVE」の一文字が刻まれていた。
「え、私、その……何て言ったら良いか……!」
思わず赤面するソフィネ。
「……ミルキーさんの、好意を受け取らないわけにはいきませんね。ありがたく頂きます」
チョコを優しく受け取ったソフィネ。ミルキーは、その後小さく呟いた。
「……す、好きです」
「え?」
「ソフィネさんが好きです!!」
ミルキーの大胆な告白に、周囲は静かに沸いた。
「ミルキー、さん……」
ソフィネは胸にこぶしを当て、赤面しながらこう返した。
「喜んでお付き合い致します」
そのやや堅さのある好意的な返事に、広場で密かに見守っていた全員が拍手を送った。
「皆さん、本当にありがとうございます……!」
ミルキーは嬉し涙で前が見えないにも関わらず、全員に手を振って返した。
「にくいぞこのっ、幸せになれよー!」
「浮気するんじゃないぞー!」
アランとポールも涙を拭きながら、肘で突いてからかう。
「するわけないだろぉぉ」
まだ涙を流すミルキーに、ソフィネはハンカチを取り出し、そっとミルキーの目を拭いた。
「泣いたら折角の男前な顔がボロボロになってしまいますよ」
「うわぁぁソフィネさんお返事ありがとうございまずぅぅぅぅ!!」
嬉し涙が止まらないミルキーであった。
――その日の夜は、宴が開かれた。もちろんソフィネのお父様、つまり村長にも話は通した。晴れて二人は村の公認カップルとなったのだ。嬉しくて、嬉しくてたまらないミルキーに、チョコ作りを手伝った皆で祝い酒を送るのだった。
「……って、アランにポール! お前らもし……もし成功してなかったらこの酒どうするつもりだったんだよ! お前らが仕入れたんだろ?」
ミルキーからのツッコミが入るも、とぼけた顔でアランは返した。
「え、成功以外に考えてなかったけど」
……ある意味、たくましい商人である。
かくして、密かにチョコを送るミルキーの作戦は成功に終わったのだった。
「ありがとうございます!」
つい大きな声で喋ってしまったものだから、口を隠すミルキー。そして、主に調理を担当するシャロン・ラ・モリエールが、調理工程を確認する。
「私はすでに先月チョコを作っております! カカオ豆を水が濁らなくなるまで洗い、弱火で焦がさないよう焙煎し、ちまちま皮を剥ぎ、豆をとにかく細かく砕く……私はこの行程で9時間かかりました。覚悟はあります?」
「勿論です、ソフィネさんの為ならいくらでも時間をかけます」
ミルキーの決意は本物のようだ。
「やっぱそれ位かかって当然だよなーポール、俺ら面倒だから作らなかっただけで」
「本命がこの村にいないからね~、ソフィネさんは皆のマドンナだし。ねぇアラン」
双子の兄弟アランとポールも、こうは言いつつも手伝う姿勢は万全だ。
「もしよろしければ、チョコレートから湯煎して作る、という方法もありますがどうされますか?」
ユリが提案したその方法は、やや簡易的ではあるが、時間はそうかからない。ミルキーは少し悩んだ。
「俺の本気を伝えたいです! しかし……バレないようにするにはそっちの方がリスクは低いですよね。チョコレートから作ってみます」
いくらでも時間をかけておきたい所だが、バレるリスクを考えると、やはりかかる時間は短い方が良いだろう。
――一方、足止めに回る事にした3人の方は。
「この村は久しぶりだね~」
シャロンと一緒に来ていた月は、前にもハッシリ村に来た事がある。
「あれからどう? みんな元気だった?」
「勿論元気です! 特に流行り病などもなく健康ですよ」
そうミルキーが答えると、月は安堵の笑みを浮かべながら、
「じゃあ、ソフィネさんにバレないようにするのは任せてね」
ソフィネの所に向かう事にした月。ナタリア・サフィエリとジープも、ソフィネを上手く現場から遠ざける為共に向かった。
「チョコレートが作り終わるまで何とかして足止めしていたら良いのでしょう? 簡単ね」
ナタリアの片手には宝石袋。何か思惑があるようだ。
「ま、最悪意識を奪うなりなんなり……」
「それは流石にどうなんでしょう……?」
ジープは首を傾げた。そこまでしたらマズい事態になるかもしれない、とふと脳内のジープは考えた。
さて、レッツシークレットクッキングタイム! チョコを溶かし始めている間に、ソフィネを見つけた月達3人。
「あ、ソフィネさーん!」
月が元気に声をかけると、ソフィネもこちらに気付いたようで振り向く。だが、はて冒険者が来る用件はあっただろうか。
「あら、皆様 ハッシリ村まで遥々ようこそおいで下さいました。えっと……どうされました? またお父様が何か依頼でも出されたのでしょうか?」
「ううん、何となく来ただけー。それより観光案内してよー!」
「はい、喜んで!」
村の事を知ってもらえるだけで嬉しいソフィネは、すぐに案内を引き受けた。
「うーん……貴方、何か悩み事がありますわね?」
案内の最中、ここで突如ミステリアスなオーラを醸し出すナタリア。
「えっ?」
思わずソフィネも戸惑う。
「私は占い師。貴方の未来を占ってあげましょう」
「ナタリア様の弟子のジープと申します。ご主人様が声をかけられるとは、何か運命の転換期にあなた様がおられるのかもしれません……! お代は結構ですので占われてはみませんか?」
ジープが迫真の演技で、ナタリアの占い師感を増す。
「占い師の方でしたか! そうなんです、実はちょっと悩みがありまして……」
「では、貴方の悩みを告白なさい。そしてこの袋の中の宝石を1個、掴んでみて下さいな?」
「……はい、実はこの村の発展に一役買いたいと思っているのですが、上手くいかなくて」
思ったより真剣な悩みだった。そして、宝石を一個掴み取るソフィネ。緑色の宝石だ。
「緑……安定や自然を司っていますわ。では、もう1個」
次にソフィネが掴んだのは黄色の宝石。
「黄色は繁栄を暗示している……そう、これは『今は安定しており、いずれ上手く行く』というお達しですわ」
「そうなんですか! ありがとうございます……!」
ソフィネは完全に宝石占いに乗っていた。
「ご主人様の宝石占いは百発百中ですからね!」
案外、人は信じ込むとそこから考えが動かなくなる物である。
「宝石占い、私も自分の手でやってみたいです……! 参考になる本などはありますか?」
「えっ、えーっと、マイナーな占い故に本は見た事はありませんわね!」
「そっそうですね、ご主人様の独学に近いものかと!」
まさか存在しないとは言えない。
さて、月に各地を案内するソフィネは、チョコの匂いがする気がしたような、と鼻をくんくんさせている。
「何か甘い匂いがしますね……」
「甘い匂いと言えばそうだ、ソフィネさんてお菓子好き〜?」
月は好みの調査ついでに話を逸らす。
「はい、好きですよ。特に働いた後に食べるあま~いお菓子は格別です!」
「今なんか販路拡大の新商品開発してるらしいじゃん? 参考にソフィネさんの意見ききたいなーって! どんなあま~いのが好きなの~?」
「そうですね、口の中でとろけるような……それでいて、ふわっとした感じの」
月はすぐにテレパスで情報をシャロンに送った。
「ふわっとした感じか~、売ってるお菓子で好きなものってあるの?」
「それは勿論! ハッシリブランドのベジタブルケーキですね。売り場、ご案内しましょうか?」
「うん、行く行く~!」
「アランさんとポールさんも知名度上昇の為に取り扱ってくれているんですよ。そういえば今日見てないような……」
「えーっとそれって双子のお兄さん? 材木置き場で見たよ~」
「あら、そうでしたか。……あの二人が双子だってお話しましたっけ?」
「見れば分かるよ~」
「ですよね、割と似てますし」
ふふっと笑うソフィネ。何とか隠し通すのは上手く行ったようだ。
そして、ベジタブルケーキを取り扱っている商店へ向かうと、そのケーキは何と刻んだ芋が入っていた。
「芋の甘みとケーキの甘みが絶妙にマッチして美味しいんですよ! 一口食べてみますか?」
「うん、食べる~!」
栗の入ったケーキのようなものだろうか。確かに甘くて美味しいそのベジタブルケーキ。これもシャロンにテレパスで共有だ。
「そうだ、ずっと案内してもらって疲れてない? お花畑行こうよ!」
流石にずっとチョコの匂いを誤魔化すのにも限界があるだろう。
「そうですね、行きましょうか!」
ソフィネも賛成したので、お花畑にて少し休憩をとる事にした。
「この花は、ハッシリ村近辺にしか生えてないんですよ。お父様が言ってました」
「へぇ~、そうなんだ! 持ち帰ってもいい?」
「後でお父様に聞いてみますね!」
さて、ただ目的を実行するだけではなく、ソフィネと実は友達になりたいと思っていた月。自分の事を語り始めた。
「それで、この子がペットのバルバトスだよ」
「わぁ、触ってもいいですか?」
「もちろん!」
「ふふ、もふもふですね」
「ねぇ、ソフィネさんは趣味ってあるの?」
「はい、趣味と言えるかは分かりませんが、実は狩りができるんですよ。お父様が宴を開く時のお肉なんかを調達したりしてます」
「そうなんだ! 月もおばあちゃんに狩りの仕方教わったんだよ。ソフィネさん、お肉は鹿派? 鳥派? 月は鳥派〜!」
「鳥、種類によってはスタミナもつくし美味しいですよね! 私も鳥派です! おばあ様と仲が良いんですね」
「うん、月おばあちゃんっこなの! おばあちゃんは何でも知っててね、食べられるキノコと食べられないキノコ見分けるのがすごい上手なんだよ~!」
「凄い才能ですね!」
ソフィネと意気投合して、楽しく話が盛り上がったのであった。その頃チョコ作り班はというと――。
「芋の用意をしませんと」
テレパスで共有された諸々の情報を元に、ユリは芋の場所をアランとポールに聞いて調達し、ふかしていた。
「ふわっとした柔らかさですと、この程度の温度が丁度良いかと」
ユリの生活魔法で、程良い口溶けの温度へと調整していく。
「では、仕上げに入りましょうか。ただし、ここから先はソフィネ様宛であることが露骨になってきます。場所を慎重に選びましょう」
「は、はい!」
シャロンの発言に、いよいよミルキーも緊張してきたようだ。
「頑張れ~、俺らに出来る事はもう全部やったよ」
「あとはミルキーが頑張る番だよ」
アランとポールの協力もあってか、ミルキーは失敗する事なく全工程をこなしてきた。場所を人気の無い場所に移し、芋を混ぜ込んだ状態で固めたチョコの上に、色の少し違うチョコで文字を書く事にした。
「代表者が渡すのであれば、他に誰が関わったのかわかるものがあったほうがいいですよ」
とシャロンは告げる。手が震え始めているミルキーだが、村人男性陣を代表して、魂を込めた文字を書く。そして、手紙のラストには全ての協力者の名前を連ねておいた。
「手紙は何て書いたの?」
アランが聞くも、無言でぶんぶんと否定の意味で首を振るミルキー。ようするに内緒という事だ。
「あとはラッピングをして完成です」
透明な袋にチョコを入れ……いよいよ、完成だ。
「おめでとうございます」
ユリは、ソフィネに聞こえないとは思うが、小さく拍手をした。
そして月はテレパスで完成を察したのか、お花畑からそろそろ戻るべきと判断した。
「じゃ、そろそろ行こ~! 広場の辺りへ!」
「広場ですか?」
プレゼントに最適なのは村の中心にある広場だろう。恐らくミルキーも、そう考えているはず。というか、テレパスでそう伝えたので既に広場にいるはずだ。
広場に着くと、そこには顔を赤くして立っているミルキーがいた。
「……あら、ミルキーさん? 今日お見かけしないと思ったら、どうされました?」
「え、えと、その……!」
「村人代表だろ、頑張れよ」
アランが小声でヤジを飛ばす。シャロンとユリは、ゆっくりとアランとポールと共にミルキーから離れ、ミルキーとソフィネの二人きりにしてあげた。もちろん、月もソフィネから離れる。
「……あ、もしかして……」
ソフィネは何となく察したようだ。
「これが、俺達、いや、お、俺の思いです! 受け取って下さい!」
チョコには、大胆にも「LOVE」の一文字が刻まれていた。
「え、私、その……何て言ったら良いか……!」
思わず赤面するソフィネ。
「……ミルキーさんの、好意を受け取らないわけにはいきませんね。ありがたく頂きます」
チョコを優しく受け取ったソフィネ。ミルキーは、その後小さく呟いた。
「……す、好きです」
「え?」
「ソフィネさんが好きです!!」
ミルキーの大胆な告白に、周囲は静かに沸いた。
「ミルキー、さん……」
ソフィネは胸にこぶしを当て、赤面しながらこう返した。
「喜んでお付き合い致します」
そのやや堅さのある好意的な返事に、広場で密かに見守っていた全員が拍手を送った。
「皆さん、本当にありがとうございます……!」
ミルキーは嬉し涙で前が見えないにも関わらず、全員に手を振って返した。
「にくいぞこのっ、幸せになれよー!」
「浮気するんじゃないぞー!」
アランとポールも涙を拭きながら、肘で突いてからかう。
「するわけないだろぉぉ」
まだ涙を流すミルキーに、ソフィネはハンカチを取り出し、そっとミルキーの目を拭いた。
「泣いたら折角の男前な顔がボロボロになってしまいますよ」
「うわぁぁソフィネさんお返事ありがとうございまずぅぅぅぅ!!」
嬉し涙が止まらないミルキーであった。
――その日の夜は、宴が開かれた。もちろんソフィネのお父様、つまり村長にも話は通した。晴れて二人は村の公認カップルとなったのだ。嬉しくて、嬉しくてたまらないミルキーに、チョコ作りを手伝った皆で祝い酒を送るのだった。
「……って、アランにポール! お前らもし……もし成功してなかったらこの酒どうするつもりだったんだよ! お前らが仕入れたんだろ?」
ミルキーからのツッコミが入るも、とぼけた顔でアランは返した。
「え、成功以外に考えてなかったけど」
……ある意味、たくましい商人である。
かくして、密かにチョコを送るミルキーの作戦は成功に終わったのだった。
マスターコメント
文句なしの大成功です! そしておめでとうミルキー&ソフィネ!
ミルキーとソフィネの二人は、今後のシナリオでカップルとして出る可能性が付与されました。実に良かった。皆様、ご協力ありがとうございました!
それと、ソフィネは月の事も好意的に受け取ったようですよ。ちなみにフレンド受付は、「NPCとして出演した依頼に参加した事のある方のみ」となっています。今回依頼に紐づけはされていませんが、メイン格だったのでOKという事で、キャラクター検索からのフレンド受付お待ちしております。狩り友ですね!
ショートシナリオ易しい 報酬:標準5 / 4〜10人
2021年03月17日 04時55分44秒 公開
大成功
相談掲示板
シャロンです。シスターをしております。 よろしくお願いしますね。 誰か来るかなぁ? 大きく分けて、チョコ作りを補助する人と、ソフィネさんの気を逸らす人がいればなんとかなるんじゃないかな? と思います。 自分がどっちに行くかは、すこし相談の流れを見てから決めたいと思います。
キャスターのナタリアと、弟子のユリとジープですわ。 実質はじめての依頼ですが、失敗の無いようには頑張りますので、よろしくお願い致しますわね。
ルナだよー。よろしくね。 シャロンのヘルプに来たぞ。 ルナはメシマズだから料理はできない。 ソフィネさんにくっついてバレないようにフォローするね。
私の元には料理の得意な者がいますわ、彼女にチョコレートを作る方に回ってもらいますが… 私と、料理が特段得意ではない方はどうするか、それは考え中ですわね。 今のところ一応チョコ(の作り方)を知っている方も元々いるようですし、二人もいればチョコ作りの方は大丈夫かしらね?私たち二人は何とかしてソフィネの気を引く方に行こうと思っていますわ。
月様は駆けつけてくださってありがとうございます。 月様がソフィネ様対応に行かれるなら私は料理のほうに参りますね。