リベンジャー

小湊拓也

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シナリオID:612

オープニング

 人を殺し、物を奪った。女子供を餌食にした。
 餌食にされた連中が、弱かった。それだけの事だ。
 俺たちは、強い。だから、弱い連中に対しては何をしても許されるのだ。 
 強い者は、何をしても許される。それを俺たちに教えてくれたのは、世の中の連中だ。この世界そのものだ。
 力のある連中が、俺たちの血肉を喰らって肥え太る。俺たちを踏み台にして、より高い所へ上って行く。
 それに我慢がならないのであれば、喰らう側、踏みつける側、奪う側へと回るしかない。
 同じ思いを抱く仲間たちを、俺は集めた。
 皆で山に籠もり、武装をした。極悪非道の山賊として、大いに暴れ回り名を馳せたものである。
 1人1人は、しかし臆病者であった。群れなければ、人殺しのひとつも出来ない。だから徒党を組むしかない。
 そう、俺たちは弱いのだ。だから、何をしても許されるべきなのである。
 なのに、誰も許してはくれなかった。
 領主の軍勢が、俺たちの山を攻めた。
 俺たちの、約半数は殺された。
 俺自身を含む残り半数は、荒野で十字架に縛り付けられ、晒し者となった。
 辛うじて生きているのは、俺1人である。他の連中は力尽き、だが埋葬も解放もされず、十字架にこびり付いたまま腐り始めている。
 拘束し、晒す。当然、水も食べ物も与えない。
 ここの領主が、好んで行う処刑法である。
 領民どもが、ここを通りかかっては俺たちに石を投げ、罵声や汚物を浴びせた。俺たちが動ける状態であれば、逃げ惑うしかない連中がだ。
 どいつもこいつも、自分より弱い者に鬱憤をぶつける事で、領主への不満も発散させてしまう。領主に、上手いこと飼い馴らされている。
 こんな連中しかいない世の中のせいで、俺たちは賊徒になるしかなかったのだ。
 俺は、何も悪くない。
 俺たちに殺された連中も、まあ気の毒なのだろうが俺のせいではない。真っ当に生きられさえすれば善良でいられた俺を、悪行へと追い込んだ、世の中のせいだ。
 こんな世の中は、滅びた方がいい。どいつもこいつも、死んじまった方がいい。
 誰でもいい、と俺は思った。
 この世界を、滅ぼしてくれ。どいつもこいつも皆殺しにしてくれ。
 その瞬間。誰かが来た、と俺は感じた。
 そいつらが、俺の仲間たちに這入り込んで行く。
 1人が、動いた。
 硬直・腐敗した肉体がバキバキと暴れ、鎖を引きちぎる。
 十字架から解放された屍が、地面に激突し、のたりと立ち上がり、歩き出す。
 2人目、3人目も、同じような事になりつつあった。鎖をちぎり、あるいは十字架の一部をへし折って束縛を脱し、バキバキと歩き始める。4人目以降もだ。
 どこへ向かって歩くのか。
 俺にはわかる。皆、生前と同じ事をしようとしているのだ。ここから最も近い村に押し入り、皆殺しを行う。終わったら次の村あるいは町を目指す。皆殺しに、するために。
 俺も、間もなく死ぬ。
 死ねば、この得体の知れぬ何かが這入って来る。そして俺も仲間たちと同じく、人ではないものとして蘇る事になる。
 こいつらは別に、俺の思いに応えてくれるわけではない。俺たちの仇討ちを、してくれるわけではない。
 こいつらには、こいつらなりの理由があって、この世に這い出して来たのだろう。
 結果、この世が滅びる。皆殺しになる。それなら一向に構わなかった。俺は俺でこいつらを、もはや自力では出来ない復讐の代行者として利用するだけだ。
 世界は、こいつらに滅ぼされる。どいつもこいつも殺される。
 自業自得である。全て、世の中の連中が悪いのだ。
 俺は、何も悪くない。

 俺は、悪くない。

 おれは、わるく、ない。

 それが、この男の最後の思念であった。
 絶命の直後、男は動き出していた。硬直の始まった四肢が怪力を振るい、鎖を引きちぎる。
 男は着地し、直前まで自分を捕らえていた十字架を地面から引き抜いた。そして担ぎ上げた。
 十字架を担いで、男は歩き出す。仲間たちを追う。やがて仲間たちを追い抜き、先頭に立つ。
 亡者の、行進であった。
 その行く手に、村がある。
 クリーパーは、ただ殺戮を行うだけだ。エーテルを奪う、その行為の結果として。
 復讐の意思など、ない。この男たちは今や、人間としての意思を失っている。意思を失った者たちの復讐を代行しよう、などという利他的な思考をクリーパーは持たない。
 クリーパーが、動く。
 その結果として、男の望んでいた復讐と同様の事態が起こるだけだ。

解説

目的  アンデッド(10体)の殲滅。  クリーパーに憑かれた山賊団の死体。怪力で鎖や十字架を振り回して攻撃を行う(近距離、対単体)。  他のものより若干強力な頭目が1体います。

マスターより

マスター小湊拓也と申します。  アンデッドの集団が、村を襲おうとしております。これを止めて下さい。  皆様には、村に到着寸前のアンデッドたちに戦いを挑んでいただく事になりますが、そこに至る経緯をプレイングに記していただけると幸いです。  偶然、通りかかった。ギルドから派遣された。何らかの理由で村に滞在していた。等々。  記載がない場合は小湊が勝手に考えます。  それでは、よろしくお願い申し上げます。 

リプレイ

 ぴん、と耳が立った。
 猫科の聴覚は、聞きたくもない音を拾ってしまう。
 急峻な高台の上にセリオス・オーガストは佇み、眼下に広がる原野の風景を見下ろし見渡した。
 いくらか荒涼とした土地ではあるが、村がある。農地も見える。人が暮らしてゆける場所ではあるようだ。
 聞こえてくるのは、怨嗟と憎悪の叫びである。
 間違いなく幻聴であろう、とセリオスは思う。
「……聞こえてしまうものは、仕方がない」
 呟き、見据える。
 足取り重く原野を歩み、村に近付いて行くものたちを。
 亡者の行進、であった。
 クリーパーに憑かれた屍の群れが、壊れた十字架を担いだり鎖を引きずったりしながら、村に向かって鈍重に歩を進めている。
 腐敗した頰を引きちぎって歯を剥き出しにしつつ、だらりと舌を伸ばす。そんな口から、怨みと憎しみの呻き叫びが垂れ流されているようにセリオスは感じた。
 不快な幻聴であった。獣の耳がぴくぴくと震え、尻尾が荒っぽくうねる。
 端整な顔に、表情はない。
 お前は耳と尻尾に感情が出る、と言われた事がある。自分ではわからないし止められない。
 まさに猫科の獣の如く、セリオスは高台を駆け降りていた。


 悪事を働いた者が罰を受けるのは、当然である。
 悪事の内容によっては、その刑罰がいささか残酷なものになってしまうのも仕方がない、とニーラ・メッコは思う。
「十字架に縛り付けて……死ぬまで晒しもの、かぁ……」
 立て札があって、罪状が記されている。
 死罪は免れないにせよ、死の苦しみを長引かせる事に一体いかなる意味があるのか。
 そして。苦しみながら死んでいったのであろう罪人たちの屍は、一体どこへ行ったのか。
 立て札の向こうには、壊れた十字架がいくつか放置されているだけである。ちぎれた鎖が、垂れ下がっている。
 官憲によって死体が処分されたとして、十字架や立て札がそのまま放置という事はあるのか。
 そして何より、この足跡は何なのか。
 授恵者だけが感じられるであろう、この腐臭にも似た気配の残滓は何か。
「クリーパー……」
 ニーラは呟き、足跡を追った。
「どうか……私の勘違いで、ありますようにっ」


 定期的に居場所を変えているのは、様々な面倒事を避けるためである。
 特に避けるべきは、
「お前……逃げて来たな。色んなものから逃げ回りながら、今まで生きてきた。そうだろう」
 このような面倒な男と、うっかり対人関係が出来てしまうような事態である。
「それが悪いと言ってるわけじゃあねえ。ただ……こういうものからは、逃げねえんだな」
「私、戦えますから」
 エルファリアは応え、前方を見据えた。
 男の言う『こういうもの』が、迫りつつある。
 クリーパーに憑かれた、屍の群れ。十字架を担ぎ、あるいは鎖を引きずり、原野を歩み進んで来る。
 まるで葬列のようなそれらを見つめ、大太刀を構えながら、エルファリアは言った。
「もちろん貴方から見れば、お話にならないレベルでしょうけど」
「見た目より腕っ節が強えのは、知ってる」
 路銀が尽きたので、村で畑仕事を手伝った。
 同じ畑で、このカルフ・オルヴォという男も働いていた。屈強な用心棒兼農作業員として、村人たちに重宝されていたようである。
 その村が、エルファリアとカルフの背後にある。
 この歩く屍たちに襲撃・蹂躙されようとしている。
「無理するなよ嬢ちゃん。逃げたって、誰も責めはしねえ」
 言いつつカルフが、ゆらりと大太刀を構える。巨大な刃が、エーテルの輝きを帯びる。
「死なれたら、寝覚めが悪い」
「私もですよ。戦えるのに戦わなかった、なんて事になったら寝覚め悪いです。居心地、悪くなります」
 カルフと並んで、エルファリアは立った。屍たちの眼前に、立ち塞がった。
「私ね、そういうものから逃げたいんですよ」
「難儀な奴……」
 言葉と共に、カルフは踏み込んでいた。
「まあ俺も……逃げてる最中だがなっ」
 踏み込んだカルフに、屍たちの攻撃が集中する。鎖が唸り、十字架の破片が棍棒の如く振り下ろされる。
 それら攻撃を、カルフは斬撃で迎え撃った。
「戦いは、俺に……何も、忘れさせちゃあくれねえ……」
 斬撃の一閃が、衝撃波を生んだ。動く屍たちが薙ぎ払われ、腐肉の破片を散らせて吹っ飛び倒れる。
 倒れなかったものが1体いた。よろめきながら踏みとどまり、担いでいた十字架をカルフに叩き付ける。
 いや。その十字架が振り下ろされるよりも早く、疾風が吹いた。
 十字架を振りかざした屍が、疾風に切り裂かれて激しく揺らぐ。後方によろめき、だが倒れず十字架を地面につき、それにしがみついて踏みとどまる。
 この屍たちの中で、最も強力な個体であろう。
 それと対峙するカルフの傍らに、疾風の正体が着地する。ふっさりと、獣の尻尾が揺れた。
「……助太刀、するです」
 ハーフビーストの若者、と言うより少年か。両手で一振りずつ、細身の小剣を握り構えている。まるで牙だ。
 村の中で、エルファリアはこの少年を幾度か見かけた事がある。それは、カルフも同じようであった。
「お前……このところ村をうろついてた奴だな」
「ハル・チフいいます。細かい自己紹介、必要なら後で」
「そんなもの聞く前に、俺は死んじまうかも知れんがな……」
 苦笑しつつ、カルフはまたしても踏み込んだ。
 倒れていた屍たちが、意外に素早く起き上がり、襲いかかって来る。
 単身、その襲撃を迎え撃ちながら、カルフは叫んだ。
「生きてるうちに自己紹介だな。俺はカルフ・オルヴォ! 遠い昔、敬仰する王と国を守る為に生きた男だ。その国は、崩れた! 俺の力不足ゆえに!」
 ちぎれた鎖が、十字架の破片が、カルフの全身を滅多打ちしている。
 血飛沫を散らせながら、カルフはなおも語る。
「俺は……狂いそうな悔しさを抱え、身を酷使し、鍛え……新しい生き方に無理矢理、馴染んだ……馴染んだ、と思ってたんだがな……」
「自己紹介と言うか、自分語りですね。それは」
 エルファリアは踏み込み、剣を振るった。
「馴染む、ですか。私、今この場だけでも貴方に馴染む努力をしていますよ。難しいですけど」
 こちらも大太刀であるが、カルフの得物と比べると品質も、持ち主の技量力量も、格段に劣る。
 精一杯の斬撃が、精一杯の衝撃波を発し、動く屍たちを薙ぎ払った。どの程度の痛手となったのかは、わからない。
 何体かの屍が、カルフを、ハルを、迂回しようとする。容易く殺せる標的ばかりの村へ、向かおうとする。
 エルファリアが立ち塞がろうとした、その時。
 光が、動く屍たちに絡み付いた。迂回の動きが、光に止められていた。
 声が、聞こえる。
「私……思い込んで、突っ走って、馬鹿をやらかす方なのよね。最初の思い込みが、勘違いって場合が多いんだけど」
 杖をかざし、歩み寄って来る、1人の少女。その杖で光を制御し、動く屍たちを拘束しているようである。
「たまぁに……本当たまに、ね。勘違いじゃない時があって。それって大抵、悪い事が起こってる時なわけよ。嫌んなっちゃう」
「誰……」
 鎖の一撃をかわしながら、ハルが言った。
「……いえ。助けてくれる、誰でも構わないです。一緒に村を守る、いいですか?」
「当然よ。私はニーラ・メッコ、貴方たちと一緒に戦うわ……ふふっ、まさかこんなに授恵者の人たちが居合わせるなんて」
 ニーラは微笑み、杖を構え直し、次なる魔法の動きに入った。
「ハイアルヴのお導き、かな」
「ハイアルヴ……懐かしい単語を、聞くもんだ」
 呻きながらカルフが、十字架の一撃を大太刀で弾き返す。
 この男が血まみれなのは、エルファリアを庇っているからだ。敵の攻撃を余分に受けているからだ。
 足手まとい、と思われているかも知れない。
 この場の誰かの足を引っ張って、致命的な事態を引き起こす。
 それは、戦いから逃げる事と比べて、どれほど残酷なのか。どちらが、より避けるべき事態であるのか。
「実戦は、ほとんど初めてか」
 声を、かけられた。
 それと同時に、光が飛んだ。
「それなら、まずは自分が生き残る事を考えろ。誰かの役に立とう、なんて思うな」
 光の矢が、動く屍を何体かまとめて貫き、切り裂いていた。
 揺らめく尻尾を、エルファリアは視界の隅に捉えた。
 2匹目の獣が、いつの間にか、そこにいた。ハルが狐ならば、こちらは豹か。
「びっくりした……い、いつから、そこにいたんですか」
「つい今しがた、あそこから下りてきた」
 断崖の如き高台に、豹のような青年が視線を投げる。携えた弓に、光の矢をつがえながら。
「セリオス・オーガストという。この死体どもを退治して、村への被害を防ぐ。それが共通認識という事で、いいんだな?」


 戦場に、光の雨が降り注ぎ続けた。
 全て、セリオスの放った矢である。
 動く屍たちが、光の矢に穿たれ貫かれ、硬直する。
 そこへニーラが、軽い声を浴びせた。
「くらえ! ニーラ☆インフェルノ!!」
 爆炎の嵐が、吹き荒れた。
 動く屍たちが、焼け砕けて遺灰に変わり、舞い漂う。
 ハルは、息を呑んだ。
「凄腕の射手と、強大な魔法使い……すごい!」
 叫びながらも、跳躍する。左右2本の剣に、エーテルの輝きを宿しながら。
 焼け焦げながらも原形をとどめた屍が何体か、仲間たちの遺灰にまみれながら弱々しく動いている。
 それらに向かってハルは、光り輝く双剣を一閃させた。
「外の世界、強い人たくさんいる! 僕、旅に出て本当に良かった」
 光の斬撃が、屍たちを粉砕する。斬撃と言うより、それは巨大な光の大鎚だった。
 焦げた肉片が飛散し、さらに砕け散って灰と化し、さらさらと降る。
 動く屍が、もはや1体も残っていない事をちらりと確認しつつ、ニーラが言う。
「私……広い世界で経験を積んでね、いつかハイアルヴと心を通じ合わせて見せる。今は、修行と勉強よ」
「前向きな連中だな」
 言いつつセリオスが、視線を移す。立ち上がれずにいる、2人の戦士へと。
「……こちらは、いまひとつ後ろ向きな連中のようだ。それが悪いとは思わんが」
「いくら前を向いてもな……過去ってやつは、背中にべっとり貼り付いて来やがるのよ……」
 カルフ・オルヴォは満身創痍である。動く屍たちの攻撃を、率先して引き受けてくれた。
「……俺もな、この連中と同じよ。他の奴らの幸せを喰らって……自分の正義を、肥え太らせてきた。正義なんてもの持ってた分、こいつらより……タチ悪いやな……」
「だからって自分に罰、与える。良くないです」
 ハルは言った。
「無茶な戦い方、ダメです……死ねば楽になれる、思っていませんか?」
「……そうです、ね……死ねば、もう何からも……逃げなくて済みます……」
 答えたのは、エルファリアだった。
 目立った外傷はない。が、力を使い果たしている。体力も、気力も。
「私……何、やってるんでしょうか……こんな所で……」
「貴女はね、村の人たちを守ったのよ」
 ニーラが、エルファリアの肩を優しく叩く。
「……違います……私……」
 エルファリアは、ニーラの顔を見ようとしない。
「ただ……何もしなかった事を、責められたくないから……」
「それ、僕も同じです」
 ハルは、微笑みかけた。
「民を守るは、貴族の務め……僕、そう思って戦いました。でも本当は、貴族のくせに逃げた言われるの嫌、だったから」
「重要なのは行動だ。心に気高さがあっても、身体が動かなければ意味はない」
 言いつつセリオスが、弓を引いた。
「……そして、俺たちの行動はまだ終わりではない。来るぞ!」
 サラサラと積もっていた遺灰の山が、砕け散った。
 充分に原形をとどめた屍が1体、灰を蹴散らして跳ね起き、十字架を振り上げ、襲いかかって来る。ハルが最初に斬りつけた、最強の個体。
「執念深けぇな……っ!」
 カルフが立ち上がり、迎撃した。
「お前らは俺とは違う! もう苦しまなくていいんだ! 眠れ!」
 斬撃の一閃。
 鎧の如く死後硬直した屍が、構えた十字架もろとも叩き斬られた。
 両断されかけた屍に、ニーラが杖を向ける。
「土に還りなさい。そして、どうかハイアルヴの導きを!」
 雷の力場が、出現した。
 電撃の檻に閉じ込められた屍が、稲妻に灼かれ、悲鳴を上げる。
 発声器官など機能しているはずはない。それでも間違いなく、この屍は叫んでいる。ハルは、そう思った。
 音声なき絶叫を、セリオスも聴いてしまっているようだ。
「その声が……聴こえてしまったから、俺は来た」
 引き絞った弓に、エーテルを集中させてゆく。
 巨大な、光の矢が出現していた。
「お前は、俺を呼んだ……救いを求めていた、という事にしておく」
 セリオスが、弦を手放した。
 光の矢が、屍を粉砕していた。
 もはや死体とも呼べぬ、砕け散った人体の残骸だけが残っている。
 ハルは、目を閉じた。
 死者と、会話は出来ない。ただ、残った想いに触れる事は出来る。
「駄目だ……」
 カルフが止めようとしたが、遅い。
 あまりにもおぞましいものが、ハルの心に流れ込んで来た。
 一瞬、気を失ったのかも知れない。
 カルフの力強い両腕に、ハルは抱き止められていた。
「おい、しっかりしろ!」
「…………人は……」
 ハルの声が、震えた。
「……人は……死ぬと、こんな……おぞましいもの、しか……残らない……?」
「ふん、クリーパーどもの大好物ってところだな」
「かわいそう……」
 ハルは、涙を流していた。
「……なんて、思うの……傲慢? ですか……?」
「いいさ、哀れんでやれ。俺もそうする」
 セリオスが、続いてカルフが言った。
「……俺は、こいつらを、羨む事にするぜ……」
 カルフの右手が、鋼鉄の義手である事に、ハルは今更ながら気付いた。
「俺は……ふふ、また生き残っちまった。ざまあ見ろハイアルヴ! あんたに見放された俺は、まだ生きてるぜ!」
「ハイアルヴは」
 ニーラが、カルフの目をじっと見つめた。
「……誰かを守るために戦ったエルフを、決して見放したりしないわ」
 誰かを守るための戦いで、カルフは右手を失ったに違いない、とハルは思った。

マスターコメント

お待たせいたしました。ご参加ありがとうございます。 小湊はダラダラ書いて尺に収まらなくなるタイプの物書きですので、今後も少人数のシナリオだけになると思います。申し訳ございません。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準5 / 4〜5人

2021年03月01日 08時36分06秒 公開

成功

相談掲示板

  1. セリオス・オーガスト

    ・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしくたのむ とりあえずやってくる敵を迎撃だな。 一体だけ強いのがいるようだからそれを先にたたくか、それとも周りのやつからたたいていくか

  2. ニーラ・メッコ

    キャスターのニーラ・メッコです。 よろしくね!

  3. エルファリア

    エルファリアと言います。よろしく。 ん……基本的には弱いのから減らして、強いのは囲んで叩く、がいいんですかね。 強いのを先にやろうとして時間がかかって、周りからたかられるのもいやですし。

  4. カルフ・オルヴォ

    カルフ・ヴォルオ、ウォーリアだ。ま、ヨロシク。 アンデットだと、弱い個体でもしぶとそうだよな… 数では負けてっから、弱いのから減らすで良いんじゃねぇか。 実際に戦ってみて、しぶといなら足をぶった切って動きを止めるとか 数の差を補える対策は必要だろうな。

  5. ハル・チフ

    シーフのハル・チフです! 被害出たら大変…がんばるね。 みなさんよろしくね! 僕も弱い個体から、数を減らすに賛成です。 統率された集団では無いみたいだし、数を減らしたいな。 あと、できたら10体がバラバラにならないようにして、一気に叩けると嬉しいかなって思います。

  6. カルフ・オルヴォ

    バラバラにしない…ああ、村に行かれちゃ厄介だよな その方が範囲技も効いて…効率は良さそうだな。

  7. エルファリア

    >バラバラにならないように だとすると、数を減らすのを優先にしつつ、さらに先行してたり進行方向がずれてるやつがいるなら優先……って感じです? 特に始まった時点でばらけてないなら、ばらける前に範囲攻撃うてるなら優先して使う……ぐらいで。

  8. ハル・チフ

    >バラバラ カルフさん、エルファリアさんありがとうございます >エルファリアさん 先行の敵や違う方向に向かっている敵優先 &バラける前に範囲 ありがとうです、可能な限りで大丈夫ですが そうしていただけるとありがたいです! 僕たちの人数より相手の方が数が多いので バラけられると取りこぼしがありそうと思っての発言でした 僕自身は襲われる村側から進んで 先頭が村に到着しないよう 迎撃をしたいと思ってるですが 状況を見て取りこぼしそうな敵に注意を払えれば、と思ってるです 言葉足らずで申し訳ないのです

  9. セリオス・オーガスト

    <バラバラ ふむ、確かに向こうは統率も取れてないだろうから各戸ばらばらに動かれると危ないな。 なら雑魚から倒してくのも理にかなってるな、了解した。 まあシーザーロアみたいな執着付きのスキルとかあれば取りこぼしは少なくはなりそうだな とりあえず俺は若干距離を取って離れて村に行こうとする敵がいたら優先的にたたけるようにしておくか。

  10. ニーラ・メッコ

    遅れてすみません! わかった! まずは数を減らすように頑張る!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0