【CP】闇は蠢き、コボルト隊は迫る

岩岡志摩

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シナリオID:563

オープニング

●経緯
 エルフ達が暮らす小集落の1つが、魔獣の襲撃を受け壊滅した。
 場所は帝国からの難民達が暮らすキャンプに程近く、冒険者達は小集落に残っていた魔獣達を撃破し、脅威を排除する。
 生存者はいないと思われたが、冒険者達の捜索の結果、衰弱が激しいもののただ1人生き残っていたエルフの子供を救出することに成功した。
 後日そのエルフの証言から、冒険者達は魔獣の襲撃が何者かの意図で引き起こされたことを知る。
 だがこの小集落が壊滅した要因はもう一つある。
 この小集落に疫病が発生したことを偽装し、エルフ達を助けることで関係を改善しようとした男爵と配下の部隊だ。
 冒険者達の探索では、部隊らしき遺体は発見できず、小集落より脱出した可能性が高いとみなされた。

●暗闘
 冒険者達の予想通り、その部隊は数を減らしながらも生き延びていた。
 しかし部隊が命令を下した男爵のもとへ報告に戻った時には、既に男爵は捕らえられ、牢馬車で中央に運ばれていた。
 そしてその道中に男爵は謎の不審死を遂げたと、男爵の摘発に動いた王国貴族ヴィガ・リスタ子爵は部隊長に告げた。
「愚か者どもが! 集落を壊滅させた罪は重いぞ!」
 リーンエス王国貴族派に属するヴィガは、部隊長を糾弾する。
「私どもは閣下の命令に従っただけです!」
 部隊長は生前の男爵より、疫病の自作自演の命令と薬剤は、ヴィガ子爵より下されたものだと聞いていたが、ヴィガは鼻で嗤う。
「知らんな。言いがかりは止めてもらおう。貴様らのせいで、王国はその集落や周囲一帯を『保護』することになったのだぞ?」
 ヴィガは部隊長の抗弁を一蹴するが、その頬が愉悦で歪んでいるのを部隊長は見逃さない。
 部隊長は、嵌められたと悟る。
 部隊長は知らなかったが、このヴィガという子爵はエルフという種族を嫌悪していた。
 いつか難民キャンプ周囲にあるエルフ達を全て駆除し、各小集落があった土地を王国の領有にしようと画策するほどに。
 だがその場所で暮らすエルフ達を虐殺し、力づくで自分の領土にするなど、王国はまず認めない。
 しかしエルフ達を駆除するために必要な『混乱』が、難民キャンプや周囲に迫りつつあることを、ヴィガは掴んでいた。
 その混乱が効果を発揮するためには、先に難民キャンプとエルフ達の関係を悪化させ、手を組ませない必要がある。
 だからヴィガは関係改善の為と称し、疫病の自作自演を男爵に命じた。
 そして事態はヴィガの目論見通りに進み、男爵も死んだ。
 あとは以後の混乱に乗じてエルフ達を排除し、残る小集落を王国の領有とすればいい。
 王国は清く正しくあらねばならない。
 驕慢なエルフ共など、王国にいてはならない。
 ――全ては王国のために。
 ヴィガは本気でそう信じていた。
「我々王国は貴様らの所業を許しはしない。お前達も大人しく捕まるがいい」
 その言葉と共にヴィガは自分を守る騎士達の背後に隠れ、入れ違いに周囲から武器同士が激突する音が響いた。
 やがて戦闘を示す喚声と金属の衝突音が幾重にも重なり、床と鎧を鳴らして騎士団と思しき一団と部隊長配下の部隊が、刃を交えながら部屋へなだれ込んできた。
「隊長! お逃げくださ――」
 必死に隊長を守ろうとする兵士だが、それ以上の言葉とその命は、騎士の剣に喉を貫かれて消える。
「私の部下を、よくも――!」
 目の前で部下を殺された隊長は、憤りのまま騎士に斬りかかろうとするが、他の配下達に制止されて不発に終わり、脱出しようとする部隊と抵抗するなら討伐も辞さない騎士達の間で乱戦が繰り広げられる。
 不条理への怒りが勝ったのか、部隊は半数を失う犠牲を出しながらも逃走に成功する。
 ヴィガはエルフのいる小集落を壊滅させた罪と責任を部隊に被せ、部隊を反逆者として追跡するよう指示を出していく。
 指示を受けた者達が部屋から去った後、ヴィガは何もない空間に向け「聞いていたな?」と告げる。
 次の瞬間、ヴィガの正面に派手な衣装と仮面を身に着けた存在が、片膝をついていた。
 もし先の部隊長がこの場にいれば、それが集落に魔獣達を引き入れた道化師だと見抜いただろう。
「餌を漁りに来た『狗ども』を壊滅した小集落やその周囲まで誘導しろ。『狗ども』が介入してくれば必要な混乱が生み出せる」
 その言葉に、道化師は仮面をあげて問う。
「魔獣たちはいかがなさいマスカ?」
「周囲にいるエルフ共の駆除は『狗ども』が本格的に来てからだ、今回は動かすな」
「かしこまりマシタ」
 ヴィガの前で頭を垂れた道化師の姿が、その場からふわりと消えた。

●索敵
 壊滅した小集落の周辺で『それら』の存在が明らかになり、付近にある難民キャンプから冒険者ギルドへ依頼が持ち込まれる。
「今度はコボルト達が現れたのですか?」
 職員は依頼人を兼ねた難民キャンプからの使者に、状況を尋ねている。
「今のところ数はそれほど多くないが、奴らは先に壊滅したエルフの小集落に侵入して、物資を持ち出していることが確認されている」
 コボルト達の目的は物資の調達だろうと、使者は推測を述べる。
「だが集落1つで奴らの活動が終わるとは思えない。恐らくは周囲にある他の小集落や、難民キャンプにまで奴らの『調達』が及ぶ可能性がある」
 そうなる前にコボルト達を撃退し、周囲の小集落や難民キャンプを守る。
 それが今回の依頼の主旨だった。
 使者はこれまでに行った偵察によって、次にコボルト達が襲うであろうエルフの小集落の位置や周辺の地勢、敵の規模といった情報収集には成功しており、それらも職員に伝えていく。
「その小集落にいるエルフ達は何と言っているのですか?」
「集落を滅ぼすきっかけを作った人間達など、顔も見たくないと言ってきた」
 魔獣達の襲撃で小集落の1つが壊滅したことは、そのエルフ達も知っていたが、余計な工作を行った人間達がいたことも知れ渡り、態度を硬化させているようだ。
「強引に立ち入ろうとするなら武力も辞さないとも言っていたからな。これ以上彼らを刺激しない形でコボルト達を撃退する必要がある」
 よってエルフ達の集落に踏み入れないよう留意して、コボルト達を撃退するしかない。
「今の段階で、そのエルフ達が我々の言葉に耳を傾ける可能性は低い。だから行動で示すしかない」
 そしてそれができるのは、授恵者にして冒険者である皆様だけだ。
 使者より現地の見取り図や必要な情報を記した紙などを受け取った職員は、直ちに依頼斡旋のため動き出した。

●やること
 今回皆様に行ってほしいのは、難民キャンプ近くに存在するエルフ達の小集落を、コボルトの『物資調達隊』が襲う前にこれを迎撃し、撃退することです。
 なおエルフ達に余計な刺激を与えないために、エルフ達の集落に踏み込んだりしないよう注意しながらコボルト達を撃退する必要があります。
 今回標的となった小集落に暮らすエルフ達は、近隣の小集落が壊滅した経緯を知っており、人間達への態度を硬化させています。
 そのエルフ達の心証をよくするには、行動で示すことが効果を発揮するでしょう。
 コボルト達が小集落への攻撃に成功した場合、エルフ達がどういう行動をとるのか未知数のため、近くにある難民キャンプにも何らかの影響が及ぶ可能性は低くありません。
 将来的な危険の芽を摘み、少しでも被害者となる人々を減らすために。
 どうか皆様のお力をお貸し願えないでしょうか?

解説

●目標  コボルト達の撃退  失敗条件:エルフ達のいる小集落に立ち入るorコボルト達が小集落に到達する  登場  コボルト×16  物資の現地調達を目的に進出したコボルト達。射程0の槍を装備する個体が12体、射程6の弓を装備する個体が4体で構成。それぞれ略称『槍狗』『弓狗』。  これまでの偵察で、ほぼ西側より『物資調達』のため、東へ進んでいることが確認できている。  現在このコボルト達以外で下記エルフ達の暮らす小集落に迫る敵はいない。  エルフ達  コボルト達が向かう先にいる小集落に暮らすエルフ達。別の集落が魔獣の襲撃と人間達の工作の結果、壊滅したことで厳戒態勢になっている。  人間達に不信感を抱いており、今の段階で下手にエルフ達と接触したり何かしようとすれば事態が悪化する危険が非常に大きく、強行した場合その内容によってはマスタリング対象。  状況  森林の中を通る林道の1つ。現地での天気は一貫して快晴で正午。森の中ではやや見通しが悪いので注意。  以下は現地の簡易見取り図。1マスあたり5m×5mくらい。皆様は下記見取り図内の好きな場所から行動を開始できる。重複可。  ↑北        ABCDEFGHI  1森森森森森森森森森  2◆→ 森森森森森森  3森森 森森森森森  4 ◆→森  森 森 ~小  5◇→        ~集  6 ◆→森  森 森 ~落  7森森 森森森森  8   森森森森森森  9森森森森森森森森森  森:鬱蒼と茂った森林。見通しが悪く通行には不向き。  ◇◆:コボルト達。1個当たり4体。◆が槍を装備し、◇は弓で装備を統一している。

マスターより

 前回はエルフの救助や魔獣を殲滅して下さりありがとうございます。  助け出されたエルフの子供は順調に快復し、前回魔獣を引き入れた道化師の情報はPC情報となりました。  OP内●暗闘の箇所はPL情報です。  PL情報ながら前回の小集落への工作を真に企て、責任や罪を実行した部隊や男爵に押し付けた黒幕やその動機も、徐々に明らかになっています。  黒幕の目的はエルフ達の『駆除』と、その集落のある場所を混乱に乗じて王国の領有にすることです。  黒幕はエルフ達の排除が王国のためになることだと本気で信じており、その過程でいくらエルフや人々が死のうが仕方のない犠牲と割り切っています。  そんな相手の思惑通りの結果にしてやる義理など、皆様にはありません。  黒幕は既に根回しや証拠の抹消、責任転嫁の裏工作を終えているので、今回は捕まえることができませんが、今後もそうだとは限りません。  よろしくお願いいたします。

リプレイ

●開始
 森の中に走る道を伝い、槍と弓で武装したコボルト(以下『弓狗』『槍狗』と略)達が、数体ずつ一塊になって進撃する。
 その先にはエルフの小集落があるが、冒険者達がそれぞれの方角から狗達を迎え撃つ。
「アレだけ気を遣ってエルフとの関係を築いてきたのに、好き勝手荒らしやがって……」
 既にバーネット・フォーサイスは、持参したロープや周辺にある蔓、木片といった材料を使い、簡易な仕掛けを森の各所に施していた。
「この落とし前、どうつけてやるものか……」
 仮の警戒線を構築したバーネットは看破も駆使し、仕掛けの反応などから狗達を察知すると、周囲の仲間へその方角や数を報せていく。
「コボルトの殲滅と集落への侵入阻止は完遂する。それが俺の務めだ」
 セリオス・オーガストは周囲の木々により隘路となった場所で、狗達を待ち受けていた。
 木々の茂みで視界が制限されていても、セリオスの天眼と超視力は、標的と定める弓狗を捉えつつある。
「まずはバスターアローでダメージを与えていくぞ。うまくいけば一撃で仕留めることができそうだな」
 光をダマスカス鋼の短弓に集中させながら、セリオスは弓弦を引き絞り、バスターアローを行使。
 弓弦を鳴らし、破壊力と速度を増大させて放たれた一射は、先頭に立つ弓狗の胴に突き立った。
 悲鳴を上げる間もなく絶命する弓狗を見た他の狗達が何かを叫び、弓狗を庇う動きを見せる。
 それを見逃す冒険者達ではなく、極力葉を揺らさぬよう細心の注意を払い、狗達へと迫っていく。
 セリオスの周囲に陣取るシハーブは、依頼内容を聞いて以降、難しい顔をしている。
(仕事を隠れ蓑に、キレイどころばっかりのエルフを眺めるチャンスではなかったのか?)
 内心シハーブはそう思うも、残念ながら今回その機会はないだろう。
「ふん。せっかくのチャンスを潰したのも陰謀だってのか。許せねえ話だな」
 もし今回の黒幕がシハーブの話を聞いたら、「それは私怨だ」と反論しただろう。
 シハーブはあえて狗達の注意を引きつけるべく、槍を提げ突進してきた槍狗を正面から迎え撃つ。
(ともかく、コボルト達が集落に近づく前に倒してしまいましょう)
 フリーダ=ブロムヴィストは当初弓狗を優先して撃破するつもりだったが、弓狗達が守られる態勢になったことで、若干方針を変更する。
(こうなった原因を考えるのは、その後でも遅くはないでしょうし)
 フリーダはそう思いつつ、チャージングを使用して木々の間を潜り抜け、槍狗へと肉薄する。
 フリーダのダマスカス鋼の大剣は、エーテルブレードによって纏いついたエーテル光が刃を成して刀身を伸ばし、一気に振り下ろされる。
 肉を断つ異音と共に、周囲の木々が鮮血の霧で染められ、槍狗の身が縦に割れ仰向けに倒れていく。
 その間にトゥーリがフリーダとは狗達を挟み、反対方向へと回り込んでいた。
「フリーダさんと挟撃になるように、集落からコボルトを遠ざけるように展開していくよ」
 トゥーリは狗達のただ中へと躍り込むと、射程に捉えた狗達に向け、闘気槌2を行使。
、巨大な光塊を纏ったダマスカス鋼の祭刀が勢いよく振り下ろされ、範囲内にいた狗達のみを吹き飛ばす。
「そっちには行っちゃだめなんだって! 集落の方には行かせないよ!」
 トゥーリは集落にいるエルフ達に、自分達が近づかないようにしていると気づいてもらうため、あえて大きな声を出している。
「コボルト達が分かれて動くことは、過去の経験から予測できるんだよね。森を突っ切って奇襲程度の小細工はしてくるとか」
 サーマルアイで狗達への警戒や、その捕捉を行っていたサイラスも、フリーダやトゥーリが攻撃する狗達へと狙いを定めていた。
「戦闘自体は体力が怪しいならヒールで自己回復し、シーザーロアで射程内の敵を自分側に集めるつもりだよ」
 サイラスは狗達を釘づけにして、後方に向かわせないと方針を決めており、最も近くにいた槍狗に向けシーザーロアを行使。
 殺気と共にエーテルを叩きつけられた槍狗は、サイラスへと駆け寄ってくる。
 打ち込まれた槍を、サイラスはダマスカス鋼の盾を構えて弾き返し、返す刀で繰り出した鋼の大太刀が、狗の胸を深々と貫いた。
 一撃で生命を断たれた狗は血を撒いて倒れ、動かなくなる。
「なんか……色々と作為を感じるな」
 ケン・Z・ブラッドリーは、ここ最近の難民キャンプ周辺やエルフの各集落で発生した騒動の数々に、作為的なものを感じている。
「とはいえ、今はやるべきことを済まさないといけないな」
 ケンは狗達の撃退が先と意識を切り替え、チャージングを行使していた。
 瞬間的に加速したケンは、最も北に進出した槍狗達へ肉薄するなり、殺界を行使。
 ダマスカス鋼の大太刀に纏ったエーテル光が長大な刃を形成すると共に、不可視のエーテルを周囲へ張り巡らせる。
「出会い頭だが……ここで狩らせてもらうぜ……てめぇらの首を」
 狗達の一部を殺界の効果範囲内に閉じ込めることに成功したケンは、狗達に向け確殺を宣告する。
 そして最も南側へと散開した狗達には、ハヤト=ガラン=ヴォルファングが迫りつつあった。
(今度はコボルト共が動き始めたのかよ……ま、何にせよ目的を探ってみねぇとだな)
 ハヤトとしては、狗達は各個撃破して最終的には一網打尽とすることが望ましい。
 フェザーステップによる巧みな身のこなしで、ハヤトは一気に狗達との距離を詰めていくと、まずは弓狗を守る槍狗に向けトリプルファングを行使。
 ダマスカス鋼の剣とダマスカス鋼の短剣が交互に繰り出されて、槍狗の身を3度叩き斬り、その命を刈り取った。
「うるぁ! ブレイブファング傭兵団のハヤト様が相手になってやんぜ!」
 周囲の狗達に向け、ハヤトは名乗りをあげた。

●撃破
 森の中で突進を続ける狗達を、冒険者達が様々な方向から押し包んでいく。
「おいおい……集落に近づかせるわけにはいかねぇんだよ……」
 ケンは北側にいる槍狗の一部を殺界で仕留めた後、効果範囲より逃れた槍狗達へ追撃をかける。
「此処から先にいきたきゃ、首斬り飛ばされる覚悟で来いや……全力で狩ってやるぜ」
 槍狗の刺突をダマスカス鋼の盾で受け流し、ケンは闘気槌を行使。
 光塊を纏った大太刀が振り下ろされ、周囲にいる狗達だけにその威力を炸裂させると、直撃を受けた狗達は全身を裂かれ、血を噴いて倒れ伏す。
 最も北側にいた狗の群れを屠ったケンは、その情報を周囲にいる仲間達へ伝えていく。
「北側は孤立しているので少数で当たり、中央側は多数の敵がまっすぐ向かってくる事が予想されますね。できるだけ早めに敵を抑えていく事を意識していきましょう」
「了解だよ、フリーダさん。無理に囲みを抜けて集落に突っ込んでいくような敵がいるなら、その敵を最優先だよ!」
 仲間達より伝達される情報から、戦況を把握したフリーダはトゥーリと共に中央で固まる狗達への攻撃を続ける。
 フリーダがチャージングを行使して、狗達との距離を詰める間に、トゥーリは集落へ向かおうとする狗の1体に向け魔矢を行使。
 トゥーリの突き出した祭刀より放たれた光の矢は狙った狗を直撃し、頭を微塵に吹き飛ばした。
 頭を失った狗が転倒し、動かなくなる中、弓狗へ肉薄したフリーダは大剣を翻して真っ向から斬りつけた。
 唐竹割りに斬られた弓狗が、血を噴き上げ倒れ込む。
「啓示でも『数の暴力を発揮される前に倒せるとウマ=アジ』と出ていますし、このまま片付けていきましょう」
「ワタシは回避に意識を集中させながら、味方が隙を衝きやすくなるように、コボルトの進行を邪魔することを優先かなぁ」
 フリーダとトゥーリがそれぞれ中央の狗達を抑えにかかる中、近くの地面に肉の塊らしきものが転がっているのを見た狗達がその方向へ走り寄る。
 肉を掴もうとした狗の手がそのまますり抜けたところで、近くに潜んでいたサイラスが狗達へ襲いかかる。
 今しがた狗が手にしようとした肉は、サイラスが幻影スキルで形成した幻で、狗達はサイラスに釣りあげられる形となった。
「残念だったな、その肉は幻だ。だがおれの攻撃は本物だぜ」
 そのままサイラスは闘気槌を行使。
 光を纏った大太刀が勢いよく振り下ろされると、周囲にいる狗達だけを薙ぎ払い、既に損傷が蓄積していた狗達はその身を裂かれ、倒れ伏す。
「終了したらちゃちゃっとキャンプとか行くべきかな? ぶっちゃけ過去に縁が無いからそこまでエルフを気にするものじゃないし」
 サイラスとしてはエルフとの関係云々よりも、先の小集落壊滅を引き起こした部隊やその背後に関わる情報が気になるようだ。
 南側では数で勝る槍狗の迎撃を突破したハヤトが疾風足を行使して、弓狗達のもとまで斬りこんでいる。
「俺から逃げれると思ってんのか? あんたらを逃がしはしないぜ」
 森の中の暗がりであっても、暗視スキルで視界が確保されるハヤトの動きが妨げられることはない。
「薙ぎ払いをやるぜ! 俺の周囲から急いで離れるんだ!」
 素早く周囲を見渡したハヤトは、自分の周囲から離れるよう仲間達に警告し、離れたのを確認してから薙ぎ払い2を行使。
 光の刃を纏った剣をハヤトは一閃して周囲を薙ぎ払い、斬撃を浴びた弓狗達は血を噴いて吹き飛ばされ、地面に横転する。
 瀕死の状態になった弓狗達が力を振り絞り、起き上がろうとするも、既にセリオスが弓弦を引き絞り、狙いを定めていた。
「かなりダメージが蓄積しているようだな。通常攻撃なら一撃で倒せそうだ」
 そう判断したセリオスは弓狗達に向け、ラピッドショットを行使。
 弓弦を鳴らし、文字通り矢継ぎ早に放たれたセリオスの射撃が、弓狗達の頭を次々と貫いた。
 射抜かれた狗達は血を噴き上げて倒れ、動かなくなる。
「これで弓持ちコボルトは全て倒したな。後は槍持ちに対応している仲間を援護しよう」
 セリオスは天眼を駆使して、援護が必要そうな仲間を見定めていく。
 残る狗達も、バーネットの行使したアーケインテンペスト改によって、集落への行く手を遮られていた。
「俺個人の役割は、後衛としてお前らの足止めと火力投射だ。通すつもりはないぞ」
 稲光が荒れ狂う空間に包まれた狗達は、その稲光に絡めとられ、移動を阻害される。
「こいつらを倒したら、他に森に紛れている敵が居ないか索敵し、敵の取りこぼしを防ぐのが良さそうだな」
 既にバーネットの意識は、狗達を倒した後にも向けられている。
 その間にシハーブが、動きを鈍らせた狗を仕留めにかかる。
「目の前に憎い敵がいたらそっちに視線は集中するよなあ」
 シハーブは周囲の物陰に小集落のエルフ達らしき姿があることを見抜き、納得する。
「静音性は気にしない。豪快に叫びながらいつも通り戦うつもりだ。うるさくてごめんな」
 エルフ達に詫びつつも、シハーブは槍狗からの攻撃をノービスシールドで受け、報復のノービスハンマーを槍狗へと叩きつける。
 既に仲間の攻撃で損傷を蓄積させていた槍狗は、その一撃で頭を割られ、血を噴いて頽れる。
 そしてバーネットの行使したメテオライト2が、残る狗達へと降り注ぐ。
 大量の小さな光弾が狗達の全身を穿ち、残る狗達は全身から血を噴出し、絶命していった。

●後始末
 全ての狗を撃破できたところで、冒険者達はそれぞれの行動に移る。
「まぁ、起きちまった事は仕方ない……また地道に信用を得るしかないな」
 バーネットは嘆息しつつも仲間達に協力を仰いで大穴を掘り、周囲に散らばる狗達の骸を集めに回る。
「亡骸を片付けておけば、疫病の発生を防ぐことができるぞ。それも信用回復の第一歩だ」
 こうした配慮がエルフ達にも伝わるかは不明だが、やっておく必要があるとバーネットは言い切る。
「エルフの次はコボルトですか。確証はありませんが、一連の流れに意図的なものを感じますね」
 ――啓示では『この時点ではクロ=マクはまだ内緒』とありますが……。
 バーネットの作業を手伝いながら、フリーダは今回の事件の裏にいるであろう存在へと思案を向ける。
「……まったく、人の和を広げなきゃいけないってときに……どこのどいつだ」
 ケンはバーネットに協力し、周囲に残存する狗達がいないことを確認し終えると、ようやく一息つく。
「かといって、コボルトから何か聞き出せるとでも言うのかよ?」
 狗が人間と会話できるほど知能が高くないことは、ハヤトも承知している。
 恐らく狗達自体は、物資調達のために襲来したのだろう。
 ただし何者かの誘導を受けていた可能性が高いと、ケンやハヤトは考えている。
「魔獣を差し向けて集落を壊滅させた一件と、今回の件は同じ奴が仕組んだんだろうな」
 明らかに、暗躍する何者かは存在するとケンはにらんでいる。
 それも、エルフと難民キャンプの双方に悪意を持つ存在が。
「魔獣やコボルトを使ってエルフ達を滅ぼそうというくらいだ。ろくでもない奴なのは確かだな」
 ハヤトもケンの考えに賛意を示す。
「たぶん、集落のひとたちもこっちの事見てるよね?」
 あれだけ派手に争った以上、エルフ達がこちらの動向を確かめに来る可能性は高いと、トゥーリは判断している。
「その通りだ、トゥーリ。俺達を監視するエルフが数人いたのは確かだ」
 実際に戦闘中エルフ達を発見できたシハーブは、トゥーリの判断が正しいと告げる。
 シハーブは、今回の一件でエルフ達が冒険者達の動向を怪しみ、自分達で情報を集めるべく調査に乗り出すことを期待しているが……。
「そこまでうまくいかねえよなあ」
 シハーブはそう言ってため息をつく。
「この後は情報集めとくか? キャンプで何か変わったこととかあるかな? とか」
 サイラスは戦闘の痕跡を消したり、周辺の清掃を終えると仲間達にそんな提案を出す。
「なんか進展あるといいねえ」
 例の集落壊滅に関与した部隊も気がかりだが、今回の件についても不明な点は多いとサイラスは考える。
「そうだな。エルフ達の誤解を解こうにも、裏で動いている奴の情報も示せる証拠も少なすぎるぞ」
 セリオスは今の段階ではエルフ達に対し、何かをするのは得策ではないと告げる。
「コボルトを倒したことが、今後につながればいいよね」
 今回冒険者達は狗達の襲撃からエルフ達の小集落を守り抜くという行動を示し、結果を残すことができた。
 トゥーリの考えに、セリオスも賛同する。
「今はそれが精いっぱいだろうな。エルフ達が何かかかわってくる前にさっくり撤収するぞ」
 セリオスの提案に反対意見はなく、冒険者達は後片付けを終えると静かに森から撤退していった。

●結果
 今回皆様がなした狗達の殲滅により、集落のエルフ達は人間に対する敵対心を和らげていた。
 そのことが裏で動くヴィガ・リスタ子爵の意図を挫き、子爵が潜む闇に痛打を浴びせる結果に繋がる。
 冒険者達が黒幕に辿り着くのは、そう遠くない。

マスターコメント

 岩岡志摩です。今回はコボルト退治でしたが、殲滅に至るまでの手際がよかったこと、集落や周囲への被害をおさえるよう留意されたプレイングが多かったこと、後始末を行ってエルフ達の心証を良くする結果に繋げたことなどから、大成功とさせて頂きました。  また機会がございましたらよろしくお願いいたします。  このたびはご参加下さりありがとうございました。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2021年02月21日 11時17分11秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ハヤト=ガラン=ヴォルファング

    おーっす! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! とりあえず森でコボルト共を待ち伏せして殲滅ってシンプルな任務だろ? 俺はAの7の森に潜んで◇の弓狗共を真っ先に始末するつもりだぜ。 ちなみにエルフ達への接触禁止ってなってるがコボルト共を殲滅した後に襲われそうだったから片付けといたぜって報告しに行くのもNGな感じなのか? せっかく助けたのにエルフ側は何も知らねぇってことになると関係改善の糸口にもならねぇよな?

  2. No.2

    サイラスだ、よろしくなー まあ基本的に普通の戦闘依頼だから、タゲとる人いればタゲ取って倒してく感じかねー? とりあえず森にいる敵を補足出来る様にサーマルアイとか持ち込もうかなと。一匹でも逃すと今回後ろに逃げられたら追えなくなる可能性あって不味いし 出てる計画関連とかはあれだなーと、奇跡的に最近壊滅した小集落再調査とか反逆者について知るとかなければ、男爵を摘発した人物についてとか、この辺にいる生物でやばそうなの調べるとか、周辺の被害も考慮し適切に処理してそういうやつもいるアピするくらいしかないのでは?以前無関係だったからよくわからん

  3. セリオス・オーガスト

    ・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む 敵は16たいでそのまままっすぐ来るならA2の敵が離れてるからその抑えは必要そうだな。 456にいる敵はうまく誘い込めればまとまるが一か所で済むからこちらも戦力の集中はできそうだな <エルフ 下手に接触しただけでもアウトとあるからそういう報告でもしないほうが無難じゃないか。下手すれば姿見られただけでも面倒になりかねないような状況に見えるしな。

  4. バーネット・フォーサイス

    キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >方針 戦闘そのものは、敵の侵攻経路を塞いで足止めしながら駆逐ってところだな。 懸念事項としては、見通しが悪くて敵を見逃す可能性がある事だが、 その辺りは探知系のスキルで補うか、時間があれば鳴子を作って警戒ラインを引くのも有りか。 >エルフ 現状かなり不信感に溢れているから、声を掛けるどころか集落の方向に移動するだけでも、 悪い方向に勘繰られて状況悪化に繋がりそうだな。 まぁ、集落近くで戦闘があれば存在には気づかれるだろうし、 こっちが敵を排除している事は伝われるだろう。

  5. フリーダ=ブロムヴィスト

    ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 それではこちらはシーザーロアで注意を引きつつ前衛として行動します。 具体的な位置については中央付近での戦闘になるでしょうか。 索敵面については透視+天眼である程度森を見やすくしてみるつもりです。 >エルフ 下手に接触して不要なリスクを負う必要はないと思いますし、 今回は接触は避けた方が良いと思います。

  6. トゥーリ

    トゥーリだよ、よろしく! とりあえずコボルトを倒して、今後につなげればいいんだね。 乱戦になって間違ってエルフさんの集落に入っちゃわないかだけ心配かな…… バーネットさんが言ってる通り、なんか目印とかあれば安心できそう。 どこから開始してもいいってことなら、まずは正面をしっかり抑えて、次に迂回してくるA2の敵を対処すればいいのかな? 探知系は聴覚をメインに使ってるよ!

  7. セリオス・オーガスト

    <集落に 幸いにも初期位置は選べるからなるべく集落から離れたところを初期位置にしておけばいいんじゃないか? まあそれを考えればできたら見取り図のEより左側にいたほうが無難というところか。 八人いるからA2の敵に対応するのが二人ぐらいで残りで下の三か所の敵に対応するのが比率的にいいほうか?

  8. バーネット・フォーサイス

    >初期配置 なるべくなら槍持ちコボルトの正面すべてに人員を配置したいな。 それと、人数を均等に割るよりは一か所にある程度頭数を割り振って、 1カ所ずつ各個撃破していくのはどうだ?

  9. シハーブ

    ヒーラーのシハーブだ。遅くなってすまんな。 >方針 どこで待ち構えて何をするかはともかくとして A2に2名、A5・B4・B6に6名 ぐらいの対応ってことでいいのか? 今回は見逃しをしたくねえから、ハヤトみたいに最後のラインを守るメンバーがもう一人欲しいな。 手の長いシューターでなくても、とりあえず足止めになる誰かで。

  10. No.10

    とりまA2側とそれ以外で分けるなら俺はフリーダさんとは別の側かねぇ?もうお一方がどう動くか分からんし注視要因分けた方が良さげだなと

  11. バーネット・フォーサイス

    >個人行動 それじゃあ俺は、G6の森当たりで遮蔽を取りつつ足止めと火力投射だな。 アーケインテンペストとスタティックフィールドが届く範囲の敵を足止めしつつ、 B4から優先して範囲攻撃で纏めて薙ぎ払う感じだ。 あとは時間の余裕が有れば鳴子も仕掛けて、出現を早期に察知出来ないか試してみる。

  12. フリーダ=ブロムヴィスト

    >配置 それでは私はA~B5辺りから出発を考えています。 この位置なら上下の槍部隊のどちらからでも迎撃が届きそうですし、 仮に突破されそうになってもD5付近で集中しやすいので対処しやすいかと。

  13. ケン・Z・ブラッドリー

    顔出しが遅れてすまん。 ウォーリアーのケンだ 相談見た感じで行動が明確なのは フリーダとサイラスが正面で対応 ハヤトが側面から弓を狙う バーネットはB6槍の正面で足止めと正面からくるコボルト全体への範囲攻撃 ってかんじか? 間違ってたら教えてくれ そうなるととりあえず正面は人がいるから俺はA1からスタートでA2の敵を攻撃して撃破してその後は横から正面の敵へ攻撃仕掛けてく感じでいこうかな

  14. バーネット・フォーサイス

    >位置取り あ、すまん、表記間違えた。 G6じゃなくてG4に位置取りする予定だ。 ここなら全体の中心近いから、射線さえ通ればどこにでも魔法が届く。

  15. セリオス・オーガスト

    <配置 とりあえず俺は下の集団にどこでも対応できるようにG5に位置して置くか。 一応最初は弓もちのコボルト狙いでそれが片付くか前衛が突破されそうなら槍を狙う形で

  16. No.16

    いや正面というか?フリーダさんA5行くならA2で囮するよ的な感じ? いやまあA5側行けと言うならならそうプレ変更するけども。別に拘らないしー

  17. トゥーリ

      ABCDEFGHI  1⑤森森森森森森森森  2③→ 森森森森森森  3森森 森森森森森  4 ◆→森  ① 森 ~小  5②→    ④   ~集  6 ◆→森  森 森 ~落  7森森⑥森森森森  8   森森森森森森  9森森森森森森森森森 ①バーネット ②フリーダ/弓コボルト ③サイラス/槍コボルト ④セリオス ⑤ケン ⑥トゥーリ 場所を見えるようにしてみたよ! おおまかには受け皿になるように配置できてるから、これでいい気がするけど…… 正面はキャスター・シューターだからできればここにもう少し壁があるといいかな? これから入る人はそこを気にしてくれるとうれしいかも!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0