【豆採】赤狐、チョコよりタネに興味持つ

狐野径

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シナリオID:548

オープニング

●チョコレート普及大作戦
『迷宮都市エドゥノーグのダンジョンから、突如大量のカカオ豆が得られるようになった』
 その驚きのニュースは、エドゥノーグの商人達の広報の甲斐あって、瞬く間に大陸中を駆け巡った。
 カカオ豆とチョコレート。
 その存在は大陸広くで知られているものの、一般的に流通しているとは言い難い。カカオの栽培に適した土地は総じて治安が悪く、輸出にたえうるほどの大規模なカカオ農園が作れないためだ。カカオ豆の安定した供給元がなく、ダンジョン産のものに頼らざるを得ないため、チョコレートは上流階級や富裕層で愛好されるに留まっていた。
 そんなカカオ豆が『突如』『大量に』、おまけに商人達が販促にと担ぎ出した古い童話に乗っかって、『チョコレートは愛と平和を育むお菓子♪』なんて触れ込みと共に市場へ流れ込んだものだから、さあ大変。
 しかし何にせよ、おいしいチョコレートが庶民の口に入るようになるのは良いことだ。おいしいは正義。冒険者達もカカオ豆求めダンジョンへ、あるいはチョコレートの普及(布教)を目指し大陸各地へ飛ぶのだった。

●赤狐、わくわく
 水上都市アキュアリスタにいるウル・ヘルバ。
 湖を見つめ
「湖の底、もっと見てぇよなぁ」
 潜れる訳ではないし、水が引く時期が限られているため見られない。
 とはいえ、無茶をしないのは基本心情。
 つまり、この時点では、チョコレートなんて関係ないところでうろうろしていた。
 調査を終え、拠点としている場所に戻ろうと考えていた。拠点と言っても御大層なものではなく、なんとなく居心地いいからいる街なのだけど。
「にしても、なんかざわざわしてるよなぁ」
 この町で何かあるというより、人の出入りが多いと感じているだけである。
 魔物が出たとか、治安が悪いというそういうことではないのはなんとなく分かる。
 どちらかというと、浮き足だった人という感じだ。
 ただ、それはウルが感じるだけで何もないかもしれない。
 だからこそ、冒険者ギルドに寄って情報収集でもしておこうとウルは考える。勝手な想像により、危険に身を浸すこともないからだ。
 そして、ウルの目の色が変わるのだった。
「カカオ豆が手に入るっ!? 行く、俺も行く」
 机をどんと叩き、前のめりになるウル。
 職員は「顔近いっ!」と顔を真っ赤にして、身を引き、椅子から倒れそうになった。
「すまん」
 ウルが手を引っ張り止めてくれた。
 椅子に座り直して、ウルは話を再度聞く。
「エドゥノーグの商人ギルドが依頼主か……」
 ウルが真面目な顔になる。
「で、豆、埋めるため、研究のためもらいたいってありか?」
「うまく、生やして増やせるなら、喜ぶんじゃないですか」
「育つって……寒冷地じゃ無理だしなぁ。そもそも、すぐに出てこねぇよっ!」
「今回の豆収穫できたら、次は植わっているという方に出向けば良いんですよ」
 職員、気軽に言う。
 ウル、職員をにらみつける。
「んな所に行くぐらいなら、冒険者雇うわっ」
「貴方も冒険者ですよね」
 ウルが持っている大剣を指さす。
「便宜上、冒険者であって、俺は、見つける、育てる、研究するためにやっているんだ」
 ウルは溜息を漏らす。
 植物のことだけ追っていけるならばこれは楽なことはない。
 貴族やら大商人に伝手があるわけでもなく、植物を探すにしても素人だと自身は思っている。
「この依頼に乗ってもいいか?」
「大丈夫ですよ」
 職員はウルを追加しておくのだった。

●そこまでは順調
 依頼を受けた冒険者はダンジョンに、ワクワクする狐を連れて潜ることになる。
 なんだかんだで、一つの部屋にたどり着く。
 そこは、広い部屋だった。
 中央には木が生えている。
 明かりはなくても見える仕掛けになっているようだ。
「まさか、木が生えているのか?」
 ウルは近づくと様子を見る。
「作りもんか……そりゃそーか」
 つまらなそうに言うが、作りを見て関心はあるようだ。
「じゃ、この実は?」
 ウルは背伸びをして、枝にぶら下がる実に触った。その実は赤く大きなものだった。
 そして、実はもぐ。
「……とれたっ!」
 楽しそうだ。

 パッカーン。
 ベチャ。
 近くの天井から液体に見えるものが落ちてきた。
 見ていたらわかるのだが、天井の一部が動き、それが降ってきた。

「……げっ」
 それはウネーンと動いて、ウルの方に向かう。
 カカオの実を同行している冒険者に投げる。両手がふさがっていれば剣は抜けない。
「効きわりぃし、下手に剣を持ち上げると、枝にぶつかるなぁ……」
 ウルは眉を寄せた。
 なんだかんでスライム状のものは倒しきる。
 途中からウルは離れて見ているだけだったかもしれない。

 ウルは今度は黄色くて小さい実を取った。
 一斉に警戒するが、何もない。
「あ、これ、中に豆入ってる」
 ウルが目を輝かせた。
「最初のあれは、空きもしないぞ」
 ウルは木を見上げる。
「つまり、敵が降ってくるのと実が入っているのがあるわけだよな?」
 色は二色、赤と黄。
 実の大きさは大中小。
「色なのか? それとも大きさか?」
 あきらめるという言葉はあるだろうか?

解説

●目的・目標  カカオポッド(カカオの実)を取ろう!  番人というか、魔物なのか、よくわからないものが降ってくるかもしれない。  なお、豆を隠し持つ人がいるかもしれないよ? ●部屋の状況  30×30メートルの広さ、天井まで10メートルほど。  中央に一本の木のオブジェがあり、一番高いところは天井に近い。  ウルが頑張って取れている……ため、成人男性なら届く範囲にある。  木に登ろうと思えば登れなくはない。  天井の切れ目のような戸の様になっているところは、何か所かある。 ●実の状況  大きさは大中小の3種類。  色は黄と赤の2種類。  すべてで6種類ということになる。  ウルが取ったのは大赤と小黄。  なお、カカオポッドには数に限りがある。  各ポッドの数は、参加者+1。そのうち、2個はすでにとっている。  そのため、安全ぽい「小黄」を最大数(12個)で取ることはできない。あくまで、一人1個ずつである。  ※PL情報。参加人数×2個分までポッドは取れる。  そのため、最大で12個とれることになる。誰がとってもそれはよい。  なお、触った時点で「取った」とカウントする。 ●同行NPC  ウル・ヘルバ 戦えるけど、あまり当てにならない。  とりあえず、カカオのタネが欲しい、カカオポッドほしい。  髪と一緒になっている耳やしっぽが、狐ぽさをアピール。 ●敵  途中で出てこないかもしれないし出てくるかもしれない。  数は最低ゼロ、最大で12。  スライム状の存在、1立方メートルより小さい。  物理攻撃を半減するが、エーテルが関わると違うかもしれない。  ただ、降ってくる位置によっては、ヒトや木に直接ダメージが入る。  落ちてくれば生きている者に向かっていく。運よく、殴るような攻撃当たると、相手を取り込もうとする。  ※PL情報、カカオの実の収穫が(もしくは触った数)、上限に達すると部屋が崩壊する。  なぜなら、古いために強度が持たないのかも?  そのため、天井裏にスタンバっているスライムも落ちてくる……まとまって大きいけど、動きはより鈍い。

マスターより

 こんにちは、狐野径です。  この狐、暑いところ弱そう……という勝手な思いがあります。  砂漠に行くならフェネックがいいですかね……。  さて、ウルはチョコレートには興味なく、その種に興味があります。  結局、チョコレート普及に役立ちそうに見える部分がありますが、まったく役には立ちません。  豆ほしい! 埋めるためにっ!  よろしくお願いします。

リプレイ

●分担
 シャロン・ラ・モリエールは現場に着く前にウル・ヘルバに問う。
「ウル様は種が欲しいのですね。カカオ畑を作るおつもりです?」
「畑というより、どこで育つか、だなぁ。最終的に畑になれば、金銭的にもいいのか」
「それは素敵ですね! それに、食べられるようになるのも大切です」
 シャロンはにこりと笑う。食べるのは好きであるが、金銭の話も興味は引かれる部分はあった。

 ストレガ・L・リベルガストラはその会話を聞きながら「良いことなのだ」とうなずく。
「樹になって実ができるまで長い計画になるが、民にチョコが普及できるようになるなら良いことなのだ。それに、カカオを育てて実を収穫するという雇用も生まれるのだ」
 ストレガは壮大な計画に思いをはせる。
 そんなこんなでカカオの木のようなものがある部屋に入った。そこでストレガが思ったのは、インテリアな雰囲気を漂わせる、樹の置物も調べたいということだった。

 バーネット・フォーサイスは部屋に入って、インテリアのようなカカオの実が取れたことはいいが、中にカカオ豆があり、回収できたことに不審が募る。
「いや、敵を倒したらカカオが出てくるというのもどうかと思っていたが、ここに来て実っているのを見つけると、逆に違和感があるな……」
 ウルが無邪気に喜んでいるのが不思議でもある。
「実ってるのか?」
 バーネットは木を観察するが、作りものだと感じる。一方で、どういう仕掛けか実っている。
「分からない」
 観察している間に、ウルが二個目を取っていた。
 スライムが降ってくる。そう考えると、これを作ったモノの謎が生まれるのだった。

 カズマ クレセントブラッドは敵を倒し終わった後、ウルが持っているカカオポットを見る。
「へぇ、カカオポットか……それで実質チョコが手に入るってことだな……」
 それがあのチョコレートになるのは不思議な気もする。
「基本的に、俺は落ちて来たスライム対応だな。落ちてこない方がいいけど」
 カカオ豆が入っていたのを取ったときは降ってきていない。
 出番がない方が良いような状況だけれども、取る人が安心できる環境を作ることは協力すべきだった。

 フリーダ=ブロムヴィストは木の状況やスライムが出てくる現実から考えを巡らせる。
「なかなか高い位置にカカオの実がありますし、スライムが邪魔で回収が難しいようです」
 このメンバーの平均身長は越えているフリーダだが、背伸びしたところで実によっては届くかも知れないが、取れるかは不明だ。
「はっ……啓示では『スライムまみれになるのはウス=イホンでありがちです』とありますが、できればスライムの邪魔をされないで回収したいところです」
 天井を見上げた。

 バクル・バスリーはスライム討伐が終わった時、口を一文字に結ぶ。
「敵が出てくるとなると、全員で採取してしまうと、反応できなくて危ないね」
 バクルは剣を鞘に収める。
「ぼくならさすがに一撃で倒されないだろうし、ぼくが採取に回るね」
 特に異論は出ない。このメンバーの平均身長というより、中央値かつウォリアらしいウォリア。
「採取したのをすぐに背負い袋に入れれば、片手は使えるかな? 木登りしないと行けないならそれも難しいかな?」
 バクルはつぶやきながら木の様子を見るのだった。

●手順と次へ
 バクルとストレガが収穫担当で、他の者が警戒するということになる。
 次に、どの実を取るか、スライムが落ちてくる状況に法則があるかなど問題はある。

 頭上を見上げ、周囲を見て、カズマは苦笑し、つぶやいた。
「というか……今回のメンバーめっちゃ低いんだなぁ……。俺はドワーフの中で一番背が高いはずなんだけどな……」
「誰がチビだ! 誰が、低いだっ! ああっ!」
 ウルがイライラしながら、カズマに絡んだ。
 ハーフビーストの男性としては、ウルは低いのだ。人間に近い部分が多いから忘却されがちだが。
「いやいや……うん、あ、そうだ、俺、木に登ってみるぜ」
 カズマはごまかし、ウルから離れた。
「確かに低……気にしてたのか……」
 バーネットは身長の話は慎重がいると理解し、何も言わない。
「……怒ったところで始まらないし、きみで届くなら、ぼくでも届くわけだし」
「必要なら、キノボリするのだ」
 バクルとストレガが前向きに言う。
「取る順番とかどうする? 大きい実は取ってないよな?」
 バーネットが見上げて問う。
「そうだね。ウルさんが取ったのと状況からいくと、スライムが降ってくるの来ないのがあるってわけだよね? その上、スライム降ってくる方は実が割れないので中身入ってないだろうってことだよね」
 バクルの確認に、ウルはカカオポットを見せてうなずく。
「バーネット殿の意見を考えると、黄色の大きいのから行くということなのだ」
「たまたま降ってきたかどうかというのもあるし、取れない実があるかもしれないし。大きい方を取りたいよね、できれば。その前に、総当たり……で試す必要はあるかも?」
「分かったのだ」
 バクルとストレガは方針を決め、他の者は依存がないことを示した。

 カズマは木に登れるかチャレンジしてみる。
 木の幹はそれらしく作られているが、表面はなめらかだ。
「ま、こうすれば登れるな」
 引っかかるところはある。
 最初の大きい枝のところで一旦下りた。

 フリーダとシャロンが天井を見上げ考えている。
「スライムが天井裏にいるなら、透視で見てみる方がいいですね。カカオを取ったとき、どう動くかで落ちてくるところが分かるかも知れません」
 フリーダが言う。ダンジョンに特殊な加工とかなければ見えるはずだろうし、見えなくても何度か挑戦はしたいところだ。
 実際見てみると天井裏にうねーん、うねーんとうごめく物が見える。
「開きそうなところとの関わり分からなさそう……」
 カカオポット回収が始まらないと分からないかも知れないし、戦闘を意識して集中できず見えないかも知れない。
 シャロンは、スライムが落ちてきた仕掛けや、戦いでの動きなどから、気になる点が生じていた。
「私は武術を使うのですが……こうも古い建物ですと、踏み込むと床に穴が開いちゃいそうですね」
 建物の耐久性というものだ。どのような素材であれ劣化する。
「上の状況見てみたいですね……ひょっとしてスライムのコロニーがあるかもしれませんし」
 取り出した大型の打楽器三台を、天井のずれそうな所の下に重ねていった。
 そこを登っていく。途中落ちかかる危機はあったけれども無事頂上だ。
 頂上で、鋼の棍と硬木の棍を縛り、一本の棒状にする。天井を突くため、きちんと重ねて縛らないとならない。
 届いたため、天井の開きそうな所を突く。
「あれ?」
 思うように動かない。
「何か仕掛けがあるのでしょうか?」
 フリーダは「スライムが乗っているようです」と告げた。
「動いているんですよね」
「はい」
「なら、しばらくすれば……」
 ただ、うまく動かなかった。
 押してもピクリとしないし、かといってスライドさせるように動かしても、芳しくはない。
 シャロンは仕方がなく下りる。
「耐久性のことだが、スライムを攻撃するなら、枝や幹に当てないようにするのだ」
「そうですね。スライムがいるだけでも、天井には負荷が掛かっているんですし、樹木部分がどういう影響を受けているかわかりません」
 ストレガに対して、シャロンは首肯した。

●実際のところ
 バクルとストレガは実の大きさを見つめる。
 三種類の大きさがあるというのは分かるが、比較して取らないと大きさを誤るかもしれない。
「まず黄色の小さいの」
 バクルが取るが、何も起こらなかった。その実は背負い袋にすぐに入れた。
 その大きさを見て、ストレガが中くらいの大きさと思われる黄色い実を取った。
 耳と目を駆使し用心するが、何も起らなかった。
 バクルは次に黄色い実で大きいサイズと思われるのを取った。
 取ると、すぐに背負い袋に入れ、降ってくる物がないか、警戒した。
「あれ? このまま順調にいくのかな?」
「単純な仕掛けならいいが……」
 バクルの言葉に、バーネットは天井を見る。
「気をつけないとしっぺ返しが来るのだ」
 ストレガがいうと、バクルもバーネットも気を引き締め直す。
「次は赤い実にいくよ。これが違ったら、配置とか……いや、一つずつ片付けていこう」
 バクルが小さめの赤い実に手を伸ばした。

 フリーダは天井の穴部分どこが開きそうか、スライムの動きから推測したかった。
 しかし、スライムの動きは緩慢な上、一体一体が分かりづらい。黄色の実を取っている間、自由に動いている感じだった。それが、赤い実になったらどう変わるのだろうかと思っていた。
「あまり、動き、変わりませんね」
 最初にスライムが落ちてきたところとは違う穴から落ちそうだった。
 それはフリーダの近くであるため、早めに狙いを定め攻撃をする。
「啓示でも『対空戦闘は視界が大事。左舷弾幕は厚めに』とありますから」
 木に当たらないように床にたたき落とす。
 床に転がったそれは動き出したが、冒険者の攻撃を受け、何事もなく終わった。

「戸の開き方、どういう仕掛けでしょうか」
 シャロンは眉をしかめる。ダンジョンの仕掛けを止めることができればこれほど優位に働くことはない。
 しかし、どこに仕掛けがつながるか分からないため、探すのも難しい。
「ただ、開く場所に法則があるかも知れませんよね」
 スライムが降ってこない方がいいのだが、避けられるなら避けたいものだった。

 カカオの実収穫している二人は、念のための中くらいの大きさ、および、大きく赤い実を収穫する。
 やはり、スライムは落ちてきた。

 カズマもスライムが落ちてくるところに法則があるか考えていた。
 落下の回数から、今ひとつ分からない。
 そんな中、カズマの真上に降ってくる。
「うわっ」
 カズマは【アクセラレイター】も用い、回避する。
 そして、すぐに攻撃に移った。

「これが、ランダムってわけでなければ、黄色を取るべきだね」
 バクルは推測を確認するように周りに問う。
「そのようだな。拍子抜けというと、何が起るか分からないのがダンジョンか?」
 バーネットは溜息をつく。
「どれだけ持って帰れるかと言うこともあるね」
 バクルが言うように持って帰るには限度もある。それに、実の数も限りがある。できる限り多く持って帰るには算段がいる。
「【マジカルポケット】は持ってるから」
 バーネットは大きめの布のことも告げた。
「中身入りだろう黄色で、大きいのから回収するのだ」
 ストレガが言う。

 順調すぎて警戒がおろそかになりそうだった。
 それでも、適宜気合いを入れつつ、作業をする。
 一定個数を取ったところで、異変を感じるようになった。
 そのようなことがあると予感はしていたため、予兆は見逃さない。
「危険かもしれません、逃げましょう」
 シャロンが指摘するように、天井がたわみだしている。
「この音は……ねぇなー。逃げるぞ」
 ウルの耳はピンと張り、せわしなく動く。
「これは、スライムが落ちてくるという予兆ですね。もう、天井の破片みたいなのが落ちてきています」
 フリーダが逃げるよう促す。
「そうだな。そっちの取った実は持てるか? ここでまとめる余裕がない気がするから」
 バーネットが確認を取った時には、バクルが走り出す。
「ごめん! いつもなら盾役でしんがり努めるところだけど、実を失ったら危険を冒した意味がなくなっちゃうから!」
「もちろんなのだ!」
 バクルが叫び、ストレガも続く。荷物あるから動きが鈍い。
「実が落ちてるっ」
 カズマは落ちた実を拾って走る。

 一行が部屋の外に出た直後、天井が崩落したらしい、ものすごい音が響き渡る。
 大量の埃が部屋から外に向う。そのため、口元をふさいだり、顔を袖で覆ったりする必要があった。

 しばらくして、土煙が収まったところで、部屋の中を見ることができた。
 木は幹だけを残して、天井板と一緒に床の瓦礫と化している。
「たはは……危ねぇ、危ねぇ。けど、こんだけ回収できりゃあ上等だ……?」
 カズマが言葉を切った。
 瓦礫を縫って現れるスライムに気づいたのだ。
「スライムがまとまってる……のか、自由だな」
 バーネットは部屋があった所を宿り木の杖で差し、なんともいえない顔になった。
 でかいスライムなのか、まとまって大きく見えるだけなのか。
 スライムの状況は分からないが、動いていることは明らかだ。
「これを放置して帰れません」
「こいつがメインディッシュってわけか! いいぜ、俺が相手になってやる!」
 シャロンとカズマは武器を構えた。

 部屋の奥に入ることは難しいため、戦う場所は出入り口付近に限られる。
 フリーダは前に立ち【衝撃刃2】をスライムに叩き込み、それに続きカズマが攻撃をした。
 バーネットが【メテオライト2】を放ち、シャロンが薙ぎ払う。スライム一体か複数いるか分からないため、範囲攻撃を使う。
 ストレガは動きを止めるため【フリーズボルト】を放つ。
 実を確保しているバクルはそれらを守る覚悟だ。
 さらに冒険者が攻撃を重ねて、スライムは倒した。
 動きが鈍っていたそれは、攻撃をするタイミングすら得ることができなかったようだ。

●ポッケ
 撤収前に、豆をまとめて動きやすくする準備をする。

 バクルはウルをじっと見つめる。
 ウルは視線を逸らした。
「なんとか無事にすんだね。……で、ダンジョンにパーティーで潜る際、戦利品を隠し、持ち帰るのは、信用を失う行為だよ」
「……」
「そんな仲間の行為まで警戒したら死んじゃうからね。欲しい、と素直に言えば、相談には乗るよ?」
 バクルは笑顔で怒る。
 ウルはポケットから豆をしぶしぶ出した。
「素直にありがとう」
 バクルの手に載せるところで、ウルは止まった。葛藤しているようだ。
「私の取った分、一つあげるのだ」
 ストレガが一粒豆を取り出す。
「繁殖の研究に役立てるといいのだ。研究成果を世に出して欲しいのだ」
 ストレガの真剣な言葉であるが、シャロンは「あれ?」と首を傾げる。
「依頼の内容を確認しますね? カカオ豆が取れたら持って帰るってことですよね?」
 全員がうなずき、ウルの目が泳ぐ。
「ということは、全部、出さないと、報酬が少なくなるということですね」
 シャロンはにこりと笑うと、豆を回収した。
「依頼は大切だな」
 カズマがシャロンの行動を支持した。
「これで全部だな」
 バーネットは大きな布に集めたカカオ豆を載せ、しっかり縛った後【マジカルポケット】にしまい込んだ。
「スライムまみれにならず、無事完了しました。さあ、戻りましょう」
 フリーダは笑顔で告げた。

 さて、豆を納めるときに個数は数えた。
 なかなかの数で、冒険者たちもギルドの職員も笑顔だった。

マスターコメント

 ご参加ありがとうございます。  身長、まさかの事態。届かなそうなら、どうにかするだろうし、気にはしていませんでしたよ?  一番大きな問題の天井崩落は誰も巻き込まれず済みました。  小さな問題はたくさんありましたが、ちまちまと回避できた状況です。ウル持ち逃げに関しては明確に止めていない……気がするのですが、注意する人いましたし、リプレイのようにしました。  また、ご縁があれば、お会いしましょう。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人

2021年02月18日 09時31分32秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. バクル・バスリー

    ウォーリアのバクルだよ。よろしくね!

  2. シャロン・ラ・モリエール

    シャロンです。 クラスはヒーラーです。 んんー、これって、なんとかしてスライムを先に倒して安全確保することってできるんでしょうか。 無理でも、カカオを取るのとスライムを倒すのと分業したほうがいいでしょうかね? カカオ持ってると武器抜けない、ってことみたいですし。

  3. ストレガ・L・リベルガストラ

    キャスター、ストレガなのだ。よろしくなのだ 上から降ってくるなら、上に部屋があって、どこかに通路があるやもしれないのだ 塞がっているのかもしれないが探してみるのもいいかもなのだ 誰が採ってもいいなら分業するのもアリなのだ 私がいくとキノヴォリしなきゃだから支援ほしいか支援に回るのだ

  4. バーネット・フォーサイス

    キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >方針 ひとまず、まだ取っていない種類の実をいくつか試しに取っていって、 襲われなかった実を最後に集中的に取るのはどうだ? 実は誰か一人が代表で取りに行って、残りの面子はスライム出現に備えて待機。 出てきたら一体ずつ袋叩きにして排除って感じだ。 スライムを最初のうちに全部排除ってのも有りだと思うが、木に落ちてくるリスクもあるし、 個人的にはほどほどに排除して後は崩壊まで実の収穫をしたいところだ。

  5. フリーダ=ブロムヴィスト

    ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 あらかじめスライムを倒す事で安全確保もできるかもしれませんが、 攻撃の余波がカカオの木や実に当たると部屋ごと壊れそうな予感もします。 やはり分業で取る人と倒す人に別れるのがベストでしょうか。

  6. シャロン・ラ・モリエール

    ふむう…皆様ご意見ありがとうございます。 先にスライムを倒す案ですが、 フリーダ様の、崩壊を早めるかもご懸念はもっともですね。 ですが部屋の崩壊はPL情報ですので、カカオの木におちてこない位置にある「天井の切れ目のような戸の様になっているところ」とやらに棍を突っ込んでみて、天井裏にスライムがいっぱいいそう……という情報を落とし込むのは、やってみてもいいです? なんというか……スライムのなかにカカオを持ってる人がいる、というのが惜しく思いまして……。 バーネット様の案のように ほどほどに排除して後は崩壊まで実の収穫、という感じがいいです。 そして分業ですが、ストレガ様のご指摘のように、小柄な人は収穫不利でしょうか。 私もあまり背が高くないのですよね。 バーネット様がおっしゃるように、収穫係を一人程度に絞るなら、背の高い人で立候補してくださる方で決めちゃうのがいいでしょうか。 二、三人いたら二、三人でもいいと思いますが、四人はちょっと多い気がしますね。

  7. カズマ クレセントブラッド

    前衛シーフのカズマだ、よろしくな 俺もわざわざ最初に全滅しに向かうより来れば対処でいいと思うぜ ま、俺は収穫よりもスライム相手にしてる方が気持ち的には乗り気かなって感じだぜ

  8. バクル・バスリー

    ちなみに、実は今回のメンバーで一番身長大きいのはストレガさんだね。 ……いや、さすがにキャスターのストレガさんだと危なさそうだし、固くていざとなれば実を守れるぼくが収穫にまわるよ。 なので、スライムの相手はお願いしたいな。

  9. バーネット・フォーサイス

    >天井 天井を調べるとなると、10m上まで木に登るか壁歩きをする必要があるだろうが、 その状態でスライムが出てきて襲われると床まで落とされそうなのが怖いな。 戸をこじ開け様としなければ大丈夫だとは思うが、やるなら収穫前に軽く確認程度が良いと思う。

  10. シャロン・ラ・モリエール

    むむ…… でしたら先に天井裏のスライ厶を倒すのは取り下げますね。 原則、カカオ収穫後、建物が崩壊して落ちてきたあとにスライムを倒し、スライムが持っているカカオを回収することにいたします。

  11. シャロン・ラ・モリエール

    カカオをとる係は、他に名乗りがいませんしバクル様にお願いして問題ないですか? >参加者全員低身長 ……そんな罠が……。OPにあります成人男性水準が難しいんですね。 なにか足場とか、肩車するとかのヘルプは必要ですか? お手伝いが必要でしたらなんなりと。 肩車がPC相手だと気兼ねするのならウル様に頼むのもありとは思いますが。 >とるカカオ  大きさは大中小の3種類。  色は黄と赤の2種類。  すべてで6種類ということになる。 ……と、ありますが、代表者に一任しますか? 相談しますか? 残り時間少ないので、なにか提案しないと進まないので申しあげますと…… すでにウル様が取られたパターンを除き一通り取って、残りは最も利があると思われたものばかりを取るのはいかがでしょうか。 もしくは安全ぽい「小黄」をあるだけ(6個?)確定しておいて、あとは大赤を避けて適当に、でしょうか。さすがにOPにこんなにハッキリ正解が書いてるとは考えづらいですが……。

  12. バーネット・フォーサイス

    >採取係 バクルがやってくれるなら、俺としてもありがたい。 届くか届かないかは……持ってきた荷物を足場にするとかで何とかならないか? >採るカカオ あるいは、大きい実から一通り確かめて、収穫高のいい実を選ぶってもの有りか。 大きい実で問題ないものがあればそれを集中的に採って、 無くなったら中サイズの実に手を付ければ、戦闘を控えつつなるべく収穫量を増やせると思う。

  13. ストレガ・L・リベルガストラ

    マジか…マジなのだ >身長 もし疲れたら代わってキノヴォリとか長杖とか豪風で落とせるか試みるのだ 基本はスライム相手にするのだ。爆系の術は控えて単体攻撃がよさげなのだ

  14. バクル・バスリー

    >採取係 あ、じゃあぼくが採取係になるね。 >採るカカオ ひとまずぼくのプレイングには「皆の意見を聞く」って書いておいたから、最悪プレイングに書いてくれれば考慮されると思うよ。 ちなみにぼくはまずは色から攻めようと思ってた。けど、二人の案もいいんだよね……

  15. シャロン・ラ・モリエール

    今からカカオについて相談をまとめるのは無理なので、バクル様には大変申し訳ないのですが、おまかせしちゃってよろしいでしょうか……。 どのカカオを取るか書いてなくて依頼失敗となったらさすがに厳しいので……。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0