【初夢】きれいなヤコブときたないヤコブ

おおくまねこ

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シナリオID:467

オープニング

「夜分遅くの来訪失礼します。冒険者の店と言うのはこちらで合っていますかねぇ?」

 それは、月も照らぬ静かな夜のことだった。
 青白い肌に長い犬歯。金髪のぱっつんぱっつんヘア。そしてセンスはないが高級感だけはあるダサいファッション。冒険者たちが見間違うはずも無い。その男はなんと、絶賛指名手配中の吸血鬼、【貴族喰】ヤコブ・ヴィリアンだったのだ!
 武器を抜き、にわかに殺気立つ冒険者たちに対し、ヤコブは両手を上げて戦意が無いことをアピールした。

「静まりなさい。先日は不幸な行き違いがありワタシ達は敵同士でしたが、今、キミ達に対する敵意はありません。ワタシは寛大な心を持って以前の無礼を許します。冒険者たちよ。どうかワタシの『依頼』を聞いていただけませんか? ワタシはその為にわざわざこうして足を運んだのですから」
 その言葉を聞き、冒険者の店のマスターはこっそりと冒険者たちに合図をした。

 ――憲兵に連絡して密かに店を包囲してもらう。時間を稼ぐ為にここは奴の話を聞こう。
 冒険者たちは頷き、ヤコブに先を促した。

「理解して頂けたようですね。よろしい。それでは語るとしましょう。ワタシを襲ったある悲劇について――」

●
「――という訳でワタシは善と悪の二人に分かれてしまったのですよ。理解して貰えましたか?」

 ヤコブは冒険者たちにいきさつを説明し終えると、大げさに肩をすくめた。
 ヤコブが語った内容は俄かには信じ難いものだった。何でも、ヤコブは月夜の散歩の途中で天から降り注いだ妙な光を浴び、善と悪の二つに分かれてしまったらしい。

「ワタシはヤコブ・ヴィリアンの大部分を占める良心の部分……そうですね、とりあえず『綺麗なヤコブ』または『正義のヤコブ』とでも呼んでいただきましょうか」
 以前とあまり変わらないような気もするが、言われてみれば多少穏やかになっているような気がしないでもない。だからと言ってこの男を見逃す理由にはならないが……。
 しかし、もしもヤコブの話が本当ならば、ヤコブはもう一人いることになる。ならば、今すぐこいつを始末するわけにもいかないのであった。
 冒険者たちの苦悩には全く気付かず、ヤコブは真面目な顔でこう続けた。

「ワタシという善の心を失った半身は正に悪の化身です。ワタシの中の僅かな一部分とはいえ、野放しにするわけには参りません。ワタシは我が名が汚される前に奴を見つけ、滅ぼしてしまいたいのです。冒険者の皆さん。どうか今こそ正義に目覚め、ワタシに協力してくれませんか?」

 ヤコブは素敵な笑顔で冒険者たちに告げた。この男、たぶん断られるとは全く考えていないのだろう。
 冒険者たちは悩んだ。この吸血鬼の身勝手な頼みなど聞く義理は全く無いが、かといって片割れを放置するわけにもいかない。どうせならこれを機に両方始末してしまいたいが……。
 冒険者たちがしばらくヤコブへの回答を保留していると、冒険者ギルドに送られたペットが以下のような手紙を持って帰ってきた。

「ヤコブに協力するフリをし、もう一人のヤコブの居場所を発見した後に両方ブッ殺して下さい!」

解説

●状況  表向きの依頼人はヤコブとなりますが、今回の真の依頼人は冒険者後ギルドとなります。  冒険者の店にノコノコやってきた自称きれいなヤコブに協力し、きたない方のヤコブの居場所を見つけだした後、両方やっつけてしまいましょう。  きたない方のヤコブは街の中のどこかにある隠れ家に潜伏しています。ヤコブはお互いの気配をおぼろげに感知しており、片割れがいる方角ぐらいは感知できるようなので居場所を探し当てることはさほど難しくないでしょう。 ●登場NPC 《善のヤコブ》  ヤコブの中の良心で構成された半身です。しゃべり方などは本物に近いですが、本来の傲慢さや精神の不安定さは鳴りを潜めており、本来よりも幾分落ち着いたマイルドな人格となっています。が、ヤコブ基準の「善意」はかなりアレなので人類との共存は不可能でしょう。  また、分離の際に悪に力の大部分を奪われており、かなり弱体化しています。 「ワタシこそが真のヤコブです。あのような下品なワタシは見るに耐えません。王国貴族やバルディオンの前に誅殺してあげましょう!」 《悪のヤコブ》  ヤコブの中の悪で構成された半身です。本来の人格とほぼ変わりませんが、王国貴族への復讐心が前面に出ているせいで若干凶暴化しており、常にキレているように見えます。  こちらも分離によって弱体化しており、冒険者1パーティーでも十分勝ち目があります。  必殺技は《タイダルストリーム》です。 「このワタシこそが! 真のヤコブですっ! 跪きなさい! 愚民共よ! 憎き王国貴族共め! 今に滅ぼしてくれるぞ!」 ●スケルトン×50  悪ヤコブの隠れ家に配置されている骨だけのアンデッドです。耐久力は低いので冒険者なら瞬殺できるでしょうが、数がとにかく多いです。

マスターより

 新年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。2021年一発目は現実のロスガリア大陸ではありえない不思議な依頼です。ご興味はありましたらよろしくお願いいたします。    ※このシナリオは「夢オチシナリオ」です。シナリオ内容は架空のものであり、アニエピカの世界観に一切影響を与えません。報酬は冒険者ギルドからのお年玉です。

リプレイ

●
「さあ、冒険者の皆さん。ワタシの依頼を受けるか否か。ぜひ答えを聞かせてください」
 ヤコブはにこやかにその場にいた冒険者たちに問いかけた。

「きれいとかきたないとかおもしろすぎるので引き受けて差し上げますわ」
 ハイスピードもふもふキャスターのバンビはそうのたまった。ハイスピードを自称するだけあり、依頼に名乗るを上げるのも最速であった。
 ちなみに彼女は冬毛が生える特異体質のゴブリナなので、年末からこっち冬毛がはえてモッサー度がアップしている。誰もがおもわずモフりたくなる可愛らしさだ。
「ありがとうお嬢さん! ところでキミはなかなかのモフモフですねえ。モフってもよろしいでしょうか?」
 だが、そのモフモフさが災いし、なんとヤコブまでもがモフりたいと申し出てきた。綺麗なヤコブにもふられるのは業腹だが背と面白さには代えられない。バンビはヤコブの申し出を承諾した。
「すうぃぃと……」
 バンビのもさもさした冬毛に頭を突っ込み、恍惚とした表情を浮かべるヤコブ。
(ヤコブハコロスシカナイネー)
 モフられながら、バンビは心の中で滅殺を誓ったのだった。

「この吸血鬼、自分について語って説得したいが為に依頼出す様な奴だし依頼出すくらい驚くことでも無くない?」
 そう言ったのはリザードマンのサイラスだ。彼もこの依頼には乗り気だ。直接恨みは無いが、最近忙しくなったのはこいつのせいでもあるので、一杯食わせるのはやぶさかではない。

「吸血鬼ごときが『綺麗』を名乗るなんて厚かましいですね? ご要望にお応えしてキレイに殺してあげましょう! 手下もヤコブも皆殺しです!」
 ヤコブを葬るまたとないチャンス、依頼を受けるべき、と声高に主張したのはギーゼラだ。ヒーラーにしてはやたら物騒な発言だが気にしてはいけない。

「自分が二人居るって、どんな感じなんだろ? 善と悪、二人が対面したらやっぱり合体とかしちゃうのかな? それとも本当は同じ格好をした二人なのかな? 双子さんとか? どちらにせよ二人共ブチのめないとだね」
 首をかしげながら言うアステル。ヤコブ二人が合体。あまり見たくはない光景だが、分裂したのならそういうこともあるかもしれない。一応この依頼がヤコブの狂言であり、実はヤコブが双子であることも視野に入れつつ、彼女も依頼を受諾した。

「そうだね……良いも悪いもヤコブはヤコブだよね」
 アステルの実兄、キオルティスは妹の言葉に頷く。元となる存在が凶悪なだけに、自称きれいなヤコブも全く信用できないのは自明の理である。それに、相手は死霊術師であり、吸血鬼だ。いざという時は兄である自分がオバケ嫌いの妹を守ってやらねば。

「さあ、正義の為に参りましょう! 悪のヤコブはあちらの方角にいるようです。共に参りましょう、冒険者たちよ!」
 こうして、きれいなヤコブときたないヤコブ、二人のヤコブをまとめて討ち取る暗殺作戦が幕を開けたのである!

●
「正義の為に立ち上がる冒険者が九人も……素晴らしい! 実に素晴らしいですねえ! それでこそワタシ自ら出向いた甲斐があったというものです!」
 多くの冒険者に依頼が受理され、ヤコブはニッコニコだった。実際にはヤコブに協力すると見せかけた暗殺作戦なのだが、当の本人は全く気付いていない。

「善でも悪でもいいけど、ヤコブには違いないのよね……煽(おだ)てすかして前に上げられないかしら……」
 リノアはヤコブの横を歩きながら、ヤコブを効率よく抹殺する算段を立てていた。
「ご自身で悪を討ちたいと思われませんか? もちろん最も危険な役目ではありますが……」
 両者を同時に抹殺する為の前振りとして、道中に善のヤコブを煽る。イケイケで行くとかえって怪しまれるので、あくまでもヤコブの自主性を尊重する形で、だ。
「フフフ。ワタシはキミたちのクライアントですが、この中で最強なのはワタシです。のぶれす・おぶ・りーじゅの精神を見せてあげますとも」
 馬鹿(ヤコブ)はまんまと罠に引っかかったのだった。
 
 その頃、隊列の後方では……。
「しっかしバンビ、良く俺を呼んだ! あのヤコブに仕返しできる機会がこんなに早くこようとはな!」
 バンビに呼ばれて合流したクリエーナ・バーリフェルトは上機嫌だ。というのも、クリエーナはヴァイセントラフ砦防衛戦で直接ヤコブと対峙し、顔面をぶん殴られたことがあるのだ。その雪辱を晴らせる機会がこうも早く巡ってくるとは!
「依頼主が当のヤコブっていうのは気に入らんが……どうせ両方仕留めるんだ、ここはグッっと我慢しよう。俺はガマンの出来る女よ……」
 ぼそりと呟き、クリエーナは臣下たちに向けてドヤ顔を披露した。

「ヤコブに協力するのは業腹ですが、ヤコブを倒すためならば仕方ありませんね。そして私が王と仰ぐ、クリエーナ殿下もその気のようですし私も奮起しなければなりませんね」
 クリエーナのドヤ顔を拝謁した臣下の一人――ノックス・マグナは溜息をついた。彼はバンビと同じく、クリエーナの家臣だ。あの忌まわしき吸血鬼に協力するのは気が進まないが、彼の主はヤコブとは因縁浅からぬ仲。彼女の報復をノックスも全力でサポートする所存だ。

(それにバンビさんも居ます。今まで口にこそ出していませんが、殿下の家臣として相応しくない行いをすれば彼女に撃たれる、そんな気が勝手になんとなくしていました。無様な真似は晒せませんね)
 これはバンビ本人に聞かれたら怒られそうなノックスが心の内に秘めた本音であった。

(自分が分裂した。そんなこともまああると思うのだ。世の中同じ顔の生物が三人はいると言われるのだ。あと肉体から魂が分離した存在てのもあるのだ)
 ずんずんと先頭を歩くヤコブの無防備な後頭部を眺めながら、ストレガ・L・リベルガストラはふとそんなことを考えていた。学問に生きるストレガにとっては、こんな怪奇現象もありふれた「自分がまだ知らないこと」の一つであり、理由が分かればどうということはない。
 
 それぞれの思惑を秘めつつ、冒険者たちは悪のヤコブの隠れ家へと向かった。

●
 悪のヤコブが根城にしていたのは森の中の洋館だった。お化け屋敷じみた不気味な建物だったが、吸血鬼には似合いの物件だ。エントランスホールの二階から侵入者たちを見下ろす悪のヤコブに対し、善のヤコブは宣戦を布告する。
「見つけましたよ、悪の化身! 我が汚点よ! 見るのも汚らわしい! 真のヤコブであるワタシが消し去ってあげましょう! みなさい、この無双の軍勢を! 彼らこそ、生まれについての王者であるワタシのカリスマに魅せられた者たちなのですっ! この人望は悪であるキミには望むべくもないものですねえ!」
「よくもノコノコと現れましたねぇ、我が半身! この世にヤコブは二人もいらぬ! 真のヤコブたるワタシ自らの手で消してあげましょう! 行きなさい、スケルトンたちよ!」
 悪のヤコブの号令に応え、一階、二階の両方から大量のスケルトンが溢れ出た。
 ついに善と悪、二人のヤコブの戦いが今始まる!

 先陣を切ったのはキオルティスだった。闘気槌でスケルトンたちをまとめて粉砕しつつ、右側の階段を駆け上がっていく。
 続いてバンビが氷嵐を放ち、左の階段に殺到していた骸骨をまとめて凍らせた。
冷凍されたスケルトンは即座に砕け、粉雪のように消えていく。これで一旦左の階段が空いた。ハイスピードキャスターの本領発揮だ。

「よくもぶん殴ってくれたな!!! 今度こそ一番槍ぶっさしたらぁ!!!」
 クリエーナは怒鳴りながらバンビが空けた左の階段を駆け上がっていく。疾風速で二階まで一気に到達したクリエーナは、一番近くにいたスケルトンに槍をブチこみ、悪のヤコブを睨みつけた。
「マジックディソナンス」
「なんですとッ!?」
 ストレガは二階でふんぞり返っている悪のヤコブに向けて呪術を放った。高所にいるヤコブは白兵戦では優位だが、直線距離はさほどない。魔法なら狙い放題だ。油断していたのか、悪のヤコブはあっさり呪詛を受け、身に纏うエーテルを衰えさせた。

「閣下をお守りしなければ……」
 二階までかっとんでいったクリエーナを追い、ノックスは走った。下から弓で亡者たちを狙撃することも考えたが、閣下は今独り二階にいる状態だ。スケルトンに包囲されては危険だと考え、ノックスも後を追うことにした。

「み、皆スケルトンとか平気? え? わ、私は平気だよ! こ、怖くなんてないよっ!!」
 明らかに平気ではなさそうな発言をしつつ、兄を追うアステル。そもそも、このお化け屋敷のような館に入る時点で怖かったのだが、ここに悪がいるというのだから仕方ない。中は骸骨祭り状態だったので、一周回って逆に冷静になった。
アステルは「大丈夫。私なら大丈夫。ルティスお兄ちゃんもいるし」とうわ言のように呟きながら、階段を駆け上がった。
「ええい、何をしているのですスケルトンたち! ふがいないっ!」
 あっさりと蹴散らされていくスケルトンたちに苛立ちをぶつける悪のヤコブ。周りが骸骨兵士で埋まっているので彼は現状やることがないのである。必殺技(タイダルストリーム)で骸骨ごと冒険者を攻撃する荒業もあるにはあるのだが(そしてそれが最善手だったりする)、もったいぶっているのか、せっかく作ったスケルトンを使い潰すのは惜しいという貧乏性なのか、それはするつもりはないようだ。少なくとも、今はまだ。

「覚悟しなさいッ! 悪のワタシよ! ええい、邪魔ですよ!」
 善のヤコブは猛スピードで階段を駆け上がり、怪力で骸骨兵士を打ち砕いた。

「この程度の雑魚で僕達を倒せると思うなんて、半分になって知能も下がりましたぁ?」
 ギーゼラは自分と悪ヤコブの間にスケルトンを挟むよう立ち位置を調整しながら、悪のヤコブを挑発した。奴がタイダルストリームの使い手だという話は片割れから聞いている。自らの僕を巻き込む角度で撃たせるのが狙いだ。
「おのれぇ! ワタシを侮辱しますか! 許しませんよぉおおお!」
 あっさり挑発に乗り、ギーゼラを睨みつけるヤコブ。実際、次の一手で悪のヤコブはギーゼラ目掛けてタイダルストリームを放ち、多数の骸骨がヤコブ自身の手で打ち砕かれることとなった。ギーゼラ自身は予め『光縛封』を盾として用意していたので、ダメージを受けなかった。光縛封には亀裂が入ったが、あと一発ぐらいは耐えられそうだ。
「あら随分威力が低いですね? 子供の水遊びに付き合う程、暇ではないのですけど?」
「ぐぬぬぬぬぬぬ!! 楽に死ねるとは思わないことですねえッ!!」
「頭に血が上った馬鹿の相手はやりやすいですねぇ!」

 サイラスは階段を登り、スケルトンと対峙した。仲間(と悪のヤコブ)がけっこうな数の骸骨を処理してくれたので、スムーズに二階に上がることができた。

「タイダルストリーム!」
 リノアは一階から悪のヤコブに向かって水流波を放った。強烈な水流が屋敷の手すりとスケルトンの群れを破壊しながら直進し、悪のヤコブへと直撃する。
 ダメージを与えたことも重要だが、これで悪のヤコブの前の空間が空いた。善と悪のヤコブを戦わせるチャンスだ。英雄譚のクライマックスで流れるような勇壮な曲を竪琴で奏でながら、リノアは叫んだ。
「さあ、善のヤコブ様、ご自身の手で悪を討つのです!」
「感謝しますよ! リノア君!」
 ノリノリの善のヤコブはリノアにパチンとウインクした。

●
「怖いからじゃないよ、邪魔だからどっか行けー! ってだけなんだからねっ!!」
 アステルの衝撃波が、最後のスケルトンを薙ぎ払った。これで雑魚は全滅だ。スケルトンが全滅する頃には悪のヤコブはすでに満身創痍になっていた。対して、冒険者たち及び善のヤコブはほぼ無傷。ギーゼラの挑発に乗り、悪のヤコブが必殺技を全弾無駄撃ちしてしまったゆえである。
「ぐうっ……き、今日のところはこのあたりで勘弁してあげましょうッ!」
 口元の血をぬぐい、悪のヤコブは撤退を図ろうとした。だが、そうは問屋が卸さない。
「おっと、逃がさないよ!」
 逃走を予期していたキオルティスが回り込み、悪のヤコブの退路を遮りつつ、一発お見舞いした。
 そろそろ、十分だろう。
 その瞬間、ジャジャーン! とリノアの竪琴が不協和音を奏でた。「作戦決行」の合図だ。ちょっと善のヤコブが元気過ぎる気もするが、これ以上長引かせては善と悪の体力差が開くだけだろう。
「逃がすものですか! こんな場面で逃げるとはなんという小物なのでしょう!」
 善のヤコブが特大のブーメランを片割れに放ったその時!

 ドゴッ!!

 全身にエーテルを纏ったサイラスが善のヤコブへと突っ込み、派手に吹っ飛ばした。吹き飛ばされた善とヤコブは悪のヤコブと衝突し、二人まとめて転んだ。
「な、なああっ!?」
 狼狽する善と悪のヤコブ。もう芝居は終わりだ。二人まとめてここで葬り去る!
 リノアのアーケインテンペストが二人のヤコブの逃げ道を塞いだ。
 ノックスの矢が善のヤコブの腹に突き刺さった。
 ストレガの氷嵐が善悪のヤコブをまとめて飲み込んだ。
「手が滑ったのだ。すまんのだ」
 バンビの爆炎が二人のヤコブをまとめて焼いた。
「汚物は消毒するに限るわ。 みんなと一緒にヤコブ3分クッキング!」
 畳みかけるように冒険者たちの剣と魔法が唸り、二人のヤコブはフルボッコにされた。
「今度こそ首置いてけゴラァア!!!」
 そして、クリシーナの槍が悪のヤコブの首を刎ね飛ばした。

「ぐう……まさかこのワタシが……こんなところでぇ……!」
 悪のヤコブは心底悔しそうな顔を浮かべたまま、塵になって消滅した。
「な、なぜです……!? キミたちは正義に目覚めたのではなかったのですか……!?」
 朦朧とする意識の中、善のヤコブは冒険者たちへと問う。
「なんで私も撃つのかって? そういう依頼だし。後さ? 悪部分が善側に統合される可能性だってあるじゃん?」
 サイラスは悪びれずに答えた。その答えにようやく善のヤコブは自分が踊らされていたことに気付き、愕然とした。
「そんな、馬鹿なぁあああああああああああああ!」
 バカみたいに大口を開けながら、善のヤコブは光の粒子となって消滅した。
 
●
「で、これ後片付けはどうするのだ? ん、なんだ夢かー」
 机で目を覚ましたストレガは目をこすった。どうやら昨夜は読書中にそのまま眠ってしまったらしい。

「あんまりああいう変態含めて他人と夢で遭遇する程縁がないんだけどなぁ……夢に出てくるかー……ん、どうせなら吸血鬼のデータ取りたかった……!」
 割と夢の内容を覚えていたサイラスは悔しがった。

「おはよう。アステル。昨夜はよく眠れたかい?」
「おはよう。ルティスお兄ちゃん。なんだか、怖い夢を見た気がする。でも、ルティスお兄ちゃんも一緒だったから平気だったような……」

 朝日が昇り、今日も冒険者たちの一日が始まる。

マスターコメント

善と悪のヤコブは見事に討たれ、ギルドの依頼は達成されました。ミッション成功です! ヤコブの性格を逆手にとった作戦が見事炸裂しましたね。  文字数上限の関係で戦闘は中略しておりますが、今後はEXショート中心の依頼のリリースにして細かい描写もできるようにしていく予定です。  またご縁がありましたらよろしくお願いいたします!
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準9 / 6〜10人

2021年01月21日 22時26分43秒 公開

成功

相談掲示板

  1. キオルティス

    まだ出発人数には揃ってないけれど… キオルティスと言うよ。キオでもルティスでもお好きなように。 今回は宜しくね。 で、自称綺麗なヤコブとそうでないヤコブ…それにスケルトン多数、か。 スケルトンは一気に範囲攻撃なんかで数減らししたい所。 で、悪のヤコブ→綺麗なヤコブの順に抹殺と言った手順で基本的には 進めて行く感じになるのかな。 どさくさに紛れて綺麗なヤコブを巻き込んでしまうのも手だけれど。 悪のヤコブの魔法射撃範囲攻撃の範囲が直線上幅1/長さ12hexだから そこだけ注意、かな?

  2. ギーゼラ

    ギーゼラです。よろしくお願いします。 吸血鬼ごときが「綺麗」を名乗るなんて厚かましいですね? ご要望にお応えしてキレイに殺してあげましょう! ダイタルストリームは怖いですねぇ。 一度だけなら光縛封で防げると思います。 ヤコブは馬鹿ですので、挑発すれば スケルトンを巻き込んでダイタルストリームして貰えそうです。 善のヤコブは巻き込んでもいいですし、最後に「残念でした!」とボコボコにしてやるのも興奮しますねぇ!!

  3. バンビ

    ハイスピードキャスターのバンビですわ。 面白すぎる展開なので協力いたしますわね。 片方だけ倒すともう片方に統合されそうなので、両方同時に倒すのが肝ですわ、イスラフェルのように。

  4. クリエーナ・バーリフェルト

    俺様参上、回避シーフのクリエーナだ。 ぶん殴られたのでぶん殴り返すチャンス、これが一時の夢幻だとしても!!

  5. バンビ

    あ、これうちの閣下なんで悪党面だからってヤコブと一緒に始末しないでくださいね。 さあ、閣下の力を見せつけてやりましょうぞ。

  6. ノックス・マグナ

    どうも、シューターのノックスです。 シューターですが不幸な行き違いによってダマスカスの大太刀を買ってしまったので弓は持たないつもりです。 よろしくお願いします。 どんな顔立ちであろうと私は構いませんよ。 殿下の露払いはお任せ下さい。

  7. No.7

    サイラスだ、よろしくなー なんか主人と部下してる人おるけど基本ヤコブとスケルトンだけ殴るから大丈夫だと思うぞ?きっと? 力の大部分は悪にあるっぽいから普通に戦って最後は範囲とかで一気に纏めて叩きたいなぁ。

  8. ギーゼラ

    一緒に始末しないで欲しい?それは「押すなよ!絶対押すなよ!」の流れでしょうか? ならば僕は喜んでやりますけど? ふふっ冗談です。大丈夫です、きっと。 ヤコブは統合されないよう両方同時に倒す件、了解しました。 僕がヒールでちゃぁんと皆さんを癒してあげますから、安心して戦ってください! ダイタルストリーム対策用の光縛封以外はヒール、ヒール、ヒールです。 夢ですので、ちょっとくらい千切れたりしてもいいですよね?抉れたりしてもいいですよね? 皆さんの活躍、とっても期待しています!! あぁ私ったら…興奮して寝付けなかったらどうしましょう!!

  9. ストレガ・L・リベルガストラ

    呪術師なキャスターのストレガなのだ。よろしくなのだ。 対魔とかけるべくはマジックディソナンスなのだ。タイダル他魔法攻撃の弱体を狙うのだ。 悪のほう倒せそうとみたら善のほうにはフリーズボルトしとくのだ。逃がさんのだ。

  10. クリエーナ・バーリフェルト

    悪党面じゃねーだろ!?ふつーにイケメン美人顔じゃん!!二人ともひどぅい!! サイラスはサンキュ、ギーゼラは相変わらずバトル方面こっえーな!! 同時撃破りょーかい、つっても俺に範囲攻撃ねーからそん時はまかせるけど……。 範囲に巻き込むなら距離を近づけないとダメだよな? 善の方がわざわざ前線の方に近寄る理由もねーし、それぞれにみんなで一斉に攻撃って形で考えた方がいいかもしれんな? とりあえず、俺はふつーに前衛するがそれでいいよな?ブンなぐりてーからな!!!

  11. No.11

    出遅れてすみません。 ウォーリアのアステルです。よろしくお願いしますね! えーとじゃあ私はスケルトン狙いで闘気槌でドカーンと行っちゃいますね。

  12. リノア

    遅ればせながら参加。 リノアと言うわ。 よろしくね。 とりあえずは範囲攻撃でスケルトンを減らしにいきましょうか・・・ 統合されないよう両方同時ね、了解です。

  13. ノックス・マグナ

    はい、同時撃破ですね。了解しました。 私も範囲攻撃を持ち込む予定です。 確かに善のヤコブが前線に出てこない可能性もある以上、前衛が悪の、後衛が善のヤコブを殴るという形になりそうですね。

  14. キオルティス

    同時撃破か…難しそうだけど、やるしかないね。了解。 何かサインとか居るかな? 個人的には俺も範囲攻撃、あとは縦横無尽に動けるようにしておくつもりだよ。 対する敵は絶対にコレとは決めずに、その時その場で臨機応変って感じかな。 それでもとりあえず初手はスケルトンの数減らしに尽力するね。 >アステル 初めて一緒に戦闘だね。怪我しないように気を付けて… >リノアさん またご一緒出来るの、光栄だよ。また宜しくね(微笑

  15. リノア

    同時撃破ならできれば近くに居て欲しいのよね… とりあえず私も後衛だし、善のヤコブの傍で構えようかしら。 サインは何か符丁のようなものを決められればいいかもね。 >キオルティス こちらこそよ。頼もしいわ。

  16. クリエーナ・バーリフェルト

    そん時は一気に決める時だし、符丁とか特に決めずに誰かがいい具合見切ったら「馬鹿め!!」でいいんじゃない??

  17. キオルティス

    その『一気に決める時』のサインが欲しいと思ったんだけれど、ね。 良い具合と一口に言ってもどれくらいなのかが相談内容的に曖昧に思えて 俺的にはちょっとタイミングが掴めなかったんだ。 他の皆が良いならそれで良いんならそれで良いよ。わざわざごめんね。

  18. No.18

    同時攻撃するんだからその辺りにドラゴンチャリオットぶち込めるよ?射程ないけど吹っ飛ばしある

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0