飼い主の帰りを待ち続け
ゆうきつかさ
コメント 8
シナリオID:394
オープニング
●エラトゥーン都市同盟
「大変、大変、大変なのよ!」
宝石商の奥様ザマスが興奮した様子で、「踊る子熊亭」に転がり込んできた。
どうやら何かトラブルがあったらしく、テーブルの上に置かれた水を一気に飲み干し、捲し立てるように言葉を吐き出した。
「ワタクシのお友達……まあ、ニャンコちゃんのブリーダーさんだったのだけど、その人がね、心臓発作で亡くなっちゃったのよ! しかも、身内が一人もいなかったから、ウチで葬儀をしたの。まあ、それ自体は問題ないわ。別に迷惑だと思っていないから。でね、その御友達が飼っている猫ちゃん達が、屋敷に残ったままなのよ。だからワタクシが保護しようと思ったんだけど、みんな警戒して触るだけでも襲い掛かってくるほどなのよ。その上、野良猫化した猫ちゃん達が、あちこちで悪さをして、大問題! こうなっちゃうと、悪さをした猫ちゃん達を捕まえ、麻袋に放り込んで、森の中にポイしたり、怪我を負わせたりしちゃっているようなの。おそらく、猫ちゃん達が凶暴化しちゃったのは、飼い主さんの亡骸を運び出した時に、きちんと説明しなかったせいだと思うの。だって、そうでしょ? 猫ちゃん達からすれば、元気の無くなった飼い主さんが、悪い奴等に連れ去られちゃったようなものだから、それで怒っていると思うのよ」
ザマスが猫達の気持ちを考え、ハンカチがビショビショになるほどの涙を浮かべた。
「でもね、このままじゃ駄目なの。屋敷に残った猫ちゃん達が、食べ物を求めて辺りを荒らし回っているせいで、苦情が殺到ッ! 猫ちゃん達を駆除するため、街の人達が団結しつつあるから、そうなる前に保護して欲しいの。おそらく、猫ちゃん達のリーダーを説得すれば、みんな納得してくれるはず。その子が納得しない限り、猫ちゃん達の気持ちは変わらないから……。説得には、このペンダントが役に立つと思うわ。このペンダントは、飼い主さんが常に身につけていたもの。飼い主さんが連れ去られたのではなく、亡くなった事を知れば、考えを改めると思うから」
そう言ってザマスが、猫達の説得と保護を依頼するのであった。
「大変、大変、大変なのよ!」
宝石商の奥様ザマスが興奮した様子で、「踊る子熊亭」に転がり込んできた。
どうやら何かトラブルがあったらしく、テーブルの上に置かれた水を一気に飲み干し、捲し立てるように言葉を吐き出した。
「ワタクシのお友達……まあ、ニャンコちゃんのブリーダーさんだったのだけど、その人がね、心臓発作で亡くなっちゃったのよ! しかも、身内が一人もいなかったから、ウチで葬儀をしたの。まあ、それ自体は問題ないわ。別に迷惑だと思っていないから。でね、その御友達が飼っている猫ちゃん達が、屋敷に残ったままなのよ。だからワタクシが保護しようと思ったんだけど、みんな警戒して触るだけでも襲い掛かってくるほどなのよ。その上、野良猫化した猫ちゃん達が、あちこちで悪さをして、大問題! こうなっちゃうと、悪さをした猫ちゃん達を捕まえ、麻袋に放り込んで、森の中にポイしたり、怪我を負わせたりしちゃっているようなの。おそらく、猫ちゃん達が凶暴化しちゃったのは、飼い主さんの亡骸を運び出した時に、きちんと説明しなかったせいだと思うの。だって、そうでしょ? 猫ちゃん達からすれば、元気の無くなった飼い主さんが、悪い奴等に連れ去られちゃったようなものだから、それで怒っていると思うのよ」
ザマスが猫達の気持ちを考え、ハンカチがビショビショになるほどの涙を浮かべた。
「でもね、このままじゃ駄目なの。屋敷に残った猫ちゃん達が、食べ物を求めて辺りを荒らし回っているせいで、苦情が殺到ッ! 猫ちゃん達を駆除するため、街の人達が団結しつつあるから、そうなる前に保護して欲しいの。おそらく、猫ちゃん達のリーダーを説得すれば、みんな納得してくれるはず。その子が納得しない限り、猫ちゃん達の気持ちは変わらないから……。説得には、このペンダントが役に立つと思うわ。このペンダントは、飼い主さんが常に身につけていたもの。飼い主さんが連れ去られたのではなく、亡くなった事を知れば、考えを改めると思うから」
そう言ってザマスが、猫達の説得と保護を依頼するのであった。
解説
物語の流れとしては、屋敷の入り口、屋敷内、飼い主の部屋になっています。
猫達の飼い主は80代の老婆です。
▼基本情報
野良猫x30
屋敷の庭にたむろしている猫達です。
基本的にはハラペコです。
そのため、食べ物を見ると一斉に襲い掛かってきます。
家猫×15
屋敷の中にいる猫達です。
飼い主の帰りを、ずっと待っています。
そのため、侵入者に対しては、容赦がありません。
怪我をさせる訳にもいかないため、眠らせるか、気絶させましょう。
また街の人達に襲われ、怪我をしている猫もいます。
リーダー猫×1
飼い主の部屋を寝床にしている白猫です。
身振り手振りなどを使って、飼い主が亡くなった事を知らせる必要があります。
説得に必要ならば、飼い主の骨壺等も持っていく事が出来ます。
あまり大人数で部屋に入ってしまうと、リーダー猫が警戒してしまうかも知れません。
マスターより
どうも、ゆうきつかさです。
この依頼は初心者向きの依頼です。
そのため、難しい事を考える必要はありません。
ある程度、ネタに走っても大丈夫なので、キャラクターらしく行動してください。
野良猫対応、家猫対応、リーダー猫対応等の班分けをすると、成功率がアップします。
また台詞などを書いていただけると、リプレイを執筆する際の助けになります。
リプレイ
●エラトゥーン都市同盟
「何だか勿体ないですね。せっかくの御屋敷が、猫達に占拠されて、荒れ放題のようですし……」
シルク・メイプルリーフは仲間達と共に、猫屋敷と化した目的地にやってきた。
その場所は猫達にとってのパラダイスと化しており、シルク達を威嚇するようにして、野良猫達が唸り声を上げていた。
野良猫達にとって、この屋敷は、自分達の城。
どんなに他で酷い目に遭っても、逃げ込む事の出来る場所だった。
故に、自分達以外は、敵ッ!
問答無用で倒すべき相手と言った感じで、険悪な雰囲気が漂っていた。
「主を亡くした猫、か。人で言えば親を亡くした様なものだろうか。それは辛いだろうな。何とかしてやりたいところだが……」
レイ=レーベンス=レックフォードが物思いに耽りながら、野良猫達に視線を落とした。
野良猫達は敵意剥き出しで全身の毛を逆立て、今にも飛び掛かってきそうな勢いであった。
それだけ、今まで近隣住民達とのイザコザが多かったのだろう。
みんな戦い慣れているのか、既にフォーメーションを組んでいた。
「どこも後継者が居ないと、こう言った問題になるんだろなぁ」
サイラスが複雑な気持ちになりつつ、何処か遠くを見つめた。
事前に聞き込みした限りでは、野良猫達の被害は、深刻。
そのため、猫達を捕まえて、処分しようとする動きもあるらしい。
おそらく、ザマスが騒ぎ立てなければ、多くの猫が傷つき、この屋敷から追い出されていただろう。
例え、どんなに猫達の団結力が強かったとしても、覆す事が出来ないほどの現実が、目の前まで迫っていたのだから……。
「……とは言え、80歳の老婆が1人で数十匹も猫を世話できていたか怪しいわネ。まぁ、依頼人からは良い額の報酬で、猫の保護をしてほしいって言われたから、尽力するけれど……」
イーヤ・レプリスが思わず本音を口にしつつ、サクッと気持ちを切り替えた。
その間も、野良猫達はイーヤ達を威嚇するようにして唸り声を響かせ、攻撃を仕掛けるタイミングを窺うようにして、ジリジリと間合いを取っていた。
「死は必ず訪れるもの。そして、その死は安らかでなければならない」
それでも怯む事なく、コハクが野良猫達の前に陣取った。
そこに迷いはなく、恐怖もない。
既に覚悟を決めているため、退くつもりもない。
「……!」
その雰囲気に圧倒されたのか、野良猫達が後ずさった。
だからと言って、道を開けるつもりはないようだが、だんだん恐怖心の方が勝ってきたのか、それが態度に出ているようだった。
「最後の別れをさせてやりたいのだが……。そんな空気ではないようだな」
そんな空気を察したレイが、深い溜息を漏らした。
最悪の場合、猫達と戦う事になるが、出来る事なら傷つけたくないというのが本音であった。
「キィシャアアアアアアアアアアアアアアア!」
その途端、野良猫達が、一斉に毛を逆立てた。
だが、飛び掛かってくる事はない。
やはり、迷いが生じているのだろう。
迂闊に攻撃を仕掛ければ、痛い目に遭うのは、自分達である事を理解しているのか、それ以上の動きはない。
「……食うか?」
次の瞬間、サイラスが幻影で猫の餌を出現させ、その中に本物を混ぜて、念動力で浮かせて、野良猫達の注意を引いた。
「んにゃ!」
これには野良猫達も拍子抜けだったようだが、餌の魅力には勝てないようだった。
「にゃ♪ にゃ♪ にゃにゃにゃ♪」
そのため、頭の中は、餌一色。
本物の餌を見極めるため、みんなで目を細めた。
そして、『これだ!』と思った餌に狙いを定め、ケモノの如く群がった。
「みんな空腹だったのか。やっぱ、動物は食費がかかるからなぁ。捨てられて、ここに集まったのか。だったら、まぁ……こうなるわな」
サイラスが何やら察した様子で、野良猫達に視線を落とした。
その間も、野良猫達は、餌に夢中!
あっと言う間に平らげ、『もっとください。お願いします……!』とばかりに瞳をキラキラさせていた。
「だったら、ここで御預けという訳にもいかないか」
サイラスが近寄ってきた野良猫の頭を撫で、ホッとした様子で餌を配っていった。
野良猫達は、その餌に群がり、幸せそうに喉を鳴らした。
後は野良猫達の保護先を見つけるだけ。
それは簡単そうであり、難しい事でもあった。
●猫屋敷に棲む猫達
屋敷の中は、飼い主がいなくなった事で、すっかり荒れ果てていた。
だが、それも仕方のない事。
家猫達がどんなに頑張っても、清潔な状態のまま維持する事は難しい。
例え、汚れている事が分かっていても、掃除する術がないのだから、仕方のない事だった。
それでも、家猫達にとっては、楽園。
誰にも邪魔されず、自由に過ごす事の出来る聖域であった。
しかし、今は違う。
野良猫達がサイラスに手懐けられた事によって、家猫達を守っていた強固な壁が取り除かれ、平穏が脅かされていた。
それでも、家猫達にもプライドがある。
飼い主の部屋を守るため、全身の毛を逆立て、苛立ちを隠せない様子で、行く手を阻んでいた。
「……私達は敵じゃないわ。あなた達の味方よ」
すぐさま、イーヤがヒーリングオーラを発動させ、光輝くエーテルの波動で家猫達に活力を与えた。
「……!」
その途端、家猫達が驚いた様子で、イーヤの事を二度見。
一瞬、何が起こったのか分からなかったようだが、傷ついた身体が癒えた事には気づいているようだった。
だが、どうしてそうなったのか、まったく分かっていないらしく、みんな落ち着きが無くなっていた。
「敵意が無い事は、理解したか?」
コハクが家猫達の反応を見るようにして、少しずつ距離を縮めていった。
その途端、家猫達が警戒した様子で、全身の毛を逆立て、唸り声を響かせた。
「……私達は味方です」
そんな空気を察したシルクが、念写を用いて家猫達の飼い主である老婆の姿を映し出した。
その姿はシルエットに近い感じであったものの、先程まで敵意を剥き出しにいていた家猫達が、まるで指示を待つようにして一斉に姿勢を整えた。
それと同時に、老婆の幻が笑顔に変わり、壁の中に吸い込まれるようにして、姿を消した。
「私達は、あなた達の主に頼まれてきたの。残念だけど、あなた達の主は、もう戻ってこない。病気で命を落としてしまったから……。本当は、あなた達も理解しているはずよ。いくら待ったところで、主が帰ってくる事がない事を……。だから、今だけでいい。私達を信じて……」
イーヤが敵意のない事を強調しつつ、猫用のおやつを足元に置いた。
「……」
最初は警戒していた家猫達も、おやつの誘惑には勝てず、答える代わりにグーッと腹を鳴らした。
この様子では、しばらくマトモなモノを食べていなかったのだろう。
あちこちでグーグーの大合唱。
家猫達の視線が、おやつに釘付け。
気持ちだけは、おやつめがけて、まっしぐらと言った感じであった。
「まあ、信用できない気持ちもわかる。それだけ酷い目に遭ってきたのだから。しかし、このままでは死を待つだけだ。それでは、ブリーダーも報われない」
コハクが動物交感を用いて、近くの家猫に触れ、自らの考えを伝えた。
「……」
家猫達は戸惑い半分、空腹半分と言った感じで、目の前のおやつをガン見。
それが罠だと思っているのか、警戒した様子で猫パンチを繰り出し、少しずつ自分の傍に寄せていた。
(……少しだけ手伝っておきましょうか)
その事に気づいたシルクが、猫パンチに合わせて念動力を使い、おやつをヒョイッと動かした。
「……!」
その途端、家猫がギョッとした様子で、ピョンと飛び上がり、着地と同時に混乱したまま、おやつをパクッと口にした。
「んにゃあ~♪」
次の瞬間、この世の幸せを独り占めと言わんばかりの勢いで、身体を小刻みに震わせ、家猫が幸せそうに喉を鳴らした。
「……!」
その鳴き声が引き金となって、家猫達がおやつに群がった。
こうなると、途中でブレーキをかけられない。
本能の赴くまま、欲望に従って、おやつを喰らって、喰らいまくった。
「説得できたかどうか、怪しいところだけど、とりあえず私達が敵じゃない事は分かってくれたようね。それなら、これはお近づきの印って事で……」
イーヤがホッとした様子で、足元におやつを並べていった。
家猫達は警戒心よりも、食欲を満たす事を優先したらしく、イーヤ達の事をまったく気にしなくなった。
「もう何も恐れる事はない。この場所より安心して暮らせる場所に行こう」
コハクが動物交感で語り掛けながら、家猫の頭を優しく撫でた。
●飼い主の部屋で
「最後の別れをさせてやりたいと思う。良いだろうか?」
そんな中、レイは飼い主の部屋で、白猫と対峙していた。
「……」
白猫は何も答えない。
ただジーッとレイを見つめ、鳴き声ひとつ上げなかった。
それでも、他の家猫と比べて眼力があるためか、まるで身体を押さえつけられているような錯覚を覚えた。
「まあ、落ち着け。ここには戦うために来たわけではない。見ての通り、武器は持っていない」
レイが両手で飼い主の遺骨を抱えたまま、決して目を逸らす事なく白猫に語り掛けた。
「……」
それでも、白猫は何も答えない。
「……では、話をしよう。信じたくはないと思うけれど、君達の主人は亡くなったんだ」
レイが臆する事無く、真っ直ぐ白猫の目を見た。
おそらく、白猫に言葉は通じていない。
しかし、その気持ちは確実に伝わっているようだった。
「……」
白猫が黙って、骨壺に視線を送った。
どこか悲しげであり、何かを悟ったような表情を浮かべたまま。
「……分かってくれたか」
レイが骨壺をテーブルの上に置き、遺品であるペンダントを、白猫の前に置いた。
その骨壺を白猫がジーッと見つめ、悲しそうにニャーと鳴いた。
そして、屋敷を占拠していた猫達は、依頼主であるザマスに保護される事となった。
「何だか勿体ないですね。せっかくの御屋敷が、猫達に占拠されて、荒れ放題のようですし……」
シルク・メイプルリーフは仲間達と共に、猫屋敷と化した目的地にやってきた。
その場所は猫達にとってのパラダイスと化しており、シルク達を威嚇するようにして、野良猫達が唸り声を上げていた。
野良猫達にとって、この屋敷は、自分達の城。
どんなに他で酷い目に遭っても、逃げ込む事の出来る場所だった。
故に、自分達以外は、敵ッ!
問答無用で倒すべき相手と言った感じで、険悪な雰囲気が漂っていた。
「主を亡くした猫、か。人で言えば親を亡くした様なものだろうか。それは辛いだろうな。何とかしてやりたいところだが……」
レイ=レーベンス=レックフォードが物思いに耽りながら、野良猫達に視線を落とした。
野良猫達は敵意剥き出しで全身の毛を逆立て、今にも飛び掛かってきそうな勢いであった。
それだけ、今まで近隣住民達とのイザコザが多かったのだろう。
みんな戦い慣れているのか、既にフォーメーションを組んでいた。
「どこも後継者が居ないと、こう言った問題になるんだろなぁ」
サイラスが複雑な気持ちになりつつ、何処か遠くを見つめた。
事前に聞き込みした限りでは、野良猫達の被害は、深刻。
そのため、猫達を捕まえて、処分しようとする動きもあるらしい。
おそらく、ザマスが騒ぎ立てなければ、多くの猫が傷つき、この屋敷から追い出されていただろう。
例え、どんなに猫達の団結力が強かったとしても、覆す事が出来ないほどの現実が、目の前まで迫っていたのだから……。
「……とは言え、80歳の老婆が1人で数十匹も猫を世話できていたか怪しいわネ。まぁ、依頼人からは良い額の報酬で、猫の保護をしてほしいって言われたから、尽力するけれど……」
イーヤ・レプリスが思わず本音を口にしつつ、サクッと気持ちを切り替えた。
その間も、野良猫達はイーヤ達を威嚇するようにして唸り声を響かせ、攻撃を仕掛けるタイミングを窺うようにして、ジリジリと間合いを取っていた。
「死は必ず訪れるもの。そして、その死は安らかでなければならない」
それでも怯む事なく、コハクが野良猫達の前に陣取った。
そこに迷いはなく、恐怖もない。
既に覚悟を決めているため、退くつもりもない。
「……!」
その雰囲気に圧倒されたのか、野良猫達が後ずさった。
だからと言って、道を開けるつもりはないようだが、だんだん恐怖心の方が勝ってきたのか、それが態度に出ているようだった。
「最後の別れをさせてやりたいのだが……。そんな空気ではないようだな」
そんな空気を察したレイが、深い溜息を漏らした。
最悪の場合、猫達と戦う事になるが、出来る事なら傷つけたくないというのが本音であった。
「キィシャアアアアアアアアアアアアアアア!」
その途端、野良猫達が、一斉に毛を逆立てた。
だが、飛び掛かってくる事はない。
やはり、迷いが生じているのだろう。
迂闊に攻撃を仕掛ければ、痛い目に遭うのは、自分達である事を理解しているのか、それ以上の動きはない。
「……食うか?」
次の瞬間、サイラスが幻影で猫の餌を出現させ、その中に本物を混ぜて、念動力で浮かせて、野良猫達の注意を引いた。
「んにゃ!」
これには野良猫達も拍子抜けだったようだが、餌の魅力には勝てないようだった。
「にゃ♪ にゃ♪ にゃにゃにゃ♪」
そのため、頭の中は、餌一色。
本物の餌を見極めるため、みんなで目を細めた。
そして、『これだ!』と思った餌に狙いを定め、ケモノの如く群がった。
「みんな空腹だったのか。やっぱ、動物は食費がかかるからなぁ。捨てられて、ここに集まったのか。だったら、まぁ……こうなるわな」
サイラスが何やら察した様子で、野良猫達に視線を落とした。
その間も、野良猫達は、餌に夢中!
あっと言う間に平らげ、『もっとください。お願いします……!』とばかりに瞳をキラキラさせていた。
「だったら、ここで御預けという訳にもいかないか」
サイラスが近寄ってきた野良猫の頭を撫で、ホッとした様子で餌を配っていった。
野良猫達は、その餌に群がり、幸せそうに喉を鳴らした。
後は野良猫達の保護先を見つけるだけ。
それは簡単そうであり、難しい事でもあった。
●猫屋敷に棲む猫達
屋敷の中は、飼い主がいなくなった事で、すっかり荒れ果てていた。
だが、それも仕方のない事。
家猫達がどんなに頑張っても、清潔な状態のまま維持する事は難しい。
例え、汚れている事が分かっていても、掃除する術がないのだから、仕方のない事だった。
それでも、家猫達にとっては、楽園。
誰にも邪魔されず、自由に過ごす事の出来る聖域であった。
しかし、今は違う。
野良猫達がサイラスに手懐けられた事によって、家猫達を守っていた強固な壁が取り除かれ、平穏が脅かされていた。
それでも、家猫達にもプライドがある。
飼い主の部屋を守るため、全身の毛を逆立て、苛立ちを隠せない様子で、行く手を阻んでいた。
「……私達は敵じゃないわ。あなた達の味方よ」
すぐさま、イーヤがヒーリングオーラを発動させ、光輝くエーテルの波動で家猫達に活力を与えた。
「……!」
その途端、家猫達が驚いた様子で、イーヤの事を二度見。
一瞬、何が起こったのか分からなかったようだが、傷ついた身体が癒えた事には気づいているようだった。
だが、どうしてそうなったのか、まったく分かっていないらしく、みんな落ち着きが無くなっていた。
「敵意が無い事は、理解したか?」
コハクが家猫達の反応を見るようにして、少しずつ距離を縮めていった。
その途端、家猫達が警戒した様子で、全身の毛を逆立て、唸り声を響かせた。
「……私達は味方です」
そんな空気を察したシルクが、念写を用いて家猫達の飼い主である老婆の姿を映し出した。
その姿はシルエットに近い感じであったものの、先程まで敵意を剥き出しにいていた家猫達が、まるで指示を待つようにして一斉に姿勢を整えた。
それと同時に、老婆の幻が笑顔に変わり、壁の中に吸い込まれるようにして、姿を消した。
「私達は、あなた達の主に頼まれてきたの。残念だけど、あなた達の主は、もう戻ってこない。病気で命を落としてしまったから……。本当は、あなた達も理解しているはずよ。いくら待ったところで、主が帰ってくる事がない事を……。だから、今だけでいい。私達を信じて……」
イーヤが敵意のない事を強調しつつ、猫用のおやつを足元に置いた。
「……」
最初は警戒していた家猫達も、おやつの誘惑には勝てず、答える代わりにグーッと腹を鳴らした。
この様子では、しばらくマトモなモノを食べていなかったのだろう。
あちこちでグーグーの大合唱。
家猫達の視線が、おやつに釘付け。
気持ちだけは、おやつめがけて、まっしぐらと言った感じであった。
「まあ、信用できない気持ちもわかる。それだけ酷い目に遭ってきたのだから。しかし、このままでは死を待つだけだ。それでは、ブリーダーも報われない」
コハクが動物交感を用いて、近くの家猫に触れ、自らの考えを伝えた。
「……」
家猫達は戸惑い半分、空腹半分と言った感じで、目の前のおやつをガン見。
それが罠だと思っているのか、警戒した様子で猫パンチを繰り出し、少しずつ自分の傍に寄せていた。
(……少しだけ手伝っておきましょうか)
その事に気づいたシルクが、猫パンチに合わせて念動力を使い、おやつをヒョイッと動かした。
「……!」
その途端、家猫がギョッとした様子で、ピョンと飛び上がり、着地と同時に混乱したまま、おやつをパクッと口にした。
「んにゃあ~♪」
次の瞬間、この世の幸せを独り占めと言わんばかりの勢いで、身体を小刻みに震わせ、家猫が幸せそうに喉を鳴らした。
「……!」
その鳴き声が引き金となって、家猫達がおやつに群がった。
こうなると、途中でブレーキをかけられない。
本能の赴くまま、欲望に従って、おやつを喰らって、喰らいまくった。
「説得できたかどうか、怪しいところだけど、とりあえず私達が敵じゃない事は分かってくれたようね。それなら、これはお近づきの印って事で……」
イーヤがホッとした様子で、足元におやつを並べていった。
家猫達は警戒心よりも、食欲を満たす事を優先したらしく、イーヤ達の事をまったく気にしなくなった。
「もう何も恐れる事はない。この場所より安心して暮らせる場所に行こう」
コハクが動物交感で語り掛けながら、家猫の頭を優しく撫でた。
●飼い主の部屋で
「最後の別れをさせてやりたいと思う。良いだろうか?」
そんな中、レイは飼い主の部屋で、白猫と対峙していた。
「……」
白猫は何も答えない。
ただジーッとレイを見つめ、鳴き声ひとつ上げなかった。
それでも、他の家猫と比べて眼力があるためか、まるで身体を押さえつけられているような錯覚を覚えた。
「まあ、落ち着け。ここには戦うために来たわけではない。見ての通り、武器は持っていない」
レイが両手で飼い主の遺骨を抱えたまま、決して目を逸らす事なく白猫に語り掛けた。
「……」
それでも、白猫は何も答えない。
「……では、話をしよう。信じたくはないと思うけれど、君達の主人は亡くなったんだ」
レイが臆する事無く、真っ直ぐ白猫の目を見た。
おそらく、白猫に言葉は通じていない。
しかし、その気持ちは確実に伝わっているようだった。
「……」
白猫が黙って、骨壺に視線を送った。
どこか悲しげであり、何かを悟ったような表情を浮かべたまま。
「……分かってくれたか」
レイが骨壺をテーブルの上に置き、遺品であるペンダントを、白猫の前に置いた。
その骨壺を白猫がジーッと見つめ、悲しそうにニャーと鳴いた。
そして、屋敷を占拠していた猫達は、依頼主であるザマスに保護される事となった。
マスターコメント
基本的には、プレイングが分かりやすく、描写がしやすく、行動が的確だったものから、印象に残ったキャラクター等を基準にしてMVPを選んでいます。
ショートシナリオ普通 報酬:多い5 / 4〜10人
2020年12月27日 18時45分12秒 公開
大成功
参加者
- メイプルリーフ シルク
- サイラス
イーヤ・レプリス
レイ=レーベンス=レックフォード
コハク
相談掲示板
レイ=レーベンス=レックフォードだ。 よろしく頼む。
骨壺や遺品を借りてリーダー猫に会いに行こうかと考えているよ。
シーフコハク、よろしく。 一応動物交感をもってるからある程度の意思疎通は出来ると思う。 必要な情報集めて、伝える感じにあるから通訳係になるかな
No.4
サイラスだ、よろしくなー 動物交感もテレパスもないし ヒュプノシスとかもないから野良猫の相手しようかね
ヒーラーのイーヤよ、よろしく。 細かい行動はまだ考えてないけど、とりあえず消耗した人を回復させるつもりよ。
No.6
シスターシルクです 今回はちょっと真面目に行きましょうか ねこさん達に納得してもらえるよう尽力しましょう
フルメンバーじゃないけど出発前日だから、最低限の確認だけでもしましょう。 ・今出てる行動希望。 レックフォード …… 骨壺や遺品を借りてリーダー猫に会いに行く。 コハク …… 動物交感で通訳。 サイラス …… 野良猫の相手。 イーヤ …… 怪我(引っかかれた人や怪我した猫等)の回復。 って感じね。 班分けすると成功率が上がるみたいだし、ちょうどサイラスさんが野良猫、レックフォードさんがリーダー猫で分かれてるから私は家猫の相手をしようかと考えているわ。 ヒールと医療・薬学スキルで怪我した猫を手当てして、警戒心の緩和と引き付けね。
っと、それでも猫に襲われた場合は一応武器を振り回すぐらいはするつもりよ。