【初夢】夢見るネコの夢
鳩子
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シナリオID:383
オープニング
吾輩はネコである。
名前はまだ無いーーこともない。
かつては毛がもりもりした森に棲むネコということで、モリモリモリネコと呼ばれていた。
今は短く、単にモリネコと呼ばれている。
我らはヒトとともに暮らし、生きてきた。ヒトはネコの寝床とエサを用意し、ヒトは年に二度生え変わるネコの毛を敷物や服にする。防汚性、撥水性、ともに優れた毛はヒトどもに大変重宝されているのだ。えっへん。
モリネコ界隈の現在の話題は、もっぱら新年の開運モリネコレースである。
レースの勝者は一年間、大きな怪我をせず、好きなだけうまい飯を食い、好きなだけだらだら眠ることができると言われている。
コースには山あり谷あり、ときには川あり――我らモリネコは水があまり好きではない。ゴール前にある川は最大の難所だ。
そして、ネコは気まぐれでもある。
よって、レースを完遂すること自体、なかなか難しい。目の前を跳ねたネズミに気を取られ、いつの間にかコースアウトなどということも珍しくはない。
吾輩は悩んだ。
今年こそ、優勝したい。
昨年は川を渡ろうと水流に挑むうちに、魚を追うのに夢中になっていた。魚のヤツがやけにしぶとかったので、びしょぬれにはなるし、ゴールはできないしで、散々であった。
賢い吾輩は、ここでもヒトと手を組むことにした。
オモチャだのエサだのマッサージだの、日々工夫を凝らしてネコに奉仕するヒトどもであれば、きっと気まぐれで水の嫌いなネコをゴールまで連れていくことができるに違いない。
協力してくれるのであれば、ヒトを我が背に乗せることもやぶさかではない。
優勝した暁には、きっとヒトにもいいことがあるであろう。たぶん。
ヒトよ、吾輩をゴールまで導くがよい。
吾輩はモリネコである。
新年のモリネコレースで優勝することを夢見る、一匹のネコだ。
「えー、お集まりの皆さまぁ、明けましておめでとうごぜぇます! それではこれより、モリネコレースを開催いたします。司会は、ワタクシ、ドワーフのエッシ・リッポネンが務めさせていただきます。ゴールした方にゃ、ささやかながらビールとプレッツェルを用意してごぜぇます。アタシもはやくビールが飲みてぇ……っと、いけねぇ、ゴホンッ! では、みなさまぁ、位置につきましてぇ……よーい」
どん!
一年の運気を決定づけるモリネコレースの火蓋が、今、切って落とされた。
※このシナリオは「夢オチシナリオ」です。シナリオ内容は架空のものであり、アニエピカの世界観に一切影響を与えません。報酬は冒険者ギルドからのお年玉です。
名前はまだ無いーーこともない。
かつては毛がもりもりした森に棲むネコということで、モリモリモリネコと呼ばれていた。
今は短く、単にモリネコと呼ばれている。
我らはヒトとともに暮らし、生きてきた。ヒトはネコの寝床とエサを用意し、ヒトは年に二度生え変わるネコの毛を敷物や服にする。防汚性、撥水性、ともに優れた毛はヒトどもに大変重宝されているのだ。えっへん。
モリネコ界隈の現在の話題は、もっぱら新年の開運モリネコレースである。
レースの勝者は一年間、大きな怪我をせず、好きなだけうまい飯を食い、好きなだけだらだら眠ることができると言われている。
コースには山あり谷あり、ときには川あり――我らモリネコは水があまり好きではない。ゴール前にある川は最大の難所だ。
そして、ネコは気まぐれでもある。
よって、レースを完遂すること自体、なかなか難しい。目の前を跳ねたネズミに気を取られ、いつの間にかコースアウトなどということも珍しくはない。
吾輩は悩んだ。
今年こそ、優勝したい。
昨年は川を渡ろうと水流に挑むうちに、魚を追うのに夢中になっていた。魚のヤツがやけにしぶとかったので、びしょぬれにはなるし、ゴールはできないしで、散々であった。
賢い吾輩は、ここでもヒトと手を組むことにした。
オモチャだのエサだのマッサージだの、日々工夫を凝らしてネコに奉仕するヒトどもであれば、きっと気まぐれで水の嫌いなネコをゴールまで連れていくことができるに違いない。
協力してくれるのであれば、ヒトを我が背に乗せることもやぶさかではない。
優勝した暁には、きっとヒトにもいいことがあるであろう。たぶん。
ヒトよ、吾輩をゴールまで導くがよい。
吾輩はモリネコである。
新年のモリネコレースで優勝することを夢見る、一匹のネコだ。
「えー、お集まりの皆さまぁ、明けましておめでとうごぜぇます! それではこれより、モリネコレースを開催いたします。司会は、ワタクシ、ドワーフのエッシ・リッポネンが務めさせていただきます。ゴールした方にゃ、ささやかながらビールとプレッツェルを用意してごぜぇます。アタシもはやくビールが飲みてぇ……っと、いけねぇ、ゴホンッ! では、みなさまぁ、位置につきましてぇ……よーい」
どん!
一年の運気を決定づけるモリネコレースの火蓋が、今、切って落とされた。
※このシナリオは「夢オチシナリオ」です。シナリオ内容は架空のものであり、アニエピカの世界観に一切影響を与えません。報酬は冒険者ギルドからのお年玉です。
解説
大きいネコの背中にのっかりたいなぁという夢の話です。
【場所】
夢です。
スタート直後に上り坂、次に下り坂、最後に幅4m程度の浅い川があり、渡り切った後は平らな道を直線でつっきればゴールです。
コースの周囲には森や草原が広がり、ネコの気を惹くような虫やネズミが出ます。
【ルール】
あの手この手を駆使して、気まぐれで水が嫌いなネコを川向こうのゴールまで連れて行ってあげて下さい。
基本的にはネコの背に乗って移動しますが、時には降りることも必要かもしれません。走りに自信がある方は並走してもOKです。
エサやトラップによる他のレース参加者の妨害もOKですが、直接ネコやPCに攻撃を仕掛けるなどの明らかな加害行為はNGです。
ゴールした人にはエッシおすすめのビール又はエルダーフラワーのシロップジュース、プレッツェル、モリネコを好きなだけもふもふできるボーナスタイムがプレゼントされます。
【モリネコ】
実際のアニエピカ世界では、体長60~150cmくらいのずんぐりむっくりした大型のネコ。大体、ヒツジくらいのサイズ感。毛色は白、黒、茶、三毛など、色々。
今回のシナリオは夢なので、さらに大きい個体もいます。巨体のゴブリンやリザードマンをのせてもびくともしないモリネコがいると思ってOK。
人語は喋りませんが、夢なので、動物交感のスキルを使わずともなんとなく意思疎通を図ることができます。スキルがあればさらに綿密なコミュニケーションが取れます。
気性は基本穏やかで、人懐っこい個体もいますが、なにしろ通常の猫に比べて大きいので気を付けないと押し倒されたり、驚かせた拍子に爪で引っかかれる可能性もあります。
毛はもりもりのふわふわ。とても気持ちがいい。
【使用可能な道具・スキル等】
夢なので、なんでもありです。
実際に所有・装備していなくても、必要な道具や材料をプレイング内で使用することができます。
夢なので実際に習得していないスキルなども使えますが、実際に習得しているスキルの方がうまく作用します。
【NPC】
■エッシ・リッポネン
三十路の女ドワーフ。身長145cm。
明るく善良だが、要領が悪い。大酒飲み。毛を紡ぐこと、毛糸を扱うことに関してのみ才能を発揮する。
モリネコ牧場の牧場主――だが、今回はあくまでも夢の住人。
リプレイに出すかはプレイングを見て考えます。
マスターより
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
話の筋としてはレースですが、勝敗は二の次でただもふもふしたいっ! という方はレースそっちのけで欲望のままもふもふしていただいても構いません。もともとモリネコレースはリタイアの多いレースなのです。
ベータ版も含めるとモリネコの話はこれで三回目(エッシの登場は二回目)ですが、前話を知らなくても全く問題ありません。文字数を食うので、プレイングでは猫でOKです。
冒険者たちに夢の自覚はなく、「ここがどこだかわからないが、モリネコと組んでレースに参加することになった」「なんか知らんが色々自由に道具もスキルも使える」という状況をなんとなく理解している状態です。
夢なので、実際のステータスや装備よりプレイング内容重視です。
夢から覚めた後の描写をする予定はありません。
キャラクター把握のため、台詞や心情を積極的に入れて頂けると助かります。
心の平穏のために作業期間を長く設定していますが、出来上がり次第納品予定です。
よろしくお願いします!
リプレイ
●開運モリネコレース、開催!
ロスガリア大陸の、どこでもあってどこでもない場所。
冬晴れの空の下、草原に六組の選手が集っていた。
「ネコさんをもふもふ……じゃなくて、ゴールへ連れて行けばいいのですね!」
灰色の縞模様があって腹部が白い、いわゆるサバ白のモリネコとコンビを組むのは、エルフのエルナ・クルプファルツ。長い金の髪を一つに結び、意欲を見せる。
鼻を寄せてくるネコに、エルナは抵抗せず――目の前のふわふわに触りたくなるのもぐっと我慢して、様子を伺った。
やがて満足したネコがゆっくりとまばたきするのに、エルナも微笑んで応じる。
「よーし! 頑張りますよ! 元気元気で楽しくレースしましょう!」
ニャァ! とサバ白もまた溌溂と声を上げた。
その隣には、早くもモリネコの虜になっている選手がいた。癖のある銀髪を肩上で切り揃えたエルフ、キャル・イルセインは、白いネコに抱きつき、首周りをわしゃわしゃと撫でまわす。
キャルの相棒は特に長毛でふわふわだ。
「もふもふねこさん、かわいいね!」
気持ち良さに誘われるがまま撫でていると、なう、と低い声があがった。
「さ、さわっちゃだめ? ふわふわ……」
おどおどとしつつも、もふもふ欲求を抑えきれないキャルに、長毛ネコは仕方がないなという目つきでぺたんと寝そべる。
「ありがとう、本当に素敵なふわふわ……あ、そうだ」
ネコのおもちゃがほしいと思った瞬間には、手に猫じゃらしが握られている。現実ではありえない現象を不思議に思う者はいない。
「ほら、もふもふねこさん、遊びましょ」
ちょろちょろと動かしてあやそうとするが、通常の猫の何倍もの大きさと威力を持つネコパンチが即座に撃ち落とした。
「あう……かしこい」
爪がかすめた手の甲を抑え、キャルはしょげかえった。
「今日はよろしく。お互いの目的のため、頑張ろう」
喜怒哀楽の読みにくい顔で全身灰色のモリネコに挨拶をしたのは、ハーフリングのニール・ロブラリアである。
シューターたるもの暴れ馬だろうが気まぐれネコだろうが乗りこなして見せよう――と意気込んでみたものの、相棒はどちらかといえばのんびり屋のようだ。ふんふんとニールの匂いを嗅ぎ、長い紫の髪に隠れたフードやポケットのふくらみに興味を示す。
「……そこまで。中身はあとでのお楽しみ、だよ」
ネコの額に手をあてて押しとどめる。灰ネコはプイと顔をそらした。
「ゴール出来たら、マッサージしてあげるよ」
ネコのためのマッサージ、もといヒトのためのもふもふタイムでもあるが、灰ネコはちょっぴりやる気になったようだ。
「スノードロップです! 今日はよろしくお願いしますっ」
ヒューマンの少年、スノードロップは精いっぱい礼儀正しく挨拶をした。ヒトの目には微笑ましく映る光景だったが、当のモリネコ――黒に赤茶が入り混じる錆ネコは、マイペースに毛づくろいをするばかりだ。
「あの、ネコさん……レース、がんばりましょうね!」
じろりと一瞥される。スノードロップは不安でいっぱいになった。
まもなく、司会を務めるエッシ・リッポネンの口上が始まった。並走して実況を行うため、茶色のネコがそばに控えている。
全てのコンビがスタートラインに立ち、じりじりと緊張感が高まっていく。
「では、みなさまぁ、位置につきましてぇ……よーい――どん!」
上り坂へまず躍り出たのは、白い髪をなびかせるエルフの娘、ネーヴェ・グラヌローザだ。相棒は、燕尾服めいた柄のハチワレネコ。
「全力を尽くして参ります」
ネーヴェの手には、針の代わりにエサを結びつけた釣り竿があった。目の前を揺れるエサに誘われ、ハチワレは駆けるのだった。
「私を信じて手綱を預けてくだされば、ゴールにはあなたのお好きなものをご用意いたします」
騎乗の心得があるネーヴェは、安定した走りを見せながら相棒に語り掛ける。
にゃうにゃう! ――ハチワレのやる気はうなぎのぼりであった。
颯爽と後を追うのは小熊のような体躯の黒ネコ。乗り手は銀髪のエルフ、イネス・エレディア。成長が早くに止まった彼女は、齢三桁ながら十歳前後の少女に見える。
しかし、その表情はあくまで理知的だ。
「冒険者というのは変わっているのね。猫からの依頼も引き受けるなんて……」
呟き、手にした魔弓へおもむろに矢をつがえる。
カッカッ――立て続けに射こまれた矢が、茂みに潜む小動物を牽制する。
「えぇ、私も今は冒険者。受けた依頼は全うさせてもらうわ」
冷静に勝利を目指す物言いに、クロネコも迷いのない走りで応じた。
もふもふの背中でうつらうつらしていたエルナは、はっと顔を上げた。いけない、いけない。どんなに心地よくともレースはもう始まったのだ。
「さあ、ネコさんゴーです!」
号令を出して加速を促し、さらにエーテルリンクした栗鼠を先行させる。コース内の虫やネズミを栗鼠に追い出してもらう作戦だ。しっぽをふりふり、先を走る栗鼠の姿をサバ白が嬉々として追いかける。もちろん、安全な距離を維持するよう指示はしているが――サバ白は栗鼠めがけて跳躍した。
「わーっ! ダッシュ、ダッシュです!」
しがみつきながら、エルナは栗鼠にむかって叫んだ。
「慌てない、慌てない……」
ジグザグ走行を始めたサバ白を見ながら、ニールは灰ネコの頭を撫でる。
背中の乗り心地は大変良好。速度を出しても振り落とされない自信はあるが、まずはネコと呼吸を合わせながら堅実に進むのが優先だ。まだレースは始まったばかり、体力も温存しなければいけない。
エルナの栗鼠によって追い立てられた虫が、左右に飛び出してくる。ぴくっと耳を動かした灰ネコに、ニールはすかさず声をかける。
「もうゴール諦めちゃうの?」
淡々とした口調だったが、その言葉が灰ネコの闘志に火をつけた。
モリネコはみな等しく夢を見る。華々しくゴールする夢を。
灰ネコは、猛然と走り出した。
「おっとぉ、ニール選手の猛烈な追い上げ! 先頭を行くネーヴェ選手、イネス選手は一足早く下り坂へ……すぐあとにエルナ選手が続きます!」
疾走する茶ネコの背で、エッシが実況する。ちなみにこのネコはレース殿堂入りの猛者である。
「ここで一旦、後方の選手を見に行くとします……あー、実況って一人でやるもんじゃねぇですね」
ぎゅんっと激しいUターンを決めた茶ネコに青ざめながら、エッシはぼやいた。
鋭い観察眼で不自然な草の動きを察知するたびに矢を打ち込みながら、イネスは順調な進行に満足していた。
「これで、よっぽど間の抜けた動物以外はでてこないでしょう」
下り坂もこの調子でいけば問題ないだろう。
そう確信を持った矢先、直進していた黒ネコが急旋回する。
「ちょっ……?!」
いったい何が、と目を瞠ったイネスの視界に、必死に走る栗鼠の姿が映った。
「わ、わ、ごめんなさーい!! リスさん食べないでくださーい!」
エルナの栗鼠に、黒ネコが飛びかかってしまったのだ。
「きゃあっ」
「ぶ、ぶつかりますっ!」
レースをすっかり忘れた黒ネコの動きに、小柄なイネスは振り落とされる。直後、道をふさいだ黒ネコに、サバ白がつっこんだ。
「栗鼠の使いどころは要注意、と……」
ぐるぐると目を回す二人と二匹の横を、灰ネコにまたがったニールが通り過ぎる。ニールが前方に向かって投げる干し肉やチーズを追いかけて、灰ネコは脇目も振らずに直進した。
「振り向いてはいけません」
先頭を走るネーヴェは、後方の騒動に気をやりかけたハチワレに話しかける。念押しに棍を斜め前方に向けて差し出し、先端から光の矢を放った。
「目指すはあちらでございます」
狙い通り、ハチワレは光を追いかけ始める。下り坂で勢いのついた走りに、ネーヴェはネコの柔らかな背へ捕まりなおした。
走りに自信のないネーヴェは、陸地においてはこのままネコの背に乗って行くつもりだ。決して、もふもふを堪能したいだけというわけではない。決して。それはそれとして、もふもふとはなんと甘美な響き、素敵な肌触りであることか――ネーヴェは早くもゴール後のボーナスタイムへ思いを馳せた。
「はい、こちら上り坂です。よくわからねぇことになっております」
目の前の光景をどう受け止めたものか、エッシは首をひねった。
モリネコレースはネコのレースであるから、走るのはネコである。そのはずなのだが。
「ねこさん、じっとしててね」
何故か、キャルは長毛ネコを背負ってえっちらおっちらと坂を登っていた。
「あ! だめ。あばれないで……」
ネコが虫に気を取られた拍子に、バランスを崩してぺしゃりと潰れる。
「あ、あ~……」
何故こうなったのか。
時は暫しさかのぼる――。
「うう……」
レース開始直後、まったく走り出す様子のない長毛ネコと涙目になりそうなキャルは睨み合いを続けていた。
目をすがめる長毛ネコに、キャルは目を見開いた。
「あ、年上なのね! ごめんね……」
どうやら、モリネコは自分より年下のキャルに思うところあって動かなかったようだ。ヒトに協力を求めたのはネコ自身なのであるが、気まぐれでワガママなのもネコの性質なのである。
「わたしの上に乗るの?」
なんとなく伝わってきたネコの意思に、キャルは覚悟を決めた。
堅甲によって防具を強化すると、自身とそう大きさの変わらない――毛が長い分、キャルより大きく見えるネコを背負う。ネコが爪を出してしがみついても、万が一他の参加者から妨害を受けても、これなら大丈夫だ。
「出発するね、ねこさん!」
なんだか妙なことになったが、キャルはレース完走を諦めてはいなかった。他のネコがゴールしそうになれば、光縛封で進行を妨害する算段だってある――あった、のだが。
「ふわふわ~……」
長毛ネコの下敷きになったキャルは、至高のふわふわに包まれた瞬間、すべてを忘れた。
「きもちいい、です……いやされ、る……」
長毛ネコを抱きしめ、すやぁと安らかな眠りに飲まれていく。
「うーん、キャル選手、これはリタイア、ですかね? というか、もう一人選手が見当たりませんねぇ……気にはなりますが先頭集団がそろそろ川に差し掛かりそうなので、また戻りま」
びゅんっと駆ける茶ネコに、エッシの声は途切れた。
「ここが難関でございますね」
川を前に、ネーヴェはハチワレの背から降りた。
水の匂いに怯んだ様子のネコを撫でる。
「この川を渡りさえすれば、ゴールは目前でございます」
てこずっているうちに後続が追い付いてくるだろうことは想像に難くない。だが、ネーヴェは妨害を仕掛けるつもりはなかった。あくまで相棒であるネコとレースを完走することを最優先に考える。優勝はさておき、完走出来れば次回への自信に繋がると思うからだ。
「さ、参りましょう」
微笑むネーヴェと水流とを見比べ、ハチワレは唸るような声をあげながらも、一歩を踏み出した。
川辺に到着したニールは、すとんと降り立つとフードに手をかけた。
「出番だよ、レスト」
待ってましたとばかりに栗鼠が顔を出し、ニールの頭の上へ駆けあがる。
灰ネコの耳目がレストに向いたのを確認して、即座に指示を出す。レストは水面に顔を出す岩を足場に、川を渡り始めた。
「ほら、追って」
万が一の時は回避できるよう心づもりをしながら、ニールも飛び出す。勢いにつられて、灰ネコは走り出した。
二組に遅れること数分。なんとか仕切り直したイネスとエルナも川に直面する。
「私たちが渡るぶんには問題ないけど、あなたはそうでもなさそうね」
引け腰になる黒ネコの様子を察して、それじゃあ、とイネスは懐を探った。体を前に倒し、ネコにおやつをちらつかせる。ネコの関心を十分に引き付けたところで、イネスはそれを向こう岸へ勢いよく放り投げた。思わず、といった様子で黒ネコが飛び出す。
にゃあッ――着水して嫌そうな声を上げるのを、イネスは冷静に宥める。
「戻るより渡り切った方が早いわ。さあ、進んで」
荒々しい走りに、イネスは今度こそ振り落とされないように姿勢を低くした。
「ネコさん、水の上を走れるようにしますよ!」
ここは意志が力を持つ世界。エルナは水上歩行の力をサバ白と栗鼠に授けた。さらに栗鼠を分身させ、ネコが水流や魚に気を取られぬよう二匹で誘導する。
サバ白は水の上を歩くという行為に戸惑っていたが、やがて濡れないことを理解すると、勢いを取り戻した。
「その調子です!」
「今、四組目が川を渡り終えました! ゴールは目前です!」
この直線で優勝が決まる。
「もう一息でございます」
「あとは全力で走るだけだよ」
ネーヴェとニールはそれぞれ相棒に声をかける。
「さ、最後のもうひと頑張りよ」
投げたおやつを目敏く見つけて食べる黒ネコへ、イネスはおやつを結んだ矢を見せる。そして素早くつがえた。
「……ふっ!」
放つなり、イネスは黒ネコの背に飛び乗った。おやつを追い、黒ネコはゴールへ向け一直線に走りだす。
「さあ、ネコさん! ゴールまであとちょっとです! 一緒に頑張りましょう!」
ファイトファイト! と明るく声を掛けながらネコと並走するのはエルナだ。
ゴールが近づくにつれ、四組はただ走ることに集中した。
「今年の福ネコとなるのはっ……?!」
●閉幕
「それでは皆様のご健闘を称えましてぇ、カンパーイ!」
エッシの音頭で、参加者たちはそれぞれ飲み物を掲げた。
「勝利の味、ってやつだね」
気持ちよくビールを飲み干したニールは、束の間の相棒を撫でた。モリネコレース優勝の栄誉に、灰ネコはごろごろと機嫌よく喉を鳴らす。
「もう少しでございましたね」
ネーヴェとイネスは僅差で優勝を逃し、同着二位であった。
「良いところまで行ったのだけど……」
惜しがるイネスに対し、ブラッシングされている黒ネコは満足そうだ。
「たくさん頑張りましたね! えらいですよ!」
プレッツェルを栗鼠と分け合いながら、エルナは明るく笑う。
「ふわふわに、勝てなかった……」
「うぅ……」
ふわふわの誘惑に負けたキャルと、錆ネコに振り回されてコースアウトしたスノードロップは項垂れた。
「普段はリタイアする方が多いらしいよ」
灰ネコをマッサージしながら、ニールが言う。
「四組も完走出来たなんて今年はきっと良い年だ……と、ネコちゃんたちは思っているようでございますね」
ネーヴェと組んだハチワレは、来年こそ優勝して見せると自信を付けた様子だ。
勝敗に関係なく満足げなネコたちに、イネスは表情を和らげた。
「そうね。ゴールおめでとう。今年一年、良いことがあるといいわね」
「私にもご褒美が必要です! 心ゆくまでもふもふしまくりますよ!」
「わ、わたしももっとふわふわする……」
美味しいビールにシロップジュース、プレッツェル。そしてなにより最高なもふもふを、六人は思う存分堪能するのであった。
ロスガリア大陸の、どこでもあってどこでもない場所。
冬晴れの空の下、草原に六組の選手が集っていた。
「ネコさんをもふもふ……じゃなくて、ゴールへ連れて行けばいいのですね!」
灰色の縞模様があって腹部が白い、いわゆるサバ白のモリネコとコンビを組むのは、エルフのエルナ・クルプファルツ。長い金の髪を一つに結び、意欲を見せる。
鼻を寄せてくるネコに、エルナは抵抗せず――目の前のふわふわに触りたくなるのもぐっと我慢して、様子を伺った。
やがて満足したネコがゆっくりとまばたきするのに、エルナも微笑んで応じる。
「よーし! 頑張りますよ! 元気元気で楽しくレースしましょう!」
ニャァ! とサバ白もまた溌溂と声を上げた。
その隣には、早くもモリネコの虜になっている選手がいた。癖のある銀髪を肩上で切り揃えたエルフ、キャル・イルセインは、白いネコに抱きつき、首周りをわしゃわしゃと撫でまわす。
キャルの相棒は特に長毛でふわふわだ。
「もふもふねこさん、かわいいね!」
気持ち良さに誘われるがまま撫でていると、なう、と低い声があがった。
「さ、さわっちゃだめ? ふわふわ……」
おどおどとしつつも、もふもふ欲求を抑えきれないキャルに、長毛ネコは仕方がないなという目つきでぺたんと寝そべる。
「ありがとう、本当に素敵なふわふわ……あ、そうだ」
ネコのおもちゃがほしいと思った瞬間には、手に猫じゃらしが握られている。現実ではありえない現象を不思議に思う者はいない。
「ほら、もふもふねこさん、遊びましょ」
ちょろちょろと動かしてあやそうとするが、通常の猫の何倍もの大きさと威力を持つネコパンチが即座に撃ち落とした。
「あう……かしこい」
爪がかすめた手の甲を抑え、キャルはしょげかえった。
「今日はよろしく。お互いの目的のため、頑張ろう」
喜怒哀楽の読みにくい顔で全身灰色のモリネコに挨拶をしたのは、ハーフリングのニール・ロブラリアである。
シューターたるもの暴れ馬だろうが気まぐれネコだろうが乗りこなして見せよう――と意気込んでみたものの、相棒はどちらかといえばのんびり屋のようだ。ふんふんとニールの匂いを嗅ぎ、長い紫の髪に隠れたフードやポケットのふくらみに興味を示す。
「……そこまで。中身はあとでのお楽しみ、だよ」
ネコの額に手をあてて押しとどめる。灰ネコはプイと顔をそらした。
「ゴール出来たら、マッサージしてあげるよ」
ネコのためのマッサージ、もといヒトのためのもふもふタイムでもあるが、灰ネコはちょっぴりやる気になったようだ。
「スノードロップです! 今日はよろしくお願いしますっ」
ヒューマンの少年、スノードロップは精いっぱい礼儀正しく挨拶をした。ヒトの目には微笑ましく映る光景だったが、当のモリネコ――黒に赤茶が入り混じる錆ネコは、マイペースに毛づくろいをするばかりだ。
「あの、ネコさん……レース、がんばりましょうね!」
じろりと一瞥される。スノードロップは不安でいっぱいになった。
まもなく、司会を務めるエッシ・リッポネンの口上が始まった。並走して実況を行うため、茶色のネコがそばに控えている。
全てのコンビがスタートラインに立ち、じりじりと緊張感が高まっていく。
「では、みなさまぁ、位置につきましてぇ……よーい――どん!」
上り坂へまず躍り出たのは、白い髪をなびかせるエルフの娘、ネーヴェ・グラヌローザだ。相棒は、燕尾服めいた柄のハチワレネコ。
「全力を尽くして参ります」
ネーヴェの手には、針の代わりにエサを結びつけた釣り竿があった。目の前を揺れるエサに誘われ、ハチワレは駆けるのだった。
「私を信じて手綱を預けてくだされば、ゴールにはあなたのお好きなものをご用意いたします」
騎乗の心得があるネーヴェは、安定した走りを見せながら相棒に語り掛ける。
にゃうにゃう! ――ハチワレのやる気はうなぎのぼりであった。
颯爽と後を追うのは小熊のような体躯の黒ネコ。乗り手は銀髪のエルフ、イネス・エレディア。成長が早くに止まった彼女は、齢三桁ながら十歳前後の少女に見える。
しかし、その表情はあくまで理知的だ。
「冒険者というのは変わっているのね。猫からの依頼も引き受けるなんて……」
呟き、手にした魔弓へおもむろに矢をつがえる。
カッカッ――立て続けに射こまれた矢が、茂みに潜む小動物を牽制する。
「えぇ、私も今は冒険者。受けた依頼は全うさせてもらうわ」
冷静に勝利を目指す物言いに、クロネコも迷いのない走りで応じた。
もふもふの背中でうつらうつらしていたエルナは、はっと顔を上げた。いけない、いけない。どんなに心地よくともレースはもう始まったのだ。
「さあ、ネコさんゴーです!」
号令を出して加速を促し、さらにエーテルリンクした栗鼠を先行させる。コース内の虫やネズミを栗鼠に追い出してもらう作戦だ。しっぽをふりふり、先を走る栗鼠の姿をサバ白が嬉々として追いかける。もちろん、安全な距離を維持するよう指示はしているが――サバ白は栗鼠めがけて跳躍した。
「わーっ! ダッシュ、ダッシュです!」
しがみつきながら、エルナは栗鼠にむかって叫んだ。
「慌てない、慌てない……」
ジグザグ走行を始めたサバ白を見ながら、ニールは灰ネコの頭を撫でる。
背中の乗り心地は大変良好。速度を出しても振り落とされない自信はあるが、まずはネコと呼吸を合わせながら堅実に進むのが優先だ。まだレースは始まったばかり、体力も温存しなければいけない。
エルナの栗鼠によって追い立てられた虫が、左右に飛び出してくる。ぴくっと耳を動かした灰ネコに、ニールはすかさず声をかける。
「もうゴール諦めちゃうの?」
淡々とした口調だったが、その言葉が灰ネコの闘志に火をつけた。
モリネコはみな等しく夢を見る。華々しくゴールする夢を。
灰ネコは、猛然と走り出した。
「おっとぉ、ニール選手の猛烈な追い上げ! 先頭を行くネーヴェ選手、イネス選手は一足早く下り坂へ……すぐあとにエルナ選手が続きます!」
疾走する茶ネコの背で、エッシが実況する。ちなみにこのネコはレース殿堂入りの猛者である。
「ここで一旦、後方の選手を見に行くとします……あー、実況って一人でやるもんじゃねぇですね」
ぎゅんっと激しいUターンを決めた茶ネコに青ざめながら、エッシはぼやいた。
鋭い観察眼で不自然な草の動きを察知するたびに矢を打ち込みながら、イネスは順調な進行に満足していた。
「これで、よっぽど間の抜けた動物以外はでてこないでしょう」
下り坂もこの調子でいけば問題ないだろう。
そう確信を持った矢先、直進していた黒ネコが急旋回する。
「ちょっ……?!」
いったい何が、と目を瞠ったイネスの視界に、必死に走る栗鼠の姿が映った。
「わ、わ、ごめんなさーい!! リスさん食べないでくださーい!」
エルナの栗鼠に、黒ネコが飛びかかってしまったのだ。
「きゃあっ」
「ぶ、ぶつかりますっ!」
レースをすっかり忘れた黒ネコの動きに、小柄なイネスは振り落とされる。直後、道をふさいだ黒ネコに、サバ白がつっこんだ。
「栗鼠の使いどころは要注意、と……」
ぐるぐると目を回す二人と二匹の横を、灰ネコにまたがったニールが通り過ぎる。ニールが前方に向かって投げる干し肉やチーズを追いかけて、灰ネコは脇目も振らずに直進した。
「振り向いてはいけません」
先頭を走るネーヴェは、後方の騒動に気をやりかけたハチワレに話しかける。念押しに棍を斜め前方に向けて差し出し、先端から光の矢を放った。
「目指すはあちらでございます」
狙い通り、ハチワレは光を追いかけ始める。下り坂で勢いのついた走りに、ネーヴェはネコの柔らかな背へ捕まりなおした。
走りに自信のないネーヴェは、陸地においてはこのままネコの背に乗って行くつもりだ。決して、もふもふを堪能したいだけというわけではない。決して。それはそれとして、もふもふとはなんと甘美な響き、素敵な肌触りであることか――ネーヴェは早くもゴール後のボーナスタイムへ思いを馳せた。
「はい、こちら上り坂です。よくわからねぇことになっております」
目の前の光景をどう受け止めたものか、エッシは首をひねった。
モリネコレースはネコのレースであるから、走るのはネコである。そのはずなのだが。
「ねこさん、じっとしててね」
何故か、キャルは長毛ネコを背負ってえっちらおっちらと坂を登っていた。
「あ! だめ。あばれないで……」
ネコが虫に気を取られた拍子に、バランスを崩してぺしゃりと潰れる。
「あ、あ~……」
何故こうなったのか。
時は暫しさかのぼる――。
「うう……」
レース開始直後、まったく走り出す様子のない長毛ネコと涙目になりそうなキャルは睨み合いを続けていた。
目をすがめる長毛ネコに、キャルは目を見開いた。
「あ、年上なのね! ごめんね……」
どうやら、モリネコは自分より年下のキャルに思うところあって動かなかったようだ。ヒトに協力を求めたのはネコ自身なのであるが、気まぐれでワガママなのもネコの性質なのである。
「わたしの上に乗るの?」
なんとなく伝わってきたネコの意思に、キャルは覚悟を決めた。
堅甲によって防具を強化すると、自身とそう大きさの変わらない――毛が長い分、キャルより大きく見えるネコを背負う。ネコが爪を出してしがみついても、万が一他の参加者から妨害を受けても、これなら大丈夫だ。
「出発するね、ねこさん!」
なんだか妙なことになったが、キャルはレース完走を諦めてはいなかった。他のネコがゴールしそうになれば、光縛封で進行を妨害する算段だってある――あった、のだが。
「ふわふわ~……」
長毛ネコの下敷きになったキャルは、至高のふわふわに包まれた瞬間、すべてを忘れた。
「きもちいい、です……いやされ、る……」
長毛ネコを抱きしめ、すやぁと安らかな眠りに飲まれていく。
「うーん、キャル選手、これはリタイア、ですかね? というか、もう一人選手が見当たりませんねぇ……気にはなりますが先頭集団がそろそろ川に差し掛かりそうなので、また戻りま」
びゅんっと駆ける茶ネコに、エッシの声は途切れた。
「ここが難関でございますね」
川を前に、ネーヴェはハチワレの背から降りた。
水の匂いに怯んだ様子のネコを撫でる。
「この川を渡りさえすれば、ゴールは目前でございます」
てこずっているうちに後続が追い付いてくるだろうことは想像に難くない。だが、ネーヴェは妨害を仕掛けるつもりはなかった。あくまで相棒であるネコとレースを完走することを最優先に考える。優勝はさておき、完走出来れば次回への自信に繋がると思うからだ。
「さ、参りましょう」
微笑むネーヴェと水流とを見比べ、ハチワレは唸るような声をあげながらも、一歩を踏み出した。
川辺に到着したニールは、すとんと降り立つとフードに手をかけた。
「出番だよ、レスト」
待ってましたとばかりに栗鼠が顔を出し、ニールの頭の上へ駆けあがる。
灰ネコの耳目がレストに向いたのを確認して、即座に指示を出す。レストは水面に顔を出す岩を足場に、川を渡り始めた。
「ほら、追って」
万が一の時は回避できるよう心づもりをしながら、ニールも飛び出す。勢いにつられて、灰ネコは走り出した。
二組に遅れること数分。なんとか仕切り直したイネスとエルナも川に直面する。
「私たちが渡るぶんには問題ないけど、あなたはそうでもなさそうね」
引け腰になる黒ネコの様子を察して、それじゃあ、とイネスは懐を探った。体を前に倒し、ネコにおやつをちらつかせる。ネコの関心を十分に引き付けたところで、イネスはそれを向こう岸へ勢いよく放り投げた。思わず、といった様子で黒ネコが飛び出す。
にゃあッ――着水して嫌そうな声を上げるのを、イネスは冷静に宥める。
「戻るより渡り切った方が早いわ。さあ、進んで」
荒々しい走りに、イネスは今度こそ振り落とされないように姿勢を低くした。
「ネコさん、水の上を走れるようにしますよ!」
ここは意志が力を持つ世界。エルナは水上歩行の力をサバ白と栗鼠に授けた。さらに栗鼠を分身させ、ネコが水流や魚に気を取られぬよう二匹で誘導する。
サバ白は水の上を歩くという行為に戸惑っていたが、やがて濡れないことを理解すると、勢いを取り戻した。
「その調子です!」
「今、四組目が川を渡り終えました! ゴールは目前です!」
この直線で優勝が決まる。
「もう一息でございます」
「あとは全力で走るだけだよ」
ネーヴェとニールはそれぞれ相棒に声をかける。
「さ、最後のもうひと頑張りよ」
投げたおやつを目敏く見つけて食べる黒ネコへ、イネスはおやつを結んだ矢を見せる。そして素早くつがえた。
「……ふっ!」
放つなり、イネスは黒ネコの背に飛び乗った。おやつを追い、黒ネコはゴールへ向け一直線に走りだす。
「さあ、ネコさん! ゴールまであとちょっとです! 一緒に頑張りましょう!」
ファイトファイト! と明るく声を掛けながらネコと並走するのはエルナだ。
ゴールが近づくにつれ、四組はただ走ることに集中した。
「今年の福ネコとなるのはっ……?!」
●閉幕
「それでは皆様のご健闘を称えましてぇ、カンパーイ!」
エッシの音頭で、参加者たちはそれぞれ飲み物を掲げた。
「勝利の味、ってやつだね」
気持ちよくビールを飲み干したニールは、束の間の相棒を撫でた。モリネコレース優勝の栄誉に、灰ネコはごろごろと機嫌よく喉を鳴らす。
「もう少しでございましたね」
ネーヴェとイネスは僅差で優勝を逃し、同着二位であった。
「良いところまで行ったのだけど……」
惜しがるイネスに対し、ブラッシングされている黒ネコは満足そうだ。
「たくさん頑張りましたね! えらいですよ!」
プレッツェルを栗鼠と分け合いながら、エルナは明るく笑う。
「ふわふわに、勝てなかった……」
「うぅ……」
ふわふわの誘惑に負けたキャルと、錆ネコに振り回されてコースアウトしたスノードロップは項垂れた。
「普段はリタイアする方が多いらしいよ」
灰ネコをマッサージしながら、ニールが言う。
「四組も完走出来たなんて今年はきっと良い年だ……と、ネコちゃんたちは思っているようでございますね」
ネーヴェと組んだハチワレは、来年こそ優勝して見せると自信を付けた様子だ。
勝敗に関係なく満足げなネコたちに、イネスは表情を和らげた。
「そうね。ゴールおめでとう。今年一年、良いことがあるといいわね」
「私にもご褒美が必要です! 心ゆくまでもふもふしまくりますよ!」
「わ、わたしももっとふわふわする……」
美味しいビールにシロップジュース、プレッツェル。そしてなにより最高なもふもふを、六人は思う存分堪能するのであった。
マスターコメント
冷静にゴールを目指す方、モリネコのことを真摯に考えてくれた方、ふわふわにリタイアした方、個性豊かな参加方針で楽しくにぎやかなレースになりました!
感謝とともに、もふもふライダーの称号をお送りします。
ご参加ありがとうございました!
ショートシナリオ易しい 報酬:標準6 / 4〜6人
2021年01月14日 01時37分27秒 公開
大成功
相談掲示板
ハッピーニューイヤー! もふもふと聞いてやって来ました!エルナです!皆様よろしくお願いしますね! もふもふネコさんにまたがってもふもふ……ではなくゴールを目指せばいいのですね! 皆さんもふもふ……ではなく頑張りましょう!
新年! よろしくね。 なるほど、これがもふもふねこね! 楽しみ♪
新年明けましておめでとう御座います。 幸せなもふもふタイムが満喫出来ると聞いて参りました、ネーヴェ・グラヌローザでございます。皆様、どうぞ宜しくお願い致します。 もふもふ……なんと甘美な響きでございましょう……。ゴールすれば更にボーナスタイムを頂けるとのことで、全力を尽くして参ります。
明けましておめでとう。 イネス・エレディアよ。 冒険者というのは変わっているのね。ネコからの依頼も受けるなんて……
新年、明けましておめでとうございます! スノードロップです! もふもふねこさんに乗ってレースとかうれしたのしいこと間違いないじゃないですかっ。
あけまして、おめでとう。 ボクは、ニール・ロブラリア。よろしくね。 ……レースだね。完全に理解した。がんばろう。