信仰の山

崎田航輝

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シナリオID:306

オープニング

「来てくれてありがとう。助力に心から感謝したい」
 丁寧に頭を下げ、冒険者達を迎えたのは鎧に身を包んだ青年だった。
 素朴ながらも美しさを備えた神殿、その建物を望む詰所から、彼が見上げるのは――遥かな山道の上方。
「では、行こうか」
 言葉と共に彼は冒険者を案内して歩き出した。
 多くの人々の信仰を護るために、と。

●灰色の路
 シグモル火山帯。
 麓から続く道の地面は硬く、上り坂は早くも急勾配だった。
 仰げば仄かに灰色にくすんだ空の下、峻厳な山のシルエットが望める。
 満ちるのは俗世と切り離されたような空気。歩くには劣悪な環境といって差し支えのないそこを、冒険者と鎧の青年は歩いてゆく。
「改めて、名乗らせてもらうよ。ファビアン・エリコッドだ」
 鎧の青年はそう自己紹介をした。
 ファビアンは双翼修道騎士団――『神徒』の一派から派生したという小集団の主任剣士、即ちリーダーを務めている。
 騎士団は皆授恵者で、日々火山帯の為に戦っているという。
 ただ、その騎士団でも手が足りない程の脅威が訪れているのだといった。
 それが他でもないクリーパーだ。
「最近では特に多く目撃されるようになっているんだ。同じようなクリーパーらしい」
 そのクリーパーは、時に巡礼者を襲い、神殿をも破壊する。だから自分達には許せぬ敵だと言った。
「騎士団の仲間も実は、別の場所へ戦いに赴いているところなんだ」
 そことは別の場所でも敵の目撃情報があった。
 神殿の近くにいて、人が近寄れぬ状況にあるという。そこでリーダーであるファビアンが冒険者の力を求めることとなったのだ。

 巡礼者が逃げ延びてきたというその道は、短くない。
 時折火山からの熱気が吹いてくる中、岩場にしか見えぬ道にも行き遭う。
 そこを進みながら、ファビアンは自分の話をした。
「修道騎士団の名の通り、僕らは信仰のもとに集まった集団だ」
 鍛錬と、火山帯の脅威への対処に奮闘しながら……山中に幾つもある神殿を巡り、信仰を深める日々を送っているのだと言った。
「変わって見えるだろうか」
 彼は少し笑う。
 火山の外から来た人間には、敬虔すぎる信仰を理解されぬこともあるらしい。
 けれど小さな神々を祀る神殿を訪れ、祈りを捧げ、山を巡る――そうやって過ごす日々は、自分にとっては自然なものなのだと言った。
「僕ら騎士団だけでなくとも、同じ信仰を抱く人はここには多くいる。そのための戦いに、付き合わせてしまって申し訳なくも思うけれど」
 それでも、どうしても冒険者の力が必要だったとファビアンは言った。
 同時に、と彼は続ける。
「個人的には、貴方達のことを知りたかったからいい機会でもあると思っているんだ」

 彼は冒険者を不思議な存在と捉えているようだった。
「僕らでさえ、同じ信仰心を抱きながら時に衝突する。けれど冒険者達は、受けた仕事に一丸となって取り組み……各所で目覚ましい成果を上げているとか」
 少なくとも、と彼はこちらを見る。
「貴方達はゆかりのない、いち信仰者である僕を助けてくれている。それは簡単なことではないと思う」
 だから聞いてみたかったのだと彼は言った。
「貴方達が信じるものとはなんだろうか。何を支えに、危険な戦いに身を投じているんだい――?」
 どんな心をもって。
 どんな信念をもって。
 時に命さえ懸けることになる冒険をこなし、生き抜いているのか。
 それは彼自身の信心をも改めて見つめ直したがっているような、真摯な問いだった。
 と、そこでファビアンは前方を見る。
「……その前に、敵がいるようだ」

●敵影
 遠くに見える神殿が瓦礫と化している。
 そこから山道を下りる方向へ進んで来ている、大きな影があった。
 濁った紫の翼を持ち、角を生やした人型にも見える――クリーパー。同じ形で比較的小さい個体を二体連れているが、中央のその一体が濃い気配を放っている。
「……暴れながら、獲物を探しているのかもしれない」
 ファビアンは言って、鞘を握る。
 その額には少しだけ汗が浮かんでいた。
「今まで見たことがあるのはあの小さな個体だけだった。大きな個体はもしかしたら、親玉かもしれない」
 だとしたら、勝つのは決して楽ではないだろう、と。崩れた神殿を見て、わずかに己を支える心が揺らいだようでもあったろうか。
 それでも――傍らに立つ冒険者は、退かない。既に武器を手にとり、戦いの準備を始めていた。

解説

●目的  クリーパーを撃破する。 ●現場状況  シグモル火山帯の麓から山道を進んで暫くの、神殿のある土地。  真っ直ぐの坂道の上にあり、神殿がある周囲は平らで開けている。外側はある程度切り立っており、大きく戦場外に出ると滑落する可能性がある。  冒険者達は坂の終わりの近く、平らな土地の手前にいる状態。 ●敵情報  クリーパーが3体。  坂の上の平らな土地のおおよそ中央に位置している。  冒険者達との距離は開始時点で10hex。  どの個体も翼で飛行する。 ・『信蝕』(大)×1  全長3メートル程のクリーパー。  紫閃 【呪い】を伴う範囲魔法攻撃。直径3hex。  黒爪 【スリップ】を伴う近接単体攻撃。  信蝕 【行動操作】を伴う範囲魔法射撃。長さ12hex、幅1hex。 ・『信蝕』(小)×2  全長1.5メートル程のクリーパー。  翅音 【行動阻害】を伴う範囲魔法攻撃。直径3hex。  鋭爪 【スリップ】を伴う近接単体攻撃。 ●協力者 ■ファビアン・エリコッド  信仰のもとに集まった小集団、双翼修道騎士団のリーダー。ヒューマン。  おおよそ冒険者一人と同程度の戦闘力。ウォーリアで剣を装備している。  指示通りに動かすことが出来る。

マスターより

火山帯の高所での戦闘となります。 敵は鈍重ではないですが、開始時点ではこちらに気付いてはいません。素早かったり、上手くやれば先手を取ることが出来るでしょう。 ファビアンは言うとおりに動いてくれるので適宜戦術に利用するといいでしょう。 また、ファビアンは冒険者の話を聞きたがっているようです。戦闘後など話に付き合ってあげると喜んでくれるでしょう。 皆様のプレイングを、心より楽しみにお待ちしております。

リプレイ

●先陣
 静謐の山中に座していた神殿。
 それは厳しい道の半ばでも信仰者へ安寧を与える場所だったろう。
 けれど今ではそれが瓦礫となってしまっているから――ララベル・サン・ディーベルは拳をぎゅっと握る。
 信仰心というものは余り良く分からない。けれど誰かの大切な思いや場所を荒らすのがどういう事なのかは理解出来るから。
 前方のクリーパー、“信蝕”を真っ直ぐ見据えて。
「……許せないね」
「そうね」
 傍らでロゼットも頷いていた。
 聖職者であればこそ、力なき信者の心も、修道騎士ファビアンの心も判る。何より火山帯は自身の大切な故郷でもあるのだから。
「ここで倒しましょう」
「うん」
 応えるララベルは僅かに待機。
 信蝕がぎりぎりの間合いに前進してきた一瞬を見計らい――疾駆。一気に大型個体の面前へ迫りながら。
「もうこれ以上、この場所や人々を襲わせない!!」
 抜き放つ細剣で刺突。翼を貫きながら、もう一刀でその根元へ裂け目を刻み込んだ。
 信蝕がこちらの存在に気づく、が、直後にはノックス・マグナが狙いを定めている。
 静かな表情で握り締めるのは長弓。身の丈にも迫るようなそれを揺らがず構え、番える矢の先でクリーパーをしかと捉えるようにして。
「合わせましょう」
「了解よ」
 ロゼットも走り出しながら棍へ魔力を燦めかす。
 零れる光の粒子から形成するのは魔法の矢。棍を振るって撃ったそれを、大型個体へ突き立てていた。
 微かに敵がよろめけば、そこへノックスが弓弦を弾いて射撃。
 甲高い風音で飛翔した矢が、吸い込まれるように肩口に突き刺さり――鏃から溢れるエーテルが知覚力を淀ませていく。
 それでも信蝕は反撃を目論むが――誰かが標的になるより先に、アスカ・タチカゼが跳躍。ふわりと銀髪を揺らがせて大型の眼前へ着地していた。
「うーん、何とも……近くで見ると薄気味悪いねぇ、ヤバそう!」
 そうして仰ぐ巨体の威容に声を零しながら、決して退かず。寧ろ注意を引くように堂々と構えを取っていた。
 信蝕は自然、面前にいるアスカへ爪撃を放つ。だが予期していたそれを、アスカは正面から受けきり倒れない。
「こっちは抑えておくから、向こうは――」
「私が行く」
 と、小型の個体へはアンジェラが既に向かっていた。
 動きに迷いなく、ただやるべき事を見据えるように。エーテルの塊を一体へぶつけて意識を引きつけると――後は飛び退かず盾を構える。
 攻め手は任せられる仲間がいる。
 ならば自身はこうして皆の前に立って盾となろう、と。小型個体が奔らせる爪を、守りに全ての意識を集中して防御。強烈な衝撃に一歩たりとも後退せず耐えきっていた。
 もう一体の小型はアスカを毒で蝕んでくる、が。
「大丈夫、すぐに治してみせるからね」
 明朗な言葉と共に、手元に美しい光を湛える姿が一人。それは――
「武と舞の神官戦士エーデルワイス、参る!」
 眩い魔力を揺蕩わせ、手をのばすエーデルワイス・エンゲル。
 そのまま暖かな輝きを解き放てば、アスカの体へ溶け込んだ治癒の力が穢れを払い、浄化して健常を保っていた。
 神聖な光に敵意を抱いたか、信蝕はエーデルワイスへ視線を向ける、が。
「おっと、やらせないからな」
 ヨナ・シャハムが杖へと煌々と魔力を巡らせている。
 透明なそれは光へと変じ、光は焔へ成長してゆく。刹那、轟と燃え上がるのは紅蓮の火球だった。
 信蝕達は羽ばたき避けようするが、遅い。放たれた炎は意志を持つように宙を翔け、喰らいつき。大型個体と小型一体を巻き込んで膚を灼け焦がしていった。
「ありがとう」
 エーデルワイスは言いながら前にも視線を向けて。
「私は後方支援を続けるから。前衛の皆も、任せたよ!」
「ええ、尽力させて頂きます」
 応えて走るのはフリーダ=ブロムヴィスト。下段に構えた大剣へ明滅する光を灯し、大型個体へと追いついていた。
 信蝕は微かな戦慄きと共に上方へ退避しようとはためく、が。
「斬らせて頂きます」
 僅かに疾く、フリーダが跳んでいた。
 そのまま灰色の空に流線を描きながら一閃、鋭い剣撃で翼を斬り飛ばす。

●決着
 濁った吼え声が木霊する。
 大型の信蝕は苦悶と共に高度を下げていた。片翼が散り、もう空へ昇れはしないだろう。
「貴方達はやはり、凄いな」
 そう零すファビアンも、しかし劣らず小型個体とやり合っている。
「……」
 その姿を――フリーダはそっと見やっていた。
(信じる神の為に戦う人々、ですか)
 その信念の強さに、改めて敬意を抱くように。
(啓示でも「アー=ルティ=エーも祈りは大事」、との事ですから……)
 自身も、その運命を変えた神を視るように空を仰ぎながら――刃を握り直して。
「一気に仕留めましょう」
「うん!」
 言いながら駆けるララベルは大型の面前。山なりに跳びながら斬り上げてみせると、着地して連撃、背中へも剣撃を加えた。
「次、お願い!」
「ええ」
 直後にはロゼットが懐へ。鮮烈な魔力と己の膂力をもって、振り下ろす棍で肋を砕く。
 信蝕は呻きながらも闇色の靄でアスカの精神を侵すが――
「ゴメンやられた……! 回復お願い!」
「任せて!」
 薄らぐ意識で言ったアスカを、エーデルワイスが即座に光のカーテンで包む。その優しい心地が、闇を払うように不調を拭い去っていた。
 小型個体が爪を突き立ててくるが――受けたアンジェラは痛みなど無視して踏み留まって。
「……こんなもの」
 直後には前進。蹴りつける仕草を囮にして斧で一撃、翼を斬り落としてみせる。
 その間にアスカは大型へ剣撃。致命傷にはならず、信蝕は反撃姿勢を見せてきたが――アスカは怯まない。
「残念だけど……あたしは一人じゃないんでね」
「ああ――行くぞ」
 同時、後方からヨナが凝集した光を矢として発射。大型に残る翼を穿ち、引き倒すように体勢を崩させる。
 そこへ弓の弦を引き絞るのがノックス。乾いた音と共に指を離すと、目にも留まらぬ速度の一矢で大型の命を貫いた。
「残るは二体ですね」
「そうだね」
 ララベルは宙を仰ぐ。
 小型の一体は羽ばたいて上方に昇っていた。けれどそれは決して届かぬ距離ではない。
「降りてこないなら、これでどうだ! 飛べ、僕の一撃!」
 瞬間、ララベルが刃から透明な斬閃を飛翔させて翼の一端を傷つける。
 ただ、その個体も墜ちずに翼を響かせていた。魔的な音波はこちらの脱力を誘うようで、ロゼットは微かに呟く。
「……飛行に魔法、さすが御山のクリーパーは一筋縄じゃいかないわね」
「ええ、そうですね」
 フリーダも僅かに苦痛を感じて瞳を伏せていた。
(「アウトレンジ攻撃されると実際辛いし魔法攻撃も実際辛い」――啓示にもそうありますが)
 フリーダは堪えて倒れずに。
 逆に反撃に移り、宙へ衝撃波を飛ばして信蝕の体力を削ぎ落としてゆく。
「さあ、今のうちです」
「判りました」
 生まれた隙に、ノックスも矢を飛ばしていた。
 渦巻く風を抱いたその矢は、空中で猛加速。的確に翼を貫いてその個体を地へと墜落させてゆく。
 足掻こうと這う信蝕、だがロゼットは棍を握り込んで。
「御山での乱暴な振る舞いは許さないわ!」
 白光する輝きを伴って一撃、横薙ぎの殴打を直撃させ一体を四散させた。
 残る一体もまた片翼で音を放つ。が、アンジェラは仲間に攻撃が届く前に己が身をもってそれを庇い受けていた。
 魔法への抵抗が薄いアンジェラに、そのダメージは決して小さくない。だが。
(それがどうした)
 この体が動く限り、守るだけ。
 ヒトを守るのは当然の事なのだから。
「守るべきヒトがいる。私が戦う理由は――ただそれだけだ」
 一瞬後には肉迫して反撃。重い斬打を叩き込んでいた。
 このまま討てると踏んだアスカは、走り込んで一刀。大剣を振り抜いて暗色の血潮を噴かせていく。
「皆も!」
「うん、繋げるよ!」
 攻めに転ずるエーデルワイスも、掲げた戦槌へエーテルを流動させて一撃。裂帛の打力でその個体を瀕死に追い込む。
 ヨナはそこへすらりと杖を突き出した。
「じゃあ、これで――終わらせるよ」
 螺旋を描く光が、長大で鋭利な矢を象って。豪速で放たれたその衝撃が、信蝕を霧散させて跡形も残さなかった。

●道
「終わりましたね」
 緩やかな風に仄かな土煙が流れる。
 その中で振り返ったフリーダの言葉に、皆は頷きを返していた。
「ありがとう」
 ファビアンは皆に礼を述べ、崩れた神殿を整理する。
 修理はまた必要になる。だが被害がこれで済んで良かったとも言った。クリーパーに襲われた人々もいたけれど、重傷者や命を落とした者はいないからと。
「また皆で信仰の日々を送れる筈だ」
「そっか」
 ヨナは言って笑む。
 今回、ヨナはダマスカスの買い付けに火山帯を訪れていた為、依頼を受けるに至っている。
 めぐり合わせこそ偶然だけれど。
「ここで力を貸す事が出来て良かったよ」
「そうね。火山帯は以前からクリーパーの出現が多いけれど、今回はかなり深刻なようだったから」
 ロゼットは麓の方向を見やる。だからこれを機に平和に向かっていければいいと、そう思っていた。
 フリーダも皆を見回す。
「皆さんにも、怪我がなく済んで何よりです」
「本当に貴方達のおかげだ」
 ファビアンは真摯に頭を下げた。
 尊敬の念もあればこそ、一層冒険者という存在に強い思いを向けるように。
「改めて聞いてもいいだろうか。これだけの事を為せる貴方達が……どんな思いで戦いに臨んでいるのか」
「戦い、かぁ。僕は戦いが好きなわけじゃ無いんだけど」
 と、視線を向けるのはララベルだ。
「冒険で今まで知らなかった色んな物を感じられるのが楽しいから、頑張れるのかな……それに」
 にこっと花のような笑顔を咲かせて。
「困っている人がいたら力になりたいじゃない」
「……貴方は、心が清い人なのだな」
 ファビアンは仄かに表情を和らげながら、声に敬いの色も滲ませている。そうしてありがとう、と言いながら――帰路へ向かいつつまた皆の話を求めた。

 ノックスは信仰心に篤い訳ではない。
 それでもファビアンの話を聞いて、彼が戦うに至るだけの理由が納得出来た。
 だから自分も話す事で応えよう、と。
「……私の生まれは帝国でした。けれど肩身が狭く、十五で国を出ました」
 小さく声を紡ぐ。
 移り住んだ迷宮都市での日々は悪くなかった。ただ、帝国崩壊を耳にして――かつては嫌っていた帝国をそれでも祖国として愛していた事に気付いた。
「だから今一度帝国に戻り……国を滅ぼした災厄を解明したい。それを叶えるべく信頼できる仲間を探すために戦っているのです」
「……そうだったのか」
 ファビアンは声を静めた。
「帝国は、危険な状態になっていると聞く」
「ええ。だからこそです。故郷ですから」
「それが貴方の信念、なのだな」
 ファビアンはその健闘に、祈りを込めるように目を伏せていた。
「あたしの場合は信念……というほど大層なモノではないかな」
 と、遠くを見るのはアスカだ。
「というと――?」
「あたしは東方文化が好きでさ」
 言って自身の衣服を示してみせながら。
「もっと知りたい、この目で見たい、触れたい。あわよくばホントに東方に行ってみたい――って目標、というか野望がまあ、支えと言えば支えかな」
「真っ直ぐな夢が、あるのだな」
 少し眩しそうに言うファビアンに、アスカは笑む。
「あとは単純に、困ってる人がいたら力になりたいってそれだけ。そうやってその日その日を目一杯生きてるだけだよ。少なくともあたしは、そう!」
「俺もどっちかっていうとそれに近いかな」
 そう目を向けるのはヨナだ。
「何かの信念というよりは……自分が関わる事ができたのなら、死なせたくないから、死にたくないから。それくらい」
 死んじゃったら何も出来ないからね、と。
「勿論神様を信じる事も」
「その心と行動に、僕は助けられた」
 だから深く感謝したい、と。自身の心にも刻むようにファビアンは言って。
 それから――アンジェラへも瞳を向ける。
「貴方の戦いも、凄まじいものだった。それを可能にさせる、信ずるものが?」
「……信じるもの、か」
 アンジェラは少し、自身の事を思う。
 以前の自分ならば信じるものなどなかった。日々生き抜く事だけを考えていたから。
「私は、バルバロイだった。だが――今の私は、ヒトだ。ヒトは、ヒトを守るものだと教えられた。だから私はヒトを守る」
 この教えを守り続ければ、いつかヒトになれると信じているからと。
「それが、貴方の矜持なのか」
「お前が求める答えかは、分からないが」
 逆に教えてくれと、アンジェラは問うた。
「ヒトは普通何を信じているんだ?」
「……そうだな、僕や、信仰者であれば神を。そうでない、普通の人ならば多分……自分の未来を、生きる道をより良くしてくれると思うものを」
 それはきっと信心の有無を問わない思いでもあるはずだと、ファビアンは答えていた。
「そうか」
 アンジェラは頷く。彼の言わんとする全てが判る訳ではない。だが未来の為という心は、アンジェラにも理解できるものだった。
「何を信じるかというのは実際、難しい話だね」
 と、エーデルワイスは正直に吐露する。
「私個人は冒険者である前に神官だから、武と舞の神様を信奉してるし、その信奉として足技と舞いを極めようとしてるけどね」
「信心と技――迷わず見据える道があるのだな」
「でもそれは私の場合で……何を信じるかなんて人それぞれだろうさね」
 その言葉に、ロゼットも頷いていた。
「そうね。冒険者と一口にいっても多種多様。私は――この火山帯の出身で、修行のために冒険者になったの」
 私が支えにする夢は、と、火山を向いて。
「シグモル様みたいな立派な神官になることよ」
「そうだったのか。遠大で――そして崇高な夢だ」
 ファビアンが心から言うと、フリーダも口を開く。
「私にも、啓示を与えてくれる神がいます。そういうものを持つ人もいれば、持たない人もいるのでしょう」
「そうだね。唯一、私達冒険者に共通して信じるもの、信念なんて呼べる物があるとしたら……」
 エーデルワイスは微笑んで。
「単純な『覚悟』だと思うよ?」
「……覚悟、か」
「そう。『何かをやり通す』一念を持って今を生きる、ただそれだけさね」
「その上で、目指すべきものは皆違う。その多様さが、お互いに欠けたものを補い合っているのかもね」
 ロゼットは実感と共に伝えた。
「強い……いや、強さも弱さも含め、多くの思いを持っている人達なのだな」
 ファビアンは自身を省みるように言う。
「単純で、一元的な答えが在ると思っていた僕は視野が狭かった。貴方達のお陰で、思いを新たに出来る」
「そう思って貰えたのなら、嬉しいわ。――ファビアン、貴方の信仰にも神の御導きがありますように」
 ロゼットの粛々とした言葉に、ファビアンも礼を返す。そうして穏やかな風の下、皆は麓に向かって歩みを進めていった。

マスターコメント

お疲れ様でした。 クリーパーは無事に倒され、戦いによる周りへの被害も皆無でした。騎士団が守る地域にはこれから平和が戻ってゆくことでしょう。 ファビアンも冒険者達の真摯な話を聞くことが出来て、自身の信仰を見つめ直すことが出来ました。ファビアン個人だけでなく、騎士団全体にも良い影響を生むことでしょう。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2020年12月11日 11時23分33秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. アンジェラ

    ウォーリアのアンジェラだ。 よろしく頼む。

  2. エーデルワイス・エンゲル

    ヒーラーのエーデルワイスだよ。 今回はよろしく頼むさね。

  3. ララベル・サン・ディーベル

    僕は、シーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、よろしくね!

  4. ノックス・マグナ

    シューターのノックスです。 よろしくお願いします。

  5. ロゼット

    ロゼットよ。クラスはヒーラーね。 故郷での狼藉、止めたいわ。どうぞよろしく。

  6. アスカ・タチカゼ

    アスカ、ウォーリアだよ。 よろしくね。 今回の敵は飛べるみたいだし、奇襲かけられる最初の段階でできるだけダメージを与えておきたいかなって思うなぁ。 開始位置が結構遠いから方法は考えなきゃかもだけど。

  7. ヨナ・シャハム

    キャスターのヨナ・シャハムだ。よろしくな。 こちらに気づかれていないなら、同種に見えても中型は早めに倒しておきたいな。何か変わった能力持ってるかもしれないし。

  8. フリーダ=ブロムヴィスト

    ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 敵は全員飛行ができるようですし、まずは撃ち落とさないと話になりませんね。 幸い相手はまだこちらに気が付いていない様ですし、 初手でなるべくダメージを、可能であれば翼に優先的に打撃を与えたい所ではあります。

  9. ヨナ・シャハム

    んーと。 射程の長い攻撃スキルを持ってる人数がそれほど多くないかなって感じだから、こういう事して欲しいっていう提案が俺に対してあったら、やれそうな範囲で準備してみるので、教えてくれるとありがたいな。

  10. ロゼット

    こちらはファビアン(NPC)を入れて9人、敵は3体ね。 基本は9対3の集団戦、ということで良いのかしら。 俺は大物を狙うぞーとか。私は小さい方をやるぞーとか。 希望があるなら、整理しておいた方が効率よく戦えそうだけど。 キャスターやシューターは自由に的を狙えた方が戦いやすい? 飛行中や範囲攻撃に巻き込めそうな相手を狙うとかで。 >先制攻撃(開始時点ではこちらに気付いていない) 開始時の距離10ヘクス先に届く攻撃が用意できる人たちで、 タイミングを合わせて撃つとか?魔法とか弓矢とかスキルで。 大型を集中して撃つか、分散して3体にダメージを負わせるか。 >バッドステータスへの対応 【呪い】…バッドステータスの自然回復を封じる 【スリップ】…継続ダメージ 【行動操作】…命令に従って行動させられる(自傷、自殺は不可) 【行動阻害】…命中、回避が低下 行動操作は簡単には掛からないけど、万一ってこともあるし、 バッドステータスの治療は呪いと行動操作を優先して良いかな? >ヨナ 普通の「魔矢」は用意できるわ。専門クラスには負けるけどね。 ちょっと別件の依頼中でまだセットできてなくて。

  11. ヨナ・シャハム

    >ロゼットさん 返事ありがとう。皆の初手の考え聞いてから調整する感じにするな。今の所攻撃優先か、命中率を下げるのが優先か迷ってる感じなので。 あ、あとそうだ、みんな敵は発見時は飛行中という認識でいるって事でいいのかな?

  12. ロゼット

    >ヨナ 「進んで来ている」って表現から、発見時は地上って認識でいるわ。 戦闘開始後、向こうがこちらに気づいた後で飛ぶのかなって。

  13. ヨナ・シャハム

    >ロゼットさん なるほど。俺はどっちかな~と思ってたので、少しずつ皆で認識すり合わせていこっか。

  14. ララベル・サン・ディーベル

    僕は疾風足で移動力を2倍にすれば、10ヘクスを一気に詰められると思うから、突っ込んで行って不意打ちさせて貰うね。 大きいやつの翼を狙って2回攻撃して、飛べなくさせるのを狙ってみることも出来そうだけど、具体的にはもう少し考えてみるね。 >敵初期 僕も最初は地上に居るのかなと思っていたよ。

  15. エーデルワイス・エンゲル

    >敵初期 私も最初は地上に居るのかと思ってたよ。 >行動 私は前線タイプの神官戦士なんだけど、今回は後方支援に回ったほうが良いかい? 相手のBS付与が凶悪すぎるからね。 皆の意見次第で考えるよ。

  16. ロゼット

    私は信蝕(大)を優先して狙おうと考えてるわ。 信蝕(大)は魔法射撃を使えるから、翼破壊が成功すれば良いけど、 破壊に手間取ると空から一方的に射撃される危険があるから。 【魔矢】とキャスター用の杖を用意して、魔法射撃攻撃が できるようにしたから最悪、対空戦になっても戦えるわ。 あと【ヒール】と【サルベーション】で回復とBS治療が予定よ。 >初手と以降の予定 初手【魔矢】で信蝕(大)を撃つわ。以降は信蝕(大)と戦闘予定。 >エーデルワイス 魔法攻撃と【スリップ】の効果で、こちらもダメージが増えそうだし、 回復支援にまわるのも有りと思うわ。私も迷ったから。 基本は後方支援にして、敵が地上に降りるか落ちたら殴りに行くとか。

  17. ヨナ・シャハム

    >初手と初手以降 俺もそっちがやばそうだと思ってるから 侵食(大)を優先して狙う事にするな。今の所特に命中率を下げた方がいいという話も出てないし、初手は侵食(大)中心に範囲魔法攻撃で、出来るだけ(小)も巻き込めないかやってみる。 その後は侵食(大)倒すの優先で攻撃かな。

  18. アスカ・タチカゼ

    顔出せてなくてゴメン! >敵の初期位置 あたしも地上って認識だなぁ。 なので飛び上がられる前にある程度ダメージを与えておきたいって考えだよ。 >距離 メインを移動に費やせば、移動が5あれば一気に距離を詰めることはできるんだよね……攻撃が同時にはできないんだけど。 あたしが用意できる遠距離攻撃手段だと弓か射程3の衝撃刃なんだけど、そっちだと火力がやっぱり心許ないから最初は距離を詰める事を優先して近接戦闘かなって思ってる。 ヨナが範囲攻撃してくれるっていうし、ロゼットも魔矢撃ち込んでくれるっていうから初手としては火力出せそうかなとおもうんだけど、もう少し必要って事なら最初は弓で一斉攻撃に参加するよ。 >後方支援 正直あればあるだけ助かるなぁって。 頼り切る形になっちゃうのは心苦しいモノもあるんだけど……ヒールはともかくBSは自力でどうこうってのが難しいからさ。 特に呪い喰らっちゃうと厳しそう……回復優先順位はロゼットが言ってるように呪いと行動操作でいいと思う。

  19. エーデルワイス・エンゲル

    >立ち回り なら今回は後方支援中心に回ろうかね。 【ヒーリングオーラ】、【ヒール】、【サルベーション】、【解呪】を持っていくつもりだから、そうそう回復、BS回復には困らないと思うよ? あとは此処ぞという場面で殴りにいくさ。

  20. ロゼット

    ララベルの言っていた翼への攻撃、破壊の試みは入れておくわ。 飛行を封じられたら、かなり戦いやすくなるでしょうしね。 >アスカ たぶんシーフのララベルが一気に距離を詰めてると思うから、 彼女が集中攻撃に合わないよう、前に出るのも良いんじゃない? 回避・防御に自信があっても袋叩きは辛いと思うわ。 飛行対策に弓は良いと思うから、初手は好きな方で、かな。 >ファビアン(NPC)への指示 話題にあがっていないけど、特に希望がなかったら 私の方から信蝕(小)への対応をお願いしようと思うわ。 剣装備で、スキルも不明なら信蝕(小)の方が戦いやすいと思って。

  21. アンジェラ

    私も前に出るぞ。 大きい信蝕を攻撃する者が多いようだから、私は小さい方の抑えに回ろう。 範囲魔法を封じるために執着付与のシーザーロアを使う。 ファビアンについてロゼットが進言してくれるならば助かる。 私では上手く言葉を伝える事が出来ないからな。

  22. ヨナ・シャハム

    >ファビアンさんの事 俺もそっちの抑えに回って貰った方が良いかもなと思ってたから、ロゼットさんから伝えて貰っていいかな?

  23. ヨナ・シャハム

    あ、そうだ。あんまり戦闘依頼に参加しないからフレンドリーファイアがあるのかよく分からないんだけど、俺が初手で使う範囲魔法、対象が固定じゃなくて範囲3hexなので。多分手順が遅くなるのも考えて、ララベルさんの位置取りを見て発動範囲を決める感じの補足は入れておくな。

  24. ヨナ・シャハム

    範囲3hexじゃないや、直径3hexだ><

  25. ノックス・マグナ

    識別とついていないスキルは範囲内の全てが対象となります。 私も使えるのであれば範囲攻撃は行いますが、場合によっては他のスキルを使うつもりです。

  26. ヨナ・シャハム

    >ノックスさん そうなんだ、やっぱり気をつけないとなんだな。教えてくれてありがとう!

  27. ロゼット

    プレイングは提出したわ。 ファビアンへの指示は、私の方から入れておくわね。 ファビアンとの会話もしようとすると、結構文字数が 大変だから、時間に余裕をもって出した方が良さそうよ。 それじゃ私は先に、後は現地でよろしくね!

  28. アスカ・タチカゼ

    あたしも提出してきたよー。 小型はファビアンへの要請とアンジェラがひとまずいるので大型を優先で。 シーザーロアはないけど積極的に攻撃してヘイト集めて味方が攻撃しやすいように立ち回る感じで。 >ロゼット 意見ありがとう! とりあえず最初にダーッと距離だけ詰めちゃう事にしたよ。 ファビアンへの指示も助かる。 後は朝一覗いて修正かけられるかなって感じ。 ちょっと早いけど……現地でよろしく!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0