女神の賽子は誰に微笑む
空色みなも
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シナリオID:254
オープニング
「少しあたしに付き合っちゃくれないかい?」
宿のテーブルでパンとスープの朝食をとる冒険者達にそう声をかけてきたのは、冒険者の宿「女神の賽子亭」の女主人シリス・アローゼアだ。
女神の賽子亭は、エラトゥーン都市同盟の小さな町、エルタ・リコにあり、これまでも冒険者達に様々な依頼を斡旋してきた実績がある。
ちなみに、テーブルに並んでいるパンとスープは、シリスのお手製であり、宿の名物の一つでもある。
「なに、そんな難しいことじゃない。ちょっとしたお遊びさ」
そう言ってウインクしてみせたシリスが握っていた手を開くと、そこにはサイコロがあった。
シリスはこうして時折、宿を訪れた冒険者達をゲームに誘うことがあるのもまた、町では有名な話である。
宿の名前にも使われているサイコロが、耳飾りとしてシリスの耳にも揺れていた。
●
「さて、今回のゲームは二段階で進行するよ」
シリスの誘いに興味を示した冒険者達を集め、シリスは早速ゲームの説明に入る。
「まずはテーブルの周りに適当な順番で座る。ゲームの手番は左隣の参加者に順に移っていくよ。最初の手番が誰かも決めるんだけど、これは後でやろうかね」
冒険者達を適当な順番で座らせたシリスは、自身もそれらの間に席を取り、ドカッと座る。
「そしてメダルを3枚ずつ参加者に配る。ゲーム用の木製メダルで価値はないし、こっそり持っていったりはしないでおくれよ」
冒険者達に配られなかったメダルは、テーブルの脇に積まれている。どうやら、ゲーム中に尽きることのない十分な数はあるようだ。
「さて、まずは一つ目のゲーム。これはサイコロで出た目の分だけメダルが貰えるんだけど、単にそれだけじゃつまらないよね? だから仕掛けがある」
シリスはストックのメダルから6枚を取り、テーブルの中央に積む。
「ラウンドごとに、テーブルの中央にメダルを6枚積むんだ。前のラウンドからメダルが持ち越されることもあるけど、その場合は追加で6枚」
そう説明を行いながら、シリスは参加者たちに六面のサイコロを二個ずつと、サイコロを振るためのカップを配っていく。
「そして、さっき配ったカップを伏せることで、他の奴に見えないようにサイコロを二個振って、自分だけ見ておくれ」
シリスは自身もカップでサイコロを振ってみせる。
「さて、ここから順番に行なう手番なんだけど。サイコロの目が気に入らなかったら、一度だけ、1個を公開して残り1個をカップの中で振り直していい」
シリスはお手本として、先ほど振ったサイコロを公開し、1と6の目が出ていたことを見せると、そのうち1の目が出ていたサイコロだけをカップの中で振り直した。
「こうすれば、より高い目が出るかもしれないね? ただし、この時、自分のメダルをテーブル中央に1枚、支払っておくれ」
そう言って、シリスは自分のメダルをテーブル中央に支払い、そしてテーブル中央のメダルは7枚となる。
「そして一巡した後でサイコロの目を全員オープンして、サイコロの目の合計と同じ枚数だけ、ストックからメダルが貰える」
シリスが振り直したことによって出たサイコロの目は5であり、合計11となっていたため、シリスはストックから11枚のメダルを取る。
「そして、このテーブル中央に積んであるメダル。これは、参加者の中でサイコロの目の合計が最も低かった参加者に与えられるんだ」
つまり、サイコロの目が高ければそれで良いかというと、そういうわけでもないらしい。
続くシリスの説明によると、サイコロの目の合計が最も低い参加者が複数人いた場合、テーブル中央のメダルはそれらの参加者で山分けになるようだ。
山分けで割り切れなかった端数のメダルは、テーブル中央に積まれたまま、次のラウンドに持ち越しになるのだ、とも説明があった。
「このラウンドを参加者の人数と同じ回数行うよ。誰がラウンドの最初に手番を行うかは、ラウンドごとに左隣へ順に移っていくからね」
そしてここで得られたメダルの枚数は、次のゲームへと持ち越しとなる――。
●
「さあ、そしてここで勝負が決まる、第二のゲームだ」
シリスによると、第二のゲームは、第一のゲームで得たメダルを賭け、より多くのメダルを得る運要素の大きいゲームらしい。
「テーブルに座る順は、第一のゲームでメダルが多かった順だ。これが手番を行う順になるよ」
まだ説明途中なので、ゲームの結果は出ていないが、シリスは便宜的に冒険者達に席順を変えるよう促した。
ちなみに、もしメダルの枚数が同じ参加者が居た場合、それらの参加者の間の並び順は、第一のゲームにおける順番を引き継ぐとのことだ。
「参加者は自分の手番で、まずメダルを賭ける枚数を決めて、それをストックに支払うよ。メダルは5枚単位で賭けることができて、5枚賭けるごとにサイコロが1個手に入る」
例示のため、シリスは自分の手元に適当に積んだメダルから、40枚をストックに支払ってみせる。そして、代わりに8個のサイコロを手元に置く。
付け加えると、この時1個以上はサイコロを振れるように、最低でも5枚のメダルを賭ける必要があるらしい。
「そして4から6までの好きな数字と、手元のサイコロを振ってその数字以上の目が何個以上出せると思うかを宣言するんだ」
これも例として、シリスは「4以上の目を4個以上出す」との宣言を行ってみせた。
「まずは宣言までを手番で行って、一巡。その後、手番とは逆順に、実際に手元のサイコロを振ってみせるのさ」
そう言って、シリスは手元に置いた8個のサイコロを振る。その結果は「2・6・2・4・2・4・4・6」であり、4以上の目は5個。宣言である4個以上を満たしていた。
「こうやって宣言が成功したら、数字に割り振ってあるポイントに、目を出すと宣言した個数をかけた枚数だけ、メダルが手に入るよ」
ここで言うポイントは、4を宣言したら12ポイント、5を宣言したら18ポイント、6を宣言したら38ポイントだそうだ。
シリスの例の場合、12ポイントに対し宣言した4個という個数をかけて、48枚のメダルが得られることになる。
「もし宣言が失敗していたら、何も貰えない。賭けたメダルを支払っただけに終わるよ」
やはり、勝負事にはリスクが付きもの、ということか。
「サイコロを全員振り終わった段階で、メダルの枚数が一番多い奴の優勝だ。同じ枚数のトップが何人も居たら、そいつらは仲良く優勝だね」
最後に競うのは単純にメダルの枚数ということで、そのあたりは分かりやすいと言えば分かりやすそうである。
「さぁ、説明は以上だよ。あたしも入るけど、勝っちゃっても恨まないでおくれよ」
そう語りながら腕まくりをするシリスは、わりと勝つ気マンマンのように見えた。
宿のテーブルでパンとスープの朝食をとる冒険者達にそう声をかけてきたのは、冒険者の宿「女神の賽子亭」の女主人シリス・アローゼアだ。
女神の賽子亭は、エラトゥーン都市同盟の小さな町、エルタ・リコにあり、これまでも冒険者達に様々な依頼を斡旋してきた実績がある。
ちなみに、テーブルに並んでいるパンとスープは、シリスのお手製であり、宿の名物の一つでもある。
「なに、そんな難しいことじゃない。ちょっとしたお遊びさ」
そう言ってウインクしてみせたシリスが握っていた手を開くと、そこにはサイコロがあった。
シリスはこうして時折、宿を訪れた冒険者達をゲームに誘うことがあるのもまた、町では有名な話である。
宿の名前にも使われているサイコロが、耳飾りとしてシリスの耳にも揺れていた。
●
「さて、今回のゲームは二段階で進行するよ」
シリスの誘いに興味を示した冒険者達を集め、シリスは早速ゲームの説明に入る。
「まずはテーブルの周りに適当な順番で座る。ゲームの手番は左隣の参加者に順に移っていくよ。最初の手番が誰かも決めるんだけど、これは後でやろうかね」
冒険者達を適当な順番で座らせたシリスは、自身もそれらの間に席を取り、ドカッと座る。
「そしてメダルを3枚ずつ参加者に配る。ゲーム用の木製メダルで価値はないし、こっそり持っていったりはしないでおくれよ」
冒険者達に配られなかったメダルは、テーブルの脇に積まれている。どうやら、ゲーム中に尽きることのない十分な数はあるようだ。
「さて、まずは一つ目のゲーム。これはサイコロで出た目の分だけメダルが貰えるんだけど、単にそれだけじゃつまらないよね? だから仕掛けがある」
シリスはストックのメダルから6枚を取り、テーブルの中央に積む。
「ラウンドごとに、テーブルの中央にメダルを6枚積むんだ。前のラウンドからメダルが持ち越されることもあるけど、その場合は追加で6枚」
そう説明を行いながら、シリスは参加者たちに六面のサイコロを二個ずつと、サイコロを振るためのカップを配っていく。
「そして、さっき配ったカップを伏せることで、他の奴に見えないようにサイコロを二個振って、自分だけ見ておくれ」
シリスは自身もカップでサイコロを振ってみせる。
「さて、ここから順番に行なう手番なんだけど。サイコロの目が気に入らなかったら、一度だけ、1個を公開して残り1個をカップの中で振り直していい」
シリスはお手本として、先ほど振ったサイコロを公開し、1と6の目が出ていたことを見せると、そのうち1の目が出ていたサイコロだけをカップの中で振り直した。
「こうすれば、より高い目が出るかもしれないね? ただし、この時、自分のメダルをテーブル中央に1枚、支払っておくれ」
そう言って、シリスは自分のメダルをテーブル中央に支払い、そしてテーブル中央のメダルは7枚となる。
「そして一巡した後でサイコロの目を全員オープンして、サイコロの目の合計と同じ枚数だけ、ストックからメダルが貰える」
シリスが振り直したことによって出たサイコロの目は5であり、合計11となっていたため、シリスはストックから11枚のメダルを取る。
「そして、このテーブル中央に積んであるメダル。これは、参加者の中でサイコロの目の合計が最も低かった参加者に与えられるんだ」
つまり、サイコロの目が高ければそれで良いかというと、そういうわけでもないらしい。
続くシリスの説明によると、サイコロの目の合計が最も低い参加者が複数人いた場合、テーブル中央のメダルはそれらの参加者で山分けになるようだ。
山分けで割り切れなかった端数のメダルは、テーブル中央に積まれたまま、次のラウンドに持ち越しになるのだ、とも説明があった。
「このラウンドを参加者の人数と同じ回数行うよ。誰がラウンドの最初に手番を行うかは、ラウンドごとに左隣へ順に移っていくからね」
そしてここで得られたメダルの枚数は、次のゲームへと持ち越しとなる――。
●
「さあ、そしてここで勝負が決まる、第二のゲームだ」
シリスによると、第二のゲームは、第一のゲームで得たメダルを賭け、より多くのメダルを得る運要素の大きいゲームらしい。
「テーブルに座る順は、第一のゲームでメダルが多かった順だ。これが手番を行う順になるよ」
まだ説明途中なので、ゲームの結果は出ていないが、シリスは便宜的に冒険者達に席順を変えるよう促した。
ちなみに、もしメダルの枚数が同じ参加者が居た場合、それらの参加者の間の並び順は、第一のゲームにおける順番を引き継ぐとのことだ。
「参加者は自分の手番で、まずメダルを賭ける枚数を決めて、それをストックに支払うよ。メダルは5枚単位で賭けることができて、5枚賭けるごとにサイコロが1個手に入る」
例示のため、シリスは自分の手元に適当に積んだメダルから、40枚をストックに支払ってみせる。そして、代わりに8個のサイコロを手元に置く。
付け加えると、この時1個以上はサイコロを振れるように、最低でも5枚のメダルを賭ける必要があるらしい。
「そして4から6までの好きな数字と、手元のサイコロを振ってその数字以上の目が何個以上出せると思うかを宣言するんだ」
これも例として、シリスは「4以上の目を4個以上出す」との宣言を行ってみせた。
「まずは宣言までを手番で行って、一巡。その後、手番とは逆順に、実際に手元のサイコロを振ってみせるのさ」
そう言って、シリスは手元に置いた8個のサイコロを振る。その結果は「2・6・2・4・2・4・4・6」であり、4以上の目は5個。宣言である4個以上を満たしていた。
「こうやって宣言が成功したら、数字に割り振ってあるポイントに、目を出すと宣言した個数をかけた枚数だけ、メダルが手に入るよ」
ここで言うポイントは、4を宣言したら12ポイント、5を宣言したら18ポイント、6を宣言したら38ポイントだそうだ。
シリスの例の場合、12ポイントに対し宣言した4個という個数をかけて、48枚のメダルが得られることになる。
「もし宣言が失敗していたら、何も貰えない。賭けたメダルを支払っただけに終わるよ」
やはり、勝負事にはリスクが付きもの、ということか。
「サイコロを全員振り終わった段階で、メダルの枚数が一番多い奴の優勝だ。同じ枚数のトップが何人も居たら、そいつらは仲良く優勝だね」
最後に競うのは単純にメダルの枚数ということで、そのあたりは分かりやすいと言えば分かりやすそうである。
「さぁ、説明は以上だよ。あたしも入るけど、勝っちゃっても恨まないでおくれよ」
そう語りながら腕まくりをするシリスは、わりと勝つ気マンマンのように見えた。
解説
●目的
ゲームで楽しく遊ぶ。
シリスに対する勝敗に関わらず、楽しく遊べれば全体の判定的には成功。
●遊び方
ゲームへの臨み方やロールプレイをプレイングにご記入ください。
テンプレートもあります。
特に方針が書かれていない場合、例と同じ方針となります。
例(NPCのプレイングともなっています):☆両極★慎重■四▲平均
●テンプレート
【第一のゲームの振り直し】
☆一発:振り直しを一切行いません。
☆最大:もしサイコロの目のどちらかに2以下の目があったら、より低い目のサイコロを振り直します。
☆両極:サイコロの目の合計が6以上のとき、もしどちらかに2以下の目があったら、それを振り直します。
☆最小:サイコロの目のどちらかに1か2があったとき、もしサイコロの目の合計が6以上なら、大きい目のほうを振り直します。
☆自由:プレイングで振り直しの条件を記述します。もし記載の条件が無効なものである場合はマスター判断となります。
【第二のゲームで賭けるメダル】
★慎重:できるだけ少ない枚数(5枚)のメダルを賭けます。
★安定:持っている半分(割った余りは5枚単位で切り上げ)の枚数のメダルを賭けます。
★大胆:持っているメダルを可能な限り多く賭けます。
★自由:プレイングで賭ける枚数について記述します。もし記載の条件が無効なものである場合はマスター判断となります。
【第二のゲームで宣言する数字】
■四:4以上の目を出すと宣言します。
■五:5以上の目を出すと宣言します。
■六:6以上の目を出すと宣言します。
■自由:プレイングで宣言する数字について記述します。もし記載の条件が無効なものである場合はマスター判断となります。
【第二のゲームで目を出す個数の宣言】
▲平均:サイコロを振る個数に対し、宣言した数字が4なら2で割った個数、数字が5なら3で割った個数、数字が6なら6で割った個数を宣言します。割り算の端数は切り上げとなります。
▲勝負:平均で計算される個数より1個多い個数を宣言します。振るサイコロの個数を超える場合は、振るサイコロの個数と同じ個数を宣言します。
▲大穴:平均で計算される個数より2個多い個数を宣言します。振るサイコロの個数を超える場合は、振るサイコロの個数と同じ個数を宣言します。
▲自由:プレイングで宣言する個数について記述します。もし記載の条件が無効なものである場合はマスター判断となります。
マスターより
お世話になっております、空色みなもです。
はい。こういうのはシナリオとして……アリなのか? と思わなくもないですが、皆さんへお届けできたということはアリということでしょう。
関連NPCにシリス・アローゼアが紐づけられています。
そして、普通にゲームに参加してきます。
解説の例に挙げた方針に従い遠慮なく行動しますので、NPCだから一位にならないようにするとか、その手の忖度はありません。ご留意ください。
相談掲示板では基本的に出発48時間前までに行われた質問に回答します。
なお、白紙プレイングはゲームに参加しなかった扱いになります。
なので基本は5人ゲームとなりますが、変動する可能性もゼロではありません。
皆さんの運命を切り開くプレイングをお待ちしております。
リプレイ
●
「ゲームですか!? はいはいはーい! 是非参加させてくださーい!」
シリスの誘いに、朝食を取っていたマリイ・パルティスが食いついた。
「良いですよねぇ。帝国の頃は夜中に抜け出して賭けをこっそり楽しんだものです。師匠に見つかるとめちゃくちゃ怒られましたけどねぇ」
どうやらマリイもこのような遊びに慣れている、というわけではないようだが、嗜み程度には経験があるらしい。
「へぇ、面白いじゃないか。もし私がシリスさんに勝ったら、果物でもつけてくれると嬉しいね」
デザートを注文しようか考えていたところにシリスから誘われたベゴニアは、勝った場合にご褒美をつけて貰えないかシリスに提案する。
「それくらいなら構わないよ。不公平のないように、あたしに勝ったやつ全員にご馳走しようかね」
「え? やった! ベゴニアさんナイス」
シリスがその提案を快諾し、思わぬデザートのチャンスが生まれたことにより、アルラ・ニグラスのやる気もアップする。
「まだ勝てると決まったわけじゃないだろう? ただ、だからといってズルは止しておくれよ」
「ああ、人の命がかかっていたり、大切な何かのために戦うわけでは無いからね。さすがに何でもありでゲームをするのは無粋だろうさ」
シリスに言われるまでもなく、ベゴニアも純粋にゲームに臨むつもりだ。
「俺以外の参加者がみんな素敵なお嬢さんだ! 両手に花すぎる……今日はツイてるな~」
たまたま女性に囲まれる形となったアルマン・アルスターは、ゲームを楽しみにしつつも、また別の意味でもこのシチュエーションを楽しんでいるようだった。
「まずは席順を決めようか。サイコロを2個振って、大きい目を出した順にしようかね」
シリスの呼びかけにより、サイコロを握る参加者たち。
そして、賽は投げられた――。
●
「いきなり六ゾロが出るなんて、幸先がいいですね!」
「ここで運を使っちゃったとも言えるかもよ?」
6の目を2個出したことにより一番の席順になったマリイに、アルラが冷静にツッコミを入れる。
出目が12のマリイを始めとし、7のアルマン、6のベゴニア、4のシリス、3のアルラの順に、参加者達は席に着いた。
「平均は35枚かな……とりあえず3位までには入りたいけれど」
ベゴニアは、大体のメダルの目標枚数を計算しながら、カップに入れたサイコロをカラカラと音を立てて振る。
「じゃあいくよ? 勝負っ!」
シリスの掛け声と共に、一斉にカップを伏せる参加者達。
参加者達はサイコロが自分だけに見えるよう、そっとカップを開いている。
カップの中を覗き込んだ参加者達の反応は様々だ。
「むむ……この出目は」
アルマンはいかにも難しいと思っているのが顔に出ているし。
「ふむん……まぁ、こんなものだろうね」
その一方でベゴニアはポーカーフェイスを貫いている。
「私は振り直しませんよ! ここは一発勝負に賭けます!」
まずはマリイが振り直さないことを宣言する。
「俺はどうしよう……って、んっ!?」
アルマンがカップから視線を上げると――対面に座っているアルラの胸元がしっかりと目に入る。
実を言うと、これもお色気でアルマンの判断を鈍らせようという、アルラの作戦であったりする。
「……えと! 悩むけど、これなら振り直さないほうがいい気が、する!」
これでいて奥手なアルマンは、必死でアルラの胸元から視線を逸らすと、どうにかゲームへの集中を取り戻し、決断を下すことに成功した。
「じゃあ私もこのまま勝負しようじゃないか」
そこでベゴニアもパスを宣言する。
「おや、みんなそれでいいのかい? と言っても、あたしも振り直さないんだけどねえ」
シリスは涼しい顔をしているため、その表情からは考えは読み取れない。
「あれ、みんな振り直さないのね。じゃあ私は振り直しを試してみようかしら」
最後に手番が回ったアルラは、手元のメダルを1枚取ると場の中央に支払う。
アルラが持ち上げたカップの中には1と4の目が並んでいた。
アルラはそのうち1の目のサイコロを残すと、もう片方のサイコロをカップに入れて振り直す。
「そっちを残すということは、最小狙いか。さて、そう上手くいくかな?」
「手番が最後だったし、他の人が全員5以上のサイコロを見せてたら、振り直さなくて済んだんだけどね」
ベゴニアの分析にアルラが答えたところで、全員の手番が終わりとなり、出目の公開に移ることになる。
「オープン!」
シリスの合図により、一斉にカップが開かれる。
「あっ!?」
「ほう……」
アルマンが驚きの声を上げる一方で、ベゴニアが感嘆したような声を上げる。
五人の中で、出目が一番高かったのは、6と4の目で合計10を出したマリイ。
出目が一番低かったのは――マリイを除いた、四人であった。
「まさか4を出したのが四人も居たなんてね」
アルラが呟いた通り、アルマンは2のぞろ目を出し、他の三人は1と3の目を出すことで合計4となっていたのだ。
「中央にあるメダルは7枚ですから、四人に1枚ずつ配って……3枚が持ち越しですか!?」
マリイの計算通り、次回は中央のメダルが9枚からスタートすることになる。
サイコロの女神に見守られたゲームは、まさに波乱の幕開けとなった。
●
1ラウンド目を終えたことで、各自のメダルの数は、次の通りになっていた。
マリイ13枚、アルマン8枚、ベゴニア8枚、シリス8枚、アルラ7枚。
例によってシリスの号令で一斉に振られた賽が、やかましく音を立てた。
2ラウンド目になったことにより、振り直しの有無を宣言する順番はアルマンに移っている。
「こ、これは……」
カップを薄く開いて中を覗いたアルマンは、やはり驚きが表情に出るのを隠せないでいた。
「うん、決めた。俺は振り直さない!」
アルマンが勢いよく宣言すれば。
「ずいぶんと気に入る目が出たようだね。私もパスだよ」
ベゴニアもそれに続き、パスを宣言する。
「あたしもパスかねえ」
シリスも、特に動く気配は見せない。
「私も今回はパスかしら」
1ラウンド目は振り直しを行ったアルラも、今回は振り直しを見送ったようだ。
「あれ、じゃあ誰も振り直さない、ってことですか? ……真ん中に9枚あるので、思い切った勝負するか、ちょっと悩みましたけど」
最後にマリイも振り直しを行わない選択を行なったことにより、2ラウンド目は全員が一発勝負の出目を公開することになった。
まず今回、一番高い出目を出したのはシリス。
シリスは6と4の目を出したことにより、10枚のメダルをストックから入手する。
次に、アルラが4と5の目で合計9と続く。
アルラはこれで十分に高い出目が出たと判断し、振り直しを行わなかったようだ。
そしてマリイが2と3の目を出していて、5枚のメダルを手にする。
「やあ、これはやられたな」
「悪いね、これは俺が貰ってくよ」
ベゴニアは1と3の目で合計4と、小さい出目を出していた。
しかし、アルマンの出目は1と2で合計3、ベゴニアをさらに下回り、中央にある9枚のメダルをかっさらったのだった。
●
2ラウンド目を終え、メダルの枚数はマリイ18枚、アルマン20枚、ベゴニア12枚、シリス18枚、アルラ16枚。
3ラウンド目の宣言順はベゴニアからだ。
「よし、それなら私も振り直しをしてみようじゃないか」
これまでパスを続けていたベゴニアが、ここで動きを見せる。
ベゴニアは2と6の目を公開すると、2の目を残して振り直しを行なった。
「お、さてはあんたは最小狙いだね? それで、狙い通りの目は出たのかい?」
「さあ、どうだろうね?」
シリスからの揺さぶりを、ベゴニアはさらりとかわす。
「じゃあ、あたしはこうするよ!」
シリスもここで初めて振り直しを宣言。
シリスが公開した目は2と5で、シリスは5の目を残して、もう一方のサイコロをカップで振り直した。
「シリスさんは大きい目を狙っているみたいね。私はパスよ」
場合によっては振り直すことをしていたアルラがこうしてパスをするということは、満足のいく出目が出たということだろうか。
「順調に来ていますし、ここは出た目で勝負しましょう!」
マリイはあくまで出たとこ勝負の姿勢を貫く様子だ。
「俺もこのままがいいな!」
そしてアルマンは口に出すまでもなく、良い目が出たぞ、と顔に書いてあった。
「公開!」
シリスの声に合わせ、公開された出目は。
まずいかにも上機嫌なアルマンが5と6で合計11。
次に、シリスが振り直しを行ったことにより5の目が二つとなり、合計10。
そしてアルラが4と5で合計9であった。
「いやあ、振り直しをして同じ目が出ると、肩透かしを食ったような気分になるね」
残念ながらベゴニアは振り直しで狙い通り小さい目を出すことができず、2と6の目で合計8のままとなった。
「じゃあ、この8枚は私のですか? やりました!」
そして5と1の目で合計6を出したマリイが最小となり、マリイに中央の8枚のメダルが転がり込むこととなった。
●
ここでメダル数はマリイ32枚、アルマン31枚、ベゴニア19枚、シリス27枚、アルラ25枚となる。
上位とその他の間に差が目立ってきた4ラウンド目、宣言の開始はシリスから行われた。
「そうだねえ、これなら振り直しはなしでいこうかね」
シリスは今の出目のままが良いと判断したらしく、今度はパスを選択する。
「じゃあ、ってわけでもないけど、私は振り直すよ」
アルラは二つの3の目を公開すると、一方をカップに放り込み、再び振る。
「私は例によってこれで勝負です!」
マリイが元気よくパスを宣言すると。
「振り直さない!」
っていうか振り直すわけがない、と表情が物語っているアルマンが食い気味に宣言を重ねる。
(ふむ……1か2の目を公開した者が居たら、最小狙いはリスクが高いから控えるつもりだったけど)
ベゴニアはアルラが公開した3の目を眺めつつ、心の中で呟く。
「ここは勝負しようか。振り直すよ」
そう言ってベゴニアが公開したのは2と4の目だ。
ベゴニアは2の目を残し、もう一つのサイコロを振り直す。
そして結果は――。
アルマンが堂々の6のぞろ目により合計12。
アルラが振り直しの結果、変わらず3のぞろ目で合計6。
シリスが1と4で合計5。
「おっと、これまたやられたか」
「私は運がよかっただけですよー」
そしてベゴニアが2のぞろ目で合計4を出した中。
2と1の目で合計3を出したマリイが再び最小を取り、8枚のメダルをものにした。
●
最終ラウンドを手前に、手持ちのメダルはマリイ43枚、アルマン43枚、ベゴニア22枚、シリス32枚、アルラ30枚。
5ラウンド目の一番手はアルラだ。
「これだとこうかな」
そう言ってアルラは3と5の目を公開し、今度は5の目を残して振り直しを行った。
「ここまで来たら、最後まで一発勝負を通しますよ!」
マリイが初志貫徹の宣言を行い。
「わっ、すごい」
公開した6と1の目のうち、6の目を残して振り直しをしたアルマンが、感情をもはや顔ではなく声に出し。
「パスかな」
「あたしもパスだね」
ベゴニアとシリスがパスを宣言したところで、出目が公開される。
アルマンが二度目の6のぞろ目により合計12。
マリイが6と5の目による合計11。
ベゴニアが5のぞろ目による合計10。
全体的に出目の高い勝負となる中。
6と3の目により合計9となったシリスに、4と5の目により合計9となったアルラが並んでしまい、中央のメダルは4枚ずつの山分けとなった。
●
そして運命の第二ゲーム。
ここまで貯めたメダルの枚数に従い、参加者たちは席を移る。
54枚のマリイ、そして同じく54枚のアルマン、そして45枚のシリス。
そこに42枚のアルラが続き、最後に32枚のベゴニアが控える。
「厳しい戦いになってしまったが、さて」
「ここからが本番ですよ、切り替えていきましょー!」
方策を練ろうと考え込むベゴニアに対し、励ますマリイ
「私からですね。ここは勝負です! 私は賭けられるだけ……50枚を賭けます!」
ここにきて、マリイは大胆に攻めていく。
「そして賭ける目は6! 個数は……4個以上?」
しかし最後の個数を宣言するところだけ、マリイが弱気に聞こえたのは、気のせいではないだろう。
「本気かい? いや、それもキミの決断なら見守るよ」
ベゴニアが驚くのも無理はない。
マリイの宣言が成功する確率の見立ては、およそ6.97%である。
不可能とは言えないが、分が悪い賭けであることは間違いない。
「ちょこっとだけ多めに賭けて、残りは手元に持っておこうかな……枚数で冒険したら後は安定策! 我ながらビビりぃい!」
アルマンは30枚のメダルを賭け、4以上の目を3個以上出すと宣言する。
「いいのかい? みんな失敗したら、あたしが勝っちまうよ?」
不敵に笑ったシリスは5枚だけのメダルを賭け、1個のサイコロで4以上の目を出すと宣言。
「まぁ失うものもないし、ちょっとは冒険してみましょ」
10枚のメダルを賭けたアルラの宣言は、5以上の目を1個以上出すというものだ。
「一位のみを狙うなら6の目が2個以上出るのに賭けるのだけれど。私はそこまでギャンブラーにはなれないからね」
そして最後にベゴニアが30枚を賭け、6の目を1個以上出すと宣言を行う。
「揃ったね? じゃあ振っていくよ?」
「私の魂を込めたサイコロちゃん達! いけっ! いけー!」
シリスの確認を合図に、それぞれサイコロを手に取る参加者達。
都合10個のサイコロを手にしたマリイの叫びが女神の賽子亭に響いた時。
――サイコロの女神が、悪戯な微笑みを見せた気がした。
●
「うぁああん! ぐやじぃ、負げだよぉおお……魂が弱かった! 最後弱気になったから……始める前から負けてたんだぁ!」
「あはは、まさかほんとに全員が宣言に失敗するなんてねえ」
悔しがるマリイの横で、苦笑いしながら頬を掻くシリス。
あの後、それぞれが出した目は。
ベゴニアが5・3・1・2・4・3。
シリスが3。
アルラが1・1。
アルマンが3・3・3・3・4・5。
マリイが1・5・3・5・4・4・1・6・3・2。
結果、40枚のメダルを手元に残したシリスが、32枚のアルラを上回り、優勝を手にしてしまったのだ。
「やぁ、面白かったよシリスさん。また、何かあったら誘ってくれると嬉しいな」
結果としては勝つことのできなかったベゴニアだが、それでも表情は爽やかだ。
「私も楽しかったわ。勝てなかったのは悔しいけどね」
惜しいところで優勝を逃したアルラも晴れやかな顔でシリスに感想を伝える。
「楽しかった! けど、自分のビビり具合も再確認した気がするな~」
アルマンの言うように、こういうゲームは臨む者の性格を浮き彫りにする効果があるのかもしれない。
「とっても楽しかったです! 是非もう一戦……じゃなかった、またご一緒できたら嬉しいです!」
ここにきて立ち直ったマリイも、最後は笑顔で礼を述べる。
そう、ゲームは参加者がみんな楽しむのが一番なのだ――。
「ゲームですか!? はいはいはーい! 是非参加させてくださーい!」
シリスの誘いに、朝食を取っていたマリイ・パルティスが食いついた。
「良いですよねぇ。帝国の頃は夜中に抜け出して賭けをこっそり楽しんだものです。師匠に見つかるとめちゃくちゃ怒られましたけどねぇ」
どうやらマリイもこのような遊びに慣れている、というわけではないようだが、嗜み程度には経験があるらしい。
「へぇ、面白いじゃないか。もし私がシリスさんに勝ったら、果物でもつけてくれると嬉しいね」
デザートを注文しようか考えていたところにシリスから誘われたベゴニアは、勝った場合にご褒美をつけて貰えないかシリスに提案する。
「それくらいなら構わないよ。不公平のないように、あたしに勝ったやつ全員にご馳走しようかね」
「え? やった! ベゴニアさんナイス」
シリスがその提案を快諾し、思わぬデザートのチャンスが生まれたことにより、アルラ・ニグラスのやる気もアップする。
「まだ勝てると決まったわけじゃないだろう? ただ、だからといってズルは止しておくれよ」
「ああ、人の命がかかっていたり、大切な何かのために戦うわけでは無いからね。さすがに何でもありでゲームをするのは無粋だろうさ」
シリスに言われるまでもなく、ベゴニアも純粋にゲームに臨むつもりだ。
「俺以外の参加者がみんな素敵なお嬢さんだ! 両手に花すぎる……今日はツイてるな~」
たまたま女性に囲まれる形となったアルマン・アルスターは、ゲームを楽しみにしつつも、また別の意味でもこのシチュエーションを楽しんでいるようだった。
「まずは席順を決めようか。サイコロを2個振って、大きい目を出した順にしようかね」
シリスの呼びかけにより、サイコロを握る参加者たち。
そして、賽は投げられた――。
●
「いきなり六ゾロが出るなんて、幸先がいいですね!」
「ここで運を使っちゃったとも言えるかもよ?」
6の目を2個出したことにより一番の席順になったマリイに、アルラが冷静にツッコミを入れる。
出目が12のマリイを始めとし、7のアルマン、6のベゴニア、4のシリス、3のアルラの順に、参加者達は席に着いた。
「平均は35枚かな……とりあえず3位までには入りたいけれど」
ベゴニアは、大体のメダルの目標枚数を計算しながら、カップに入れたサイコロをカラカラと音を立てて振る。
「じゃあいくよ? 勝負っ!」
シリスの掛け声と共に、一斉にカップを伏せる参加者達。
参加者達はサイコロが自分だけに見えるよう、そっとカップを開いている。
カップの中を覗き込んだ参加者達の反応は様々だ。
「むむ……この出目は」
アルマンはいかにも難しいと思っているのが顔に出ているし。
「ふむん……まぁ、こんなものだろうね」
その一方でベゴニアはポーカーフェイスを貫いている。
「私は振り直しませんよ! ここは一発勝負に賭けます!」
まずはマリイが振り直さないことを宣言する。
「俺はどうしよう……って、んっ!?」
アルマンがカップから視線を上げると――対面に座っているアルラの胸元がしっかりと目に入る。
実を言うと、これもお色気でアルマンの判断を鈍らせようという、アルラの作戦であったりする。
「……えと! 悩むけど、これなら振り直さないほうがいい気が、する!」
これでいて奥手なアルマンは、必死でアルラの胸元から視線を逸らすと、どうにかゲームへの集中を取り戻し、決断を下すことに成功した。
「じゃあ私もこのまま勝負しようじゃないか」
そこでベゴニアもパスを宣言する。
「おや、みんなそれでいいのかい? と言っても、あたしも振り直さないんだけどねえ」
シリスは涼しい顔をしているため、その表情からは考えは読み取れない。
「あれ、みんな振り直さないのね。じゃあ私は振り直しを試してみようかしら」
最後に手番が回ったアルラは、手元のメダルを1枚取ると場の中央に支払う。
アルラが持ち上げたカップの中には1と4の目が並んでいた。
アルラはそのうち1の目のサイコロを残すと、もう片方のサイコロをカップに入れて振り直す。
「そっちを残すということは、最小狙いか。さて、そう上手くいくかな?」
「手番が最後だったし、他の人が全員5以上のサイコロを見せてたら、振り直さなくて済んだんだけどね」
ベゴニアの分析にアルラが答えたところで、全員の手番が終わりとなり、出目の公開に移ることになる。
「オープン!」
シリスの合図により、一斉にカップが開かれる。
「あっ!?」
「ほう……」
アルマンが驚きの声を上げる一方で、ベゴニアが感嘆したような声を上げる。
五人の中で、出目が一番高かったのは、6と4の目で合計10を出したマリイ。
出目が一番低かったのは――マリイを除いた、四人であった。
「まさか4を出したのが四人も居たなんてね」
アルラが呟いた通り、アルマンは2のぞろ目を出し、他の三人は1と3の目を出すことで合計4となっていたのだ。
「中央にあるメダルは7枚ですから、四人に1枚ずつ配って……3枚が持ち越しですか!?」
マリイの計算通り、次回は中央のメダルが9枚からスタートすることになる。
サイコロの女神に見守られたゲームは、まさに波乱の幕開けとなった。
●
1ラウンド目を終えたことで、各自のメダルの数は、次の通りになっていた。
マリイ13枚、アルマン8枚、ベゴニア8枚、シリス8枚、アルラ7枚。
例によってシリスの号令で一斉に振られた賽が、やかましく音を立てた。
2ラウンド目になったことにより、振り直しの有無を宣言する順番はアルマンに移っている。
「こ、これは……」
カップを薄く開いて中を覗いたアルマンは、やはり驚きが表情に出るのを隠せないでいた。
「うん、決めた。俺は振り直さない!」
アルマンが勢いよく宣言すれば。
「ずいぶんと気に入る目が出たようだね。私もパスだよ」
ベゴニアもそれに続き、パスを宣言する。
「あたしもパスかねえ」
シリスも、特に動く気配は見せない。
「私も今回はパスかしら」
1ラウンド目は振り直しを行ったアルラも、今回は振り直しを見送ったようだ。
「あれ、じゃあ誰も振り直さない、ってことですか? ……真ん中に9枚あるので、思い切った勝負するか、ちょっと悩みましたけど」
最後にマリイも振り直しを行わない選択を行なったことにより、2ラウンド目は全員が一発勝負の出目を公開することになった。
まず今回、一番高い出目を出したのはシリス。
シリスは6と4の目を出したことにより、10枚のメダルをストックから入手する。
次に、アルラが4と5の目で合計9と続く。
アルラはこれで十分に高い出目が出たと判断し、振り直しを行わなかったようだ。
そしてマリイが2と3の目を出していて、5枚のメダルを手にする。
「やあ、これはやられたな」
「悪いね、これは俺が貰ってくよ」
ベゴニアは1と3の目で合計4と、小さい出目を出していた。
しかし、アルマンの出目は1と2で合計3、ベゴニアをさらに下回り、中央にある9枚のメダルをかっさらったのだった。
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2ラウンド目を終え、メダルの枚数はマリイ18枚、アルマン20枚、ベゴニア12枚、シリス18枚、アルラ16枚。
3ラウンド目の宣言順はベゴニアからだ。
「よし、それなら私も振り直しをしてみようじゃないか」
これまでパスを続けていたベゴニアが、ここで動きを見せる。
ベゴニアは2と6の目を公開すると、2の目を残して振り直しを行なった。
「お、さてはあんたは最小狙いだね? それで、狙い通りの目は出たのかい?」
「さあ、どうだろうね?」
シリスからの揺さぶりを、ベゴニアはさらりとかわす。
「じゃあ、あたしはこうするよ!」
シリスもここで初めて振り直しを宣言。
シリスが公開した目は2と5で、シリスは5の目を残して、もう一方のサイコロをカップで振り直した。
「シリスさんは大きい目を狙っているみたいね。私はパスよ」
場合によっては振り直すことをしていたアルラがこうしてパスをするということは、満足のいく出目が出たということだろうか。
「順調に来ていますし、ここは出た目で勝負しましょう!」
マリイはあくまで出たとこ勝負の姿勢を貫く様子だ。
「俺もこのままがいいな!」
そしてアルマンは口に出すまでもなく、良い目が出たぞ、と顔に書いてあった。
「公開!」
シリスの声に合わせ、公開された出目は。
まずいかにも上機嫌なアルマンが5と6で合計11。
次に、シリスが振り直しを行ったことにより5の目が二つとなり、合計10。
そしてアルラが4と5で合計9であった。
「いやあ、振り直しをして同じ目が出ると、肩透かしを食ったような気分になるね」
残念ながらベゴニアは振り直しで狙い通り小さい目を出すことができず、2と6の目で合計8のままとなった。
「じゃあ、この8枚は私のですか? やりました!」
そして5と1の目で合計6を出したマリイが最小となり、マリイに中央の8枚のメダルが転がり込むこととなった。
●
ここでメダル数はマリイ32枚、アルマン31枚、ベゴニア19枚、シリス27枚、アルラ25枚となる。
上位とその他の間に差が目立ってきた4ラウンド目、宣言の開始はシリスから行われた。
「そうだねえ、これなら振り直しはなしでいこうかね」
シリスは今の出目のままが良いと判断したらしく、今度はパスを選択する。
「じゃあ、ってわけでもないけど、私は振り直すよ」
アルラは二つの3の目を公開すると、一方をカップに放り込み、再び振る。
「私は例によってこれで勝負です!」
マリイが元気よくパスを宣言すると。
「振り直さない!」
っていうか振り直すわけがない、と表情が物語っているアルマンが食い気味に宣言を重ねる。
(ふむ……1か2の目を公開した者が居たら、最小狙いはリスクが高いから控えるつもりだったけど)
ベゴニアはアルラが公開した3の目を眺めつつ、心の中で呟く。
「ここは勝負しようか。振り直すよ」
そう言ってベゴニアが公開したのは2と4の目だ。
ベゴニアは2の目を残し、もう一つのサイコロを振り直す。
そして結果は――。
アルマンが堂々の6のぞろ目により合計12。
アルラが振り直しの結果、変わらず3のぞろ目で合計6。
シリスが1と4で合計5。
「おっと、これまたやられたか」
「私は運がよかっただけですよー」
そしてベゴニアが2のぞろ目で合計4を出した中。
2と1の目で合計3を出したマリイが再び最小を取り、8枚のメダルをものにした。
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最終ラウンドを手前に、手持ちのメダルはマリイ43枚、アルマン43枚、ベゴニア22枚、シリス32枚、アルラ30枚。
5ラウンド目の一番手はアルラだ。
「これだとこうかな」
そう言ってアルラは3と5の目を公開し、今度は5の目を残して振り直しを行った。
「ここまで来たら、最後まで一発勝負を通しますよ!」
マリイが初志貫徹の宣言を行い。
「わっ、すごい」
公開した6と1の目のうち、6の目を残して振り直しをしたアルマンが、感情をもはや顔ではなく声に出し。
「パスかな」
「あたしもパスだね」
ベゴニアとシリスがパスを宣言したところで、出目が公開される。
アルマンが二度目の6のぞろ目により合計12。
マリイが6と5の目による合計11。
ベゴニアが5のぞろ目による合計10。
全体的に出目の高い勝負となる中。
6と3の目により合計9となったシリスに、4と5の目により合計9となったアルラが並んでしまい、中央のメダルは4枚ずつの山分けとなった。
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そして運命の第二ゲーム。
ここまで貯めたメダルの枚数に従い、参加者たちは席を移る。
54枚のマリイ、そして同じく54枚のアルマン、そして45枚のシリス。
そこに42枚のアルラが続き、最後に32枚のベゴニアが控える。
「厳しい戦いになってしまったが、さて」
「ここからが本番ですよ、切り替えていきましょー!」
方策を練ろうと考え込むベゴニアに対し、励ますマリイ
「私からですね。ここは勝負です! 私は賭けられるだけ……50枚を賭けます!」
ここにきて、マリイは大胆に攻めていく。
「そして賭ける目は6! 個数は……4個以上?」
しかし最後の個数を宣言するところだけ、マリイが弱気に聞こえたのは、気のせいではないだろう。
「本気かい? いや、それもキミの決断なら見守るよ」
ベゴニアが驚くのも無理はない。
マリイの宣言が成功する確率の見立ては、およそ6.97%である。
不可能とは言えないが、分が悪い賭けであることは間違いない。
「ちょこっとだけ多めに賭けて、残りは手元に持っておこうかな……枚数で冒険したら後は安定策! 我ながらビビりぃい!」
アルマンは30枚のメダルを賭け、4以上の目を3個以上出すと宣言する。
「いいのかい? みんな失敗したら、あたしが勝っちまうよ?」
不敵に笑ったシリスは5枚だけのメダルを賭け、1個のサイコロで4以上の目を出すと宣言。
「まぁ失うものもないし、ちょっとは冒険してみましょ」
10枚のメダルを賭けたアルラの宣言は、5以上の目を1個以上出すというものだ。
「一位のみを狙うなら6の目が2個以上出るのに賭けるのだけれど。私はそこまでギャンブラーにはなれないからね」
そして最後にベゴニアが30枚を賭け、6の目を1個以上出すと宣言を行う。
「揃ったね? じゃあ振っていくよ?」
「私の魂を込めたサイコロちゃん達! いけっ! いけー!」
シリスの確認を合図に、それぞれサイコロを手に取る参加者達。
都合10個のサイコロを手にしたマリイの叫びが女神の賽子亭に響いた時。
――サイコロの女神が、悪戯な微笑みを見せた気がした。
●
「うぁああん! ぐやじぃ、負げだよぉおお……魂が弱かった! 最後弱気になったから……始める前から負けてたんだぁ!」
「あはは、まさかほんとに全員が宣言に失敗するなんてねえ」
悔しがるマリイの横で、苦笑いしながら頬を掻くシリス。
あの後、それぞれが出した目は。
ベゴニアが5・3・1・2・4・3。
シリスが3。
アルラが1・1。
アルマンが3・3・3・3・4・5。
マリイが1・5・3・5・4・4・1・6・3・2。
結果、40枚のメダルを手元に残したシリスが、32枚のアルラを上回り、優勝を手にしてしまったのだ。
「やぁ、面白かったよシリスさん。また、何かあったら誘ってくれると嬉しいな」
結果としては勝つことのできなかったベゴニアだが、それでも表情は爽やかだ。
「私も楽しかったわ。勝てなかったのは悔しいけどね」
惜しいところで優勝を逃したアルラも晴れやかな顔でシリスに感想を伝える。
「楽しかった! けど、自分のビビり具合も再確認した気がするな~」
アルマンの言うように、こういうゲームは臨む者の性格を浮き彫りにする効果があるのかもしれない。
「とっても楽しかったです! 是非もう一戦……じゃなかった、またご一緒できたら嬉しいです!」
ここにきて立ち直ったマリイも、最後は笑顔で礼を述べる。
そう、ゲームは参加者がみんな楽しむのが一番なのだ――。
マスターコメント
お疲れ様でした。空色みなもです。
このたびは当シナリオにご参加頂き、誠にありがとうございました!
ええ、忖度しなかった結果がまさかのこれでした。
しかし勝敗こそこうなりましたが、皆さん実に生き生きとゲームを楽しんでくださいましたので、ゲーム会としては大成功なのです。大成功といったら、大成功なのです。
また皆さんにシナリオ参加して頂けるのを心よりお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ショートシナリオ普通 報酬:無し4 / 4〜4人
2020年12月02日 17時00分13秒 公開
大成功