新米鋳金師、山を行く
真柄 葉
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シナリオID:246
オープニング
リブラネスタ旧市街にある工房街の一角。
真夏と変わらぬ熱気の中、鋳金師達が額に汗し作品を作り続けていた。
「あぁ!? ヴェルクリエに行くだぁ!?」
そんな工房の中、親方のしわがれた声が響く。
「はいっ! 私、もっともっと自分の腕を磨きたいんです! だから、技術者のたくさん集まるヴェルクリエで修業したいんです!」
そんな親方の前に、まだ年若い新米の鋳金師の少女『漣々』が立って訴えかけていた。
「なんだ、この工房じゃ不満だってのか?」
「そ、そんなんじゃないんです! ここの工房には一人前――一歩手前まで育ててもらいましたし、とっても感謝してるんですけど、もっと違った世界を見て見たいっていうか」
「この間の冒険者達との一件か」
「えっと……それも少しはあるかもしれませんけど……違うんです! 純粋にもっと自分の力を試してみたいっていうか、新しい技術に触れてインスピレーションを得たいというか……」
まごまごと手もみしながら見上げてくる漣々に、親方は困り顔。
「まぁ、確かにここじゃインスピレーションは起きにくいが……」
と、親方が工房を見渡す。
この工房は主にリブラネスタの一般庶民に向けた家庭用品や紋具の製作を行っている。
いわゆる日用雑貨だ。
「いえ、あの。こういう日用品がとても大事だって言うのは、十分理解したつもりなんです! それで、沢山考えて、やっぱり私、夢があって……! それで武者修行というか、そういうのをやってみたくて!」
漣々は何とか承諾してもらおうと、語彙力のないながらも懸命に訴えかけた。
「……確かに武者修行は悪くない」
「え……?」
そんな漣々に、親方は諦めた様に声をかける。
「俺も若い頃にはいろんな都市を回ったもんだ」
「えっ! あの出不精の親方にそんな行動力が――いたいっ!!」
目玉からお星様が飛んでいくほどの衝撃に、漣々は頭を押さえる。
「それで? ヴェルクリエに行くとして、当てでもあるのか?」
「ありません!」
親方の問いかけに、眩暈状態から復活した漣々は自信満々に答えた。
「お前なぁ……一体どうやって修行するつもりだったんだ」
「それは、工房に殴りこんで……」
「殴りこむなバカ! はぁ……わかったわかった。それじゃ紹介状を書いてやるよ」
「えっ!? 親方、字が書けたんで――――いだいぃぃぃぃぃ!?」
ごちんと頭から鳴ったいい音に、漣々はうごごごとうずくまる。
「ちょっと待ってろ」
そう言ってうずくまる漣々を置いて親方は奥の部屋へと下がっていった。
しばらくして戻ってきた親方の手には、一通の文が握られている。
「ほれ、ここに書いてある工房を目指せ。俺の名前を出せば悪いようにはしないだろう」
「おぉ! ありがとうございます。……これはまた随分、汚い字で――ななな、何でもありません!」
振り上げられた拳から高速で逃げた漣々は、文を大切に懐にしまった。
「ったく。で、どうやって行く気だ? 旅費はあるのか?」
「ありません!」
「お前なぁ……ここからヴェルクリエまでどんだけあると思ってるんだ。馬車を乗り継いだって一週間やそこらじゃ着かないぞ?」
「えっ!? そんなに遠いんですか!」
「知らなかったのかよ……」
ムムムと唸る漣々に、親方は肩を竦めて落胆する。
「……お前その性格どうにかしないと、そのうち死ぬぞ?」
「えっー! だって、歩いていけばそのうち着くのかなって……」
「そりゃ街道を進めば着くだろうが……ったく、面倒ばっかりかけやがって」
そう言うと親方は、漣々に向けちょいちょいと手を出せと促す。
「はい?」
「ほら持っていけ。退職金代わりだ」
と、軽くない革袋を漣々の掌の上に置いた。
「いいい、いいんですか!?」
「今までよくやってくれたからな。餞別込みだ」
「あ、ありがとうございます!!」
漣々は少し照れ臭そうに頬を掻く親方に深く礼をした。
「まぁ、それだけあれば、船でも馬車でもなんでも使ってヴェルクリエまで行けるだろ――」
「はい! これだけあれば冒険者さんを雇っていけますね!」
「おい……俺の話を聞いていたか?」
「こうしちゃいられない! 早速準備して出立しますね! 親方ありがとうー!!」
最早親方の声は漣々に届くことなく、さっさとその場を後にした。
「どう行くかは自由だけどよ……ったく、結局歩いていくのかよ……」
親方は大きく肩を落とした。
●ドワーフ王国のとある桟道
「話には聞いてたけど、すごい所だね、ドワーフ王国って」
崖に無理やり設置されたような心細い道を、漣々と冒険者は慎重に渡っていく。
「うひぃ……これ落ちたら絶対死ぬぅ……」
足場となるのはただの木の板。それも長い間風雨にさらされたのか所々痛んでいたりする。更にはその先の谷だ。覗き込んでも底が見えないくらいに高い。
「ゆっくり行こう、ね。べ、別に怖いわけじゃないけど、足を滑らせる危険もあるかもしれないし……!」
何処か取り繕う様に早口で喋る漣々。そんな漣々を安心させようと、冒険者達が口を開こうとした、その時。
「ようこそ、死の道へ」
「えっ?」
突然かけられたドスの利いた声に、漣々だけでなく冒険者達まで一瞬動きが止まる。
「ど、どこから?」
漣々は声の主を探そうと前後左右と頭を振るが、どこにも見当たらない。
「荷物を置いていきな。命まではとらねぇでやるよ」
今度ははっきり聞こえた。前でも後ろ手もなく――。
「し、下から!?」
漣々の声と同調する様に、心細い床板に『下』から手がかかった。
一人、また一人と手の数は増えていき、前後を挟まれる形で合計10人もの山賊が姿を現す。
「おっと、抵抗しない方がいいぜ? こんな場所で暴れちゃ、谷に落としてくれって言ってるようなもんだからな」
粗野な笑い声を上げる山賊たちは、けっして油断する事無く、前後からじりじりと距離を詰めてくる。
こちらが冒険者だとわかっているのだろう。それでもなお襲うと決断したのは、それほどこの場所での襲撃に自信があるからに他ならない。
冒険者達は油断なく武器を構えると、漣々を真ん中に挟み山賊たちと相対する。
ここに桟道での攻防戦が始まった――。
解説
マスターより
リプレイ
「うん、どうしたの改まって?」
サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブの問いかけに、漣々は振り向いて首をかしげる。
「ほんとに今更で申し訳ないんだけどさぁ」
「うんうん」
「絶対、道のチョイス間違ってるよねぇぇーーー!!」
サフィラの絶叫は底も見えぬ谷に溶けて消えた――。
「道幅はそこそこだけど落ちたら終わりだから、ゆっくり慎重に行くね」
先導するバクル・バスリーに続き、一行は桟道へと足を踏み入れた。
左側を見上げれば断崖絶壁。右側に視線を落とせば底なしの谷。
そんな場所を進むために唯一の手段が、この桟道だった。
「俺達はまだいいけどよ。一般人にこれはきつすぎるよな。なんでこんな道が作られたんだ?」
「山の民が使っていた生活道、でしょうか。今はあまり利用している者はいないようですが」
ハヤト=ガラン=ヴォルファングの疑問に、セツリが答える。
セツリが言う様に、この桟道に入ってからすれ違った人は誰もいない。
「ほんと、なんでこの道にしたの? 漣々ちゃん」
「えっと、一番近いかなって……」
と、エミリア・シバが聞くと、漣々は命綱の鎖にしがみつきながら懐から一枚の地図を取り出した。それはリブラネスタからヴェルクリエまで一本の直線が引かれた地図だった。
「……いえ、おねえさん達も悪かったわね。あまりに漣々ちゃんが自信満々に歩いていくものだから、てっきり道を熟知しているものとばかり思っていたもの」
なぜか痙攣する眉間をもみほぐしながらエミリアが答える。
「あはは……漣々さんって、なかなか個性的っていうか、面白い人だね」
そうかな? と首をかしげる漣々に、リサ・ベイカーは苦笑い。
「でも、こういう道って何か予感させますよね。逃げ場のない断崖のこう、必ず何か出る予感――」
「わーわー! それ以上言っちゃダメ! ダメだ……って……」
と、リサが口にした予感とやらをサフィラが必死で掻き消そうとするも――。
「へへっ! 大人しく荷物を置いていきな。そうしたら命までは取らねぇでやるよ!」
「あー……」
「あー、うん……」
「ねー……」
予想を微塵も裏切らない展開に、一同げんなり。
「出やがったな! 俺様がここにいると知っての襲撃とはいい度胸だぜ!」
いや、一人を除いて――。
「けけ! 威勢のいいゴブリンがいるぜ」
「ありゃ冒険者だな。いいカモが現れやがったぜ」
次々と現れる山賊達。その数は前に6人、後ろに4人。桟道の『下』からゾロゾロと姿を現してくる。
「申し訳ないけど、私達は貴方達の欲しがるようなものは何も持っていないわよ。大人しく通してくれるとありがたいんだけど」
囲まれつつある中、エミリアが後方に現れたボスらしい男に声をかけた。
「ははっ! こういう『裏道』を通る奴は、だいたいそう言うんだよ! ――訳ありだからな」
正規のルートを通れない者が利用する道。そこには大概金の匂いが漂っている。そう、敵の首魁は言っているのだ。
「どうしよう。地図に真っ直ぐ線を引いたらこの道でしたって言えない雰囲気だよ?」
「言ったとしても信じてもらえないでしょうね」
言いながらバクルとセツリがじりじりと漣々を庇う様に後退する。
「遠慮なんていりませんっ! 盗賊山賊の類は、全て返り討ちと相場が決まっているんですっ!」
「おっ、気が合うな! 俺様もまったく同意見だぜ!」
ふんすと鼻息を荒くするリサ、そしてうんうんと頷くハヤト。
そんな一行にじりじりと詰め寄りながら、山賊は口を開く。
「おっと、無駄な抵抗はよしな。こんな場所で暴れちゃ谷に落としてくれと言って――」
「ターーーイム!!」
「……は?」
いざ決め台詞を、というタイミングでサフィラの手がT字を刻んだ。
「はい、バクルン、今のうちに準備だ!」
「え……? あ、うん!」
サフィラにトンと肩を叩かれ、呆気に取られていたバクルが急いでロープを取り出した。
「漣々さん、ちょっとごめんね。ぼくと結んじゃうよ」
返事を待たず、バクルは素早く自分と漣々をロープで繋ぐ。
「よし、結べたね。サフィラさん、こっちは準備できたよ!」
「はいっ! それじゃぁ――」
バクルの合図に、山賊達と対峙していたサフィラが。
「レディー、ファイっ!」
腕を交差させ――桟道の戦いが幕を開けた!
●
「束縛せよ、光の檻!!」
戦闘開始と同時に、リサの【光縛封】が後方4人を捕えようと桟道に光の六角柱を打ち立てる。
「一人逃がしました、ボスですっ!」
「上出来だっ!」
それに合わせるように、ハヤトは桟道下へと潜り込むと【壁歩き】【疾風足】を駆使し、光の檻の真下を通り抜け――。
「へへっ、あんたがボスか」
「ちっ」
光の檻の反対側へと躍り出たハヤトが、一人檻から逃れたボスと対峙した。
一方、前方では――。
「今のうちに!」
光の檻が機能している僅かな時間の間に、リサはバクルとセツリに【堅甲】を施し。
「大丈夫よ。見えてるので全部みたい」
エミリアが【超聴覚】と【天眼】で周囲を隙なく探る。
「それじゃ、いくよ」
バクルの言葉に頷いた5人は、ゆっくりと山賊達との距離を詰めていく。
「挟み撃ちは失敗だったようですが、それでもかかってくるのなら、私達がお相手します」
木の槍を隙なく構え、セツリが山賊達を睨み付け。
「近づくなら、ぼくが薙ぎ払ってやるんだぞ!」
バクルがぶんっと斧を一振りし、山賊達と対峙した。
「消えますっ!」
そして、リサの声と共に――光の檻が消滅した。
●
檻の消えた瞬間、囚われていた3人の山賊が動き出す。
ボスと対峙しているハヤトへ、背後から襲い掛かろうと一斉に飛び出した。
「ボスっ! 今行きます!」
「馬鹿野郎! 後ろだ!」
しかし、ボスの声に3人はハッとなる。
「ざぁんねん。少し遅かったわね」
「待ってたのは、あなた達だけじゃないんですからねっ!」
声は耳元から。気付いた時には真横にエミリアの姿があった。
「なっ!?」
と、声を上げた時にはすでに遅い。
後方からリサの放った魔矢が一人の首元を撃ち、意識を刈り取り、エミリアの二刃がもう一方の首筋に宛がわれる。
「動くと落ちちゃうわよ?」
壁際へと押し付けられた一人は、降参とばかりに両手を上げ武器を落とす。
「くそっ! お前等よくも!」
鎖を武器にする一人が、エミリアに囚われた仲間を助けようと振り返るも――。
「さっき後ろだって注意されたところだろうが!」
高速で移動してきたハヤトの後ろ回し蹴りをもろに受け、谷底へと落ちて行った。
●
同じ頃、前方は黒い煙幕で覆われていた。
「ごほごほっ! 漣々さん、大丈夫!?」
「う、うんっ!」
バクルの呼びかけに漣々が答える。どうやら漣々の方までは煙が及んでいないらしい。
「足元に気を付けてください! 出来るだけ壁側へ! 攻撃が来ます!」
同じく煙の中に囚われた、セツリの声が聞こえた。
「へへ、いい勘してるが、これをかわせるかな!」
そして、響いた声と同時に煙幕を割って鎖が飛んできた。
「くっ!」
それを何とか盾で防いだバクル。しかし、攻撃は次々と煙を割り絶え間なくバクルとセツリの盾を打つ。さらには、鎖に散らされ煙幕が少しでも薄くなると、追加の煙玉が飛んでくるのだ。
「くぅ! あの鎖、じゃ・ま!」
一方、煙幕の横、足場のない空中から接近を試みるサフィラ。
一時は、伸びきった鎖を足場に【壁歩き】をとも考えたが、体重を支えられるほどの強度はない。
それでも【エアーライド】と【疾風足】を駆使しつつ、何度も肉薄はするものの、鎖の攻撃に阻まれ決定的な一撃を繰り出せずにいた。
「これが必勝パターンですか……!」
好転せぬ戦況に、セツリが苦しそうにうめく。
一向に晴れない煙と鎖の雨。前方を固める二人は、徐々に押されていた。
●
「さてと、お仲間はいなくなったぜ」
再び後方で隙なくボスと対峙するハヤトは圧力を強めていく。
「はっ、なかなかやるな!」
しかし、ボスは臆するどころか、逆にハヤトの威勢を跳ね返さんばかりに圧を増した。
「降伏するなら今の内だぜ? これ以上、谷に落ちていくお仲間を見たくねぇだろ?」
「お前こそ動けなくてつまらなさそうじゃねぇか。いいんだぜ、加勢に行っても」
「はっ! そんな安い挑発に乗るかよ!」
二人は互いに一歩も引きさがらず舌戦を続ける。後方はまだ決着の糸口を見いだせていなかった――。
●
前後の戦場のほぼ中央、煙幕のぎりぎり外で、漣々を守りつつサポートに徹していたリサは――。
「もぉ! 卑怯な攻撃ばかりっ!」
とっても怒っていた。
後方こそ戦局は膠着しているが、前方が押されている。
しかも、それがリサの大っ嫌いな卑怯な手でだ。
「そっちがその気なら、わたしにも考えがありますっ!」
「え……リサさん?」
「ちょっとだけ待ってて! あ、あとね、目を閉じててほしいな。わたし、少しだけ悪い子になってくるからっ!」
漣々にそう言って、リサはエミリアに向き直る。
「何か考えがあるのね。いいわ、いってらっしゃい」
「エミリアさんもできれば目をつぶっててくださいね!」
「ふふっ、ごめんなさいね。面白そうだから、ばっちり目を開けておくわ」
「うっ、むむむ……」
口をとがらせるリサの背を、エミリアは笑顔で押した。
●
「バクルくん、一つ試したい案があります」
「え?」
煙幕を抜けて襲い掛かってくる鎖に防戦一方の二人。
そんな中、セツリが小声でバクルに声をかけた。
「この状況を打破できるかもしれません」
「教えてっ! ぼくに手伝える?」
「はい、君の位置感覚が頼りです」
そう言うとセツリは、徐に鎖を弾くために使っていた槍を、床板の隙間へと差し込んだ。
「えっ、何をしてるの!?」
「しっ。少し静かに――来ます、3,2,1――」
――ジャラジャラ!
カウント通り鎖が煙を割って襲い掛かり、突き立てた槍に絡みついた。セツリはじっと攻撃に耐えていた間に、相手が鎖を放つパターンを記憶していたのだ。
「バクルくん、今です!」
「任せてっ! 相手の位置はばっちり覚えてるから!」
セツリの声に素早く反応したバクルは、槍に巻き付いた鎖を伝い、煙幕を抜けると先頭に居た山賊に体当たりをかます。
「弾け、魔弾!」
そして、バクルの突破は期せずしてリサの【魔矢】とタイミングが重なった。
リサの【魔矢】は乱戦の煙を狙ったわけでなく、崖の壁面を削り取るように放たれる。
魔力の矢は岩を削り、それが礫となって山賊達に襲い掛かったのだ。
「くそっ!」
虚を突かれた山賊達は、絶え間なく続けていた攻撃の手を止めた。
事態は一気に好転した。期せずして連携となった攻撃により煙幕が攪拌され、視界が徐々に回復していく。
「これで仕切り直しです」
突き立てた槍を抜き、セツリが構える。
「ふんっ! 何度でも同じ目に遭わせてやるぜっ!」
一方、再び対峙する山賊は、再び優位を作ろうとすぐさまスリング使いによる攻撃を始め――。
「ほっ!」
「なっ!?」
煙玉はなぜか狙いを外れ谷へ落ちていく。
「ちっ、もう一度だ!」
「ほいっ!」
「なっ!? くそ!」
「はっ!」
「げげっ!? 一体どうなってやがる!」
「とうっ!」
「なんだとぅ!?」
山賊達が放ってくる煙玉や撒き菱は、サフィラの摩訶不思議な力【念動力】によって、尽く軌道を逸らされ谷底へと落下していった。
●
ここからの戦いは一方的であった。
スリングの援護を無効化された山賊はなんとか挽回を計ろうと、桟道の上下を利用し攻撃転じるも、サフィラとエミリアの立体的な機動戦術により、思うように攻撃へと繋がらない。
しかもその間にバクルとセツリ、そしてリサが加わった戦線が距離を詰めていく。
5人の連携により、山賊はまた一人、また一人と谷底へと落ちるか、拘束されていった。
最早、決着は目の前。そう皆が思った、その瞬間――。
「漣々ちゃん、危ない!」
「へ? ひゃぁっ!?」
空中から状況を見ていたエミリアが声を上げるが間に合わず、漣々は鎖に足を取られ谷底へと引きずり込まれた。
「漣々さん!?」
バクルの漣々と繋がれたロープが勢いよく引かれる。
見れば、繋がれていたロープの先が谷底へと吸い込まれていた。
「セツリさん!」
「行ってください!」
共に戦線を構築していたセツリの許しを得て、バクルは壁の鎖を掴むと、反対の手で漣々と繋がったロープに力を込める。
「今引き上げるから、もう少し耐えてっ!」
自暴自棄となった山賊が漣々の脚に巻き付いた鎖をぐいぐいと引っ張る。
「へっ! こうなりゃ道連れだ!」
「い、痛いっ……」
上下から引っ張られ、漣々は苦しげに声を漏らした。
「おいたは駄目よ?」
突然、思いもしないところからかけられた声に、山賊はハッと顔を向ける。
しかし、そこは誰も居るはずはない空中。
「な、なんだ、ビビらせやがって――」
気のせいか。そう思い、再び上空を見上げれば、なぜか遠ざかっていく桟道と少女の姿。
「……は?」
混乱する山賊の腕は、エミリアの刃によって根元から断ち切られていた。
●
「さてと、そろそろ心細くなってきたんじゃないのか?」
「けっ、言いやがるぜ」
両者はなおも舌戦を続けている。
ハヤトはボスを完全に抑え込み、部下の援護どころか、まったくといっていい程、仕事をさせていなかった。
「このまま退くなら見逃してやるぜ。追ってくるなら容赦はしねぇけど、部下があの有様じゃ、ちっときついんじゃねぇのか?」
ボスから一瞬も目を離さず、ハヤトは気配だけで後ろの様子を悟る。
「……ちっ。今日は運が無かったようだ」
「はっ! 俺様と出会ったんだ、金輪際、てめぇに幸運は訪れないがな!」
ハヤトの台詞を背に受けながら、ボスは桟道を駆けて逃げた――。
●
「はぁ、びっくり」
「もぉ、びっくりじゃないってば! だからチョイスは大事なんだよ!」
ほっと胸をなでおろす漣々に、サフィラがめッと叱った。
「今回はわたし達が居たからいいけど、ほんと、安全を買うっていう事も覚えてね」
と、サフィラを倣いリサもめっする。
「うっ……はい」
「でも、本当無事でよかったよ。こんな所で折角の新生活がダメになってたら、ぼくも嫌だったもん」
と、バクルがしゅんと項垂れる漣々の肩を叩く。
「まぁ、そうだな。でも結構きつかったし、こりゃ追加報酬が必要か?」
「えっ!?」
ふふんと鼻を鳴らすハヤトに、漣々がびくりと肩をすくめた。
「追加報酬は、そうだな。女の子にモテそうなアクセを一つで手を打つぜ!」
「あら、そんなものに頼らなくても、十分魅力的よ?」
「えっ……あ、そうかな?」
エミリアの褒め言葉に照れるハヤトが皆の笑顔を誘った。
「それじゃ、捕まえた山賊は次の街で引き渡しますね」
お縄についた4人の山賊をセツリがグイッと引っ張る。
この後は大きなトラブルもなく、一行は険しい桟道を抜けた――。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準6 / 4〜6人
2020年11月30日 11時46分07秒 公開
相談掲示板
にゃ!シーフのサフィラだよっ! 足場の悪い山道の戦いだけど、壁歩きとエアーライドで落っこちないように戦っていくよっ! よろしくねー!
はぁ…今度は山賊ですか… まあ、こんな道だし居ますよね… あ、ヒーラーのリサです。よろしくお願いします。 ウ~ン、とりあえず、前後を挟まれてるけど、どうします?
ヒーラーのセツリです、よろしくお願いします。 あちらはよほど自信があるようですし……片方を無理やり突破、というのもそう簡単にはいかないでしょうか。
ウォーリアのバクルだよ。よろしくね。 護衛対象がいる以上、早めに後衛は潰したいね。 ぼくがカバーリングで守るつもりだけど、狙われたら危ないからね。 今回シーフの参加者結構いるし、裏側回って後衛を先に狙う位はできると思うよ。
おねえさんはシーフのエミリアって言うわ、今回はよろしくね。 護衛対象がいる状況で前後を挟まれているっていう状況が嫌ねぇ。 可能ならどっちかだけでも早めに倒して挟撃の不利を何とかできないかしらって思うのだけれども……。 とりあえずおねえさんも、壁歩きとエアーライドは持っていく予定よ。
>後衛は早めに倒す 機動力のある方がそれをしてくれるなら、そのあとに強引な突破もやりやすくなるでしょうか。 こちらはそういった手段はないので、護衛対象の盾役に徹して時間を稼ぐことはできると思います。とりあえず、2名いれば前後で盾は出来るでしょうし……
うーん、ちょっと使い方次第では有効っぽいのは、光縛封ですね。 1ヘクスに結界で射線通らないので、 距離次第では封じ込めだけじゃなく、狭い道なので壁代わりにもできそう。 3ターンだけですが。 上手く閉じこめられるとしたら、前と後ろどっちがいいでしょう? 普通に考えると、人数多い方を封じて、少ない方を先に倒す、ですが… 少ない方にボスっぽいのがいるんですよね… 〉安全対策 忘れちゃだめなのが落下防止ですよね。 うーん、ロープでも鎖につなぎます?やってる時間あるかわかりませんけど… 〉奇襲的な 鎖付きな武器ですが、こう、エイっと投げてきたり、壁にかかってる鎖に絡ませて、ぐるんと立体的な動きしてきたり…も考えられそう? 〉光縛封 あえて、護衛対象に使って護る。という使い方もできそう?
ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな! 俺も【壁歩き】と【エアーライド】あたりで足場対策はするつもりだが、前後どっちか片方の後衛に突撃して早期に撃破するな!
>前と後ろどっちを優先すべきか ボスっぽいのがどれくらい周りより強いか分からないから、判断に迷うね。 「ヴェルクリエへ送り届ける」が目的だから、前方が殲滅出来たら、最悪殿に後ろを足止めしてもらって、走って逃げるという手もあると思う。 だから、前方を優先して撃破でいいと思うよ。 >安全対策 相手のスリングで投げてくる物に「煙幕」があるから、護衛組と漣々さんが怖いね。 敵の攻撃を回避するつもりで後ろに下がったら落ちたとかありそう。 でも、鎖に結び付けちゃうと、鎖を壁に打ち込んでる杭とかにひっかかって、移動しづらくならないかな。 護衛役と漣々さんを結ぶとかなら鎖に結ぶほどじゃないけど、少しは安全かな?
>光縛封 護衛対象に使うのは、咄嗟の行動の邪魔にもなるような…… 現状、前方に抜ける方向でいくならば、突破の際に後ろからの追撃を止める手段として使うのが良いように思います。 移動する際にはどうしても後ろを見せざるを得ないでしょうし…… >落下防止 鎖との連結はバクルくんの言うような問題もありますし、最悪の場合山賊の方が鎖を使って何かしてきたりしかねないような気もします。 護衛役と結ぶのはあり、かなと。 時間については、最初はどうしても防戦になると思うので、その隙を使ってでしょうか……
〉光縛封 うんうん、攻撃通らない代わりに、動けなくなりますからね… 今回はリスクの方が大きいですね。 完全に亀さん状態になるなら魔法使えない相手には3ターンだけ無敵ですが(笑) 〉突破 力技で前方に突破なら…確かに後方に撃って置くほうが良いかな。 まずは後方の安全を(完全じゃないかもだけど)確保し、前方を崩す作戦でしょうか。 〉スリング 崖上に撃たれて、落石誘発とかもあり得るのかなぁ?
>突破 前述のとおり、ぼくは後ろを止めて、前を崩すに一票だね。 >スリングで落石誘発? うーん、地の利は向こうにあるし、冒険者相手に引かない辺り、それくらいの仕掛けがあっても驚かないけど、何とも言えないね。 >落下防止 一応、ぼくと漣々さんを結ぶね。 序盤、ぼくは来た攻撃カバーリングするだけだし、 煙幕とかで漣々さんとはぐれないようにって考えたら適任だと思うから。 位置感覚で落ちないような立ち回りをするつもりだよ。
時間もないですし、わたしはまずは後ろに向けて光縛封を使いますね。 まずは前方を崩すという作戦で。
>方針 発言のない方も多いですが、まあ反対ではないと考えておきましょう。 後方を止めつつ前方へ突破で考えておきます。 私は、漣々くんの前側で壁の一枚になっておきましょうか……
んじゃ、今の流れでいうと前方の後衛から潰した方が良さそうだから戦闘始まったら一発ぶちかましに行くな!
相談に来れなくてごめんなさいね。 前方のほうから潰す感じね、了解したわ。
相談あんまり来れなくてごめんね… とりあえず作戦としては ・光縛封で後方の敵を封じる ・前方の敵を優先的に叩く ・漣々を護衛役(バクリー)と結ぶ って感じでいいのかなっ? 漣々を届けるの優先ならこれでいいと思うっ! あたしはエアーライドで谷側から側面攻撃してみるねっ!