【死軍】ヴァイセントラフ砦への援軍【燃纛】
望月誠司
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シナリオID:223
オープニング
「アルサーラムはヴァイセントラフ砦に対して借りがある。
町は幸い少しだけだが余裕が出始めている。
だから、この町からも援軍を出すべきだろうよ」
アルサーラムの町の臨時守備隊長を務めている傭兵隊長はそう主張した。
「しかし、こんな田舎町の弱兵達がたかだか百や二百の数で雁首揃えて『援軍だー!』とか叫んで出て行った所で逆に足を引っ張るだけだ。残念ながらな。だから最悪でも足を引っ張る事だけにはならんように、虎の子だけを出す」
曰く、ヴァイセントラフを目指している死者の群れはほとんどがゾンビなのだが、偶にクリーパーが混ざっているらしい。
ヴァイセントラフ砦に詰めている帝国兵は精鋭だが、それでもやはり、ゾンビはともかく、クリーパー相手となるときついものがあるそうだ。
だからもし可能ならば彼等が相手をするのはゾンビだけとしたいとか。
「で、このゾンビ連中、どうも、ものっそい足がおせぇらしい。だが混じってるクリーパー達は基本的にはそうじゃない。つまり、機動力に差がある。そこでだ――」
●
「……最近、囮役ばっかりやってる気がするであります」
若いながらにアルサーラム弓騎兵隊の隊長に抜擢されてしまったツェツィーリア・クラインが依頼を受けてやってきた冒険者達へとぼやいた。
「まぁそれはともかく、私から皆さんへ現場の作戦説明をさせていただくであります。いたってシンプルな作戦であります。うちの隊長、作戦はシンプルなのが好きですからね」
羽兜の女弓騎兵隊長はキリッと真面目な表情になると冒険者達へと説明を開始した。
今回の作戦の概要はこうだ。
第一段階目、ツェツィら弓騎兵隊が死者の群れに近寄る。テキトーに駆けながら弓矢を射かける。
第二段階目、敵が追って来る。弓騎兵達は逃げる。すると足の速いクリーパーは騎兵について来れるが、足の遅いゾンビは勿論、足がそんなに速くないクリーパーもドンドンと遅れてゆく。
第三段階目、つまり分断できる。
第四段階目、弓騎兵達は適当な所でそれぞれ散開し、引き連れて来るクリーパーをさらに小分けにして、迎撃の為に有利な地形に伏せている各迎撃隊の所まで釣ってゆく。なお足の遅い敵達は完全に撒いておく。
第五段階目、伏兵している迎撃隊員達は弓騎兵が釣ってきたクリーパー達へと奇襲を仕掛け、これを壊滅させる。
「で、冒険者さん達――ここにお集りの皆さんの役割は第五段階、私が担当する分のクリーパーを壊滅させていただく、という事になります。まぁ最後の仕上げでありますね。ただ、そんなに沢山は釣って来ないつもりでありますので、気楽に構えていただいていて結構ですよ」
まぁこの作戦が上手くいっても、アルサーラム兵の戦力規模はたかが知れているので、砦に寄せる全てのクリーパーを釣り出すには到底足りないだろうが、ただ、塵も積もればなんとやら、少しは砦に迫るクリーパー戦力を削る足しになるだろう、との事だった。
そういう訳で、冒険者達は、かつて古代の時代に儀式が行われていたという巨石が並ぶ荒野の一画にて身を隠し、クリーパー達を待ち受けたのだったが――
「…………なんか、多くない?」
作戦現場にて、大岩の陰から様子を窺っていた仲間の一人が言った。
その言葉を受け、クリーパー達にバレないように慎重に大岩の陰から顔を覗かせて見れば、荒野の彼方より必死に疾駆して来る一騎の女弓騎兵と、彼女を追いかける数十のクリーパー達の姿が見えていたのだった。
町は幸い少しだけだが余裕が出始めている。
だから、この町からも援軍を出すべきだろうよ」
アルサーラムの町の臨時守備隊長を務めている傭兵隊長はそう主張した。
「しかし、こんな田舎町の弱兵達がたかだか百や二百の数で雁首揃えて『援軍だー!』とか叫んで出て行った所で逆に足を引っ張るだけだ。残念ながらな。だから最悪でも足を引っ張る事だけにはならんように、虎の子だけを出す」
曰く、ヴァイセントラフを目指している死者の群れはほとんどがゾンビなのだが、偶にクリーパーが混ざっているらしい。
ヴァイセントラフ砦に詰めている帝国兵は精鋭だが、それでもやはり、ゾンビはともかく、クリーパー相手となるときついものがあるそうだ。
だからもし可能ならば彼等が相手をするのはゾンビだけとしたいとか。
「で、このゾンビ連中、どうも、ものっそい足がおせぇらしい。だが混じってるクリーパー達は基本的にはそうじゃない。つまり、機動力に差がある。そこでだ――」
●
「……最近、囮役ばっかりやってる気がするであります」
若いながらにアルサーラム弓騎兵隊の隊長に抜擢されてしまったツェツィーリア・クラインが依頼を受けてやってきた冒険者達へとぼやいた。
「まぁそれはともかく、私から皆さんへ現場の作戦説明をさせていただくであります。いたってシンプルな作戦であります。うちの隊長、作戦はシンプルなのが好きですからね」
羽兜の女弓騎兵隊長はキリッと真面目な表情になると冒険者達へと説明を開始した。
今回の作戦の概要はこうだ。
第一段階目、ツェツィら弓騎兵隊が死者の群れに近寄る。テキトーに駆けながら弓矢を射かける。
第二段階目、敵が追って来る。弓騎兵達は逃げる。すると足の速いクリーパーは騎兵について来れるが、足の遅いゾンビは勿論、足がそんなに速くないクリーパーもドンドンと遅れてゆく。
第三段階目、つまり分断できる。
第四段階目、弓騎兵達は適当な所でそれぞれ散開し、引き連れて来るクリーパーをさらに小分けにして、迎撃の為に有利な地形に伏せている各迎撃隊の所まで釣ってゆく。なお足の遅い敵達は完全に撒いておく。
第五段階目、伏兵している迎撃隊員達は弓騎兵が釣ってきたクリーパー達へと奇襲を仕掛け、これを壊滅させる。
「で、冒険者さん達――ここにお集りの皆さんの役割は第五段階、私が担当する分のクリーパーを壊滅させていただく、という事になります。まぁ最後の仕上げでありますね。ただ、そんなに沢山は釣って来ないつもりでありますので、気楽に構えていただいていて結構ですよ」
まぁこの作戦が上手くいっても、アルサーラム兵の戦力規模はたかが知れているので、砦に寄せる全てのクリーパーを釣り出すには到底足りないだろうが、ただ、塵も積もればなんとやら、少しは砦に迫るクリーパー戦力を削る足しになるだろう、との事だった。
そういう訳で、冒険者達は、かつて古代の時代に儀式が行われていたという巨石が並ぶ荒野の一画にて身を隠し、クリーパー達を待ち受けたのだったが――
「…………なんか、多くない?」
作戦現場にて、大岩の陰から様子を窺っていた仲間の一人が言った。
その言葉を受け、クリーパー達にバレないように慎重に大岩の陰から顔を覗かせて見れば、荒野の彼方より必死に疾駆して来る一騎の女弓騎兵と、彼女を追いかける数十のクリーパー達の姿が見えていたのだった。
解説
■状況
直径2m程度のサイズの大岩が、5m間隔で横一線に六つほど並んでいる(古い時代に儀式に使われていたものらしい)
冒険者達の初期位置はこの六つの大岩のうちのどれかの陰
一つの岩の陰に集まっていても良いし、一人一人別の岩にいても良い
弓騎兵ツェツィがクリーパーを引きつれて大岩の三番目と四番目の間を抜けるコースで逃げてくる予定だ
■作戦目標
敵戦力の壊滅
■敵クリーパー × 数十体
●小竜型
体長一メートル程度のサイズの二足歩行恐竜型クリーパー
一般兵レベルだとかなり俊敏で、飛び掛かって喉元を喰い千切る必殺の噛みつき攻撃を繰り出して来る
授恵者から見ると、だいたい避けられるし、避けられなくても急所への防御は間に合うし、耐久も低く大体一撃で倒せるしでとても弱い
ただ、命中力が低い者の場合、攻撃が偶に回避される場合があるかもしれない
●串刺し小人型
体長一メートル程度のサイズの小人型クリーパー
かなりのパワーを持つ。手に持つ鋭く尖った鉄杭を勢い良く繰り出して生身の一般人程度なら容易く貫通させて来る。
ただし非常に大振りなので授恵者ならばまずかわせるだろう
革兜と革鎧っぽいものを装備していて、比較的耐久がある
ただし、攻撃力に優れる者ならやはり一撃で倒せるだろう。優れていなくても二発入れれば大体倒せる
●赤蝙蝠型
翼を広げた時の全長が五十センチ程度のサイズのコウモリ型クリーパー
空を飛んでいる。高い位置にいる間は近接武器が届かない
隙を見て取ると急降下し、その鋭い牙で噛みつき攻撃を繰り出して来る
一般兵にとっては脅威だが、授恵者ならかわせるし防御すればたいした手傷は負わないだろう
耐久は低いので、大体一撃で倒せる
■味方戦力
●ツェツィーリア・クライン
金髪碧眼の小柄な若い女弓騎兵
要所が鉄で補強された羽根付きの革兜をかぶり、柔革の胸甲に身を包んでいる
武器は片手半サーベルと反り返しが入った深く湾曲した短弓
ザウアークラウト号に騎乗中、基本的に騎乗したまま戦う
特に指示とかない場合、戦域を反時計周りにグルグルしつつ機動射撃で退き撃ちします
●ザウアークラウト号
ツェツィーリアのペット
漆黒の軍馬
機動力が高い
マスターより
にぎやかし一号、望月誠司です、死軍の戦場へようこそ。
解説の通り、敵は数は多いですが、個々は、一般兵にとっては脅威ですが、授恵者的にはさほどの脅威ではありません。
難易度もイージーですので、判定もあまり厳密ではなく、ふわっと判定となっております。
分類的にガチ判定する戦術系シナリオではなく、キャラの見せ場を描くシチュエーション系の分類になるシナリオです。
ご興味惹かれましたらご参加ご検討いただけましたら幸いです。
リプレイ
吸血鬼、死者の軍勢、骸を操り兵に仕立て上げる存在。
アルサーラムにて死軍の報に接した時、マリイ・パルティスの胸は重く締め付けられていた。
「どうして、こんなことに……」
マリイはかつて帝国にて仕立て屋を営んでいた。常連客だった皆は今、どこで何をしているだろう? 消息不明の者は多い。
――命を、故郷を奪われ、最後は尊厳まで奪われる。
クリーパーだけでなく吸血鬼までとは。
世界は、運命は、帝国から一体どこまで奪えば気が済むのか。
肺の奥が苦しい。
景色が滲む。
手足が強張って震える。
怒り、悲しみ、恐怖、様々な感情がマリイの胸に渦を巻いて、激しく掻き乱していた。
守備隊長が兵を募る声を、マリイは瞳を閉じて白狼に抱きつき、その柔らかな毛並みに頬を寄せながら聞いた。
白狼が一声、吼えた。
マリイは金色の瞳を開いた。
「……そうだね……行こう、コルデラ」
あの時とは違う。
帝国から逃げるしか出来なかったあの時とは。
銀髪の若い娘は立ち上がった。
「今度は私達が追い回す番だ」
マリイは弓を手に狼を引き連れ募兵に応え、平原の戦場へと向かった。
●
数日後、冬の枯色混じる大草原、六つに連なる巨岩の陰にて冒険者達は身を潜めていた。
うち一人、
「砦で戦っている人達の負担を少しでも減らせるのなら」
との思いからこの作戦に参加した、燃える太陽の火のような髪のララベル・サン・ディーベルは、地に耳をつけ音を聞いていた。
彼女――ではなく彼――は耳が良い。
地を伝い聞こえる、蹄鉄の音。そして、もっと別の大量の何かの足音達。
「……あれ? なんか聞いてたのより、かなり多いっぽいよ?」
「うん? 予定より数が多い、か……」
ララベルからの報せに流浪の吟遊詩人、金瞳のキオルティスは大岩の陰より顔を覗かせ様子を窺った。
大平原の彼方に広がっている光景を確認し微笑を浮かべる。
「ふふ……ツェツィさんの勇姿が光るね」
赤瞳の少年フィーレン・ステオラーズも同様にして様子を窺いつつ所感を述べる。
「あぁこれは……ツェツィーリアはすっかり釣り名人だね」
彼は以前もツェツィが囮を務めたアルサーラムの釣り出し作戦に参加していた。
「その素敵さに敬意を表して、綺麗に片付けてしまおう」
「ヴァイセントラフ砦を狙う敵を少しでも減らさないとね」
赤髪の吟遊詩人の言葉に黒髪の少年が頷く。
「小さいことでもできることを頑張るってのは大切だね……」
白髪と灰と紫のオッドアイを持つ中性的な半獣童子ネロ・ブランが言った。
ちょっと多いような気もするけども、ボクのやることは変わらないしいっか、なんて考えていたりする。
「食料事情もあるし、少しでも削る事は砦側もありがたいと思うところだろうなのだ」
大岩に刻まれている幾何学的な文様を興味深げに見ていた若い女が言った。頭に魔獣らしきものの頭蓋骨を載せたゴブリナ、ストレガ・L・リベルガストラだ。
「これだけの数なら他も少しは楽になってくれる筈です」
と、厳しい面差しでクリーパー達を睨んでいるマリイが頷く。
「うん。しかし、あれらは目の前のエーテルに引かれてるだけなのだ?」
ゴブリナが飄々と小首を傾げ、ネロが頷く。
「そうだね……確かに獲物が来たから反射的に追ってる、って感じに見えるよ」
「ふぅむ……まあ、あんまり頭の回らないクリーパーでよかったのだ。でも手は抜かないのだ。きっちり潰すのだ」
それがストレガである。
標的をしっかり仕留める事に定評のあるゴブリナは赤瞳を鋭く光らせた。
●
かくて六人の冒険者達は大岩の陰に身を伏せ接近を待ち受ける。
(頼むよツェツィ)
五感を総動員して敵との間合いを測っていたフィーレンは機を見計らい、三番目の岩陰より顔を覗かせ祈りを捧げた。
すると、ツェツィ達の行く手にうっすらと透明な霧が発生した。祈雷だ。
この霧は内部に居ると危険な力が渦巻いている事を察知できるが、霧の外から見た場合はただの霧にしか見えない。
だが、うっすらとでも霧が急に出現するのは不自然な現象ではある。
クリーパー達ははたして急出現した霧を訝しむだろうか?
羽兜の女弓騎兵が霧の中に飛び込む。
追いかけるクリーパー達、その先頭部を固める小竜達が次々に霧中へと雪崩れ込んだ。
気づかない。
ストレガが言ったようあんまり頭は回らない個体達だった。ただの霧に見えるものを罠と疑うような高い知能は持ってない。
霧の中に入った小竜達は、そこでようやく周囲に危険な力が渦巻いている事を感じ取り――慌てて領域から脱出せんと思考したが、その時にはもう遅い。
「雷よ、奴らを引き裂いてやれ」
フィーレンが述べた瞬間、霧内に轟音と共に激しく明滅する蒼い稲妻の嵐が出現した。
文字通りに逃げ場を残さぬ勢いで凄絶に荒れ狂う。
霧に突入した小竜達の悉くが雷の腕で捕らえられ、雷撃に打たれて次々に消し炭と化し薙ぎ倒されてゆく。
雷が収まった後には、黒こげになった十数体以上の小竜の骸が草原に転がっていた。
「おぉぉ、むっちゃ派手であります!」
漆黒の軍馬に跨ったブロンド娘が肩越しに後方を振り返りながら三つ目と四つ目の大岩の狭間を駆け抜けてゆく。
「ツェツィお疲れ様! 沢山釣れたね!」
「沢山有難うございます。倒し甲斐があります!」
「いやすいません! 皆さんお願いするであります!」
ララベルとマリイが高速で駆け抜けてゆくツェツィへと短く声を投げ、マリイは精神を研ぎ澄まし弓に矢継ぎ早に矢を番え、目にも止まらぬ速度で二連射した。
旋転する二本の矢が真っ直ぐに飛び、宙を舞っている二匹の赤蝙蝠の頭部をそれぞれ見事に一発で貫き、射落とす。
大岩の頂に立ったネロは、小竜達達の進路上へと向かい高々と跳躍した。
――本当はボクは殴る方が楽にできる気がするんだけど。
宙で鉄の斧を振り上げ、エーテルを集中させて巨大な光塊を形成してゆく。
「今はこれを振り回して我慢するしかないか」
光を纏った斧を空中より迫りざま猛然と振り下ろす。
巨大な光塊が落下の勢いを乗せて上方より襲い掛かり、十体近い小竜達が鉄槌で殴られたかのように一気に叩き潰される。
「ふぅむ、速いのから抑えるのだ」
場を睨んだストレガは古木の短杖を身振りと共に振るうとエーテルを解き放った。
草原に輝く光球が出現し、膨れあがって場を光で満たしてゆく。スタティックフィールドだ。
光の領域は小竜達を包み込み、その動きを急速に鈍らせてゆく。
「ツェツィ殿ー! 引き続き牽引頼むのだー!」
光を放った後にストレガは端っこの大岩の陰へと回り込みつつ弓騎兵に叫んだ。
他方、
「さぁ、俺と一緒に踊ってくれるかい?」
キオルティスは連なる大岩の側面に靴底を直角につけ大地と平行するように立っていた。
大岩の側面を張り付くように駆け、まるで重力の方向を操作でもしているかのように跳躍し――実際は壁走りと膝の使い方だ――岩と岩の間を渡る。詩人の装束が風に揺れ、身に着けた装飾品が煌々と光を放つ。
詩人は光る風と化して跳躍、ストレガの光で動きの鈍った小竜の背後頭上へと迫り、鉄の細剣を振り下ろした。
降下ざまに頭蓋を叩き割り、着地と同時に左の細剣を延髄へと打ち込み、圧し折ってトドメを刺した。
「キミはどんなステップが得意なのかな?」
微笑しつつ、飛び掛かってきた別の小竜型の牙を素早く機動してひらりとかわし、服を靡かせながら大岩へと跳び去ってゆく。張り付いて、また駆け出す。
他方、ララベル、
「ただでさえ死体の群れが沢山でみんな大変なのに、どこからともなく沸いて出て……」
ゾンビの群れは吸血鬼が産み出した。それはわかる。
だが、それに混じっているクリーパー達――こいつら、何処から来た?
「僕、お前達の好きにはさせないから!」
赤毛の少年は鉄の双細剣を抜き放つと、大岩の陰から飛び出し、敵のど真ん中へと突撃した。
双剣を縦横無尽に振るって小竜と小人を斬り裂き、強引に突破して、駆け回ってゆく。
フィーレンは大岩を背にして立ち、喉元を狙って飛び掛かってきた小竜の噛み付きを身を捌いてかわし、もう一体からの噛み付きを鉄棍を翳して防ぎながら、鉄棍にエーテルを集中させ眩く輝かせてゆく。
さらに一体が飛び掛かって来るが、それはネロが加速して間に入って盾を翳し受け止めた。
「その程度じゃ効かないね……」
ネロは盾で押し返すと、鉄斧を振りかぶり竜巻の如くに振り回した。
居並ぶ小竜達が切断されて次々に吹き飛んでゆく。
白髪の半獣童子は殺気を籠めて咆吼を轟かせた。
「そこ!」
フィーレンはネロの肩越しに輝く棍の先端を空へと向け、エーテルを収束させ撃ち放った。
閃光が唸りをあげて飛び、宙舞う赤蝙蝠の身を捉え、一撃で吹き飛ばしながら抜けてゆく。
他方、
「素敵な武器だね」
キオルティスが微笑しながらエアーライドで宙を翔け、小人達へと迫る。
赤毛の吟遊詩人は大胆にもその頭上を越え真っ只中へと降り立った。
「でも当たらなければ意味がないよ?」
小人達から勢いよく突き出された無数の鉄杭を、身をしなやかに反らし紙一重でかわす。
鉄杭はすり抜けたように詩人にあたらず、その奥に立つ小人達自身へと勢い余って突き刺さる。同士討ち。キオルティスは間髪入れず、流れるように回転しながら双剣を閃かせた。
居並ぶ小人達の首から鮮血が噴出し、赤い噴水の狭間で装飾品が煌めいてゆく。
ララベルへと向かい小人達が鉄杭を突き出し、振り下ろす。
だが、その時には既に少年の姿は消えていた。高速で機動し間合いを外している。
しかしその回避先、隙を狙って背後の空より、赤蝙蝠が急降下して来る。
急接近する羽音を捉えた赤髪の少年は振り向きざま、細剣を空へと向かって突き出した。
「――お前が降りてくるのは、バレバレだよ」
串刺しになった赤蝙蝠へと緑瞳を鋭く細め、呟く。
耳の良い少年は剣を振り回して赤蝙蝠から刀身を引き抜くと、再び風の如く駆け出してゆく。
「一匹たりとも逃がしはしないよ」
マリイは地を駆けて距離を取ると、右手に眩い光を収束させ一本の矢と成さしめ弓に番え、上方へと角度をつけ撃ち放った。
光矢は空で炸裂し、煌に輝く無数の光の破片を撒き散らした。
天空より流星のように降り注ぐ光達に穿たれ赤蝙蝠達が次々に落下してゆく。
「ここで全部潰すから」
まだ息のある蝙蝠にコルデラが飛び掛かってトドメを刺している。
他方、流鏑馬しながら反時計まわりに機動するツェツィを十数体の小人と蝙蝠達が追いかけている。
大岩の陰よりストレガ、移動速度と収束速度を計算して未来位置を予測、置くように発動点を指定する。
身振り手振りと共に呪を唱え短杖をかざした。
「氷の霊達よ、斬り刻むのだ!」
空間に光輝くエーテルが高速で収束してゆき、ツェツィが範囲から抜けた瞬間、それは猛烈な氷粒の嵐と化して逆巻いた。
ツェツィを追っていた大量の小人と蝙蝠達が斬り刻まれその身から鮮血を噴出させ、バタバタと倒れ、落下してゆく。
大岩やエアーライドを駆使しながらキオルティスが縦横無尽に舞うように駆けて双刃を閃かせ、ネロが鉄斧より光塊を形成、光の竜巻の如くに振り回して鎧兜を身に纏った小人と赤い蝙蝠達を蹴散らす。
小竜達は既に全滅していた。
フィーレンが蝙蝠へと閃光を飛ばしながら、その身を輝かせ光の波動を場に満たしてゆく。冒険者達の傷が癒されてゆく。
ストレガは空に氷嵐を巻き起こし、地には味方を巻き込まないように魔矢に切り替えて放っている。マリイもまた宙に光の破片を撒き散らして赤蝙蝠を撃ち落とし、小人型へは鎧の隙間を狙って勢いよく矢を撃ち込んで、蝙蝠と小人達を次々に撃滅していった。
ララベルはハイディングで気配を消し、エアーライドで宙を飛んで足音も消しながら双刃を振るい奇襲を続けた。
エアーライドはエーテルを爆発的に噴出させて飛ぶので、その音は響くのだが、足音とどっちが接近に気づかれにくいかといえば距離や相手の意識、知識などの状況に拠り、少なくとも今回乱戦中のクリーパー達はララベルの奇襲にまったく対処できなかった。
冒険者達は残りのクリーパー達も順調に撃破してゆき、かくて、ツェツィーリアが釣り出してきた、クリーパーの大群は見事冒険者達の活躍により殲滅されたのだった。
●
戦後。
「皆、お疲れ様なのだー、特に大きな怪我をした人はいないのだ?」
「うん、大丈夫だよ」
最も矢面に立っていたネロが右腕を回しつつストレガへと頷く。
フィーレンの範囲回復もあったので、大きな怪我が残っている者はいなかった。
「ザウアークラフト号殿もお疲れ様なのだー」
ストレガはよしよしと黒馬を撫でてやった。馬は気持ち良さそうにしていた。
「いやぁそれにしても、慣れて来た頃がヘマするでありますね。釣れ過ぎたですよ。この度は皆様には申し訳なく」
「数は多かったけど、個々はあまり強力じゃなかったし、問題なかったよ。砦側も楽になっただろうし、むしろ良かったんじゃないか?」
フィーレンが謝るツェツィへと笑ってそんな会話をかわしている。
(そう、随分と小型で力のない個体ばかりだったな――)
その会話を耳にしたマリイは先の戦いを振り返ってふと疑問に思った。帝国が崩壊した時に襲ってきた連中はこんなものではなかったような。
(現界したてか、それともエーテルが摂取できずに消耗してるのか……単に弱ってるだけなら良いのだけど)
餓えというのは力を奪うだけでなく、より一層の狂暴化もさせる。
そういう状態であるなら、警戒しないとな、とマリイは思ったのだった。
作戦を成功させた一行は合流予定地点へと進んだ。
他の迎撃隊と合流した所、他のアルサーラム兵達も上手くやっていたらしい。
冒険者達の隊ほどに大量の数を殲滅した訳ではなかったが、今回の作戦では各迎撃隊合計して百体程度の中小のクリーパー達を倒せたのではないか、という事だった。
(これで少しは楽になってくれたのだと良いけど……どうなるかな)
ララベルは主戦場であるヴァイセントラフ砦の方角を見やった。
草原の空の高い所で、雲が速く流れていた。
アルサーラムにて死軍の報に接した時、マリイ・パルティスの胸は重く締め付けられていた。
「どうして、こんなことに……」
マリイはかつて帝国にて仕立て屋を営んでいた。常連客だった皆は今、どこで何をしているだろう? 消息不明の者は多い。
――命を、故郷を奪われ、最後は尊厳まで奪われる。
クリーパーだけでなく吸血鬼までとは。
世界は、運命は、帝国から一体どこまで奪えば気が済むのか。
肺の奥が苦しい。
景色が滲む。
手足が強張って震える。
怒り、悲しみ、恐怖、様々な感情がマリイの胸に渦を巻いて、激しく掻き乱していた。
守備隊長が兵を募る声を、マリイは瞳を閉じて白狼に抱きつき、その柔らかな毛並みに頬を寄せながら聞いた。
白狼が一声、吼えた。
マリイは金色の瞳を開いた。
「……そうだね……行こう、コルデラ」
あの時とは違う。
帝国から逃げるしか出来なかったあの時とは。
銀髪の若い娘は立ち上がった。
「今度は私達が追い回す番だ」
マリイは弓を手に狼を引き連れ募兵に応え、平原の戦場へと向かった。
●
数日後、冬の枯色混じる大草原、六つに連なる巨岩の陰にて冒険者達は身を潜めていた。
うち一人、
「砦で戦っている人達の負担を少しでも減らせるのなら」
との思いからこの作戦に参加した、燃える太陽の火のような髪のララベル・サン・ディーベルは、地に耳をつけ音を聞いていた。
彼女――ではなく彼――は耳が良い。
地を伝い聞こえる、蹄鉄の音。そして、もっと別の大量の何かの足音達。
「……あれ? なんか聞いてたのより、かなり多いっぽいよ?」
「うん? 予定より数が多い、か……」
ララベルからの報せに流浪の吟遊詩人、金瞳のキオルティスは大岩の陰より顔を覗かせ様子を窺った。
大平原の彼方に広がっている光景を確認し微笑を浮かべる。
「ふふ……ツェツィさんの勇姿が光るね」
赤瞳の少年フィーレン・ステオラーズも同様にして様子を窺いつつ所感を述べる。
「あぁこれは……ツェツィーリアはすっかり釣り名人だね」
彼は以前もツェツィが囮を務めたアルサーラムの釣り出し作戦に参加していた。
「その素敵さに敬意を表して、綺麗に片付けてしまおう」
「ヴァイセントラフ砦を狙う敵を少しでも減らさないとね」
赤髪の吟遊詩人の言葉に黒髪の少年が頷く。
「小さいことでもできることを頑張るってのは大切だね……」
白髪と灰と紫のオッドアイを持つ中性的な半獣童子ネロ・ブランが言った。
ちょっと多いような気もするけども、ボクのやることは変わらないしいっか、なんて考えていたりする。
「食料事情もあるし、少しでも削る事は砦側もありがたいと思うところだろうなのだ」
大岩に刻まれている幾何学的な文様を興味深げに見ていた若い女が言った。頭に魔獣らしきものの頭蓋骨を載せたゴブリナ、ストレガ・L・リベルガストラだ。
「これだけの数なら他も少しは楽になってくれる筈です」
と、厳しい面差しでクリーパー達を睨んでいるマリイが頷く。
「うん。しかし、あれらは目の前のエーテルに引かれてるだけなのだ?」
ゴブリナが飄々と小首を傾げ、ネロが頷く。
「そうだね……確かに獲物が来たから反射的に追ってる、って感じに見えるよ」
「ふぅむ……まあ、あんまり頭の回らないクリーパーでよかったのだ。でも手は抜かないのだ。きっちり潰すのだ」
それがストレガである。
標的をしっかり仕留める事に定評のあるゴブリナは赤瞳を鋭く光らせた。
●
かくて六人の冒険者達は大岩の陰に身を伏せ接近を待ち受ける。
(頼むよツェツィ)
五感を総動員して敵との間合いを測っていたフィーレンは機を見計らい、三番目の岩陰より顔を覗かせ祈りを捧げた。
すると、ツェツィ達の行く手にうっすらと透明な霧が発生した。祈雷だ。
この霧は内部に居ると危険な力が渦巻いている事を察知できるが、霧の外から見た場合はただの霧にしか見えない。
だが、うっすらとでも霧が急に出現するのは不自然な現象ではある。
クリーパー達ははたして急出現した霧を訝しむだろうか?
羽兜の女弓騎兵が霧の中に飛び込む。
追いかけるクリーパー達、その先頭部を固める小竜達が次々に霧中へと雪崩れ込んだ。
気づかない。
ストレガが言ったようあんまり頭は回らない個体達だった。ただの霧に見えるものを罠と疑うような高い知能は持ってない。
霧の中に入った小竜達は、そこでようやく周囲に危険な力が渦巻いている事を感じ取り――慌てて領域から脱出せんと思考したが、その時にはもう遅い。
「雷よ、奴らを引き裂いてやれ」
フィーレンが述べた瞬間、霧内に轟音と共に激しく明滅する蒼い稲妻の嵐が出現した。
文字通りに逃げ場を残さぬ勢いで凄絶に荒れ狂う。
霧に突入した小竜達の悉くが雷の腕で捕らえられ、雷撃に打たれて次々に消し炭と化し薙ぎ倒されてゆく。
雷が収まった後には、黒こげになった十数体以上の小竜の骸が草原に転がっていた。
「おぉぉ、むっちゃ派手であります!」
漆黒の軍馬に跨ったブロンド娘が肩越しに後方を振り返りながら三つ目と四つ目の大岩の狭間を駆け抜けてゆく。
「ツェツィお疲れ様! 沢山釣れたね!」
「沢山有難うございます。倒し甲斐があります!」
「いやすいません! 皆さんお願いするであります!」
ララベルとマリイが高速で駆け抜けてゆくツェツィへと短く声を投げ、マリイは精神を研ぎ澄まし弓に矢継ぎ早に矢を番え、目にも止まらぬ速度で二連射した。
旋転する二本の矢が真っ直ぐに飛び、宙を舞っている二匹の赤蝙蝠の頭部をそれぞれ見事に一発で貫き、射落とす。
大岩の頂に立ったネロは、小竜達達の進路上へと向かい高々と跳躍した。
――本当はボクは殴る方が楽にできる気がするんだけど。
宙で鉄の斧を振り上げ、エーテルを集中させて巨大な光塊を形成してゆく。
「今はこれを振り回して我慢するしかないか」
光を纏った斧を空中より迫りざま猛然と振り下ろす。
巨大な光塊が落下の勢いを乗せて上方より襲い掛かり、十体近い小竜達が鉄槌で殴られたかのように一気に叩き潰される。
「ふぅむ、速いのから抑えるのだ」
場を睨んだストレガは古木の短杖を身振りと共に振るうとエーテルを解き放った。
草原に輝く光球が出現し、膨れあがって場を光で満たしてゆく。スタティックフィールドだ。
光の領域は小竜達を包み込み、その動きを急速に鈍らせてゆく。
「ツェツィ殿ー! 引き続き牽引頼むのだー!」
光を放った後にストレガは端っこの大岩の陰へと回り込みつつ弓騎兵に叫んだ。
他方、
「さぁ、俺と一緒に踊ってくれるかい?」
キオルティスは連なる大岩の側面に靴底を直角につけ大地と平行するように立っていた。
大岩の側面を張り付くように駆け、まるで重力の方向を操作でもしているかのように跳躍し――実際は壁走りと膝の使い方だ――岩と岩の間を渡る。詩人の装束が風に揺れ、身に着けた装飾品が煌々と光を放つ。
詩人は光る風と化して跳躍、ストレガの光で動きの鈍った小竜の背後頭上へと迫り、鉄の細剣を振り下ろした。
降下ざまに頭蓋を叩き割り、着地と同時に左の細剣を延髄へと打ち込み、圧し折ってトドメを刺した。
「キミはどんなステップが得意なのかな?」
微笑しつつ、飛び掛かってきた別の小竜型の牙を素早く機動してひらりとかわし、服を靡かせながら大岩へと跳び去ってゆく。張り付いて、また駆け出す。
他方、ララベル、
「ただでさえ死体の群れが沢山でみんな大変なのに、どこからともなく沸いて出て……」
ゾンビの群れは吸血鬼が産み出した。それはわかる。
だが、それに混じっているクリーパー達――こいつら、何処から来た?
「僕、お前達の好きにはさせないから!」
赤毛の少年は鉄の双細剣を抜き放つと、大岩の陰から飛び出し、敵のど真ん中へと突撃した。
双剣を縦横無尽に振るって小竜と小人を斬り裂き、強引に突破して、駆け回ってゆく。
フィーレンは大岩を背にして立ち、喉元を狙って飛び掛かってきた小竜の噛み付きを身を捌いてかわし、もう一体からの噛み付きを鉄棍を翳して防ぎながら、鉄棍にエーテルを集中させ眩く輝かせてゆく。
さらに一体が飛び掛かって来るが、それはネロが加速して間に入って盾を翳し受け止めた。
「その程度じゃ効かないね……」
ネロは盾で押し返すと、鉄斧を振りかぶり竜巻の如くに振り回した。
居並ぶ小竜達が切断されて次々に吹き飛んでゆく。
白髪の半獣童子は殺気を籠めて咆吼を轟かせた。
「そこ!」
フィーレンはネロの肩越しに輝く棍の先端を空へと向け、エーテルを収束させ撃ち放った。
閃光が唸りをあげて飛び、宙舞う赤蝙蝠の身を捉え、一撃で吹き飛ばしながら抜けてゆく。
他方、
「素敵な武器だね」
キオルティスが微笑しながらエアーライドで宙を翔け、小人達へと迫る。
赤毛の吟遊詩人は大胆にもその頭上を越え真っ只中へと降り立った。
「でも当たらなければ意味がないよ?」
小人達から勢いよく突き出された無数の鉄杭を、身をしなやかに反らし紙一重でかわす。
鉄杭はすり抜けたように詩人にあたらず、その奥に立つ小人達自身へと勢い余って突き刺さる。同士討ち。キオルティスは間髪入れず、流れるように回転しながら双剣を閃かせた。
居並ぶ小人達の首から鮮血が噴出し、赤い噴水の狭間で装飾品が煌めいてゆく。
ララベルへと向かい小人達が鉄杭を突き出し、振り下ろす。
だが、その時には既に少年の姿は消えていた。高速で機動し間合いを外している。
しかしその回避先、隙を狙って背後の空より、赤蝙蝠が急降下して来る。
急接近する羽音を捉えた赤髪の少年は振り向きざま、細剣を空へと向かって突き出した。
「――お前が降りてくるのは、バレバレだよ」
串刺しになった赤蝙蝠へと緑瞳を鋭く細め、呟く。
耳の良い少年は剣を振り回して赤蝙蝠から刀身を引き抜くと、再び風の如く駆け出してゆく。
「一匹たりとも逃がしはしないよ」
マリイは地を駆けて距離を取ると、右手に眩い光を収束させ一本の矢と成さしめ弓に番え、上方へと角度をつけ撃ち放った。
光矢は空で炸裂し、煌に輝く無数の光の破片を撒き散らした。
天空より流星のように降り注ぐ光達に穿たれ赤蝙蝠達が次々に落下してゆく。
「ここで全部潰すから」
まだ息のある蝙蝠にコルデラが飛び掛かってトドメを刺している。
他方、流鏑馬しながら反時計まわりに機動するツェツィを十数体の小人と蝙蝠達が追いかけている。
大岩の陰よりストレガ、移動速度と収束速度を計算して未来位置を予測、置くように発動点を指定する。
身振り手振りと共に呪を唱え短杖をかざした。
「氷の霊達よ、斬り刻むのだ!」
空間に光輝くエーテルが高速で収束してゆき、ツェツィが範囲から抜けた瞬間、それは猛烈な氷粒の嵐と化して逆巻いた。
ツェツィを追っていた大量の小人と蝙蝠達が斬り刻まれその身から鮮血を噴出させ、バタバタと倒れ、落下してゆく。
大岩やエアーライドを駆使しながらキオルティスが縦横無尽に舞うように駆けて双刃を閃かせ、ネロが鉄斧より光塊を形成、光の竜巻の如くに振り回して鎧兜を身に纏った小人と赤い蝙蝠達を蹴散らす。
小竜達は既に全滅していた。
フィーレンが蝙蝠へと閃光を飛ばしながら、その身を輝かせ光の波動を場に満たしてゆく。冒険者達の傷が癒されてゆく。
ストレガは空に氷嵐を巻き起こし、地には味方を巻き込まないように魔矢に切り替えて放っている。マリイもまた宙に光の破片を撒き散らして赤蝙蝠を撃ち落とし、小人型へは鎧の隙間を狙って勢いよく矢を撃ち込んで、蝙蝠と小人達を次々に撃滅していった。
ララベルはハイディングで気配を消し、エアーライドで宙を飛んで足音も消しながら双刃を振るい奇襲を続けた。
エアーライドはエーテルを爆発的に噴出させて飛ぶので、その音は響くのだが、足音とどっちが接近に気づかれにくいかといえば距離や相手の意識、知識などの状況に拠り、少なくとも今回乱戦中のクリーパー達はララベルの奇襲にまったく対処できなかった。
冒険者達は残りのクリーパー達も順調に撃破してゆき、かくて、ツェツィーリアが釣り出してきた、クリーパーの大群は見事冒険者達の活躍により殲滅されたのだった。
●
戦後。
「皆、お疲れ様なのだー、特に大きな怪我をした人はいないのだ?」
「うん、大丈夫だよ」
最も矢面に立っていたネロが右腕を回しつつストレガへと頷く。
フィーレンの範囲回復もあったので、大きな怪我が残っている者はいなかった。
「ザウアークラフト号殿もお疲れ様なのだー」
ストレガはよしよしと黒馬を撫でてやった。馬は気持ち良さそうにしていた。
「いやぁそれにしても、慣れて来た頃がヘマするでありますね。釣れ過ぎたですよ。この度は皆様には申し訳なく」
「数は多かったけど、個々はあまり強力じゃなかったし、問題なかったよ。砦側も楽になっただろうし、むしろ良かったんじゃないか?」
フィーレンが謝るツェツィへと笑ってそんな会話をかわしている。
(そう、随分と小型で力のない個体ばかりだったな――)
その会話を耳にしたマリイは先の戦いを振り返ってふと疑問に思った。帝国が崩壊した時に襲ってきた連中はこんなものではなかったような。
(現界したてか、それともエーテルが摂取できずに消耗してるのか……単に弱ってるだけなら良いのだけど)
餓えというのは力を奪うだけでなく、より一層の狂暴化もさせる。
そういう状態であるなら、警戒しないとな、とマリイは思ったのだった。
作戦を成功させた一行は合流予定地点へと進んだ。
他の迎撃隊と合流した所、他のアルサーラム兵達も上手くやっていたらしい。
冒険者達の隊ほどに大量の数を殲滅した訳ではなかったが、今回の作戦では各迎撃隊合計して百体程度の中小のクリーパー達を倒せたのではないか、という事だった。
(これで少しは楽になってくれたのだと良いけど……どうなるかな)
ララベルは主戦場であるヴァイセントラフ砦の方角を見やった。
草原の空の高い所で、雲が速く流れていた。
マスターコメント
結果、リプレイのようになりました。
この度はご参加とプレイング、誠に有難うございました。
ご満足いただける結果になっていれば幸いです。
ショートシナリオ易しい 報酬:標準6 / 4〜6人
2020年11月25日 16時45分55秒 公開
大成功
相談掲示板
僕はシーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、宜しくね!
ボクはネロ・ブラン、ウォーリアだよ。 今回の依頼ではよろしくね。 取り敢えずガンガン攻めて敵を倒していきたいね。
シーフのキオルティスと言うよ。ルティスでもキオでもお好きなように。 今回は宜しくね。 数に圧倒されないだけの立ち回りを見せたい所だね。
ヒーラーのフィーレン。宜しく頼む。 回復と強化での支援が主になるね。 攻撃手段もひとつぐらいは積んでいくかも。
キャスター、ストレガなのだ。よろしくなのだ 攻撃が中心なのだ。速いやつに接近されないように注意するのだ
シューターのマリイと申します。よろしくお願いいたします。 とりあえず、弓の遠距離攻撃がメインになると思います。
ザウアークラフト号が駆け抜けていったら敵集団にスタティックをかけるのだ 速いやつからひっかかると思うから順次攻撃していくのだ