森の葉のエルフの祭り

陵かなめ

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シナリオID:163

オープニング

●森の葉のエルフの祭り
 フィルエス大森林には植物の扱いに長けたエルフの集落がある。
 この集落は、先日授恵者の活躍によりコカトリスの脅威から救われたという。
 今は祭りの準備で集落全体が楽しげな雰囲気に包まれているようだ。

「冒険者の人たち、助けてくれてよかったね!」
「これでお祭りができるね!!」
「外の世界のお話聞いた?! とっても楽しそうだよね」
 集落の子供たちがキラキラと瞳を輝かせ話し合っている。

「さあ森の葉は集まったよ! 飾りを作ろう」
「衣装はそろっているかい?」
「祭りができるのはあの人たちのおかげだね。感謝しなくちゃ」
 祭りの準備は着々と進んでいるようだ。

「あのコカトリスを倒すなんて、凄いな」
「俺は目の前で見たからな! 凄まじい戦いだった」
 男たちは授恵者の戦いに興奮を隠せない様子。

「外の者がこれほど活気を呼び起こすとは」
 長たるヴィルジュが、集落の様子を眺める。
「それほどあの者たちの力は強かった」
 エルフの青年ヤニクは、授恵者たちの戦いを思い出すように目を細めた。
「しかしよろしかったのですか、長よ。祭りに外の者を招き入れるなど」
「かまわない。外の者に助けてもらった、その恩を忘れるほど愚かではないつもりだ」
 それは森の葉と呼ばれる葉で飾りを作り、皆で踊る祭りだ。いつもなら集落の者以外は受け入れていない。だが今回だけは外の者も招き入れるという話だ。
「何より、子らが外の者の話を楽しみにするのでな」
「……子供には甘いですね。我々大人にはいつも厳しいのに……」
「何か?」
「いいえ。では葉飾りを作り、夜には踊り、此度の祭りを楽しみましょう」

解説

 フィルエス大森林の中にあるエルフの集落でささやかな祭りが開催されます。  彼らは植物を尊ぶエルフ達です。先日、授恵者の助けを借りて危機を脱しました。  そのため普段は閉鎖的な集落のエルフではあるのですが、冒険者や他種族も多少なら受け入れる気持ちがあります。  そこで授恵者の皆様、集落の祭りに参加してみませんか。  一緒に森の葉の飾りを作ったり、踊ったり、色々な話をしたり楽しい祭りにしましょう。 ●できること 『森の葉の飾りを作る』  使用するのはエルフたちが森の葉と呼ぶ木の葉です。  小さいリースから少し大きな置き飾りなど。基本は紐を使って括りながら組み上げていきます。干して乾かしドライリースとしても良いかもしれません。  小さなワンポイントの飾りなど入れても可愛いと思います。  作り方は主にエルフの女性が教えてくれるようです。 『衣装を見せ合う』  祭りの日、エルフたちは思い思いの衣装に身を包んでいます。可愛いものから少し怖そうな衣装まで、仮装をして楽しむようです。  一緒に仮装して見せ合いっこをするのも楽しいと思います。 『エルフたちと話をする』  外の者に友好的なエルフと話をして交流できます。  特に子どもたちは外の世界の話をすると喜んでくれるようです。  エルフの男性は勇敢な冒険譚や戦いの話も好きとのことです。 『踊りを楽しむ』  夜になれば木でできた簡単な楽器に合わせて踊ります。  一緒に踊るのも楽しそうです。  演奏をしてあげるのも喜ばれるでしょう。

マスターより

 この集落は、公開済シナリオ『森の葉のエルフとコカトリス』に登場した集落です。  ですが前作に未参加でも読んでいなくても特に問題はありません。  授恵者たちに少しだけ心を開いたエルフたちの祭りをお楽しみください。  一緒に描写をご希望の方がいらっしゃいましたら、プレイングの冒頭に【グループ名】を明記してください。  それでは、よろしくお願いいたします。

リプレイ

●
 温かな木洩れ日が集落に降り注ぐ。
 今日は森の葉の飾りを作り、皆で語り合う祭りの日だ。
 エルフたちは思い思いの衣装に身を包み楽しげに笑いあっている。
 そして子どもたちのはしゃぐ声がそこここから聞こえて来ていた。

 集落を見たロイ・アウレアの顔が綻んだ。どこを見ても素朴でそしてあたたかな雰囲気が感じられる。
「もしや君は?」
 声をかけられ振り向くと、集落の長ヴィルジュと青年ヤニクの姿があった。
 ロイは姿勢を正す。
「お招き感謝します。この賑わいを呼ぶ手伝いが出来た事を誇りに思います」
「そなた達のおかげだ」
 ヴィルジュの声は硬い。まだ集落外から人を呼ぶことに抵抗があるようだ。
「そして外の者達を呼ぶと決めた事、英断と感じました」
「うむ……」
「素晴らしい判断だ」
「この判断が正しいのかわからぬ。だが子どもたちは喜んでいる」
 ヴィルジュはそう言ってはしゃぐ子どもたちを見た。
「長は子供に甘いのだ」
 ヤニクが耳打ちする。ロイはそれを聞き思わず笑ってしまった。
「む?」
「あ、いえ。今日の事を知人に話し聞かせても良いでしょうか?」
 これはロイの願いだ。
 エルフ同士でも生活や習わしは似て非なるもの。種族が違えばさらにだ。
 だからこそ互いを知り防ぐ糸口と成れば、安寧と名の付く布と成るかもしれないと。
「集落の害にならぬと言えるのなら」
 散々迷ってヴィルジュが答える。
 元よりロイも急ぐつもりは無い。少しずつゆっくりと、と。
 二人と分かれ周囲を見回す。
「今日は一緒に見て歩こうな」
「ヴォンッ」
 傍らにパートナーのルプスを伴い、ロイは集落を歩いた。

●
「きゃははっ、こわいねっ」
 祭りの中ひと際騒がしい集団がある。
「こわい……って、いったいどういう……!?」
 エルフの子供たちに囲まれたAlexandra・Hexe・Claudiaがウロウロと周囲を見回した。
 だがどう考えても子どもたちは自分を見ている。
「……えと、すみません。驚かそうとしたわけではなく……」
 この衣装は、子どもたちに誘われた仮装で内容をお任せした結果だ。
 子どもたちが手を引くから大きな通りに出たのだが、どうも様子がおかしい。子どもたちは大変盛り上がっているようだけれども……?
 Alexandraは目についた水桶を覗き込んだ。
「何ですこれ、私!?」
 そこに映っていたのは、非常に顔色の悪いゾンビだった。
「あの、さすがにこれは印象が……」
「お姉さんの顔色にバッチリお似合いのメイクをしたよ!!」
「とってもにあっているよ!!」
「言わないでください! すぐにでも治したいことなのに……」
 とにかくお化粧直しそして着替えもしたい。
 そう思ったがこれ以上の変更はできないようだ。
「この状態のままは勘弁してください! 誰か助けて……逃げないでくださいよーっ!」
「すごい、たのしいね。おいかけっこだー!」
「あははっ」
 Alexandraが追いかければ追いかけるほど、子どもたちは逃げていく。
 とにかく……集落には子どもたちの楽しげな声が響いた。
「待って、待ってくださいってば!!」
 そしてAlexandraの必死の声も――。

 そんな集落を覗き込んでいたのはノノアだ。
「わたしも参加できるのかな?」
 見ると仮装した子どもたちがはしゃぎまわっている。
「参加できるなら仮装をしてみるのも面白そうね」
 そう言って、集落へと足を踏み入れた。
 衣装部屋へ行ってみると、沢山のエルフたちが仮装の準備中だった。
「どんな衣装があるの?」
 たくさん飾られた衣装を見ながら周囲のエルフに話しかける。
「これは森の植物をイメージしたものです。ツタの模様を編み込んで作りました」
「私のものは森の葉を重ねたように見えるものよ!」
「貴方にはもっと可愛い衣装が似合うのでは?」
 すると、あれよあれよという間に衣装を抱えたエルフたちに囲まれた。
「まあ、立派なしっぽだわ。かわいい」
「そ、そう?」
「この衣装はどうかしら? 少し短い丈だけど回ると大きく広がるのよ」
「わたしがこれを?」
 勧められるまま、可愛らしい衣装に身を包む。
「とっても似合っているわ!」
「良いお祭りを!」
「……ありがとう」
 ノノアはスカートの裾を気にしながら衣装部屋を出た。
 着せられたのはいくつも葉が重なったようなデザインの、ひらひらとした衣装だ。
 少し気恥しいが……、せっかくのなので仮装衣装で集落を歩いてみた。

●
「ほーこれがエルフの祭りか」
 集落の様子を見回しているのはケン・Z・ブラッドリーだ。
 一般的なエルフたちの様子は新鮮で、興味がある。
 女性たちが着ている大仰な衣装は仮装だろうか。葉飾りを作っている者も多くみられる。
 そして子どもの姿も。
「外から来たの?」
「何かお話聞かせて!!」
 子ども達がニコニコと寄って来た。その瞳は期待の色で輝いている。
「ああ外の話なら、そうだな冒険者になってからのことを話そうか」
 ちょうど良い広場に座り子どもたちを見回した。
「最近受けた依頼といえば――」
 話始めたケンの周りで子ども達は静かに耳を澄ませる。
 様々な戦いや冒険など、どんな話も子どもたちには新鮮だったのだろう。
 あるいはハラハラとした表情で、あるいはワクワクと胸を躍らせながら、子ども達が話を聞く様子をケンは感じていた。
「いいか、首を狩るってのは一見残酷に見えるけど、相手にこれ以上苦痛を与えずに倒してやるって意味では一種の優しさなんだぞ」
 と、首狩りの良さを何気なく伝えることも忘れない。
「それじゃあな」
「うん! たくさんお話ししてくれてありがとう!」
 子どもたちに別れを告げ、ケンは次に青年たちに話しかける。手には持参した大量の酒。酒の飲める青年たちが寄って来た。飲み比べというのも悪くない。ケンは集落の祭りを謳歌した。

 リオネル・パストラルは集落ではしゃぐ子どもたちに声をかけた。
 怖がらせないように屈んで目線を合わせる。
「やぁ、こんにちは。良ければ案内してくれるかな?」
「こんにちは!」
「いいよ! 行こう!」
 子どもたちは笑顔でリオネルの手を取った。そしてあれは葉飾り、あれは仮装、と必死に案内してくれる。集落の中は楽しげな雰囲気でいっぱいだ。
 リオネルは案内のお礼にと遊牧生活の話をする。
「今は別々なところにいるんだけどね、君たちみたいな小さな子から大人まで一緒に移動しながら生活していたんだ」
「いどうってどういうこと?」
「お家はどうするの?」
 何世代も前からこの場所に定住している彼らには、とても珍しい話のようだ。
「たくさんの羊や犬たちと一緒にね、色々な場所を回ったり――」
 逃げ出した羊を追いかけたり、と。
「わあ、羊と追いかけっこ!」
「楽しそう!」
 特に羊を追いかけるくだりは子どもたちもかなり盛り上がった。
 拍手をし、わいわい言いながら続きを促してくる。
 子どもたちの笑顔を見ながら思う。
 もう彼らはいないけれど、こうやって皆の話をして皆のことを誰かが覚えてくれたなら、それもまた嬉しい事なのだと。
「楽しかったねえ!」
「お話しありがとう!」
 頭を順になでてやると、子どもたちも嬉しそうに笑った。

 エルフたちとの会話を楽しんでいたのはピーター・フトリッチだ。
「ではこれを薬草、これを毒草として見分けるんだな」
 並んだいくつかの草を見ながら語り合う。
 この集落では、エルフたちは基本に忠実に植物を扱っていることが分かった。
「それが植物と長く付き合う秘訣なのかもしれないな」
 壁に並んだ葉飾りや丁寧に保存された草を見てピーターは思う。
「何より興味深いのはこの森の葉だな」
「ええ、森の葉は特別です」
 森の葉に興味を示したピーターに、エルフたちが大きな森の葉を手渡した。
 今手渡された葉は大きいがその大きさは様々だという。小さなものは子供の手のひらくらい、大きなものはピーターの顔くらいはあるそうだ。
「しなやかで破れない。そして薄く、なるほど加工しやすいようだ」
 ピーターの言葉通り、エルフたちが森の葉と呼んでいる葉はとても丈夫だった。
 これならどんな形の飾りにもなるだろう。祭りの主役だということも頷ける。
「流行りの観葉植物とも様子が違うようだ」
「観葉植物とは?」
「ああ、家の中で楽しむ鉢植えのことだ」
 今度はエルフたちが驚く番だった。
 ピーターの話す観葉植物について、興味深く質問を繰り返す。
 こうして植物についての交流は深くそして楽しく行われた。

●
 さて集落では森の葉の飾り作りも行われていた。
「なるほど、当日作りながら祝うのね」
「はい。祭りの日に森に感謝しながら葉を使うのが大切なんです」
 ロゼットは説明を受けながら見よう見真似で森の葉の飾りを作っていく。
「ふむふむ……ここをこうして、こっちに紐を通して」
 どうやら土台に飾り付けをして置き飾りを作っているようだ。
「この『森の葉』は何か特別な植物なの? それとも樹齢の長い木とか」
 飾りを作りながら聞いてみると、エルフたちは気持ち良く答えてくれた。
「森の葉は丈夫でどんなものにも応用できます。だからこそ大切にしたい」
「森の中のある場所に木が群生しているんです。毎年たくさんの葉を集めることができるんです」
「なるほどね」
 どうやら森の葉は沢山あるものだからこそ大切にされているようだ。
 ロゼットの飾りが完成した。
「うん。これで完成かな」
「素敵な飾りができましたね!」
「この葉飾りは祭りではどこに飾るのかしら。それとも身に付けたり?」
 言いながら辺りを見回す。
 そういえば似たような飾りがあちこちに置いてあった。
「ええ、ドアの横や広場の台座など好きなところに飾るんです」
「もう少し小さければ身につけるのも良いですね」
「そっか。それじゃあ飾らせてもらおうかな」
 ロゼットは自分の作った飾りを手に持った。
 それはとても軽くて、可愛らしく葉が揺れていた。

 ネモは小さな葉の冠を作っていた。
「む、なかなかいいのでは?」
 小ぶりだが、まず葉を繋げた輪が出来上がる。
「はい、あとは飾り用の葉を付けていけば良い飾りになりますよ」
「うむ、この葉は枯れた後どのような色味になる?」
「これなら黄色が残りますよ。こちらは茶色に。緑のまま色を保つのはこれです」
 エルフたちは一つ一つ丁寧に教えてくれた。
「こうしていると思い出すぞ、父に教えてもらったことを」
 ネモは育ての父に冠の作り方を習ったことを思い出す。
 感傷に浸っているのではない。あの当時は出来なかったことも、今ではできるのだと言ってやりたいのだ。
 せっせと手を動かし、自分なりに考えて葉の飾りを取り付けていく。乾燥後を想像することにより、木の葉でありながらカラフルな飾りになるはずだ。
「素敵な冠になりそうですね」
 エルフがネモの手元を覗き込む。
「うむ、これなら飾れそうだな」
「まあ飾る場所を決めているんですか?」
 問われて大きく頷いた。
 小さな輪っかの飾りにはたくさんの葉。これを付けて冒険をしていくうちに、乾燥してドライリーフになってくれることだろう。
 出来上がったものを被っている骨の角に飾るとちょうどうまい具合に引っかかった。
「こうして飾ろうと思うぞ」
「素敵ですね!」
「とても似合っていますよ」
「うむ!」
 ネモは父に報告するように大きく胸を張った。

 枝や葉を器用に組み上げているのはスィーリーンだ。
 一つ一つ細やかな作業だけれど、エルフたちと共に葉や枝を選びながら作っていく作業は楽しい。
 土台から組み上げて、後は飾り葉を重ねるだけだ。
「色の鮮やかな木の実も入れたら綺麗になりそうです。そちらの木の実を分けていただけないでしょうか?」
 スィーリーンはエルフたちの持つ木の実を見た。
 赤や黄色、紫など色とりどりの木の実があるようだ。
 きっと飾りつけに使ったら奇麗だと思う。
「もちろんです! 使ってくださいね。木の実をどうやって入れますか?」
「そうですね」
 しばらく考えスィーリーンは飾り全体を順に指さした。
「上から星が降るように流してみてはいかがでしょう。例えばこの蔦を使って、少し余裕を持たせて――」
 言いながらいくつか木の実を手に取り、めぼしい場所に当ててみせる。
「まあ! 素敵だわ」
「私も真似していいですか?」
「ええ、一緒に組み込みましょうか」
 スィーリーンはエルフたちと共にそれぞれの飾りに木の実を付けた。
 ここには純粋に森の葉の飾りを作る仲間がいる。授恵者に助けられたから外の者も受け入れてることを決めた素敵な判断のおかげだと思った。そしてこれが外界と交流する第一歩となれば更に良いのだけれどとも。
 森の葉の飾りが仕上がっていく。
「どうか楽しいお祭りになります様に」
 並んだ飾りはどれも美しかった。
「木の葉を材料にするのね……。すごいわ」
 アヴェラ・ウッチェロは出来上がっていく飾りを見て感心する。
「ええ、葉の組み合わせでこんなに印象が違うんですね」
 スィーリーンが頷いた。
 アヴェラも飾りを作ってみたいと申し出ると、すぐにエルフたちが材料を揃えてくれる。
 土台はある程度組み上がった物があるという。
 それならとアヴェラはエルフたちに教わりながら森の葉を順番に張り付けていった。
 華美なものではなく質素。だが見た目はとても綺麗だ。
 エルフたちの文化に触れる良い機会だとアヴェラは真剣に飾り作りに取り組んだ。
「基本は葉を重ねるように、あとは自分のセンスで自由にしてみてください」
 そう言われふと手を止める。
(メイド時代、あまり飾りつけや衣服なんかのセンスを問われる物は、苦手だったわね……)
 アヴェラは『わたし』を出すのがあまり得意ではない。
 料理も、掃除も、自分を出すのではなく、パターンの組み合わせだ。
 でも、と。
 並んだ木の実を見てエルフに提案する。
「ここに、小さな飾りを入れるのはどうかしら」
 今日は少し挑戦してみた。
「ええ! とても素敵だと思うわ」
 後押しされ良いと思う場所に木の実を付ける。
 ちょっとだけ『わたし』の作った飾りになったと思う。
「良い飾りになったようですね」
「ええ、完成ね」
 アヴェラだけの飾りが完成した。

 シャロン・ラ・モリエールもエルフたちと共に森の葉の飾りを作っていた。
「今流行っているのはこの編み方ですね。一番注文が多いんです。少し前はこういうので……」
 言いながらくるくると蔦を回して編み飾りを作り出す。
「まあ! これ素敵ね」
「これは置く飾りではなくて、身につけるものに編み込んだらどうかしら?」
 エルフたちが身を乗り出した。
 シャロンは幾つかバリエーションを作りエルフたちに見せる。こういう細やかな飾り作りは得意だ。
 エルフたちはさっそくシャロンの飾りを手本にして蔦を編み始めた。
「蔦を使うといえば、私たちは大きく編み目を作って飾りを作りますよ」
「そうなんですね」
 今度はシャロンがエルフの飾りを手本にする。
 今まで見たことのないパターンの飾りだ。
 単純な編み方なのですぐにでも覚えることができるだろう。
「しかもこの編み方なら短時間でたくさん飾りが作れそうですね」
「森の葉の祭りの日にはたくさんの飾りを作らなければいけないので」
 エルフたちが悪戯っぽく笑う。
「効率を考えるのは大切ですよ」
 シャロンはそう言いながら紐飾りをワンポイントに加えた。森の葉と蔦飾りを組み合わせた美しい壁飾りが出来上がる。
「どうでしょう、この壁飾りと交換していただけませんでしょうか?」
「ええ、それではこの置物をどうぞ」
 そうしてエルフの一人と森の葉の飾りを交換した。
「伝統的な手法を知れるなんて、素敵ね」
 エルフと飾りを交換する様子をリーザヴェールが見ていた。
「はい。技術交換ができるのは本当に良い機会です」
 シャロンがにこやかに頷く。
 リーザヴェールもにっこりと微笑んだ。
「私も作ってみたいなっておもったの。緑もお花も大好きだから」
「嬉しいです。森の葉はこれを使ってみてはどうでしょうか」
 周囲のエルフたちがいくつか森の葉を並べる。
「緑の、いい香り……」
 手に取ると、しなやかで丈夫だということが分かった。
 ゆっくり時間をかけてドライリーフにもできそうだ。
「森の葉はフィルエス大森林でしか取れないものなのかしら?」
「ええ森の中の、限定された場所にしかないと聞いています」
 エルフたちの説明を聞きながら、いくつか主になる葉を選ぶ。作るのは花冠のようなサイズのリースと決めた。
 葉に黄色い花を括りつけながら輪を作る。ススキも混ぜ込むと、色も落ち着いてまとまりのあるリースの形ができた。
 松毬なんかも括り付けると可愛いと思うのだけど、とリーザヴェールは首を傾げる。
「ねぇね、これは付けない方が可愛いかしら?」
「そうですね。私なら花を少し寄せてその中心にいくつかつけるかな?」
「あらそれは良いアイデアね」
 エルフたちと色々試行錯誤しながら形を整え、可愛らしいリーフが完成した。
 リーザヴェールは集落内に置かれた飾りを見回す。
 ここは本当に素敵なところだと思った。

●
「というと、普段は木の実の他に動物を狩って食べることもあるんだね」
 キュリアス=バルドゥはエルフたちの普段の生活について耳を傾けていた。
 他にもどんな植物が群生しているのか、植物を扱う場合の注意や狩った獲物の分配方法などなど。エルフたちが普段の生活について語ってくれる。
「それで、外の世界でも狩りはするのか? 冒険者は皆あれほど強いのか?」
 特にエルフの青年たちは外の世界での戦いが気になるようだった。
 キュリアスはしばし考える。
「しかし、僕は戦闘については語れたものじゃないからね……何の話が良いだろう」
 きっと自分たちにとって当たり前が彼らにとっては新鮮だろう。
 そういえば、と、キュリアスは手持ちの「通貨」を取り出した。
「通貨を知っている?」
「ああ、先日のコカトリス討伐依頼にも使ったな」
「普段は必要ないからな、長が管理していたかな?」
 エルフたちが通貨をまじまじと見る。
 存在は知っているようだが身近な物ではないようだ。
 外の世界ではお金が大切な事、誰でもお金を持っている事、お金をめぐって争いが起きることもある事などを話してやる。お金も立派な文化の結晶だと伝えると、エルフたちは目を丸くしていた。

 冒険者の話に興味を示すエルフは多い。
 アルマ・ヴァレンタインの話を聞きに来たのもエルフの青年たちだった。
「ボクが戦ったコカトリスはお花を食べていたよ」
「コカトリスが、花を?」
 エルフたちの間にどよめきが起こる。
「花を食べるとは……恐れを知らぬのか……」
 見たことも無い魔獣の話に顔色を青くする者もいた。
「金属製の装備で武装したオークの集団とも戦ったことがあるよ」
「弓でどうにかなる相手ではなさそうだ」
 それで、そのオークとの戦いはどうなったと言うのか。
 皆の視線が集まる。
「ちなみに辺境都市群での依頼だったんだけど、そこではオークを鍋で煮込んで食べ……」
「なっ?!」
「オークを?!」
 アルマが言い終えないうちにエルフたちが悲鳴を上げた。
 森の中で穏やかに暮らすエルフたちにとって衝撃的な話だったようだ。
「やはり外の世界はとんでもないな」
「だが……、面白そうではある」
 青年たちはすっかりアルマの話に夢中になった。
「そういえば、最近オオカミみたいなクリーパーが出たりしたんだ」
 村から町に行くような身近な間でだ。
「子どもたちには大人に黙って外を出歩くと危険だよっていうのも伝えておきたいんだよね」
「ああ、是非そうしてくれ」
 エルフたちはアルマの話を真剣に受け止め子どもたちを呼んだ。

 子どもたちと話をしているのはエリシェール・ミノン・リュキアだ。
「……集落での暮らしは、楽しいか?」
「お祭りはとっても楽しいよ!」
「今日は夜まで起きていても良いんだよ!」
 子どもたちの瞳はキラキラと輝いていた。
 掟……決まり事だとか伝統だとかは窮屈だったりしないのだろうか。
 聞いてみると子どもたちは不思議そうな顔をして首を傾げた。
 その中で一人の少女が目を伏せる。
「私は狩りに行きたいなあ」
「女の子は狩りはダメなんだよ!」
「……そうなのか?」
 この集落では狩りは男性の仕事ということだ。
「そうか。決まり事は窮屈だな」
「お姉さん分かるの?」
「……私は、窮屈だったからな」
 エリシェールはこっそりとフードを外し、自身の耳を見せた。
「あ!」
「外はすごいよ。自分がどんなに狭い世界で生きてきたか
思い知らされる」
 同じエルフであるエリシェールの言葉には深みがある。
 狩りをしたいといった少女は眩しそうにエリシェールを見ていた。
 そんな少女の頭を撫でてやる。
「もし許されるなら……色んなところへ行って、色んなものを見ておいで」
 与えられた常識や価値観じゃなく、いつか、ちゃんと自分で決められるように。
「うん!」
 何を知るにしたって、自分の人生を豊かにしてくれるものは多いのだ。
 エルフの少女はエリシェールの言葉を嬉しそうに聞いた。

「エルフの集落か……何だか懐かしい気分になるね」
 ロベリアも集落の祭りの様子を見ていた。
 素朴で、閉鎖的で、身内には温かい集落のようだ。
 だが今は冒険者を受け入れている。コカトリスの討伐依頼を決断し、結果感謝の意を込めて招き入れているのだとか。助けを求める決断が出来る人が居て本当に良かったと思う。
 少しずつでも良い方向に変わっていけるのなら冒険者としてもロベリアとしても嬉しい。
「こんにちは!」
「やあ、こんにちは」
 子どもたちが近づいて来た。やはり外からの者は珍しいようだ。
 これからの未来を担う子供達に外の世界のお話をしようかとその場に腰を落ち着ける。
「ボク等が来た街なんか、色々な種族の人々が行き交っていてね!」
「エルフ以外にいっぱい?」
「ああ、色々な文化、娯楽や服装なんかも本当に沢山あるのさ!」
 話の続きを促すように子どもたちが身を乗り出した。
「この間なんて、ゴリラ……は知っているかな? そのゴリラをメインに据えたお祭りなんかもあったんだよ」
「ええ?!」
「どうして!!」
 子どもたちが悲鳴を上げる。素直な反応がとても可愛い。
「後は火山地帯の温泉かなぁ~! あれは癒されたね……」
「わあー!」
 今度は皆手を叩いて喜んだ。知らなかったことを知るのはとても楽しいのだろう。
 ロベリアはせがまれるまま話を続けた。

●
 集落の中は皆が作った森の葉の飾りで満たされた。
 日が暮れ、人々が広場に集まり始める。
「皆の者、祭りの仕上げだ」
 集落の長ヴィルジュが大きく宣言した。
 わっと歓声が上がり、調子の良い演奏が始まる。集落のエルフたちが音楽に乗って踊り始めた。

 フィルエス大森林にあるエルフ達の里の祭りに呼ばれるとは、縁起がいい。
 エーデルワイス・エンゲルは踊りの輪に近付いた。
「さぁ……踊りのはじまりだよ」
 この際だ、自分にできることを全力でと足を踏み出す。
 日中エルフたちに踊りの型を確認してある。
 基本的に演奏は幾つかの曲をループして演奏するという。踊りは広場で自由に。毎回、いくつもの踊りの輪ができるのだとか。
 聞いていた通りエルフたちは好きな場所で輪を作り踊っている。
 エーデルワイスはエルフたちの踊りを見て目を細めた。
 普段は見ることのできないエルフの踊りは最高の宝物だと思う。
 それは彼女が踊り巫女であり踊り子でもあるから。
「それじゃあ仲間に入れてもらおうか」
 そう言ってしなやかに腕を伸ばした。
 エルフたちと同じ型で、ただしより優雅に華麗に大胆に。
 くるりくるりといくつもの輪の間を踊り抜けていく。
「素敵ね」
「楽しんでください」
 エルフたちがエーデルワイスに声をかける。
「ありがとう。貴方も楽しんでいるかい?」
 笑顔で返しまた踊った。
 木の楽器が奏でるのは素朴な音楽だ。
 だがエルフたちはとても楽しそう。
 ひと通り踊ったエーデルワイスは、続けてエルフたちの輪に入る。
「さぁ皆も踊った踊った!」
 輪を眺めているエルフたちにも声をかけ、祭りを盛り上げた。

「よーし。いっちょ、リブラネスタで覚えてきたヒューマン達の踊りを披露してやりますかっ!」
 ニーラ・メッコも踊りの輪の中に飛び込んだ。
 同じフィルエス大森林の集落といっても、ニーラの集落とは少し様子が違うようだと感じる。他種族に対してこれほど開放的になるなんて。
「まぁ、良い事だと思うけどね!」
 そう言ってぐんと腕を伸ばす。
 たしかリブラネスタでみた踊りはこんな感じだったはず。
 真似してくるりと回ってみると、近くのエルフたちから拍手が起こる。
 エルフたちは場所を変えながらゆらゆら揺れるように踊っているようだ。
 せっかくなのでその動きも見よう見まねで取り入れてみる。
「どうよ? 上手に踊れてた?」
「楽しければ、それで良いのです」
 優しいエルフたちが頷いた。
「わははははっ! 上手くなくてもいいのよ! 楽しければいいのよ!」
「きゃはは! 楽しいの良いよね!」
 踊りの輪の中の子どもたちが手を挙げる。
「ありがと! ほらほら! 皆で踊ろ!」
 祭りの夜だけは特別、夜まで起きていても良いそうだ。
「わーい! おどるよ!」
 子どもたちが近寄ってくる。
 皆でステップを踏めばそれだけで笑顔と楽しい気持ちでいっぱいだ。
 ニーラは子どもたちと共にくるくると回って踊り続けた。

 子どもたちに囲まれているのはアイリーン=N=フェルクスも同じだった。
「今日のアイリは旅商人じゃない……! 絶世の美少女、踊り子アイリーンだよ!」
 そう言って大きく派手な踊りを振りまいていく。
 目元は赤いアイメイク。たまには可愛いだけじゃないところも見せようかと、大胆な動きで踊りの輪の中心へ。今日のアイリーンは少し雰囲気が違うようだ。
「きゃははっ」
「たのしいねぇ!」
 アイリーンにつられるように子どもたちもくるくる回った。
「おいで~皆! アイリお姉ちゃんがリードしたげるからさ♪」
「うん!」
「いっしょにおどる!」
 子どもたちを引き連れ、大きくステップを踏む。
 すると周囲からは拍手と喝采。
「いつもの祭りとは一味違いますね」
「ああ、楽しいな」
 エルフたちはアイリーンの踊りを見て笑いあった。
「ほらほら次はあそこだよ♪」
「わかったー!」
 アイリーンは次の踊りの輪を目指し跳んだ。その大胆な動きがまた人々の注目を集める。子どもたちの笑い声が後からついて来た。
「さあ回ってポーズだよ!」
「わーい」
 掛け声をかけて子どもたちと一緒にポーズ。
 どうか集落の皆の思い出になりますようにと。
 子どもたちの笑顔も、アイリーンの踊りも、すべてがキラキラと輝いていた。

 踊りを眺めている女性たちを見つけ、Shaadeeが両手を広げた。
「やぁやぁ、素敵なご婦人たち! よろしければ僕と一曲踊っていただけないか!」
 まるで劇を演じるかのように声高らかにエルフを誘う。
「あの、私たちは……貴方とは種族が違いますが……」
 エルフたちは戸惑いの表情を浮かべた。無邪気な子どもたちとは違うようだ。
 Shaadeeはそんなご婦人方に笑顔で手を差し出す。
「恥ずかしながら踊りは不得手でね、どなたかご教授願いたい」
 戸惑いも不安も吹き飛ばすほどの大仰な仕草だった。
「この出会いを大事にしたい」
 だからどうぞ、お手をと。
 すると一人のエルフがおそるおそるShaadeeの手を取った。
「さあ踊ろう! 最初の一歩は?」
「次の打楽器の音を聞いて一緒に踏み出しましょう」
 教えてもらったタイミングで二人はステップを踏んだ。
 エルフはぎこちなく、それでも穏やかな表情でShaadeeを見ている。
 何度かくるりと回り素朴な音楽にも慣れてきた。
 ひと区切りついたところで互いに礼をして距離を取る。
「次は私も良いですか?」
 別の女性も近づいて来た。
「もちろん! 殿方だって、子供だってご老人だって構わない」
 いつの間にかShaadeeの周りには踊りの輪ができている。
「素敵な夜をありがとう! 次までには、もっとうまく踊れるように練習しておくよ!」
 Shaadeeが微笑むと、エルフたちも笑顔で頷いた。

 集落の夜は更けていく。
 祭りの音楽は夜通し森に響いていた。

マスターコメント

エルフの集落でのお祭りにご参加いただきましてありがとうございました。とても楽しい一日になったかと思います。
イベントシナリオ

イベントシナリオ易しい 報酬:標準20 / 4〜20人

2020年11月14日 14時48分42秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ノノア

    ノノアよ。よろしくね。 わたしは仮装というのをしたことないので、エルフさん達に何か似合うのを見繕って着るのも楽しそうね。

  2. シャロン・ラ・モリエール

    ごきげんよう。シャロンと申します。 森の葉の飾り作りに挑戦してみたいです。 内職は得意なので、エルフの方たちと技術交流したいです。

  3. ロイ・アウレア

    ロイ・アウレラと相棒のルプスです(隣に座る狼を撫で) 前作に参加させて貰った縁でヴィルジュさんと話をしたく参加しました。 皆さま、宜しくお願いします。

  4. アルマ・ヴァレンタイン

    アルマだよ、どーぞよろしく。 『エルフたちと話をする』で別のところで戦ったコカトリスのお話とか、 辺境都市群の面白い?村のお話でも(字数が足りれば)しようかなと思ってるよ。

  5. ニーラ・メッコ

    キャスターのニーラ・メッコよ。 よろしくね!

  6. スィーリーン

    スィーリーンと申します。 よろしくお願いします。 私は森の葉の飾りを作ろうと思います。 細工物を作るのは好きなので 色々教えて頂きたいです。

  7. リーザヴェール

    リーザヴェールよ。 私は森の葉飾り作りを教えてもらいたいと思っているの。 ドライリースもとても興味があるわ。 ご一緒する皆様、よろしくねぇ。

  8. No.8

    シーフのエリシェール。 ……うん、子供たちと話してると思う。

  9. No.9

    はーい、美貌のキャスター! シャーディーくんです! 踊ってるか演奏してるかどっちかになるかな。 ご一緒したひとはよろしくね。

  10. エーデルワイス・エンゲル

    踊り巫女のヒーラー、エーデルワイス・エンゲルさね。 踊りを披露する予定だね、 今回はよろしくお願いするよ。

  11. No.11

    よろしく頼む 仮装はもう既にやりまくってしまっているし、木の葉飾りを作ろうと思う

  12. No.12

    リオネルだ。よろしく頼む。 そうだな、せっかくなら子供たちと話ができればと思っているところだ。 一緒になることがあればよろしくな。

  13. ロベリア

    やあ、ボクはエルフのロベリアだ、見ての通りの悪い魔女だよ。 エルフの集落か…久しいなぁと思い、参加させてもらった。 いきなり開放的になるのは難しいだろうが、少しずつでも外部との交流を良い方向で持っていけてて素晴らしいね! ボクは今回誰かと行くとかは決めてないので…今の所はお話するか踊りを楽しむかで考え中だよ。

  14. ロゼット

    ヒューマンの神官ロゼット、よろしくね。 大森林に来るのは初めて、森の葉の飾り作りに参加しようかな。 色々と教えてもらいたいわ。

  15. ピーター・フトリッチ

    挨拶が出遅れてしまいました。ハーフビーストのピーターと言います。 今回は飾りを作ろうと思います。植物と聞いてきたもので。

  16. アヴェラ・ウッチェロ

    アヴェラ・ウッチェロよ。よろしくお願いするわ 私も飾りを作ろうと思うわ。

  17. アイリーン=N=フェルクス

    アイリーン=N=フェルクスだよ~ 踊っちゃおうかな~♪踊っちゃうよ~♪ お誘いあらば一緒に踊るよ~♪

  18. キュリアス=バルドゥ

    挨拶が遅れてごめんね。 吟遊詩人のキュリアス=バルドゥだよ。 今回はエルフの里の郷土文化を識るにまたと無いチャンスだ! 僕の経験や腕前を披露するのもやぶさかではないが、僕は彼らの話を聞きたいね。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0