刻々と移り行く時代の中で
真柄 葉
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シナリオID:116
オープニング
「薄暗い」
「うっ」
抑揚の無いこいつの声はいつ聞いても冷たさを感じる。
「かび臭い」
「ううっ」
遠慮も容赦もない物言いは小さい頃から何も変わらない。
「場所が悪い」
「うぐっ」
正論過ぎて何も言い返せなくなるから誰も友達いないんだ。
「店の名前がダサい」
「うぐぐっ」
「商品がぼろい」
「ぬぬぬぅ」
指摘じゃない。これは完全に私見が混じってる。
「店主は可愛い」
「うっ……はあっ!?」
「とにかく、流行る要素が微塵もない」
「ちょ、ちょっとさっきなんて言ったっ!?」
聞き間違えか!? と詰め寄るも、鉄面皮を崩さない幼馴染は淡々と続ける。
「このままじゃ、年末には閉店だな」
「うぐっ……そ、それはわかってるわよ!」
「わかっていて何の対応もしない店主に、これ以上の融資はできないぞ」
「な、なにもしてないわけじゃない!」
正直いって、お店は儲かっていない。さらに言えばがっつり赤字だ。
もちろん何かやらなければいけないのはわかっている。わかっていたからいろんな事をやった。
来店者に流行りのドリンクをサービスしたり(ドリンクだけ飲んで何も買わずに帰る奴ばっかりだったけど!)。大道芸人呼んで店前でアピールしてみたり(ご近所さんからうるさいって大クレーム来たけど!!)。顧客の新規開拓だと訪問販売もやってみた(押し売りと間違えられて門前払いされまくったけど!!!)
「何でもやればいいってものじゃない。成果が出なければそれは全て無駄だ」
「うぐぅ……!」
なんだこいつ、私にとどめを刺しに来た暗殺者かなにかか!?
「おかげで返済も滞っている」
「そ、それは今払ったでしょ!」
「先月分は? 今月分は?」
「ぐぬっ……そ、そこは何とか、幼馴染のよしみでもう少し待ってもらえたりは……」
瞳を潤ませ上目遣いに見上げる。どうだこの野郎。
「先月もそう言っていたよな? 先々月も」
「ぬぐぐ……」
効果なしと。ええ、わかってましたとも……。それでもこう、なんだ。長い付き合いなんだからもう情状酌量とかそういう何かあっても――なんて思ってるから商売もうまくいかないのか……。
「お前には商才がない。いい加減、店を畳んで早く俺のよ――」
「それくらいわかって――今なんか言った……?」
「待てるのは月末までだ。それまでにきっちり金を用意しておけよ」
「ちょっと待て、今なんか言っただろ!?」
「なんだ、あまりに店が流行らなさ過ぎて、ついに幻聴まで聞こえるようになったのか?」
「なんだと、この根暗性悪野郎!?」
あ、普段思ってる事が思わず口から出てしまった。
「口が悪い。そんな事じゃ嫁の貰い手が――うん? どこへ行く気だ」
「……ちょっと一人にして。今日は閉店するから、あんたもさっさと出て行って」
言って、セイルはカウンターから奥の控え室へ向かう。
「ちょ、ちょっと待て。か、金はどうする気だ!」
「さっき払ったでしょ。もう忘れたの? ボケが始まってるんじゃない?」
仕事とはいえ、毎度毎度よくも飽きずに。お前は私のオカンか。
「なんだと!? これは先々月分だろ! おい、待てって! もう少しお話を楽しも――」
セイルは背中に幼馴染の罵声を浴びながら、ドアを閉めた。
●
帝国崩壊以降、爆発的に増えた授恵者はそのほとんどが冒険者として登録され、リブラネスタへ訪れる者も大いに増えた。
結果、冒険者ギルドのお膝元であるこの街は、増え続ける人口や観光客を受け入れる為、冒険者街として新たな土地を開拓し、真新しい建物を次々と建設していった。冒険者達のおかげで街が好景気に沸く一方、旧市街の方はどこか時代に取り残されたような、長閑な雰囲気が漂っていた。
「はぁ……どうしよう」
階段で三階の自室に上がってきたセイルは、椅子に腰かけ大きなため息をついた。
窓から見える旧市街の街並みをぼーっと見つめる。
「冒険者街はきっと賑やかなんだろうなぁ。お客さんも多いのかなぁ」
セイルは同じ街なのに一度も訪れた事のない場所に思いを馳せる。
冒険者ギルドの本拠地で、今この大陸で一番HOTなスポット。華やかなで煌びやかで活況で盛況で、誰もがうらやむ一大都会。そして、冒険者達を相手に鎬を削る商人達の魔窟――。
「いやいや、私があんな海千山千の商人達の中でやっていけるわけないし、うーん……」
この旧市街でもここ最近ですっかり馴染みになった冒険者達は、人類の敵を相手取るだけでなく様々な悩み事も解決しているという。
「冒険者……冒険者……? そうだ冒険者がいた!」
何かを思いついたのかセイルが勢いよく椅子から立ち上がった。
●
レドレスは手近な紋具を手に取り埃を払う。
随分と年季の入った照明具だ。価値の有無はわからないが丁寧に使い込まれたそれは、使い手の愛情が感じられた。
「こんな店があるから、あいつはいつまでも……」
照明具をハンカチで磨くと、味のある真鍮色が浮かび上がった。
「いっそ、この店を――」
「あれ? あんたまだいたの?」
「ほおあわぁあぁああぁぁ!!??」
突然かけられた声に、レドレスは飛び上がった。
「な、何ようるさいなぁ……」
「ででで、出てくるなら一言言ってから出てこい!」
「はぁ? なんで私の店であんたの許可とらないといけないのよ。気色悪いわね」
「きしょっ……!?」
セイルの訝しむ視線に、レドレスはひくひくと頬を震わせる。
「ちょっとどいて。私今から出かけてくるから」
「え……? お、おい! どこに行くんだ!」
「冒険者街よ」
「は……?」
セイルの答えにレドレスはぽかんと口を開けた。
「冒険者に依頼してくるわ! この店を立て直すためにね!」
「……えぇぇぇっ!!??」
ふふんと鼻歌を歌い意気揚々と店を出ていくセイルを、レドレスは絶叫で送り出した。
解説
マスターより
リプレイ
「素敵な店構えじゃないか。これ程趣が感じられる店構えはそうはない」
古いが造り手の粋が感じられる佇まいに、キオルティスは感嘆の声を上げる。
「そ、そうかな?」
祖父の店を褒められ、セイルは照れたように笑った。
「うーん、でももうちょっと清潔感が欲しいよね、女子としては」
と、サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブが腕を組み首をかしげる。
「そ、そうだよね……」
「あの……中を拝見してもいいかしら?」
落ち込まないで? とサフィラからいい子いい子されてたセイルに、キャル・イルセインが問いかける。
「あ、うん、もちろん。汚い所だけどどうぞ!」
言ってセイルは冒険者達を店内へと通した。
●
無秩序に積み上げられた古紋具の数々は、埃に埋もれているものも多い。
「あはは……一応、掃除もしてるんだけど、なんせ数が多くて」
セイルが渇いた笑いでハタキを振る。
「これは香炉やな。んで、こっちは――これは何に使う物やろ?」
「それは多分、砥石ね。以前森で見かけたことがあるわ」
エクレア・グリモワールとカメリア・ローレンスは、山のように積まれた紋具を手に取ると、興味深く観察していた。
「すごい……まるで宝箱みたいね」
店内を独特の言い回しで例えたキャル。目を輝かせながら店内を見て回る。
「宝石箱にきらめく無数の輝き。目の肥えたレディ達にはまさに宝の山だね。この趣ある店の雰囲気もとてもマッチしている」
てくてくと店内を歩き回るキャルに護衛騎士よろしくぴったりくっつくキオルティス。吟遊詩人らしく、キャルの話に詩的に合わせた。
「あれ……これは?」
と、キャルがふと目に留まった古い木札を手に取る。
「あー、えっとそれは値札かな。掠れて読めないんだけどね」
頬をハタキの柄でポリポリと掻きながらセイルが説明する。
「値札? ちゅーことはこれ全部、値段ついてるん?」
「うん、一応ね。お爺ちゃんが値付けしたから、全然把握してないんだけど……はは」
「はぁ!? そりゃあかんて! 商売すんのに、値段わからんってなに売るつもりや!?」
「うっ……ごめんなさい」
思わず語気を強めてしまったエクレアにしゅんと肩を落とすセイル。
「っと、あー、すまん! 別に責めてる訳やないねん。ちょっと驚いただけなんや」
そんな様子に、エクレアは大きく頭を下げた。
「とにかくや、問題はどんどんわかってきとるから、一個ずつ解決してこ」
顔を上げ提案したエクレアに、皆がうんと頷いた。
●貸金屋『千年亀の天秤』
「まったく! なんであいつはいつもいつも……ああ! くそっ!」
机に積まれた書類を払いのけ、レドレスは両手で机を殴りつけた。
(アレテイルデゴザイマスネ)
ガラス越しに中の様子をうかがうギ・ガガ。思う事があり、店の手伝いを抜けここにやってきていた。
コンコン――。
「っ!?」
突然窓をたたく音に、レドレスが振り返った。
「ギギ……スコシオジャマスルデゴザイマス」
「だ、誰だっ!? ここは3階だぞ!?」
「ベツニ、イノチヲトリニキタワケデハゴザイマセン」
窓からするりと体を滑り込ませ、部屋へと降り立ったガガは、驚きのあまり顔を引きつらせるレドレスにぺこりと頭を下げた。
「オイラハ、セイルニヤトワレタ、ボウケンシャデゴザイマス」
「なにっ、セイルに!?」
その名を聞いた途端、レドレスは前のめりにギギに迫る。
「スコシオハナシガアッテ、キタデゴザイマス――」
●
「まず、整理整頓からだね!」
「そうね。この店に何が置いてあるのか把握しないと、何を売ればいいのかわからないわ」
早速三角巾&エプロン姿へ着替えたサフィラとカメリア。長年積もった埃を払い始める。
「これは……どこに置けばいいかな?」
細い筒状の紋具を持ってきたキャルがセイルに問いかけた。
「ここじゃ掃除の邪魔だよね。一先ず、表に出そっか」
「いや、この辺りにはあまりお付き合いしたくない人々も多そうだ。店外はやめておいたほうがいいだろうね」
大陸の中でも治安のいいリブラネスタであっても、やはり光と影がある。
キオルティスはそれを指摘し、セイルを止めた。
「2階もあるのだろ? 一先ず邪魔なものは2階にあげてはどうだろう」
「え? でも、ここよりひどい有様だよ?」
キオルティスの提案に、セイルは天井を指さした。
「うわぁ、2階もあるのかぁ」
と、そんな二人の話を聞き、なんとか掃き掃除を終えたサフィラががくりと肩を落とす。
「はは、もう一戦ね、サフィラ」
「にゃぁい……」
カメリアは項垂れるサフィラの背中を押し、2階へと上がっていった。
「よっしゃ、うちは値段のつけなおしや。魔法にはちょっとばかし自信があるからな」
エクレアが服の袖を捲る。
「あの……わたしも手伝っていいかしら」
「もちろんやで! ほなキャルさんはまだ読める札に目印着けて行ってくれる?」
「うん……わかったわ」
エクレアのお願いにキャルはこくんと頷いた。
●
「セイルニキイタデゴザイマス。コチラニシャッキンガアルト」
「そうだ。それがどうした」
「カンタンイウトデゴザイマス。シャッキンヲチャラニスルデゴザイマス」
「……はぁ!?」
突拍子もないガガの提案に、レドレスは思わず声を上げた。
「キイタハナシデハ、ヘイテンヲキョウヨウシテルトカ。ソレハカンゼンニあうとデゴザイマス」
「な、何が悪い。あの店さえなければ……」
「ソレデハ、ナニモエラレナイデゴジアマス」
「それは……店もあいつ――い、いやなんでもない」
「モクテキト、シュダンヲマチガエチャ、イケナイデゴザイマス」
ガガはぴしゃりと言ってやる。
「目的と、手段だと。……詳しく聞こうか」
「カシコイセンタクデゴザイマス」
完全不審者然とした登場だったガガは、すでにレドレスのアドバイザー的地位を獲得しつつあった。
●2階
「あれ……これは何かしら?」
1階よりもひどい有様の2階の片隅で、キャルが古びた金庫を見つけた。
「あ、それお爺ちゃんが残したものなんだけど――」
紋具をわりと雑に片付けながらセイルが答えた。
「へぇ、金庫か。なかなかロマンあふれる逸品じゃないか」
「え、金庫!? 見たい見たい!」
「これは……随分古い物の様ね」
いつの間にか集まってきたシーフ三人。
「でも、開かないよ? 鍵もなくしちゃったみたいだし」
「そうなんだ……残念」
セイルの言葉に、キャルはしゅんと項垂れる。
「にゃ! まったまった! ここに居るのは誰だと思ってるの!」
と、サフィラがびしっと手を上げアピール。
「あたし開けるよ!」
「おっと、レディ。それは俺も立候補したい所だね」
かと思いきやキオルティスも手を上げ。
「私もこの手の金庫は初めて見たから興味があるわ。試させてもらえるかしら?」
カメリアまでも続いた。
「うん。でも何が入ってるかわからないよ? お爺ちゃんは紋具の触媒が入ってるとは言ってたけど……」
セイルは祖父から聞いていた話を伝えるが――。
「何が入ってるのかな~、罠もあるのかな~♪」
と、サフィラは大きな錠前をツールでつつき。
「流石に罠は仕掛けない……と思いたいわね」
カメリアが裏に回っては構造を確認する。
「もしかしてこれ自体が紋具という可能性もあるね」
どこかに触媒がないかと探すキオルティス。
「……聞いてないね」
「うん……聞いてなわね」
「まぁ、シーフにお宝。まぁ切っても切れへん仲やしな」
お互い意見を交わしながら金庫に挑み始めた三人を、残りの三人は呆れながら見つめた。
●
朝から始めた作業は、色々脱線もありつつ結局夕方まで続いた。
「さて、こんな所かなー」
サフィラが額の汗をぬぐう。
「ふふ……サフィラさん、おでこが真っ黒よ」
サフィラの額に着いた煤汚れをキャルが拭いてやる。
「くく、そーゆーキャルもおひげできてるで?」
「ふぇ!?」
キャルが慌てて口元を抑える。先ほどサフィラを拭いた布で――。
「ははは、皆、盛大に汚れたわね」
「なに、レディ達はどんな姿になっても美しいよ」
カメリアやキオルティスもまた、埃と煤で真っ黒に汚れていた。
「ふぁ……これがうちの店……やば……めっちゃお洒落……」
そんな冒険者達を横目に、セイルは改めて店内を見渡す。
整然と並べられた商品。分かりやすく大きく書かれた値札。動線を意識した秀麗なレイアウト。
「冒険者街にある店を参考にしてみたのだけど、気に入ってくれたようなら嬉しいわ」
店内レイアウト構築を担当したカメリアが微笑んだ。
ゴミ屋敷寸前だった店は、皆の献身のおかげで今や立派な商店へと変貌していた。
「さて、いよいよ明日から本番ね」
「うん……頑張って交渉するわ」
カメリアとキャルが互いに頷き合った。
「チラシは手書きやから数ないけど。まぁ、看板もあるし大丈夫やろ!」
「ああ、皆で作った渾身の一作だからね。きっと人目を引くに違いないよ」
エクレアとキオルティスが明日に向けてチラシと看板を確認する。
「オナカスイタデゴザイマス」
「にゃあっ!? ガガっち、いつの間に!?」
いつの間に戻ったのか、ガガがギューッと鳴るお腹を押さえた。
「あー、でも確かにお腹すいたかも。そろそろいい時間だしね」
「そうだと思って用意してるよ! 皆、3階にどうぞ!」
セイルに案内され3階へと通された冒険者達は、決戦前のささやかな宴を楽しんだのだった。
●翌日
冒険者街の大通りで。
「新装開店やー! みんな、寄っといでー!」
エクレアが街行く人々にチラシを配っていた。
「お、兄はん! ええ商品あるで、どないやろ?」
「あ、そこの綺麗なお嬢ちゃん! とっておきの品用意してるで!」
「おばちゃんおばちゃん! 今日だけの大特売やで!」
ここぞとばかりに見定めた人物へ、ご自慢のチラシを手渡していく。
「紋具の買取もやってるで! ぜひ来てや!!」
エクレアは小さな体で精いっぱいのアピールをしていった。
旧市街地で。
「――うん、そうなんだ。少し足を延ばしてもらえると助かるんだけど、どうかな?」
「ふーむ、あの路地か」
キオルティスは旧市街を巡る自警団の元を訪れていた。
「見返りと言っちゃなんなんだけど――」
と、キオルティスは一枚のカードを取り出す。
「寄ってくれたらドリンクをサービスさせてもらうよ。もちろん紋具を買ってもらうのも大歓迎だ。どうだろう、休憩所代わりにでも構わないからさ」
「ふむ、悪くない提案だな」
こうして、キオルティスは自警団の警らの約束を取り付けた。
冒険者ギルドでは。
「――なるほど、お話は分かりました」
「あの……お願い出来そうかしら……」
キャルはセイルの店の販売ルート構築の為、ギルドを窓口に使えないか交渉に訪れていた。
「そうですね。興味を惹かれる話ではありますが……何せ紋具商は数も多いですからね」
「だめ……?」
ギルド職員にそう言われ、しゅんと落ち込むキャル。
「でも、冒険者の方たってのお願いを無下にはしません。一度上の者と相談してみますね」
キャルはハッと顔を上げる。そこにはギルド員の和やかな笑みがあった。
2階の倉庫では。
「あとはこれをこうして――」
先日に続き、サフィラが金庫と格闘していた。
「んー! もうちょっと……」
鍵自体がさび付いているのか、なかなか思うようにいかない。
それでもサフィラは根気強く開錠を進めている。
「あ! これ――ここじゃないかな……」
そして、ついに最後の一ピースとなる突起を錠前の中に発見すると。
「ていっ!」
カチッ――。
「開いたぁ!!」
二日間の格闘の末、ついに開かずの金庫の開錠に成功した。
そして、1階では――。
「セ、セイル。もう一度確認なのだけど、本当にこれが制服なの……?」
「うん! 今決めたの!」
「今!?」
カメリアの格好に、セイルはむふっと満足げに鼻息を荒げた。
「わ、私には店の護衛っていう役目があるのよ……? さすがにこのひらひらは――」
カメリアが着せられているのは、セイル曰く制服との事なのだが、どう見てもゴシックなお人形さんスタイルの服。
「大丈夫! それ動いても絶対見えないから!」
「い、いや、そういう問題じゃなくて――」
「だって、お店の前で帯剣した眼帯のお姉さんが睨みを利かせてたら、誰も入ってこないでしょ?」
「そ、それはそうなんだけど……」
「あ、ほらお客さんが来たよ! いらっしゃいませ! ――ほらカメリアさんも!」
「い、いらっしゃいませ!」
こうして、ぎこちないながらも二人は新装開店初日の最初の一人を迎え入れた。
結果、この日の店はそれなりの繁盛を見せた。もちろん、改装前と比べれば、だが。
●
「邪魔するぞ」
「邪魔だから帰って」
「お邪魔した――じゃないわ!」
「もう、なによ。あんたの辛気臭い顔で折角のいい気分が台無しじゃない」
店にやってきたレドレスに思い切り顔を顰めるセイル。
「お前という奴は……まぁいい。今日は話があってきた」
「なに? また借金の話?」
「借金? ああ、そうだ借金の話だ」
「ふーん」
いつもならドキリと身構える話だが、今日のセイルに焦りはなかった。
「ふふーん、どうだ!」
と、セイルが出したのは紋具の触媒となる宝石や鉱石の数々。そう、金庫には確かにお宝が存在していたのだ。
「これで借金はチャラよね!」
「お、おう。そうか、それじゃそれを質に回し――ごふっ!? おま……か、げん……」
なぜかレドレス側に立っていたガガの一撃がレドレスに食い込む。位置的に丁度大事な所なのは、まぁ仕方がない。
「レドレスニカワリ、オイラガセツメイスルデゴザイマス。コノ『魔法使いの――」
悶絶するレドレスに代わり、ガガは一つの提案を始めた。
それは、店の借金をチャラにする代わりに経営権の一部譲渡を求める。いわゆる共同経営者とならないかというものだった。
「……皆はどうおもう?」
ガガの話しを聞いたセイルは、他の5人に意見を求める。
「えっと……悪くはないかな。今日は幸いお客さんが来てくれたけれど、今後はどうなるかわからないから」
と、キャルが。
「そうね。セイル一人でこの店は少し大きすぎるかもしれないわね」
カメリアが。
「うん、思い出が沢山詰まってる店だもん。閉店とか取り潰しとか嫌だから、あたしもいいとおもうよ!」
サフィラも頷き。
「うち等も毎日来れる訳やないし、後ろ盾はあって損はないやろうな。うちも賛成やで」
エクレアが。
「最終的に君が決断するんだ。大丈夫、ここに君の決断にケチをつけるような奴はいないさ」
最後にキオルティスが。
「……うん、皆、ありがとう。――というわけで、レドレス」
「お、おう」
「私は――」
冒険者達の後押しもあって、セイルはレドレスとの契約を改める決断をする。
こうして古紋具店『魔法使いの空き瓶屋』は、冒険者達に背中を押され、新たなスタートを切ったのだった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2020年10月31日 11時59分03秒 公開
相談掲示板
いっちばーん!! シーフのサフィラだよっ!よろしくねっ! つぶれそうな原因が山盛りだけど、がんばってたて直していこーっ!
二番、斥候ノ、ガガデゴザイマス オイラトシテハ、店ヲドウノヨリ、レドレスノ同行ヲ気ニスルツモリデゴザイマス 何トイウカ……恋ノ波動ヲ感ズルデゴザイマス 後学ノ為ニ、気ニナルデゴザイマス
三番、シーフのカメリアよ。よろしくお願いするわ。 どんな感じに依頼を進めていくかだけれども、まずは整理整頓からかしら。 今回シーフの人が多いから、金庫を開けられる可能性は高そうではあるわね。
4番、ヒーラーのキャルよ。よろしくね。 セイルさんのお爺さんから引き継いで経営しているなんて立派ね。すごいわ! 老舗でイベントも行っているから少し人気ありそうで亡くなったお爺さんの知り合いはきっといるし……手伝いたいの。 でも、一年経営して借金苦になっているみたいね…… その場しのぎだと商才はあまり期待できないかな……? できたら、あの……老舗として、軍や冒険者ギルドと提携した方が良さそうね…… リーンエス王国のパンクリアース学園に教材になるか確認したいかな……?
お、今回は点呼式か。5番、エクレアちゃんやでー、よろしゅうな! もう良さそうな案がいくつも挙がっとるなぁ。 うちは店の知名度上げるために、ビラ配ったりしてみよかと思っとる。
>キャルさん ちょっと辛辣だけれども率直な分析ありがとうね。 全てがそういう用途の紋具ばかりではないと思うけれど、紋具を卸すルートを作るのはいいアイディアだと思うわ。 問題はコネというか、どうやってその契約を結ぶかね… >エクレアさん 知名度を上げてお店のことを広く知ってもらうのもいいアイディアだと思うわ。 ビラ配りをする場所は冒険者街かしら。そうすると冒険者街の商人達は顧客を奪われないようにという観点から妨害行為を受ける可能性もあるかしら、解説 > 補足 で書かれているものね。 その場合、キャルさんの案みたいに商人に上手く紋具を売り込めれば卸すルートを作れるかもしれないわね。無論絶対に妨害行為を受ける訳ではないから、もしかしたら、ってところね。
>カメリアさん (顔を赤らめて)契約にはセイルさんの夢と情熱……かな? あの……セイルさんは負けん気が強い性格で…… 普通に経営してたら閉店セールできたとおもうけど、色々試して大変になっているの。 (押し売りに思われるほど)売れると思って訪問販売にも手を伸ばしているから勇気ある方だと思うわ。 きっと飛び込みセールスも性格的にできるはずよ。 商談はセイルさんにしてほしい……かな。 えと、チラシや商品リストを携えて、商談かしら? 気に入ってもらえないなら廃品回収する代わりにチラシ(注文リスト)を置いてもらうとか、 得意先になってもらうまで何日か掃除してがんばりを認めてもらうかな……? それでもだめなら次に行くしかないね。 ギルドと友好的なところなら冒険者が付き添うと話を聞いてもらえると思うよ。
お店のこと知ってもらうためにもチラシ配りは効果がありそうだよねっ! おじいさんの時代の常連さんにも配ってみたら案外来てくれるかもしれないねっ♪ そーいえば、謎のパトロン(レドレス)は味方に付けれるかもしれなさそうだけどどうやって丸め込もう…?
(読み間違えてて恥ずかしいところだけれども、「店に繁盛してほしくない謎の誰」というのはサフィラさんの言う通りな気がするわね、ごめんなさい。)
盛大に出遅れてしまったね…すまない。 キオルティスと言うよ。今回は宜しくね。 さて…と。今の所の流れだと、セイルさんのお店の今後は… ・卸し問屋1(主に軍/ギルド向け。また教材提供も含) ・卸し問屋2(主に冒険者街の商人向け) ・老舗として古い常連への再提供 …と、言った所、かな? 卸し問屋としては…確かにそれだけの需要では成り立たないかもしれないけれど (実際にどう言った古紋具を扱っているのか不明だしね)良いアイデアだと思う。 そういう意味では商人側との卸し契約を結ぶって言うのも良いね! あとは老舗としての復活、だけれど…常連さん=おじいさんとの年齢差が少ない って考えるのが自然だよね。…とすると、常連さん自体が御年を召して いらっしゃることを考慮して。実質売込むのはその子供や孫に…と言った所かな? 且、冒険者街に行っていない、となると、セイルさん達の町の警邏に当たっている 冒険者も少なからずいるだろうし、そっち方面とのパイプを作る、とか。 あとは出向して常連さん達本人から足を運ばせることなく、買取に伺う、とか。 …そんな感じ、かな? 謎の誰かさんは…そうだね、自身にセイルさん関係のメリットを提示するのが 良いと思うんだけど。…そう簡単には思い付かない、よね(苦笑
レドロスニ関シテハ、オイラガ接触シテミルデゴザイマス 恋ノ波動ヲ感ジルデゴザイマス
大体キオルティスの纏めてくれている通りかしら。 補足するなら冒険者街で宣伝(ビラ配り)しよう、というところかしらね。 実際のところ、「古紋具あり〼」なんて言っても「紋具」じゃどんなことが出来るものがあるのかわからないものね。 宣伝にも売り込みにもチラシは使えそうだから作成したいところね。キャルさんの言う通り商品リストも必要だけれども…リストが有るならそれを使えばいいし、無いなら整理整頓をしながらの作成になるかしら。有るとは思いたいけれども。 売り込みだけでなく、買取も出回るというのはいいかもしれないわね。そこらへんもセイルさん任せになりそうだけれども。 商談に関しては伝手が無くて取り合って貰えない、なんて事も考えなきゃいけないのかもしれないけれども、そういうのがある人の方が少ないだろうから余り考えない方がいいかしら。 商談自体は在庫の紋具について把握してるだろうセイルさんが行うのは良いとして、話術とか紋具に詳しい人が居れば同行して貰えるとより良いかなとは思うけれど、私はその何方とも言えないから難しい所だわ。
にゃ!昔の常連さんにまた来てもらうつもりでチラシ配りを提案したんだけど、子どもやお孫さんに売り込むのもいいかもっ! そこから口コミでお店の名前が広がれば、新規のお客さん獲得に繋がりそうっ! あ、そういえばシーフのみんなは金庫の鍵開けチャレンジする?(かくり)
あとは普通の来店客向けにポイントカードなんかも良いかもしれないね。 客層のリピ率を上げる「何か」が有るのは良いかなぁ…と。 >鍵開け 未だ迷い中だよ。何か面白いモノが出て来るならやってみても良いけれど… それだけの価値を賭けるモノなのかどうか、だね。 あとはやる気にしてくれる「何か」があれば…かな?(笑
直接的な客層へだけでなく、幅広く宣伝する感じね。子供は紋具とかそういうものに興味を持ってくれるかもしれないから、そういう手も有効そうね。 お店に足を運んでもらってからのことも考えられると更にいいかも、というところね。常連になるメリットを考えられるとと思うけれど、それこそポイントカードかしら。 鍵開けについては私はダンジョン用に用意したものがあるからチャレンジしようと思うわ。開いて良さそうなものがあればお店に並べてもいいし、そうでなければそうでないで失うものもそんなには無いもの。時間くらいかしら。
心情部分を抜いた仮プレを投げておくわ。心情部分などを抜いて300文字くらいになるけれども、一人での行動範囲はこんなものかなと思っているわ。 ↓ここから仮プレ ◆方針 店の整理整頓、チラシや商品リストの作成、金庫の解錠を試みる ・探波や看破等を活用して山積みになっている紋具を整理、紋具(商品)を道具屋のレイアウト等を参考に配置する。 ・同時に商品リストの作成、または既に存在していればそれをまとめる。紛失している場合は店内を探してみる。商品リストから宣伝、商談に使うチラシを作製したい。 ・シーフズツールを利用して金庫の解錠を試みる。開けられればラッキー、開かないようならそこまで時間はかけない。 開いて良さそうなものがあればお店に並べるなり、返済の足しにしてもいい。用途はセイルさんに任せる。 ・店の開店時(営業時)は店の警備にあたる
にゃ!じゃあ、あたしもチャレンジしてみるから良かったらカメリアもいっしょに鍵開けチャレンジしてみない? あたしのメインの行動は昔の常連さんにチラシ配りと子ども&お孫さん世代への宣伝と、金庫の鍵開けチャレンジ、それから個人的にお店の紋具の整理整頓しながらスケッチして記録を残そうかなっ
>鍵開け チャレンジするけど↓に投げた仮プレの通り開けられたらラッキーくらいの認識よ。
レディ2人がやってみるなら、俺もやってみよう>鍵開け 巧く行くと良いね。 メイン行動としては ポイントカード制作提案、地元の冒険者へのパイプ作り。鍵開け。 あとはチラシ制作の手伝いと、チラシ配り時に内容を伝える手助け、かな? 基本的に地域密着型ってカンジだね。