隠れ家仲間と秋の恵みのピクニック

キャラクターノベル(グループ)制作 おおくまねこ納品 2023年10月02日 23時01分53秒

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「んー、のどかな景色だ。もうすっかり秋だね。さて、この辺にあったと思うんだけど……」
 それは、ある晴れた秋の日のこと。アステルは一人、辺境都市群の森を歩いていた。彼は今日、近くの街でギルドで受けた依頼をこなしたのだが、来る途中にビッグオウムから見えた、謎の煙の正体が気になっていたのだ。火事ではなさそうだがなんだか気になってしまい、その場所を探すことにしたのである。しばらくアステルが森を歩くと、ふいに開けた場所に出た。

「おや、こんなところにお屋敷が。煙はここから出てたのかな?」
 アステルは眼前に広がる廃墟に目を見開く。それは何年も手入れされていなさそうな古いお屋敷だった。しかし、不思議な事に、人の気配を感じる。
「まさか、お化け屋敷じゃないだろうね」
 アステルはブルっと震えた。アステルは勇敢な冒険者だが、幽霊の類は苦手だ。

「よし、帰ろう」
 アステルは踵を返した。
 うふふ……あはは………。
「はぉう!?」
 アステルはぴーん! と背筋を伸ばした。屋敷の中から、子供の笑い声が聞こえてきたのだ。
(廃墟から子供の笑い声!? まさかガチのやつ!?)
 カチンコチンに固まるアステルだが、冒険者の本能か、すぐには逃げ出さず、固まったまま屋敷を凝視する。その時、二階の窓がガラっと開き、ひょこっと小さな少年が顔を出した。
「出たー!? ……あれ、アドルフさん?」
「アステルさん?」
 意外な再会に、二人は目を丸くした。

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「どうぞ、アステルさん! 座って座って!」
「そうか、ここは君達の隠れ家だったのか」
 アドルフ・ジーノに屋敷の中に案内されたアステルは大きなソファをすすめられ、腰を下ろした。オバケ屋敷かと思われたアドルフたちの隠れ家だが、廃墟なのは外側だけで、秘密基地の中はちゃんと掃除されていて綺麗なものだった。屋敷の中にはアドルフだけでなく、隠れ家仲間のカミンル・マオ、キリアン・フィッツジェラルド、イーティルもいた。

「初めまして、アステルさん。僕はカミンルと言います!」
「ワタシはイーティルだ。見ての通り、オオカミの獣人(ハーフビースト)だよ。よしなに」
 初顔合わせの二人が自己紹介をすると、アステルは二人と順に握手を交わした。
「二人とも、初めまして。アステルだよ。よろしくね。アドルフさんとキリアンさんとは顔見知りなんだ」
「アステルさん、お久しぶりです。どうしてここに?」
 顔見知りのキリアンはアステルに尋ねた。
「散歩中に、ちょっと見かけてね。まさかキミ達の秘密基地だとはね。てっきりお化け屋敷かと思ったよ。でも、中はこんなに綺麗なのに、どうして外は綺麗にしてないの?」
「ああ……それは……」
 アステルの言葉にキリアンは苦笑する。その時カミンルはチチチ、と指を振った。
「それはですね、綺麗にしちゃうと隠れ家っぽくないからです!」
「そうそう! ここは『星見の隠れ家』だから!」
 ドヤ顔のカミンルと、ぶんぶんと首を縦に振るアドルフ。子供らしい二人の意見にアステルは「なるほど」と微笑む。
「ここ、けっこう立派なお屋敷だったみたいだけど……勝手に住んでるの?」
 さらなるアステルの問いかけに、今度はイーティルが答えた。
「いや、ちゃんと許可は取ってるよ。アドルフたちと一緒に、ここの地主と交渉したんだ。けっこう話の分かる人だったよ」
「そうそう! 遺跡を発掘とかしたの! ゴーレムと戦ったりもした!」
「ああ、そんなこともあったね。入り口が謎解き(リドル)になってて」
「へえ、面白そう! せっかくだし、詳しく教えてよ!」
 身を乗り出すアステル。
「ええ、もちろんです。ストーブで焼き芋でも焼きながら、お話しましょうか」
 キリアンはニッコリと笑い、食糧庫からお芋を取ってきた。
「うん、お願い。……私がビッグオウムから見た煙の正体は焼き芋(これ)だったのか……!」

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「みんなで紅葉狩りに行こう!」
 星見の隠れ家の仲間達はアステルとの親睦会歓も兼ね、みんなで一緒に紅葉狩りピクニックに行くことにした。これは、アドルフ達が春に行きそびれたピクニックのリベンジでもある。場所は近くにあるあんまり高くない山。魔獣やクリーパーが出るという噂も特にない平和な場所だ。だが、念のためにイーティルは出発前に全員の腰に大きな鈴を括り付けてくれた。

「この鈴は何です?」
 カミンルが問うと、イーティルが答えた。
「クマよけの鈴だ。秋に食欲が増えるのは人間だけじゃない。クマも冬眠前のエネルギーを蓄える。けど、クマは臆病だから、こっちが人間だと音で教えてやれば、ほとんどの奴は寄ってこないんだ」
「さすが、狩人ですね!」
「イーティルさん、物知りなの!」
 カミンルとアドルフにキラキラした眼差しで見つめられ、イーティルは照れくさそうに耳をピコピコさせた。
「じゃあ出発しましょう。忘れ物はないですね?」
「はーい!」
 キリアンが問うと、愉快な仲間達は元気よく返事をした。

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「~♪」
 森に慣れ親しんでいるイーティルを先頭に、五人はてくてくと山を歩いていく。最後尾では、自分の荷物のほかに調理道具をたくさん担いだカミンルがのっしのっしとついてきていた。見た目は可愛いが力自慢のウォーリアだけあり、大量の荷物を背負っていてもカミンルは平然としている。

「ジーノ君は山歩きは初めてかい?」
 イーティルが問うと、アドルフは頷いた。
「うん。遊びで山登りするのは初めてだから、なんか新鮮」
 アドルフはにこにこしながら言った。

「あ、かっこいい木の枝発見!」
 アドルフはいい感じの木の枝を拾い上げた。どうやらそのまま持っていくつもりらしい。
「ジーノさん、武器なら本物を持ってるのでは」
「それはそれ! これはこれ!」
 無邪気なアドルフの様子にキリアンは苦笑する。

「アステルさんはハイキングとかされます?」
 カミンルが話しかけると、アステルは頷いた。
「うん。風景画を描くために、山や森に入ることはあるよ」
「すごい! 画家さんなんですね! どんな絵が得意なんですか?」
「水彩画だよ。綺麗な景色を見ると、それを他の人にも見せてあげたくなるんだ」
 カミンルが目を輝かせながら尋ねると、アステルはニッコリ笑った。

「あ、見てみて! あそこ! キノコ生えてる!」
 アドルフは木の枝で木の根元を指差した。そこには、絵本に出てくるような綺麗な形の、赤いキノコが生えていた。
「おいしそう! 食べられるかしら?」
 アドルフは期待に満ちた眼差しで皆を見た。
「少々お待ちを! 図鑑持ってきました!」
 カミンルは持ってきた図鑑のページをめくり、キノコと見比べる。
「あ、これは駄目です! ベニテングダケ! 毒です!」
「残念……とてもおいしそうだったのに」
 アドルフはしょんぼりと肩を落とす。すると、キリアンがポンと肩を叩いた。
「そう気を落とさずに。食べられるキノコもきっと生えてますよ」
「ああ。せっかくだ。休憩がてら、キノコ探しでもするかい?」
 イーティルがそう提案すると、皆は頷く。
「よし、みんなでキノコ集め競争しよう!」
 アステルは腕まくりした。

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 隠れ家の仲間達は手分けし、たくさんのキノコを集めた。そして、再び集合して山道をまた登り始めてしばらくした時……。

「あっ見てみて! あそこ、シカがいる!」
 アドルフは興奮した様子で叫んだ。彼が示した方向には、立派な二本の角を生やした大きなシカがいた。
「おお! シカですね! 僕はシカにはちょっとうるさいですよ!」
 キリアンの声はアドルフに負けず劣らずテンションが高かった。一向は立ち止まり、シカをじっと観察する。シカは首をこちらに向けたままじっとキリアン達を見つめ返してきた。
(ああ、立派な角だなあ! 角笛にしたらいい音が出そうだ!)
「……狩るかい?」
 イーティルは歯をキラリと輝かせ、キリアンに問いかけた。キリアンは一瞬考えたが、シカに目を輝かせているアドルフやアステルの方をチラ見した後、「くっ」と小さく呟き、首を横に振った。
「今日はアドルフさん達もいますし、ジビエハントは無しにしましょう……!」

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「「うわーきれーい!」」
 ほどなくして、五人は山頂についた。秋風が心地よく、適度に雲も出ている。何より山頂には、たくさんの色鮮やかな紅葉が、まるで皆を歓迎するように咲き誇っていた。
「――ああ、すごく綺麗だ」
 アステルは感嘆し、ため息を漏らした。
「ええ、ここまで来たかいがありましたね」
 キリアンもにっこり微笑む。
「ここでお弁当食べましょう! 僕もうお腹ペコペコです!」
 カミンルが大量の荷物を降ろしながら叫ぶと、皆は「さんせーい!」と答えた。
 ……。
「マオお兄さん、見て見て! この切り株は調理台に使えそう!」
「そうですね! 一個しかないので交代で使いましょう!」
「さっきみんなで取ったキノコ、選別しよう! 食べられるやつと、食べられないやつ!」
「僕もお手伝いしますよ。カミンルさん、図鑑お借りしますね。キノコは毒キノコと食べられるキノコが見分けにくいものも多いですから」
「さて、ワタシは火を起こすとしようか。アステルも手伝ってくれるかい」
「うん、もちろん!」

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 約一時間後。手分けして料理をした星見の仲間達のお弁当が出そろい、いよいよお待ちかねのランチタイムだ。
「僕のお弁当はこれなの!」
 アドルフはお弁当箱のフタをパカッと開けた。すると、黄色と茶色と緑の三色に彩られた鮮やかな弁当が冒険者達の目に飛び込んできた。

「わあ、綺麗なお弁当ですね!」
 カミンルはアドルフの弁当を覗き込み、目を輝かせた。
「えへへ、キリアンさんにお手伝いしてもらったの。綺麗な色のお弁当にしたかったから」
 アドルフは、はにかみながら答えた。
「黄色は刻んだたまご焼き、緑はなんかの野菜だとして……この茶色いのはなんだい?」
 イーティルが首をかしげると、キリアンが口を挟んだ。
「ああ、それは『そぼろ』ですよ。鶏肉をミンチにして、調味料と炒めて味付けしたものです」
「なるほど、これも肉なんだね」
 イーティルは感心した。

「僕のお弁当はこれです! アドルフさんに合わせて和風弁当にしてみました!」
 カミンルもじゃじゃーん、と自分のお弁当を開陳する。カミンルが作ったのは、おにぎり・卵焼き・から揚げの三点セットと、真っ赤なウインナーと味噌(みそ)スープだ。
「ウインナーはここで焼きました!」
「タコさんウインナーか。形が可愛いらしいね」
「でしょう! こっちのスープもぜひ飲んでみて下さい!」
 カミンルに勧められ、一同は味噌スープをすする。
「「変わった味だけどおいしい!」」
「これはシャルガネの『味噌』を使ったスープです! シャルガネのスーパー調味料は醤油(ソイソース)だけではありません! 用意した野菜やお肉で出汁と、キノコや山菜も投入してみました」

「さて、ワタシの番かな」
 続いて、イーティルも弁当を披露した。心なしか、自身に満ち溢れた表情である。彼女が弁当箱をパカッと開けると、鼻の粘膜を溶かさんばかりに香ばしい香りが辺りに漂い始めた。
「ワタシが用意したのは山鳥(やまどり)の焼き肉と、牛の魔獣(ビヒモー)の焼き肉と、猪の焼き肉だ。秘伝のタレも持って来たよ」
「「全部肉だー! でもおいしそう!」」
「次は僕ですね。こほん。僕のお弁当は栄養満点、お肉と野菜のお弁当です! 山々と自然をイメージしてみました」

 キリアンの弁当は肉と野菜がバランスよく配置された、栄養満点の弁当だった。アドルフやカミンルがお米メインの弁当なのとは対照的に、キリアンの弁当ではライ麦を原料としたパンが添えられている。野菜の一部には来る途中に採集したヤマグリやギンナン、ナッツ、ノビルなどの秋の恵みが入っていた。

「みんなすごい! 私はさっき皆で採ったキノコを焼いたよ! このキノコとみんなのおかずを交換してくれるかな?」
「「するするー!」」
 こうして、星見の隠れ家の仲間達のおかず交換大会が始まった。満足いくまで交換した後、皆はパチン、と料理に手を合わせる。
「「いただきます!」」

「「外で食べる食事はまた別格だね!」
 分けてもらったおかずをほおばりながら、にっこりと笑うアステル。
「うん! みんなで食べるごはんはおいしいの!」
 アドルフも釣られて満面の笑みを浮かべた。

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「こほん。では少し、私も特技を披露させてもらおうかな」
「わあ。立派なキャンバス!」
 アステルが紅葉が見えやすい位置に移動し、画材を取り出すと、アドルフは目を丸くした。
「せっかく紅葉が綺麗だからね。スケッチしておこうと思って」
「水彩画ですよね? 僕、お水汲んできますね! あっちに滝を見つけたんです!」
 カミンルは桶を担ぎ、ぴゅーっと飛び出していった。
「どうぞ!」
「ありがとう、マオさん」
 水がたっぷり入った桶を受け取り、アステルは微笑む。

「……では失礼……」
 アステルは景色をじっと見つめ、集中し始めた。シュッシュッと慣れた手つきで筆を走らせる様子を、アドルフとカミンルは興味深そうに見守っていた。
(とても綺麗だなぁ。僕もこんな綺麗な絵が描けるようになりたいよ)
(アステルさん上手だなぁ!)

「さて、ワタシは昼寝でもするかな」
 イーティルは紅葉の木の一本に背中を預け、すやすやと寝息を立て始めた。

「平和ですね……」
 キリアンは美しい風景とくつろぐ友たちを眺めながら、ここ数年のことを振り返っていた。
(僕の故郷たる帝国が新たな道を歩むとも、平和に向けた僕の役目は変わりません。縁を紡ぐ事、人と人との取り成しをする事……僕がアドルフさん達の輪と溶け合えたように)

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「お待たせ!」
 アステルが木の陰から見守っていた仲間達に声をかけると、アドルフ達は先を争うようにアステルの方に突っ走ってきた。

「わあ、すごい! 綺麗です!」
「本当だ! 綺麗な紅葉! 本物そっくりですね!」
「なかなかやるじゃないか。アステル」
 カミンル、キリアン、イーティルが口々にアステルの水彩画の感想を口にする。そして、アドルフがキラキラした瞳でアステルにこう問いかけてきた。
「うん! とってもお上手! これ、秘密基地に飾っていい?」
「ちょっと恥ずかしいけど、飾ってもらえるなら喜んで」
 アステルは笑顔で答えた。

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「イーティルさーん。そろそろ帰りますよー」
 カミンルに揺さぶられ、イーティルは目を覚ました。どうやらうたたねのつもりがすっかり熟睡してしまったようだ。
「こうして森の中で昼寝をするのもいいものだねえ。またいずれ来たいものだよ。今度は季節を変えてみても別の景色が見られていいかもねえ」
 背伸びをしながらイーティルが笑う。
「みんな、今日はありがとう。また、遊びに行こうね」
「「ぜひ!」」
 アステルの言葉に、皆は満面の笑顔で答えた。

 こうして、隠れ家の仲間達はアステルの歓迎会を兼ねた紅葉狩りピクニックをたっぷり楽しんだ。

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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0