服についての考察、亜人編

キャラクターノベル制作 ウケッキ納品 2023年08月24日 10時05分48秒

●服についての考察、亜人編
 
 森の奥にある研究所兼自宅。
 その一室に【ストレガ・L・リベルガストラ】は立っていた。水着で。そう、暑いのだ。
 目の前には助手である【レゼル】が用意した水風呂がある。木製の簡単なものだが体を冷やすのにはちょうど良い。
 屈んだストレガは水着で隠された張りのある双球をあますことなく揺らしながら、水の温度を確かめる。冷たすぎない良い温度だった。
 軽く胸元に水をかけてから、ストレガは水風呂に足先からゆったりとつかる。彼女の果実がぷかりと浮かび上がる。
「少年、冷たくて気持ちがいいのだー、早く少年も来るのだ!」
「は、はいっ、今行きます!」
 それからストレガとレゼルは共に水風呂を楽しんだ。
 暑い時の水風呂が心地よく、やはり水遊びは良いなとストレガは思う。
 しばらくしてからストレガたちは水風呂から出る。なお、レゼルが真っ赤になっていたのは言うまでもない。まあ、いつものことだが。
 そして、ストレガ洗濯場に行く。自然風を身体で浴びながら身体を覆っていた最後の布を取り払う。形のいい乳房も、尻も全てがさらけ出された。今、彼女は何も纏っていない。取った布は適当に干した。
 普段であればレゼルが近くにいる為にある程度の衣服を身につけてはいるのだが、今レゼルは水風呂の後片付け中だ。まだしばらくはこっちにこないだろう。
 自然風で濡れた身体を乾かしながら、干してある衣服を見てストレガはふと考える。この世界の衣服についてだ。
 亜人であるオーク族を倒した時の事を思い出す。
 彼らは鎧で武装していたし、大事な部分は布などで隠すだけの知性があったように思える。勿論、衣服を制作というよりは奪った物を着たり、剥いだ獣の皮を適当に身体へ巻き付けていたりするわけだが。それらも立派な衣服ではある。
 でっぷりとした脂肪の鎧があるからか、はたまた衣服を着たくないだけかはわからないが、彼らは多めに肌を露出している傾向があるように思えた。
 森を切り開き、簡単な集落を形成する所から考えても原始的な服装の概念はあるのかもしれない。
 更に考えるならば、石器時代程度の文明でありながら、特異個体が出た場合はその限りではないと言える所だ。
 特異個体は通常よりも強力な個体になる上に、簡単な生産活動が可能な者までいる場合がある。そうなれば、石器時代を超えてより鉄器に近い生産活動もできるやもしれない。その場合は、彼らもより人のような衣服をまとうのだろうか。
「……可愛らしい衣服を着たオークや紳士らしい服装をしたオークか。ふむ、見て見たい気がするのだ」
 とは言え、特異個体の発生はまあまあ確認されているがいまだそのような整った衣服を着たオークがいたとは聞いたことがない。いずれ、相まみえることがあったらいいなあ、是非研究したいとストレガは思うのだった。
 さて。ではコボルトに関してはどうだろうか。
 オークと似たように集落をつくり、石器時代的な道具を扱うまでは同じだ。
 だが彼らはきっと衣服をあまり纏ったりはしないだろう。なぜなら、彼らの身体には毛皮があり、その下には鱗が存在するからだ。
 衣服は体毛の代わりを果たし、寒さや暑さから身を守る役目を持つ。毛皮や鱗が既に備わっている彼らがそれを必要とするとは考えにくい。
 鉄器を生産し扱うといった感じではないが、拾った鉄器を扱える上、鉱石を好んで採集する習性からもしかしたら鉄器文明が花開くことも可能性としてはあり得る。
 とはいえ、そうなった場合はただでさえ頑強な彼らがより強化されてしまう為、きっと広まる前に討伐などされてしまうだろう。興味はあるが、危険性を無視してまで研究することはできない。
 現状ではコボルトは衣服を纏うというよりは、防具的な意味合いで布や革、拾った装備を使っているのだろう。
「可能ならば全部の毛をむしって……いや、それは流石に酷いかもなのだ」
 では、トロルならばどうだろう。
 彼らの体躯は巨大でその力も尋常ではない。知性は動物並みと言われる彼らだがその彼らですら、何かしらで股間を隠すという頭はあるようだ。
 腹が大きくなったようないわゆる妊婦が発見されていない種族ではあるが、一体どういう衣服の概念があるのだろうかとストレガは考える。
 股間を隠す、ということは最低限そこの部位を見せるのが恥ずかしい、またはみっともないとされているのか。
 それとも、股間は弱点の極みであるが故に守るという意味で隠しているのか。こればかりは彼らに聞いてみないとわからないのだろうが、生憎、交流できる可能性はかなり低い。
「どうやって繁殖しているのか……謎が謎を呼ぶ。いずれ研究対象にしてもいいかもなのだ」
 ならば、ジャイアントはどうだったか。
 彼らは伝承に語られる存在ではあるが、体躯が大きく筋力に優れるという点はトロルに類似する。
 とはいえ、個体数が少ない上に情報が少なく、考察するには研究資料は足りない。
 彼らが稀に持つとされる年代物の物品から想定するならば、かつて高い文明を持っていた可能性がある。要は失われた文明種族の成れの果て、かもしれない。そうなればかつては衣服を纏っていた可能性もあり得るが、現状は不明なままだ。
「いつか会ってみたいものなのだ。敵対しないのであれば……ふむ、難しいか」
 考えるのならば外せない存在にケンタウロス……人馬族の存在がある。
 彼らは人間種と同等の知性を持ち、物々交換もたまに行うなど他の亜人よりかは近い存在に思える。とはいえ、不用意な詮索は禁物な相手ではあるが。
 ストレガが仲良くなった聖地の人馬族に関しては、鍛冶の概念や服飾など人間種に近い特性が垣間見えた。
 服飾ができるのならば彼らの文化には、服を着飾る、呪術的な意味合いを込めるなど文化的な側面がありそうだ。他の亜人種と違うのはそう言った所かもしれない。
「また会いに行けるといいのだ。きっと有意義な交流となるはずなのだー」
 自然の風で長い髪を揺らしながら、ストレガは伸びをする。形のいい乳房はそのままさらけ出している。羞恥心がないからか、丸出しだ。もし、ここに男性が来たとしても彼女は意にも介さないだろう。
 とは言え、青少年には刺激が強いのもまた事実。いつレゼルが帰ってきてもいいように、手近な布を胸に巻き付け、腰にも布を巻く。布越しの乳というのもまあ刺激的ではあるが、全裸よりはマシだった。
 適当な切株に座ると、ストレガは考察の続きを行う。一度考え始めるとそうそう止まらないものだ。
 魚人……マーマンたちは水の中、という特性上衣服というものにはこだわっていないように思える。
 もしもあれば、耐水性を考えられたものだろう。地上で着るような普通の衣服であるならば、それらは水中での活動に支障をきたす為、邪魔と判断されるに違いない。
 鱗がある故にコボルトと同じように衣服はそこまで重要視されない可能性もある。
 だが聞く所によれば、海藻や貝類で身体を装飾したりする概念がある様子。それは着飾ることと同義であり、文化的ともいえる。
「水中という限定的な条件下で為される装飾、それはそれで興味があるのだ」
 そこにレゼルがやってくる。水風呂の片づけが終わり、風呂上がりに丁度いい牛乳を持ってきたようだ。
「ストレガ様、また何か考えていたんですか?」
「うむ。少し衣服に関しての考察をしていたのだ」
 寝食を共にし、レゼルはストレガの表情から大体今は何を考えていそうだな、ということが少しはわかるようになっていた。彼女の考察や研究を邪魔しないように行動していた結果の現れでもある。
「少年、亜人と我らが違うのは何だと思う?」
 ストレガの質問に少しレゼルは考えた。
 レゼルはヒューマンであり、ストレガはゴブリナだ。それら二種と亜人の違い。
「高い知能とか、文化を持つか……ですかね?」
「大体はその通りなのだ。我らは文化を持ち、知性を扱って物を作る。彼ら亜人も似たようなことはするが、まだ原始の域を出ない場合も多いのだ」
 ハーフビーストやリザードマン、ゴブリンにヒューマン。それぞれ違いはあれど、衣服を纏う。半裸で歩くことも暑い地域ならあるが、それでも下半身の衣服は簡素なものではなく、文化的だ。
 亜人との違いは何か。
 それはヒトがヒト足る為に必要な文化的な要素なのかもしれない。
 裸で生活し狩猟し繁殖する。それはすなわち獣と同義である。本能のままに生きるということなのだから。
 衣服を纏い、思慮し、行動する。本能が求めるわけでもなく、文化的な意味合いで物を作る。それらを楽しむ知性を持つ。それが文化的というものだ。
 獣とは違う、そう言いたいが為に我らは衣服を纏い、知性を生かして文化を成すのかもしれない。ストレガは考えながらそう思った。
 更に言うなら断定はできないが、要素として分類するなら身体保護、体温調節、コミュニティの自覚、自己表現といった所だろう。
 身体保護の必要性はヒューマンを見ればわかる。
 鱗を持たず、体毛も防護という程はなく、頼るには貧弱だ。
 弱点である部位も体毛はあれど、守られているとは言い難い。
 その状態で尖った草木のある場を通れば裂傷、擦り傷は免れないだろう。
 素足で足場の不安定な所を歩けば転びかねない上、石や岩で足を切ることだってある。
 更に体温調節の意味合いを考えるならば、衣服は必須だろう。
 寒い地域に住む獣は体毛で体温が下がり過ぎないように防護している。だがヒューマンにはそれがない。
 体毛がないわけではないが、極寒の地域の寒さにはないに等しい薄さだ。それを補う為に厚手の衣服を纏い、寒さへの耐性を得る。身体能力ではなく、知性で行う克服と言える。
 コミュニティの自覚に関しては諸説あるだろうが、一番わかりやすいのは“自分がどこの誰なのか”というのをわかりやすくすることだろう。
 例えば、騎士団ならば同じ鎧や服装を揃え、見ただけでどこの騎士団か一目瞭然。
 逆に市民ならば、住んでいる地方の特性がその衣服にも反映されるだろう。そうなれば最低限どの地方の人なのか、と言ったことは見ただけでわかるというものだ。
 最後に、自己表現。
 これに関してはストレガとレゼルを見ても違いが分かるだろう。
 レゼルは一般的なヒューマンの少年であり、肌や髪にもこれと言った特徴はない。
 ストレガは褐色の肌であり、紋様を身体に書き記している。肌は露出が多く、動物の骨を好んで身に着ける場合が多い。
 これらは自分なりの自己表現の結果であり、それは衣服を着ている文化的な一面が作用していると言えるのではないか、ストレガはそう考えた。
 議論を交わしながら、ストレガとレゼルは互いの考えを語り合う。
「少年よ、亜人が文化を持つ可能性はあると思うのだ?」
「そうですね、現状では難しいかなと。危険性のある亜人のオークやオーガに知性のある特異個体が生まれたとしても、きっと討伐対象になってしまうでしょうし、隠れ潜むといったまでの知性はないでしょうからね」
 レゼルの着眼点はもっともだった。
 先にも述べたが、特異個体は知性の高い存在がいる場合がある。
 それが友好的な種族であるならば何も問題はない。
 だが、オークやオーガのような敵性種族であるならば、話は別だろう。
 知性が高いのならば群れを成し、統率の取れた彼らは非常に厄介だ。
 もしも、その知性のある個体が何らかの方法で鉄器を生成することができたとして、それがオークのコミュニティに広がり、一般化したのなら……石器武器で武装していた頃とは危険度が段違いに跳ね上がるだろう。そんな事態を冒険者たちが黙って見ているわけがない。危険な個体は討伐されて然るべきなのだ。
 ストレガは牛乳を飲み干す。少し零れた雫が谷間に垂れるが特に気にしてはいない。
「ならばなぜ、文化的な衣服を用いるには知性が必要か。それは覚えているのだー?」
 先日教えた所なのだーと左右に軽く身体を揺らしながらストレガはレゼルの答えを待っている。
 レゼルは少し考えながら、その答えを導き出した。
「えっと、文化的な衣服を生成するにはある程度の高い技術が必要だから、ですかね?」
「うむ! よく覚えていたのだー! 私は感心したのだっ」
 ぎゅっとレゼルを抱き締め、ストレガは満面の笑みを浮かべる。弟子の成長を師匠は嬉しく思うものだ。なお、レゼルはとある理由で息ができなくなっているが、もがくだけにとどまっている。まあ、声が発せないだけなのだが。
 文化的な高機能、良い装飾の衣服を生成するには繊維を引き延ばし、糸を作る必要がある。
 これに関しては高い技術が必要な上、繊細な指の動きも必要になってくる。質のいい糸を作るにはなおさらだ。
 そんな繊細で高い技術を要する行為を、現状の亜人が特異個体の知性だけで行うにはまず無理と言っていいかもしれない。
 糸を用いる要領でロープなども作れるのでもしも出来るのであれば、文化が飛躍的に進む可能性がある。
 更にその糸から布を作るとなると、これまた大変な作業が必要になるだろう。
 布を作るには、糸を編みそれを織って布へと変えていかねばならない。
 これをやるには手作業ではかなり時間が掛かる上に、織機などの器具を扱うのも作るのもそこそこの技術が必要だろう。
「職人の技術には感謝せねばならないのだ。技術を持たぬ人々でも、彼らのおかげでその恩恵に預かれるのだから」
「彼らの技術は目が見張るものがありますからね。正直、職人さんに頭が上がりませんよ。自分で作れとか言われたら、出来る気がしませんから」
「うむ。では今度馴染みの職人へ差し入れを持っていくのだ。きっと喜ぶと思うのだー」
 そうこう話をしているうちに、ストレガはある事に気が付いた。
 それは最近目にするようになった神材の装備についてだ。
「そういえば、神材の装備は素材とかどうなっているのだ? まさか、迷宮神が夜なべして作っているとか?」
 ストレガにそう言われたレゼルは、夜なべでせっせと神材の装備の素材を作る迷宮神を思い浮かべた。もしも頑張って作っているのなら、それが手に入って喜ぶ者を見たらきっと迷宮神も小躍りするだろう。まあ、そういうことがあり得るのならば、だが。
「だとしたら喜ぶ姿を見て見たいものですね。作った物を手に入れて喜んでいるのを見るのは、職人冥利に尽きると思いますし」
「ふむ、それならば迷宮神に差し入れを持っていく必要が? いや、この場合はお供え物? どっちなのだ……」
 話し込んでいるうちに寝る時間になり、レゼルが寝床で寝たのを確認したストレガは机に向かってペンを走らせる。気になったことをまとめているようだ。
「下着と水着に関してはどちらも薄布だが、用途が違うものだと言わざるを得ない。耐水性や密閉性を高めたのが水着ならば、通気性や扱いやすさを高めたのが下着となるだろう。ふむ、見た目は変わらんと思うのだ」
 ふと、今まで見た男性たちをストレガは考えた。
 ストレガの衣服も露出が高く、下着とまではいかないまでも谷間や尻、太ももがよく見える。
 当然、魅力的な身体に男性の目が注がれることもあり、それらは一様に胸や尻を眺めていることが多かった。
「露出が多いと雄としての特性を刺激するのかもしれないのだ。魅力的な雌を見て、生殖本能が刺激されない雄はいないのだ」
 自然界でも雌がアピールで雄を引き寄せることはある。生殖で増える生物ならば、全てが当てはまる事なのかもしれない。
 そしてストレガは考える。レゼルの事だ。
 今の彼は少年だ。勿論、そういった話題を積極的にする必要性はない。知識として知っておく必要はあるかもしれないが。
 だが数年の後に成長して、彼が青年となった時。そういった話題は避けられなくなってくる。
 時に姉であり、師であり、親である彼女にとって、レゼルにこういったことを教えるのはストレガの役目かも知れない。だがその場合の想定が思い浮かばないのだ。
 かといって、親を失い行く場所のないレゼルの世界は彼女のいるここだけだ。本来は親や友人、または恋人から教わることが彼にはその機会すらないと言える。
「ふむむ……これが、親の苦悩なのだ? いや、姉の苦悩? 師の苦悩? うーむ……まあ、なるようになるのだ」
 いずれレゼルは成長し青年となるだろう。
 その時の彼とよく話し合い、必要であれば教えていくことにしようとストレガは思い、ペンを置く。
 寝床に入り、やってきた穏やかな眠気と共に彼女は夢の世界へと旅立つのだった。

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