空を映した海に、二人
キャラクターノベル制作 空色みなも納品 2023年08月06日 16時57分19秒
●
君は空。
日の光を浮かべて、蒼く輝いている。
僕は海。
君の光を一杯に浴びて、碧く煌めいている――。
●
磯の香り。
耳をすませば、波の騒めき。
天を仰げば、蒼があり。
砂浜が描き出す白の先には、エメラルドを散りばめたような海が一面に広がって。
「見て、ユーリ! 海がすっごく綺麗!」
ルアンナ・ミュラーの緑の瞳が、海の翠を映している。
「あ、ああ。とても透き通っていて、美しい海だな」
その後ろに立つユーリ・トレーガーが目を細めているのは、太陽の日差しのせいばかりではないだろう。
なにより、彼も初めて見るルアンナの水着姿が眩しいのだ。
珊瑚色の生地に、白のフリル。
胸元と、腰に赤いリボンがアクセント。
大胆ではない清楚なデザインとはいえ――水着は、水着。
愛しい恋人が、開放的な衣装を身に着けているのである。
ユーリだって、どぎまぎしてしまおうものだ。
でもルアンナのほうがよっぽど美しいぞ――などと気障な台詞は流石に口にできないけれど。
思ってはいたとしても――そう、思ってはいたとしても。
「ユーリもこっちに来ましょ。水が冷たくて気持ちがいいわ」
ルアンナが海へ足を浸けて、涼を楽しんでいる。
夏でも比較的過ごしやすい気候の砂浜であったが、それでも暑いものは暑い。
そんな中、ひんやりとした海水に浸るのはいかにも心地よさげであった。
「おお、では僕も入らせて貰おうか」
誘われたユーリが海へ近づくと――。
「それっ!」
「わっぷ!?」
ルアンナは足元の海水を手ですくって、ユーリの顔に浴びせかけてきた。
飛沫が陽光を跳ね返す様は、細やかな金剛石の欠片が宙に舞うかのよう。
「どう? びっくりした?」
「う、うむ……驚いた」
はしゃぐルアンナを前に、ユーリは腕で顔を拭いながら――。
(か、屈んだ時に胸元がちょっと見えた……)
などと、先ほどの光景を頭の中でリフレインさせていた。
そんな邪な考えを、いかんいかんと頭を振ってユーリは払いのける。
「よしっ、さっきのお返しだ!」
「きゃっ! じゃあ私もそのお返し!」
ユーリとルアンナの間で、水のかけあいが勃発した。
響き渡る、ばしゃばしゃと水をすくう音。
こうしてひとしきり、波打ち際で戯れた後――。
「そろそろ、買ってきてあったスイカを食べましょ」
ルアンナの提案で、スイカタイムということになる。
デートに持っていくと言ったら、青果店のおばちゃんが「あらあら、まあまあ」と嬉しそうにしながら安く売ってくれたらしい。
こういう世話焼きな人物は、どこに行っても見かけるものだ。
近所住まいで二人のことを知っている者ともなれば、なおのことであった。
「そうだ、せっかくだからこうしよう」
と、そこでユーリからある提案があり――。
●
「もうちょっと右……いきすぎね、少し左に戻して。そう、そこから五歩前!」
ルアンナのかけ声により、ユーリが導かれている。
ユーリの顔には目隠しとして布が巻かれ。
その手には頑丈そうな棒が握られていた。
そして勿論、ユーリの目指す先にはスイカが置かれており――。
「止まって! そこで振り下ろして!」
「えいやっ!」
ルアンナの合図でユーリの振るった棒は、見事にスイカの中心を捉えた。
パカーンと小気味好い音がして。
スイカは程よく、何個かの破片に分かれる。
二人の共同作業、成功である。
「やったわね。流石ユーリ♪」
「ルアンナの指示が的確だったからな」
手を叩くルアンナに、上機嫌になるユーリ。
さっそく二人は、スイカを賞味することにした。
棒で叩き割ったスイカは形も不揃いで、不格好だけれども。
それもまた、風情。
「甘くて美味しい~♪」
「水気があって、汗をかいた体に染み入る感じもするな」
シャキ――とスイカに歯を通したルアンナが顔をほころばせている。
ユーリもそんなルアンナの様子を見てか、笑顔だ。
皮と種を残して、全てを二人であっという間に平らげた。
●
「水遊びをして、スイカを割ったときたら、次は――」
「砂遊び、だろうな」
少しばかり日が傾いてきたが、ルアンナとユーリの二人はまだまだ海を満喫しようとしている模様。
「協力はさっきしたし、どうせなら対戦要素のあることをやりたいな」
「ということは――」
何事も遊戯的に捉えるのがユーリの性。
ルアンナもそれを理解しているためか、ユーリの言わんとしていることがすぐに分かった。
対戦要素のある砂遊び。
そう、それは――。
棒倒し、である。
砂を盛って作った山に細長い木の枝を一本、突き刺して。
これで準備完了。
「……む、大胆に取ったな」
「さあ、この状態から砂を取る勇気はある?」
ユーリがルアンナの一手に唸った後。
自身は慎重に、砂山を小さく削っていく。
絵面的に地味。
だが、当人たちはいたって真剣だ。
なぜなら、これも勝負だから。
二人は恋仲だが、こうした勝負ごとにおいて互いに手加減はしない。
それは全力でぶつかっても大丈夫と思えるだけに相手の実力を信用している証でもあるし。
手加減をされたからこそ勝った、と相手に思わせることは失礼だと考えているからでもある。
かといって勝利に拘泥しているかというと、そういうわけでもなく。
力を出し切りさえすれば、勝っても負けても恨みっこ無しと考えている節はあるようだが。
「あっ」
「ふふふ、僕の勝ちだな」
そして棒を倒してしまったのは、ルアンナのほうだった。
勝ち誇るユーリを前に、ルアンナはわりと本気で悔しそうにしている。
「……もう一回!」
「はは、いいとも」
さらなる一勝負を求めるルアンナに、ユーリは思い出していた。
卓上遊戯を共に楽しむ際、日頃からルアンナが見せるこのような様子を。
思えば、全てはルアンナを卓上遊戯へと誘ったのがきっかけだった。
あの時、ルアンナが遊戯にのめり込んでいなければ。
今の二人の関係は築かれていなかったことであろう。
(感謝、しないといけないな)
ありがとう――ユーリは心の中で、そう呟いた。
世に卓上遊戯があってくれたこと。
そしてルアンナと出会うことができた、その縁に対して――。
●
紫を流し込んだような朱に、金箔を散りばめたような黄金色。
夕焼けの空の下、ルアンナとユーリは砂浜で屈みながら歩き回っていた。
砂浜に目を凝らし、なにかを探しているような――そんな様子で。
「あっ! ユーリ、これはどう?」
「どれどれ――なるほど、よさそうだ」
ルアンナが拾い上げた物を、ユーリが覗き込む。
「これ、どうするの?」
首をかしげるルアンナの手には、大きな二枚貝が収まっていた。
どうやらそれを探すようには言われていたが、何に使うかを教えられてはいないらしい。
「ふふふ、それは後のお楽しみ――ということで、それを僕に預けてはくれないだろうか」
思わせぶりな笑みを浮かべるユーリの手に。
「うん! 楽しみにしてるね」
貝を握るルアンナの手が、そっと重ねられた。
「よし、すっかり暗くなる前に帰ろうか。僕たちの町に、な」
ユーリと二人、手を重ね合わせたまま。
ルアンナはそっと、頷きを返した。
●
「やあ、ルアンナ」
「いらっしゃい、ユーリ! ――それは?」
後日、ユーリがルアンナの切り盛りするパン屋『ミュラース』に姿を現した。
恋人どうしであることもあって、それだけならいつものことなのであるが。
その日、ユーリの手には飾り付けられた小箱が抱えられていた。
自然と、ルアンナの目線も小箱へと吸い寄せられている。
「約束のものが仕上がってな。君へプレゼントというやつだ」
「これ、私へ? 開けてみてもいい?」
ユーリから差し出された小箱を受け取って、ルアンナが問うと。
もちろん、との返事がユーリから得られた。
胸を弾ませながら、ルアンナが小箱に結わかれたリボンを解き。
小箱を開いてみれば――そこには一枚の貝殻が。
「これ、あのときの――」
「貝殻の内側を見てくれ」
ルアンナは当然、ユーリに預けた貝のことを忘れてはいなかった。
ユーリに促され、貝殻を裏返してみると――。
「わぁ――」
ルアンナは感嘆の声を上げることになった。
そこには美しい青空が広がり、太陽が輝いていたからだ。
「馴染みの画家に頼んでな」
どうやらユーリは海で拾っていた貝の殻を画家に渡し、絵を描かせていたらしい。
「絵と一緒に、詩も書かれているのね」
しげしげと貝殻を眺めるルアンナが言うように。
想い人を空に例えて詠われた詩が、絵の上に書き記されていた。
「でもこの詩、なんだか途中までのような――それに、貝殻は二枚あったよね?」
ルアンナが疑問を口にすると、すかさずユーリはもう一枚の貝殻を取り出して――。
「それがこいつだ。僕の分として持っている」
「こっちには海が描いてあるのね! さっきの詩の続きも――」
ユーリの掲げた貝殻は、ルアンナに贈った貝殻と対をなすものとなっていた。
「ルアンナに渡した貝殻と、僕の貝殻はもとは一つ――」
「ぴったりと、合うわね」
ユーリとルアンナがそれぞれの貝殻を重ね合わせてみると、なんの抵抗もなくカチリとはまる。
「そう、そして。僕の貝殻と合う相手はルアンナのそれ、世界に一つしかない――そういうことだ」
「――ありがとう。大切にするわ」
そこでユーリが改まった顔をしたものだから。
ルアンナもその想いを酌んだのか、柔らかな微笑みを返したのだった。
君は空。
日の光を浮かべて、蒼く輝いている。
僕は海。
君の光を一杯に浴びて、碧く煌めいている――。
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磯の香り。
耳をすませば、波の騒めき。
天を仰げば、蒼があり。
砂浜が描き出す白の先には、エメラルドを散りばめたような海が一面に広がって。
「見て、ユーリ! 海がすっごく綺麗!」
ルアンナ・ミュラーの緑の瞳が、海の翠を映している。
「あ、ああ。とても透き通っていて、美しい海だな」
その後ろに立つユーリ・トレーガーが目を細めているのは、太陽の日差しのせいばかりではないだろう。
なにより、彼も初めて見るルアンナの水着姿が眩しいのだ。
珊瑚色の生地に、白のフリル。
胸元と、腰に赤いリボンがアクセント。
大胆ではない清楚なデザインとはいえ――水着は、水着。
愛しい恋人が、開放的な衣装を身に着けているのである。
ユーリだって、どぎまぎしてしまおうものだ。
でもルアンナのほうがよっぽど美しいぞ――などと気障な台詞は流石に口にできないけれど。
思ってはいたとしても――そう、思ってはいたとしても。
「ユーリもこっちに来ましょ。水が冷たくて気持ちがいいわ」
ルアンナが海へ足を浸けて、涼を楽しんでいる。
夏でも比較的過ごしやすい気候の砂浜であったが、それでも暑いものは暑い。
そんな中、ひんやりとした海水に浸るのはいかにも心地よさげであった。
「おお、では僕も入らせて貰おうか」
誘われたユーリが海へ近づくと――。
「それっ!」
「わっぷ!?」
ルアンナは足元の海水を手ですくって、ユーリの顔に浴びせかけてきた。
飛沫が陽光を跳ね返す様は、細やかな金剛石の欠片が宙に舞うかのよう。
「どう? びっくりした?」
「う、うむ……驚いた」
はしゃぐルアンナを前に、ユーリは腕で顔を拭いながら――。
(か、屈んだ時に胸元がちょっと見えた……)
などと、先ほどの光景を頭の中でリフレインさせていた。
そんな邪な考えを、いかんいかんと頭を振ってユーリは払いのける。
「よしっ、さっきのお返しだ!」
「きゃっ! じゃあ私もそのお返し!」
ユーリとルアンナの間で、水のかけあいが勃発した。
響き渡る、ばしゃばしゃと水をすくう音。
こうしてひとしきり、波打ち際で戯れた後――。
「そろそろ、買ってきてあったスイカを食べましょ」
ルアンナの提案で、スイカタイムということになる。
デートに持っていくと言ったら、青果店のおばちゃんが「あらあら、まあまあ」と嬉しそうにしながら安く売ってくれたらしい。
こういう世話焼きな人物は、どこに行っても見かけるものだ。
近所住まいで二人のことを知っている者ともなれば、なおのことであった。
「そうだ、せっかくだからこうしよう」
と、そこでユーリからある提案があり――。
●
「もうちょっと右……いきすぎね、少し左に戻して。そう、そこから五歩前!」
ルアンナのかけ声により、ユーリが導かれている。
ユーリの顔には目隠しとして布が巻かれ。
その手には頑丈そうな棒が握られていた。
そして勿論、ユーリの目指す先にはスイカが置かれており――。
「止まって! そこで振り下ろして!」
「えいやっ!」
ルアンナの合図でユーリの振るった棒は、見事にスイカの中心を捉えた。
パカーンと小気味好い音がして。
スイカは程よく、何個かの破片に分かれる。
二人の共同作業、成功である。
「やったわね。流石ユーリ♪」
「ルアンナの指示が的確だったからな」
手を叩くルアンナに、上機嫌になるユーリ。
さっそく二人は、スイカを賞味することにした。
棒で叩き割ったスイカは形も不揃いで、不格好だけれども。
それもまた、風情。
「甘くて美味しい~♪」
「水気があって、汗をかいた体に染み入る感じもするな」
シャキ――とスイカに歯を通したルアンナが顔をほころばせている。
ユーリもそんなルアンナの様子を見てか、笑顔だ。
皮と種を残して、全てを二人であっという間に平らげた。
●
「水遊びをして、スイカを割ったときたら、次は――」
「砂遊び、だろうな」
少しばかり日が傾いてきたが、ルアンナとユーリの二人はまだまだ海を満喫しようとしている模様。
「協力はさっきしたし、どうせなら対戦要素のあることをやりたいな」
「ということは――」
何事も遊戯的に捉えるのがユーリの性。
ルアンナもそれを理解しているためか、ユーリの言わんとしていることがすぐに分かった。
対戦要素のある砂遊び。
そう、それは――。
棒倒し、である。
砂を盛って作った山に細長い木の枝を一本、突き刺して。
これで準備完了。
「……む、大胆に取ったな」
「さあ、この状態から砂を取る勇気はある?」
ユーリがルアンナの一手に唸った後。
自身は慎重に、砂山を小さく削っていく。
絵面的に地味。
だが、当人たちはいたって真剣だ。
なぜなら、これも勝負だから。
二人は恋仲だが、こうした勝負ごとにおいて互いに手加減はしない。
それは全力でぶつかっても大丈夫と思えるだけに相手の実力を信用している証でもあるし。
手加減をされたからこそ勝った、と相手に思わせることは失礼だと考えているからでもある。
かといって勝利に拘泥しているかというと、そういうわけでもなく。
力を出し切りさえすれば、勝っても負けても恨みっこ無しと考えている節はあるようだが。
「あっ」
「ふふふ、僕の勝ちだな」
そして棒を倒してしまったのは、ルアンナのほうだった。
勝ち誇るユーリを前に、ルアンナはわりと本気で悔しそうにしている。
「……もう一回!」
「はは、いいとも」
さらなる一勝負を求めるルアンナに、ユーリは思い出していた。
卓上遊戯を共に楽しむ際、日頃からルアンナが見せるこのような様子を。
思えば、全てはルアンナを卓上遊戯へと誘ったのがきっかけだった。
あの時、ルアンナが遊戯にのめり込んでいなければ。
今の二人の関係は築かれていなかったことであろう。
(感謝、しないといけないな)
ありがとう――ユーリは心の中で、そう呟いた。
世に卓上遊戯があってくれたこと。
そしてルアンナと出会うことができた、その縁に対して――。
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紫を流し込んだような朱に、金箔を散りばめたような黄金色。
夕焼けの空の下、ルアンナとユーリは砂浜で屈みながら歩き回っていた。
砂浜に目を凝らし、なにかを探しているような――そんな様子で。
「あっ! ユーリ、これはどう?」
「どれどれ――なるほど、よさそうだ」
ルアンナが拾い上げた物を、ユーリが覗き込む。
「これ、どうするの?」
首をかしげるルアンナの手には、大きな二枚貝が収まっていた。
どうやらそれを探すようには言われていたが、何に使うかを教えられてはいないらしい。
「ふふふ、それは後のお楽しみ――ということで、それを僕に預けてはくれないだろうか」
思わせぶりな笑みを浮かべるユーリの手に。
「うん! 楽しみにしてるね」
貝を握るルアンナの手が、そっと重ねられた。
「よし、すっかり暗くなる前に帰ろうか。僕たちの町に、な」
ユーリと二人、手を重ね合わせたまま。
ルアンナはそっと、頷きを返した。
●
「やあ、ルアンナ」
「いらっしゃい、ユーリ! ――それは?」
後日、ユーリがルアンナの切り盛りするパン屋『ミュラース』に姿を現した。
恋人どうしであることもあって、それだけならいつものことなのであるが。
その日、ユーリの手には飾り付けられた小箱が抱えられていた。
自然と、ルアンナの目線も小箱へと吸い寄せられている。
「約束のものが仕上がってな。君へプレゼントというやつだ」
「これ、私へ? 開けてみてもいい?」
ユーリから差し出された小箱を受け取って、ルアンナが問うと。
もちろん、との返事がユーリから得られた。
胸を弾ませながら、ルアンナが小箱に結わかれたリボンを解き。
小箱を開いてみれば――そこには一枚の貝殻が。
「これ、あのときの――」
「貝殻の内側を見てくれ」
ルアンナは当然、ユーリに預けた貝のことを忘れてはいなかった。
ユーリに促され、貝殻を裏返してみると――。
「わぁ――」
ルアンナは感嘆の声を上げることになった。
そこには美しい青空が広がり、太陽が輝いていたからだ。
「馴染みの画家に頼んでな」
どうやらユーリは海で拾っていた貝の殻を画家に渡し、絵を描かせていたらしい。
「絵と一緒に、詩も書かれているのね」
しげしげと貝殻を眺めるルアンナが言うように。
想い人を空に例えて詠われた詩が、絵の上に書き記されていた。
「でもこの詩、なんだか途中までのような――それに、貝殻は二枚あったよね?」
ルアンナが疑問を口にすると、すかさずユーリはもう一枚の貝殻を取り出して――。
「それがこいつだ。僕の分として持っている」
「こっちには海が描いてあるのね! さっきの詩の続きも――」
ユーリの掲げた貝殻は、ルアンナに贈った貝殻と対をなすものとなっていた。
「ルアンナに渡した貝殻と、僕の貝殻はもとは一つ――」
「ぴったりと、合うわね」
ユーリとルアンナがそれぞれの貝殻を重ね合わせてみると、なんの抵抗もなくカチリとはまる。
「そう、そして。僕の貝殻と合う相手はルアンナのそれ、世界に一つしかない――そういうことだ」
「――ありがとう。大切にするわ」
そこでユーリが改まった顔をしたものだから。
ルアンナもその想いを酌んだのか、柔らかな微笑みを返したのだった。