やってみなければわからない
キャラクターノベル制作 ウケッキ納品 2023年07月03日 20時02分06秒
●やってみなければわからない
ゴールディ某所の学舎の主、祖たるストレガ、その名と知識を受け継いだ何代目かのストレガ……【ストレガ・L・リベルガストラ】。
彼女の元には助手として、とある少年【レゼル】の姿があった。
弟子としても知識を学びたいと申し出た彼の為にストレガは彼の力量に合わせた丁度いい課題を渡している。
元から要領のいい彼は彼女から出された課題を簡単にとはいかないが、順調に終わらせていた。
「ふう、これで素材表の暗記はばっちりですね。最初はどうなる事かと思いましたが……これも普段から素材の整理を任されているから、でしょうか」
レゼルが伸びをして身体のコリをほぐしていると、扉が開いてストレガが部屋にやってきた。手には旅道具を持っている。勿論、レゼルの分だ。
「そろそろ終わった頃かと思ってきてみたのだ。して、少年……少年に足りないものは何だと思うのだ?」
にやりと笑いながらこちらを眺めているストレガはレゼルの答えを期待しているようだ。レゼルもその期待に応えようと彼女の求める答えを必死に考える。
(僕に足りないもの? 助手としての仕事はきちんと出来ていますよね、だけど……もしかしたら何か、いえ、まさかそんなっ)
色んな考えが彼の頭にぐるぐると回った。深く考え込んでしまったレゼルの傍に近寄ると、ストレガは彼の頭をわしゃわしゃと撫でる。まだ少年な彼はストレガよりも背が低く、まるで姉と弟のようにも見えた。
「少年は真面目なのは良いのだが、もう少し頭を柔らかくする必要があるのだ。『詰め込んだ叡智をただ垂れ流すことでは真なる理解と言えぬ。万人に解るように伝える事は賢者の務めである。相手に合わせ頭を柔らかくせよ。多くの教養を持ち、あらゆる言葉を用いよ』これは何代か前のストレガの言葉なのだ。今の少年には必要な言葉だと思うのだ」
「垂れ流すだけでは理解と言えない、頭を柔らかく……」
再び考え込んでしまいそうなレゼルに旅支度を詰め込んだ鞄をストレガは渡した。授恵者ではない彼には必要な物だ。
「善は急げ、さあ、少年。ついてくるのだ! いざ行かん、素材採集の旅なのだーー!」
「はい、素材採集ですね……って、ええぇえ!? ぼ、僕も行くんですかっ!?」
驚いて目を丸くするレゼルをつれ、ストレガは素材採集の旅へと出かけた。
某所、どこかの深い森の中。
草むらに隠れるレゼルの前にはストレガが倒した黒焦げの巨大なサソリ型の魔獣が転がっていた。
ストレガは教鞭を振るい、付着した魔獣の血を振るって落とす。
「ふむ、少々威力が強すぎたのだ。表面は焦げたが中身が無事だといいのだ」
もう大丈夫、とストレガはレゼルを手招きして呼ぶ。
草むらからがさがさとレゼルは出てくると、ストレガと共にサソリ型魔獣の解体に勤しんだ。
このサソリ型魔獣は硬い甲殻で覆われており、物理攻撃が通り辛い。更には厄介な状態異常も与えてくる。
しかしこの魔獣が魔法攻撃にはさほど高い防御は持っていないことを以前戦ったゆえ、ストレガは知っていたのだ。
その為、ストレガは戦闘開始と同時に動きを封じ、強力な魔法攻撃での一撃必殺を画策する。
作戦は見事成功し、こうしてサソリ型魔獣は憐れ黒焦げとなってストレガとレゼルによって解体されていた。
「ストレガ様、甲殻の裏側が黄色いです。こんな鮮やかな色が出ているなんて……図鑑には載っていませんでしたよ!」
「ふふふ、それはそうなのだ。魔法で倒すと、このサソリ型魔獣は甲殻の裏側が黄色く変色するのだ。こうなると微弱な雷を帯びるから注意が必要なのだ」
感電しないように丁寧に甲殻を剥がすと、綺麗なピンク色の肉が現れる。
それを見たストレガは小皿と巴屋の高級醤油を取り出した。今まさに食事を始めようとしているように見えたレゼルは驚いた表情を見せる。
「す、ストレガ様ぁ!? い、一体何を!?」
驚きの表情をしながらストレガを止めようとするレゼルに不思議そうな顔をストレガは向けた。なぜ、良い所なのに止めるのかと言いたげな瞳だ。
「ふむ? なぜ止めるのだ? 刺身は新鮮でないと意味がないのだ。ほら、少年の分なのだ」
「ああ、ありがとうございます……って違いますよ!? 魔獣を食べるんですか!? 焼くならまだしも生ですよ、それ!」
レゼルの制止を聞かずストレガはピンク色の肉を庖丁にて手頃なサイズの薄切りにすると、それに醤油をつけて口の中に放り込んだ。レゼルは唖然とした顔を浮かべる。魔獣を食べる話は聞いたことがあるが、生で食べるなど聞いたことがないからであった。
「あぁぁあ!? す、ストレガ様ぁっ! 大丈夫なんですか!?」
「む? ああ、勿論問題ないのだ。舌の上でとろける感触、しっかりとしていて香ばしい味……そして醤油がその味を引き立てる。最高のハーモニーなのだ!」
醤油をつけ肉を口に運ぶ度にうっとりとした表情を浮かべ、その美味しさをストレガは堪能する。
「見ているだけではもったいないのだ、ほら少年、何事も経験なのだ。百聞は一見にしかず、というだろう?」
「そ、それはそうですが……焼くのはまだしも生ですよ? うう、大丈夫かなぁ……」
ストレガから小皿とフォークを受け取ると取り分けられたサソリ肉と対峙するレゼル。匂いを嗅いでも肉からは臭みひとつしない。
「魔獣なのに獣臭いとか妙な匂いとかしないんですね?」
「ははは、それは当たり前なのだ。人を潰せるほどの巨体でもこのサソリ魔獣の主食は果物や木の実なのだ。それゆえに肉が臭くなることはない。逆に少々フルーティーとさえも言えるのだ」
説明しながらもストレガは、ぱくぱくとサソリ肉を食べ進めている。それ程までにこのサソリは美味しいのだろう。
百聞は一見にしかず、まさにストレガの言う通りと思ったレゼルは意を決して、ストレガお勧めの巴屋の高級醤油をサソリ肉につけると口に放り込んだ。
「こ、これはっ!? 芳醇な味わいと、軽やかな舌触り……まるで羽のように溶けて消えるなんて、こんな肉食べたことないですよ!」
「ふふんっ、魔獣の肉は食べ方によって味を変える食材なのだ。食べられる部位をしっかり見極めて、安全に食べることでより楽しめるのだー」
むぐむぐとお肉を頬張るストレガはまさに肉を美味しくめいいっぱい楽しんでいるように見えた。
「倒したからには、その身体はしっかりと余すことなく堪能するのだ。それが生き物を殺める、ということなのだ。覚えておくといいのだ、少年」
「はい、心に刻んでおきます、その言葉を」
目を閉じ、噛み締める様にレゼルはストレガの言葉を胸の奥に刻み込む。無為な殺生はしてはいけない。身を守る為でもなく、食べる為でもなく、ただ楽しみの為に殺すのは命への冒涜に他ならないのだから。
ある程度、サソリ肉を楽しんだストレガ、レゼルは残りの部位を切り分けていく。食べられる部位と食べられない部位を分け、サソリの魔獣は完全に原型を失った。
ストレガは鍋を用意すると、そこに油を投入。なみなみとした油を焚火で熱していく。
待っている間にサソリ肉を小麦の粉につけ、余分な粉をはたいて落とす。サクサクの揚げ物の用意をストレガはしていたのだ。
「ストレガ様、これはまさか揚げ物ですか!?」
「ふっふっふ、いかにも! この魔獣は生で醤油をつけても美味いのだが、サクッと揚げてもまた美味なのだ。サクサクの揚げ物タイムなのだっ!」
ちょうど温度がお手頃になった油へストレガは衣をつけたサソリ肉を投入する。じゅわああっと揚げ物特有の罪作りな音が響きわたる。
油に投入して数分、こんがり狐色になったサソリ肉をさっと油切り用の皿へと取り分け、ストレガは肉を休ませる。
不思議そうに眺めているレゼルへストレガはサソリ肉を揚げながら説明していた。もう揚げ物は慣れたものだ。
「肉を休ませることで、余熱で芯まで火が通り美味しくかつジューシーに仕上がるのだ。逆に言えば、適切な時間で出さず揚げ過ぎてしまえば火が通り過ぎる。要はバランスの問題なのだ!」
「なるほど、揚げ物ひとつとってもそんなに一つ一つの行動に意味があったのですね。勉強になります!」
熱心にストレガの説明を聞いているレゼルはメモ書きに彼女の言った注意事項を書き込んでいる。熱心な彼ならきっと彼女のように美味しい揚げ物を作ることも、いつか出来るかも知れない。
サソリ肉を揚げ終わり、敷物が地面にひかれて青空の下で美味しい食事会が始まった。
からっと揚がったサソリ肉に、付け合わせの野菜。更に味変の為に数種類のソースが用意されている。まさに至れり尽くせりとはこのことか。
赤いソースにサソリ肉の唐揚げをディップし、はむっとレゼルは頬張る。じゅわっと溢れる肉汁とサクサクの衣が食欲をそそり、少しピリッとしたソースが更に食欲に拍車をかけていく。
「美味しいですよ、ストレガ様! こんなに美味しいなら何個だって食べられちゃう気がしますね!」
「そう言って貰えると頑張って揚げた甲斐があったのだ。命をいただきます、その心を忘れないようにするのだ、少年」
命は尊い。
簡単に奪っていい物ではない。
だが、時に生きる為に争い、命を奪わねば生き残れない状況もある。
そうなってもちゃんとその戦いに意味があったと思うことでその魂は報われるのかもしれない。
倒したならばちゃんと食べられる所は喰らう。それが命をいただきます、ということなのだ。
揚げ物となったサソリ肉を堪能し、食べ終わった所でストレガはサソリの残骸から何かを分類して瓶に詰めている。それはサソリ魔獣の内臓のようだ。
「ストレガ様? そちらは……内臓ですか?」
「うむ、いかにも。これは塩漬けにして一晩寝かせてから、レモンやオレンジと一緒に漬け込む事で美味しい壺漬けになるのだ。ふふふ、楽しみにしておくといい、こいつはかなり酒が進む代物なのだー」
少々嬉しそうなストレガは壺に内蔵を塩漬けにしながら酒と一緒に楽しむその時を想像して笑顔を零す。美味しい酒にも全力を尽くす、それがストレガという女性だ。
持って帰れない分のサソリ型魔獣の残骸は細かくして土に還るように処分し、ストレガとレゼルは帰路につく。
自宅兼研究所に帰り着いた時には流石のストレガも汗をかいていたようで、即風呂に入ろうということになった。
「さて、少年。風呂に入って旅の疲れを癒すとするのだ。ついでに洗濯もしてしまおうか」
「はい、ストレガ様……って、うわぁぁあ!? またストレガ様は全部簡単に脱いで!? ちょっとは僕の事考えてくださいよー!」
なぜそんな慌てるのだ、とでも言いたげにストレガは生まれたままの姿で振り向いた。勿論、豊かなおっぱいも形のいいお尻も完全に丸見えだった。なお、ストレガには全く赤面した様子はない。
「ふむ? 慌てる必要があるのか? ほら、汗をかいているだろうからちゃんと少年も脱ぐのだ。着たままでは洗濯できないのだー」
わたわたと慌てるレゼルに何故脱がないのか、という顔をしながらストレガはレゼルに近づいて屈むと彼に脱ぐように促している。勿論、洗濯する為だが。ぷるぷると揺れる双球が目と鼻の先にまで近づき、レゼルの動悸が早くなった。
ストレガに促されるまま脱いだレゼルは彼女と共に風呂へと向かった。
彼はストレガを洗って、ストレガもまた彼を洗う。
それはいつもの流れであるが、一向にレゼルは慣れることができなかった。無理もないだろう、ストレガのようなスタイルのいい女性が近くにいるのなら。
ほかほかと身体から湯気を立ち昇らせ、ストレガはレゼルと共に風呂場から自宅の方へと戻ってくる。
寝る為に簡単な布を羽織っているストレガはやはりレゼルにとって目のやり場に困る存在であった。なぜなら谷間や太ももがこれでもかと露わになっているからだ。羞恥心の無い彼女は大事な部分しか隠していない。
(ああぁぁ、ストレガ様っ、そんな恰好ははしたない、いや、僕は何を考えているんだ! ああっ、ストレガ様、そこで屈むのは不味いですよ!?)
悶々として頭をぐわんぐわんと振りながら、今日もまたレゼルはその青い心を乱すのだった。
それから寝るまでの少しの間、ストレガとレゼルは読書をして過ごす。
本を読みながら気になった所があれば、議論し議題として次の研究の課題とする、という少々変わった読書の方法ではあったがそれでも二人は日々楽しいようだった。
夜も更け、そろそろ寝ようかとなった頃。
レゼルにもう一つの試練がやってくる。
「ふわぁーあ。そろそろ眠気がやってきたのだぁ。では、少年。今日はここまでにして、寝るとしようか」
「はい、ストレガ様。今日も頑張りましたからね、心地よい疲れがやってきてますよ」
ぐっと伸びをし、レゼルは読書で少々固まった体をほぐす。
ストレガは部屋の明かりを消し、ベッドへと潜り込む。もそもそと寝る態勢を整えると、布団を広げてレゼルを呼んだ。
「ほら少年。寝るとしようか。二人で寝れば、暖も取れて使用するスペースやシーツその他もろもろお得なのだ。ほらほら、早くくるのだー、もう私は眠いのだー」
こすこすと眠そうな目を擦っているストレガはこっくりこっくりと今にも寝てしまいそうなほど眠いようだ。
いつものことながら、少々遠慮がちにレゼルはゆっくりとストレガの布団に入っていく。
レゼルが布団に入ると、ストレガは彼をぎゅっと抱きしめた。ほぼ抱き枕の代わりとなっているのは言うまでもない。ちなみにストレガはレゼルに恋愛的な感情はない。良き助手、といった感じである。
それをレゼルも重々承知しているのだが、背丈の問題で柔らかい双球が目の前、顔にむにっと押し付けられているこの状況ではドキドキせざるを得ない。
更にストレガの太ももがレゼルに絡みつき、胸とは違った感じの女性特有の柔らかさが彼の理性を削っていく。
(わぁぁぁああああ! 近いですよ、近すぎるんですよ、ストレガ様ぁっ!)
レゼルの心の叫びなど聞こえないストレガは疲れていたのか、静かな寝息を立ててすやすやと眠っている。
赤面するレゼルをぎゅっと抱きしめ、ストレガは気持ちのいい夢の中。
わたわたしているレゼルもまた眠気に抗えなくなったのか、次第に瞼が落ちていき、心地よい睡魔が彼を眠りへと誘うのだった。
翌朝、レゼルはぱちっと目を覚ます。
自分を抱きしめたままのストレガを起こさないように気を付けながら布団から出る。
静かに歩いて彼が向かうのは台所。使用していいとされている素材はもう熟知している。
パンを取り出すとそれを焼きながら、卵と細かく切った肉をフライパンで炒め始めた。
ある程度、炒めた所で皿に取り出しお手製のソースをかけていく。そこに焼けたパンを添えた。
「さてと、そろそろストレガ様を起こさないとですよね……でもきっとまた――」
ストレガの下へと戻ったレゼルは予想していた状態になっているストレガから赤面して目をそらす。
「あああ、もうストレガ様。どうして朝はこうなってしまうんですか……さっきしっかり布団をかけたはずなのにっ!」
見れば、ストレガは仰向けになってベッドの上で大の字で寝ている。気持ちよさそうな顔をしながら。
勿論、寝間着として着ていた布ははだけて取れ、双丘が余すことなく主張している。辛うじて布団が掛かっているおかげで股間の周囲は隠れているが、それが逆に危うさを醸し出していた。
何とか理性と自制心を保ちながらレゼルはストレガを揺らして起こす。ぷるんぷるんと揺れる双球に目が釘付けになりながら。
「す、ストレガ様。朝ご飯の用意ができていますよ、起きてください」
「ふぁ? おはようなのだー。いつもありがとうなのだ、少年」
寝ぼけてまだふにゃふにゃ顔のストレガのお礼と共に放たれる爽やかな笑顔はレゼルの心を毎朝刺し、彼に心地よい笑顔を浮かばせるのだった。
ゴールディ某所の学舎の主、祖たるストレガ、その名と知識を受け継いだ何代目かのストレガ……【ストレガ・L・リベルガストラ】。
彼女の元には助手として、とある少年【レゼル】の姿があった。
弟子としても知識を学びたいと申し出た彼の為にストレガは彼の力量に合わせた丁度いい課題を渡している。
元から要領のいい彼は彼女から出された課題を簡単にとはいかないが、順調に終わらせていた。
「ふう、これで素材表の暗記はばっちりですね。最初はどうなる事かと思いましたが……これも普段から素材の整理を任されているから、でしょうか」
レゼルが伸びをして身体のコリをほぐしていると、扉が開いてストレガが部屋にやってきた。手には旅道具を持っている。勿論、レゼルの分だ。
「そろそろ終わった頃かと思ってきてみたのだ。して、少年……少年に足りないものは何だと思うのだ?」
にやりと笑いながらこちらを眺めているストレガはレゼルの答えを期待しているようだ。レゼルもその期待に応えようと彼女の求める答えを必死に考える。
(僕に足りないもの? 助手としての仕事はきちんと出来ていますよね、だけど……もしかしたら何か、いえ、まさかそんなっ)
色んな考えが彼の頭にぐるぐると回った。深く考え込んでしまったレゼルの傍に近寄ると、ストレガは彼の頭をわしゃわしゃと撫でる。まだ少年な彼はストレガよりも背が低く、まるで姉と弟のようにも見えた。
「少年は真面目なのは良いのだが、もう少し頭を柔らかくする必要があるのだ。『詰め込んだ叡智をただ垂れ流すことでは真なる理解と言えぬ。万人に解るように伝える事は賢者の務めである。相手に合わせ頭を柔らかくせよ。多くの教養を持ち、あらゆる言葉を用いよ』これは何代か前のストレガの言葉なのだ。今の少年には必要な言葉だと思うのだ」
「垂れ流すだけでは理解と言えない、頭を柔らかく……」
再び考え込んでしまいそうなレゼルに旅支度を詰め込んだ鞄をストレガは渡した。授恵者ではない彼には必要な物だ。
「善は急げ、さあ、少年。ついてくるのだ! いざ行かん、素材採集の旅なのだーー!」
「はい、素材採集ですね……って、ええぇえ!? ぼ、僕も行くんですかっ!?」
驚いて目を丸くするレゼルをつれ、ストレガは素材採集の旅へと出かけた。
某所、どこかの深い森の中。
草むらに隠れるレゼルの前にはストレガが倒した黒焦げの巨大なサソリ型の魔獣が転がっていた。
ストレガは教鞭を振るい、付着した魔獣の血を振るって落とす。
「ふむ、少々威力が強すぎたのだ。表面は焦げたが中身が無事だといいのだ」
もう大丈夫、とストレガはレゼルを手招きして呼ぶ。
草むらからがさがさとレゼルは出てくると、ストレガと共にサソリ型魔獣の解体に勤しんだ。
このサソリ型魔獣は硬い甲殻で覆われており、物理攻撃が通り辛い。更には厄介な状態異常も与えてくる。
しかしこの魔獣が魔法攻撃にはさほど高い防御は持っていないことを以前戦ったゆえ、ストレガは知っていたのだ。
その為、ストレガは戦闘開始と同時に動きを封じ、強力な魔法攻撃での一撃必殺を画策する。
作戦は見事成功し、こうしてサソリ型魔獣は憐れ黒焦げとなってストレガとレゼルによって解体されていた。
「ストレガ様、甲殻の裏側が黄色いです。こんな鮮やかな色が出ているなんて……図鑑には載っていませんでしたよ!」
「ふふふ、それはそうなのだ。魔法で倒すと、このサソリ型魔獣は甲殻の裏側が黄色く変色するのだ。こうなると微弱な雷を帯びるから注意が必要なのだ」
感電しないように丁寧に甲殻を剥がすと、綺麗なピンク色の肉が現れる。
それを見たストレガは小皿と巴屋の高級醤油を取り出した。今まさに食事を始めようとしているように見えたレゼルは驚いた表情を見せる。
「す、ストレガ様ぁ!? い、一体何を!?」
驚きの表情をしながらストレガを止めようとするレゼルに不思議そうな顔をストレガは向けた。なぜ、良い所なのに止めるのかと言いたげな瞳だ。
「ふむ? なぜ止めるのだ? 刺身は新鮮でないと意味がないのだ。ほら、少年の分なのだ」
「ああ、ありがとうございます……って違いますよ!? 魔獣を食べるんですか!? 焼くならまだしも生ですよ、それ!」
レゼルの制止を聞かずストレガはピンク色の肉を庖丁にて手頃なサイズの薄切りにすると、それに醤油をつけて口の中に放り込んだ。レゼルは唖然とした顔を浮かべる。魔獣を食べる話は聞いたことがあるが、生で食べるなど聞いたことがないからであった。
「あぁぁあ!? す、ストレガ様ぁっ! 大丈夫なんですか!?」
「む? ああ、勿論問題ないのだ。舌の上でとろける感触、しっかりとしていて香ばしい味……そして醤油がその味を引き立てる。最高のハーモニーなのだ!」
醤油をつけ肉を口に運ぶ度にうっとりとした表情を浮かべ、その美味しさをストレガは堪能する。
「見ているだけではもったいないのだ、ほら少年、何事も経験なのだ。百聞は一見にしかず、というだろう?」
「そ、それはそうですが……焼くのはまだしも生ですよ? うう、大丈夫かなぁ……」
ストレガから小皿とフォークを受け取ると取り分けられたサソリ肉と対峙するレゼル。匂いを嗅いでも肉からは臭みひとつしない。
「魔獣なのに獣臭いとか妙な匂いとかしないんですね?」
「ははは、それは当たり前なのだ。人を潰せるほどの巨体でもこのサソリ魔獣の主食は果物や木の実なのだ。それゆえに肉が臭くなることはない。逆に少々フルーティーとさえも言えるのだ」
説明しながらもストレガは、ぱくぱくとサソリ肉を食べ進めている。それ程までにこのサソリは美味しいのだろう。
百聞は一見にしかず、まさにストレガの言う通りと思ったレゼルは意を決して、ストレガお勧めの巴屋の高級醤油をサソリ肉につけると口に放り込んだ。
「こ、これはっ!? 芳醇な味わいと、軽やかな舌触り……まるで羽のように溶けて消えるなんて、こんな肉食べたことないですよ!」
「ふふんっ、魔獣の肉は食べ方によって味を変える食材なのだ。食べられる部位をしっかり見極めて、安全に食べることでより楽しめるのだー」
むぐむぐとお肉を頬張るストレガはまさに肉を美味しくめいいっぱい楽しんでいるように見えた。
「倒したからには、その身体はしっかりと余すことなく堪能するのだ。それが生き物を殺める、ということなのだ。覚えておくといいのだ、少年」
「はい、心に刻んでおきます、その言葉を」
目を閉じ、噛み締める様にレゼルはストレガの言葉を胸の奥に刻み込む。無為な殺生はしてはいけない。身を守る為でもなく、食べる為でもなく、ただ楽しみの為に殺すのは命への冒涜に他ならないのだから。
ある程度、サソリ肉を楽しんだストレガ、レゼルは残りの部位を切り分けていく。食べられる部位と食べられない部位を分け、サソリの魔獣は完全に原型を失った。
ストレガは鍋を用意すると、そこに油を投入。なみなみとした油を焚火で熱していく。
待っている間にサソリ肉を小麦の粉につけ、余分な粉をはたいて落とす。サクサクの揚げ物の用意をストレガはしていたのだ。
「ストレガ様、これはまさか揚げ物ですか!?」
「ふっふっふ、いかにも! この魔獣は生で醤油をつけても美味いのだが、サクッと揚げてもまた美味なのだ。サクサクの揚げ物タイムなのだっ!」
ちょうど温度がお手頃になった油へストレガは衣をつけたサソリ肉を投入する。じゅわああっと揚げ物特有の罪作りな音が響きわたる。
油に投入して数分、こんがり狐色になったサソリ肉をさっと油切り用の皿へと取り分け、ストレガは肉を休ませる。
不思議そうに眺めているレゼルへストレガはサソリ肉を揚げながら説明していた。もう揚げ物は慣れたものだ。
「肉を休ませることで、余熱で芯まで火が通り美味しくかつジューシーに仕上がるのだ。逆に言えば、適切な時間で出さず揚げ過ぎてしまえば火が通り過ぎる。要はバランスの問題なのだ!」
「なるほど、揚げ物ひとつとってもそんなに一つ一つの行動に意味があったのですね。勉強になります!」
熱心にストレガの説明を聞いているレゼルはメモ書きに彼女の言った注意事項を書き込んでいる。熱心な彼ならきっと彼女のように美味しい揚げ物を作ることも、いつか出来るかも知れない。
サソリ肉を揚げ終わり、敷物が地面にひかれて青空の下で美味しい食事会が始まった。
からっと揚がったサソリ肉に、付け合わせの野菜。更に味変の為に数種類のソースが用意されている。まさに至れり尽くせりとはこのことか。
赤いソースにサソリ肉の唐揚げをディップし、はむっとレゼルは頬張る。じゅわっと溢れる肉汁とサクサクの衣が食欲をそそり、少しピリッとしたソースが更に食欲に拍車をかけていく。
「美味しいですよ、ストレガ様! こんなに美味しいなら何個だって食べられちゃう気がしますね!」
「そう言って貰えると頑張って揚げた甲斐があったのだ。命をいただきます、その心を忘れないようにするのだ、少年」
命は尊い。
簡単に奪っていい物ではない。
だが、時に生きる為に争い、命を奪わねば生き残れない状況もある。
そうなってもちゃんとその戦いに意味があったと思うことでその魂は報われるのかもしれない。
倒したならばちゃんと食べられる所は喰らう。それが命をいただきます、ということなのだ。
揚げ物となったサソリ肉を堪能し、食べ終わった所でストレガはサソリの残骸から何かを分類して瓶に詰めている。それはサソリ魔獣の内臓のようだ。
「ストレガ様? そちらは……内臓ですか?」
「うむ、いかにも。これは塩漬けにして一晩寝かせてから、レモンやオレンジと一緒に漬け込む事で美味しい壺漬けになるのだ。ふふふ、楽しみにしておくといい、こいつはかなり酒が進む代物なのだー」
少々嬉しそうなストレガは壺に内蔵を塩漬けにしながら酒と一緒に楽しむその時を想像して笑顔を零す。美味しい酒にも全力を尽くす、それがストレガという女性だ。
持って帰れない分のサソリ型魔獣の残骸は細かくして土に還るように処分し、ストレガとレゼルは帰路につく。
自宅兼研究所に帰り着いた時には流石のストレガも汗をかいていたようで、即風呂に入ろうということになった。
「さて、少年。風呂に入って旅の疲れを癒すとするのだ。ついでに洗濯もしてしまおうか」
「はい、ストレガ様……って、うわぁぁあ!? またストレガ様は全部簡単に脱いで!? ちょっとは僕の事考えてくださいよー!」
なぜそんな慌てるのだ、とでも言いたげにストレガは生まれたままの姿で振り向いた。勿論、豊かなおっぱいも形のいいお尻も完全に丸見えだった。なお、ストレガには全く赤面した様子はない。
「ふむ? 慌てる必要があるのか? ほら、汗をかいているだろうからちゃんと少年も脱ぐのだ。着たままでは洗濯できないのだー」
わたわたと慌てるレゼルに何故脱がないのか、という顔をしながらストレガはレゼルに近づいて屈むと彼に脱ぐように促している。勿論、洗濯する為だが。ぷるぷると揺れる双球が目と鼻の先にまで近づき、レゼルの動悸が早くなった。
ストレガに促されるまま脱いだレゼルは彼女と共に風呂へと向かった。
彼はストレガを洗って、ストレガもまた彼を洗う。
それはいつもの流れであるが、一向にレゼルは慣れることができなかった。無理もないだろう、ストレガのようなスタイルのいい女性が近くにいるのなら。
ほかほかと身体から湯気を立ち昇らせ、ストレガはレゼルと共に風呂場から自宅の方へと戻ってくる。
寝る為に簡単な布を羽織っているストレガはやはりレゼルにとって目のやり場に困る存在であった。なぜなら谷間や太ももがこれでもかと露わになっているからだ。羞恥心の無い彼女は大事な部分しか隠していない。
(ああぁぁ、ストレガ様っ、そんな恰好ははしたない、いや、僕は何を考えているんだ! ああっ、ストレガ様、そこで屈むのは不味いですよ!?)
悶々として頭をぐわんぐわんと振りながら、今日もまたレゼルはその青い心を乱すのだった。
それから寝るまでの少しの間、ストレガとレゼルは読書をして過ごす。
本を読みながら気になった所があれば、議論し議題として次の研究の課題とする、という少々変わった読書の方法ではあったがそれでも二人は日々楽しいようだった。
夜も更け、そろそろ寝ようかとなった頃。
レゼルにもう一つの試練がやってくる。
「ふわぁーあ。そろそろ眠気がやってきたのだぁ。では、少年。今日はここまでにして、寝るとしようか」
「はい、ストレガ様。今日も頑張りましたからね、心地よい疲れがやってきてますよ」
ぐっと伸びをし、レゼルは読書で少々固まった体をほぐす。
ストレガは部屋の明かりを消し、ベッドへと潜り込む。もそもそと寝る態勢を整えると、布団を広げてレゼルを呼んだ。
「ほら少年。寝るとしようか。二人で寝れば、暖も取れて使用するスペースやシーツその他もろもろお得なのだ。ほらほら、早くくるのだー、もう私は眠いのだー」
こすこすと眠そうな目を擦っているストレガはこっくりこっくりと今にも寝てしまいそうなほど眠いようだ。
いつものことながら、少々遠慮がちにレゼルはゆっくりとストレガの布団に入っていく。
レゼルが布団に入ると、ストレガは彼をぎゅっと抱きしめた。ほぼ抱き枕の代わりとなっているのは言うまでもない。ちなみにストレガはレゼルに恋愛的な感情はない。良き助手、といった感じである。
それをレゼルも重々承知しているのだが、背丈の問題で柔らかい双球が目の前、顔にむにっと押し付けられているこの状況ではドキドキせざるを得ない。
更にストレガの太ももがレゼルに絡みつき、胸とは違った感じの女性特有の柔らかさが彼の理性を削っていく。
(わぁぁぁああああ! 近いですよ、近すぎるんですよ、ストレガ様ぁっ!)
レゼルの心の叫びなど聞こえないストレガは疲れていたのか、静かな寝息を立ててすやすやと眠っている。
赤面するレゼルをぎゅっと抱きしめ、ストレガは気持ちのいい夢の中。
わたわたしているレゼルもまた眠気に抗えなくなったのか、次第に瞼が落ちていき、心地よい睡魔が彼を眠りへと誘うのだった。
翌朝、レゼルはぱちっと目を覚ます。
自分を抱きしめたままのストレガを起こさないように気を付けながら布団から出る。
静かに歩いて彼が向かうのは台所。使用していいとされている素材はもう熟知している。
パンを取り出すとそれを焼きながら、卵と細かく切った肉をフライパンで炒め始めた。
ある程度、炒めた所で皿に取り出しお手製のソースをかけていく。そこに焼けたパンを添えた。
「さてと、そろそろストレガ様を起こさないとですよね……でもきっとまた――」
ストレガの下へと戻ったレゼルは予想していた状態になっているストレガから赤面して目をそらす。
「あああ、もうストレガ様。どうして朝はこうなってしまうんですか……さっきしっかり布団をかけたはずなのにっ!」
見れば、ストレガは仰向けになってベッドの上で大の字で寝ている。気持ちよさそうな顔をしながら。
勿論、寝間着として着ていた布ははだけて取れ、双丘が余すことなく主張している。辛うじて布団が掛かっているおかげで股間の周囲は隠れているが、それが逆に危うさを醸し出していた。
何とか理性と自制心を保ちながらレゼルはストレガを揺らして起こす。ぷるんぷるんと揺れる双球に目が釘付けになりながら。
「す、ストレガ様。朝ご飯の用意ができていますよ、起きてください」
「ふぁ? おはようなのだー。いつもありがとうなのだ、少年」
寝ぼけてまだふにゃふにゃ顔のストレガのお礼と共に放たれる爽やかな笑顔はレゼルの心を毎朝刺し、彼に心地よい笑顔を浮かばせるのだった。