彼のこれから

電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)シュヴァーン・エレクトロニクス制作 ウケッキ納品 2023年04月26日 13時44分09秒

●彼のこれから

 シュヴァーン・エレクトロニクスの用意した宿舎の中。
 自分専用の個室の中に【ハッタ・ムラムラ】はいた。
 ベッドに座り、部屋に飾ってある記念トロフィーや感謝状の数々を眺めている。
「思えば……長く戦ってきたものだ。最初はジャイアントパンダになりたい、ジャイアントパンダで世界を満たさねばという一心だったな」
 立ち上がり、トロフィーの一つを掴む。
「悪環境なステージでの戦いも強いられた、身体を拘束するような厄介な相手もいた。そのどれもがおれを成長させてくれていたのだな」
 感謝状に視線をハッタは移す。
 そこには手術の成功を知らせる手紙と笑った少年の写真が一緒に挟み込まれていた。
「おれは信者たちの想いを背負う。彼らがおれを信じ、ジャイアントパンダを目指す仲間であるのなら……おれの旅路もまた、無駄ではなかったのだろうな」
 笹型のプレートを持ち、ハッタは思いを馳せる。
「笹を食べ比べる、なんていう企画の仕事もあった。あれは意外と引っ掛け問題で最後の笹を危うく間違える所だったな」
 懐かしそうに目を細め、ハッタは夕日に照らされる窓の外を眺めている。
 彼の手が何もせずとも震える。
 デュープの限界は早い。彼らの寿命は短く、その輝きは一瞬の光芒に例えられる。ハッタもまた、その例に漏れない。
 だが彼は拳をぎゅっと強く握り、力強く振り上げた。
 彼は選んだのだ。最期の瞬間、もう試合に出られなくなるその時まで……ステージに立っていようと。
 それは彼を信奉し、慕ってくれる信者たちへの彼なりのけじめ。ただ一人でジャイアントパンダを目指していたあの時とは違うのだ。
「ふふ、はははは! 全く、背負うものが多くなったものだ。もう、一人ではない、のだな」
 師匠であるリオに徹底的に鍛えられ、訓練の毎日で孤独を感じていた頃を思い出す。
「おれの背中には、みんながいる……同じ道を、ジャイアントパンダ道を歩む――頼れる仲間たちが」
 試合用の衣装に身を包み、ハッタは強い眼差しになる。その瞳には静かに燃える闘志が宿っていた。
「ハッタ様、出発の時刻です。車を出しますので、正面玄関へとお越しください」
「もう時間か。さて、今日もひと暴れしてくるとするか! ジャイアントパンダ的にな!」
 ドアを開け、今日もまたハッタは試合会場へと向かう。
 己を頼り、支えてくれる者たちへ、自らの出来ることを示しに。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0