【電交】訪問No.82782/82783
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)アルセド制作 柊コウタ納品 2023年06月11日 11時33分16秒
アルセドのロゴがついた大型トラックが夕方の街を走る。その車両は交流型生活施設『SARHV』に到着し、設備関係者用の車庫へと入っていった。
トラックのコンテナが開く。現れたのは、コンテナの天井までぎっちり詰められている全長7mもの巨体。コンテナの1/4を占めようかという巨体、馬に似た多脚のリムに、筋骨隆々とした獅子の上体。
だがアルセドの制服を身に着けており、SARHVの受付スタッフは見知ったアルセド社員に朗らかな挨拶の言葉を掛ける。返答は、機械音の混ざる唸り声。
スタッフは差し出された身分証端末をにこやかにスキャン。ホログラムパネルには、所属と名前が「ALCEDO / Z-Vazil」(スヴァジ・ ルファリ)と表示された。訪問者ナンバーが発行されZ-Vazilの端末と同期。
受付台に、身分証端末がもうひとつ置かれた。
「よろしくお願いしまーす」
声の主は、スケートボードを小脇に抱え、肘まであるグローブ状のリムを両腕に装着した若い女性。端末がスキャンされ、表示された所属と名前は「ALCEDO / Lu-Sie」(ルシエ・ルラ・バウチャー)だ。
●
Lu-Sieの手続き中に、Z-Vazilがコンテナから荷物を運び出す。
彼らが届けるのは、ここに住むデュープ向けの物資。家具、衣料品、精密機器など、生活用品がその大部分を占めている。
Z-Vazilは、色々なデュープの生活に関われるこの仕事が気に入っていた。どんなに大きく重い荷物でも問題無い。コンテナから軽々とたくさんの荷物を降ろし、台車に積み上げた。
受付を済ませたLu-Sieが来て準備完了。スタッフに見送られ、訪問者用ゲートを――Z-Vazilは体を押し込んでどうにか――通り抜け、2人は『SARHV』内へ。
●
台車を押して居住棟へ向かった2人。全部で10棟、入口には身元確認用のゲートがあるのだが、Z-Vazilの体は大きすぎて通行が不可能。そのためZ-Vazilは、いつも棟の入口でLu-Sieに宅配物を渡す。
グオングオン、とZ-Vazilが唸る。いつもごめんとでも言いたげで、すまなそうな顔。Lu-Sieは小さく笑って受け取った。
「まだ気にしてるの? 適材適所ってやつだから良いのよ」
力仕事は得意でしょ、と言って消振機能付きの運搬リュックに荷を詰め、背負う。両手のリムをカチカチと操作。自身と周囲の空気抵抗を減少させ、スケートボードを蹴った。
「いってきまーす」
真面目なんだから、と思いつつ、できるだけ急いで戻ってきてあげよう、などとも思いつつ。ここからは暫くLu-Sieの仕事である。笑顔を意識し、快活な雰囲気を纏って各戸のインターホンを鳴らす。
「アルセドの宅配サービスです!」
「お疲れさんですー」
「受領確認にパネルのタッチを」
「はい、これで」
「ありがとうございました」
●
「次で最後……あれ、居ない」
S-r棟17階の01号室は留守だった。自分の端末を確認すると、数分前に外出中と通知が。入れ違いだったらしい。通知は『SARHV』の公園エリアに届けてほしいというメッセージ付き。ここ『SARHV』の場合、敷地内に居る限りは『在宅』扱いで、この品は受け渡しに本人確認の必要。持ち戻らずに済むならそれくらいはお安い御用。
Z-Vazilのもとへ戻る。
「公園のゲート大きいからぎりぎり入れるわよね。Z-Vazilさん、久しぶりに2人でお届け係する?」
する、とZ-Vazilが頷いて、2人はいざ公園エリアへ。
●
白い制服姿の白髪の男が、来客らしき青い制服姿の若い男とランチテーブルで話し込んでいる。
「宅配サービスです」
Lu-Sieが声を掛けると、白髪の男が振り向いて立ち上がる。タクミ(近衛・巧)さんですか、と確認すればはいと首肯が返ってきた。定期配達の日程を失念して出てきてしまい、と申し訳なさそうにしている。Z-Vazilが小さな箱と受領確認用パネルを差し出した。無事に確認が済み、2人は受取人に背を向ける。
が、公園エリアを出ようとしたLu-SieとZ-Vazilの耳に焦り慌てるような声が届いて、何事、と振り向いた。
こちらへ高速で滑るように這ってくるのは、小さな虫型の機械。
「それ捕まえてください!!」
首の後ろを押さえた険しい表情のタクミが叫んだ。ただならぬ様子にLu-Sieが頷き、Z-Vazilは咄嗟に小さな機械へ飛び掛かる。そして。
パキャ。
Z-Vazilの巨体の足元に飛び込んできた小さな機械は、太い多脚リムの下で呆気なく潰れてしまった。
悲鳴を上げそうになったZ-Vazilだが、タクミの笑い声で顔を上げる。潰れちゃった、お見事、助かりました、と、打って変わっての大笑い。
聞けば、情報盗りの機械を注文品の中に仕込まれていたのだとか。
「取り逃がしたら一大事でした。有難うございます」
丁重な礼と、手数をかけたという詫びの言葉と共に見送られ、Lu-SieとZ-Vazilは今日の配達を終了する。
最後はなんともどたばたしたが、無事終わって良かった。
春の夕べ、言葉も体格も大きく違う2人は、胸の裡を全く同じ思いで一杯にして帰路に就いたのだった。
トラックのコンテナが開く。現れたのは、コンテナの天井までぎっちり詰められている全長7mもの巨体。コンテナの1/4を占めようかという巨体、馬に似た多脚のリムに、筋骨隆々とした獅子の上体。
だがアルセドの制服を身に着けており、SARHVの受付スタッフは見知ったアルセド社員に朗らかな挨拶の言葉を掛ける。返答は、機械音の混ざる唸り声。
スタッフは差し出された身分証端末をにこやかにスキャン。ホログラムパネルには、所属と名前が「ALCEDO / Z-Vazil」(スヴァジ・ ルファリ)と表示された。訪問者ナンバーが発行されZ-Vazilの端末と同期。
受付台に、身分証端末がもうひとつ置かれた。
「よろしくお願いしまーす」
声の主は、スケートボードを小脇に抱え、肘まであるグローブ状のリムを両腕に装着した若い女性。端末がスキャンされ、表示された所属と名前は「ALCEDO / Lu-Sie」(ルシエ・ルラ・バウチャー)だ。
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Lu-Sieの手続き中に、Z-Vazilがコンテナから荷物を運び出す。
彼らが届けるのは、ここに住むデュープ向けの物資。家具、衣料品、精密機器など、生活用品がその大部分を占めている。
Z-Vazilは、色々なデュープの生活に関われるこの仕事が気に入っていた。どんなに大きく重い荷物でも問題無い。コンテナから軽々とたくさんの荷物を降ろし、台車に積み上げた。
受付を済ませたLu-Sieが来て準備完了。スタッフに見送られ、訪問者用ゲートを――Z-Vazilは体を押し込んでどうにか――通り抜け、2人は『SARHV』内へ。
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台車を押して居住棟へ向かった2人。全部で10棟、入口には身元確認用のゲートがあるのだが、Z-Vazilの体は大きすぎて通行が不可能。そのためZ-Vazilは、いつも棟の入口でLu-Sieに宅配物を渡す。
グオングオン、とZ-Vazilが唸る。いつもごめんとでも言いたげで、すまなそうな顔。Lu-Sieは小さく笑って受け取った。
「まだ気にしてるの? 適材適所ってやつだから良いのよ」
力仕事は得意でしょ、と言って消振機能付きの運搬リュックに荷を詰め、背負う。両手のリムをカチカチと操作。自身と周囲の空気抵抗を減少させ、スケートボードを蹴った。
「いってきまーす」
真面目なんだから、と思いつつ、できるだけ急いで戻ってきてあげよう、などとも思いつつ。ここからは暫くLu-Sieの仕事である。笑顔を意識し、快活な雰囲気を纏って各戸のインターホンを鳴らす。
「アルセドの宅配サービスです!」
「お疲れさんですー」
「受領確認にパネルのタッチを」
「はい、これで」
「ありがとうございました」
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「次で最後……あれ、居ない」
S-r棟17階の01号室は留守だった。自分の端末を確認すると、数分前に外出中と通知が。入れ違いだったらしい。通知は『SARHV』の公園エリアに届けてほしいというメッセージ付き。ここ『SARHV』の場合、敷地内に居る限りは『在宅』扱いで、この品は受け渡しに本人確認の必要。持ち戻らずに済むならそれくらいはお安い御用。
Z-Vazilのもとへ戻る。
「公園のゲート大きいからぎりぎり入れるわよね。Z-Vazilさん、久しぶりに2人でお届け係する?」
する、とZ-Vazilが頷いて、2人はいざ公園エリアへ。
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白い制服姿の白髪の男が、来客らしき青い制服姿の若い男とランチテーブルで話し込んでいる。
「宅配サービスです」
Lu-Sieが声を掛けると、白髪の男が振り向いて立ち上がる。タクミ(近衛・巧)さんですか、と確認すればはいと首肯が返ってきた。定期配達の日程を失念して出てきてしまい、と申し訳なさそうにしている。Z-Vazilが小さな箱と受領確認用パネルを差し出した。無事に確認が済み、2人は受取人に背を向ける。
が、公園エリアを出ようとしたLu-SieとZ-Vazilの耳に焦り慌てるような声が届いて、何事、と振り向いた。
こちらへ高速で滑るように這ってくるのは、小さな虫型の機械。
「それ捕まえてください!!」
首の後ろを押さえた険しい表情のタクミが叫んだ。ただならぬ様子にLu-Sieが頷き、Z-Vazilは咄嗟に小さな機械へ飛び掛かる。そして。
パキャ。
Z-Vazilの巨体の足元に飛び込んできた小さな機械は、太い多脚リムの下で呆気なく潰れてしまった。
悲鳴を上げそうになったZ-Vazilだが、タクミの笑い声で顔を上げる。潰れちゃった、お見事、助かりました、と、打って変わっての大笑い。
聞けば、情報盗りの機械を注文品の中に仕込まれていたのだとか。
「取り逃がしたら一大事でした。有難うございます」
丁重な礼と、手数をかけたという詫びの言葉と共に見送られ、Lu-SieとZ-Vazilは今日の配達を終了する。
最後はなんともどたばたしたが、無事終わって良かった。
春の夕べ、言葉も体格も大きく違う2人は、胸の裡を全く同じ思いで一杯にして帰路に就いたのだった。