ジャイアントな体、パンダな心

電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)シュヴァーン・エレクトロニクス制作 虚輝納品 2023年05月27日 19時39分25秒

 これまで数々の任務をこなしてきたが、今回の任務の異質さは群を抜いている。
 嘆いても仕方ないのだろう。分かってはいるが、視線の先にいる人物は如何ともし難い色彩を放っている。

「目標を確認、ハッタ・ムラムラです」
『監視を続行、逐一報告を』

 何が悲しくてパンダの尾行などと、そう思わずにはいられない。
 だがまあ金を貰っている以上、仕事はせねばなるまい。

○1日目
「目標、笹を食っています」
「目標、ケーキを食っています」
「山に入っていきます」
「はぁ……はぁ……か、駆け上がって、行きます……」
「げ、下山しました……ただのトレーニングのようです」
「目標、笹を――」

 1日目終了。

「やってられるか!」
 今にもインカムを叩きつけたい衝動を抑え、自制を試みる。マジなんなんだあのパンダ。

○2日目
「目標、笹を食っています」
「目標、外出しました」
「目標、集団と接触! 学生と思われます」

 2日目にして、初日には見られない行動。
 あれは……なんだ。虐められていた犬を助けている……?
 ちなみに虐めていた学生たちは、パンダが二言三言話すと青い顔をして、蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。何話したんだあのパンダ、すげえいい笑顔だ。
 犬もなぜかパンダに懐いて、一緒に合掌のポーズとかしている。もう分からん。

○3日目
 尾行は失敗した。今俺の目の前には、ドアップでパンダが映り込んでいる。
 とっくにバレていたのだ。人間には気付かれない自身と自負があったが、どうやらクマ科の嗅覚までは誤魔化せなかったらしい。

「俺は、何も吐かんぞ」
「聞くつもりはないとも」
「は?」

 やけにいい声でパンダ……ハッタ・ムラムラは言う。

「興味がない、と言い換えよう。君を傷つけるつもりもない」
「な、何故だ。無事に返すのか?」
「公式なるバトルの場以外で誰かを傷つけること、それはジャイアントパンダ的ではないからな。
 しかし、話くらいは聞いていきたまえ」

 パンダはあくまで優しい声音だ。マジで何を話す気なんだこいつ……まさか、裏切りの勧誘か?

「君は神の存在を信じるかな?」
「勧誘ではあった」

 宗教の類だが

「うむ、そうだね……君からは血の匂いがしない。あくまでまだ、心優しい人間だということだ。
 だが同時に、無知な迷い子だ。実に嘆かわしい」
「お、おい、手首を掴むな。何を――!?」

 このあとめちゃくちゃ動物園に連れていかれた。

 ジャイアントパンダって、いいな……。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0