伏竜
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)ヴァイオレット・コンピューティング制作 守住納品 2023年05月31日 13時41分19秒
Rex-Tのバトルは、回を重ねるごとに苛烈さを増していった。条件が増え、勝利のハードルが高くなる。いっそ虐めか相当趣味の悪いスポンサーが、という杞憂は概ね一度観戦すれば納得へと変わった。――それがファンに求められているのだ、と理解するのだ。
大抵の人類が見上げる体躯。青灰色で硬質の皮膚に、鋭くも滑らかな曲線を描く角を惜しげもなく晒した厳めしい様相。
青灰色の光沢は連なる鱗が生み出す物だ、と理解に足るのは高画質カメラのおかげに他ならない。
竜人だ、と誰もが理解しうる勇ましきデュープは、しかし意外なことに大人しく口数も少なかった。
怪獣のような大活躍を期待し観戦に訪れたとある少年と父親は正直、ほんの少し落胆した。静かで淡々とした宣誓に始まり、バトルには遠距離武器であるレールガンを用いるのだ。そりゃあ確かに父親一人よりでかくてごつくて重そうなとんでもない武器だけど、もっとこう、ちぎってはなげちぎってはなげで炎を口から吐いてくれそうな顔に見えたのだ。
強いし格好良い。だが、と父親は息子を横目で見る。自らの趣味の影響で、レトロな怪獣モノを大好きになってしまった我が子は Rex-Tがびりびりとした光で敵を薙ぎ払うのをぽかんと見ていた。
どうやって息子の機嫌を取ろう、と悩む父親の耳に我が子の歓声が飛び込んだ。驚いてみれば、息子の目がきらきらと輝いている。
もしや、と、父親はフィールドへと視線を向けた。
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戦況は不利であった。せせこましくも止まぬ連撃に、そうであれ、と定められたRex-T内の無機質な声が追いつかない。ふつふつと煮立ちかけた本能を端から冷却していく機構も間に合わず、やがて――オーバーヒートする。
竜の因子の制御は、どれほどの叡智でも完璧には足りないらしい。抑圧された枷に罅が入れば、あとはあっという間に決壊するのみだった。
――咆哮が、観客まで揺らす。
大きく開いた口に並ぶ牙を、動物めいた口内が肉々しく彩った。それまでのリスクを鑑みたような――人間的な動きを捨て、身体を撓ませ肉を絞る。人ならざる硬質さが衣服を歪に押し上げ、被り物などではなく二足歩行する竜なのだと見る物全てに理解させた。
振り上げた手足で相手の動きを止め、レールガンを鈍器のように振り下ろす。単純で純粋な膂力は、逃れる暇を寸分も与えなかった。
「――ぬるい!」
ごう、と吼えた一喝の勢いに、観客席は今日一番に沸き立った。