【蒼駆】アルセド・ザ・ヘッジホッグ
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)アルセド制作 STANZA納品 2023年05月20日 22時51分15秒
「速さがウリのアルセドでナンバーワン、ってコトは全デュープの最速ってコトだよねっ!」
そう、Safyla/NAこと「さひ子」の言う通り、これは全デュープ最速を決める戦い。
ということで、旗取りエキシビションマッチ「アルセド・ザ・ヘッジホッグ」のスタートです!
由来は勿論、あの超音速クールガイ!
「は? エキシビジョンで……旗取りだぁ?」
おや、アズルクロウが不満げな顔でこちらを見ていますね。
どうしました?
「バトルはどーしたよ、バトルは? アタシは純粋培養の戦闘民族なんだが?」
おお、さすが戦闘狂!
ですがご安心ください、妨害強奪蹴落としその他、何でもアリです!
「そんなんただのド突き愛だろ? アタシがそんなヌルいモンで――」
大丈夫、コースのどこかにちゃんと用意してあります!
ただし隠しコースにつき辿り着けるかどうかは自己責任という事で!
「チッ、まあいい……それが企業サマのご意向ってんなら、従うしかねぇだろ」
アズルクロウ、ここは全力で勝利を目指す事によって不満を発散しようと、渋々ながらもスタートラインへ!
「勝手に人の心読んでんじゃねぇ!」
失礼、ところでスタートの号砲はとっくに鳴り響いているのですが。
「なっ、それ早く言えぇぇぇっ!!!」
流石スピードファイター、ブースター増設の脚でブッ飛んで行く!
が、他の選手は既に遥か前方、果たして追い付き追い越せるのか!
ここで少々時間を巻き戻してみましょう。
号砲と共にまず飛び出したのは自称アルセドのマスコット、アルセド―ドー君!
背中のジェットパックで一直線に、先祖(?)が夢見たモーリシャスの空を目指す!
いや失礼、目指しているのは遙か先の高層ビル群、一番高いビルのテッペンに翻る金色の旗!
このゲームはスピードを競うリアル旗取り、フィールド構成はポゼッションに似て各所にコアも存在していますが、狙うはコアにあらず。
コアに差し込まれた旗を最も多く回収し、かつトップでゴールした選手に「超音速最速デュープ」の称号が与えられるのです。
コア以外にも旗はあちこちに仕込まれていますが、一度取られた旗は二度と復活しません。
まだ誰も狙っていない旗のもとへ如何に素早く辿り着けるか、スピードと一瞬の判断が勝敗を分ける、ですが急ぎすぎは自滅の元!
コースアウトや障害物への激突、或いはライバルによる強襲などでダメージを受けた場合、手持ちの旗が周囲にバラ撒かれてしまうのです!
素早く拾いに行く事も可能ですが、ライバルに持ち去られてしまう事も、寧ろそれだけを狙うハイエナ戦法もアリ!
ところでアルセド―ドー君は今どこに……いました、青い空に青い鳥でよく見えませんが、超望遠のカメラはしっかりその姿を捉えている!
今この瞬間、全世界の目が彼(?)に集まっています!
その手が遂に、旗を――
「ボクがアルセドの一番だぁああああぁ……!」
そのまま、アルセド―ドー君はお星様になりました。
加速が付きすぎて止まれなかったようです、彼には今一度、高性能ジェットパックの取説をじっくり読む事をお勧めしておきましょう。
画面中央でヒラヒラと揺れる旗が哀愁を誘いますね。
(なんか……足速い連中ばっかだな?)
画面変わってこちらは、出場理由が不明のままここにいる枠のスティーリア。
ラテン語で氷柱を意味するその名の通り、クールな氷雪系キャラで売り出していますが、この温暖化で解けてしまったのか意外にも流されやすい一面があるようです。
「いや、流されたとかじゃなくて。なんで俺なんだろうな。マジで」
確かにアルセドには速さを誇るデュープが多い、寧ろ速くなければアルセドのデュープに非ずとまで言われるスピード至上主義。
速さだけで選ぶなら、他のデュープでも有り得た筈。ですが勿論、このチョイスには意味があります。
「どんな?」
ズバリ、顔が良い!
「……、…………」
おや、感動のあまり言葉も出ない?
「呆れてんだが?」
でも客寄せは大事ですよね?
「俺はパンダか……まあいい。これが仕事だってんなら、やってやるさ」
リム化した両脚に力を込め、草原の緑が眩しい丘を全力で駆けるスティーリア!
やる気スイッチが入ったか、それなりに気合いは入っている模様!
「まあ、ルールは意外とまともだったしな」
トンチキなイベントだからと言ってルールまでトンチキとは限りません、寧ろ真面目でシリアスな空気にこそ生えるのがトンチキ!
スティーリア、まだ誰も取りに来ていない丘の上の旗に手を伸ばす、しかしここで!
「みんなのヒーロー、ニルス参上!」
トップスピードで猛追したNi15(エンイーファイフティン・ニルス)がコアに向かって電掣を投げ付ける!
「わかってる、コアに攻撃しても意味がないって言うんだろ?」
そう、これはポゼッションではありません、わかっていながら何故!?
しかも狙いは微妙に外れ、電掣はコアの台座に突き刺さっている!
「それはね……こうする為さ! 大両剣・蒼天霹靂!」
叫びと共に雷轟と電掣が合体、しかし今、ニルスの手元にあるのは雷轟のみ――いや、互いに引き合っている!
これは磁力か、超電磁合体か、引き合う力でニルスが跳んだ!
二振りの湾曲刀はバリバリガシーンと連結し、ニルスの身体は瞬時にコアの目の前、これはワープか、なんという発想の勝利!
あっと言う間もなくスティーリアを追い越し旗を手にしました!
「なんだ、面白い奴がいるじゃねえか」
スティーリアの瞳に炎が宿る、負けず嫌いに火が点いたか!
「……こりゃ、思った以上にマジになんねえといけねえな」
瞬時に目標を変え、次の旗にダッシュ!
「いいね、負けないよ!」
良い笑顔で追いかけようとするニルス、だがここで思わぬトラブルが!
「あれ? え、抜けない!?」
なんということでしょう、これぞまさしく蒼天の霹靂!
「大丈夫、回ればきっとなんとかなる! ronddraaien tornado、バージョン2!」
これは先日のドラマで初お披露目となった「ぼくがわたしがかんがえたさいきょうのひっさつわざ」、その別バージョン!
前回は蒼天霹靂をバトンのように回していたが、今度はドリルのように軸を回す、そしてニルスも回る、ポールダンサーの如く!
抜けた、抜けました、そして回転したままいずこへか飛び去った!
どうなるニルス、しかしここで暫しのお別れ、実況は美亜に交代します!
はい交代しました、自称アルセドの看板ガール美亜だよ!
いつもは配信番組で広報とか告知とかやってるけど、なんと今日は生配信の実況担当です。
カメラはここ、額の真ん中。レースに参加する選手として思いっきり走りながら、私目線のスピード感溢れる映像をお届けします。
それじゃ行くよ! 跳ねながら加速するのが私のやり方……空間全てが私の足場!
この脚、反重力発生装置になってるんだ。だから空気を蹴ってどこまでも高く跳べるよ!
まずは上空のフロートに刺さった旗をゲット!
あ、ここからだとコースの全体がよく見えるね。最初の海が見える草原コースには滝や川もあるよ、そこからトンネルに入るけど私は山の上をひとっ飛び!
その向こうには大きな工場、そこから海にかかるハイウェイが伸びて高層ビル群に繋がってるね。
そして最後は遊園地――ひゃっ!?
今なんかドリルみたいなのがすごい勢いで飛んでったよ、え、ニルスさん?
あと後ろからすごい圧! 二枚のスキー板みたいな反重力ボードに乗ったその姿は、蒼き弾丸ポラリスさん!
あっ、ヘルメスって名前なんだねそのボード!
「どいてどいて、危ないよ!」
そんなこと言われて素直にどくわけないでしょ――っと、ごめんね!
逆にポラリスさんの鼻先で空間を蹴って加速、わざとじゃないけど進路妨害はルール違反じゃないからね!
って、え? うそ、全然効いてない!?
「そんなもの、シャボン玉が弾けた程度にしか感じないよ!」
うわ、流石アルセドの暴走族、これは小細工より真っ向勝負だね!
「お先!」
あっ、抜かれちゃう!
実況してる余裕ない、代わって!
「まだまだ勝負はつかない……ここからだよ!」
ニルスを追い、ポラリスと競って飛び出した美亜、あっという間に見えなくなった!
というわけで戻って参りました実況です。
ここで再び時間を戻し、スタート付近の様子を見てみましょう。
「今まで配信で見てたデュープさんがいっぱい……!」
おめめキラキラで先輩デュープを見つめるSE7EN(セブン)は、つい最近デビューを果たしたばかりのピカピカの新人!
「みんな、すっごい先輩たちばっかりだし、やる気出てきたぞぉ~!」
巨大ブーメランを軽々と振り回し、自身の存在をアピールします!
その元気に負けないパワーでスタート前から無軌道に走り回っているのは、こちらも新人のSTΛR+(サテリット)!
コマネズミのようにクルクルとよく動く、名前の由来も「ファンの周りをくるくる飛び回る衛星」から来ているとか。
「今日も頑張らなくっちゃ! 盛り上げて行くよー!」
勝負は二の次、映像映えに全てを賭けるアイドル志望、その笑顔でお茶の間にハッピーを届けたい!
その隣で巨大な太刀鋏をジャキンジャキン鳴らす810->4U(パッセンジャー)、本日はすこぶる機嫌がよろしいですね。
どうやらエキシビションという事で、今回は服装に関して殆ど注文がなかったようです。
「そう! これこそが! 俺が俺たるに相応しい装い! 俺が求めてやまなかった理想の姿!」
普段からわりと大胆な改造を施されている彼の制服は本日、イメージカラーと企業ロゴ以外のほぼ全てで強引にマイウェイ!
そして他の参戦者達にもダサ服判定を受けた者はいなかった、この戦いでこそバーサクモードを拝みたかった気もしますが――え、アルセド―ドー君は良いの? 許されてるの?
「彼は着ぐるみだからな。着ぐるみと衣服はデザインのコンセプトとして根本から異なるものだ。服は機能性と美しさは勿論、着る者を引き立たせつつも自らも主張する事を厭わない大胆さが必要だが、着ぐるみは――」
その話、長くなります?
って言うかもうスタートの号砲鳴ってますよ?
「何!? だがまだ慌てる時間じゃない」
810->4U、自慢の空間把握能力で瞬時にステージ構成を把握、複数の旗を同時にロックオン、最短距離で一気に取りに行く!
一方こちらは号砲と共に飛び出したSTΛR+、身軽にジャンプを繰り返しながら丘の上へと駆け上がります!
「わあ、広ーい!」
お花畑に点在する旗を次々に取るが、行く手は結構な段差のある崖、しかしここを登る以外に道はない!
「大丈夫、こんなの軽い軽い!」
僅かな足がかりを頼りに軽々と崖を登り、最後は華麗に空中二段ジャンプからのくるりと一回転で見事に着地、しかし!
「えっ、あわわわわっ!?」
崖の向こうは急斜面、限界を超える猛スピードで斜面を駆け下りる――が足がもつれた!
「転がった方が速いね!」
そのまま二重ループのコースに乗って、終点から大空にテイクオフ、軽々と山を超えて行く!
画面切り替わってこちらはSE7EN、少々出遅れた感はあるが余裕の表情だ!
「だって、アタシにはコレがある!」
ジャイアントスイングでブン投げた巨大ブーメランを追いかけて飛び乗る、これはブーメランサーフィンとでも言うべきか!
「憧れの先輩たちだからこそ、アタシも本気で行くぞっ! 絶対一番になるんだ!! 負けないぞ~!!」
しかしこれは目が回る! そして投げた地点に戻って来る!
それはそう、ブーメランだもの。
「いっけない、回転オフにするの忘れてた!」
何やら弄って再び投げる、今度は回らず曲がらず真っ直ぐ飛んで、810->4Uの背中を視界に捉えた!
SE7ENの追随に気付いた810->4U、敢えて競わず目前の旗をSE7ENに譲る!
「旗の一本くらい譲ってやるよ、それ曲がれないんだろ?」
「えっ、あっ、確かに――」
慣性のみで飛ぶブーメラン、手を伸ばしたSE7ENは辛うじて旗を掴むも、そのまま真っ直ぐどこへ行く!
その間に軌道を再計算した810->4Uは、次々に旗を取りながらコースを駆け抜ける!
しかし行く手に待ち受けるのは巨大な滝、超えられるか810->4U!
「問題ない」
滝の直前で垂直ジャンプ、からの太刀鋏を真下に向けてジャキン!
なんと空気を切った反動で810->4Uの身体が上昇、そんなのアリか!
そして見事に滝を越え、次のステージへ!
一方SE7ENは急に止まれない、一直線に滝に突っ込みそのまま滝壺へドボン!
しかしそこには――
「うわあ、旗がいっぱい! 取り放題だー!」
隠された旗を一気に鷲掴み、だが流れが速い、抵抗虚しく激流に押し流される!
SE7ENの無事を祈りつつ、カメラは再びスタート地点に戻ります。
出遅れたアズルクロウも怒涛の追い上げで先頭集団に追い付き、流石にもう誰も残っていない……と思いきや!
「∑ふぎゃっ」
さひ子! さひ子どうした!
「……あいたたた……」
気合いが入り過ぎたのか、スタート直後のコーナーで食パン咥えた女子高生と激突――ではなく、曲がりきれずに壁と熱愛!
さひ子、早くも残機2! なお残機ゼロで問答無用のゲームオーバー!
「厳しっ!」
初代リスペクトですので。その代わり旗を一本でも持っていればミスになりませんよ。
「っしゃ、こっから巻き返し――って、めっちゃ差をつけられてる!?」
ブースト点火、全速前進全力全壊!
「なに壊してんじゃい! フンギャロ!!」
謎の気合いを入れて飛び出すさひ子、脇目も振らずショートカットの裏コースへ!
3連続ループで勢いを付け、飛び出した!
「うぉりゃぁぁぁぁぁ!! 逆転だぁぁぁぁ!!!」
気流に乗れば背中の機械翼でコントロールは自由自在、空中の旗を残らず取りながら進む!
着地を決めたそこは工場の屋根、他の参戦者はまだ山越えの途中か!
「っしゃ暫定トップキタコレ!」
しかし油断大敵、足元から高温の蒸気が噴出して旗が飛び散る!
慌てて回収する間に同じく山越えのニルスが着弾、続いて美亜とポラリスが、更にSTΛR+が飛んで来る!
だが重量オーバーだったか、屋根が抜けて落とされた5人はピンボールのように弾かれ転がりどこへ行く!?
最初にこの窮地を抜けたのは美亜だ、反重力キックで宙を蹴り鉄骨の間に置かれた旗を次々取って行く!
ポラリスも空中制動が可能だがここは狭い、ボードが引っかかって思うように動けない!
ニルスは蒼天霹靂の合体を解除、鉄骨の隙間を縫ってトラップを避けつつ慎重に下へ降りて行く!
さひ子は背中の翼で円形の檻を作り、その中で身体を丸めて完全ガード、文字通り手も足も出ないがここはこうしてギミックに身を委ねるのが正解か!
転がる楽しさに目覚めたSTΛR+もボールになりきり、弾かれるままに突き進む!
一方順路に従い素直に進んだアズルクロウ、スティーリア、810->4Uの3人はトンネルという名のダンジョンに挑む!
通路の分岐は運命の分かれ道、ブースターを駆使したアズルクロウは瞬時も迷うことなく一本道の如く突っ走る!
「アタシの鼻が呼んでんだよ、こっちにおもしれーコトがあるってな!」
野生の勘が引き当てたのは、なんとこのエリアの隠しボス!
『ふぇー!』
悪の科学者ドクターパッカマンの登場です!
卵のように丸い体をもふもこの毛皮に包み、二足歩行するこの謎生物、いや生物なのか?
「ここは通さないってか? ハッ上等だよ。アタシも単純な方が好きなクチなんでな!」
両手の巨大なレーザー爪を振りかざし、アズルクロウが突進!
『キエェェェ! キュェッキュェッキュェッ!!』
これは威嚇の鳴き声、直後パッカマンの口からネバネバの液体が吐き出される!
「うわ、きったね! てか臭っ!」
余裕で避けたが床に落ちた吐瀉物から猛烈な臭気が!
これ以上吐かれては堪らんと、アズルクロウはパッカマンの首を一刀両断!
爆発四散するパッカマンはロボットだった、中から飛び出すビッグ10フラッグ!
それを拾って出口に走るアズルクロウ!
一方スティーリアと810->4Uは抜きつ抜かれつ、途中の旗を奪い奪われトンネルを駆け抜け、勝負の舞台は工場へ!
上下左右から迫るピストン、噴き出す蒸気と渦巻く火炎、上から落ちて来る巨大歯車!
ここはタイミングを測って慎重に行きたいところ!
「違うな、正解は――」
おや、スティーリアの様子が……
「トップスピードで駆け抜ける事だ」
両脚に限界までパワーチャージ、一気に加速! 全てのトラップをギリギリで駆け抜けた!
810->4Uもそれに続くかと思いきや、太刀鋏アクションを駆使しつつコース外を最短距離で駆け抜ける、しかも隠し旗までしっかり回収!
さあ工場から一番に吐き出されたのはピンボールさひ子、やや遅れてSTΛR+!
旗をスルーしトップ通過に全てを賭けた二人がハイウェイに転がり出る、しかしその前方に巨大な水柱、これはクジラの潮吹きだ!
その上に乗っているのはSE7ENだ、滝壺で激流に流されたSE7ENは海でクジラに飲み込まれ、なんやかんやあって今ここ!
「とーう!」
水柱のてっぺんから飛び降りたSE7EN、その途中で空中の旗を取りながら着地を決める!
突如トップを奪われたさひ子とSTΛR+はボール形態を解除して走る、その後ろにやや遅れて第二集団が飛び出して来た!
スティーリア、810->4U、ニルス、美亜、アズルクロウ、ポラリス、集団からいち早く抜けるのは誰か、おっとここで……ハイウェイが崩れ始めた!
集団の背後から崩壊が迫る、巻き込まれたら一発ゲームオーバーだ!
後ろからぐんぐん追い上げて来たのはポラリスだ、道路上で暴走族に勝てる者はいない、体当たりで強引に道を開いて行く!
「うわ、危なっ!」
背後からの突進を跳躍でかわしたSE7EN、ポラリスの背を足場に更に跳躍、ハイウェイの上を走る通信ケーブルにブーメランを引っ掛けた!
「ちょ、アタシを踏み台に!?」
「ごめんね!」
笑顔で謝りブーメランの上に乗るSE7EN、火花を散らしながらブーメランがケーブルを滑り、軌道上には無数の旗!
だが美味しい裏ルートには罠がある!
「爆弾!?」
慌てて飛び降り、ギリギリ回避!
「トップはあたしだ!」
ショートカットを狙うさひ子がコーナーから飛び出した!
見事対岸に着地を決めて、再び一位に躍り出る!
「よぉーし、わたしも!」
STΛR+は思い切り助走を付けて、トップスピードで路面を蹴った!
しかしその瞬間に足元が崩れる! バランスを崩したSTΛR+は海中に落下――と思いきや!
ここでニルスです! ぼくらのヒーローが助けに来たぞ!
「ronddraaien tornado!」
蒼天霹靂をプロペラの如く回し、自ら起こした風に乗って舞い上がる!
STΛR+を片腕で抱え上げ、そのままヘリコプターのように対岸にソフトランディング!
物理的にどうなんだと仰る向きもあるでしょうが、これはエンタメ! 楽しく魅せるのが正義!
「ありがとうニルス!」
「家族だから……じゃない、ヒーローだからね!」
何故か言い間違えたニルス、何事もなかったように風の如く去る!
それを見送るSTΛR+、いや見送っている場合じゃない!
「走らなきゃ!」
ショートカットで距離は稼いだが、後続は猛スピードで追い上げて来る!
美亜とポラリスは崩れる足場をものともしない、アズルクロウは殆ど四足走行に近い姿勢で走る、もしやその爪が足場を壊しているのでは!?
「んなワケねぇだろ!」
スティーリアはひたすらゴールだけを見据えてフルスロットル、旗取りはもはや念頭にないか!?
「旗を狙って遠回りするなら、俺はそれを捨てて最速ゴールを目指す」
なんというクール&ストイック、氷柱の名は伊達じゃない!
そしていつの間にか姿が見えなくなっていた810->4U、なんと既に次のエリアに到達していた!
高層ビル群こそ、彼の空間把握能力が最も活かされるステージです!
走る自動車やモノレール、飛び回るドローンなどの障害物を巧みに避け、或いは鋏で両断しつつ旗を取る!
それを追うポラリス、行く手を塞ぐビルに突っ込んだ!
「アタシの辞書に回避の文字はない!」
ガラスを割ってフロアをぶち抜き壁を粉砕し、反対側に飛び出す、しかしそこに突然の怪獣が!
「え?」
べちん! ポラリスは羽虫の如く叩かれ落下、飛び散る旗!
急げ、回収すればミスにはならない!
だがここで突っ込んで来たスティーリアが旗を横取り――いや違う!
「ほらよ、ちゃんと持っとけ」
拾い集めてポラリスに手渡した、なんという紳士!
しかし良い話では終わらない、巨大ブーメランが二人を蹴散らし、落ちた旗をSE7ENが掻っ攫って行く!
「悪く思わないでね、これもルールのうちだから!」
一本ずつ残しておいたのは、ミスにならないようにとの優しさか!
「上等だ、受けて立つ!」
旗を取り返そうとポラリスはビームソードを構えるが、その頭上に瓦礫が降りかかる!
怪獣の尾の一振りで脆くも崩れ去る高層ビル、なおSE7ENは怪獣とは戦いません。戦いそうな名前だし、ブーメランも頭から飛ばしそうですが、戦いません。そもそもこの怪獣、無敵ですし。
「だったらビルが崩れる前に回収しなきゃ!」
STΛR+は今度こそ思い切り助走を付けてビルの壁面を駆け上がる!
低いビルから隣の少し高いビルへ、次から次に飛び移り、最後に――
「えーい!」
それはアルセド―ドー君が取り損ねた、金色に輝くボーナスフラッグ。
「これ一本で50本分だよ!」
パルクールスタイルではアズルクロウも負けていない、高速立体機動で旗を取りつつゴールに向かう!
最終ステージの遊園地はショートカットを許さない一本道、まずはジェットコースターのコースを走り抜け、最高地点で観覧車に飛び移る!
「ちょ、これ回るんだけど!?」
観覧車の上を懸命に走るさひ子、回るのは当たり前だが、それはハムスターの回し車の如く!
走っても走っても前に進めない理不尽、さひ子の翼は姿勢制御用であって、自ら飛び立つ機能は備えていない!
「お先に失礼!」
宙を蹴って跳ぶ美亜は必死で走るライバルの頭を飛び越えて、観覧車から海賊船に飛び移る――かと思えば、なんと反重力発生装置を切って反対向きに走り出す!
正反対の向きに働く力が釣り合って、観覧車の回転が止まった!
「勝負はフェアじゃないとね」
「そういう事なら、乗った!」
二人が回転を止めている間に、次々と走り抜けて行くライバル達!
「でも勝ちを譲ったわけじゃないから!」
猛然とダッシュする美亜をさひ子が追う!
そして遂に、ゴールは目前!
しかしやはりと言うか、そこに立ち塞がるシン・ドクターパッカマン!
これを倒さねばゴールに辿り着けない、しかしここで810->4Uがバーサクモードに!
「なんっだそのクッソダセェ服!?」
真っ赤な合皮に金モールの上着は毛圧に耐えかねて今にもはち切れんばかり、黒い長ズボンも横に伸びすぎて紐パン状態だ!
「まずはその無駄毛を処理してやる!」
太刀鋏を構える810->4U、しかし8つの頭から吐き出される猛烈に臭い何か!
「大丈夫、わたしに任せて!」
STΛR+のJoyeux confeitoが星屑のように降り注ぐと、なんと悪臭がお花の香りに!
810->4Uに毛を丸刈りにされたパッカマンはセンイ喪失、最後はアズルクロウがトドメの爪攻撃で8つの首をぶった切る!
しかし敵はまだ最後の変身を残していた!
そこに聞こえる謎の雄叫び!
「どいてぇえええぇぇっ!!」
帰って来たアルセド―ドー君の着弾により、パッカマンは爆発四散!
反動で吹っ飛んだアルセド―ドー君、そこはゴールラインの向こう側だ!
「やっぱりボクが最速だ!」
しかし吹っ飛んだ衝撃で1ミスのアルセド―ドー君、チェックポイントからのリスタート!
その間に次々とゴールに飛び込む選手達!
一着はスティーリア、しかしそこに旗の本数によるタイムを引くと――
810->4Uだ、地道な旗取りが効いたか、810->4Uがトップに躍り出た!
なお本人は未だバーサクモードにつき、コメントは取れませんでした。
悔いはないと笑みを浮かべるスティーリア、好敵手に握手を求めるニルス。
さひ子もSE7ENもポラリスも、悔しさを滲ませながらも良い笑顔です。
「いつものことだけど……終わるとすごいことなってるなー、髪」
「アタシのやり方、まだまだ通用するってコトだよな」
爆発した髪を弄りつつ美亜が楽しげに笑う、惜しくも優勝を逃したアズルクロウもふわっと満足そうだ!
アルセド―ドー君は真っ白に燃え尽きた感じで座り込んでいますが、まあ大丈夫でしょう、多分。
最後にSTΛR+が――
「みんなでPiece to Peace!」
それでは皆様、またどこかのバトルでお会いしましょう、お元気で!
サヨナラ、サヨナラ、サy(ぶちっ
そう、Safyla/NAこと「さひ子」の言う通り、これは全デュープ最速を決める戦い。
ということで、旗取りエキシビションマッチ「アルセド・ザ・ヘッジホッグ」のスタートです!
由来は勿論、あの超音速クールガイ!
「は? エキシビジョンで……旗取りだぁ?」
おや、アズルクロウが不満げな顔でこちらを見ていますね。
どうしました?
「バトルはどーしたよ、バトルは? アタシは純粋培養の戦闘民族なんだが?」
おお、さすが戦闘狂!
ですがご安心ください、妨害強奪蹴落としその他、何でもアリです!
「そんなんただのド突き愛だろ? アタシがそんなヌルいモンで――」
大丈夫、コースのどこかにちゃんと用意してあります!
ただし隠しコースにつき辿り着けるかどうかは自己責任という事で!
「チッ、まあいい……それが企業サマのご意向ってんなら、従うしかねぇだろ」
アズルクロウ、ここは全力で勝利を目指す事によって不満を発散しようと、渋々ながらもスタートラインへ!
「勝手に人の心読んでんじゃねぇ!」
失礼、ところでスタートの号砲はとっくに鳴り響いているのですが。
「なっ、それ早く言えぇぇぇっ!!!」
流石スピードファイター、ブースター増設の脚でブッ飛んで行く!
が、他の選手は既に遥か前方、果たして追い付き追い越せるのか!
ここで少々時間を巻き戻してみましょう。
号砲と共にまず飛び出したのは自称アルセドのマスコット、アルセド―ドー君!
背中のジェットパックで一直線に、先祖(?)が夢見たモーリシャスの空を目指す!
いや失礼、目指しているのは遙か先の高層ビル群、一番高いビルのテッペンに翻る金色の旗!
このゲームはスピードを競うリアル旗取り、フィールド構成はポゼッションに似て各所にコアも存在していますが、狙うはコアにあらず。
コアに差し込まれた旗を最も多く回収し、かつトップでゴールした選手に「超音速最速デュープ」の称号が与えられるのです。
コア以外にも旗はあちこちに仕込まれていますが、一度取られた旗は二度と復活しません。
まだ誰も狙っていない旗のもとへ如何に素早く辿り着けるか、スピードと一瞬の判断が勝敗を分ける、ですが急ぎすぎは自滅の元!
コースアウトや障害物への激突、或いはライバルによる強襲などでダメージを受けた場合、手持ちの旗が周囲にバラ撒かれてしまうのです!
素早く拾いに行く事も可能ですが、ライバルに持ち去られてしまう事も、寧ろそれだけを狙うハイエナ戦法もアリ!
ところでアルセド―ドー君は今どこに……いました、青い空に青い鳥でよく見えませんが、超望遠のカメラはしっかりその姿を捉えている!
今この瞬間、全世界の目が彼(?)に集まっています!
その手が遂に、旗を――
「ボクがアルセドの一番だぁああああぁ……!」
そのまま、アルセド―ドー君はお星様になりました。
加速が付きすぎて止まれなかったようです、彼には今一度、高性能ジェットパックの取説をじっくり読む事をお勧めしておきましょう。
画面中央でヒラヒラと揺れる旗が哀愁を誘いますね。
(なんか……足速い連中ばっかだな?)
画面変わってこちらは、出場理由が不明のままここにいる枠のスティーリア。
ラテン語で氷柱を意味するその名の通り、クールな氷雪系キャラで売り出していますが、この温暖化で解けてしまったのか意外にも流されやすい一面があるようです。
「いや、流されたとかじゃなくて。なんで俺なんだろうな。マジで」
確かにアルセドには速さを誇るデュープが多い、寧ろ速くなければアルセドのデュープに非ずとまで言われるスピード至上主義。
速さだけで選ぶなら、他のデュープでも有り得た筈。ですが勿論、このチョイスには意味があります。
「どんな?」
ズバリ、顔が良い!
「……、…………」
おや、感動のあまり言葉も出ない?
「呆れてんだが?」
でも客寄せは大事ですよね?
「俺はパンダか……まあいい。これが仕事だってんなら、やってやるさ」
リム化した両脚に力を込め、草原の緑が眩しい丘を全力で駆けるスティーリア!
やる気スイッチが入ったか、それなりに気合いは入っている模様!
「まあ、ルールは意外とまともだったしな」
トンチキなイベントだからと言ってルールまでトンチキとは限りません、寧ろ真面目でシリアスな空気にこそ生えるのがトンチキ!
スティーリア、まだ誰も取りに来ていない丘の上の旗に手を伸ばす、しかしここで!
「みんなのヒーロー、ニルス参上!」
トップスピードで猛追したNi15(エンイーファイフティン・ニルス)がコアに向かって電掣を投げ付ける!
「わかってる、コアに攻撃しても意味がないって言うんだろ?」
そう、これはポゼッションではありません、わかっていながら何故!?
しかも狙いは微妙に外れ、電掣はコアの台座に突き刺さっている!
「それはね……こうする為さ! 大両剣・蒼天霹靂!」
叫びと共に雷轟と電掣が合体、しかし今、ニルスの手元にあるのは雷轟のみ――いや、互いに引き合っている!
これは磁力か、超電磁合体か、引き合う力でニルスが跳んだ!
二振りの湾曲刀はバリバリガシーンと連結し、ニルスの身体は瞬時にコアの目の前、これはワープか、なんという発想の勝利!
あっと言う間もなくスティーリアを追い越し旗を手にしました!
「なんだ、面白い奴がいるじゃねえか」
スティーリアの瞳に炎が宿る、負けず嫌いに火が点いたか!
「……こりゃ、思った以上にマジになんねえといけねえな」
瞬時に目標を変え、次の旗にダッシュ!
「いいね、負けないよ!」
良い笑顔で追いかけようとするニルス、だがここで思わぬトラブルが!
「あれ? え、抜けない!?」
なんということでしょう、これぞまさしく蒼天の霹靂!
「大丈夫、回ればきっとなんとかなる! ronddraaien tornado、バージョン2!」
これは先日のドラマで初お披露目となった「ぼくがわたしがかんがえたさいきょうのひっさつわざ」、その別バージョン!
前回は蒼天霹靂をバトンのように回していたが、今度はドリルのように軸を回す、そしてニルスも回る、ポールダンサーの如く!
抜けた、抜けました、そして回転したままいずこへか飛び去った!
どうなるニルス、しかしここで暫しのお別れ、実況は美亜に交代します!
はい交代しました、自称アルセドの看板ガール美亜だよ!
いつもは配信番組で広報とか告知とかやってるけど、なんと今日は生配信の実況担当です。
カメラはここ、額の真ん中。レースに参加する選手として思いっきり走りながら、私目線のスピード感溢れる映像をお届けします。
それじゃ行くよ! 跳ねながら加速するのが私のやり方……空間全てが私の足場!
この脚、反重力発生装置になってるんだ。だから空気を蹴ってどこまでも高く跳べるよ!
まずは上空のフロートに刺さった旗をゲット!
あ、ここからだとコースの全体がよく見えるね。最初の海が見える草原コースには滝や川もあるよ、そこからトンネルに入るけど私は山の上をひとっ飛び!
その向こうには大きな工場、そこから海にかかるハイウェイが伸びて高層ビル群に繋がってるね。
そして最後は遊園地――ひゃっ!?
今なんかドリルみたいなのがすごい勢いで飛んでったよ、え、ニルスさん?
あと後ろからすごい圧! 二枚のスキー板みたいな反重力ボードに乗ったその姿は、蒼き弾丸ポラリスさん!
あっ、ヘルメスって名前なんだねそのボード!
「どいてどいて、危ないよ!」
そんなこと言われて素直にどくわけないでしょ――っと、ごめんね!
逆にポラリスさんの鼻先で空間を蹴って加速、わざとじゃないけど進路妨害はルール違反じゃないからね!
って、え? うそ、全然効いてない!?
「そんなもの、シャボン玉が弾けた程度にしか感じないよ!」
うわ、流石アルセドの暴走族、これは小細工より真っ向勝負だね!
「お先!」
あっ、抜かれちゃう!
実況してる余裕ない、代わって!
「まだまだ勝負はつかない……ここからだよ!」
ニルスを追い、ポラリスと競って飛び出した美亜、あっという間に見えなくなった!
というわけで戻って参りました実況です。
ここで再び時間を戻し、スタート付近の様子を見てみましょう。
「今まで配信で見てたデュープさんがいっぱい……!」
おめめキラキラで先輩デュープを見つめるSE7EN(セブン)は、つい最近デビューを果たしたばかりのピカピカの新人!
「みんな、すっごい先輩たちばっかりだし、やる気出てきたぞぉ~!」
巨大ブーメランを軽々と振り回し、自身の存在をアピールします!
その元気に負けないパワーでスタート前から無軌道に走り回っているのは、こちらも新人のSTΛR+(サテリット)!
コマネズミのようにクルクルとよく動く、名前の由来も「ファンの周りをくるくる飛び回る衛星」から来ているとか。
「今日も頑張らなくっちゃ! 盛り上げて行くよー!」
勝負は二の次、映像映えに全てを賭けるアイドル志望、その笑顔でお茶の間にハッピーを届けたい!
その隣で巨大な太刀鋏をジャキンジャキン鳴らす810->4U(パッセンジャー)、本日はすこぶる機嫌がよろしいですね。
どうやらエキシビションという事で、今回は服装に関して殆ど注文がなかったようです。
「そう! これこそが! 俺が俺たるに相応しい装い! 俺が求めてやまなかった理想の姿!」
普段からわりと大胆な改造を施されている彼の制服は本日、イメージカラーと企業ロゴ以外のほぼ全てで強引にマイウェイ!
そして他の参戦者達にもダサ服判定を受けた者はいなかった、この戦いでこそバーサクモードを拝みたかった気もしますが――え、アルセド―ドー君は良いの? 許されてるの?
「彼は着ぐるみだからな。着ぐるみと衣服はデザインのコンセプトとして根本から異なるものだ。服は機能性と美しさは勿論、着る者を引き立たせつつも自らも主張する事を厭わない大胆さが必要だが、着ぐるみは――」
その話、長くなります?
って言うかもうスタートの号砲鳴ってますよ?
「何!? だがまだ慌てる時間じゃない」
810->4U、自慢の空間把握能力で瞬時にステージ構成を把握、複数の旗を同時にロックオン、最短距離で一気に取りに行く!
一方こちらは号砲と共に飛び出したSTΛR+、身軽にジャンプを繰り返しながら丘の上へと駆け上がります!
「わあ、広ーい!」
お花畑に点在する旗を次々に取るが、行く手は結構な段差のある崖、しかしここを登る以外に道はない!
「大丈夫、こんなの軽い軽い!」
僅かな足がかりを頼りに軽々と崖を登り、最後は華麗に空中二段ジャンプからのくるりと一回転で見事に着地、しかし!
「えっ、あわわわわっ!?」
崖の向こうは急斜面、限界を超える猛スピードで斜面を駆け下りる――が足がもつれた!
「転がった方が速いね!」
そのまま二重ループのコースに乗って、終点から大空にテイクオフ、軽々と山を超えて行く!
画面切り替わってこちらはSE7EN、少々出遅れた感はあるが余裕の表情だ!
「だって、アタシにはコレがある!」
ジャイアントスイングでブン投げた巨大ブーメランを追いかけて飛び乗る、これはブーメランサーフィンとでも言うべきか!
「憧れの先輩たちだからこそ、アタシも本気で行くぞっ! 絶対一番になるんだ!! 負けないぞ~!!」
しかしこれは目が回る! そして投げた地点に戻って来る!
それはそう、ブーメランだもの。
「いっけない、回転オフにするの忘れてた!」
何やら弄って再び投げる、今度は回らず曲がらず真っ直ぐ飛んで、810->4Uの背中を視界に捉えた!
SE7ENの追随に気付いた810->4U、敢えて競わず目前の旗をSE7ENに譲る!
「旗の一本くらい譲ってやるよ、それ曲がれないんだろ?」
「えっ、あっ、確かに――」
慣性のみで飛ぶブーメラン、手を伸ばしたSE7ENは辛うじて旗を掴むも、そのまま真っ直ぐどこへ行く!
その間に軌道を再計算した810->4Uは、次々に旗を取りながらコースを駆け抜ける!
しかし行く手に待ち受けるのは巨大な滝、超えられるか810->4U!
「問題ない」
滝の直前で垂直ジャンプ、からの太刀鋏を真下に向けてジャキン!
なんと空気を切った反動で810->4Uの身体が上昇、そんなのアリか!
そして見事に滝を越え、次のステージへ!
一方SE7ENは急に止まれない、一直線に滝に突っ込みそのまま滝壺へドボン!
しかしそこには――
「うわあ、旗がいっぱい! 取り放題だー!」
隠された旗を一気に鷲掴み、だが流れが速い、抵抗虚しく激流に押し流される!
SE7ENの無事を祈りつつ、カメラは再びスタート地点に戻ります。
出遅れたアズルクロウも怒涛の追い上げで先頭集団に追い付き、流石にもう誰も残っていない……と思いきや!
「∑ふぎゃっ」
さひ子! さひ子どうした!
「……あいたたた……」
気合いが入り過ぎたのか、スタート直後のコーナーで食パン咥えた女子高生と激突――ではなく、曲がりきれずに壁と熱愛!
さひ子、早くも残機2! なお残機ゼロで問答無用のゲームオーバー!
「厳しっ!」
初代リスペクトですので。その代わり旗を一本でも持っていればミスになりませんよ。
「っしゃ、こっから巻き返し――って、めっちゃ差をつけられてる!?」
ブースト点火、全速前進全力全壊!
「なに壊してんじゃい! フンギャロ!!」
謎の気合いを入れて飛び出すさひ子、脇目も振らずショートカットの裏コースへ!
3連続ループで勢いを付け、飛び出した!
「うぉりゃぁぁぁぁぁ!! 逆転だぁぁぁぁ!!!」
気流に乗れば背中の機械翼でコントロールは自由自在、空中の旗を残らず取りながら進む!
着地を決めたそこは工場の屋根、他の参戦者はまだ山越えの途中か!
「っしゃ暫定トップキタコレ!」
しかし油断大敵、足元から高温の蒸気が噴出して旗が飛び散る!
慌てて回収する間に同じく山越えのニルスが着弾、続いて美亜とポラリスが、更にSTΛR+が飛んで来る!
だが重量オーバーだったか、屋根が抜けて落とされた5人はピンボールのように弾かれ転がりどこへ行く!?
最初にこの窮地を抜けたのは美亜だ、反重力キックで宙を蹴り鉄骨の間に置かれた旗を次々取って行く!
ポラリスも空中制動が可能だがここは狭い、ボードが引っかかって思うように動けない!
ニルスは蒼天霹靂の合体を解除、鉄骨の隙間を縫ってトラップを避けつつ慎重に下へ降りて行く!
さひ子は背中の翼で円形の檻を作り、その中で身体を丸めて完全ガード、文字通り手も足も出ないがここはこうしてギミックに身を委ねるのが正解か!
転がる楽しさに目覚めたSTΛR+もボールになりきり、弾かれるままに突き進む!
一方順路に従い素直に進んだアズルクロウ、スティーリア、810->4Uの3人はトンネルという名のダンジョンに挑む!
通路の分岐は運命の分かれ道、ブースターを駆使したアズルクロウは瞬時も迷うことなく一本道の如く突っ走る!
「アタシの鼻が呼んでんだよ、こっちにおもしれーコトがあるってな!」
野生の勘が引き当てたのは、なんとこのエリアの隠しボス!
『ふぇー!』
悪の科学者ドクターパッカマンの登場です!
卵のように丸い体をもふもこの毛皮に包み、二足歩行するこの謎生物、いや生物なのか?
「ここは通さないってか? ハッ上等だよ。アタシも単純な方が好きなクチなんでな!」
両手の巨大なレーザー爪を振りかざし、アズルクロウが突進!
『キエェェェ! キュェッキュェッキュェッ!!』
これは威嚇の鳴き声、直後パッカマンの口からネバネバの液体が吐き出される!
「うわ、きったね! てか臭っ!」
余裕で避けたが床に落ちた吐瀉物から猛烈な臭気が!
これ以上吐かれては堪らんと、アズルクロウはパッカマンの首を一刀両断!
爆発四散するパッカマンはロボットだった、中から飛び出すビッグ10フラッグ!
それを拾って出口に走るアズルクロウ!
一方スティーリアと810->4Uは抜きつ抜かれつ、途中の旗を奪い奪われトンネルを駆け抜け、勝負の舞台は工場へ!
上下左右から迫るピストン、噴き出す蒸気と渦巻く火炎、上から落ちて来る巨大歯車!
ここはタイミングを測って慎重に行きたいところ!
「違うな、正解は――」
おや、スティーリアの様子が……
「トップスピードで駆け抜ける事だ」
両脚に限界までパワーチャージ、一気に加速! 全てのトラップをギリギリで駆け抜けた!
810->4Uもそれに続くかと思いきや、太刀鋏アクションを駆使しつつコース外を最短距離で駆け抜ける、しかも隠し旗までしっかり回収!
さあ工場から一番に吐き出されたのはピンボールさひ子、やや遅れてSTΛR+!
旗をスルーしトップ通過に全てを賭けた二人がハイウェイに転がり出る、しかしその前方に巨大な水柱、これはクジラの潮吹きだ!
その上に乗っているのはSE7ENだ、滝壺で激流に流されたSE7ENは海でクジラに飲み込まれ、なんやかんやあって今ここ!
「とーう!」
水柱のてっぺんから飛び降りたSE7EN、その途中で空中の旗を取りながら着地を決める!
突如トップを奪われたさひ子とSTΛR+はボール形態を解除して走る、その後ろにやや遅れて第二集団が飛び出して来た!
スティーリア、810->4U、ニルス、美亜、アズルクロウ、ポラリス、集団からいち早く抜けるのは誰か、おっとここで……ハイウェイが崩れ始めた!
集団の背後から崩壊が迫る、巻き込まれたら一発ゲームオーバーだ!
後ろからぐんぐん追い上げて来たのはポラリスだ、道路上で暴走族に勝てる者はいない、体当たりで強引に道を開いて行く!
「うわ、危なっ!」
背後からの突進を跳躍でかわしたSE7EN、ポラリスの背を足場に更に跳躍、ハイウェイの上を走る通信ケーブルにブーメランを引っ掛けた!
「ちょ、アタシを踏み台に!?」
「ごめんね!」
笑顔で謝りブーメランの上に乗るSE7EN、火花を散らしながらブーメランがケーブルを滑り、軌道上には無数の旗!
だが美味しい裏ルートには罠がある!
「爆弾!?」
慌てて飛び降り、ギリギリ回避!
「トップはあたしだ!」
ショートカットを狙うさひ子がコーナーから飛び出した!
見事対岸に着地を決めて、再び一位に躍り出る!
「よぉーし、わたしも!」
STΛR+は思い切り助走を付けて、トップスピードで路面を蹴った!
しかしその瞬間に足元が崩れる! バランスを崩したSTΛR+は海中に落下――と思いきや!
ここでニルスです! ぼくらのヒーローが助けに来たぞ!
「ronddraaien tornado!」
蒼天霹靂をプロペラの如く回し、自ら起こした風に乗って舞い上がる!
STΛR+を片腕で抱え上げ、そのままヘリコプターのように対岸にソフトランディング!
物理的にどうなんだと仰る向きもあるでしょうが、これはエンタメ! 楽しく魅せるのが正義!
「ありがとうニルス!」
「家族だから……じゃない、ヒーローだからね!」
何故か言い間違えたニルス、何事もなかったように風の如く去る!
それを見送るSTΛR+、いや見送っている場合じゃない!
「走らなきゃ!」
ショートカットで距離は稼いだが、後続は猛スピードで追い上げて来る!
美亜とポラリスは崩れる足場をものともしない、アズルクロウは殆ど四足走行に近い姿勢で走る、もしやその爪が足場を壊しているのでは!?
「んなワケねぇだろ!」
スティーリアはひたすらゴールだけを見据えてフルスロットル、旗取りはもはや念頭にないか!?
「旗を狙って遠回りするなら、俺はそれを捨てて最速ゴールを目指す」
なんというクール&ストイック、氷柱の名は伊達じゃない!
そしていつの間にか姿が見えなくなっていた810->4U、なんと既に次のエリアに到達していた!
高層ビル群こそ、彼の空間把握能力が最も活かされるステージです!
走る自動車やモノレール、飛び回るドローンなどの障害物を巧みに避け、或いは鋏で両断しつつ旗を取る!
それを追うポラリス、行く手を塞ぐビルに突っ込んだ!
「アタシの辞書に回避の文字はない!」
ガラスを割ってフロアをぶち抜き壁を粉砕し、反対側に飛び出す、しかしそこに突然の怪獣が!
「え?」
べちん! ポラリスは羽虫の如く叩かれ落下、飛び散る旗!
急げ、回収すればミスにはならない!
だがここで突っ込んで来たスティーリアが旗を横取り――いや違う!
「ほらよ、ちゃんと持っとけ」
拾い集めてポラリスに手渡した、なんという紳士!
しかし良い話では終わらない、巨大ブーメランが二人を蹴散らし、落ちた旗をSE7ENが掻っ攫って行く!
「悪く思わないでね、これもルールのうちだから!」
一本ずつ残しておいたのは、ミスにならないようにとの優しさか!
「上等だ、受けて立つ!」
旗を取り返そうとポラリスはビームソードを構えるが、その頭上に瓦礫が降りかかる!
怪獣の尾の一振りで脆くも崩れ去る高層ビル、なおSE7ENは怪獣とは戦いません。戦いそうな名前だし、ブーメランも頭から飛ばしそうですが、戦いません。そもそもこの怪獣、無敵ですし。
「だったらビルが崩れる前に回収しなきゃ!」
STΛR+は今度こそ思い切り助走を付けてビルの壁面を駆け上がる!
低いビルから隣の少し高いビルへ、次から次に飛び移り、最後に――
「えーい!」
それはアルセド―ドー君が取り損ねた、金色に輝くボーナスフラッグ。
「これ一本で50本分だよ!」
パルクールスタイルではアズルクロウも負けていない、高速立体機動で旗を取りつつゴールに向かう!
最終ステージの遊園地はショートカットを許さない一本道、まずはジェットコースターのコースを走り抜け、最高地点で観覧車に飛び移る!
「ちょ、これ回るんだけど!?」
観覧車の上を懸命に走るさひ子、回るのは当たり前だが、それはハムスターの回し車の如く!
走っても走っても前に進めない理不尽、さひ子の翼は姿勢制御用であって、自ら飛び立つ機能は備えていない!
「お先に失礼!」
宙を蹴って跳ぶ美亜は必死で走るライバルの頭を飛び越えて、観覧車から海賊船に飛び移る――かと思えば、なんと反重力発生装置を切って反対向きに走り出す!
正反対の向きに働く力が釣り合って、観覧車の回転が止まった!
「勝負はフェアじゃないとね」
「そういう事なら、乗った!」
二人が回転を止めている間に、次々と走り抜けて行くライバル達!
「でも勝ちを譲ったわけじゃないから!」
猛然とダッシュする美亜をさひ子が追う!
そして遂に、ゴールは目前!
しかしやはりと言うか、そこに立ち塞がるシン・ドクターパッカマン!
これを倒さねばゴールに辿り着けない、しかしここで810->4Uがバーサクモードに!
「なんっだそのクッソダセェ服!?」
真っ赤な合皮に金モールの上着は毛圧に耐えかねて今にもはち切れんばかり、黒い長ズボンも横に伸びすぎて紐パン状態だ!
「まずはその無駄毛を処理してやる!」
太刀鋏を構える810->4U、しかし8つの頭から吐き出される猛烈に臭い何か!
「大丈夫、わたしに任せて!」
STΛR+のJoyeux confeitoが星屑のように降り注ぐと、なんと悪臭がお花の香りに!
810->4Uに毛を丸刈りにされたパッカマンはセンイ喪失、最後はアズルクロウがトドメの爪攻撃で8つの首をぶった切る!
しかし敵はまだ最後の変身を残していた!
そこに聞こえる謎の雄叫び!
「どいてぇえええぇぇっ!!」
帰って来たアルセド―ドー君の着弾により、パッカマンは爆発四散!
反動で吹っ飛んだアルセド―ドー君、そこはゴールラインの向こう側だ!
「やっぱりボクが最速だ!」
しかし吹っ飛んだ衝撃で1ミスのアルセド―ドー君、チェックポイントからのリスタート!
その間に次々とゴールに飛び込む選手達!
一着はスティーリア、しかしそこに旗の本数によるタイムを引くと――
810->4Uだ、地道な旗取りが効いたか、810->4Uがトップに躍り出た!
なお本人は未だバーサクモードにつき、コメントは取れませんでした。
悔いはないと笑みを浮かべるスティーリア、好敵手に握手を求めるニルス。
さひ子もSE7ENもポラリスも、悔しさを滲ませながらも良い笑顔です。
「いつものことだけど……終わるとすごいことなってるなー、髪」
「アタシのやり方、まだまだ通用するってコトだよな」
爆発した髪を弄りつつ美亜が楽しげに笑う、惜しくも優勝を逃したアズルクロウもふわっと満足そうだ!
アルセド―ドー君は真っ白に燃え尽きた感じで座り込んでいますが、まあ大丈夫でしょう、多分。
最後にSTΛR+が――
「みんなでPiece to Peace!」
それでは皆様、またどこかのバトルでお会いしましょう、お元気で!
サヨナラ、サヨナラ、サy(ぶちっ