紫電の麒麟、白刃の天使
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)ヴァイオレット・コンピューティング制作 螺子巻ゼンマイ納品 2023年04月24日 15時34分24秒
それは、多くのデュープを集め競うトーナメントの準々決勝。
何のギミックも無い広大な戦場に、二人のデュープがエントリーした。
「さて……どう出るだろうな」
一方は、麒麟型の頭部を持つ雄大なるデュープ、pA-BeLL。
ヴァイオレットに所属する、遠距離型の安定株。
「目標を確認……"任務"を遂行します」
一方は、余計な感情と表情を持たない人形のようなデュープ、Lily.Ang。
シュヴァーンによって生み出された、調査・分析を主とする近接型の兵士。
巨漢と少女。遠距離と近距離。
相反する二人の戦いは、Lily.Angの小さな足音と共に幕を開けた。
(まずは距離を詰める、だろうな)
Lily.Angの武器は大型の双剣『白鳥の騎士』。
射撃の手段は無く、故に近付かねば勝機も無い。
だがpA-BeLLは感じ取っていた。Lily.Angの脚に、気負いが無い。
(余力を残し動きを見る、か? ならば……)
麒麟の角から相手の思考を探ろうと狙うが、上手く行かない。
防壁が強力なのもあるが、仮に侵入できても読み取れる情報は少なかったろう。
それだけLily.Angの脳波は安定していて、静かである。余計な感情を削減されているからだ。
(ふむ。それならこちらから、参る)
電波を発信しながら、pA-BeLLはビームキャノンにエネルギーをチャージしていた。
伸長したバレルは常人であらば持て余すサイズだが、彼はそれを片手で易々と操る。
充填は十全。Lily.Angの爪先が地面を蹴り、浮いた刹那に引き金を引く。
ぎゅおんッ! 放たれた紫電はLily.Angの半身に直撃……したかに思われたが。
「易々とは通らぬか」
Lily.Angの体は、盾によって守られていた。
pA-BeLLの射撃を読み、白鳥の騎士を結合、変形させていたのだ。
『type.G』。三種ある双剣の形態の一つは、大半の攻撃を無に帰する。
そうして、キャノンがチャージを消費した事で、自然と攻守が逆転した。
「次はこっちです、対応してくださいね」
再充填までの数秒間、彼は火力を発揮できない。
盾を解いて二、三歩。迫りながら彼女は剣の柄を結合させる。
「ぬぅッ」
ひゅんッ。刃がpA-BeLLの首を掠めた。
咄嗟に蹴りで対応しようとして、悪寒を覚え止める。その時既に、白鳥の騎士は更なる変形を見せていた。
『type.L』。柄を結合させ、上下に刃を光らす双頭槍。
もし脚を振っていれば、下の刃で受けられ、勝負は決してしまっていただろう。
pA-BeLLは急ぎ後退するが、流れる様に振るわれる刃は、彼の厚い胸板を撫ぜる。
むぅ、とpA-BeLLは唸った。この距離での戦闘は不味い。
横薙ぎをライフルで受け、じりりと退く。端まで詰められれば、このまま削り切られるだろう。
そしてそれ以上に厄介なのが……
(近接の戦闘手段、確認出来ませんね)
Lily.Angの思考だ。
積極的に攻めてはいるが、ここで勝負を付けようとは考えていない。
判断力と、行動を切り替えるだけの余裕。それを常に維持する彼女に、明白な隙など皆無だ。
(だが、そこが狙い目よ)
じりっ。フィールドに異変を感じ、Lily.Angの攻め手が鈍る。
気づけば戦場のそこかしこに、激しい電流が走っているではないか。
「これは……」
pA-BeLLの妨害だ。フィールドの全体に罠を設置した?
彼女が踏み込みを躊躇うと、pA-BeLLはすかさず距離を取る。
数発、低チャージのビームで牽制する彼に、Lily.Angは盾にて防御の姿勢を構えた。
「守ってばかりでは勝負はつかぬぞ、百合の天使よ」
フルでも徹せぬ盾だ、効くとは考えていない。
けれど牽制で相手に負荷を掛けて、行動の選択肢を奪う事は出来る。
pA-BeLLの挑発に、Lily.Angは思案する。相手がこちらを動かしたい事は判断出来た。
ならば電流が消えるまで、或いは向こうが痺れを切らすまで、こちらが耐えるという手もある。
(……ダメですね。それでは勝率が低すぎます)
問題は、それが向こうに伝わった折だ。
フルチャージのビームを『type.G』は受けきれる。
けれど過充電された一撃なら? 或いはフルチャージを何度も受ける事になったら?
(電流自体はブラフでしょう)
床の罠はダメージソースではない。
踏ませれば勝てるなら、牽制の必要が無いからだ。
別の罠。例えば感覚への妨害が主であるならば。
ダンッ。
判断を終えたLily.Angは、電流を気にせず駆け出した。
途端、戦場の映像が乱れる――やはり感覚妨害――ならば位置を記憶し、自力で補正を掛けて。
ビームを弾き、二m。届く。盾を槍に移行して、貫く……が。
「……なぜです」
「守ってばかりでは勝負はつかぬ。先刻告げた通りだ」
刃が通ったのは、pA-BeLLの左腕。
ノイズに紛れ一歩踏み込み、突き刺す場所を絞ったのだ。
引き抜く前に、Lily.Angの胴に銃口が向く。充填は、十全。
「良い学習になりました」
「こちらこそ、感謝する」
紫電が天使を貫いた。
トーナメント準々決勝。pA-BeLLは勝利を掴み、次へと進んだ。
何のギミックも無い広大な戦場に、二人のデュープがエントリーした。
「さて……どう出るだろうな」
一方は、麒麟型の頭部を持つ雄大なるデュープ、pA-BeLL。
ヴァイオレットに所属する、遠距離型の安定株。
「目標を確認……"任務"を遂行します」
一方は、余計な感情と表情を持たない人形のようなデュープ、Lily.Ang。
シュヴァーンによって生み出された、調査・分析を主とする近接型の兵士。
巨漢と少女。遠距離と近距離。
相反する二人の戦いは、Lily.Angの小さな足音と共に幕を開けた。
(まずは距離を詰める、だろうな)
Lily.Angの武器は大型の双剣『白鳥の騎士』。
射撃の手段は無く、故に近付かねば勝機も無い。
だがpA-BeLLは感じ取っていた。Lily.Angの脚に、気負いが無い。
(余力を残し動きを見る、か? ならば……)
麒麟の角から相手の思考を探ろうと狙うが、上手く行かない。
防壁が強力なのもあるが、仮に侵入できても読み取れる情報は少なかったろう。
それだけLily.Angの脳波は安定していて、静かである。余計な感情を削減されているからだ。
(ふむ。それならこちらから、参る)
電波を発信しながら、pA-BeLLはビームキャノンにエネルギーをチャージしていた。
伸長したバレルは常人であらば持て余すサイズだが、彼はそれを片手で易々と操る。
充填は十全。Lily.Angの爪先が地面を蹴り、浮いた刹那に引き金を引く。
ぎゅおんッ! 放たれた紫電はLily.Angの半身に直撃……したかに思われたが。
「易々とは通らぬか」
Lily.Angの体は、盾によって守られていた。
pA-BeLLの射撃を読み、白鳥の騎士を結合、変形させていたのだ。
『type.G』。三種ある双剣の形態の一つは、大半の攻撃を無に帰する。
そうして、キャノンがチャージを消費した事で、自然と攻守が逆転した。
「次はこっちです、対応してくださいね」
再充填までの数秒間、彼は火力を発揮できない。
盾を解いて二、三歩。迫りながら彼女は剣の柄を結合させる。
「ぬぅッ」
ひゅんッ。刃がpA-BeLLの首を掠めた。
咄嗟に蹴りで対応しようとして、悪寒を覚え止める。その時既に、白鳥の騎士は更なる変形を見せていた。
『type.L』。柄を結合させ、上下に刃を光らす双頭槍。
もし脚を振っていれば、下の刃で受けられ、勝負は決してしまっていただろう。
pA-BeLLは急ぎ後退するが、流れる様に振るわれる刃は、彼の厚い胸板を撫ぜる。
むぅ、とpA-BeLLは唸った。この距離での戦闘は不味い。
横薙ぎをライフルで受け、じりりと退く。端まで詰められれば、このまま削り切られるだろう。
そしてそれ以上に厄介なのが……
(近接の戦闘手段、確認出来ませんね)
Lily.Angの思考だ。
積極的に攻めてはいるが、ここで勝負を付けようとは考えていない。
判断力と、行動を切り替えるだけの余裕。それを常に維持する彼女に、明白な隙など皆無だ。
(だが、そこが狙い目よ)
じりっ。フィールドに異変を感じ、Lily.Angの攻め手が鈍る。
気づけば戦場のそこかしこに、激しい電流が走っているではないか。
「これは……」
pA-BeLLの妨害だ。フィールドの全体に罠を設置した?
彼女が踏み込みを躊躇うと、pA-BeLLはすかさず距離を取る。
数発、低チャージのビームで牽制する彼に、Lily.Angは盾にて防御の姿勢を構えた。
「守ってばかりでは勝負はつかぬぞ、百合の天使よ」
フルでも徹せぬ盾だ、効くとは考えていない。
けれど牽制で相手に負荷を掛けて、行動の選択肢を奪う事は出来る。
pA-BeLLの挑発に、Lily.Angは思案する。相手がこちらを動かしたい事は判断出来た。
ならば電流が消えるまで、或いは向こうが痺れを切らすまで、こちらが耐えるという手もある。
(……ダメですね。それでは勝率が低すぎます)
問題は、それが向こうに伝わった折だ。
フルチャージのビームを『type.G』は受けきれる。
けれど過充電された一撃なら? 或いはフルチャージを何度も受ける事になったら?
(電流自体はブラフでしょう)
床の罠はダメージソースではない。
踏ませれば勝てるなら、牽制の必要が無いからだ。
別の罠。例えば感覚への妨害が主であるならば。
ダンッ。
判断を終えたLily.Angは、電流を気にせず駆け出した。
途端、戦場の映像が乱れる――やはり感覚妨害――ならば位置を記憶し、自力で補正を掛けて。
ビームを弾き、二m。届く。盾を槍に移行して、貫く……が。
「……なぜです」
「守ってばかりでは勝負はつかぬ。先刻告げた通りだ」
刃が通ったのは、pA-BeLLの左腕。
ノイズに紛れ一歩踏み込み、突き刺す場所を絞ったのだ。
引き抜く前に、Lily.Angの胴に銃口が向く。充填は、十全。
「良い学習になりました」
「こちらこそ、感謝する」
紫電が天使を貫いた。
トーナメント準々決勝。pA-BeLLは勝利を掴み、次へと進んだ。