破廉恥狂騒曲
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)翡翠電脳公社制作 蔭沢 菫納品 2023年04月28日 13時20分16秒
F-Quartz――クオーツ(レピド・クロサイト)は部屋に増えている『道具』に顔をしかめた。陽の下では口にするのも困るような道具、支配と隷属のための道具、ありていに言えばアブノーマルな愛欲を満たすための物品が山と届けられていたためだ。
クオーツは軍人風の防止を投げ捨て、上着も脱いで床にたたきつけた。武器である長鞭も勢い任せで壁にぶつけた。置き場がない故に壁にひっかけられていた口輪が落ちたが、どうでもいい。
(呪われろ、企業、呪われろ、企画者、呪われろ、ファンの勘違い!)
呪詛を吐きながら今日のバトルをホロモニターで見返す。中にいるのはサディスティックな己。
――這いずり回れ、床をなめて子犬のように腹を見せな!
嗜虐的なクオーツの命令口調。すでに絡みつく長鞭で肉体のコントロールを喪っていた相手はそのまま足を引っ張られ床に引きずられたおされる。仰向けになった相手に馬乗りになり、首根っこを掴んで顔を近づける。
――不細工め。
二度、三度、顔めがけて鞭が飛ぶ。懇願するような声の後、クオーツの勝利を告げる審判の声が響く。クオーツは対戦者を足で蹴飛ばし、嬉しくもなんともない、というそぶりで鞭を鳴らした。
そして、現実のクオーツは頭を抱える。嗜虐の塊で派手なパフォーマンスの己は企業によってプロデュースされたもの。煽情的な衣装も、長鞭も、全部、全部。
そしてサディスティックでエロティックなクオーツは『そういうもの』を好むだろうと勘違いしたファンによって、性的嫌がらせにもほどがある破廉恥な品物が次々と送られてくるという始末。
(捨ててしまいたい……)
破廉恥の山を見て長々とため息をつく。これはいったいどうしたものか。
「すまない、入るよ――」
実際の所、Walker――ウォーカー(ペデラ・ウォーカー)は控室を間違えたのであった。シュヴァーンの同僚、先ほどの対戦で手ひどくやられた不憫な女の様子を見に来たはずであった。だが、目の前にいた赤毛はサディストのF-Quartz。周囲にあるのは革やゴムでできた破廉恥の山。いらだっていたのか、一部の破廉恥山脈が崩れ、床に散らばっている。
気やすくノックもせずに入ったのが運の尽きであった、と即座にウォーカーは後悔する。
「すみませんでした!!!!」
思わず敬語になってドアを閉め直そうとする。振り返った赤毛のデュープと目が合い、逃げられない、とひきつった顔になるウォーカー。
「あの、ウォーカー、だろう?」
意外にも困惑した声が無慈悲の化身から漏れ出たのを聞いて、ウォーカーは目を瞬く。
「これには訳があって……アンタにだけは……」
誤解されたくないから、どうか弁解させてくれ、と呟く相手は、帰り道を喪った子どものようだった。
「つまり、この破廉恥山脈は、クオーツの趣味では全然ないんだな」
クオーツの出した青い発泡ワインを飲みながら、ウォーカーは後ろの山を見る。クオーツは首を引っ込めてから、小さく肯定した。
「オレは派手な生き方をさせられているけど、本当はアンタみたいな玄人好みの、ありのままのデュープになりたい……お願いだ、信じて欲しい。ファンからのプレゼントを断れないオレの部分は軽蔑してもいいから……!!」
懇願するクオーツの様はあまりにも純真で、どこか愛らしさもあった。赤毛よりもひどく赤面した様子は、儚く……生真面目の権化であった。
(ううん、男は守備範囲外のはずなんだが。可愛い……いや可愛いってなんだ? バトルじゃ嗜虐の化身で……ああでも普通の真面目な青年じゃないか……)
内心で転げまわるウォーカーのしかめ面を拒絶と受け取ったクオーツが、
「ごめん、やはり変だったよな。オレはアンタに憧れていて、だから……」
そう言った瞬間、ウォーカーは衝動的に彼の手を握っていた。
「友人になろう」
世話好きの気質があることは自覚していた。周囲からの評価は『いいひと』オンリー。すこし踏み込んでも気さくで面倒見のいい奴。だから世話を焼くのは何もおかしくない。
相手は他社のデュープであって、何ならばシュヴァーンの同僚をめちゃくちゃにした相手なのだが……。
それでも、ウォーカーは彼を放ってはおけなかった。
同情だ、と自分に言い聞かせる。
「ゆう、じん?」
そんな言葉を口にするクオーツの様子が妙に愛らしく見えても、それは保護欲から見えるものだ。
「嬉しい。オレは、こんなキャラで売ってるから中々友人ができなくて」
保護欲だろうか。相手の長い睫毛が美しい――おかしい、男は守備範囲外なんだが。
だから。これはやっぱり同情なのだとウォーカーは思うことにした。
子どものように喜ぶクオーツ。再び相手の手を握るウォーカー。
相手のギャップにくらくらして、すでに恋に落ちているなどとは気付かないウォーカーであった。
クオーツは軍人風の防止を投げ捨て、上着も脱いで床にたたきつけた。武器である長鞭も勢い任せで壁にぶつけた。置き場がない故に壁にひっかけられていた口輪が落ちたが、どうでもいい。
(呪われろ、企業、呪われろ、企画者、呪われろ、ファンの勘違い!)
呪詛を吐きながら今日のバトルをホロモニターで見返す。中にいるのはサディスティックな己。
――這いずり回れ、床をなめて子犬のように腹を見せな!
嗜虐的なクオーツの命令口調。すでに絡みつく長鞭で肉体のコントロールを喪っていた相手はそのまま足を引っ張られ床に引きずられたおされる。仰向けになった相手に馬乗りになり、首根っこを掴んで顔を近づける。
――不細工め。
二度、三度、顔めがけて鞭が飛ぶ。懇願するような声の後、クオーツの勝利を告げる審判の声が響く。クオーツは対戦者を足で蹴飛ばし、嬉しくもなんともない、というそぶりで鞭を鳴らした。
そして、現実のクオーツは頭を抱える。嗜虐の塊で派手なパフォーマンスの己は企業によってプロデュースされたもの。煽情的な衣装も、長鞭も、全部、全部。
そしてサディスティックでエロティックなクオーツは『そういうもの』を好むだろうと勘違いしたファンによって、性的嫌がらせにもほどがある破廉恥な品物が次々と送られてくるという始末。
(捨ててしまいたい……)
破廉恥の山を見て長々とため息をつく。これはいったいどうしたものか。
「すまない、入るよ――」
実際の所、Walker――ウォーカー(ペデラ・ウォーカー)は控室を間違えたのであった。シュヴァーンの同僚、先ほどの対戦で手ひどくやられた不憫な女の様子を見に来たはずであった。だが、目の前にいた赤毛はサディストのF-Quartz。周囲にあるのは革やゴムでできた破廉恥の山。いらだっていたのか、一部の破廉恥山脈が崩れ、床に散らばっている。
気やすくノックもせずに入ったのが運の尽きであった、と即座にウォーカーは後悔する。
「すみませんでした!!!!」
思わず敬語になってドアを閉め直そうとする。振り返った赤毛のデュープと目が合い、逃げられない、とひきつった顔になるウォーカー。
「あの、ウォーカー、だろう?」
意外にも困惑した声が無慈悲の化身から漏れ出たのを聞いて、ウォーカーは目を瞬く。
「これには訳があって……アンタにだけは……」
誤解されたくないから、どうか弁解させてくれ、と呟く相手は、帰り道を喪った子どものようだった。
「つまり、この破廉恥山脈は、クオーツの趣味では全然ないんだな」
クオーツの出した青い発泡ワインを飲みながら、ウォーカーは後ろの山を見る。クオーツは首を引っ込めてから、小さく肯定した。
「オレは派手な生き方をさせられているけど、本当はアンタみたいな玄人好みの、ありのままのデュープになりたい……お願いだ、信じて欲しい。ファンからのプレゼントを断れないオレの部分は軽蔑してもいいから……!!」
懇願するクオーツの様はあまりにも純真で、どこか愛らしさもあった。赤毛よりもひどく赤面した様子は、儚く……生真面目の権化であった。
(ううん、男は守備範囲外のはずなんだが。可愛い……いや可愛いってなんだ? バトルじゃ嗜虐の化身で……ああでも普通の真面目な青年じゃないか……)
内心で転げまわるウォーカーのしかめ面を拒絶と受け取ったクオーツが、
「ごめん、やはり変だったよな。オレはアンタに憧れていて、だから……」
そう言った瞬間、ウォーカーは衝動的に彼の手を握っていた。
「友人になろう」
世話好きの気質があることは自覚していた。周囲からの評価は『いいひと』オンリー。すこし踏み込んでも気さくで面倒見のいい奴。だから世話を焼くのは何もおかしくない。
相手は他社のデュープであって、何ならばシュヴァーンの同僚をめちゃくちゃにした相手なのだが……。
それでも、ウォーカーは彼を放ってはおけなかった。
同情だ、と自分に言い聞かせる。
「ゆう、じん?」
そんな言葉を口にするクオーツの様子が妙に愛らしく見えても、それは保護欲から見えるものだ。
「嬉しい。オレは、こんなキャラで売ってるから中々友人ができなくて」
保護欲だろうか。相手の長い睫毛が美しい――おかしい、男は守備範囲外なんだが。
だから。これはやっぱり同情なのだとウォーカーは思うことにした。
子どものように喜ぶクオーツ。再び相手の手を握るウォーカー。
相手のギャップにくらくらして、すでに恋に落ちているなどとは気付かないウォーカーであった。