最強への一歩
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)翡翠電脳公社制作 夜野はずみ納品 2023年05月03日 21時48分29秒
最強、と言う言葉は重い。特に企業間の代理戦争たるデュープバトルでは最強と言う言葉はあってはならない。一部とは言えども一企業の経済の独占を意味するためだ。
それでも、かつて。翡翠電脳公社には最強と呼び称される2人組が存在した。2対2の複数戦において、だが。
それは僅かな乱れだった。7Rが両手に持った釵で1人で2人と打ちあう間に鵙-玖が暗器を利用して7Rの敵を崩す。かつて最強と言われた二人の後継モデルである彼らの、理想のパターンの1つだ。
(早いし、そもそも――)
鵙は心中で舌打ちした。2人がそれを行う際には7Rが後尾武装のギミックを僅かに開閉する合図を必要とした。戦闘中に相手からすれば視認し辛く、鵙は暗器を使用するから後方にいる事が多いからこその合図。それが無かった。
だからこそ、7Rが拮抗を崩され、鵙を巻き込んで倒されて『最強』は敗北した。
●
翡翠電脳公社の強化人間にはファンサービスを行う事を推奨される時もある。薄利多売を旨とする企業方針だからこそ、購買層の取り込みを
「応援ありがとうございました! 次こそ勝ちますから、応援よろしくお願いしますね。……ほら、7Rも挨拶して」
「わかってるよもず姉。応援ありがとー、次は勝って見せるからね」
「ね。情けないお姉ちゃんでごめんね、次は勝とうね」
敗北の後のファンの交流会は、ともすれば雰囲気が悪くなるものだが、2人は仲睦まじい姉妹の様子を見せ、落ち込んではいるものの前向きな雰囲気をファンに感じさせることで、期待感を醸し出す。
仲のいい『姉妹』だった。2人は手を振り、握手をし、愛想を振りまいて。試合の結果にも関わらず驚くほど明るくファン交流会を終えた。
●
「あぁ、もう、くやしーっ」
控室に入るや否や愛用のクッションをボコボコにしたあと悔しさを滲ませる7R。
「もずくもなんであわせてくれなかったの? しっかりあわせてよ」
子供っぽくぶうたれる7Rに鵙は息を吐いた。ため息、と言うには少しばかり鋭い、責めるような吐息。
「合図」
「う」
7Rは静かに呻く。わかってはいるが、負けたばかりで触れては欲しくなかった。しかし鵙もまた、負けたばかりであるからこそ、取り繕うことができなかった。
「何度もコンビでやってるんだからちゃんと覚えてよ! 合図と連携!」
「はぁーっ!!? もずくもしっかりしてよ! あのときならきめきれたでしょ!」
「なんですって!? あんたがあそこで飛び出してきたから行動が被ったんでしょうが! その尻尾は飾りか七輪なの!?」
「しちりんっていった! もずくのあんぽんたん! わんぱたーん!」
ぎゃあぎゃあと子供っぽく叫ぶ二人の少女。言葉尻を捉えては言い返し、反省にもならない言い争いに終止する。
「能天気!」
「むくち!」
「間抜け!」
「ゆびふぇち!」
「そもそも遊ぶ時間が長い!」
「ゆびのせいたいかたろぐをみるめがこわい!」
少しの間睨み合ってから。全く同時に二人して顔を背けて、解散した。
「お疲れ様でした!」「おつかれさまでした!!」
なんだかんだ、息はあっていた。
●
鵙は自室で、今度こそゆっくりを息を吐いた。
(流石に言い過ぎたわ……)
7Rも悪いところはあるが、2人はコンビで戦っている。肝心な所で勝ちきれないのは自分に責任がある、と鵙は考える。
(姉である、わたしの責任だわ)
全体の動きは決して悪いものではなかった。想定と訓練の通りに動けていたのは、鵙もよくわかっていた。その上で合わせられなかったのは。
(ナルの戦い方、真似してみようかしら)
妹に対して、理解が足りなかったのではないか、と。少女は反省を繰り返す。妹を想う姉のように。
●
7Rは愛用のクッションをべしんべしんと叩いた。
「もうちょっと、こうすれば……もずくみたいにできれば……」
しかし、それをネガティブな理由で行っていなかった。自分の動きを思い返して、その上で姉の動きがどうだったかをイメージする。翡翠電脳公社の中でも暗器に優れた彼女なら、もっとこう動けるから、と反省する。
「あーもう、どうしてこうなったかなぁ」
自分のミスだった。それをわかっているからこそ、ミスをめったにしない姉のことを、妹は静かに羨んでいる。
翡翠電脳公社には最強と呼び称される2人組が存在した。そしてその後継である2人の強化人間の最強への一歩は、まだ始まったばかりだった。
それでも、かつて。翡翠電脳公社には最強と呼び称される2人組が存在した。2対2の複数戦において、だが。
それは僅かな乱れだった。7Rが両手に持った釵で1人で2人と打ちあう間に鵙-玖が暗器を利用して7Rの敵を崩す。かつて最強と言われた二人の後継モデルである彼らの、理想のパターンの1つだ。
(早いし、そもそも――)
鵙は心中で舌打ちした。2人がそれを行う際には7Rが後尾武装のギミックを僅かに開閉する合図を必要とした。戦闘中に相手からすれば視認し辛く、鵙は暗器を使用するから後方にいる事が多いからこその合図。それが無かった。
だからこそ、7Rが拮抗を崩され、鵙を巻き込んで倒されて『最強』は敗北した。
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翡翠電脳公社の強化人間にはファンサービスを行う事を推奨される時もある。薄利多売を旨とする企業方針だからこそ、購買層の取り込みを
「応援ありがとうございました! 次こそ勝ちますから、応援よろしくお願いしますね。……ほら、7Rも挨拶して」
「わかってるよもず姉。応援ありがとー、次は勝って見せるからね」
「ね。情けないお姉ちゃんでごめんね、次は勝とうね」
敗北の後のファンの交流会は、ともすれば雰囲気が悪くなるものだが、2人は仲睦まじい姉妹の様子を見せ、落ち込んではいるものの前向きな雰囲気をファンに感じさせることで、期待感を醸し出す。
仲のいい『姉妹』だった。2人は手を振り、握手をし、愛想を振りまいて。試合の結果にも関わらず驚くほど明るくファン交流会を終えた。
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「あぁ、もう、くやしーっ」
控室に入るや否や愛用のクッションをボコボコにしたあと悔しさを滲ませる7R。
「もずくもなんであわせてくれなかったの? しっかりあわせてよ」
子供っぽくぶうたれる7Rに鵙は息を吐いた。ため息、と言うには少しばかり鋭い、責めるような吐息。
「合図」
「う」
7Rは静かに呻く。わかってはいるが、負けたばかりで触れては欲しくなかった。しかし鵙もまた、負けたばかりであるからこそ、取り繕うことができなかった。
「何度もコンビでやってるんだからちゃんと覚えてよ! 合図と連携!」
「はぁーっ!!? もずくもしっかりしてよ! あのときならきめきれたでしょ!」
「なんですって!? あんたがあそこで飛び出してきたから行動が被ったんでしょうが! その尻尾は飾りか七輪なの!?」
「しちりんっていった! もずくのあんぽんたん! わんぱたーん!」
ぎゃあぎゃあと子供っぽく叫ぶ二人の少女。言葉尻を捉えては言い返し、反省にもならない言い争いに終止する。
「能天気!」
「むくち!」
「間抜け!」
「ゆびふぇち!」
「そもそも遊ぶ時間が長い!」
「ゆびのせいたいかたろぐをみるめがこわい!」
少しの間睨み合ってから。全く同時に二人して顔を背けて、解散した。
「お疲れ様でした!」「おつかれさまでした!!」
なんだかんだ、息はあっていた。
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鵙は自室で、今度こそゆっくりを息を吐いた。
(流石に言い過ぎたわ……)
7Rも悪いところはあるが、2人はコンビで戦っている。肝心な所で勝ちきれないのは自分に責任がある、と鵙は考える。
(姉である、わたしの責任だわ)
全体の動きは決して悪いものではなかった。想定と訓練の通りに動けていたのは、鵙もよくわかっていた。その上で合わせられなかったのは。
(ナルの戦い方、真似してみようかしら)
妹に対して、理解が足りなかったのではないか、と。少女は反省を繰り返す。妹を想う姉のように。
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7Rは愛用のクッションをべしんべしんと叩いた。
「もうちょっと、こうすれば……もずくみたいにできれば……」
しかし、それをネガティブな理由で行っていなかった。自分の動きを思い返して、その上で姉の動きがどうだったかをイメージする。翡翠電脳公社の中でも暗器に優れた彼女なら、もっとこう動けるから、と反省する。
「あーもう、どうしてこうなったかなぁ」
自分のミスだった。それをわかっているからこそ、ミスをめったにしない姉のことを、妹は静かに羨んでいる。
翡翠電脳公社には最強と呼び称される2人組が存在した。そしてその後継である2人の強化人間の最強への一歩は、まだ始まったばかりだった。