A bird in the hand is ――
電脳戦潜アプリェーリ イベントノベル(テーマ)翡翠電脳公社制作 玖条 エイ納品 2023年04月15日 22時43分39秒
『――おっと、翡翠電脳公社!これは痛恨のミス!鵙-玖選手味方との連携が取れていない!』
場内のスピーカーから割れんばかり名指しの実況が鵙の手元を狂わせる。
思うように動かない身体と、戦況の悪さが焦りに拍車をかけた。彼女以外のチームメイトは実力も申し分ない。ただただ鵙だけが足を引っ張っているのが誰の目からも明らかだった。
「(皆は、)」
敵の前衛の陽動に気を取られ潜伏していた狙撃手にいいように踊らされる。想定していた陣形を築けずに半ば崩壊した状態で味方との距離を散らされていた。本来なら鵙がこちらのチームでその役割を担うはずだったが、観衆全員が鵙の失態を責めているような気さえして、竦む脚を叱咤して鵙は両脚に下げた箱を撫でる。起動音と共に生成されたホログラムをブラフに相手の狙撃を躱したところで、ヒールを鳴らしてホバーに切り替えた。拙くよろけた飛行は不格好な軌道を描いたが、その不規則さが相手の予測を運良く外したのか飛んできた追撃をどうにか躱しきった。
「ごめんなさい、立て直します」
「謝罪はいい、次来るよ!」
「っ、はい」
チームメンバーの叱咤を受けながら、鵙はひりついた空気を振り切るようにフィールドを滑るように羽ばたいた。
●
響く実況、芳しくない状況。
モニターを前にその男は酷く苛ついていた。
男にはこの企業同士の代理戦争の裏側を知る程度には金と権力があった。華やかな闘争の裏側で、使い捨てのように量産されるクローン達の最期もどうなるか知っていた。しかしそれは男の気にするところではない。必要なのは自分の所有欲を満たす好みの造形の強い人形なのだから。
「先代の強さを聞いていたから用意したが、不良品を掴まされたか?」
男の側にはモニターの向こうに映る顔と同じ橙色の瞳の幼気な少女が、同じ顔で微笑んでいた。
男の指が少女の頤をなぞる。反応を示さない少女にまた苛立たしげに顎を掴んだ。
「――見た目だけの人形ならいくらでもいる」
立ち上がった男は微笑む少女の瞳を覗き込む。頤をなぞる指が白い喉に滑り、花でも手折るように力を込める。
掠れたうめき声が暫く聞こえた後に――男は手を離した。
征服欲と自己顕示欲はより価値をのある物を支配してこそ満たされる。
「価値が無いのであれば――廃棄しても構わないだろう」
既に見向きもされなくなったモニターが、翡翠の敗戦を虚空に伝えていた。
場内のスピーカーから割れんばかり名指しの実況が鵙の手元を狂わせる。
思うように動かない身体と、戦況の悪さが焦りに拍車をかけた。彼女以外のチームメイトは実力も申し分ない。ただただ鵙だけが足を引っ張っているのが誰の目からも明らかだった。
「(皆は、)」
敵の前衛の陽動に気を取られ潜伏していた狙撃手にいいように踊らされる。想定していた陣形を築けずに半ば崩壊した状態で味方との距離を散らされていた。本来なら鵙がこちらのチームでその役割を担うはずだったが、観衆全員が鵙の失態を責めているような気さえして、竦む脚を叱咤して鵙は両脚に下げた箱を撫でる。起動音と共に生成されたホログラムをブラフに相手の狙撃を躱したところで、ヒールを鳴らしてホバーに切り替えた。拙くよろけた飛行は不格好な軌道を描いたが、その不規則さが相手の予測を運良く外したのか飛んできた追撃をどうにか躱しきった。
「ごめんなさい、立て直します」
「謝罪はいい、次来るよ!」
「っ、はい」
チームメンバーの叱咤を受けながら、鵙はひりついた空気を振り切るようにフィールドを滑るように羽ばたいた。
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響く実況、芳しくない状況。
モニターを前にその男は酷く苛ついていた。
男にはこの企業同士の代理戦争の裏側を知る程度には金と権力があった。華やかな闘争の裏側で、使い捨てのように量産されるクローン達の最期もどうなるか知っていた。しかしそれは男の気にするところではない。必要なのは自分の所有欲を満たす好みの造形の強い人形なのだから。
「先代の強さを聞いていたから用意したが、不良品を掴まされたか?」
男の側にはモニターの向こうに映る顔と同じ橙色の瞳の幼気な少女が、同じ顔で微笑んでいた。
男の指が少女の頤をなぞる。反応を示さない少女にまた苛立たしげに顎を掴んだ。
「――見た目だけの人形ならいくらでもいる」
立ち上がった男は微笑む少女の瞳を覗き込む。頤をなぞる指が白い喉に滑り、花でも手折るように力を込める。
掠れたうめき声が暫く聞こえた後に――男は手を離した。
征服欲と自己顕示欲はより価値をのある物を支配してこそ満たされる。
「価値が無いのであれば――廃棄しても構わないだろう」
既に見向きもされなくなったモニターが、翡翠の敗戦を虚空に伝えていた。