極みのカラアゲを求めし知の探究者
キャラクターノベル制作 ウケッキ納品 2020年11月28日 18時45分46秒
知識とは実践と実験である、とはよく言ったものだ。
実体験のない知識など机上の空論でしかない。知識は得るものではあるが試さなくては何の意味も持たない。
そう考えながら草木を掻き分け、歩く一人のゴブリナがいた。
やや褐色の肌に紅い瞳、銀色の長い美しい髪を持つ彼女の名はストレガ・L・リベルガストラ。
『独りで知を追い求めるには限界がある。知を求める同士に我が名を託し、更なる知を広く求めん。我等知を紡ぐ者』そう言葉を残したのは彼女から数世代前の祖先である。
祖先である最初の『ストレガ』は一人で知識を探求するのは難しいと考え自身の名と知識を次の世代に託し、世代を超えて知識を紡ぐ事を目指したのだ。
そうした名と知識を受け継いだ祖先から数えて何世代目かのストレガが彼女なのである。
祖先達も知識の研鑽と実践には余念がなく、周囲から見れば大層変わっていたが……彼女もまたその例に漏れない。
もっぱら今の彼女の探求対象は『食』である。様々な種族のあらゆる料理に興味を示し、その実践に余念がないのだ。
「ふむ……この書物によれば必要なのは『鶏肉』か。さて、良い獲物が見つかるとよいのだが」
彼女はベースとなる簡単なキャンプを設営するとてきぱきと用意を整えた。
背負って持ってきた調理器具と用意していた肉以外の食材を下ろす。獣を寄せ付けない様に香りの強い香草を混ぜ込んで仕立てた布で覆うのを忘れない。
いい感じにスパイスになりそうな空腹を感じながら彼女は木々の間を走る。
少し行くと開けた場所にストレガは獣の足跡を発見する。彼女の知識がそれは『猪』だろうと予測させた。
足跡は一匹分。真直ぐに草の中の獣道へと通じていた。獣道を観察すると草が幾重にも踏み慣らされており他の獣の存在も感じられる。
「ほほう、これはいいものを見つけたのだ。これならば猪だけでなく鹿など他の動物も狙えるかもしれん」
彼女は気配を悟られない様に低い姿勢でゆっくりと身を隠しながら獣道を進んでいく。
ある程度進むと獣道の先に小さな泉が見えてきた。そのほとりには一匹の小さな猪と大きな鹿がゆっくりと休んでいるようである。
ストレガは杖を構えるとその先端を猪の方へと向けフリーズボルトを放った。真直ぐに飛来した氷の刃は猪の足元で炸裂しその足を凍り付かせ動きを止める。
氷が炸裂した音に驚いた鹿は飛び上がって逃げようとするがストレガはそれを許さない。
鹿の周囲に光り輝く球状の存在が顕現したかと思うとそれらは鹿に纏わりつき、その動きを阻害する。
「簡単に逃げおおせると思うな、君達は美味しいカラアゲになるのだッッ!!」
なおも逃げようともがく二匹の獣へ目掛けストレガは氷嵐を発動させる。光り輝くエーテルが急速に集中したかと思うと凄まじい風と大小様々な氷の礫が吹き荒れる。
逃げられない状態で氷の猛襲を受けた鹿と猪はその場に倒れ、身動き一つしなくなった。
近づいたストレガは彼らにしっかりとナイフで止めを刺すと引きずる様にしてベースとして設営したキャンプへと戻っていく。
◆
キャンプに戻ったストレガは下ろしてあった荷物から解体道具を取り出すと手早く獣達の解体作業に入った。
まずは小さい猪の方の胸部に小さな切れ込みを入れて体内の血抜きを行う。手足を掴んで激しく上下させ、ポンプの様に血を抜いた。勢いよく流れ出した血は地面へと吸い込まれていく。
猪の血抜きを終えたストレガは鹿の血抜きも行った。体の大きな鹿は血を抜くのに少々手こずったが何とか血を抜く事に成功した。
「これをしておかねば肉は臭くなってしまうからな。血をしっかりと抜くという放血処理は食肉にする上で大切なのだ」
自分の血抜き作業に満足した表情を浮かべたストレガは続けて内蔵の処理の準備に入る。
薄い刃を持つナイフに持ち替え、腹からお尻の辺りまですっと深く刃を入れ過ぎない様に切り開いていった。
骨を開いて内臓を取り出すとその内臓は近くに掘ってあった穴へと埋める。これで内臓は土に還り、新たな肥料となるだろう。無駄にする部位はあってはならない。
内臓を抜いて空となった獣達の腹腔をしっかりと洗浄した後、彼女は獣達をしっかりと吊るし上げた。かなりの重労働だが彼女の持つ知識を駆使すれば容易い事である。
綺麗に表面の皮を洗浄して泥と埃を落とすとそのままストレガは手際よく解体作業を進めていく。
それからしばらくして。
ストレガは自身の前に並ぶ綺麗な鹿肉と猪肉に満足そうな笑みを浮かべた。
「ふふ、苦労して解体したかいがあったというものなのだ。心せよ、これから君達は絶品の『カラアゲ』なるものになるのだから」
調理鍋を用意しストレガはそこにひたひたに油を流し込む。その下に位置する焚き火の火加減調節も忘れない。
油を熱している間に彼女は衣の用意に入る。麦から得た粉を少々、パンを粉にしたパン粉を少し、特殊な芋類から抽出した白い粉を少し配合する。
それらを手で混ぜ合わせ、適度に潰すとそこに肉を投入。まんべんなく付け、余分な粉は手ではたき落とす。
「さてと、油の温度を確認しなくては」
粉をひとつまみ程度摘まみ上げると油に落とす。じゅわっという音がして粉はすぐさま浮かび上がって小さな気泡を吐き出している。
適温だと判断したストレガは衣を付けた肉達を静かに油の中に投入していった。それらは小さな気泡を出しながら食欲をそそる音を鳴り響かせている。
肉を揚げている間にストレガは持ってきていた野菜をスティック状に切り分けていく。食事のバランスは考えなくてはならない。栄養のバランスは特に重要だった。
野菜を切り分け終わった頃、丁度良く肉の衣がきつね色になってきていた。数度、軽く油の中でひっくり返しながら火力を強め、最後の仕上げに掛かる。
綺麗に揚がったカラアゲ達を用意していた木皿に盛り付け、木のコップに野菜スティックを入れて添える。
参考にしていた本『極みのカラアゲ』の通りに調理できたストレガは誰に見せるわけでもないが少しどや顔を浮かべていた。
「では食すとしよう……はむっ……むぅ!? これはあつあつで、うまっ、この世にこれほどの料理があったとは!!」
口の中で踊る肉と油、下味の塩を加えた絶妙のハーモニーが彼女の舌を喜ばせる。
肉を口へと運ぶその手は止まらず、次々と肉は皿から消えていった。野菜スティックも頬張り、アクセントとなった野菜の味がいいスパイスとなり、更にカラアゲを胃袋へと消していく。
あっという間に彼女はカラアゲを平らげ、満足そうな表情を浮かべていた。
やはり知識は得るだけでなく実践、それは大事なのだとストレガは思う。
感覚を忘れない内に彼女はレポートにカラアゲの感想や調理時の本に無い気づいた注意事項などを書き込んでいく。
ひとしきり書き終えた彼女はキャンプ道具を片付けると次は何の料理を試そうかと思い浮かべながら帰路へとついたのだった。
知識は弛まぬ研鑽と実践の中にある。
それはいつの時代も変わる事のない真実なのだ。
彼女が記した『カラアゲ』に関するレポートもいつの日か、誰かの目に触れその者の知識の研鑽に役立てられる事だろう。
実体験のない知識など机上の空論でしかない。知識は得るものではあるが試さなくては何の意味も持たない。
そう考えながら草木を掻き分け、歩く一人のゴブリナがいた。
やや褐色の肌に紅い瞳、銀色の長い美しい髪を持つ彼女の名はストレガ・L・リベルガストラ。
『独りで知を追い求めるには限界がある。知を求める同士に我が名を託し、更なる知を広く求めん。我等知を紡ぐ者』そう言葉を残したのは彼女から数世代前の祖先である。
祖先である最初の『ストレガ』は一人で知識を探求するのは難しいと考え自身の名と知識を次の世代に託し、世代を超えて知識を紡ぐ事を目指したのだ。
そうした名と知識を受け継いだ祖先から数えて何世代目かのストレガが彼女なのである。
祖先達も知識の研鑽と実践には余念がなく、周囲から見れば大層変わっていたが……彼女もまたその例に漏れない。
もっぱら今の彼女の探求対象は『食』である。様々な種族のあらゆる料理に興味を示し、その実践に余念がないのだ。
「ふむ……この書物によれば必要なのは『鶏肉』か。さて、良い獲物が見つかるとよいのだが」
彼女はベースとなる簡単なキャンプを設営するとてきぱきと用意を整えた。
背負って持ってきた調理器具と用意していた肉以外の食材を下ろす。獣を寄せ付けない様に香りの強い香草を混ぜ込んで仕立てた布で覆うのを忘れない。
いい感じにスパイスになりそうな空腹を感じながら彼女は木々の間を走る。
少し行くと開けた場所にストレガは獣の足跡を発見する。彼女の知識がそれは『猪』だろうと予測させた。
足跡は一匹分。真直ぐに草の中の獣道へと通じていた。獣道を観察すると草が幾重にも踏み慣らされており他の獣の存在も感じられる。
「ほほう、これはいいものを見つけたのだ。これならば猪だけでなく鹿など他の動物も狙えるかもしれん」
彼女は気配を悟られない様に低い姿勢でゆっくりと身を隠しながら獣道を進んでいく。
ある程度進むと獣道の先に小さな泉が見えてきた。そのほとりには一匹の小さな猪と大きな鹿がゆっくりと休んでいるようである。
ストレガは杖を構えるとその先端を猪の方へと向けフリーズボルトを放った。真直ぐに飛来した氷の刃は猪の足元で炸裂しその足を凍り付かせ動きを止める。
氷が炸裂した音に驚いた鹿は飛び上がって逃げようとするがストレガはそれを許さない。
鹿の周囲に光り輝く球状の存在が顕現したかと思うとそれらは鹿に纏わりつき、その動きを阻害する。
「簡単に逃げおおせると思うな、君達は美味しいカラアゲになるのだッッ!!」
なおも逃げようともがく二匹の獣へ目掛けストレガは氷嵐を発動させる。光り輝くエーテルが急速に集中したかと思うと凄まじい風と大小様々な氷の礫が吹き荒れる。
逃げられない状態で氷の猛襲を受けた鹿と猪はその場に倒れ、身動き一つしなくなった。
近づいたストレガは彼らにしっかりとナイフで止めを刺すと引きずる様にしてベースとして設営したキャンプへと戻っていく。
◆
キャンプに戻ったストレガは下ろしてあった荷物から解体道具を取り出すと手早く獣達の解体作業に入った。
まずは小さい猪の方の胸部に小さな切れ込みを入れて体内の血抜きを行う。手足を掴んで激しく上下させ、ポンプの様に血を抜いた。勢いよく流れ出した血は地面へと吸い込まれていく。
猪の血抜きを終えたストレガは鹿の血抜きも行った。体の大きな鹿は血を抜くのに少々手こずったが何とか血を抜く事に成功した。
「これをしておかねば肉は臭くなってしまうからな。血をしっかりと抜くという放血処理は食肉にする上で大切なのだ」
自分の血抜き作業に満足した表情を浮かべたストレガは続けて内蔵の処理の準備に入る。
薄い刃を持つナイフに持ち替え、腹からお尻の辺りまですっと深く刃を入れ過ぎない様に切り開いていった。
骨を開いて内臓を取り出すとその内臓は近くに掘ってあった穴へと埋める。これで内臓は土に還り、新たな肥料となるだろう。無駄にする部位はあってはならない。
内臓を抜いて空となった獣達の腹腔をしっかりと洗浄した後、彼女は獣達をしっかりと吊るし上げた。かなりの重労働だが彼女の持つ知識を駆使すれば容易い事である。
綺麗に表面の皮を洗浄して泥と埃を落とすとそのままストレガは手際よく解体作業を進めていく。
それからしばらくして。
ストレガは自身の前に並ぶ綺麗な鹿肉と猪肉に満足そうな笑みを浮かべた。
「ふふ、苦労して解体したかいがあったというものなのだ。心せよ、これから君達は絶品の『カラアゲ』なるものになるのだから」
調理鍋を用意しストレガはそこにひたひたに油を流し込む。その下に位置する焚き火の火加減調節も忘れない。
油を熱している間に彼女は衣の用意に入る。麦から得た粉を少々、パンを粉にしたパン粉を少し、特殊な芋類から抽出した白い粉を少し配合する。
それらを手で混ぜ合わせ、適度に潰すとそこに肉を投入。まんべんなく付け、余分な粉は手ではたき落とす。
「さてと、油の温度を確認しなくては」
粉をひとつまみ程度摘まみ上げると油に落とす。じゅわっという音がして粉はすぐさま浮かび上がって小さな気泡を吐き出している。
適温だと判断したストレガは衣を付けた肉達を静かに油の中に投入していった。それらは小さな気泡を出しながら食欲をそそる音を鳴り響かせている。
肉を揚げている間にストレガは持ってきていた野菜をスティック状に切り分けていく。食事のバランスは考えなくてはならない。栄養のバランスは特に重要だった。
野菜を切り分け終わった頃、丁度良く肉の衣がきつね色になってきていた。数度、軽く油の中でひっくり返しながら火力を強め、最後の仕上げに掛かる。
綺麗に揚がったカラアゲ達を用意していた木皿に盛り付け、木のコップに野菜スティックを入れて添える。
参考にしていた本『極みのカラアゲ』の通りに調理できたストレガは誰に見せるわけでもないが少しどや顔を浮かべていた。
「では食すとしよう……はむっ……むぅ!? これはあつあつで、うまっ、この世にこれほどの料理があったとは!!」
口の中で踊る肉と油、下味の塩を加えた絶妙のハーモニーが彼女の舌を喜ばせる。
肉を口へと運ぶその手は止まらず、次々と肉は皿から消えていった。野菜スティックも頬張り、アクセントとなった野菜の味がいいスパイスとなり、更にカラアゲを胃袋へと消していく。
あっという間に彼女はカラアゲを平らげ、満足そうな表情を浮かべていた。
やはり知識は得るだけでなく実践、それは大事なのだとストレガは思う。
感覚を忘れない内に彼女はレポートにカラアゲの感想や調理時の本に無い気づいた注意事項などを書き込んでいく。
ひとしきり書き終えた彼女はキャンプ道具を片付けると次は何の料理を試そうかと思い浮かべながら帰路へとついたのだった。
知識は弛まぬ研鑽と実践の中にある。
それはいつの時代も変わる事のない真実なのだ。
彼女が記した『カラアゲ』に関するレポートもいつの日か、誰かの目に触れその者の知識の研鑽に役立てられる事だろう。