雪百合騎士団の日常~マスト・ジャスト・バスト~
キャラクターノベル制作 椿油納品 2023年02月15日 00時35分31秒
メイアは今日も騎士団の仕事に勤しんでいる。ミルドレット領を護る為の、騎士達の身体訓練を指導したり、百合茶の茶葉を摘む作業をしたり、大量の書類にサインする事もしょっちゅうだ。
「ふぅ……こんな所ね」
今、メイアは事務机に向かって書類にサインを書き終えた所だった。軽く伸びをして、集中が途切れたと共に、ノックの音に気付く。
「メイア様、失礼します!」
「どうぞ。入っても構わないわ」
入って来たのは新人騎士のエリザベータ。ヒューマンだが、美しさと巨乳と戦闘力を買われてつい最近入団した者だ。
「訓練の件なのですが、その……」
エリザベータはバツが悪そうな顔をして、もじもじしていた。
「……どうしたの? もしかして、何か破損してしまった……とか?」
こくっと頷くエリザベータを見て、メイアは眼をつぶったまま笑顔で答える。
「そうなのね。大丈夫、修理担当の者に任せるわ。それで、何を壊したの?」
「……訓練用の剣をポッキリと折ってしまいまして……」
驚愕するメイア。訓練用の剣と言っても、木などで出来ているわけではなく鉄以上の硬さは保証されている。メイアは思い出した。エリザベータは怪力だった、と。
「鍛冶師に頼むしかなさそうね」
騎士団の訓練用の剣は、とある鍛冶師に特注で作ってもらった物だった。なので修理担当の範疇を超えていたのである。
「す、すみません……以後気を付けますっ」
何度もぺこぺこ頭を下げるエリザベータを見て、肩をポンと叩くメイア。
「過ぎた事を気にしても何も始まらないわ、それよりお茶にしましょうか」
人差し指を口元に当て、こっちよとエリザベータを案内するメイア。エリザベータはその器の広さに感涙しそうになったが、配慮してくれたメイアの意志を尊重してありがたく百合茶をご馳走になるのだった。
そして後日、訓練場。エリザベータが折ってしまった剣が完璧に直って戻ってきた。納品の速さにも驚いていたエリザベータだったが、何より元と一寸の狂いも無い、まるで元から破損など無かったかのような出来に感激していた。
「これが特注の理由なの」
メイアは鍛冶師を信頼しているようだった。
「ありがとうございます、メイア様! 以後壊さないように気を付けて訓練します!!」
そう意気込んで訓練用の剣を振るう彼女を見て、メイアは微笑みながら訓練場を後にした。
その日の夕方、メイアは百合茶を飲みながら考え事をしていた。
(訓練用の剣の規定を守る事も大切だけど……エリザベータのように少し特別な子がいると見直す必要がありそうね。けれど、見直すだけでいいのか悩むわ……一人だけ特別な素材にすると反感を買いそうだし、全体の質を上げると鍛冶師の方に迷惑がかかるかもしれない。うーん……どうしたものか……)
その悩みは予算との格闘でもあった。何故なら、一人だけ特注にしたり、全体の質を上げる事で騎士団に割り振られた予算の幾つかを食ってしまうかもしれない。それが問題でもあった為、メイアの悩みが解決するのには時間がかかった。
しかし。画期的に解決したのは一週間後の事だった。エリザベータがメイアの下を再び尋ねると、彼女は何やら嬉しそうな顔をしていた。
「メイア様! 私、自分の装備を見直してみたんです。そうしたら、きつくて変に力んでしまうみたいで!」
何でニコニコと笑って報告しに来たのか、メイアはすぐには分からなかった。少し考えると、理由はすぐに分かった。
「……身体に物理的な負荷がかかると、強く力んでしまう癖があるのね?」
「はい! なので、装備を改善すればまた剣が壊れる事も無いのかと思いまして報告をしに来たという訳です!」
問題は剣ではなく、鎧の方にあったらしい。これはメイアも眼から鱗と言わざるを得なかった。
「そうね、じゃあすぐに新しい鎧を発注しましょう」
これで予算の問題はほとんど解決したと言っても差し支えないだろう。
だが、安心したのもつかの間。
「メイア様、わたくしの装備も見て下さい~! きついんです~!」
「私の装備もお願いします! 胸がきつくて!」
「あの……お願い、します……。ちょっと、きつく感じます……」
『装備が硬くてきつい』という問題、どうやら色んな団員が抱えていたらしい。エリザベータの件の発覚により、それぞれが若干でも抱えていた不満を一気にメイアの所へ押し寄せて来たのだった。
「どうやら、全員の装備を見直さなきゃいけないみたいね……」
一難去ってまた一難。結局、鎧は全員若干緩くする方向で予算を纏めたのだった。
そして数日が経ち、予算提出前の夜。エリザベータは、再びメイアの所に尋ねて来たのだった。
「あ、あの……すみません、何か私のせいでメイア様に負荷がかかってしまっているみたいで……。もし良かったらその、手伝いが出来ればと」
嬉しそうにしていたエリザベータはどこへやら。今はまた、申し訳なさそうにもじもじとしているのを見て、メイアは最後にサインをする予定だったがペンを一旦机に置いた。
「大丈夫よ。むしろ貴方のおかげで皆の装備を見直す事が出来て良かった。私は貴方に感謝しているの」
「感謝、ですか……!?」
問題を持ちんでいる自覚があるからか、エリザベータはあまり感謝と言われてもピンと来なかったようだ。
「装備が適性でないと、実力をフルに発揮できないでしょう? 貴方はそのきっかけになってくれたの。最初は剣から始まったけど、まさか団員の4割近くが鎧のバストサイズで悩んでいるなんて気付けなかったし……大丈夫よ、自信を持って。貴方には、これからも期待しているから」
期待と言われて、エリザベータは驚いた。『期待の新人』と認められた事に、実感が湧かなかった。だが、すぐに表情は満面の笑みへと変わっていった。
「はい! これからも問題を見つけられるよう精一杯努力します!!」
「えっと、わざわざ問題を見つけに行かなくてもいいのよ……?」
次の日、訓練場で稽古をするエリザベータの顔は、新人として配属された直後より輝いていた。どうやら、友と呼べる人物も増えたようだ。それに安心したメイアは、今日も百合茶を飲み、そして、指導へと向かう。
――団員達の鎧が直って、少しは強くなれただろうか? ふとメイアは考える。
だが、バストサイズの問題ならこれからも発生するかもしれない。団員達の胸は、少しずつ育っていく。美味しい百合茶と鍛冶師に感謝をして、鍛錬に励む雪百合騎士団だった。
「ふぅ……こんな所ね」
今、メイアは事務机に向かって書類にサインを書き終えた所だった。軽く伸びをして、集中が途切れたと共に、ノックの音に気付く。
「メイア様、失礼します!」
「どうぞ。入っても構わないわ」
入って来たのは新人騎士のエリザベータ。ヒューマンだが、美しさと巨乳と戦闘力を買われてつい最近入団した者だ。
「訓練の件なのですが、その……」
エリザベータはバツが悪そうな顔をして、もじもじしていた。
「……どうしたの? もしかして、何か破損してしまった……とか?」
こくっと頷くエリザベータを見て、メイアは眼をつぶったまま笑顔で答える。
「そうなのね。大丈夫、修理担当の者に任せるわ。それで、何を壊したの?」
「……訓練用の剣をポッキリと折ってしまいまして……」
驚愕するメイア。訓練用の剣と言っても、木などで出来ているわけではなく鉄以上の硬さは保証されている。メイアは思い出した。エリザベータは怪力だった、と。
「鍛冶師に頼むしかなさそうね」
騎士団の訓練用の剣は、とある鍛冶師に特注で作ってもらった物だった。なので修理担当の範疇を超えていたのである。
「す、すみません……以後気を付けますっ」
何度もぺこぺこ頭を下げるエリザベータを見て、肩をポンと叩くメイア。
「過ぎた事を気にしても何も始まらないわ、それよりお茶にしましょうか」
人差し指を口元に当て、こっちよとエリザベータを案内するメイア。エリザベータはその器の広さに感涙しそうになったが、配慮してくれたメイアの意志を尊重してありがたく百合茶をご馳走になるのだった。
そして後日、訓練場。エリザベータが折ってしまった剣が完璧に直って戻ってきた。納品の速さにも驚いていたエリザベータだったが、何より元と一寸の狂いも無い、まるで元から破損など無かったかのような出来に感激していた。
「これが特注の理由なの」
メイアは鍛冶師を信頼しているようだった。
「ありがとうございます、メイア様! 以後壊さないように気を付けて訓練します!!」
そう意気込んで訓練用の剣を振るう彼女を見て、メイアは微笑みながら訓練場を後にした。
その日の夕方、メイアは百合茶を飲みながら考え事をしていた。
(訓練用の剣の規定を守る事も大切だけど……エリザベータのように少し特別な子がいると見直す必要がありそうね。けれど、見直すだけでいいのか悩むわ……一人だけ特別な素材にすると反感を買いそうだし、全体の質を上げると鍛冶師の方に迷惑がかかるかもしれない。うーん……どうしたものか……)
その悩みは予算との格闘でもあった。何故なら、一人だけ特注にしたり、全体の質を上げる事で騎士団に割り振られた予算の幾つかを食ってしまうかもしれない。それが問題でもあった為、メイアの悩みが解決するのには時間がかかった。
しかし。画期的に解決したのは一週間後の事だった。エリザベータがメイアの下を再び尋ねると、彼女は何やら嬉しそうな顔をしていた。
「メイア様! 私、自分の装備を見直してみたんです。そうしたら、きつくて変に力んでしまうみたいで!」
何でニコニコと笑って報告しに来たのか、メイアはすぐには分からなかった。少し考えると、理由はすぐに分かった。
「……身体に物理的な負荷がかかると、強く力んでしまう癖があるのね?」
「はい! なので、装備を改善すればまた剣が壊れる事も無いのかと思いまして報告をしに来たという訳です!」
問題は剣ではなく、鎧の方にあったらしい。これはメイアも眼から鱗と言わざるを得なかった。
「そうね、じゃあすぐに新しい鎧を発注しましょう」
これで予算の問題はほとんど解決したと言っても差し支えないだろう。
だが、安心したのもつかの間。
「メイア様、わたくしの装備も見て下さい~! きついんです~!」
「私の装備もお願いします! 胸がきつくて!」
「あの……お願い、します……。ちょっと、きつく感じます……」
『装備が硬くてきつい』という問題、どうやら色んな団員が抱えていたらしい。エリザベータの件の発覚により、それぞれが若干でも抱えていた不満を一気にメイアの所へ押し寄せて来たのだった。
「どうやら、全員の装備を見直さなきゃいけないみたいね……」
一難去ってまた一難。結局、鎧は全員若干緩くする方向で予算を纏めたのだった。
そして数日が経ち、予算提出前の夜。エリザベータは、再びメイアの所に尋ねて来たのだった。
「あ、あの……すみません、何か私のせいでメイア様に負荷がかかってしまっているみたいで……。もし良かったらその、手伝いが出来ればと」
嬉しそうにしていたエリザベータはどこへやら。今はまた、申し訳なさそうにもじもじとしているのを見て、メイアは最後にサインをする予定だったがペンを一旦机に置いた。
「大丈夫よ。むしろ貴方のおかげで皆の装備を見直す事が出来て良かった。私は貴方に感謝しているの」
「感謝、ですか……!?」
問題を持ちんでいる自覚があるからか、エリザベータはあまり感謝と言われてもピンと来なかったようだ。
「装備が適性でないと、実力をフルに発揮できないでしょう? 貴方はそのきっかけになってくれたの。最初は剣から始まったけど、まさか団員の4割近くが鎧のバストサイズで悩んでいるなんて気付けなかったし……大丈夫よ、自信を持って。貴方には、これからも期待しているから」
期待と言われて、エリザベータは驚いた。『期待の新人』と認められた事に、実感が湧かなかった。だが、すぐに表情は満面の笑みへと変わっていった。
「はい! これからも問題を見つけられるよう精一杯努力します!!」
「えっと、わざわざ問題を見つけに行かなくてもいいのよ……?」
次の日、訓練場で稽古をするエリザベータの顔は、新人として配属された直後より輝いていた。どうやら、友と呼べる人物も増えたようだ。それに安心したメイアは、今日も百合茶を飲み、そして、指導へと向かう。
――団員達の鎧が直って、少しは強くなれただろうか? ふとメイアは考える。
だが、バストサイズの問題ならこれからも発生するかもしれない。団員達の胸は、少しずつ育っていく。美味しい百合茶と鍛冶師に感謝をして、鍛錬に励む雪百合騎士団だった。