ようこそ教会プレイヤへ
キャラクターノベル制作 藤原ゆう納品 2020年11月22日 19時24分12秒
●新しい街で
長く伸ばした金髪を、頭の高い位置でひとつに結わえた女性が冒険者ギルドに入って行く。
髪に巻いた青い紐が目を引くが、それ以上に人々の注目を集めるのは、宝石のような青い瞳。
活発そうにキラキラ輝く瞳にまともに見つめられ、対応したギルド職員はどぎまぎしている。
冒険者となるべく登録をすませたあと、落ち着く先を決めるために職員に良い物件は知らないか尋ねると、ちょうどロゼットにぴったりの物件があるという答えが返ってきた。
現在は無人になっている教会で、新しく管理してくれる者を探しているのだという。
「まあ、それ以上に良いところはないわね!」
かくして、ロゼットは期待を胸に、冒険者ギルドをあとにした。
そこは街角にある、小さな教会だった。
時代を感じさせる石壁には所々苔が生えていて趣を感じる。
庭もあるようで、ロゼットは嬉しくなる。
「可愛らしい建物に、お庭……。これからの生活が楽しみだわ」
中はどんなだろう。
軋む蝶番に少し眉をひそめたものの、中へと視線を移したロゼットは我知らず声を漏らした。
「素敵ね」
ロゼットは一歩一歩確かめるように、正面の祭壇へと歩み寄る。
掃除は行き届いておらず、多少埃っぽさはある。しかし、しばらく誰も住んでいなかったというのだから仕方ない。
「お掃除のしがいがありそう……」
何事も前向きに、楽しみに変える術を知っているロゼットだった。
祭壇の向こうにある窓からは明るい日差しが入り、教会内部は思っていた以上に明るかった。
けれど、祭壇の周りにあるはずの調度類は何もなかった。
前の管理者が持ち出してしまっただろうか。
「ないのなら、これから揃えればいいだけだわ」
当面、祭壇さえあれば問題はないだろう。
「椅子や燭台が揃って、街の人たちが礼拝に来てくれるようになったら――」
賑やかな教会になったところを想像して、ロゼットは微笑む。
ロゼットは祭壇に近づき、胸の前で両手を組んで膝をついた。
(……ロゼットと申します。今日これより、ここをお預かりいたします)
清々しい表情で、ロゼットは差し込む光の向こうを見つめる。
「教会の名前は何がいいかしら……」
立ち上がり、再び教会の様子を見ようと歩き出したロゼットは、誰かの声を聞いたような気がして振り向いた。
もちろん、そこに人がいるわけではない。
けれど光り溢れる祭壇の向こうに『誰か』がいる。
(見守ってくださっているのだわ)
ロゼットは聞こえた声に対し、静かに頷いた。
●祈りの花
その時、扉の蝶番が軋む音。
あの蝶番に、そのうち油を注さなければ――。
そんなことを考えながら振り返ると、控え目に開けられた扉の隙間から、小さな女の子が顔を覗かせている。
「あら。いらっしゃい!」
「……こんにちは」
小さな声で挨拶をした女の子を、ロゼットは笑顔で迎え入れる。
ロゼットの笑顔に安心したのか、女の子は中へ入って来て、躊躇いがちに手にした物をロゼットに差し出した。
「あの、これ……」
一輪のサンダーソニア。
釣鐘状の黄色い花がひとつの茎にいくつか咲いている。
「まあ、可愛いお花ね! ありがとう。わざわざ採って来てくれたの」
女の子ははにかみながら頷く。
「教会におねえちゃん来たって聞いて。嬉しくて」
「そうだったの。これから、どうぞよろしくね!」
サンダーソニアを花瓶に生け、祭壇の近くに置くと、差し込む日の光に花の黄色が浮き上がって見えた。
まるで釣鐘型の室内照明が連なっているようにも見える光景に、ロゼットと女の子は顔を見合わせて微笑んだ。
調度品のなかった教会に、可憐に咲いた祈りの光。
「サンダーソニアの花言葉――。そうね、やっぱりそれしかないのですね」
祭壇の向こうを見つめ、声を漏らしたロゼットに、不思議そうな顔をする女の子。
そんな女の子にロゼットはくすりと笑いかけ、
「教会の名前、決まったわ」
●教会の名は――
街角の教会に住み始めて数日。
ロゼットは埃を払い、祭壇の周りを綺麗に整えて――という毎日を送っていた。
祭壇の横には花台が据えられ、そこには少女が毎日のように持って来てくれるようになった、サンダーソニアを生けた花瓶が置かれている。
この日もお祈りをすませたあとは掃除である。
雑巾がけしていると、扉が開かれた。
油を注した蝶番はもう軋むことはない。
静かな教会に、ロゼットの声だけが響く。
扉を開けた誰かさんに向けて。
「ようこそ、教会プレイヤへ」
祈りを意味する名を与えられた教会で、新しい一日が始まった――。
*サンダーソニア(別名クリスマスベル)
祈り・祝福・可憐・望郷
そんな花言葉を持つ花を、あなたに贈ります――。
長く伸ばした金髪を、頭の高い位置でひとつに結わえた女性が冒険者ギルドに入って行く。
髪に巻いた青い紐が目を引くが、それ以上に人々の注目を集めるのは、宝石のような青い瞳。
活発そうにキラキラ輝く瞳にまともに見つめられ、対応したギルド職員はどぎまぎしている。
冒険者となるべく登録をすませたあと、落ち着く先を決めるために職員に良い物件は知らないか尋ねると、ちょうどロゼットにぴったりの物件があるという答えが返ってきた。
現在は無人になっている教会で、新しく管理してくれる者を探しているのだという。
「まあ、それ以上に良いところはないわね!」
かくして、ロゼットは期待を胸に、冒険者ギルドをあとにした。
そこは街角にある、小さな教会だった。
時代を感じさせる石壁には所々苔が生えていて趣を感じる。
庭もあるようで、ロゼットは嬉しくなる。
「可愛らしい建物に、お庭……。これからの生活が楽しみだわ」
中はどんなだろう。
軋む蝶番に少し眉をひそめたものの、中へと視線を移したロゼットは我知らず声を漏らした。
「素敵ね」
ロゼットは一歩一歩確かめるように、正面の祭壇へと歩み寄る。
掃除は行き届いておらず、多少埃っぽさはある。しかし、しばらく誰も住んでいなかったというのだから仕方ない。
「お掃除のしがいがありそう……」
何事も前向きに、楽しみに変える術を知っているロゼットだった。
祭壇の向こうにある窓からは明るい日差しが入り、教会内部は思っていた以上に明るかった。
けれど、祭壇の周りにあるはずの調度類は何もなかった。
前の管理者が持ち出してしまっただろうか。
「ないのなら、これから揃えればいいだけだわ」
当面、祭壇さえあれば問題はないだろう。
「椅子や燭台が揃って、街の人たちが礼拝に来てくれるようになったら――」
賑やかな教会になったところを想像して、ロゼットは微笑む。
ロゼットは祭壇に近づき、胸の前で両手を組んで膝をついた。
(……ロゼットと申します。今日これより、ここをお預かりいたします)
清々しい表情で、ロゼットは差し込む光の向こうを見つめる。
「教会の名前は何がいいかしら……」
立ち上がり、再び教会の様子を見ようと歩き出したロゼットは、誰かの声を聞いたような気がして振り向いた。
もちろん、そこに人がいるわけではない。
けれど光り溢れる祭壇の向こうに『誰か』がいる。
(見守ってくださっているのだわ)
ロゼットは聞こえた声に対し、静かに頷いた。
●祈りの花
その時、扉の蝶番が軋む音。
あの蝶番に、そのうち油を注さなければ――。
そんなことを考えながら振り返ると、控え目に開けられた扉の隙間から、小さな女の子が顔を覗かせている。
「あら。いらっしゃい!」
「……こんにちは」
小さな声で挨拶をした女の子を、ロゼットは笑顔で迎え入れる。
ロゼットの笑顔に安心したのか、女の子は中へ入って来て、躊躇いがちに手にした物をロゼットに差し出した。
「あの、これ……」
一輪のサンダーソニア。
釣鐘状の黄色い花がひとつの茎にいくつか咲いている。
「まあ、可愛いお花ね! ありがとう。わざわざ採って来てくれたの」
女の子ははにかみながら頷く。
「教会におねえちゃん来たって聞いて。嬉しくて」
「そうだったの。これから、どうぞよろしくね!」
サンダーソニアを花瓶に生け、祭壇の近くに置くと、差し込む日の光に花の黄色が浮き上がって見えた。
まるで釣鐘型の室内照明が連なっているようにも見える光景に、ロゼットと女の子は顔を見合わせて微笑んだ。
調度品のなかった教会に、可憐に咲いた祈りの光。
「サンダーソニアの花言葉――。そうね、やっぱりそれしかないのですね」
祭壇の向こうを見つめ、声を漏らしたロゼットに、不思議そうな顔をする女の子。
そんな女の子にロゼットはくすりと笑いかけ、
「教会の名前、決まったわ」
●教会の名は――
街角の教会に住み始めて数日。
ロゼットは埃を払い、祭壇の周りを綺麗に整えて――という毎日を送っていた。
祭壇の横には花台が据えられ、そこには少女が毎日のように持って来てくれるようになった、サンダーソニアを生けた花瓶が置かれている。
この日もお祈りをすませたあとは掃除である。
雑巾がけしていると、扉が開かれた。
油を注した蝶番はもう軋むことはない。
静かな教会に、ロゼットの声だけが響く。
扉を開けた誰かさんに向けて。
「ようこそ、教会プレイヤへ」
祈りを意味する名を与えられた教会で、新しい一日が始まった――。
*サンダーソニア(別名クリスマスベル)
祈り・祝福・可憐・望郷
そんな花言葉を持つ花を、あなたに贈ります――。