バンビの一日・昼までの部
キャラクターノベル制作 望月誠司納品 2020年11月10日 18時05分24秒
黄金と紺碧とが混じり合い夜明けという名の胎児が産まれる。
もう結構、良い季節なのでバンビはマイハウスの中で胎児のように丸くなって眠っていた。
なおマイハウスは流れのドワーフによって生成され「ダンボ=ル」と名付けられた紙を用いて作られている。
この紙は良く冷気を断ち暖かく、非常に軽量なのが特徴的だ。
故に、
「ふぁぁぁ……あふ」
目覚め、欠伸と共に伸びをしたバンビは、マイハウスから這い出ると『マイハウスを四つ折りに折り畳んで』マジカルポケットの中に収納した。
――そう、バンビのハウスは携行性すらも兼ね備えた優れものなのである。
優れものなのである。
優れものなのである。
何故か、周囲の街民達からの反応はイマイチだったが。
きっとこれも人の社会に偏在する小鬼差別に違いない。
そう、ある程度の市民権が認められてはいるものの、この街では小鬼差別は今も歴としてある訳で、少しでも爪弾きにされない為には、役に立つものでなければならぬ――バンビとしてはそう思う所で。
だから、バンビは走り出した。
黄金の陽が照らす、未だ黎明の紺碧を残す街中へと駆け出した。
何故か?
ハイスピードキャスターだからだ。
授恵者だからだ。
冒険者だからだ。
色々あるが、結局、極限の所では、最後は世の中体力勝負なのだ、という事。これが真理である。別の言い方をするなら、運命。
並み居るクリーパーどもを凌ぐには瞬発力が大事だ。
誰よりも早く戦場を支配する者こそが勝利を呼び込む者であり、その者こそが――役に立つ者である。
瞬発力を高め、また持続させ続けるには体力が必要で、だから、勝利し続けるには、役に立ち続けるには、体力が必要なのだ。
バンビは賢明なので、それに気付いていた。自明の帰結である。
走り続けて数時間、授恵者の体力であってもヘトヘトの汗まみれになった頃にようやく少女は走り込みを終了させた。
もはやお日様もすっかり高い位置。
バンビは街の外れにある出店が並んでいる区画へと赴くと、数枚の貨幣と引き換えに麦粥にありついた。
単に麦を牛乳で煮詰めただけの代物だったが、暖かいなら構わない。
木製のしゃもじで胃袋の中にかっこむ。
粗食だが、すきっぱらには染みた。
朝食はささっと済ませる。ハイスピードキャスターは食事も速いのである。
「ごちそうさまでした。とっても美味しゅうございましたわ」
「毎度あり! がんばんなよバンビちゃん!」
店主に礼を言って店を後にする。
小鬼相手にも値段を誤魔化したり、悪いものを出したりしないで、気持ちよく誠実に出してくれる店主というのは、この街ではそこそこ貴重だ。
朝食を済ませたバンビは図書館へと向かった。
少々の閲覧料とやけに高い保証金を支払わされるが、本を破ったり紛失したりしなければ保証金はきちんと返って来るのでここは我慢である。
眼鏡をかけた感じの悪い不機嫌そうな受付にアゴで通って良し、と示されるとバンビは優雅に礼をした。
小鬼の地位向上の為にも、襤褸を纏っていても心は錦であらねばならぬ。つまり、ダンボ=ルで寝起きしていても公での所作はお嬢様であらねばならぬ。
「まったく、野蛮なゴブリンなんぞは通したくないんだがな、貴重な本が破られる」
「あら、言われるほど野蛮ではないですわ。オレが本を破った事が一度だってありまして?」
嫌味に対し不敵に笑って睨み、言い返してやる。
受付はバンビを睨み返して来て、鼻を鳴らした。
「だからお前は通してやるんだ。とっとと行け」
バンビは中に入ると読書を開始する。
なお目的は呪文の高速化の研究の為の詩作の研究だ。
とにかく余分な文節は削り、さりとて意味が通じなくならない程度にしなくてはならない。
語彙力とセンスが必要なのだ。
他者より速くあらねばならぬ者としては動作の素早さだけでなく詠唱の素早さも重要だった。
昼の鐘が鳴るまで読書研究に打ち込む。
図書館を後にして昼食を取った後は午睡である。
己の集中力がそう続きはしないと知っているからだ。
己を鍛える為には、質の良い休息を高効率で摂取する事こそがとても重要になる。
中には休み無しでも化け物のように成果を上げ続ける生命体も存在するが、普通、そんなのは無理だ。
出来る奴は休みの取り方も上手いのである。メリハリ大切。
この点、バンビはとても優秀であった。
眠りに入るのもハイスピード。
街中の治安の良い場所の敷地内にある良さげな木陰に入りマイハウスを展開して眠り始める。
この教会のシスターは優しいので追い出されたりしないので安心だ。
さすがに一晩中居座ると文句を言われるが、昼間にちょっとくらいなら大丈夫。
そんな訳でマイハウスの中でスヤスヤと気持ちよさげに眠り、一時休憩なバンビであった。
もう結構、良い季節なのでバンビはマイハウスの中で胎児のように丸くなって眠っていた。
なおマイハウスは流れのドワーフによって生成され「ダンボ=ル」と名付けられた紙を用いて作られている。
この紙は良く冷気を断ち暖かく、非常に軽量なのが特徴的だ。
故に、
「ふぁぁぁ……あふ」
目覚め、欠伸と共に伸びをしたバンビは、マイハウスから這い出ると『マイハウスを四つ折りに折り畳んで』マジカルポケットの中に収納した。
――そう、バンビのハウスは携行性すらも兼ね備えた優れものなのである。
優れものなのである。
優れものなのである。
何故か、周囲の街民達からの反応はイマイチだったが。
きっとこれも人の社会に偏在する小鬼差別に違いない。
そう、ある程度の市民権が認められてはいるものの、この街では小鬼差別は今も歴としてある訳で、少しでも爪弾きにされない為には、役に立つものでなければならぬ――バンビとしてはそう思う所で。
だから、バンビは走り出した。
黄金の陽が照らす、未だ黎明の紺碧を残す街中へと駆け出した。
何故か?
ハイスピードキャスターだからだ。
授恵者だからだ。
冒険者だからだ。
色々あるが、結局、極限の所では、最後は世の中体力勝負なのだ、という事。これが真理である。別の言い方をするなら、運命。
並み居るクリーパーどもを凌ぐには瞬発力が大事だ。
誰よりも早く戦場を支配する者こそが勝利を呼び込む者であり、その者こそが――役に立つ者である。
瞬発力を高め、また持続させ続けるには体力が必要で、だから、勝利し続けるには、役に立ち続けるには、体力が必要なのだ。
バンビは賢明なので、それに気付いていた。自明の帰結である。
走り続けて数時間、授恵者の体力であってもヘトヘトの汗まみれになった頃にようやく少女は走り込みを終了させた。
もはやお日様もすっかり高い位置。
バンビは街の外れにある出店が並んでいる区画へと赴くと、数枚の貨幣と引き換えに麦粥にありついた。
単に麦を牛乳で煮詰めただけの代物だったが、暖かいなら構わない。
木製のしゃもじで胃袋の中にかっこむ。
粗食だが、すきっぱらには染みた。
朝食はささっと済ませる。ハイスピードキャスターは食事も速いのである。
「ごちそうさまでした。とっても美味しゅうございましたわ」
「毎度あり! がんばんなよバンビちゃん!」
店主に礼を言って店を後にする。
小鬼相手にも値段を誤魔化したり、悪いものを出したりしないで、気持ちよく誠実に出してくれる店主というのは、この街ではそこそこ貴重だ。
朝食を済ませたバンビは図書館へと向かった。
少々の閲覧料とやけに高い保証金を支払わされるが、本を破ったり紛失したりしなければ保証金はきちんと返って来るのでここは我慢である。
眼鏡をかけた感じの悪い不機嫌そうな受付にアゴで通って良し、と示されるとバンビは優雅に礼をした。
小鬼の地位向上の為にも、襤褸を纏っていても心は錦であらねばならぬ。つまり、ダンボ=ルで寝起きしていても公での所作はお嬢様であらねばならぬ。
「まったく、野蛮なゴブリンなんぞは通したくないんだがな、貴重な本が破られる」
「あら、言われるほど野蛮ではないですわ。オレが本を破った事が一度だってありまして?」
嫌味に対し不敵に笑って睨み、言い返してやる。
受付はバンビを睨み返して来て、鼻を鳴らした。
「だからお前は通してやるんだ。とっとと行け」
バンビは中に入ると読書を開始する。
なお目的は呪文の高速化の研究の為の詩作の研究だ。
とにかく余分な文節は削り、さりとて意味が通じなくならない程度にしなくてはならない。
語彙力とセンスが必要なのだ。
他者より速くあらねばならぬ者としては動作の素早さだけでなく詠唱の素早さも重要だった。
昼の鐘が鳴るまで読書研究に打ち込む。
図書館を後にして昼食を取った後は午睡である。
己の集中力がそう続きはしないと知っているからだ。
己を鍛える為には、質の良い休息を高効率で摂取する事こそがとても重要になる。
中には休み無しでも化け物のように成果を上げ続ける生命体も存在するが、普通、そんなのは無理だ。
出来る奴は休みの取り方も上手いのである。メリハリ大切。
この点、バンビはとても優秀であった。
眠りに入るのもハイスピード。
街中の治安の良い場所の敷地内にある良さげな木陰に入りマイハウスを展開して眠り始める。
この教会のシスターは優しいので追い出されたりしないので安心だ。
さすがに一晩中居座ると文句を言われるが、昼間にちょっとくらいなら大丈夫。
そんな訳でマイハウスの中でスヤスヤと気持ちよさげに眠り、一時休憩なバンビであった。