雷術使いの猛襲劇

キャラクターノベル制作 玄ノロク納品 2022年11月03日 10時34分14秒

 その日の依頼をこなし帰路を急ぐパヴェル・A・サムルガチェフ。
(ちっとばかし、遅くなっちまったなぁ。ん?)
 陽が傾き、岩や木々の影が長く伸びる街道を行く彼の視線の先に、道端の岩に背をつけしゃがみ込む一人の男の姿が映った。
「お前さん。大丈夫かい? 怪我でもしたのかい?」
「いやなに、ちょっと疲れちまって。一休みしてたところさ」
「もうすぐ陽が暮れちまう。なんだったら俺が街までおぶってってやろうか?」
「いやいや。その必要はねぇ……!!」
 男は顔を上げると、パヴェルを見るなり慌てて立ち上がった。
「その角!? ハーフビーストか!!」
 男は、腰にぶら下げていた短剣(ナイフ)を引き抜くと、パヴェルにその先端を向け構えた。
 突然短剣を突きつけられたパヴェルは、小さくため息をつくと、男に向かって優しい口調で言う。
「そんな物騒なもんはしまっておくれよぉ。俺は別に、あんたに危害を加えるつもりはこれっぽっちもねぇ。だから、なぁ?」
「何言ってやがる。獲物を前にして短剣(これ)を下げる奴がどこにいる?」
 男の言葉にパヴェルは、眉間にシワを寄せ首を傾げた。
「獲物? そいつぁどういうことだ?」
「こういうことだ」
 男は、にやりと左の口角を上げると、指笛を鳴らした。
 すると、岩や木々の間から一人、また一人と、剣や短剣、こん棒などの武器を手に持った、明らかに血の気が多そうな雰囲気を漂わせる男たちが次々と姿を現した。
 ざっと見回しただけでも十数人はいるだろう。
「てめぇら、盗賊だな?」
「わかってんなら、大人しく死んでくれ。おめぇのその角と髪は高く売れそうだからな」
「それは無理な願いだ。俺はこんなところで死にたかねぇし、おめぇらにくれてやる命はねぇ」
「なら仕方ねぇ。力ずくでいただくまでよ!」
 そう叫んだ盗賊は、短剣をパヴェルの腹に向かって突きつけた。
「危ねぇ!!」
 短剣はパヴェルの左脇腹をかすめたが、とっさに身をかわしたことで直撃を避けられたことと、エーテルバリアのおかげで幸い怪我をすることはなかった。
「てめぇ! ふざけるのも大概にしやがれ!」
 パヴェルが怒号を上げると、それが合図とばかりに盗賊たちが一斉に襲いかかってきた。
 パヴェルは、襲い来る盗賊たちをまるで舞を舞うかの如く、ひらりひらりとかわしていく。
 その動きに呼応するように、パヴェルの手に握られた金色に輝く四葉草の三叉棍の鎖がシャラリ、シャラリとしなやかな金属音を立てながら空間に結を結んでいく。
「見やがれ! 術者でも、こういう戦い方もあるってなぁ! 顕現せぃ! 輝襲壁(き・しゅう・へき)!」
 結が結ばれ舞を止めたパヴェルが、地面に勢いよく足を踏み込むと、地割れとともに雷の障壁がそそり立ち盗賊たちの行手を阻んだ。
 大多数の盗賊たちが障壁に驚き後退りする中、数人はなおも攻撃の手を止めず、その中の一人がパヴェルに剣を振りかぶり飛びかかってきた。
「いい加減にしやがれ!」
 パヴェルは、飛びかかってきた盗賊めがけ、勢いよく三叉棍を振り、その体に叩きつけた。
 左脇腹を強打された盗賊は、鈍い叫び声をあげると地面に転げ、口から泡を吹き気絶した。
「野郎! やりやがったな! もう許さねぇ! ぶっ殺してやる!」
 仲間を倒されたことに立腹した盗賊たちが、再びパヴェルに襲いかかる。
 パヴェルは、攻め入る盗賊たちの攻撃を時に受け止め、時にかわしながら縦横無尽に三叉棍を振り回し、いなしていく。と同時に揺れ動く三叉棍が再び結を結ぶ。
「次はこいつだ! くらいやがれ! 輝ク招雷(ぶりらえ・てんぺすた)!」
 パヴェルの詠唱に応じ現れた紫色の電撃は、その姿を二本の角を有する麒麟の輪郭に変え、彼と対峙する盗賊たちに向かって放たれた。
 怒涛の速さで盗賊たちの体を貫いていく電撃。
 その電撃は盗賊たちの体にまとまりつき、動きを止めた。
「うお――!!」
 パヴェルは雄叫びをあげると、三叉棍を振り回しながら盗賊たちの間を駆け抜け、次々と輩たちをなぎ倒していった。
 ふぅ――。
 対峙していた全ての盗賊を倒したパヴェルは、深く息を吐くとゆっくりと振り向き、遠目に様子を伺っていた残り数人の盗賊たちを睨みつけた。
「まだやるってんなら、とことんやってやる! かかってきやがれぃ!」
 パヴェルの怒声と鋭い視線に恐れをなした盗賊たちは、まるで猛獣を前にしたかのように震え上がり、後退りをはじめた。
 その様子に勝利を確信したパヴェルは、三叉棍を一本の棍に戻すと、地面に勢いよく叩きつけ大声をあげる。
「とっとと、うせやがれ!!」
 盗賊たちは、パヴェルの言葉に慌てふためき、蜘蛛の子を散らすかのように散り散りにその姿を消していった。
 盗賊たちがいなくなった街道は、先程までの激闘が嘘だったかのように静まりかえり、月明かりが優しく降り注いでいる。
「さぁてと、帰ろう」
 ゆっくりと家路に向かい歩きはじめたパヴェルの顔からは、自然と笑顔が溢れ出ていた。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0